(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、1型糖尿病、脈管炎、橋本病、シェーグレン症候群、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、痛風、ベーチェット病、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、特発性血小板減少紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、多発関節炎(イヌ)、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血およびヴェーゲナー肉芽腫症からなる群から選択される自己免疫性疾患の治療または予防のための、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を以下に詳細に記載する前に、本明細書に記載される特定の方法、プロトコールおよび試薬は異なることがあるので、本発明はそれらに限定されないことを理解すべきである。本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載するためのみであり、添付の請求項のみによって限定される本発明の範囲を限定するものではないことも理解すべきである。特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書で用いられる1文字および3文字のアミノ酸略記号は、IUPAC命名法に対応する(例えば、European Journal of Biochemistry, 138:9-37, 1984を参照する)。
【0027】
以下の定義が導入される:
本明細書および意図する請求項で用いられるように、内容が明らかに別途指示しない限り、「a」および「an」の単数形にはそれぞれの複数形も含まれる。
【0028】
用語「含む」ならびに「含む」および「含んでいる」などの変形は、限定するものではないことを理解すべきである。本発明のために、用語「からなる」は、用語「含む」の好ましい実施形態であるとみなされる。以降で群が少なくともある特定の数の実施形態を含むと規定されるならば、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も包含することを意味する。
【0029】
本発明の文脈において用語「約」および「概ね」は、問題の特長の技術的効果をなお保証すると当業者が理解する精度の間隔を表す。この用語は、示された数値からの±10%および好ましくは±5%の偏差を一般的に包含する。
【0030】
本明細書で用いる用語「ペプチド」はアミノ酸の分子鎖を指し、生成物の特定の長さを指さない;したがって、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質はペプチドの定義の中に含まれる。定義によるペプチドは、天然に存在するペプチド、および天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸を含むことができる合成ペプチドの両方であってもよい。定義には、ペプチドの機能的誘導体、すなわち、例えば、好ましくはそれぞれのアミノ酸の同一性を変更することなく、天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸の側鎖、遊離のアミノおよび/またはカルボキシ末端を改変することによって化学改変されているペプチドがさらに含まれる。例えば、ペプチドのアミノ酸の側鎖または遊離のアミノもしくはカルボキシ末端は、例えばグリコシル化、アミド化、リン酸化、ユビキチン化、カルボキシル化などによって改変することができる。好ましい実施形態では、本発明によるペプチドは、PEG化、HES化またはPAS化によって改変することができる。
【0031】
本明細書に開示される化合物は、驚くべきことに、他のカリウムチャネル、例えばKv1.1、Kv1.2、Kv1.5、Kv1.6、IKCa1、hERGまたは大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル(BKチャネル)以上にKv1.3カリウムチャネルに選択的に結合することが可能であることが本発明の発明者によって見出された。T
EM細胞中のKv1.3の保有率を考慮すると、本発明による化合物は、したがって例えば自己免疫性疾患などのT
EM細胞媒介性疾患のための強力な治療剤となる。さらに、開示される化合物は、他のタイプの細胞または組織に分布する他のカリウムチャネルの活性を実質的にモジュレートしないので、副作用の低減という利点を提供する。
【0032】
したがって、本発明は、例えばKv1.1などの他のカリウムチャネル以上にKv1.3カリウムチャネルに選択的に結合することが可能である化合物に一般に関する。そのような化合物は、自己免疫性疾患の治療または予防での使用が企図される。そのような化合物は、ペプチド、抗体または小分子からなる群から選択することができる。特に好ましい実施形態では、前記化合物は、本発明の第1、第2および第3の態様のために記載されるペプチドおよびその変異体である。
【0033】
カリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であってもよい。一部の実施形態では、抗体は、抗体変異体または断片、例えば単鎖抗体、ダイアボディ、ミニボディ、単鎖Fv断片(sc(Fv))、sc(Fv)
2抗体、Fab断片またはF(ab’)
2断片から選択することもできるが、ただし前記抗体変異体または断片はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0034】
本明細書で用いる用語「小分子」は、低分子量を有する小さい有機化合物を指す。
【0035】
小分子は、天然に存在することが知られていない合成化合物、または天然の供給源、例えば細胞、植物、真菌、動物などから単離されるかもしくはそれに存在することが知られている天然に存在する化合物であってもよい。本発明の文脈において小分子は、好ましくは5000ダルトン未満、より好ましくは4000ダルトン未満、より好ましくは3000ダルトン未満、より好ましくは2000ダルトン未満、さらにより好ましくは1000ダルトン未満の分子量を有する。特に好ましい実施形態では、本発明の文脈において小分子は、800ダルトン未満の分子量を有する。
【0036】
別の好ましい実施形態では、本発明の文脈において小分子は、50から3000ダルトン、好ましくは100から2000ダルトン、より好ましくは100から1500ダルトン、さらにより好ましくは100から1000ダルトンの分子量を有する。本発明の文脈において最も好ましい小分子は、100から800ダルトンの分子量を有する。
【0037】
カリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能な小分子は、例えば小化合物ライブラリーをスクリーニングすることによって識別することができる。
【0038】
したがって、第1、第2および第3の態様およびその変形の本発明は、カリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能であるペプチド化合物に関する。好ましくは、前記化合物は、他のカリウムチャネル、例えばKv1.1、Kv1.2、Kv1.5、Kv1.6、IKCa1、hERGまたは大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル(BKチャネル)以上にカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。特に好ましい実施形態では、本発明による化合物は、カリウムチャネルKv1.1以上にカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0039】
第1の態様では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−X
3−N−V−X
4−C−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−C−X
10−X
11−X
12−C−X
13−X
14−X
15−T−G−C−P−X
16−X
17−K−C−M−N−R−K−C−X
18−C−X
19−X
20−C(配列番号23)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=T、Q、S、Y、N;X
2=I、F、V、A、L、W;X
3=I、T、Y、S、V、A、L;X
4=K、S、T、Y、R;X
5=R、T、K、S、Y;X
6=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
7=P、S、T;X
8=R、K、P;X
9=D、Q、N、E;X
10=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
11=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
12=P、H、V、I、L、A;X
13=R、K、Q、N;X
14=K、D、A、R、E、V、L、I;X
15=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
16=Y、N、S、T、Q;X
17=A、G、V、I、L;X
18=K、R、X
19=Y、N、Q、T、SおよびX
20=G、R、Kである。
【0040】
第1の態様の変形では、本発明は、配列番号23によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=T、Q、S、Y、N;X
2=I、F、V、A、L、W;X
3=I、T、Y、S、V、A、L;X
4=K、S、T、Y、R;X
5=R、T、K、S、Y;X
6=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
7=P、S、T;X
8=R、K、P;X
9=D、Q、N、E;X
10=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
11=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
12=P、H、V、I、L、A;X
13=R、K、Q、N;X
14=K、D、A、R、E、V、L、I;X
15=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
16=Y、N、S、T、Q;X
17=A、G、V、I、L;X
18=K、R、X
19=Y、N、Q、T、SおよびX
20=G、R、Kであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0041】
第1の態様の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−X
3−N−V−X
4−C−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−C−X
10−X
11−X
12−C−X
13−X
14−X
15−T−G−C−P−X
16−X
17−K−C−M−N−R−K−C−X
18−C−X
19−X
20−C(配列番号24)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=T、Q;X
2=I、F;X
3=I、T;X
4=K、S;X
5=R、T、K;X
6=T、G、S、N、I;X
7=P、S;X
8=R、K、P;X
9=D、Q、N、E;X
10=A、Y、I、L、W;X
11=D、R、P、K、E、S;X
12=P、H、V;X
13=R、K、Q;X
14=K、D、A、R;X
15=E、Q、A、L;X
16=Y、N;X
17=A、G;X
18=K、R、X
19=Y、NおよびX
20=G、Rである。
【0042】
第1の態様の変形の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号24によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=T、Q;X
2=I、F;X
3=I、T;X
4=K、S;X
5=R、T、K;X
6=T、G、S、N、I;X
7=P、S;X
8=R、K、P;X
9=D、Q、N、E;X
10=A、Y、I、L、W;X
11=D、R、P、K、E、S;X
12=P、H、V;X
13=R、K、Q;X
14=K、D、A、R;X
15=E、Q、A、L;X
16=Y、N;X
17=A、G;X
18=K、R、X
19=Y、NおよびX
20=G、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0043】
第1の態様およびその変形のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号25(cgtx−544)または配列番号26(cgtx547)のアミノ酸配列を含むかそれからなる。この文脈において、第1の態様およびその変形の別のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号25(cgtx−544)と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の百分率同一性を有するアミノ酸配列を含むかそれからなる。2つの配列間のパーセント同一性の決定は、好ましくはKarlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci USA 90: 5873-5877の数学アルゴリズムを用いて遂行される。そのようなアルゴリズムは、例えばNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cge)で入手可能なAltschul et al. (1990) J. MoI. Biol. 215: 403-410のBLASTnおよびBLASTpプログラムに組み込まれる。パーセント同一性の決定は、好ましくはBLASTnおよびBLASTpプログラムの標準パラメータで実施される。BLASTポリヌクレオチド検索は、好ましくはBLASTnプログラムで実施される。一般的なパラメータについては、「最大ターゲット配列」ボックスを100に設定し、「ショートクエリー」ボックスをチェックし、「予想閾値」ボックスを10に設定し、「ワードサイズ」ボックスを28に設定することができる。スコアリングパラメータについては、「マッチ/ミスマッチスコア」を1、−2に設定し、「ギャップコスト」ボックスを直線に設定することができる。フィルターおよびマスキングパラメータについては、「低複雑性領域」ボックスをチェックしてはならず、「種特異的反復配列」ボックスをチェックしてはならず、「ルックアップテーブルのためだけのマスク」ボックスをチェックすることができ、「小文字をマスクする」ボックスをチェックしてはならない。BLASTタンパク質検索は、好ましくはBLASTpプログラムで実施される。一般的なパラメータについては、「最大ターゲット配列」ボックスを100に設定し、「ショートクエリー」ボックスをチェックし、「予想閾値」ボックスを10に設定し、「ワードサイズ」ボックスを「3」に設定することができる。スコアリングパラメータについては、「マトリックス」ボックスを「BLOSUM62」に設定し、「ギャップコスト」ボックスを「Existence:11 Extension:1」に設定し、「構成調整」ボックスを「条件付き構成スコアマトリックス調整」に設定することができる。フィルターおよびマスキングパラメータについては、「低複雑性領域」ボックスをチェックしてはならず、「ルックアップテーブルのためだけのマスク」ボックスをチェックしてはならず、「小文字をマスクする」ボックスをチェックしてはならない。
