特許第6989346号(P6989346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989346
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】電圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/16 20060101AFI20211220BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   G01R15/16
   G01R19/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-206834(P2017-206834)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2019-78677(P2019-78677A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】中山 篤
(72)【発明者】
【氏名】江守 崇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 直樹
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−111087(JP,A)
【文献】 特開2015−175654(JP,A)
【文献】 特開2015−169440(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0170432(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/16
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線を流れる交流の被測定電圧を、前記導線とは非接触で計測する電圧測定装置であって、
前記導線と、前記導線を覆う導体とで形成される第1コンデンサと、
一端が前記第1コンデンサに接続された第2コンデンサと、
一端が前記第2コンデンサの他端に接続され、他端が回路グランドに接続された抵抗器と、
を備え、
前記第2コンデンサと前記抵抗器との間の測定点における電圧を測定することにより、前記被測定電圧を測定し、前記被測定電圧は、
により求められ、ここで、
Vx:被測定電圧、
ω:前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間に印加される電圧の角周波数、
R:前記抵抗器の抵抗値、
Ca:前記第2コンデンサの容量、
Vb:前記第2コンデンサをショートしたときの前記測定点における電圧、
Vc:前記第2コンデンサをショートしないときの前記測定点における電圧
である、電圧測定装置。
【請求項2】
請求項に記載の電圧測定装置であって、前記第2コンデンサの容量は、
により求められ、ここで、
Va:前記第2コンデンサの容量がCaのときの前記測定点における電圧、
Vfund:前記第2コンデンサの容量がCaと異なる容量Ca’のときの、前記測定点における電圧である電圧測定装置。
【請求項3】
導線を流れる交流の被測定電圧を、前記導線とは非接触で計測する電圧測定装置であって、
前記導線と、前記導線を覆う導体とで形成される第1コンデンサと、
一端が前記第1コンデンサに接続された第2コンデンサと、
一端が前記第2コンデンサの他端に接続され、他端が回路グランドに接続された抵抗器と、
を備え、
前記第2コンデンサと前記抵抗器との間の測定点における電圧を測定することにより、前記被測定電圧を測定する電圧測定装置であって、前記被測定電圧は、
により求められ、ここで、
Vx:前記被測定電圧、
ω:前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間に印加される電圧の角周波数、
R:前記抵抗器の抵抗値、
Ca:前記第2コンデンサの容量、
Csd:前記第1コンデンサと、回路グランドとの間であって、前記第2コンデンサと、前記抵抗器とに並列に存在する第1の浮遊容量、
Vd_b:前記第2コンデンサをショートした場合の前記測定点における電圧、
Vd_c:前記第2コンデンサをショートしない場合の前記測定点における電圧
である、電圧測定装置。
【請求項4】
請求項に記載の電圧測定装置であって、前記第1の浮遊容量は、
により求められ、ここで、
Vob:前記測定点に所定の電圧を印加し、前記抵抗器を前記測定点から切断あるいは回路グランドから切断したときの、前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間で測定される電圧である、電圧測定装置。
【請求項5】
導線を流れる交流の被測定電圧を、前記導線とは非接触で計測する電圧測定装置であって、
前記導線と、前記導線を覆う導体とで形成される第1コンデンサと、
一端が前記第1コンデンサに接続された第2コンデンサと、
一端が前記第2コンデンサの他端に接続され、他端が回路グランドに接続された抵抗器と、
を備え、
前記第2コンデンサと前記抵抗器との間の測定点における電圧を測定することにより、前記被測定電圧を測定する電圧測定装置であって、前記導線と、前記測定点との間であって、前記第2コンデンサに対して並列に存在する第2の浮遊容量は、
により求められ、ここで、
Csu:前記第2の浮遊容量、
ω:前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間に印加される電圧の角周波数、
R:前記抵抗器の抵抗値、
Ca:前記第2コンデンサの容量、
Vbc:Vu_b/Vu_c、
K:RωCa−Vu_a、
Vu_a:前記第2コンデンサの容量がCaである場合の前記測定点での電圧、
Vu_b:前記第2コンデンサをショートした場合の前記測定点における電圧、
Vu_c:前記第2コンデンサをショートしない場合の前記測定点における電圧
である、電圧測定装置。
【請求項6】
請求項に記載の電圧測定装置であって、前記被測定電圧は、
により算出され、ここで、
であり、
Vx:前記被測定電圧、
Cb:前記第1コンデンサの容量
である、電圧測定装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の電圧測定装置であって、
1つの面に第1の貫通孔が形成され、前記面と対向する面に第2の貫通孔が形成され、外面がシールドされたケーシングをさらに備え、
前記導体の長さは、前記第1の貫通孔が形成された面と、第2の貫通孔が形成された面との間の距離よりも長く、前記導体が前記導線を覆うときに、前記導体は、前記第1の貫通孔と、前記第2の貫通孔とを通り、前記導体の両端は、前記ケーシングの外側から突出するよう構成される、電圧測定装置。
【請求項8】
請求項に記載の電圧測定装置であって、前記導体が前記導線を覆うときに、前記ケーシングの外面のシールドされた部分は、前記導体と接触しないよう構成される、電圧測定装置。
【請求項9】
前記ケーシングの内面は、前記測定点に導通されている、請求項又はに記載の電圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線を流れる交流の電圧を、導線とは非接触で計測する電圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導線を流れる交流の電圧を、導線に非接触で測定するための手法が様々提案されている。特許文献1には、電線被覆をおおうピックアップと、ピックアップをおおうシールドと、ピックアップと接地の間に互いに直列に接続された2つの抵抗器と、入力側が2つの抵抗器の接続点に接続され出力側がシールドに接続された演算増幅器とを用いて、交流電圧を測定する装置が提案されている。特許文献1に記載の技術では、交流電圧の測定誤差の原因となるピックアップとシールド間に存在する浮遊容量を無効にするために、ピックアップとシールドとの電圧を同じにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−28748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、シールドにも交流商用ラインと同じ高い電圧が印加されることになる。そのため、高出力の演算増幅器を用いる必要があり、電圧測定装置の構成が高価になるという欠点があった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、高出力の特殊な演算増幅器を用いることなく、導線とは非接触の電圧測定装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
導線を流れる交流の被測定電圧を、前記導線とは非接触で計測する電圧測定装置であって、前記導線と、前記導線を覆う導体とで形成される第1コンデンサと、一端が前記第1コンデンサに接続された第2コンデンサと、一端が前記第2コンデンサの他端に接続され、他端が回路グランドに接続された抵抗器と、を備え、前記第2コンデンサと前記抵抗器との間の測定点における電圧を測定することにより、前記被測定電圧を測定する電圧測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高出力の特殊な演算増幅器を用いることなく、導線とは非接触の電圧測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る非接触の電圧測定装置の模式図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係る電圧測定装置の回路図である。
図2B図2Aに示す電圧測定装置の回路と略等価な回路を示す。
図3】本発明の第3実施形態に係る電圧測定装置の回路図である。
図4】本発明の第4実施形態に係る電圧測定装置の回路図である。
図5】本発明の第5実施形態に係る電圧測定装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施形態は、以下のような構成を備える。
【0010】
(項目1) 導線を流れる交流の被測定電圧を、前記導線とは非接触で計測する電圧測定装置であって、前記導線と、前記導線を覆う導体とで形成される第1コンデンサと、一端が前記第1コンデンサに接続された第2コンデンサと、一端が前記第2コンデンサの他端に接続され、他端が回路グランドに接続された抵抗器と、を備え、前記第2コンデンサと前記抵抗器との間の測定点における電圧を測定することにより、前記被測定電圧を測定する電圧測定装置。
【0011】
(項目2)項目1に記載の電圧測定装置であって、前記被測定電圧は、

