(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989352
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法及び炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20211220BHJP
B29C 70/46 20060101ALI20211220BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20211220BHJP
B29B 13/00 20060101ALI20211220BHJP
B29B 7/90 20060101ALI20211220BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20211220BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C70/46
B29C70/06
B29B13/00
B29B7/90
B29K101:12
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-213666(P2017-213666)
(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-84727(P2019-84727A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】小田 崇
(72)【発明者】
【氏名】諸星 勝己
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 賢一
(72)【発明者】
【氏名】込山 隆士
【審査官】
▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−022852(JP,A)
【文献】
特開2013−017330(JP,A)
【文献】
特開2014−124834(JP,A)
【文献】
特開平02−227220(JP,A)
【文献】
特開平03−138132(JP,A)
【文献】
特開2006−142819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 − 43/58
B29C 70/00 − 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む混練材をプレス成形する炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法であって、
上記混練材が、溶融混練されて内部が流動性を有し表面が硬化した混練材であり、
プレス成形前に上記混練材に複数の孔を形成する穿孔工程を有し、
上記孔が少なくとも上記混練材表面の硬化部分を貫通する孔であることを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
上記穿孔工程が、規則的に配列した複数の孔を形成する処理であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
少なくとも意匠面側を穿孔することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
上記穿孔工程を成形型上で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
上記混練材にスパイク状部材を刺して穿孔することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
上記スパイク状部材が加熱されていることを特徴とする請求項5に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
上記スパイク状部材が多孔質体であり、
上記スパイク状部材を介して上記混練材中のガスを排除することを特徴とする請求項5又は6に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
さらに、混練材作製工程を備え、
上記混練材作製工程が、混練機に連続炭素繊維と熱可塑性樹脂とを供給し、上記熱可塑性樹脂を溶融混練すると共に上記炭素繊維を切断して、上記混練材を得る処理であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
搬送装置とプレス成形装置とを備え、
上記搬送装置が、少なくともアームと該アームに設けられた保持部を有し、
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを溶融混練し、内部が流動性を有し表面が硬化した混練材を上記搬送装置の保持部で持ち、上記プレス成形装置の成形型に配置してプレス成形するものであり、
上記保持部及び/又は成形型がスパイク状部材を備え、
上記スパイク状部材を上記混練材に刺し、少なくとも上記混練材表面の硬化部分を貫通する孔を形成した後に、プレス成形するものであることを特徴とする炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置。