【0044】
第1の態様およびその変形のさらにより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号25(cgtx−544)のアミノ酸配列を含むかそれからなる。
【0045】
以降記載される実施形態は、好ましくは本発明の第1の態様およびその変形の化合物を指す。しかし、これらの実施形態、例えば以降考察されるペプチドの長さ、Kv1.3対Kv1.1への選択性などが、後述するように、本発明の第2および第3の態様およびそれらの変形ならびにそれらの好ましい実施形態の化合物にも適用されることを理解する必要がある。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、本発明による化合物は、ペプチドである。
【0047】
本発明による化合物がペプチドである場合は、本発明による化合物は、好ましくは1000アミノ酸未満、500アミノ酸未満、200アミノ酸未満、好ましくは150アミノ酸未満、100アミノ酸未満、90アミノ酸未満、80アミノ酸未満、70アミノ酸未満、60アミノ酸未満、50アミノ酸未満または40アミノ酸未満の長さを有する。
【0048】
さらに好ましい実施形態では、本発明による化合物は、少なくとも20から1000の間のアミノ酸、好ましくは少なくとも25から500の間のアミノ酸、より好ましくは少なくとも30から200の間のアミノ酸、より好ましくは少なくとも34から150の間のアミノ酸、より好ましくは少なくとも34から100の間のアミノ酸、より好ましくは少なくとも34から90の間のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも34から80の間のアミノ酸、少なくとも34から70の間のアミノ酸、34から60の間のアミノ酸、34から50の間のアミノ酸または34から40の間のアミノ酸の長さを有する。
【0049】
より好ましい実施形態では、本発明による化合物は、示されるアミノ酸配列から本質的になる。
【0050】
本発明による化合物に含まれるアミノ酸は、L−またはD−アミノ酸であってもよい。好ましくは、本発明による化合物に含まれるアミノ酸は、L−アミノ酸である。一部の実施形態では、特に、タンパク質分解への高い抵抗性が所望される場合には、D−アミノ酸が好ましいことがある。
【0051】
異なるカリウムチャネルの活性を同時に阻害する化合物は、異なるタイプの細胞に異なるカリウムチャネルが差異的に分布しているために、生体に適用された場合にかなりの副作用を及ぼす可能性がある。したがって、本発明は、他のカリウムチャネルと比較して、特にカリウムチャネルKv1.1と比較してカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である化合物を提供する。
【0052】
本明細書で用いる用語「選択的に結合する」は、他のイオンチャネル以上の、特に、例えばKv1.1、Kv1.2、Kv1.5、Kv1.6、IKCa1、hERGまたは大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル(BKチャネル)のような他のカリウムチャネル以上の、Kv1.3チャネルへの本発明による化合物の優先的結合を指す。
【0053】
好ましくは、本発明による化合物は、カリウムチャネルKv1.1以上にカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。この場合、本発明による化合物は、Kv1.1チャネルによりもかなり高い親和性でKv1.3チャネルに結合する。
【0054】
本発明の文脈において、毒素HsTx1は同様にKv1.1チャネルに結合して強力に阻害するので、カリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である化合物と考えられていない。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明によりKv1.3に選択的に結合する化合物は、前記化合物がKv1.1チャネルに結合するときのK
d値と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、2000倍、好ましくは少なくとも3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000または10000倍低いK
d値でカリウムチャネルKv1.3に結合する。さらに好ましい実施形態では、本発明によりKv1.3に選択的に結合する化合物は、前記化合物が他のカリウムチャネル、例えばKv1.1、Kv1.2、Kv1.5、Kv1.6、IKCa1、hERGまたは大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル(BKチャネル)に結合するときのK
d値と比較して少なくとも4000、5000または10000倍低いK
d値でカリウムチャネルKv1.3に結合する。
【0056】
特に好ましい実施形態では、本発明によりKv1.3に選択的に結合する化合物は、前記化合物がKv1.1チャネルに結合するときのK
d値と比較して少なくとも4000、5000または10000倍低いK
d値でカリウムチャネルKv1.3に結合する。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明による化合物は、一般的に約0.1nMから約250nMの間、約0.5nMから約250nMの間、約1nMから約225nMの間、約1nMから約200nMの間、さらにより好ましくは約1nMから約100nMの間、最も好ましくは約1nMから約50nMの間のK
d値でカリウムチャネルKv1.3に結合する。
【0058】
本発明による化合物は、他のカリウムチャネル、例えばKv1.1、Kv1.2、Kv1.5、Kv1.6、IKCa1、hERGまたは大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル(BKチャネル)に、好ましくは0.1mMを超える、0.2mMを超える、0.3mMを超える、0.4mMを超えるまたは0.5mMを超えるK
d値で結合する。特に好ましい実施形態では、本発明による化合物は、0.1mMを超える、0.2mMを超える、0.3mMを超える、0.4mMを超えるまたは0.5mMを超えるK
d値でKv1.1チャネルに結合する。
【0059】
したがって、本発明による化合物は、好ましくは約0.5から約200nMの間、例えば約1または2nMから約200nMの間のK
d値でカリウムチャネルKv1.3に結合し、0.1mMを超える、0.2mMを超える、0.3mMを超える、0.4mMを超えるまたは0.5mMを超えるK
d値でKv1.1チャネルに結合する。より好ましくは、本発明による化合物は、約0.5から約100nMの間、例えば約1または2nMから約100nMの間のK
d値でカリウムチャネルKv1.3に結合し、0.1mMを超える、0.2mMを超える、0.3mMを超える、0.4mMを超えるまたは0.5mMを超えるK
d値でKv1.1チャネルに結合する。さらにより好ましくは、本発明による化合物は、約0.5から約50nMの間、例えば約1または2nMから約50nMの間のK
d値でカリウムチャネルKv1.3に結合し、0.5mMを超えるK
d値でKv1.1チャネルに結合する。
【0060】
本発明による化合物は、好ましくはカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合して、その活性を遮断または低減することが可能である。本発明による化合物は、カリウムチャネルKv1.3の活性を、対照と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%低減することができる。一部の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、カリウムチャネルKv1.3の活性を100%遮断することができる。
【0061】
Kv1.3チャネルに選択的に結合してその活性を遮断または低減する本発明による化合物の能力は、当技術分野で公知のアッセイによって試験することができる。例えば、1つの手法では、Kv1.3または別のカリウムチャネル、例えばKv1.1、Kv1.2、Kv1.5、Kv1.6、IKCa1、hERGまたは大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル(BKチャネル)を発現する哺乳動物の細胞株は、本発明の化合物と接触させることができ、チャネル電流は、例えばGrissmer et al. (Mol Pharmacol 45; 1227-34 (1994))または下で本明細書の実施例の項において記載されるパッチクランプ方法によって測定することができる。各化合物は、例えば異なる濃度で試験することができる。本発明による化合物のK
d値は、次に、例えば、ピーク電流の測定された低減にヒル式をあてはめることによって決定することができる。
【0062】
例えば実施例2に記載されるK
dを決定するための方法は、測定されるチャネル数を考慮しないことを理解すべきであり、これが理由で、本開示の目的ではK
dがIC50値に対応し、それにより用語K
dおよびIC50が本明細書で同義的に用いられる。不完全に折り畳まれたペプチドを含む混合物に対して完全に折り畳まれて精製されたペプチドが用いられる場合に、より低いK
d値を観察することができることを理解すべきである(実施例2を参照する)。
【0063】
一部の実施形態では、本発明による化合物は、そのN末端アミノ基またはそのC末端カルボキシ基に結合している、T
EM細胞を認識して標的とすることが可能である抗体または他の分子を有することができる。
【0064】
本発明の化合物は、当技術分野で公知の技術を用いて調製することができる。例えば、ペプチドは、例えばMeienhofer et al. (J. Peptide Prot. Res. 13; 35 (1979))およびFields, et al., Peptide Res. 4; 95 (1991))によってその後改変された、Merrifield (J. Am. Chem. Soc. 85; 7129 (1963))によって最初に記載された原理による固相Fmoc化学を用いて合成することができる。そのような合成は、例えば自動ペプチド合成装置で実行することができる。合成されたならば、配列は自動ペプチドシーケンサーを用いて検証することができる。
【0065】
本発明の文脈において記載されるカリウムチャネル、例えばカリウムチャネルKv1.1、Kv1.2、Kv1.3、Kv1.5、Kv1.6、IKCa1、hERGまたは大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル(BKチャネル)は、当技術分野で周知である。したがって、平均的な当業者は、これらのチャネルのポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列ならびにそのオルソログおよびスプライスアイソフォームを、任意の適する公開データベースから、例えばNCBIデータベース(例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/)から容易に検索することができる。
【0066】
第2の態様では、本発明は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号1)
を含むかそれからなる化合物に関し、式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、L;X
16=K、R、X
17=Y、N、Q、T、SおよびX
18=G、R、Kである。
【0067】
好ましい実施形態では、前記化合物はHsTx 1(配列番号32)でない。
【0068】
第2の態様の変形では、本発明は、配列番号1によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、L;X
16=K、R、X
17=Y、N、Q、T、SおよびX
18=G、R、Kであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0069】
好ましい実施形態では、前記化合物はHsTx 1でない。
【0070】
第2の態様の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号2)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、G;X
16=K、R、X
17=Y、NおよびX
18=G、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0071】
好ましい実施形態では、前記化合物はHsTx1でない。
【0072】
第2の態様の変形の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号2によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、G;X
16=K、R、X
17=Y、NおよびX
18=G、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0073】
好ましい実施形態では、前記化合物は、HsTx1でない。
【0074】
第2の態様の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−X
15−X
16−C(配列番号3)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=K、R、X
15=Y、N、Q、T、SおよびX
16=G、R、Kである。
【0075】
第2の態様の変形の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号3によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=K、R、X
