(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液面と接触可能な第1電極と第2電極との間の静電容量に依存する時定数で発振する発振回路を用いて、前記第1電極と前記液面とが非接触の第1状態における前記発振回路の発振周波数と、予め用意された発振周波数設定値とのずれ量を算出する工程と、
前記ずれ量と予め用意された閾値設定値に基づいて、液面検知閾値を得る工程と、
前記第1状態における前記発振回路の発振周波数と、前記第1電極を下降させた第2状態における前記発振回路の発振周波数との差分が前記液面検知閾値を超える場合に前記液面を検知する工程と、を備える液面検知方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る液面検知装置は、以下を備える。
(1)第1電極と、第2電極との間の静電容量に依存する時定数で発振する発振回路
(2)前記第1電極を上下方向に移動させる駆動部
(3)前記第1電極と液面とが非接触の第1状態における前記発振回路の発振周波数と、前記第1電極を下降させた第2状態における前記発振回路の発振周波数との差分が閾値を超えた場合に、液面を検知する検知部
(4)前記第1状態における前記発振回路の発振周波数と、予め用意された設定値とのずれ量を算出する算出部
(5)前記ずれ量に基づいて前記閾値又は前記発振回路の発振周波数を補正する補正部
【0011】
実施形態に係る液面検知装置によれば、前記第1状態における前記発振回路の発振周波数と予め用意された設定値とのずれ量に基づいて閾値又は発振回路の発振周波数を補正する。これによって、発振周波数が設定値からずれた場合であっても、補正部による補正によって、液面検知の精度を高めることができる。
【0012】
発振周波数は、発振回路の単位時間あたりの発振回数として計測されてもよく、発振回路が所定回数の発振を行うのに要する時間長として計測されてもよい。液面検知に使用される、第1状態における発振周波数と、補正に使用される、第1状態における発振周波数とは、同じタイミングで計測されても、異なるタイミングで計測されてもよい。
【0013】
実施形態に係る液面検知装置において、第1状態における発振回路の発振周波数が設定値より小さい場合に、補正部は、閾値を、予め用意された閾値設定値より大きくする補正を行うようにしてもよい。また、第1状態における発振回路の発振周波数が設定値より大きい場合に、補正部は、閾値を、予め用意された閾値設定値より小さくする補正を行うようにしてもよい。
【0014】
前記液面検知装置において、補正部は、下記の式、
閾値=補正係数(時間長の計測値−時間長の設定値)+閾値の設定値を用いて閾値を補正するようにしても良い。
【0015】
また、液面検知装置において、補正部は、時定数の算出に用いる静電容量の設定値Cと、発振回路の発振周波数の設定値Fと、第1状態における発振回路の発振周波数F’と、以下の式、
C’=C−C×(F/F’−1)
とを用いて時定数の算出に用いる静電容量をC’に変更する補正を行う様にしてもよい。
【0016】
また、液面検知装置において、補正部は、時定数の算出に用いる抵抗値の設定値Rと、発振回路の発振周波数の設定値Fと、第1状態における発振回路の発振周波数F’と、以
下の式、
R’=R−C×(1−F’/F)
とを用いて時定数の算出に用いる抵抗値をR’に変更する補正を行うようにしてもよい。
上述したF及びF’の双方とも、第1状態における発振回路の発振周波数を示す。Fは常温・常湿における固定の温度・湿度での発振周波数を想定しており、F’は高温・高湿又は低温・低湿における発振周波数を想定している。
【0017】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、本発明は実施形態の構成に限定されない。例えば、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。
【0018】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る液面検知装置を含む分析装置1の概略構成を示した斜視図である。分析装置1は、検体に対して所定の分析を行う装置である。なお、本実施形態では試薬パッドを用いた尿分析装置を例示して説明するが、それ以外の分析装置であってもよい。また、液面検知装置は分析装置以外の装置に実装されてもよく、単体の装置であってもよい。分析装置1の筐体2内に収容された制御部3と、載置部4と、ノズル10と、表示部18と、を備えている。載置部4には、液体の検体を収容した容器30(