【請求項10】
さらに、上記スパイク状部材を加熱する加熱装置を備えることを特徴とする請求項9に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置。
【請求項11】
上記スパイク状部材が多孔質体であり、
さらに、上記スパイク状部材を介してガスを吸引する吸引装置を備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法に係り、更に詳細には、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む混練材をプレスして成形する炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法及び炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化樹脂成形体(以下、CFRPということがある。)は、鋼材等の金属材料と比較して比剛性、比強度に優れた画期的な軽量材であるが、汎用材としては製造コストが高く使用しがたいため、CFRPの低価格化が切望されている。
【0003】
上記CFRPの製造方法としては、オートクレーブ法やレジントランスファーモールディング(RTM)法が知られているが、これらの製法は炭素繊維の織布や不織布等のシートを用いるものであり、上記炭素繊維のシートは伸縮し難く成形が困難であるため、工数と時間を要しCFRPの低価格化が困難である。
【0004】
また、CFRPは射出成形法により製造することも可能であるが、通常の圧力で射出する場合は、炭素繊維を短くする必要があり、機械的強度の低いCFRPしか得ることができない。その低い物性を補うため、CFRPの厚みを増して材料を多く使うこととなり、射出成形法でCFRPの機械的強度と低価格化とを両立させることは困難である。
【0005】
CFRPの機械的強度と低価格化とを両立できる製造方法として、Long Fiber Thermo plastic Direct(LFT−D)法を用いた製造方法がある。
【0006】
上記LFT−D法は、熱可塑性樹脂と共に、ボビンに巻かれた連続の炭素繊維を混練機に投入し、熱可塑性樹脂を溶融混練しながらスクリューのせん断力により炭素繊維を適度な長さに切ってLFT−D混練材(熱可塑性樹脂と炭素繊維の複合材、以下「コンパウンド」ということがある。)を作る方法である。
【0007】
そして、上記LFT−D法により作製したコンパウンドが冷めないうちにプレス成形し、成形品を得ることで、従来の代表的なCFRP工法とは異なり、プリプレグやプリフォームといった中間基材を用いる必要がなくなる。
したがって、上記コンパウンドをプレスするだけのシンプルな成形が可能になり、CFRPのコストを下げることができる。
【0008】
特許文献1の特開2012−148443号公報には、繊維材と熱可塑性樹脂から形成された樹脂材をプレス加工したパネル上に、LFT−D法を適用した混練材をプレス成形して得たリブを載置し、さらにプレス加工してパネルとリブが一体化されたリブ付き構造の繊維強化樹脂材を製造する方法が開示されている。
そして、上記製造方法によれば、リブが取り付けられた表面と反対側のパネル表面に生じ得るヒケが効果的に解消できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−148443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の繊維強化樹脂材は、意匠面側がパネルであって、コンパウンドに由来するものでなく、また、上記コンパウンドをプレス成形して得たCFRPに発生する表面が白っぽく見える白化や、マーブル模様等の外観不良の発生を防止するものではない。
【0011】
つまり、上記コンパウンドをプレス成形するCFRPの製造方法においては、射出成形のように、溶融状態のコンパウンドを成形型内に射出するのではなく、コンパウンドを一旦混練機から取り出し、形を整えてから成形型に配置してプレス成形を行う。
【0012】
そして、コンパウンドを拡げて形を整える際、コンパウンド内の炭素繊維が元の状態に戻ろうとする力でコンパウンドが膨張して周囲の空気を巻き込む。
また、コンパウンドを成形型に搬送、配置するためには、コンパウンドがある程度の自立性を有することが必要であり、混練機から取り出してから成形型に配置するまでの間、コンパウンドが外気にさらされて冷えるため、表面が不可避的に硬化してしまう。
【0013】
このような表面が硬化したコンパウンドをそのままプレス成形すると、コンパウンド内に含まれている気泡がプレス成形によってすじ状に引き伸ばされ、熱可塑性樹脂と気泡との界面で生じる反射によって、CFRP表面が白っぽく見える白化が生じる。
また、コンパウンド表面の先に硬化した部分と、内部の後から硬化した部分との境界で屈折が生じ、流れるような形が幾重にも重なったり、練り込んだように見えるマーブル模様が発生する。
【0014】
特に、繊維長が長い炭素繊維を含むコンパウンドは、炭素繊維の復元力が強く、かつ熱伝導性が高いものであるため、空気の巻き込みや表面の硬化が顕著であり、上記外観不良が生じ易い。