15=Y、N、Q、T、SおよびX
16=G、R、Kであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0076】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−X
15−X
16−C(配列番号4)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=K、R、X
15=Y、NおよびX
16=G、Rである。
【0077】
第2の態様の変形のより好ましい実施形態では、本発明は、配列番号4によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=K、R、X
15=Y、NおよびX
16=G、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0078】
第2の態様の別の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−Y−G−C(配列番号5)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、LおよびX
16=K、Rである。
【0079】
第2の態様の変形の別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号5によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、LおよびX
16=K、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0080】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−Y−G−C(配列番号6)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、GおよびX
16=K、Rである。
【0081】
第2の態様の変形のより好ましい実施形態では、本発明は、配列番号6によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、GおよびX
16=K、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0082】
第2の態様の別の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−Y−G−C(配列番号7)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、IおよびX
14=K、Rである。
【0083】
第2の態様の変形の別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号7によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、IおよびX
14=K、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0084】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−Y−G−C(配列番号8)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、LおよびX
14=K、Rである。
【0085】
第2の態様の変形のより好ましい実施形態では、本発明は、配列番号8によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、LおよびX
14=K、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0086】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号9(cgtx538)によるアミノ酸配列を含むかそれからなる。
【0087】
第2の態様の別の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−Q−C−X
7−R−X
8−C−X
9−X
10−Q−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号10)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、NおよびX
10=K、D、A、R、E、V、L、Iである。
【0088】
第2の態様の変形の別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号10によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、NおよびX
10=K、D、A、R、E、V、L、Iであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0089】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−Q−C−X
7−R−X
8−C−X
9−X
10−Q−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号11)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=A、Y、I、L、W;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、NおよびX
10=K、D、A、R、E、V、L、Iである。
【0090】
第2の態様の変形のより好ましい実施形態では、本発明は、配列番号11によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=A、Y、I、L、W;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、NおよびX
10=K、D、A、R、E、V、L、Iであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0091】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号12(cgtx539)によるアミノ酸配列を含むかそれからなる。
【0092】
第2の態様の別の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−R−X
3−X
4−X
5−Q−C−Y−P−H−C−X
6−X
7−X
8−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号13)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
4=P、S、T;X
5=R、K、P;X
6=R、K、Q、N;X
7=K、D、A、R、E、V、L、IおよびX
8=E、Q、A、L、D、N、V、Iである。
【0093】
第2の態様の変形の別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号13によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
4=P、S、T;X
5=R、K、P;X
6=R、K、Q、N;X
7=K、D、A、R、E、V、L、IおよびX
8=E、Q、A、L、D、N、V、Iであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0094】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−R−X
3−X
4−X
5−Q−C−Y−P−H−C−X
6−X
7−X
8−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号14)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=T、G、S、N、I;X
4=P、S、T;X
5=R、K、P;X
6=R、K、Q;X
7=K、D、A、RおよびX
8=E、Q、A、Lであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0095】
第2の態様の変形のより好ましい実施形態では、本発明は、配列番号14によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=T、G、S、N、I;X
4=P、S、T;X
5=R、K、P;X
6=R、K、Q;X
7=K、D、A、RおよびX
8=E、Q、A、Lであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0096】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号15(cgtx540)によるアミノ酸配列を含む。
【0097】
第2の態様の別の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−R−C−X
14−X
15−C(配列番号16)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、Q、T、SおよびX
15=G、R、Kである。
【0098】
第2の態様の変形の別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号16によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、Q、T、SおよびX
15=G、R、Kであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0099】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−R−C−X
14−X
15−C(配列番号17)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、NおよびX
15=G、Rである。
【0100】
第2の態様の変形のより好ましい実施形態では、本発明は、配列番号17によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、NおよびX
15=G、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0101】
第2の態様のさらにより特に好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号18(cgtx541)または配列番号19(cgtx542)によるアミノ酸配列を含むかそれからなる。
【0102】
第2の態様の別の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
I−S−C−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−C−X
6−X
7−X
8−C−X
9−X
10−X
11−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号20)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=R、T、K、S、Y;X
2=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
3=P、S、T;X
4=R、K、P;X
5=D、Q、N、E;X
6=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
7=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、N;X
10=K、D、A、R、E、V、L、IおよびX
11=E、Q、A、L、D、N、V、Iである。
【0103】
第2の態様の変形の別の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号20によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=R、T、K、S、Y;X
2=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
3=P、S、T;X
4=R、K、P;X
5=D、Q、N、E;X
6=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
7=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、N;X
10=K、D、A、R、E、V、L、IおよびX
11=E、Q、A、L、D、N、V、Iであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0104】
第2の態様のより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
I−S−C−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−C−X
6−X
7−X
8−C−X
9−X
10−X
11−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号21)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=R、T、K;X
2=T、G、S、N、I;X
3=P、S;X
4=R、K、P;X
5=D、Q、N、E;X
6=A、Y、I、L、W;X
7=D、R、P、K、E、S;X
8=P、H、V;X
9=R、K、Q;X
10=K、D、A、RおよびX
11=E、Q、A、Lである。
【0105】
第2の態様の変形のより好ましい実施形態では、本発明は、配列番号21によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=R、T、K;X
2=T、G、S、N、I;X
3=P、S;X
4=R、K、P;X
5=D、Q、N、E;X
6=A、Y、I、L、W;X
7=D、R、P、K、E、S;X
8=P、H、V;X
9=R、K、Q;X
10=K、D、A、RおよびX
11=E、Q、A、Lであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0106】
第2の態様のさらにより好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号22(cgtx545)によるアミノ酸配列を含むかそれからなる。
【0107】
第3の態様では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