により求められ、ここで、
Vx:被測定電圧、ω:前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間に印加される電圧の角周波数、R:前記抵抗器の抵抗値、Ca:前記第2コンデンサの容量、Vb:前記第2コンデンサをショートしたときの前記測定点における電圧、Vc:前記第2コンデンサをショートしないときの前記測定点における電圧
である、電圧測定装置。
【0012】
(項目3) 項目2に記載の電圧測定装置であって、前記第2コンデンサの容量は、


により求められ、ここで、Va:前記第2コンデンサの容量がCaのときの前記測定点における電圧、Vfund:前記第2コンデンサの容量がCaと異なる容量Ca’のときの、前記測定点における電圧である、電圧測定装置。
【0013】
(項目4) 項目1に記載の電圧測定装置であって、前記被測定電圧は、

により求められ、ここで、
Vx:前記被測定電圧、ω:前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間に印加される電圧の角周波数、R:前記抵抗器の抵抗値、Ca:前記第2コンデンサの容量、Csd:前記第1コンデンサと、回路グランドとの間であって、前記第2コンデンサと、前記抵抗器とに並列に存在する第1の浮遊容量、Vd_b:前記第2コンデンサをショートした場合の前記測定点における電圧、Vd_c:前記第2コンデンサをショートしない場合の前記測定点における電圧である、電圧測定装置。
【0014】
(項目5) 項目4に記載の電圧測定装置であって、前記第1の浮遊容量は、

により求められ、ここで、
Vob:前記測定点に所定の電圧を印加し、前記抵抗器を前記測定点から切断あるいは回路グランドから切断したときの、前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間で測定される電圧である、電圧測定装置。
【0015】
(項目6) 項目1に記載の電圧測定装置であって、前記導線と、前記測定点との間であって、前記第2コンデンサに対して並列に存在する第2の浮遊容量は、

により求められ、ここで、
Csu:前記第2の浮遊容量、ω:前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサの間に印加される電圧の角周波数、R:前記抵抗器の抵抗値、Ca:前記第2コンデンサの容量、Vbc:Vu_b/Vu_c、K:RωCa−Vu_a、Vu_a:第2コンデンサの容量がCaである場合の前記測定点での電圧、Vu_b:前記第2コンデンサをショートした場合の前記測定点における電圧、Vu_c:前記第2コンデンサをショートしない場合の前記測定点における電圧である、電圧測定装置。
【0016】
(項目7) 項目6に記載の電圧測定装置であって、前記被測定電圧は、