【0015】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外観不良の発生を防止できる炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、プレス成形前に混練材表面の硬化部分を貫通する孔を形成することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを
含む混練材をプレス成形してCFRPを得る、炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法である。
そして、
上記混練材が、溶融混練されて内部が流動性を有し表面が硬化した混練材であり、プレス成形前に上記混練材に孔を形成する穿孔工程を有し、
上記孔が少なくとも混練材表面の硬化部分を貫通する複数の孔であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置は、搬送装置とプレス成形装置とを備える。
そして、上記搬送装置が、少なくともアームと該アームに設けられた保持部を有し、
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを溶融混練
し、内部が流動性を有し表面が硬化した混練材を上記搬送装置の保持部で持ち、上記プレス成形装置の成形型に配置してプレス成形するものであり、
上記保持部及び/又は成形型がスパイク状部材を備え、
上記スパイク状部材を混練材に刺し、少なくとも混練材表面の硬化部分を貫通する複数の孔を形成した後に、プレス成形するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プレス成形前に混練材表面の硬化部分を貫通する孔を形成することとしたため、白化やマーブル模様等の外観不良のないCFRPを製造できる、炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置の概略図である。
【
図2】搬送装置の保持部の一例を示す概略図である。
【
図3】保持部でコンパウンドを保持した状態を示す概略図である。
【
図4】保持部がコンパウンドを離す状態を示す概略図である。
【
図5】スパイク状部材を備える成形型にコンパウンドを配置した状態を示す概略図である。
【
図6】スパイク状部材を備える成形型でコンパウンドに穿孔する状態を示す概略図である。
【
図7】スパイク状部材を備える成形型でコンパウンドにプレスした状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法について詳細に説明する。
上記製造方法は、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを
溶融混練し、内部が流動性を有し表面が硬化した混練材をプレス成形して炭素繊維強化樹脂成形体を得る方法であり、プレス成形前に、少なくとも混練材表面の硬化部分を貫通する複数の孔を形成する穿孔工程を有する。
【0022】
本発明においては、コンパウンドをプレスする前に、コンパウンド表面の硬化部分を貫通する孔を形成するため、コンパウンドを圧縮することによって、上記貫通孔から内部の流動性が高いコンパウンドを表面に噴出させると共に、上記硬化部分を再現よく小片に破壊することができる。
したがって、表面の硬化部分を、流動性が高いコンパウンド内に埋没させて覆い隠すことができ、上記外観不良の発生を防止することができる。
【0023】
本発明において、硬化部分とは流動性が低下して自立性を有する部分をいい、コンパウンドを垂直に切ったときに熱可塑性樹脂が流れ出さずにそのまま留まる範囲をいう。
なお、通常の搬送によって生じる硬化部分の厚さは、0.5mm程度である。
【0024】
上記孔の径は、成形型に配列するコンパウンドの厚さやコンパウンド内の炭素繊維の長さ等にもよるが、3mm〜10mmであることが好ましい。孔の径が上記範囲であることで、内部の流動性が高いコンパウンドが表面に噴出する。
【0025】
また、隣り合う孔と孔との間隔は、コンパウンドの厚さ、成形型の形状等にもよるが、5mm〜30mmであることが好ましい。孔の間隔が上記範囲内であることで、硬化部分が小片に破壊されてCFRP内部に埋没し易くなる。
【0026】
上記複数の孔の配列は、硬化部分を小片に破壊できればよく、CFRPの形状に合わせて変えることができ、ランダムに配列していてもよいが規則的に配列していることが好ましい。規則的に配列していることで、流動性が高いコンパウンドが均等に噴出し易くなって、硬化部分全体を覆い隠すことができる。
【0027】
本発明において、規則的に配列しているとは、等間隔に配列している部分や、一定の繰り返し単位が連続して配列している部分を有すれば足り、すべてが同じ規則で配列していることを意味しない。
【0028】
上記複数の孔は、成形型に配列するコンパウンドの上面側又は下面側のいずれか一方、または、上面側と下面側の両方に形成してもよいが、少なくとも意匠面側に形成することが好ましい。
意匠面はCFRPの表面形状を構成する面であり、需要者から見える面に穿孔することで、上記外観不良の発生を効率よく防止できる。