G−V−X
1−I−N−V−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号27)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=P、I、F、V、A、L、W;X
2=K、S、T、Y、R;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、L;X
16=K、R、X
17=Y、N、Q、T、SおよびX
18=G、R、Kである。
【0108】
第3の態様の変形では、本発明は、配列番号27によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=P、I、F、V、A、L、W;X
2=K、S、T、Y、R;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、L;X
16=K、R、X
17=Y、N、Q、T、SおよびX
18=G、R、Kであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0109】
第3の態様の好ましい実施形態では、本発明による化合物は、アミノ酸配列:
G−V−X
1−I−N−V−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号28)
を含むかそれからなり、上式で、
X
1=P、I、F;X
2=K、S;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、G;X
16=K、R、X
17=Y、NおよびX
18=G、Rである。
【0110】
第3の態様の変形の好ましい実施形態では、本発明は、配列番号28によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物にも関し、
式中、
X
1=P、I、F;X
2=K、S;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、G;X
16=K、R、X
17=Y、NおよびX
18=G、Rであり、
この化合物はカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である。
【0111】
第3の態様の特に好ましい実施形態では、本発明による化合物は、配列番号29(cgtx543)、配列番号30(cgtx546)または配列番号31(cgtx548)によるアミノ酸配列を含むかそれからなる。
【0112】
したがって、本発明による化合物が、配列番号9、12、15、18、19、22、25、26、29、30または31によるアミノ酸配列を含むかそれからなることが特に好ましく、配列番号25によるアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物が最も好ましい。
【0113】
一部の実施形態では、配列番号9、12、15、18、19、22、25、26、29、30または31によるアミノ酸配列を含むかそれからなる前述の化合物は、0から5の間、すなわち0、1、2、3、4または5つのアミノ酸置換、欠失または挿入を含むことができるが、ただし化合物はKv1.3カリウムチャネルに選択的に結合することおよび/またはその活性を遮断もしくは低減することがなお可能である。そのようなアミノ酸突然変異を有する化合物は変異体と呼ばれ、本発明の一部を同様に形成する。
【0114】
置換は保存的または非保存的な置換であってもよく、好ましくは、置換は保存的な置換である。保存的な置換は、置換されるアミノ酸に類似の化学特性を有する別のアミノ酸によるアミノ酸の置換を含む。一部の実施形態では、置換は、天然に存在するアミノ酸と天然に存在しないアミノ酸との交換であってもよい。
【0115】
用語「アミノ酸欠失」および「アミノ酸挿入」は、当技術分野でのそれらの従来のおよび周知の意味に従って本明細書で用いられる。
【0116】
別の態様では、本発明は、本発明によるアミノ酸配列をコードする核酸も提供する。
【0117】
本発明の文脈において、用語「核酸」または「核酸配列」は、所与のアミノ酸配列をコードすることが可能である、一本鎖または二本鎖形の天然に存在するかまたは合成されたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。この用語は、当業者に公知の方法によって元の配列の1つまたは複数のヌクレオチドが他のヌクレオチドによって置換され、および/または(化学的に)改変されるという点で、元のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーと異なることがある、所与のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーの誘導体も包含するが、ただし、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーはそのそれぞれのアミノ酸配列をコードすることがなお可能である。
【0118】
遺伝子コードの変性のために、本発明による所与のアミノ酸配列が異なるヌクレオチド配列によってコードされていてもよいことは、当業者に明らかであろう。
【0119】
さらなる態様では、本発明は、本発明による核酸配列を含むベクターも提供する。
【0120】
ベクターは、本発明による1つまたは複数のヌクレオチド配列を含有し、異なる宿主細胞の間での転移のために好ましくは設計される任意の分子ビヒクル、例えばプラスミドベクター、ウイルスベクター、バクテリオファージベクターまたは任意の他のビヒクルであってもよい。好ましい実施形態では、ベクターは、原核または真核生物の発現ベクターである。
【0121】
本明細書で用いる用語「発現ベクター」は、作動可能に連結されるコード配列の発現のために必要な所望のコード配列および適当なDNA配列を含有し、特定の宿主生物体(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫または哺乳動物)で、またはin vitro発現系でタンパク質発現を誘導することが可能であるベクターを指す。発現ベクターは、機能的エレメント、例えば転写される核酸配列に作動可能に連結されるプロモーター、転写の適切な終結を可能にする終結配列および選択マーカーを含むことができる。当業者は、プロモーターの性質は、ベクターが原核生物かまたは真核生物の宿主細胞で用いられるかに依存することを知っているであろう。安定した発現を長期間得るために、発現ベクターは複製起点(ORI)をさらに含むことができる。適する発現ベクターは、当業者に公知である。発現が原核もしくは真核生物の宿主細胞で、またはin vitro発現系で達成されるかによって、ベクターは、プラスミド、コスミド、ミニクロモゾーム、細菌ファージ、レトロウイルスベクターなどの原核および/または真核生物の発現ベクターであってもよい。当業者は、具体的な必要に従って適当なベクターを選択する方法に精通しているだろう。
【0122】
別の態様では、本発明は、本発明による核酸配列またはベクターを含む宿主細胞を指す。
【0123】
適用場所によって、宿主細胞は、原核かまたは真核生物の宿主細胞であってもよい。一般的な原核宿主細胞には、例えば大腸菌(Escherichia coli)(E. coli)などの細菌細胞が含まれる。一般的な真核宿主細胞には、例えば酵母細胞、例えば酵母(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、例えばSf9/Sf21細胞、植物細胞ならびに哺乳動物細胞、例えばCOS、CHOおよびHeLa細胞が含まれる。
【0124】
さらなる態様では、本発明は、本発明による化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0125】
一部の実施形態では、本発明による医薬組成物は、本発明による化合物の1つより多くのものを含むことができる。例えば、本発明による医薬組成物は、本発明による化合物の2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個を超えて含むことができる。一部の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明による1つまたは複数の化合物を含むことができ、化合物は、配列番号9、12、15、18、19、22、25、26、29、30または31のアミノ酸配列を含むかそれからなる化合物群から選択される。
【0126】
本開示全体で治療上の使用に特に好ましいと考えられているペプチドは、配列番号25(cgtx−544)、配列番号29(cgtx543)および配列番号9(cgtx538)のペプチドである。以降に記載される実験のほとんどは、配列番号25(cgtx−544)のペプチドを用いて実施されたことに注意する。しかし、配列番号29(cgtx543)および配列番号9(cgtx538)のペプチドもそれらの対hERG選択性について同様に試験されており、それらの配列類似性に基づくと、ctgx544と類似の効果をこれらのペプチドについても観察することができると結論付けることが、したがって、合理的なようである。
【0127】
これらのペプチドならびに本明細書に記載される他のペプチドは、固相合成などの当技術分野で公知の方法によって製造することができる。これらのペプチドはシステイン残基を含み、したがって、最適な活性を達成するために天然状態への能動的折畳みを必要とする可能性があることに注意する。活性は、完全に折り畳まれたペプチドを精製することによってさらに増強することができる。システイン残基の間のジスルフィド架橋を達成するために合成されたペプチドを酸化にかけることによって、折畳みを達成することができる。実施例8に記載のように、これは、ペプチドを、例えば大気酸素の存在下でpH約8.0のリン酸緩衝液中でインキュベートすることによって実行することができる。折り畳まれたペプチドはジスルフィド架橋形成中の水素原子の喪失に対応するわずかに低減された質量を示すので、折畳みの後に質量分析を行ってもよい。ctgx544の場合、質量の差は、4212対4220.2Daであろう。
【0128】
完全に折り畳まれたペプチドの精製は、HPLC精製などの当技術分野で公知の方法によって達成することができる。適する手法は、実施例8に記載される。
【0129】
本発明による医薬組成物は、経口的に、例えば吸入可能な散剤、丸剤、錠剤、上塗り錠剤、糖衣錠剤、顆粒、ハードおよびソフトゼラチンカプセル、水性、アルコール性もしくは油性の溶液、シロップ、乳剤もしくは懸濁液の形態で、または経直腸的に、例えば坐薬の形態で投与することができる。
【0130】
投与は、鼻腔内にまたは舌下的に実行することもできる。
【0131】
投与は、注射または注入のための溶液の形態で、例えば皮下、筋肉内または静脈内に非経口的にさらに実行することができる。他の適する投与形態は、例えば軟膏、チンキ剤、噴霧もしくは経皮治療システムの形態の経皮的もしくは局所投与、または鼻内噴霧もしくはエアゾール混合物の形態の吸入式投与である。
【0132】
本開示全体で特に好ましいと考えられる投与の形態は、静脈内、筋肉内または皮下投与である。
【0133】
丸剤、錠剤、糖衣錠剤およびハードゼラチンカプセルの生産のために、例えば、ラクトース、デンプン、例えばトウモロコシデンプン、またはデンプン誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩などを用いることが可能である。ソフトゼラチンカプセルおよび坐薬のための担体は、例えば、脂肪、ワックス、半固体および液体多価アルコール、天然または硬化油などである。溶液、例えば注射用溶液の、または乳剤もしくはシロップの調製のための適する担体は、例えば、水、生理食塩液、アルコール、例えばエタノール、グリセロール、多価アルコール、スクロース、転化糖、グルコース、マンニトール、植物油などである。医薬組成物は、添加剤、例えばフィラー、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味料、着色剤、香料、着香剤、増粘剤、希釈剤、緩衝物質、溶媒、可溶化剤、デポー効果を達成するための薬剤、浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤または抗酸化剤も含有することができる。
【0134】
本明細書に記載される様々な異なる形態の医薬組成物のための適する賦形剤の例は、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見出すことができる。
【0135】
一部の実施形態では、医薬組成物は、持続性放出製剤であってもよい。
【0136】
一部の実施形態では、本発明による医薬組成物は、本発明による少なくとも1つの化合物に加えて、自己免疫性疾患の治療に適する他の免疫抑制剤をさらに含むことができる。そのような免疫抑制剤の例には、例えば、コルチゾール、ヒドロコルチゾール、デキサメタゾン、シクロホスファミド、ニトロソ尿素、メトトレキセート、メルカプトプリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、シクロスポリン、ラパマイシン、アザチオプリン、プレドニゾンおよびデオキシスペルグアリンおよびインターフェロンが含まれる。
【0137】
他の好ましい実施形態では、前述のさらなる免疫抑制剤を含む別の組成物は、本発明による1つまたは複数の化合物を含む医薬組成物と組み合わせて、それを必要とする哺乳動物に投与することができる。
【0138】
さらなる態様では、本発明は、エフェクター記憶細胞(T
EM細胞)が関与する疾患の治療または予防で使用するための本発明による化合物または本発明による医薬組成物に関する。
【0139】
好ましくは、本発明は、自己免疫性疾患、肥満、歯周炎および/または組織移植拒絶からなる群から選択される疾患の治療で使用するための本発明による化合物または本発明による医薬組成物に関する。
【0140】
本開示のために、用語「治療」は疾患の治療的緩和を指し、用語「予防」は予防的予防処置を指す。両用語はそれぞれの疾患の完全な軽快も予防も暗示しないが、薬学的に活性な薬剤が治療目的のためにも予防目的のためにも投与されない状況と比較して改善が見られることを理解すべきである。
【0141】
特に好ましい実施形態では、本発明は、自己免疫性疾患の治療または予防で使用するための本発明による化合物または本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0142】
本発明の文脈において、用語「自己免疫性疾患(複数可)」は、自己コード実体、すなわち自己抗原を対象とする不適当な免疫応答によって引き起こされる疾患状態を指す。この定義の中には、体がそれ自身の組織を攻撃することを可能にする免疫系の欠陥によって引き起こされるいくつかの障害のいずれもが包含される。好ましい実施形態では、自己免疫性疾患は、T細胞媒介性自己免疫性障害である。
【0143】