図3参照)が載置される。ノズル10は、載置部4に載置された容器30から検体を吸引して採取し、試験紙に設置された複数の試薬パッドに検体を滴下(点着)する。なお、検体としては尿や血液及び体液を例示できる。また、検体容器には、採尿カップ、または、試験管(スピッツを含む)などを例示できる。
【0019】
試薬パッドに点着された検体について、分析装置1の内部に設置された光学系により特定波長での反射もしくは吸収などが測定され、その測定結果に基づく検査結果が表示部18に出力される。
【0020】
図2は、実施形態に係る分析装置1が備える制御系を説明する図である。制御部3には、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM
(Random Access Memory)13、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)14、およびインターフェイス回路(I/F)15を備えており、バ
ス線16により相互に接続されている。
【0021】
インターフェイス回路15には、表示部(ディスプレイ)18、操作部19、モータ駆動部21、ポンプ駆動部22、バルブ駆動部23、及び、液面検知部24が接続されている。
【0022】
CPU(central processing unit )11は、ROM(read only memory)12に格納されてRAM(random access memory)13に読み込まれたプログラムに基づいて動作し、分析装置1の全体を制御する。ROM12には、CPU11を動作させるためのプログラムやデータが格納されている。RAM13は、CPU11にワーク領域を提供するとともに、各種のデータやプログラムを一時的に記憶する。EEPROM14は、各種の設定データなどを記憶する。EEPROM14は、補助記憶装置の一例であり、EEPROM以外の不揮発性記憶媒体(ハードディスク、SSD(Solid State Drive)など)を適用
できる。インターフェイス回路15は、CPU11と各種回路との間の通信を制御する。
【0023】
表示部18は、LCD(liquid crystal display)や発光ダイオードなどを備えており、CPU11により制御されて各種の情報や検査結果などを表示する。操作部19は、キー、ボタン、スイッチなどを備えており、ユーザの操作に応じた操作信号をCPU11に
供給する。
【0024】
ノズル10は、モータ駆動部21によって水平方向および上下方向に移動させられる。液面検知部24は、容器30内の液面32を検知する。表示部18、操作部19、モータ駆動部21、バルブ駆動部23、及び、液面検知部24は、制御部3のCPU11によって制御される。
【0025】
容器30に収容されている検体(「液体」の一例である)31の液面32は、液面検知部24によって検知される。液面32は、以下のようにして検知することができる。例えば、
図3に示すように、ノズル10と接地された分析装置1の筺体2とを電極とするコンデンサC1を考える。ここでいう筐体2の壁面は、容器30を介してノズル10を対向している側壁面である。コンデンサC1の静電容量は、以下の式1で求められる。
静電容量=ε
0×ε
r×S/d ・・・(式1)
但し、ε
0は真空の誘電率であり、ε
rは比誘電率であり、Sは電極表面積であり、dは電極間距離である。
【0026】
比誘電率は物質に応じた値を採る。例えば、空気の比誘電率は約1.0であり、水の比誘電率は約80である。よって、ノズル10が液面32に接した場合の静電容量は、ノズル10が液面32と接する前の静電容量の80倍となる。このような静電容量の変化を捉えることで、液面を検知することができる。このようにノズルが液面に接すると静電容量が大きく変化するので、湿度や温度などの環境による影響は無視できると考えていた。しかし、液面の誤検知の発生原因について解析を行った結果、予想以上に環境要因の影響を受けていることを見出した。
【0027】
但し、静電容量を直接測定することは困難であるので、
図3に示したコンデンサC1をRC回路に含む発振回路(RC発振回路、CR発振回路ともいう)を用意し、発振回路の単位時間当たりの発振回数(発振周波数を含む)によって、静電容量の変化を捉える。