により算出され、ここで、

であり、Vx:前記被測定電圧、Cb:前記第1コンデンサの容量である、電圧測定装置。
【0017】
(項目8) 項目1から5のいずれか1項に記載の電圧測定装置であって、1つの面に第1の貫通孔が形成され、前記面と対向する面に第2の貫通孔が形成され、外面がシールドされたケーシングをさらに備え、前記導体の長さは、前記第1の貫通孔が形成された面と、第2の貫通孔が形成された面との間の距離よりも長く、前記導体が前記導線を覆うときに、前記導体は、前記第1の貫通孔と、前記第2の貫通孔とを通り、前記導体の両端は、前記ケーシングの外側から突出するよう構成される、電圧測定装置。
【0018】
(項目9) 項目8に記載の電圧測定装置であって、前記導体が前記導線を覆うときに、前記ケーシングの外面のシールドされた部分は、前記導体と接触しないよう構成される、電圧測定装置。
【0019】
(項目10) 前記ケーシングの内面は、前記測定点に導通されている、項目8又は9に記載の電圧測定装置。
[本発明の実施形態の詳細]
以下に、本技術の詳細を実施形態に基づき、添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0020】
<<第1実施形態>>
図1は第1実施形態に係る非接触の電圧測定装置100の模式図である。電圧測定装置100は、交流電圧の計測を必要とする設備、例えば屋内配線、送電線、通信設備の配線、電気機器内の配線等に設置して用いることができる。電圧測定装置100は、導線11を流れる交流の電圧を、導線11とは非接触で計測する装置である。
【0021】
本発明に係る電圧測定装置100は、導線11とは非接触に測定可能な測定点Mpにおける電圧を用いて、被測定電圧を求める。
【0022】
電圧測定装置100は、第1コンデンサ10と、第2コンデンサ20と、抵抗器30と、バッファ40と、ケーシング50とを備える。第1コンデンサ10は、絶縁被膜に覆われた導線11を備える電線12と、電線12の外周を覆う筒状の導体13とで構成される。導体13は、例えば、電線12に巻き付けられた銅などの金属薄膜である。導体13と導線11との間に結合容量が発生し、導体13と導線11とが1つのコンデンサ(第1コンデンサ10)として機能する。第1コンデンサ10は、筒状の導体13と、当該筒状の導体13の軸方向に内在する導線11とを備える。なお、第1コンデンサ10を構成する導体13の径は、電線12の径の太さに応じて変形可能に構成されてもよい。
【0023】
また、導線11と、導体13とで発生する結合容量の容量値は一定になるように構成されればよく、導体13は、電線12に密着していなくてもよい。例えば、導体13と、電線12との間に空間があってもよく、この場合、導線11と、導体13とで発生する結合容量の容量値が一定になるように、導体13の形状が安定しており、導線11と、導体13との距離が一定に維持されるよう構成される。導体13の外周面は多角筒状であり、好ましくは円筒形状を成す。導線11は、筒形状の導体13の軸方向、好ましくは中心軸に沿って、延在する。
【0024】
また、ある態様においては、導体13は、1つの筒状の導体ではなく、2つの半筒状の導体で構成されてもよい。2つの半筒状の導体が合わされたときにできる内部空間に導線11を収容することで、導線11を保持することができる。2つの半筒状の導体間を開くと、導線11を導体13から取り除くことができ、2つの半筒状の導体間を閉じると、導線11を導体13で覆うことができる。ケーシング50も2つに分割され、2つに分割されたケーシングが合わされたときに導線11を挟むこむことができるように構成されることができる。2つに分割されたケーシングが閉じられるとケーシングの内面同士と、外面のシールド同士とは導通される。例えば、2つに分割されたケーシングに、これらを連結するヒンジを設け、該ヒンジを支点として、分割されたケーシング50の自由端同士を開閉させて、導線11を導体13から着脱可能に構成する。
【0025】
第2コンデンサ20と抵抗器30とは、第1コンデンサ10と回路グランドとの間に直列接続される。第2コンデンサ20は、一端が第1コンデンサ10、より具体的には導体13に接続され、他端が抵抗器30に接続される。抵抗器30は、一端が第2コンデンサ20の他端に接続され、抵抗器30の他端が回路グランドに接続される。
【0026】
バッファ40は、第2コンデンサ20と、抵抗器30との間の測定点Mpに接続されている。バッファ40からの出力を測定することにより、測定点Mpにおける電圧を測定することができる。
【0027】
ケーシング50は、第1コンデンサ10を形成する筒状の導体13の少なくとも一部と、第2コンデンサ20と、抵抗器30と、バッファ40とを収容する。ケーシング50の内面は、金属などの導通できる物体で形成され、外面43は、金属などの導通できる物体でシールドされ、かつ回路グランドに接地されている。ケーシング50は、収容する各素子の保護を図ると共に、内部に収容する各素子へのノイズをシールドによって遮断する。
【0028】
ある態様において、第2コンデンサ20と、抵抗器30と、バッファ40とを収容するケーシング50の部分の幅は、第1コンデンサ10を形成する筒状の導体13の少なくとも一部を収容する部分の幅よりも細くなるよう形成されてもよい。第2コンデンサ20と、抵抗器30と、バッファ40とを収容するケーシング50の形状をコンパクトにすることで、電線12の周辺に空間がない場合でも、電圧測定装置100を容易に設置することができ、作業効率を向上することができる。
【0029】
次に、図2A及び図2Bを参照しながら、測定点Mp1及びMp2(図2Aに示す)における電圧を用いて、被測定電圧Vxを算出する方法について説明する。本実施形態においては、電圧測定装置100内に浮遊容量がないと仮定した場合の理想的な状態の被測定電圧Vxを算出する。本実施形態によると、測定点Mp1及びMp2における電圧を、様々な回路構成、例えば、第2コンデンサをショートした場合、第2コンデンサをショートしない場合のそれぞれの回路構成のもとで計測する。そして計測された測定点Mp1及びMp2における電圧を用いて、被測定電圧Vxを算出する。
【0030】
図2Aは、図1に示す電圧測定装置100の、一実施形態による回路図である。即ち、図1は、単相2線式の二本の電線のうち1本を測定するための電圧測定装置100の模式図であり、図2Aは、単相2線式の二本の電線(導線11−1、11−2)と、電圧測定装置200Aとの構成を示す図である。図2Aに示す電圧測定装置200Aは一台で構成されているが、構造的には図1に示す電圧測定装置100を2台用いて構成される。本実施形態において被測定電圧Vxの電源64は単相2線式の交流電源であり、非接地の1チャネル側の導線11−1であるP1と、接地の2チャネル側の導線11−2であるP0とを備える。電圧測定装置200Aは、P1とP0の間の電圧Vxを測定する。なお、電源64は単相3線式電源、二相交流電源、三相交流電源でもよく、図2Aに示す構成は本発明を限定するものではない。例えば、電源64が単相3線式の電源の場合、3つの導線P1、P0、P2が用いられるので、図2に示す構成要素にさらなる構成要素(第1コンデンサ、第2コンデンサ、抵抗器、バッファ)を、被測定電圧Vxに対し並列に追加する。このとき、P1、P0、P2の電圧は、それぞれ一台の電圧測定装置100を用いて測定されるので、合計三台の電圧測定装置100が用いられる。
【0031】
電圧測定装置200Aは、2つの第1コンデンサ10a、10bと、2つの第2コンデンサ20a、20bと、2つの抵抗器30a、30bと、2つのバッファ40a、40bと、差動増幅器61と、プロセッサ62、印加電源63とを備える。1ch側には、第1コンデンサ10aと、第2コンデンサ20aと、抵抗器30aと、バッファ40aとが接続され、2ch側には、第1コンデンサ10bと、第2コンデンサ20bと、抵抗器30bと、バッファ40bとが接続される。図2Aに示す第1コンデンサ10aと、第2コンデンサ20aと、抵抗器30aと、バッファ40aとの接続構成、及び第1コンデンサ10bと、第2コンデンサ20bと、抵抗器30bと、バッファ40bとの接続構成は、それぞれ図1に示す第1コンデンサ10と、第2コンデンサ20と、抵抗器30と、バッファ40との構成と同じであるのでここでは説明を割愛する。
【0032】
差動増幅器61は、測定点Mp1における電圧(バッファ40aからの出力)と、測定点Mp2における電圧(バッファ40bからの出力)との差を取って得られた出力を増幅する。従って、差動増幅器61からの出力は、図2Aに示す回路と略等価な図2Bに示す回路の測定点Mpにおける電圧と同じになる。なお、以下の説明において、別途の説明の無い限り、測定点Mp1における電圧と、測定点Mp2における電圧との電圧差(差動増幅器61からの出力)を、単に測定点Mpにおける電圧と称する。同様に、印加点Ap1における電圧と、印加点Ap2における電圧との電圧差を、単に印加点Apにおける電圧と称する。
【0033】
プロセッサ62は、差動増幅器61からの出力に基づいて、被測定電圧Vxを算出する。即ち、プロセッサ62は、図2Aに示す測定点Mp1、Mp2(図2Bに示す測定点Mp)における電圧等を用いて、被測定電圧Vxを算出する。プロセッサ62は、CPU(Central Processing Unit)及びMPU(Micro-processing unit)を含む。
【0034】
印加電源63は、既知の大きさの出力電圧を有する交流電源である。印加電源63の一方は、第1コンデンサ10aと第2コンデンサ20aの間の印加点Ap1に、他方は、第1コンデンサ10bと第2コンデンサ20bの間の印加点Ap2に接続される。印加電源63の電圧は任意の電圧に設定可能である(例えば1V)。
【0035】
第1コンデンサ10aと、第1コンデンサ10bとは回路上は直列に接続されるので、第1コンデンサ10aと、第1コンデンサ10bとが合成された第1コンデンサの容量Cbは、