本発明の化合物および医薬組成物によって治療または予防することができる自己免疫性疾患の例には、例えば、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、1型糖尿病、脈管炎、橋本病、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性眼疾患、シェーグレン症候群、急性の播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、妊娠性類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、特発性血小板減少紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、重症筋無力症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、悪性貧血、多発関節炎(イヌ)、原発性胆汁性肝硬変、ライター症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ヴェーゲナー肉芽腫症、ANCA関連全身性脈管炎、チャーグ−ストラウス症候群、顕微鏡的多発血管炎、大腸炎、炎症性腸疾患、ブドウ膜炎および乾癬性関節炎が含まれる。
【0144】
これらの自己免疫性疾患のいくつか、例えば、ANCA関連全身性脈管炎(Abdulahad, Nephrology, 2009 vol. 14 pp 26)、チャーグ−ストラウス症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎(Berden, Arthritis & Rheumatism, 2009, vol.60, pp 1578)、強直性脊椎炎、ベーチェット病、大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、シェーグレン症候群、1型糖尿病(Ulivieri, Expert Rev. Vaccines, 2013 vol. 12 pp 297)、全身性エリテマトーデス(Devarajan, Immunol. Res, 2013 vol. 57 pp 12)、ブドウ膜炎(Amadi-Obi, Nephrology, 2009, vol 14 pp 26)および乾癬性関節炎(De Vlam, Acta Derm. Venereol, 2014, vol. 94, pp 627)は、T
EM細胞に関連付けられている。
【0145】
同じことが肥満にもあてはまる(Xu, Human Molecular Genetics, 2003, vol. 12, pp 551)。
【0146】
ctgx544がT
EM細胞に選択的に作用し、関節リウマチに効果を有することが示されたことを考慮すると、そのような疾患を治療または予防するためにcgtx544および本明細書に開示される他のペプチドを用いることができると仮定することは合理的なようである。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明の化合物および医薬組成物によって治療または予防される自己免疫性疾患は、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、1型糖尿病および脈管炎からなる群から選択される。
【0148】
新しい宿主への器官または組織の移植は、新しい器官または組織(例えば、心臓、肝臓、腎臓、すい臓または皮膚)に対するT細胞媒介性免疫応答のために、移植器官または組織の拒絶をしばしば引き起こすことがある。したがって、本発明は、器官または組織の移植拒絶の治療または予防で使用するための本発明による化合物または本発明による医薬組成物にも関する。器官移植拒絶には、T
EM細胞が同様に関与することが示された(例えば、Macedo, Transplantation, 2012 vol 93 pp 813を参照する)。cgtx544および本明細書に開示される他のペプチドの高い選択性を考慮すると、そのような疾患を治療または予防するためにcgtx544および本明細書に開示される他のペプチドを用いることができると仮定することは合理的なようである。
【0149】
別の態様では、本発明は、それを必要とする哺乳動物に本発明による化合物または本発明による医薬組成物を投与することによって、哺乳動物で自己免疫性疾患、肥満、歯周炎および/または組織移植拒絶を治療または予防する方法に関する。
【0150】
好ましくは、自己免疫性疾患は、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、1型糖尿病および脈管炎からなる群から選択される。
【0151】
本明細書で用いる用語「哺乳動物」には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギなどが含まれる。好ましい哺乳動物は、ヒトである。
【0152】
本発明による医薬組成物の単位剤形は、採用される目的とする1日投薬量範囲に相応した、本発明による化合物の任意の適する有効量を含有することができる。
【0153】
本発明による化合物または本発明による医薬組成物の投与を必要とする哺乳動物は、例えば、T細胞媒介性疾患、好ましくはT細胞媒介性自己免疫性疾患を患っているかまたはその発症のリスクがある哺乳動物である。好ましい実施形態では、前記自己免疫性疾患は、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、1型糖尿病および脈管炎からなる群から選択される。
【0154】
さらなる態様では、本発明は、本発明による化合物、本発明による核酸配列、本発明によるベクターまたは本発明による医薬組成物を製造する方法にも同様に関する。
【0155】
本発明は、以下にも関する:
(1)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号1)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、L;X
16=K、R、X
17=Y、N、Q、T、SおよびX
18=G、R、K
である化合物。
【0156】
好ましい実施形態では、前記化合物は、HsTx1(配列番号32)でない。
【0157】
(2)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号2)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、G;X
16=K、R、X
17=Y、NおよびX
18=G、R
である、(1)による化合物。
【0158】
好ましい実施形態では、前記化合物は、HsTx1でない。
【0159】
(3)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−X
15−X
16−C(配列番号3)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=K、R、X
15=Y、N、Q、T、SおよびX
16=G、R、K
である、(1)による化合物。
【0160】
(4)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−X
15−X
16−C(配列番号4)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=K、R、X
15=Y、NおよびX
16=G、R
である、(3)による化合物。
【0161】
(5)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−Y−G−C(配列番号5)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、LおよびX
16=K、R
である、(1)による化合物。
【0162】
(6)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−Y−G−C(配列番号6)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、GおよびX
16=K、R
である、(5)による化合物。
【0163】
(7)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−Y−G−C(配列番号7)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、IおよびX
14=K、R
である、(1)による化合物。
【0164】
(8)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−N−A−K−C−M−N−R−K−C−X
14−C−Y−G−C(配列番号8)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、LおよびX
14=K、R
である、(7)による化合物。
【0165】
(9)配列番号9のアミノ配列を含む、(8)による化合物。
【0166】
(10)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−Q−C−X
7−R−X
8−C−X
9−X
10−Q−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号10)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、NおよびX
10=K、D、A、R、E、V、L、I
である、(1)による化合物。
【0167】
(11)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−Q−C−X
7−R−X
8−C−X
9−X
10−Q−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号11)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=A、Y、I、L、W;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、NおよびX
10=K、D、A、R、E、V、L、I
である、(10)による化合物。
【0168】
(12)配列番号12のアミノ酸配列を含む、(11)による化合物。
【0169】
(13)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−R−X
3−X
4−X
5−Q−C−Y−P−H−C−X
6−X
7−X
8−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号13)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
4=P、S、T;X
5=R、K、P;X
6=R、K、Q、N;X
7=K、D、A、R、E、V、L、IおよびX
8=E、Q、A、L、D、N、V、I
である、(1)による化合物。
【0170】
(14)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−R−X
3−X
4−X
5−Q−C−Y−P−H−C−X
6−X
7−X
8−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号14)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=T、G、S、N、I;X
4=P、S、T;X
5=R、K、P;X
6=R、K、Q;X
7=K、D、A、RおよびX
8=E、Q、A、L
である、(13)による化合物。
【0171】
(15)配列番号15のアミノ酸配列を含む、(14)による化合物。
【0172】
(16)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−R−C−X
14−X
15−C(配列番号16)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I、L;X
2=S、R、K、T、Y;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、Q、T、SおよびX
15=G、R、K
である、(1)による化合物。
【0173】
(17)アミノ酸配列:
X
1−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−R−C−X
14−X
15−C(配列番号17)
を含み、上式で、
X
1=A、V、I;X
2=S、R、K;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、NおよびX
15=G、R
である、(16)による化合物。
【0174】
(18)配列番号18または配列番号19のアミノ酸配列を含む、(17)による化合物。
【0175】
(19)アミノ酸配列:
I−S−C−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−C−X
6−X
7−X
8−C−X
9−X
10−X
11−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号20)
を含み、上式で、
X
1=R、T、K、S、Y;X
2=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
3=P、S、T;X
4=R、K、P;X
5=D、Q、N、E;X
6=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
7=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
8=P、H、V、I、L、A;X
9=R、K、Q、N;X
10=K、D、A、R、E、V、L、IおよびX
11=E、Q、A、L、D、N、V、I
である、(1)による化合物。
【0176】
(20)アミノ酸配列:
I−S−C−X
1−X
2−X
3−X
4−X
5−C−X
6−X
7−X
8−C−X
9−X
10−X
11−T−G−C−P−Y−G−K−C−M−N−R−K−C−K−C−N−R−C(配列番号21)
を含み、上式で、
X
1=R、T、K;X
2=T、G、S、N、I;X
3=P、S;X
4=R、K、P;X
5=D、Q、N、E;X
6=A、Y、I、L、W;X
7=D、R、P、K、E、S;X
8=P、H、V;X
9=R、K、Q;X
10=K、D、A、RおよびX
11=E、Q、A、L
である、(19)による化合物。
【0177】
(21)配列番号22のアミノ酸配列を含む、(20)による化合物。
【0178】
(22)アミノ酸配列:
X
1−X
2−X
3−N−V−X
4−C−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−C−X
10−X
11−X