【0029】
上記穿孔工程は、コンパウンドを混練機から取り出してからプレス成形する前に行えばよく、形を整えたコンパウンドを成形型に配置するときや、成形型に配置した後に行うことができるが、成形型に配置されたコンパウンドに対して行うことが好ましい。
【0030】
上記孔の形成によりコンパウンドが冷え易くなって流動性が低下するが、孔を形成した直後にプレス成形することで、コンパウンドの流動性低下が防止され、また、成形型を加熱しておくことで、コンパウンドの冷えを防止できる。
【0031】
上記孔は、スパイク状部材をコンパウンドに刺すことで形成できる。スパイク状部材としは、例えば、釘状、針状、とげ状等の部材を挙げることができる。
【0032】
上記スパイク状部材は加熱されていることが好ましい。スパイク状部材を加熱することで、コンパウンド熱がスパイク状部材を介して逃げることが防止され、コンパウンドの冷えを防止できる。
【0033】
また、形成する孔の深さは、深ければ深いほどよく、表面の硬化部分だけでなくコンパウンド全体を貫通させてもよい。
しかし、穿孔工程を成形型上で行う場合は、コンパウンド全体を貫通する孔を形成すためには、成形型にスパイク状部材の受けが必要となりコストが増加するため、成形型に配置したコンパウンドの厚さよりも若干浅いことが好ましい。
【0034】
上記スパイク状部材は、多孔質体であることが好ましい。
スパイク状部材が金属粒子の焼結体等、通気性を有する多孔質体であることで、スパイク状部材を介してコンパウンド内に含まれるガスを吸引し排除することができ、コンパウンド内のガスに起因する白化を防止することができる。
【0035】
上記コンパウンド中の炭素繊維の平均繊維長は、CFRPの形状や使用目的等にもよるが0.5mm以上50mm以下であることが好ましく、3mm〜30mmであることがより好ましい。
【0036】
平均繊維長が上記範囲にあることで、CFRPの外観と機械的強度とを両立できる。
平均繊維長があまり長くなると炭素繊維が絡み合った凝集塊が表面に現れ易くなり外観を損なうことがある。また、平均繊維長が短すぎると成形体の機械的強度が低下し、射出成型材と同程度の強度しか得られなくなる。
【0037】
炭素繊維の平均繊維長は、LFT−D法によりコンパウンドを作製する際の混練時間やスクリューの回転速度、スクリューの形状等により調節できる。
【0038】
具体的には、熱可塑性樹脂を溶融混練している2軸押し出し混練機内に、ボビンに巻かれた連続する長い炭素繊維をボビンから巻きだしながら連続して供給する。
そして、熱可塑性樹脂と混練しながらスクリューのせん断力により炭素繊維を適度な長さに切断し、混練機から押し出すことで、所望の長さに調節された炭素繊維を含むコンパウンドを連続して作製できる。
【0039】
上記コンパウンドの炭素繊維の繊維含有量は、50〜60重量%であることが好ましい。上記炭素繊維の繊維含有量はCFRPの剛性や強度に対する影響が大きいため、炭素繊維の繊維含有量を少なくすると、機械的強度が低下するため、鋼材等の金属材料の代替部材として用い難くなる。
【0040】
上記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などを挙げることができ、これらは1種、又は2種以上を併用することができる。
【0041】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂等を挙げることができる。
【0042】
上記炭素繊維強化樹脂成形体の製造方法は、大型で複数のコンパウンドを配列する必要があり、特にコンパウンドが冷え易い場合であっても外観不良のないCFRPを得ることができる。
【0043】
また、充分な機械的強度を有するCFRPが得られるため、従来、金属材料で形成されていた自動車の大型部品を代替することができ、例えば、意匠面側の表面積が0.3m
2〜5m
2の大型部品の作製に好適に用いることができる。
【0044】
上記大型部品としては、例えば、ルーフパネル、フロアパネル、フロントバルクヘッド(ファイヤーウォール)、リアシートバックパネル等を挙げることができる。
【0045】
次に、炭素繊維強化樹脂成形体の製造装置について説明する。
上記製造装置は、
図1に示すように、搬送装置1とプレス成形装置2とを備え、必要に応じて、上記スパイク状部材や成形型を加熱する図示しない加熱装置や、上記スパイク状部材を介してガスを吸引する図示しない吸引装置を有して成る。
【0046】
上記搬送装置1は、混練機から取り出したコンパウンド3をプレス成形装置2の成形型に配置するものであり、旋回自在な多軸型のアーム11と該アームに設けられた保持部12を有する。
そして、コンパウンド3を保持部12で保持し、アーム11を動かして成形型に配置する。
【0047】
上記プレス成形装置2は、固定型21と可動型22との間にキャビティを形成する成形型を有し、固定型21に配置されたコンパウンド3をプレスして成形するものである。
【0048】
上記スパイク状部材Sは、上記保持部と成形型のいずれか一方、または上記保持部と成形型の両方に設けることができる。
【0049】
上記保持部12は、
図2に示すように、可動板121と該可動板を貫通するスパイク状部材Sを備える。
そして、