となる。同様にして、直列接続された第2コンデンサ20aと20bとが合成された第2コンデンサの容量Caは、

となる。また、直列接続された抵抗器30aと30bとが合成された抵抗器の抵抗値Rは、

となる。
【0036】
図2Aに示す回路はプロセッサ62を示しているが、図2Bに示す電圧測定装置200Aはこれを示していない点を除いて、図2Bに示す回路は、図2Aに示す電圧測定装置200Aの回路と等価な回路である。以下の説明において、別途の説明の無い限り、第1コンデンサ10aの容量Cb1と、第1コンデンサ10bの容量Cb2との合成容量をCbと記載し、第2コンデンサ20aの容量Ca1と、第1コンデンサ20bの容量Ca2との合成容量をCaと記載し、抵抗器30aの抵抗値R1と抵抗器30bの抵抗値R2との合成抵抗値をRと記載する。また、図2Bに示されるように、合成容量Cbのコンデンサを第1コンデンサ210、合成容量Caのコンデンサを第2コンデンサ220、合成抵抗値Rの抵抗器を抵抗器230と記載する。
【0037】
なお、バッファ40aとバッファ40bの出力に構成回路特有の位相差が生じている場合を考慮して、差動増幅器61を用いずにバッファ40aとバッファ40bの出力をプロセッサ62に入力し、それぞれの電圧値を実効値として算出してから、加算することにより、被測定電圧Vxを算出してもよい。もしくは、バッファ40aとバッファ40bの出力をプロセッサ62にて位相補正を行ってから、減算することにより、差動の値として被測定電圧Vxを算出してもよい。
【0038】
電圧測定装置200Bは、容量Cbの第1コンデンサ210と、容量Caの第2コンデンサ220と、抵抗値Rの抵抗器230とを備える。図2Bを参照しながら、以下に示す<手順1−1>から<手順1−3>に従って、電圧測定装置200Bにおいて浮遊容量が存在しないと仮定した場合の、理想的な状態の被測定電圧Vxの値を求める。
【0039】
<手順1−1>
手順1−1において、第2コンデンサ220の容量Caを求める。一般にコンデンサの容量は温度変化したり、経年変化したりし、定格からの誤差を生じる。従って、以下の式(1.1)から式(1.3)を用いて、第2コンデンサ220の容量Caを算出する。
【0040】
印加電圧1Vを印加点Apの位置に加える。第2コンデンサ220の容量Caが、例えば1pFの時の測定点Mpにおける電圧Vfundは、
【数1】


(1.1)
となる。但し、R・ω・10−12≪1である。また、上記の式において、ω(=2πf)は印加電圧63の角周波数である(但し、fは印加電圧63の周波数)。印加電圧Vappは1Vでなくともよい。
【0041】
なお、印加電源63の周波数と、被測定電源64の周波数とは異ならせることが好ましい。被測定電源64の被測定電圧Vxの時間関数を取得し、該被測定電圧Vxの時間関数に対し高速フーリエ変換(FFT)等を行うことで、被測定電圧Vxの周波数成分を印加電圧Vappの周波数成分から分離することができるからである。
【0042】
また、ある態様では、印加電圧63の周波数と、被測定電源64の周波数とを同じにしてもよい。第1コンデンサ10のインピーダンスは高いため(例えば、31MΩ相当 )、印加電源63のインピーダンスを低く(例えば、50Ω)すれば、被測定電圧Vxによる影響を考慮しないで印加電源63による電圧Vfundを測定することが可能となる。
【0043】
第2コンデンサ220の容量がCaの時の測定点Mpにおける電圧Vaは
【数2】