12−C−X
13−X
14−X
15−T−G−C−P−X
16−X
17−K−C−M−N−R−K−C−X
18−C−X
19−X
20−C(配列番号23)
を含み、上式で、
X
1=T、Q、S、Y、N;X
2=I、F、V、A、L、W;X
3=I、T、Y、S、V、A、L;X
4=K、S、T、Y、R;X
5=R、T、K、S、Y;X
6=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
7=P、S、T;X
8=R、K、P;X
9=D、Q、N、E;X
10=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
11=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
12=P、H、V、I、L、A;X
13=R、K、Q、N;X
14=K、D、A、R、E、V、L、I;X
15=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
16=Y、N、S、T、Q;X
17=A、G、V、I、L;X
18=K、R、X
19=Y、N、Q、T、SおよびX
20=G、R、K
である化合物。
【0179】
(23)アミノ酸配列:
X
1−X
2−X
3−N−V−X
4−C−X
5−X
6−X
7−X
8−X
9−C−X
10−X
11−X
12−C−X
13−X
14−X
15−T−G−C−P−X
16−X
17−K−C−M−N−R−K−C−X
18−C−X
19−X
20−C(配列番号24)
を含み、上式で、
X
1=T、Q;X
2=I、F;X
3=I、T;X
4=K、S;X
5=R、T、K;X
6=T、G、S、N、I;X
7=P、S;X
8=R、K、P;X
9=D、Q、N、E;X
10=A、Y、I、L、W;X
11=D、R、P、K、E、S;X
12=P、H、V;X
13=R、K、Q;X
14=K、D、A、R;X
15=E、Q、A、L;X
16=Y、N;X
17=A、G;X
18=K、R、X
19=Y、NおよびX
20=G、R
である、(22)による化合物。
【0180】
(24)配列番号25または配列番号26のアミノ酸配列を含む、(23)による化合物。
【0181】
(25)アミノ酸配列:
G−V−X
1−I−N−V−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号27)
を含み、上式で、
X
1=P、I、F、V、A、L、W;X
2=K、S、T、Y、R;X
3=R、T、K、S、Y;X
4=T、G、S、N、I、K、Q、A、V、L、Y;X
5=P、S、T;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W、S、T、V、L、F;X
9=D、R、P、K、E、S、T、Y;X
10=P、H、V、I、L、A;X
11=R、K、Q、N;X
12=K、D、A、R、E、V、L、I;X
13=E、Q、A、L、D、N、V、I;X
14=Y、N、S、T、Q;X
15=A、G、V、I、L;X
16=K、R、X
17=Y、N、Q、T、SおよびX
18=G、R、K
である化合物。
【0182】
(26)アミノ酸配列:
G−V−X
1−I−N−V−X
2−C−X
3−X
4−X
5−X
6−X
7−C−X
8−X
9−X
10−C−X
11−X
12−X
13−T−G−C−P−X
14−X
15−K−C−M−N−R−K−C−X
16−C−X
17−X
18−C(配列番号28)
を含み、上式で、
X
1=P、I、F;X
2=K、S;X
3=R、T、K;X
4=T、G、S、N、I;X
5=P、S;X
6=R、K、P;X
7=D、Q、N、E;X
8=A、Y、I、L、W;X
9=D、R、P、K、E、S;X
10=P、H、V;X
11=R、K、Q;X
12=K、D、A、R;X
13=E、Q、A、L;X
14=Y、N;X
15=A、G;X
16=K、R、X
17=Y、NおよびX
18=G、R
である、(25)による化合物。
【0183】
(27)配列番号29、配列番号30または配列番号31のアミノ酸配列を含む、(26)による化合物。
【0184】
カリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である、(28)(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(13)、(14)、(17)、(19)、(20)、(22)、(23)、(25)または(26)のいずれかによる化合物。
【0185】
カリウムチャネルKv1.1と比較してカリウムチャネルKv1.3に選択的に結合することが可能である、(29)(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(13)、(14)、(17)、(19)、(20)、(22)、(23)、(25)または(26)のいずれかによる化合物。
【0186】
(30)(1)から(27)のいずれかで述べたアミノ酸配列をコードする核酸配列。
【0187】
(31)(30)による核酸配列を含むベクター。
【0188】
(32)(30)による核酸配列または(31)によるベクターを含む宿主細胞。
【0189】
(33)(1)から(29)のいずれかによる化合物を含む医薬組成物。
【0190】
(34)自己免疫性疾患、肥満、歯周炎および/または組織移植拒絶の治療で使用するための、(1)から(29)のいずれかによる化合物または(33)による医薬組成物。
【0191】
(35)自己免疫性疾患、肥満、歯周炎および/または組織移植拒絶の治療または予防のための医薬の製造における、(1)から(29)のいずれかによる化合物または(33)による医薬組成物の使用。
【0192】
(36)それを必要とする哺乳動物に(1)から(29)のいずれかによる化合物または(33)による医薬組成物を投与することによって、哺乳動物で自己免疫性疾患、肥満、歯周炎および/または組織移植拒絶を治療または予防する方法。
【0193】
(37)(30)による核酸配列、(31)によるベクターまたは(32)による宿主細胞を用いて(1)から(29)のいずれかによる化合物を製造する方法。
(実施例)
【実施例1】
【0194】
電気生理学的測定
カリウム電流は、ヒトKv1.3(hKv1.3)チャネルを発現するスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(SF21)の細胞を用いて測定した。チャネル活性は、−40mVより正の電圧への膜脱分極により誘導される。活性化速度論は急速で、電圧依存性が強いが、不活性化はずっと遅く、有意な電圧依存性を示さない。Sf21細胞では、hKv1.3は、+40mVで250pA〜5nAの間の平均電流振幅を有する。
【0195】
感染の1〜3日後、Port−A−Patch(Nanion Technologies GmbH)を用いて、平面パッチクランプ技術でカリウム電流を記録した。イオン電流は、200msで+40mVの脱分極電位への電圧ステップによって活性化した。
【0196】
SF21細胞は、10%FBS(ウシ胎児血清)、2mMグルタミン、1×イーストレート(50倍保存溶液から)および0.1%Pluronic(登録商標)F68(BASF)を追加したグレースの昆虫細胞培地で、細胞数2〜3×10
6/mlの細胞密度まで培養した。
【0197】
電気生理学的緩衝液は以下の通りだった:
外部緩衝液:
160mM NaCl
4.5mM KCl
1mM MgCl
2
2mM CaCl
2
5mM D−グルコース一水和物
10mM HEPES/NaoH pH7.4
内部緩衝液:
75mM KCl
10mM NaCl
70mM フッ化カリウム
2mM MgCl
2
10mM EGTA
10mM HEPES/KOH pH7.2
【0198】
本明細書に記載されるペプチド(配列番号1から31、特にcgtx−544(配列番号25)の選択性を実証するために、Kv1.3、Kv1.1およびKv1.5へのcgtx−544の結合についてIC50を決定した。対照として、HsTx1(配列番号32)を試験した。
【0199】
20mM NaPO
4緩衝液pH8.2(1mlの折畳み緩衝液に1mg)にペプチドを1μg/μlで溶解し、同じ緩衝液3×1L、Float−a−Lyzerカットオフ500Da(Spectrapor)に対して室温で透析した。
【0200】
試験したチャネルによって、例えば100pM、1nM、10nM、50nM、100nM、500nMおよび1μMの様々な濃度でHsTx1の結合を試験した。Kv1.1、Kv1.3およびKv1.5の代表的測定を、それぞれ
図1a)、1b)および1c)に表す。
【0201】
Kv1.3へのHsTx1結合のIC50は、25±2.1nMであった。Kv1.1へのHsTx1結合のIC50は、11.3μMであった。Kv1.5に関しては、結合は検出できなかった。したがって、HsTx1は、Kv1.1に比較してKv1.3への約450倍高い選択性を有する。
【0202】
試験したチャネルによって、例えば、1nM、10nM、50nM、100nM、1μMおよび5μMの様々な濃度でcgtx−544の結合を試験した。Kv1.1、Kv1.3およびKv1.5の代表的測定を、それぞれ
図1d)、1e)および1f)に示す。
【0203】
Kv1.3へのcgtx−544の結合のIC50は、6.9nMであった。10μMの濃度まで、Kv1.5への結合は検出できなかった。Kv1.1は、10μMで約22%遮断された。したがって、cgtx−544は、HsTx1と比較してKv1.1よりKv1.3へのより高い選択性を有する。
【実施例2】
【0204】
Kv1.3およびhERGへの結合の比較
下の実施例では、Kv1.3およびhERGへの選択されたペプチドの結合を、電気生理学的測定によって比較した。
【0205】
細胞系
Kv1.3への結合を決定するために、Kv1.3を内因的に発現するジャーカット細胞を用いた。hERGへの結合のために、hERGを安定して発現するHEK細胞を用いた。
【0206】
細胞培養
標準の細胞培養技術を用いて、細胞培養を実施した。簡潔には、10cm培養皿またはT75培養フラスコで、細胞をDMEMベースの培地で増殖させた。約60〜80%の集密で、細胞を2〜3日おきに分けた。Patchliner(Nanion)での記録のために、ジャーカット細胞を再懸濁させ、次に遠心分離機で回転させた。遠心回転の前に、皿の表面からそれらを切り離すために、HEK細胞をトリプシンで処理した。遠心回転させた後に、1mlにつき細胞数が概ね1,000,000〜2,000,000の密度まで、細胞を外部記録緩衝液に再懸濁させた。
【0207】
内部記録溶液:
50mM KCl
10mM NaCl
60mM KF
20mM EGTA
10mM HEPES/KOH、pH7.2、(Osm:約290mOsm)
【0208】
5mM Mg−ATPおよび0.3mM Na−GTPを内部溶液に新たに加え、pHを7.2に調整した。
【0209】
外部記録緩衝液:
140mM NaCl
4mM KCl
1mM MgCl2
2mM CaCl2
5mM D−グルコース一水和物
10mM HEPES/NaOH pH7.4(Osm:約298mOsm)
【0210】
化合物
以下の化合物を試験した:
化合物1:cgtx538
化合物2:cgtx539
化合物3:cgtx540
化合物4:cgtx541
化合物5:cgtx542
化合物6:cgtx543
化合物7:cgtx−544
化合物8:cgtx547
【0211】
電気生理学的測定
Patchlinerで電気生理学的記録を実施し、最高8チャネルまで同時に記録した。Patchlinerは、ホウケイ酸ガラスチップ(NPC−16)を平面パッチクランプのために利用し、PatchControlHTソフトウェアによって動作する、自動パッチクランプシステムである。ジャーカット細胞には3〜5MΩおよびHEK細胞には2〜3MΩの抵抗を有するNPC−16チップを記録のために用いた。記録の間、細胞を「細胞ホテル」に保管し、そこでは生存率を維持するためにピペットによりそれらを定期的に吸入、吐出した。細胞は、概ね2〜3時間生存能力があった。
【0212】
PatchControlHTソフトウェア
Patchlinerを動作させるためには、NanionのPatchControlHTおよびHEKAからのPatchMasterの2つのプログラムをコンピュータ上で同時に実行する。
【0213】
PatchMasterはHEKA EPC10増幅器を制御し、記録を実行する。パルスプロトコールおよびオンラインアナリシスを、このプログラムの中で生成することができる。PatchControlHTは、細胞の捕獲およびシーリングから細胞全体に行き、所望の記録を得る、完全な実験ルーチンを定義するために用いられる。PatchControlHTとPatchMasterの間の双方向性通信は、PatchControlHTが細胞状態(ギガシール、全細胞構成)によってその作用を調整することを可能にする。
【0214】
このプログラムは、溶液交換の実行のためのピペットを含むPatchlinerのロボット機能を完全にナビゲートする。同時に、PatchControlHTは増幅器も制御し、PatchMasterから全ての重要なパッチパラメータを読み出す。PatchControlHTはグラフィカルなユーザーインターフェイスであり、そこには、実験の全てのパラメータおよび成功基準が定義されている。ある記録ウェルで成功基準が達成されない場合は、PatchControlHTがその特定のウェルからの記録を中止するオプションが利用できる。
【0215】
実験ルーチン
適当な記録条件を確立するために、Patchlinerの標準手順機能によってチップフィリング、細胞の捕獲、シーリングおよび全細胞モードの開始を行った。このルーチンの終わりに、増幅器設定(例えば保持電位、遅いキャパシティ補償およびゲイン)を所望の記録のために適切に設定し、その後記録を開始した。
【0216】
各実験の中で、安定した記録を確実にするために、外部溶液で細胞を3回洗浄した。化合物1〜8は、hERG発現細胞でさらに試験した。各化合物の曝露時間は4分であり、合計で、各実験は24分実行された。
【0217】
電圧プロトコール
hERGについては:hERG電流は、まず−80mVから−40mVの保持電位を500ms、続いて+40mVを500msへのステップ、テール電流を得るための−40mVの試験パルスを500ms、その後保持電位に戻る電圧ステッププロトコールを用いて誘導した。ステップは、10秒おきに繰り返した。
【0218】
プロトコールは連続的に実行し、オンライン結果を連続的に読み出した。これは、洗浄および/または化合物適用による変化を監視でき、定常状態への到達を評価できるように実行された。
【0219】
データ分析
データの記録および分析は、2台のEPC10 Quadro増幅器、PatchMasterソフトウェアパッケージ(HEKA Electronics、Lambrecht/Pfalz、Germany)、ExcelおよびIgor(WaveMetrics、USA)で実施した。