図3に示すようにコンパウンド3に上記スパイク状部材Sを刺して持ち上げ、
図4に示すように可動板121を移動させてコンパウンド3からスパイク状部材Sを抜いて成形型上に配置する。
【0050】
このとき、図示しない吸引装置で多孔質のスパイク状部材Sを介して吸引することで、コンパウンド中のガスを排除できるだけでなく、コンパウンド3の落下をも防止できる。
【0051】
なお、保持部にスパイク状部材を設けない場合は、コンパウンドを掴んで保持する従来公知の把持部材を使用することができ、成形型に配置された複数のコンパウンドに対して、剣山状に並んだスパイク状部材を刺して一度に孔を形成することが好ましい。
【0052】
上記成形型は、
図5に示すように、可動型22がスパイク挿入孔を有し、その挿入孔にスパイク状部材Sが設けられる。上記スパイク状部材Sは、プレート23を介してリターンピンRに繋がっており、成形型を閉じるときに、上記リターンピンRが他方の型のパーティングライン面Pに突き当たって、上記スパイク状部材Sをスパイク挿入孔内に引っ込める。
【0053】
上記スパイク状部材Sは、
図5に示すように、成形型が開いた状態では可動型22から突出している。
そして、可動型22が固定型21に接近することで、
図6に示すように、スパイク状部材Sがコンパウンド3に刺さって孔を形成し、さらに固定型21に接近すると、
図7に示すように、スパイク状部材Sがスパイク挿入孔内に引っ込むため、スパイク状部材SによってCFRPの意匠面に孔が形成されることはない。
また、上記リターンピンRに代えて、上記スパイク状部材Sを油圧で駆動してもよい。スパイク状部材Sの駆動装置を別に設けることで、成形型の開閉と連動させずに、スパイクSの抜き刺しが可能になる。
【0054】
なお、スパイク状部材Sを可動型に設ける場合について説明したが、本発明においては固定型にスパイク状部材Sを設けてもよい。また、成形型にスパイク状部材を設けない場合は、従来公知の成形型を使用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
ナイロン6(東洋紡社製:T860)を2軸混練押出機にて溶融させ、さらに溶融したナイロン6を2軸混練押出機に導き、そこへ炭素繊維(Zoltec社製:50K PX35)を引き入れ混練することでコンパウンドを得た。
【0057】
このコンパウンドは、重量平均繊維長が4.0mm、炭素繊維の含有量が50重量%であった。
【0058】
上記コンパウンドの形状を、長さ約120mm、幅約30mm、厚さ約20mmに整えた後、成形型(200×200×2mmt)の中央部に配置した。このとき、コンパウンドの表面温度は230℃であった。
【0059】
次に、直径が5mmのスパイク状部材を、その中心の間隔が、縦7.5mm、横10mmの等間隔で深さ1mmまで刺し、コンパウンド全体に複数の孔を形成した。
そして、可動型200℃、固定型190℃、プレス圧7MPaの条件で2分間保持してCFRPを得た。
【0060】
[実施例2]
スパイク状部材を3mmの深さまで刺して複数の孔を形成する他は実施例1と同様にしてCFRPを得た。
【0061】
[実施例3]
スパイク状部材を5mmの深さまで刺して複数の孔を形成する他は実施例1と同様にしてCFRPを得た。
【0062】
[実施例4]
スパイク状部材を10mmの深さまで刺して複数の孔を形成する他は実施例1と同様にしてCFRPを得た。
【0063】
[比較例1]
スパイク状部材を刺さない他は実施例1と同様にしてCFRPを得た。
【0064】
<評価>
上記実施例1〜4及び比較例1のCFRPの外観を以下のように評価した。
評価結果を表1に示す。
【0065】
(色差評価)
JIS Z8730により、色差計を用いてCFRPの表面を10箇所測色し、以下の方法で成形した射出成形体を基準として色差(△E)を求めた。
【0066】
基準となる射出成形体は、繊維長が0.3mmの炭素繊維(Zoltec社製:50K PX35)を50重量%含む、ナイロン6(東洋紡社製:T860)の混練材を溶融状態のまま射出成形して作製した。
【0067】
(目視評価)
上記実施例1〜4及び比較例1のCFRPの外観を観察し、流れるような形が幾重にも重なったり、練り込んだように見えるうねりやボイド等の成形不良の有無を目視確認した。
【0068】
【表1】
【0069】
上記評価結果より、スパイク状部材の深度が深くなれば深くなるほど、外観の白化が防止できることがわかる。これは、コンパウンド中のガスが孔を通じて排除されるためであると考えられる。
【0070】
また、比較例1のCFRPは、コンパウンド表面の硬化部分とみられるマーブル模様が確認できたが、実施例1〜4のCFRPはマーブル模様の外観不良の発生が見られなかった。
【0071】
これは、コンパウンドにその表面の硬化部分を貫通する孔を形成することで、CFRPの表面がコンパウンド内部の流動性が高い部分で形成され、コンパウンド表面硬化部分はCFRPの内部に埋没したためであると考えられる。
【符号の説明】
【0072】
1 搬送装置
11 アーム
12 保持部
121 可動板
2 成形装置
21 固定型
22 可動型
23 プレート
3 コンパウンド
S スパイク状部材
R リターンピン
P パーティングライン面