(1.2)
となる。但し、R・ω・Ca≪1である。式(1.1)及び式(1.2)より、第2コンデンサの容量Caは、
【数3】

となる。即ち、第2コンデンサ220の容量が1pFのときの測定点Mpにおける電圧Vfundと、第2コンデンサ220の容量がCaのときの測定点Mpにおける電圧Vaを測定することによって、第2コンデンサ220の容量を得ることができる。なお、式(1.1)では、第2コンデンサ220の容量を1pFのときの測定点Mpにおける電圧Vfundを求めているが、Vfundを求める際に用いる第2コンデンサ220の容量は1pFでなくともよい。当該第2コンデンサ220の容量は、容量Caと異なる任意の値(容量Ca’)であればよく、この場合、式(1.3)はCa=Va/Vfund×Ca’と表される。
【0044】
<手順1−2>
次に、手順1−2において、第2コンデンサ220をショートした場合の、測定点Mpにおける電圧Vbを測定する。まず、
Rと、Ca(ショート)とによるインピーダンスZRCa_shortと、
Rと、Ca(ショート)と、CbとによるインピーダンスZshortを求める。第2コンデンサは、例えば、第2コンデンサに並列に接続された物理的なスイッチ(不図示)オンにすることで、あるいは、プロセッサ62により、第2コンデンサに並列に接続されたリレー(不図示)をオンにすることで、ショートすることができる。
【0045】
【数4】

【数5】

【数6】



【数7】

但し、ωCbR≪1である。従って、上記インピーダンスの場合、第2コンデンサ220をショートした場合、測定点Mpでの電圧Vbは、
【数8】

となる。
【0046】
<手順1−3>
次に、手順1−3において、第2コンデンサ220をショートしない場合の、測定点Mpにおける電圧Vcを測定する。まず、
RとCaとによるインピーダンスZRCaと、
Rと、Caと、CbとによるインピーダンスZとを求める。
【0047】
【数9】

【数10】

但し、ωCaR≪1である。
【0048】
【数11】

【数12】

但し、ωCaCbR≪(Ca+Cb)である。
【0049】
上記インピーダンスの場合、第2コンデンサ220をショートしない場合の測定点Mpでの電圧Vcは
【数13】

となる。
【0050】
式(1.8)を式(1.13)で除算すると、
【数14】

となる。
【0051】
そして、式(1.14)を、第1コンデンサ210の容量Cbについて解くと、
【数15】

となり、これを式(1.8)に代入すると、
【数16】

となる。式(1.16)を変形すると、
【数17】

となる。式(1.17)に式(1.3)を代入すると、浮遊容量の存在しない、理想的な状態の場合の被測定電圧Vxは
【数18】

となる。
【0052】
このように、浮遊容量の存在しない場合、被測定電圧Vxは、測定可能な測定点Mpにおける電圧Vaと、Vfundと、Vbと、Vcとを用いて式(1.18)により算出される。一方、浮遊容量が存在する場合には、式(1.18)を用いて算出される被測定電圧Vxには誤差が生じることになる。浮遊容量には、例えば、被測定電圧を高くする誤差要因となる浮遊容量や、被測定電圧を低くする誤差要因となる浮遊容量が存在する。第2実施形態及び第5実施形態では、構造的に浮遊容量を低減する。第3実施形態、第4実施形態では、浮遊容量を求め、該浮遊容量を用いて被測定電圧を補正する。
【0053】
<<第2実施形態>>
第2実施形態においては、浮遊容量を低減、あるいは無くすための構造を提供する。図1に戻って、本発明の第2実施形態に係る電圧測定装置100の構造を説明する。
【0054】
本実施形態よると、第1コンデンサ10と回路グランド間に生じる浮遊容量を、構造的に低減、あるいは無くすことができる。
【0055】
ケーシング50には、第1の貫通孔51−1と、第2の貫通孔51−2とがそれぞれ形成される。電線12は、第1の貫通孔51−1と、第2の貫通孔51−2とを通って、ケーシング50の内部を通過する。本実施形態においては、第1の貫通孔51−1は、ケーシング50の一つの面に、第2の貫通孔51−2は前記面と対向する面にそれぞれ形成される。第1コンデンサ10を形成する筒状の導体13の長さはケーシング50の第1の貫通孔51−1、第2の貫通孔51−2がそれぞれ形成された対向する面の間の距離よりも長く、第1コンデンサ10を形成する導体13の両端はケーシング50の外側に位置する。即ち、導体13の両端はそれぞれケーシング50の外側から(例えば数センチ)突出している。第1コンデンサ10の両端は、ケーシング50の外側から離れているため、導線11(電線12)と、ケーシング50の内面との間の容量結合を避けることができ、結果として、導線11(電線12)と、ケーシング50の内面とで生じる、被測定電圧を高くする誤差要因となる浮遊容量(以下、上げ要因となる浮遊容量と称する)を低減する、あるいは無くすことができる。
【0056】
また、ある態様において、ケーシング50の第1の貫通孔51−1、第2の貫通孔51−2付近は、導通できる物体でシールドされておらず、導体13は、ケーシング50の外面43のシールドされた部分と接触しない。即ち、導体13は、ケーシング50の外面43から絶縁されている。図1の網掛け部分は、ケーシング50の外面43のシールドされた部分を例示する。図1に示すように、貫通孔51−1、51−2付近がシールドされていない場合、ケーシング50の外面43のシールド部分と導体13、若しくは、ケーシング50の内面と外面43のシールド部分との容量結合を避けることができる。結果として、導線11と、外面43のシールド部分、若しくは、ケーシング50の内面と外面43のシールド部分とで生じる、被測定電圧を低くする誤差要因となる浮遊容量(以下、下げ要因となる浮遊容量と称する)を低減する、あるいは無くすことができる。
【0057】
<<第3実施形態>>
第3の実施形態においては、下げ要因となる浮遊容量を考慮したときの、被測定電圧Vxを求める手順を示す。図3は本発明の第3実施形態に係る電圧測定装置300の回路図である。本実施形態によると、測定点Mpにおける電圧を、様々な回路構成、例えば、第2コンデンサをショートした場合、第2コンデンサをショートしない場合のそれぞれの回路構成のもとで計測する。そして、計測された測定点Mpにおける電圧と、下げ要因となる浮遊容量とを用いて、被測定電圧Vxを補正する。なお、後述するように、下げ要因となる浮遊容量は、測定点Mp1、Mp2における電圧や、印加点Ap1、Ap2における電圧を用いて算出される。
【0058】
浮遊容量Csd1と、Csd2とは、下げ要因となる浮遊容量である。浮遊容量Csd1は、第1コンデンサ10aと回路グランドとの間であって、第2コンデンサ20a及び抵抗器30aと並列に存在する。また、浮遊容量Csd2は、第1コンデンサ10bと、回路グランドとの間であって、第2コンデンサ20b及び抵抗器30bと並列に存在する。
【0059】
以下、図3を参照しながら、下げ要因となる浮遊容量Csd1及びCsd2が存在する場合の被測定電圧Vxを求める。下げ要因となる浮遊容量が存在する場合の被測定電圧Vxは、第1実施形態で示した、浮遊容量が存在しない場合の手順1−1から手順1−3と類似の手順で求められる。なお、以下の説明において、別途の説明の無い限り、図3に示す浮遊容量Csd1と、浮遊容量Csd2との合成容量をCsdと記載する。
【0060】
<手順2−1>
下げ要因となる浮遊容量Csdが存在する場合の第2コンデンサの容量Caは、第1実施形態で示した手順1−1と同様に、式(1.3)を用いて算出される。即ち、第2コンデンサの容量Caは、第2コンデンサの容量がCaのときの測定点における電圧と、第2コンデンサの容量が1pFのときの測定点における電圧で除算し、10−12を乗算することにより算出される。
【0061】
<手順2−2>
手順2−2においては、第2コンデンサ20a及び20bを同時にショートした場合の測定点Mp1における電圧と測定点Mp2における電圧との電位差を測定点Mpにおける電圧として測定する。まず、
Rと、Ca(ショート)と、CsdとによるインピーダンスZRCaCsd_shortと、
Rと、Ca(ショート)と、Cbと、CsdとによるインピーダンスZd_shortとを求める。
【0062】
【数19】