【0028】
なお、
図3に示す例では、ノズル10がコンデンサC1をなす二つの電極の一方(液面と接触可能な第1電極に相当)となり、接地された筐体2の壁面がコンデンサC1をなす二つの電極の他方(第2電極に相当)となる場合を例示している。但し、ノズル10以外の液面32と接触する部材が第1の電極として用いられてもよい。
【0029】
図4は、液面検知部24を含む液面検知装置の構成例を示す図であり、
図5は発振回路の一例を示す。液面検知部24は、CPU41と、発振回路42と、CPU41と接続されたメモリ45とを含む。
【0030】
図5に示すように、発振回路42はコンパレータ43を含む。コンパレータ43は、入力であるA点の電圧とB点の電圧を比較する。A点の電圧がB点の電圧より低い場合には、コンパレータ43(発振回路42)の出力V
outは0[V]となり、A点の電圧がB点の
電圧より高い場合には、コンパレータ43(発振回路42)の出力V
outは電源電圧V
cc[V]となる。
【0031】
抵抗素子R4及びコンデンサC1はRC回路44を構成しており、発振回路42の出力V
outは、抵抗素子R4の抵抗値とコンデンサC1の静電容量とで決まる時定数τ(τ=
抵抗×静電容量)に従った発信周波数の発振波形(以下、パルスという)となる。コンデンサC1は、
図3に示したコンデンサC1であり、コンデンサC1を形成する一方の電極はノズル10に設けられ、他方の電極は筐体2に設けられている。ノズル10が液面32と接触すると、コンデンサC1の静電容量が増大することで、時定数τが大きくなり、発振周波数(単位時間当たりの発振回数)が減少する。発振回路42から出力されるパルス
は、CPU41に入力される。
【0032】
CPU41は、メモリ45に記憶されたプログラムを実行することによって、液面検知処理(検体検知処理ともいう)を行う。実施形態に係る液面検知処理では、発振周波数として、発振回路から出力される所定数のパルスの時間長(すなわち、発振回路が所定回数の発振を行うのに要する時間長)を計測し、計測値に基づいて閾値の補正を行う。このため、液面検知処理は、所定数のパルスの時間長を計測する処理、所定数のパルスの時間長と閾値とを用いて液面(検体)を検知する処理、閾値を補正する処理などを行う。すなわち、CPU41は、プログラム実行によって、計測部、検知部、算出部、補正部として動作する。
【0033】
メモリ45は、プログラム及びデータを記憶した記憶媒体であり、データとして、例えば、それぞれ予め用意された、所定数のパルスの時間長の設定値(以下「時間長設定値」と称する)と、閾値の設定値(以下「閾値設定値」と称する)などを記憶している。
【0034】
時間長設定値は、環境条件や測定位置などを固定した基準条件下においてノズル10(第1電極)と液面32とが非接触の場合(第1状態に相当)に発振回路42から出力された所定数のパルスの時間長を示す。所定数のパルスの時間長は、時間単位(秒など)で表現されてもよいが、ここではその時間長を単位時間長で割った値(すなわち、所定数のパルスの時間長に含まれる単位時間長の個数)によって表記する。所定数及び単位時間長は適宜選択可能である。
【0035】
所定数のパルスの時間長は、単位時間当たりの発振回数(発振周波数)に依存し、発振回数(発振周波数)が小さくなるほど大きくなる。閾値設定値は、ノズル10と液面32との接触により増加する所定数のパルスの時間長と、基準である時間長設定値とを考慮して決定される。すなわち、発振回数の変化量に相当する、所定数のパルスの時間長と時間長設定値との差分が、閾値設定値以上であることを以て液面32が検知される。
【0036】
CPU41は、一例として、以下のようにして、液面検知の開始時における所定数のパルスの時間長を計測する。計測は、上述したように、所定数のパルスの時間長に含まれる単位時間長の個数をカウントすることにより行われる。CPU41は、発振回路42から所定数のパルスの抽出をn回繰り返す。nは例えば5であるが、nの値は、5より多くても少なくても良く、1以上の値を適宜設定可能である。n回分の単位時間長の個数のカウント値のうち、最大のカウント値と最小のカウント値とを廃棄し、残りのカウント値の平均値を第1の時間長として求める。なお、1回分のカウントにて得られた単位時間長の個数を第1の時間長とする場合もあり得る。nが2回の場合に平均値を第1の時間長とする場合もあり得る。nが3回のときに、カウント値の最小値と最大値を除いたものを第1の時間長とする場合もあり得る。なお、第1の時間長は「前記第1の電極と前記液面とが非接触の第1状態における前記発振回路の発振周波数」に相当する。