【0220】
hERGに関する薬理学のために、第2の−40mVのステップ(テール電流)のピークの振幅を、PatchMasterのオンライン分析機能を用いて計算した。真のピークを計算するためにリーク(第1のステップから−40mVまで計算した)をこのピークから引き算し、これらは時間の関数としてプロットすることができた。
【0221】
Igorで濃度応答曲線を計算するために、値はExcelにエクスポートした。図を描写し、Igor(WaveMetrics、USA)を用いてエクスポートした。濃度応答曲線は、Igorで構築された。各化合物のIC50を推定するためにヒル式をあてはめ、IC50は最大遮断に対して計算した。可能な場合、値は平均±S.E.Mで表す。
【0222】
結果
hERG電流で試験した化合物1〜8
Kv1.3電流での化合物1〜8の電気生理学的測定は、これらのペプチドが活性であることを示した。したがって、化合物1〜8をhERG発現HEK細胞で試験した。これらの化合物の効果を検討するために、2点スクリーニング法を実施した。精度を確実にするために、通常、3から5個の細胞を試験した。安定した電流を確実にするために、各実験を3回の洗浄から開始した。hERG電流はわずかに増加したが、2回目の洗浄の後に安定した。化合物1、2、4、5、7および8は、hERG電流に低い効果だけを有するようであった。通常、化合物1〜8の効果は、hERG電流のランダウン効果によって説明することもできた。結果を、
図3に示す。全ての化合物の平均電流遮断±SEMの概要を、表1に示す。
【0223】
【表1】
【0224】
さらなる分析
上記の分析は、完全に折り畳まれたペプチドを精製せずに、それぞれのペプチドを実施例8に記載の折畳みプロトコールにかけた後に実行した。
【0225】
さらに、上記のようにcgtx−544を折り畳み、精製した。次に、このcgtx−544(Sing)で分析を繰り返した。さらに、より長い期間、すなわち約20分間、ペプチドの長いオンレートとより良好に相関する時間、インキュベートすることによって、cgtx−544(Sing)をKv1.3で次に試験した。これらの条件下で、未精製のcgtx−544の6.9nMと比較して、cgtx−544(Sing)は、折畳みおよび精製の後約900pMのIC50を示す(実施例1を参照する)。結果を、
図35に示す。
【実施例3】
【0226】
ヒトおよびラットの血漿中のcgtx−544(配列番号25)の安定性
1.ヒトおよびラットの血清試料でのex vivo安定性の決定
目的は、室温(RT)および37℃での異なるインキュベーション時間の後に、哺乳動物の血漿中でのcgtx−544ペプチドの安定性を試験することであった。安定性は、室温および37℃での異なるインキュベーション時間の後の、cgtx−544のIC50値と規定された。血漿は、健康なラットまたはヒトからの新鮮な血液試料から調製した。血栓を予防するために、新鮮な血液試料にヘパリンを加えた。血漿調製は、室温において2000×gで2分間の遠心分離によって実施した。
【0227】
実験の開始の前に、電気生理学的アッセイによって46.1nM±3.9nM(細胞数n=5について)のIC50値を得ることでcgtx−544のIC50を決めた。これらの実験で用いたcgtx−544ペプチドは不完全に折り畳まれたので、正常より高いIC50が決定された。調製したヒトおよびラット血漿の陰性対照は、Sf21昆虫細胞で発現されたKv1.3チャネルへの、血漿構成成分の非特異的結合を示さなかった。
【0228】
血漿中での安定性および活性を検討するために、新たに調製したヒトおよびラット血漿に、ペプチドを20μMの最終濃度で加えた。試料を2つのアリコートに分け、37℃および室温(RT、20℃)でインキュベートした。電気生理学的分析のために、試料の系列希釈を調製した。
【0229】
時点 0時間:血漿にペプチドを加えた直後に、試料が分析され、Kv1.3チャネルへの強力な親和性を示した。IC50値は、ヒト血漿中のcgtx−544については20.9nMに、ラット血漿では15.0nMに改善された(データ示さず)。
時点 24時間:次の24時間の間に、37℃および室温で保存されたペプチドプローブの活性に有意な変化は検出できなかった。
時点 48時間:48時間後、37℃でインキュベートしたペプチドの活性は低下し、ヒト血漿またはラット血漿でインキュベートしたcgtx−544のIC50値は、t=0時間と比較して2倍高かった(それぞれ、37.3nMおよび57.8nM)。室温で保存したcgtx−544の活性は、不変であった。
時点 14日間:37℃で14日間のインキュベーションの後、活性は検出されなかった。室温でインキュベートしたcgtx−544プローブは、不変の活性を示した。
【実施例4】
【0230】
単離したヒトT
EM細胞でのcgtx−544(配列番号25)の有効性
1.単離したヒトT
EMでのKv1.3電流の分析
昆虫細胞株スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)を、バキュロウイルス感染系と一緒に用いて組換えイオンチャネルを異種発現させた。Sf21細胞は高度に特異的なタンパク質発現、および適切な翻訳後修飾を提供し、in vivoでイオンチャネルの電気生理学的パラメータと同等であると提案されている機能的チャネルをもたらす。したがって、Sf21細胞で発現されるカリウム選択的イオンチャネルKv1.3およびT
EM細胞で内因的に発現されるKv1.3チャネルの電気生理学的特性を比較することが必要だった。
【0231】
特徴的電圧依存性Kv1.3チャネル活性化の比較のために、20mVステップ(活性化パルス200ms)での−60mVから+60mVへの一般的な電圧プロトコールを用いた。細胞は、−100mVの保持電位で固定した。
図4は、2つの個々のSf21およびT
EM細胞の電流応答(それぞれ、
図4Aおよび4B)および電圧依存性Kv1.3活性化のためのパルスプロトコール(
図4C)を示す。
【0232】
図5は、対応する正規化された電圧−電流相関を示す。Kv1.3は保持電位(−100mV)から−20mVへの膜の脱分極で開き始め、+60mVでその最大開放状態に到達する。Kv1.3の発現がSf21細胞でずっと高いとしても、特徴的な電圧依存性の活性化は不変のままである。
【0233】
Kv1.3活性から明らかに生じる最大観察電流、および印加電圧は、全てのKv1.3チャネルの全体の伝導率の評価を可能にする。したがって、チャネル数は、単一のKv1.3チャネルの公知の伝導率を用いて抽出することができる。最大のK+外向き電流は、電流トレースの最初の20%の間の活性化された遮断されていない電流と最大に遮断された(完全遮断)電流の間の差と規定される。検討の必要性に応じて、感染条件の変更することによってSf21細胞でのKv1.3の発現レベルを制御することが可能である。本発明者らの標準の条件下で、2〜5nAの最大電流、33〜50nSのコンダクタンスおよび1細胞につき2500〜3800チャネル数を推定することができる。
【0234】
Sf21細胞での異種発現系は、薬理的に興味深いイオンチャネルのin vitroでの電気生理的分析に適する方法を提示する。これらの観察に基づいて、Sf21細胞の原形質膜へのKv1.3イオンチャネルの折畳みおよび挿入は、T
EM細胞の天然のKv1.3タンパク質と同等であると仮定することができる。
【0235】
非相同的に発現されたKv1.3チャネルが電気生理学的パラメータの評価によって薬物ターゲティングを研究するためのモデル系の役割を果たすことができることが、はっきりと実証される可能性がある。特異的Kv1.3遮断を、ペプチド化合物cgtx−544を用いて実施した。前に示され、単離したヒトT
EM細胞でも試験されたように、ペプチドはKv1.3チャネルに対し高い親和性を示す(
図6)。これらの実験で用いたcgtx−544は不完全に折り畳まれ、正常より高いIC50を示すことに留意する。それにもかかわらず、化合物は、Kv1.3をトランスフェクトされたSf21細胞で、ヒトT
EM細胞と同じ値を示した(
図6)。
【実施例5】
【0236】
ペプチドcgtx−544(配列番号25)による抗原誘導関節炎の療法
1.実験モデル
1.AIA−抗原誘導関節炎
ラットの疾患モデル抗原誘導関節炎(AIA)は、ヒトの関節リウマチの多くの特長に似ているT細胞依存性自己免疫性関節炎に相当する。したがって、この系は、本明細書に開示されるT細胞抑制性ペプチドの治療成功を評価するための疾患モデルの役割を果たすことができる。現行の療法(例えば、一般的な細胞増殖抑制剤の使用)に勝るこの治療手法の1つの主要な利点は、疾患の生成で原因として関与する免疫系の小さいサブセットだけが抑制されるが、例えば先天性免疫系のような免疫防御の他の重要な構成成分はなお元の通りであるという事実である。さらに、この疾患モデルは、cgtx−ペプチドの有効性および耐容性のin vivoでの試験を可能にする。
【0237】
2.関節炎の誘導
全実験は、4週間で行われる。mBSAと不完全フロイントアジュバント(IFA)中の結核菌(M. tuberculosis)調製物の混合物の皮下注射によって、予備免疫化は、−21日目(実験の開始)および−14日目に起こる。1つの膝関節での炎症の局所誘導は、0日目の右膝での抗原mBSAの単一の関節内注射によって誘導される。この実験セットアップでは、第2の(左の)未処置膝関節は、個体内対照の役割を果たす。
【0238】
処置された膝関節は、誘導後の最初の1時間に重度の腫脹反応を起こし、それは誘導の1日目および2日目に最大の腫脹に通常到達する。この表現型はさらなる2〜3日間安定し、その後腫脹は再び衰える。
【0239】
このスキームは、実験動物の>95%で、局所の再現可能な関節炎の誘導を可能にする。陰性対照実験では、0.9%NaClの(mBSA誘導溶液と)同じ量を、対照動物の膝に投与した(
図7および8を参照する)。
【0240】
2.材料および方法
2.1.動物
ルイスラット、雌、180〜200gの体重(BW)、約8週齢、Janvier、France
動物は、MakrolonケージタイプIVにつき5匹の動物、12時間の昼/夜リズムで食物および水は無制限、22±2℃の室温で空気湿度は55±5%の、従来のハウジング条件下においた。
【0241】
2.2.免疫化のためのエマルジョンの生産、動物の免疫化と局所関節炎の誘導
2.2.1.免疫化のためのエマルジョンおよび免疫化の過程
2.2.1.1.材料:
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra(BD231141)
不完全フロイントアジュバント(Sigma F5506)
mBSA(Sigma A1009−1G)
0.9%NaCl(Braun)
イソフルラン(Abbott)
【0242】
2.2.1.2.予備免疫化エマルジョン:
溶液A:
mBSA保存溶液(50mg/ml):
無菌条件下で1バイアルmBSA(1g)への20ml注射用水の添加。
無菌溶液は、4℃で数カ月間保存することができる。
溶液B:
完全フロイントアジュバント(CFA)保存溶液(10mg/ml):
100mgの細菌を含有する1バイアルの結核菌(M. tuberculosis)への10ml(1バイアル)の不完全フロイントアジュバントの添加。
溶液は、4℃で1カ月間保存することができる。
混合物の調製
両方の構成成分を等量で混合してエマルジョンをもたらす(クリーンベンチ内の無菌条件下で混合する)。構成成分は、以下に記載の通り15mlまたは50mlのファルコンチューブにピペットで移す:
1.溶液A:mBSA保存溶液
2.溶液B:結核菌(M. tuberculosis)溶液。
構成成分の添加の直後に、チューブを20秒間撹拌する。最後の調製ステップでは、濃厚なエマルジョンが形成されるまで、溶液を超音波プロセッサー(60%の振幅で0.5サイクル)で乳化する。
【0243】
2.2.1.3.予備免疫化
最終の関節炎誘導の前に動物を2回予備免疫化した。予備免疫は、−21日目および−14日目に行った。これらの時点で、免疫化溶液を皮下に注射した。5%イソフルランによる昏睡の誘導の後、2%イソフルランで麻酔を維持した。乳化された溶液の合計500μlを、25Gカニューレを用いて適用した。尾基部の2つの側(右および左)ならびに左右の肩甲骨の上の2つの側に、125μlの予備免疫化エマルジョンを皮下に注射した。
【0244】
2.2.1.4.局所関節炎の誘導
0日目に、右膝関節への抗原(50μlの0.9%NaClに500μgのmBSA)の関節内投与によって、関節炎を誘導した。左の膝は、個体内対照としてそのままにした。動物を麻酔にかけ、注射部位を消毒した。組織傷害を最小にするために、短く細いカニューレ(30G、1/2)で適用を実行した。抗原の投与およびカニューレの抜き取りの後、関節を数回ゆっくりと曲げ伸ばした。
【0245】
2.2.2.膝関節の腫脹の測定
膝関節の矢状方向の直径を、カリパスで決定した。実験動物を短時間麻酔にかけ、仰向けにした。脚を90度の角度に調整し、膝の矢状方向の直径の測定を3回実行した。
【0246】
2.2.3.血液抜き取り
血液抜き取りのために、動物を短時間麻酔にかけ、尾を消毒し、尾静脈をカニューレで穿刺し、50μlの血液をヘパリンコートピペットで抜き取り、5μlの安定化剤(CPD)および1μlのヘパリン(0.9%NaClで1:4に希釈した1.5U/μl)と混合した。
【0247】
2.2.3.血液学
自動モードのコールターカウンターで、白血球(WBC)を数えた。
【0248】
2.2.4.体重の測定
実験動物の体重を、午前8:00と午前9:00の間に1日に1回測定した。
【0249】
2.2.5.臨床検査および膝関節の腫脹の測定
局所関節炎の誘導の後、実験動物を毎日検査した。膝関節の腫脹を測定し、一般健康状態をスコア化した。
【0250】
2.3.実験動物の処置
動物の処置は、−3日目に、0.6mlの0.9%NaClの量に1mg/kg体重(BW)の投薬によるペプチドcgtx−544(配列番号25)の適用から、あるいは対照動物の場合は0.9%NaCl(賦形剤)の同量の適用から開始した。ペプチドまたは賦形剤は、麻酔にかけた動物の尾静脈にそれぞれ静脈内投与した。処置した動物は、処置後約1時間観察した。
【0251】
3.結果
予備免疫化段階の間、実験動物を集中的に監視し、−21、−14、−7、0および7日目に動物の免疫状態を監視するために血液試料を抜き取った。分析の対応する時点で、炎症の発生と末梢血での白血球(WBC、白血球)の数の間に非常に優れた相関があった。
【0252】
最近免疫化された動物(−21および−14日目)の末梢血でのWBCの数は、未処置動物と比較して劇的に増加する(
図9を参照する)。WBCの数は、−14から−7日目の間に最大値に到達し、その後減退する。WBCの増加は、免疫化によって誘導される炎症の重症度と相関する。
【0253】
局所関節炎の誘導の直後に、WBCは短期増加を示す(
図9を参照する)。しかし、炎症性応答は局在化されているので、この短期増加はより小さい。0.9%NaClで免疫化された対照動物は、WBC数のいかなる差も示さなかった。