【数20】

但し、ωCsdR≪1である。
【0063】
また、インピーダンスZd_shortは、
【数21】

となる。但し、Cbと、Csdの単位はピコファラド(10−12)であるので、式(2.3)において、ピコファラドオーダー同士の掛け算(Cb×Csd)は、0として近似する。そして、
【数22】

となる。但し、ωR(Cs+Cb)≪1である。そして、上記インピーダンスの場合、図3において、第2コンデンサをショートした場合の測定点Mpでの電圧Vd_bは、
【数23】

となる。
【0064】
<手順2−3>
手順2−3においては、第2コンデンサ20a及び20bを同時にショートしない場合の、測定点Mp1における電圧と測定点Mp2における電圧との電位差を測定点Mpにおける電圧として測定する。まず、
Rと、Caと、CsdとによるインピーダンスZRCaCsdと、
Rと、Caと、Cbと、CsdとによるインピーダンスZとを求める。
【0065】
【数24】

但し、Csdと、Caは単位がピコファラド(10−12)であるので、式(2.6)において、ピコファラドオーダー同士の掛け算(Csd×Ca)は、0として近似されている。そして、
【数25】

となる。但し、RωCa≪1である。
【0066】
【数26】

そして、式(2.8)より、
【数27】

となる。但し、式(2.9)において、ωR・Ca・Cb≪Ca+Cb+Csdを用いる。そして、上記インピーダンスの場合、第1コンデンサCbと第2コンデンサ間Caとの間の印加点Apでの電圧Vd_abは
【数28】

となる。
【0067】
また、上記インピーダンスの場合、第2コンデンサをショートしない場合の測定点Mpでの電圧Vd_cは
【数29】

となる。但し、式(2.11)において、ωCaR≪1を用いる。
【0068】
ここで、式(2.5)を、式(2.11)で除算すると、
【数30】

となる。そして、式(2.12)を、第1コンデンサの容量Cbについて解くと、
【数31】

となる。
【0069】
式(2.13)を式(2.5)に代入すると、
【数32】

となる。式(2.14)をさらに変形すると、
【数33】

となる。
【0070】
そして、式(2.15)に、式(1.3)を代入すると、下げ要因となる浮遊容量Csdが存在する場合の、被測定電圧Vxは、
【数34】

となる。
【0071】
本実施形態によると、下げ要因となる浮遊容量Csdを求め、求められた浮遊容量Csdの値を式(2.16)に代入することで、被測定電圧Vxを補正することができる。
【0072】
ある態様において、下げ要因となる浮遊容量Csdは、被測定電圧Vxが印加される導線11(図1に示す)を、該導線11とは別の、リファレンス電圧Vrefが印加される導線11’(不図示)に入れ替えることで測定可能となる。導線11’は、第1の貫通孔51−1(図1に示す)と、第2の貫通孔51−2(図1に示す)とを通り、被測定電圧Vxが印加される導線11と同様に配置される。下げ要因となる浮遊容量Csdは、リファレンス電圧Vrefとして、例えば100Vを印加して、式(2.16)を用いて求められる。式(2.16)をCsdについて解くと、
【数35】

となる。また、リファレンス電圧Vrefが印加される導線11’を細くして、導線11’を第1の貫通孔51−1と、第2の貫通孔51−2とを通り、被測定電圧Vxが印加される導線11と並列に配置してもよい。リファレンス電圧Vrefを測定する際には、被測定電圧Vxが印加される導線11はケーシング50内には配置されない。被測定電圧Vxの測定時には被測定電圧の導線11をリファレンス電圧Vrefが印加される導線11’と並列に配置するが、リファレンス電圧は印加しないでおく必要がある。
【0073】
また、別の態様において、下げ要因となる浮遊容量Csdは、測定点Mpに所定の電圧を印加して、印加点Apにおける電圧Vobを測定することにより求められる。まず、抵抗器30a及び30bを取り外す、もしくはリレースイッチで回路的に抵抗器30a及び30bを測定点Mpもしくは回路グランドから切断する。そして、測定点Mpに、例えば1Vを印加する。このとき、印加点Apにおける電圧Vobは
【数36】