【0037】
CPU41は、液面検知処理の開始及び終了を、ノズル10の動作を制御するCPU11からの指示に従って行う。CPU11は、図示しないモータの回転量を含むノズル10の制御量データをノズルユニット31に供給する。ノズルユニット31は、モータ駆動部21(駆動部に相当)、モータ(図示せず)、ノズル10のアクチュエータ(図示せず)、及びノズル10などを含んでいる。モータ駆動部21は、CPU11から供給される制御量に従ってモータ及びアクチュエータを駆動させ、ノズル10を上下方向及び水平方向に移動させ、所定の位置に配置する。なお、液面検知部24は、CPU11とノズルユニット31と同じ装置内に備えられるものであっても、CPU11及びノズルユニット31を備える装置に、後付けで取り付けられるものであってもよい。CPU11、ノズルユニット31及び液面検知部24が同じ装置内に備えられる場合では、CPU11が行う処理
とCPU41が行う処理とが同じCPU(プロセッサ)にて行われるようにしてもよい。第1電極をノズル10に取り付けて、ノズル10と共に第1電極が上下動するようにしてもよい。
【0038】
図6は、液面検知処理の一例を示すシーケンス図である。CPU11(第1CPU)は、液面検知処理の開始に当たって、モータ駆動部21を制御して、ノズル10の下端が容器30の液面32に対向する位置に移動させる。CPU11は、液面検知処理の開始指示をCPU41(第2CPU)に供給する(
図6<1>)。液面検知処理の開始信号を受けたCPU41は、上述した手法で第1の時間長を算出する(
図6<2>)。CPU11は、ノズル10の下降速度を増加させながら、ノズル10を下降させる(
図6<3>)。一定時間が経過すると、CPU11は、ノズル10が一定の速度で下降するように下降速度を変更する(
図6<4>)。なお、<2>の第1の時間長の測定タイミングは、ノズル10が液面に接触する前であれば、上記したノズル10の下降開始前であってもよく、ノズル10の下降中(液面32との接触前)であってもよい。例えば、ノズルの先端が容器30の上端に達する時点で第1の時間長を測定してもよい。
【0039】
続いて、CPU41は、閾値補正及び第2の時間長の計測処理を行う(
図6<5>)。そして、CPU41は、第1の時間長の計測後に計測する第2の時間長と閾値を用いて、液面(検体)の有無を判定する(
図6<6>)。
【0040】
図7は、CPU11及びCPU41の処理の詳細を示すフローチャートであり、
図8は、閾値の補正の説明図である。CPU41は、CPU11から液面検知処理の開始信号(開始指示)を受信する(S01)。開始信号の受信を契機に、CPU41は第1の時間長の計測を行う(S02)。
【0041】
CPU41は、液面検知閾値の演算を行う(S03)。すなわち、CPU41は、S02で計測した第1の時間長と、メモリ45に予め用意され、メモリ45から読み出した時間長設定値及び閾値設定値とから、液面検知判定に用いる閾値(液面検知閾値という)を算出する。CPU41は、以下の式2を用いて液面検知閾値を算出する。
液面検知閾値=
補正係数×(第1の時間長−時間長設定値)+閾値設定値・・・(式2)
但し、式2において、補正係数、時間長設定値、及び閾値設定値は定数である。式2における“(第1の時間長−時間長設定値)”は、「発振周波数に係る値の測定値と発振周波数に係る値の設定値とのずれ量」に相当する。なお、第1の時間長、時間長設定値、及び閾値設定値の単位は「個」である。もっとも、第1の時間長、時間長設定値、及び閾値設定値は、個数に単位時間長を乗じた時間の単位[sec]で表現されてもよい。このように
、第1の時間長は、液面検知閾値の算出に使用される、「前記第1の電極と前記液面とが非接触の状態で測定された前記発振周波数に係る値の測定値」の一例でもある。但し、第1の時間長と異なるタイミングで計測された時間長が液面検知閾値の補正に使用されてもよい。
【0042】
例えば、補正係数=−0.5、閾値設定値=50[個]、時間長設定値=100[個]と仮定する。この場合に第1の時間長の測定値が例えば90であれば、液面検知閾値は55[個]となる。これに対し、第1の時間長が例えば120であれば、液面検知閾値は40[
個]となる。このように、第1の時間長が時間長設定値より小さい場合には、液面検知閾
値が閾値設定値より大きい値に補正される。また、第1の時間長が時間長設定値より大きい場合には、液面検知閾値が閾値設定値より小さい値に補正される。このようにして、予め用意された時間長設定値と実際に測定された時間長である第1の時間長との差分を閾値の増減により吸収する。なお、閾値の補正範囲には許容範囲が設定されている。
図8の例では、閾値の上限値と下限値とが閾値設定値の±50%(許容範囲係数1)となるように
基準閾値の補正範囲を定めている。但し、許容範囲係数x(0<x≦1)の採り方は適宜設定可能である。閾値の補正が許容範囲を超えた場合は、補正を行わず、エラーと判断し、その旨を表示部18に出力するなどしてユーザに報知してもよい。
【0043】
図7に戻って、液面検知閾値を算出したCPU41は、液面検知が継続中か否かを判定する(S04)。この判定は、CPU41がCPU11からの液面検知の終了信号を受信しているか否かを以て行うことができる。或いは、CPU41がCPU11から液面検知の指示(液面検知開始信号と同じ)を継続的に受信しているか否かを以て判定することもできる。液面検知が継続中でないと判定される場合、CPU41は検体(液面32)なしと判定する。
【0044】
液面検知が継続中と判定したCPU41は、発振回路42の出力から所定数のパルスを計測し、これらの所定数のパルスの時間長を単位時間長で割った値(第2の時間長)を算出する(S05)。第2の時間長は「前記第1電極を下降させた第2状態における前記発振回路の発振周波数」に相当する。
【0045】
S06では、CPU41は、第1の時間長と第2の時間長との差分(第2の時間長から第1の時間長を減じた値)が液面検知閾値以上になったか否かを判定する。この判定は、例えば、以下の式3を用いて判定する。
第2の時間長≧第1の時間長+液面検知閾値・・・(式3)
【0046】
すなわち、CPU41は、第1の時間長の計測後に計測した第2の時間長が第1の時間長と液面検知閾値との和以上になっているか否かを判定する。ノズル10が液面32と接触すると、コンデンサC1の静電容量が増大するため、時定数τの値が大きくなり、単位時間あたりの発振回数が減少する。すなわち、第2の時間長が増大する。
【0047】
S06において第2の時間長と第1の時間長との差が液面検知閾値以上であると判定される場合には(S06のYes)、CPU41は処理をS07に進め、そうでない場合には(S06のNo)、CPU41は処理をS04に戻す。S07では、CPU41は、第2の時間長と第1の時間長との差が液面検知閾値以上であることを検知してから一定時間が経過したか否かを判定する。一定時間が経過したと判定される場合には(S07のYes)、CPU41は検体(液面32)ありと判定し、そうでない場合には(S07のNo)、CPU41は処理をS04に戻す。このように、第2の時間長と第1の時間長との差が液面検知閾値以上となった状態が一定時間継続する場合に、検体(液面)ありと判定される。なお、S04〜S07のループは、上述したS06及びS07の条件が満たされるか、またはS04で液面検知が継続中でないと判定されるまで繰り返される。なお、
図7の処理では、一定時間の継続を待って検体(液面32)検知と判定しているが、一定時間の継続を待たずして検体(液面)検知と判定してもよい。
【0048】
図6に戻って、CPU41が検体(液面32)あり、と判定する場合には、CPU41は、検体ありを示す信号をCPU11に送る。CPU11は、検体ありの信号を受信する(
図6<7>)。すると、CPU11は、ノズル10の下降速度の減速を開始し(
図6<8>)、所定時間経過後にノズル10の下降を停止し(
図6<9>)、液面検知処理の終了信号をCPU41へ送る(
図6<10>)。CPU41は、終了信号を受けて液面検知処理を終了する。その後CPU11は、ノズル10の吸引による検体(液体)の採取等、分析のための所定の制御を行う。
【0049】
基準条件下で測定すれば、所定数のパルスの時間長は一定であるが、湿度や温度などの周辺環境の影響により変動する。実施形態に係る液面検知装置によれば、液面検知閾値が第1の時間長と時間長設定値との差に応じて補正されるので、液面検知装置が置かれた場