である。式(4.1)を変形すると、
【数37】

となり、Csdについて求めると、
【数38】

となる。すなわち、下げ要因となる浮遊容量Csdは、回路的に抵抗器を切り離したときに測定された、印加点Apにおける電圧Vobを、式(4.3)に代入して算出される。
【0074】
ここで、下げ要因浮遊容量を考慮した場合の被測定電圧と、下げ要因浮遊容量を考慮しない場合の被測定電圧と比較する。電源64の実際の電圧が100(V)のときに、
印加電源63の周波数fを60(Hz)、
第2コンデンサの合成容量Caを15×10-12/2(F)、
第1コンデンサの合成容量Cbを40×10-12/2(F)、
抵抗器の合成抵抗値Rを100×10×2(Ω)、
下げ要因となる浮遊容量Csdを5×10−12/2(F)と仮定すると、
式(1.2)より、Va=5.655×10−4(V)、
式(2.5)より、Vd_b=0.1508(V)、
式(2.11)より、Vd_c=0.03770(V)となる。
【0075】
これらの値を、式(2.15)に代入すると、被測定電圧Vx=100.0となり、電源64の実際の電圧と等しい値を求めることができる。一方、下げ要因となる浮遊容量を考慮せずに、式(1.18)を用いて、上記値から被測定電圧Vxを算出すると、被測定電圧Vx=88.89となり、電源64の実際の電圧よりも低い値が求められる。
【0076】
<<第4実施形態>>
第4の実施形態においては、上げ要因となる浮遊容量を考慮したときの、被測定電圧Vxを求める手順を示す。図4は本発明の第4実施形態に係る電圧測定装置400の回路図である。本実施形態によると、測定点Mpにおける電圧を様々な回路構成、例えば、第2コンデンサをショートした場合、第2コンデンサをショートしない場合のそれぞれの回路構成のもとで計測する。そして、計測された測定点Mpにおける電圧を用いて、上げ要因となる浮遊容量を算出し、算出された上げ要因となる浮遊容量を用いて、被測定電圧Vxを補正する。
【0077】
浮遊容量Csu1と、Csu2とは、被測定電圧Vxを上げる要因となる浮遊容量である。浮遊容量Csu1は、1ch側の導線11−1と、測定点Mp1との間であって、第1コンデンサ10aと、第2コンデンサ20aと並列に存在する。浮遊容量Csu2は、2ch側の導線11−2と、測定点Mp2との間であって、第1コンデンサ10bと、第2コンデンサ20bと並列に存在する。
【0078】
本実施形態においては、第1コンデンサ10(図1に示す)を形成する導体13(図1に示す)の長さは、導体13が貫通するケーシング50(図1に示す)の対向する面間の距離よりも短く、第1コンデンサを形成する導体13の全体がケーシング50内に収容されるよう構成される。このように構成することで、ケーシング50内に第1コンデンサを形成する導体13の全体が収まるので、ケーシング50の外面から突出した導体13の部分が無くなり、電圧測定装置400の外観をよくすることができると共に、第1コンデンサ10を外界から保護することができる。
【0079】
一方で、第1コンデンサ10を形成する導体13の長さが、導体13が貫通するケーシング50の対向する面間の距離よりも短いため、導体13(図1に示す)で覆われていない電線12部分が、ケーシング50内に存在することになる。これにより、導体13で覆われていない電線12部分と、測定点等との間に浮遊容量が生じることとなる。当該浮遊容量は、上げ要因となる浮遊容量である。
【0080】
以下、図4を参照しながら、上げ要因となる浮遊容量Csu1及びCsu2が存在する場合の被測定電圧Vxを求める。上げ要因となる浮遊容量が存在する場合の被測定電圧Vxは、第1実施形態で示した、手順1−1から手順1−3と類似の手順で求められる。なお、以下の説明において、別途の説明の無い限り、図4に示す浮遊容量Csu1と、浮遊容量Csu2との合成容量をCsuと記載する。
【0081】
<手順3−1>
上げ要因となる浮遊容量Csuが存在する場合の第2コンデンサの容量Caを求めるため、印加電圧Vapp(例えば1V)を図4の印加点Ap1、Ap2の位置に加える。まず、
1V印加時のCbとCsuとによるインピーダンスZCbCsu_1Vと、
1V印加時のCaと、Cbと、CsuとによるインピーダンスZCaCbCsu_1Vと、
1V印加時のRと、Caと、Cbと、CsuとによるインピーダンスZU_1Vと、
Caと、CbとによるインピーダンスZCaCbと、
Caと、Cbと、CsuとによるインピーダンスZCaCbCsuと、
Rと、Caと、Cbと、CsuとによるインピーダンスZとを求める。
【0082】
【数39】

式(5.1)の絶対値をとり、
【数40】

となる。
【0083】
また、ZCaCbCsu_1V
【数41】

【数42】

となる。
【0084】
さらに、ZU_1V
【数43】

【数44】

となる。但し、ω{CbCsu+Ca(Cb+Csu)}R≪Cb+Csuである。
【0085】
同様に、ZCaCb
【数45】

【数46】

となる。
【0086】
また、ZCaCbCsu
【数47】

【数48】

となる。
【0087】
また、Zは、
【数49】

【数50】

となる。
【0088】
ここで、第2コンデンサの容量がCaの時の測定点Mpにおける電圧Vu_aは、
【数51】

であり、式(5.13)を容量Caについて解いて、
【数52】

となる。ここで、第2コンデンサと、第1コンデンサとの接続を切り離すと、浮遊容量Csuは生じない。この場合、式(1.3)をそのまま使用でき、あるいは式(5.14)にてCsuをゼロとして、式(1.2)に代入して、第2コンデンサの容量Caを求めることができる。
【0089】
式(5.13)について、第2コンデンサの容量Caを既知として第1コンデンサの容量Cbについて解くと、
【数53】