所の温度や湿度によって発振回路42の発振周波数にずれが生じていても、そのずれを吸収し、精度の良い液面検知を行うことができる。
【0050】
<変形例1>
上述した実施形態では、所定数のパルスを抽出し、所定数のパルスの時間長(発振回路が所定回数の発振を行うのに要する時間長)を、「発振周波数」として計測していた。この所定数のパルスの時間長は発振回路42の単位時間あたりの発振回数(発振周波数)に依存する。このため、所定のパルスの時間長の代わりに、単位時間あたりの発振回数を、発振周波数として計測することができる。
【0051】
例えば、CPU41が、第1の時間長の代わりに、所定のタイミング(例えば液面検知処理の開始時)における単位時間当たりの発振回数を第1の発振回数(第1状態における発振回路の発振周波数に相当)として求め、その後の単位時間当たりの発振回数を第2の発振回数(第2状態における発振回路の発振周波数に相当)として求め、第1の発振回数と第2の発振回数との差分が液面検知閾値以上の場合に(|第1の発振回数−第2の発振回数|≧液面検知閾値)、液面を検知するようにしても良い。第1の発振回数は、n回単位時間あたりの発振回数を求め、最大値と最小値とを廃棄し、残りの発振回数の平均値を求めることで得ても良い。変形例1では、時間長設定値の代わりに、発振回数設定値がメモリ45に予め用意される。液面検知閾値は、“液面検知閾値=補正係数×(第1の発振回数−発振回数設定値))+基準閾値”の式によって求める。但し、液面検知閾値の算出に用いる発振回数の測定値は、第1の発振回数の測定タイミングと同じタイミングで測定されたものであっても、異なるタイミングで測定されたものであってもよい。要は、ノズル10(第1の電極)と液面32とが非接触の状態で測定された単位時間あたりの発振回数であればよい。
【0052】
<変形例2>
実施形態及び変形例1では、閾値設定値の補正により得られた液面検知閾値を用いて液面32の検知を行っている。閾値を補正する構成に代えて、発振周波数の補正を行い、閾値設定値を固定的に使用することが考えられる。この場合、例えば、発振回路42に含まれるRC回路の静電容量や抵抗値を変更することにより発振周波数が補正されるようにする。
【0053】
例えば、発振回路42の発振周波数の設定値である設定発振周波数は、以下の式4で表すことができる。
F=1/A×R×C・・・(式4)
但し、Aは定数、Rは抵抗値、Cは静電容量である。
【0054】
湿度や温度変化などによって、実際の発振周波数F’が設定発振周波数Fからずれる場合、静電容量は、CからC+δCとなる。発振周波数F’は以下の式5で表される。
F’=1/A×R×(C+δC)・・・(式5)
発振周波数F’は、RC回路の静電容量を変更する方法(第1の方法)と抵抗値を変更する方法(第2の方法)とのいずれかにより補正することができる。
【0055】
(第1の方法)
発振周波数F’と発振周波数設定値Fとの比は以下の式6で表現される。
F’/F={1/A×R×(C+δC)}×{A×R×C/1}
=C/(C+δC)・・・(式6)
式6より、静電容量Cを以下の式7で表されるC’に変更する。具体的には、発振回路42中のRC回路44をなすコンデンサC1(
図5)の電極間の誘電体の変更等によってコンデンサC1の静電容量をC’に変更する操作を行い、周波数を補正する。これにより、
発振周波数のずれをなくすことができ、閾値設定値の変更なく、第1及び第2の測定値の差分が閾値設定値以上となるかの判定によって液面32の検知を行うことができる。
C’=C−δC=C−C×(F/F’−1)・・・(式7)
【0056】
(第2の方法)
抵抗値で補正する場合、発振周波数の比F’/Fについて以下の式8が満たされることを要する。
F’/F={1/A×(R−δR)×(C+δC)}×(A×R×C/1)=1・・・(式8)
このとき、以下の式9が成立すれば良い。
C/(C+δC)=R−δR/R・・・(式9)
ここで、δC=C×(F/F’−1)であるから、抵抗Rを以下の式10で表されるR’に変更する。例えば、発振回路42中のRC回路44をなす抵抗素子R4(
図5)に可変抵抗を適用し、抵抗素子R4の抵抗値を変更することで、抵抗値R’への変更を行うことができる。
R’=R−δR=R−R×(1−F’/F)・・・(式10)
これにより、第1の方法と同等の効果を得ることができる。以上説明した実施形態及び変形例1及び2で説明した構成は適宜組み合わせることができる。