となる。
【0090】
<手順3−2>
式(1.8)より、第2コンデンサをショートした場合の測定点Mpでの電圧Vu_bは
【数54】

となり、被測定電圧Vxは、
【数55】

となる。図4に示すように、第1コンデンサを構成する一方の電極は、導線11−1、あるいは導線11−2であるので、式(5.17)に示される第1コンデンサの容量Cb、及び上げ要因となる浮遊容量Csuは、直接測定することができない。手順3−3は、測定点Mpにおける電圧を用いて、上げ要因となる浮遊容量Csuを算出する方法を示す。上げ要因となる浮遊容量Csuが求められれば、式(5.15)を用いて、第1コンデンサの容量Cbを算出することができ、式(5.17)を用いて被測定電圧Vxを求めることができる。
【0091】
<手順3−3>
第2コンデンサ20a及び20bを同時にショートしない場合の、測定点Mp1における電圧と測定点Mp2における電圧との電位差を測定点Mpにおける電圧Vu_cとして測定する。電圧Vu_cは、
【数56】

となる。式(5.16)を式(5.18)で除算すると、
【数57】

となる。
【0092】
式(5.15)にてVu_a−Rω(Ca+Csu)=Dとおき、式(5.19)に代入すると、
【数58】

となる。ここで、Csu≠0、Cb≠∞より、D≠0であることから、式(5.20)の右辺をCsuとDにて約分すると、
【数59】

となる。ここで、Vu_b/Vu_c=Vbc、及びRωCa−Vu_a=Kとおくと、D=−(RωCsu+K)となり、
【数60】





が求められる。
【0093】
式(5.22)をCsuについて解くと、
【数61】

となる。
【0094】
本実施形態によると、測定点における電圧Vu_aと、Vu_bと、Vu_cと、式(5.23)とを用いて上げ要因となる浮遊容量Csuを算出し、算出された浮遊容量Csuの値を式(5.17)あるいは(5.18)に代入することで、上げ要因となる浮遊容量Csuを考慮して被測定電圧Vxを補正することができる。
【0095】
ここで、上げ要因となる浮遊容量を考慮した場合の被測定電圧と、上げ要因となる浮遊容量を考慮しない場合の被測定電圧と比較する。電源64の実際の電圧が100(V)のときに、
印加電源63の周波数fを60(Hz)、
第2コンデンサの合成容量Caを220×10-12/2(F)、
第1コンデンサの合成容量Cbを40×10−12/2(F)、
抵抗器の合成抵抗値Rを100×10×2(Ω)、
上げ要因となる浮遊容量Csuを1×10−12/2(F)、
Vu_b=0.1546(V)、
Vu_c=0.1314(V)
と仮定する。
【0096】
これらの値を、式(5.17)若しくは式(5.18)に代入すると、被測定電圧Vx=Vu_b/(ω×(Cb+Csu)×R)=100.0(式(5.17))となり、電源64の実際の電圧と等しい値を求めることができる。一方、上げ要因となる浮遊容量を考慮せずに、式(1.17)若しくは式(1.18)を用いて、被測定電圧Vxを算出すると、被測定電圧Vx=Vu_b/(ω×R×(Vu_b−Vu_c)/Vu_c×Ca)=105.6(式(1.17))となり、実際の被測定電圧よりも高い値が求められる。
【0097】
<<第5実施形態>>
図5は第5実施形態に係る電圧測定装置500の回路図である。本実施形態に係る電圧測定装置500は、図3に示す電圧測定装置300と類似の構成を備えるが、第2コンデンサ20aと並列に接続され、第1コンデンサ10aと、測定点Mp1との間に接続された容量Csd1’の仮想的なコンデンサと、第2コンデンサ20bと並列に接続され、第1コンデンサ10bと、測定点Mp2との間に接続された容量Csd2’の仮想的なコンデンサを備える点で異なる。第5実施形態は、下げ要因となる浮遊容量を低減、あるいは無くすための構造に関する。
【0098】
本実施形態によると、ケーシング50の内面を測定点Mp1に導通させることで容量Csd1’の仮想的なコンデンサを構成し、また、ケーシング50の内面を測定点Mp2に導通させることで容量Csd2’の仮想的なコンデンサを構成する。即ち、ケーシング50の内面をそれぞれの測定点Mp1、Mp2に導通させることで、第1コンデンサ10の導体13(図1参照)を一方の導電板とし、ケーシング50の内面を他方の導電板とする仮想的なコンデンサを構成する。第1コンデンサ10の導体13の面積とケーシング50の内面の面積とは大きいので、容量Csd’(容量Csd1’及び容量Csd2’の合成容量)は、下げ要因浮遊容量Csdよりも遙かに大きくなる。従って、ケーシング50の内面を測定点Mpに導通させることで容量Csd’の仮想的なコンデンサが構成されると、容量Csdは無視できる程度に小さいので、容量Csdによる影響を取り除くことができる。その結果、下げ要因である浮遊容量Csdによる影響を低減、あるいは無くすことができる。なお、上記仮想的なコンデンサは第2コンデンサと並列に接続されるため、仮想的なコンデンサの容量Csd’は第2コンデンサの容量Caに含まれることとなり、仮想的なコンデンサによる影響はなくなる。また、残った下げ要因となる浮遊容量Csdによる誤差が問題となる場合には、式(2.16)により、補正が可能である。
【0099】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0100】
10(10a、10b)、210…第1コンデンサ
11…導線
12…電線
13…導体
20(20a、20b)、220…第2コンデンサ
30(30a、30b)、230…抵抗器
40(40a、40b)…バッファ
43…シールド
50…ケーシング
51−1…第1の貫通孔
51−2…第2の貫通孔
61…差動増幅器
62…プロセッサ
63…印加電源
64…被測定電源
100(200A、200B、300、400、500)…電圧測定装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5