【0254】
予備免疫化された動物は、mBSA注射による局所関節炎の誘導のわずか数時間後に右の膝関節に重度の腫脹反応を起こす(
図8を参照)。逆に、個体内対照膝の役目を果たす未処置の左の膝は、腫脹反応のいかなる徴候も示さない。
【0255】
cgtx−544ペプチドで処置した動物と未処置の(賦形剤)対照との比較は、未処置の対照動物と比較してcgtx−544処置が膝関節腫脹の明白な低減につながることを明らかにする(
図10を参照する)。cgtx−544で処置した動物は、未処置の対照動物と比較して、膝関節腫脹の明らかな低減および腫脹のより速い回復を示すと結論付けることができる。
[実施例5a]
【0256】
RAのAIAラットモデルでのcgtx−544ペプチドの予防的有効性
1.材料および方法
完全フロイントアジュバント中の抗原mBSAおよび750μgの熱不活性化結核菌(Mycobacterium (M.) tuberculosis)のエマルジョンによる−21日目および−14日目の2回の免疫化の後、実施例5に記載の通り、0日目に右の膝へのメチル化BSAの関節内注射によってAIAを誘導した。cgtx−544ペプチドの有効性の研究のために、ラットは、10日間(−3日目から6日目まで)、−3日目から開始した0.1、1もしくは5mg/kgのcgtx−544ペプチド(低、中間および高用量レベル)またはビヒクル(0.9%NaCl)の静脈内注射を毎日受けた。
【0257】
関節炎の重症度は、ノギスを用いる膝関節直径の3反復の測定によって監視した。値は、−21日目に正規化した。膝腫脹値の差は、右の(誘導した)膝直径から左の(非誘導)直径を引き算することによって計算した。
【0258】
血液学的パラメータを監視するために、血液試料を定期的に取った。誘導の前、誘導の日および誘導の10日後(−21、−14、−7、0および10日目)に、全ての動物で血液学的パラメータを毎週評価した。未処置動物(−21日目)の血液学的データは、文献(Waynforth & Flecknell, 1992)で報告されたものと同等だった。とりわけ白血球(WBC)、好中性顆粒球およびリンパ球の絶対数を分析し、最後の2つは全WBCの百分率でも明記した。ビヒクルおよびcgtx−544ペプチド療法群の両方からの7個体のEDTA全血を、Sysmex XT−2000iで測定した。
【0259】
2.結果
cgtx−544の全ての試験した用量レベル(0.1、1および5mg/kg BW)は、処置動物で膝腫脹を低減する明らかな用量依存性のおよび統計的に有意な効果を示した(
図18)。
【0260】
結果の統計分析のために、ウェルシュの2試料t検定を用いた。以下では、cgtx−544の全ての試験した用量レベル(0.1、1および5mg/kg BW)の統計分析を、1日目および3日目について示す。ビヒクル対照群と比較したとき、全ての試験した用量レベルは膝腫脹の統計的に有意な低減を示した(
図19)。
【0261】
要約すると、AIAモデルでのcgtx−544ペプチド療法は、炎症性関節炎症状、特に膝腫脹に強力な効果を示し、最大低減は70%であった。処置の7日後、療法群での膝直径は、誘導しなかった個体内対照膝とほとんど同等の直径にさらに減少した。さらに、cgtx−544ペプチド処置個体のWBC、好中性顆粒球およびリンパ球(データ示さず)は、ビヒクル処置個体と同等の絶対的および相対的細胞数を示した。
[実施例5B]
【0262】
RAのAIAラットモデルでのcgtx−544の治療的有効性
1.材料および方法
完全フロイントアジュバント中の抗原mBSAおよび750μgの熱不活性化結核菌(Mycobacterium (M.) tuberculosis)のエマルジョンによる−21日目および−14日目の2回の免疫化の後、上の実施例5に記載の通り、0日目に右の膝へのメチル化BSAの関節内注射によってAIAを誘導した。cgtx−544ペプチドの有効性の研究のために、ラットは、関節炎誘導の直後の0日目に開始されたかまたは1日目に開始された、1mg/kgのcgtx−544ペプチドの静脈内注射を毎日受けた。対照動物は、ビヒクル(0.9%NaCl)の注射を毎日受けた。
【0263】
関節炎の重症度は、ノギスを用いる膝関節直径の3反復の測定によって監視した。値は、−21日目に正規化した。膝腫脹値の差は、右の(誘導した)膝直径から左の(非誘導)直径を引き算することによって計算した。
【0264】
2.結果
cgtx−544(混合物)(1mg/kg BW)により試験した両方の処置開始時点は、処置動物で膝腫脹を明らかに低減する統計的に有意な効果を示した(
図20)。
【0265】
結果の統計分析のために、ウェルシュの2試料t検定を用いた。以下では、cgtx−544の両方の処置レジメン(d0およびd1)の統計分析を、1、2および3日目について示す。ビヒクル対照と比較したとき、両処置レジメンは膝腫脹の統計的に有意な低減を示した(
図21)。
【0266】
白血球(WBC)数の時間経過を、
図22に示す。好中球の時間経過は、
図23に示す。リンパ球の時間経過は、
図24に示す。
【0267】
cgtx−544(混合物)処置は、膝関節腫脹の有意な低減を示す。処置した動物での残りの腫脹は、抗体/抗原反応のせいであると仮定された。したがって、免疫化された動物ならびにナイーブな動物を、mBSA特異的抗体の存在について試験した。mBSAに対する抗体は、関節炎誘導の7日後に群HおよびIの全ての免疫化動物で検出することができた(
図27)。ナイーブ動物(実験群F)は、mBSAに対しいかなる反応性も示さなかった。cgtx−544療法は、Bリンパ球および抗体形成を抑制しないようである。さらに、cgtx−544ペプチド療法下で10日後の免疫化動物は、cgtx−544(混合物)(trxタグとの融合タンパク質L544−2a、データ示さず)で反応性を示さなかった。
【0268】
要約すると、AIAモデルでのcgtx−544ペプチド療法は、炎症性関節炎症状、特に膝腫脹に強力な効果を有し、最大低減は、療法が0日目に関節炎誘導の直後に開始された場合は40%、または療法が1日目に開始された場合は58%であった。処置の7日後、療法群での膝直径は、誘導しなかった個体内対照膝とほとんど同等の直径にさらに減少した。さらに、cgtx−544ペプチド処置個体のWBC、好中性顆粒球およびリンパ球は、ビヒクル処置個体と同等の絶対的および相対的細胞数を示した。
[実施例5C]
【0269】
RAのAIAラットモデルでのcgtx−544(混合物)の持続的有効性
以前の実験(実施例5Aおよび5Bを参照する)は、異なる処置レジメン、治療的および予防的、の下で毎日適用したとき、cgtx−544がAIAラットモデルで優れた有効性を有することを実証した。cgtx−544による処置間隔がどのくらいの長さになるかについてのヒントを得るために、cgtx−544の活性がAIAモデルでどのくらい長く持続するか明らかにしようと試みた。したがって、週1回の適用スキームによる治療処置レジメンを設定した。
【0270】
1.材料および方法
完全フロイントアジュバント中の抗原mBSAおよび750μgの熱不活性化結核菌(Mycobacterium (M.) tuberculosis)のエマルジョンによる−21日目および−14日目の2回の免疫化の後、上の実施例5に記載の通り、0日目に右の膝へのメチル化BSAの関節内注射によってAIAを誘導した。cgtx−544ペプチドの有効性および持続的療法効果の研究のために、ラット(10個体)は、関節炎誘導から1日目(d1)に1mg/kgのcgtx−544ペプチドの単回の静脈内注射を受けた。4日目(d4)に、cgtx−544療法群を各々5個体の2つのサブグループに分けた。第1のサブグループは、2回目の注射が腫脹のさらなる低減につながるかどうか評価するために、cgtx−544の2回目の注射を受けた。第2のサブグループは、追加の投薬を受けなかった。対照動物は、1日目にビヒクル(0.9%NaCl)の単回注射を受けた。
【0271】
関節炎の重症度は、ノギスを用いた膝関節直径の3反復の測定によって監視した。値は、−21日目に正規化した。膝腫脹値の差は、右の(誘導した)膝直径から左の(非誘導)直径を引き算することによって計算した。
【0272】
2.結果
cgtx−544(1mg/kg BW)による単回注射(1×d1)は、適用の24時間後に処置動物で膝腫脹の明らかで統計的に有意な低減を示した(
図25)。腫脹は、4日目の2回目の単回注射の後(1×d1および1×d4)に、有意な値に再び低減することができた。1回目および2回目の注射の後、膝腫脹は同じレベルのままであり、増加しなかった。
【0273】
結果の統計分析のために、ウェルシュの2試料t検定を用いた。以下では、cgtx−544の両処置レジメン(1×d1または1×d1および1×d4)の統計分析を、2日目(群の分割前)および5日目(分割群)について示す。ビヒクル対照と比較したとき、両処置レジメンは各注射の24時間後に膝腫脹の統計的に有意な低減を示した(
図26)。
【0274】
要約すると、AIAモデルでのcgtx−544ペプチド療法は、炎症性関節炎症状、特に膝腫脹に強力で持続的な効果を示し、腫脹低減の開始は単回注射の24時間後であった。単回注射の3日後でさえ、cgtx−544ペプチドは持続的活性および臨床効果を実証し、膝腫脹のレベルは一定であった。したがって、AIAラットモデルでの持続的治療効果のために、ペプチドを毎日投与する必要はない。したがって、静脈内投与のために3〜4日間の処置間隔(または、可能な皮下投与経路のためにはより長い)を達成することができる可能性がある。
【実施例6】
【0275】
AIAラットモデルでのメトトレキセート(MTX)療法とcgtx−544ペプチド(配列番号25)療法との比較
1.AIAラットモデルでのメトトレキセート(MTX)療法とcgtx−544(配列番号25)療法との比較
疾患の形態および重症度によって、メトトレキセート(MTX)による療法は、用量およびレジメンが異なる。標準療法との比較で、高用量MTX療法1mg/kg体重を皮下に週1回(J群、n=7)、および100μg/kg体重を静脈内に1日1回の低用量MTX療法(L群、n=7)をAIAラットモデルで検査した。高用量MTX療法は実験の初日(−21日目)に開始し、さらに3回(−14、−7、0日目)投与した。低用量MTX療法は関節炎誘導の3日前(−3日目)に開始し、関節炎誘導後のさらに7日間続いた。結果を、cgtx−544療法群I(1mg/kg体重のcgtx−544、L群と同じレジメン)およびビヒクル対照群H(誘導日の0日目に開始した0.9%NaClの1日1回の静脈内投与)と比較した。関節炎の重症度は、ノギスを用いた膝関節直径の3反復の測定によって監視した。免疫状態を監視するために、EDTA全血試料を定期的に取った。
【0276】
1.1cgtx−544療法と比較してより低い程度へのMTX療法による膝腫脹の低減
最初に、用量およびレジメンによる可能な有効性の差を示すために、高用量(J)および低用量(L)MTX療法群の膝パラメータを、ビヒクル対照群(H)と比較する。第2に、同じレジメン(毎日の静脈内適用)の3群、低用量(L)MTX療法群、cgtx−544療法群(I)およびビヒクル対照群(H)を比較する。右の(誘導した)膝直径から左の(非誘導)直径を引き算することによって、腫脹の絶対的増加の差を計算した。両膝のサイズは同等であるので、実験の初めのMTX高用量および低用量療法の両群の計算された差はゼロに近かった(それぞれ、0.01±0.06mmおよび0.0±0.03mm)。関節炎誘導の1日後に、差はそれぞれ3.17±1.26mmおよび3.45±0.87mmまで上昇する(
図11)。
【0277】
cgtx−544療法群と対照的に、3.79±1.10mmの絶対差を有するビヒクル対照群と比較して、腫脹の減少はあまり速くない(
図12)。
【0278】
0から1の間のスケーリングによる値の正規化のために、実験開始時(−21日目)の腫脹の相対的増加を0に設定し、腫脹の相対的増加の差を前の通り計算した。MTX高用量および低用量療法群の相対的な差は、それぞれ0.39±0.16および0.43±0.11になった(
図13)。
【0279】
対して、ビヒクル対照群およびcgtx−544療法群は、それぞれ0.46±0.14および0.18±0.05になった(
図14)。要約すると、関節炎誘導の24時間後に、ビヒクル対照群に対して、cgtx−544療法ラットでの60%と比較して、MTX高用量療法ラットで平均15%の、およびMTX低用量療法ラットでは7%の膝腫脹の低減を観察した。
【0280】
1.2増殖細胞へのMTXの細胞増殖抑制効果
スクリーニングのために、全個体の健康状態、完全なヘモグラムを再び用いた。誘導前に毎週、誘導の日ならびに誘導の4および7日後に(−21、−14、−7、0、4および7日目;MTX低用量療法群ではさらに静脈内適用を開始した−3日目に)、MTX高用量および低用量療法の両群からの7個体のEDTA全血を、Sysmex XT−2000i.Vで測定した。未処置動物(−21日目)の血液学的データは、文献で提供されたデータと同等である。
【0281】
1.2.1白血球
実験の開始時(−21日目)、MTX高用量および低用量療法群の白血球数は、それぞれ、9.41±1.42×10
3/μlおよび11.66±2.81×10
3/μlであった。免疫系の炎症性反応のために、WBC数は、1回目および2回目の免疫化の後にそれぞれ20.79±5.96×10
3/μlおよび24.01±3.81×10
3/μlまで上昇した(−7日目)。値は、ビヒクル対照群およびcgtx−544療法群と同等である。7日以内に、WBC数はわずかに減少した。関節炎誘導の4日後、おそらく誘導と関係する急性炎症性過程のために、MTX高用量療法群のWBC数は再び増加した。cgtx−544療法群およびビヒクル対照群についてはEDTA全血をこの日に分析しなかったので、この効果がこれらの2つの群でも同様に起こるかどうか言うことができない。同様に、MTX低用量療法群については、関節炎誘導の4日後にMTXの細胞傷害性効果が血液組成に影響する可能性があるので、WBC数は適当な比較の役割を果たすことができない。関節炎誘導からさらに7日後、MTX高用量および低用量療法の両群で、WBC数がそれぞれ14.68±2.15×10
3/μlおよび6.63±1.37×10
3/μlにさらに減少し(7日目)(
図15)、したがって、MTX低用量療法の細胞増殖抑制効果を示している。WBC数は、実験の初めと比較して、ほぼ50%減少した。対照的に、MTX高用量療法群のWBC数は、cgtx−544療法群およびビヒクル対照群のそれらと同等である。
【0282】
1.2.2好中性顆粒球
実験の初め(−21日目)、MTX高用量および低用量療法群の絶対的好中性顆粒球数は、それぞれ、1.55±0.52×10
3/μlおよび1.93±0.6×10
3/μlであった(
図16A)(それぞれ、全WBC数の16.39±4.85%の相対的好中球および全WBC数の16.64±4.07%の相対的好中球に等しい(
図16B))。WBC数のように、好中性顆粒球数も、1回目および2回目の免疫化の後にそれぞれ7.54±3.19×10
3/μlおよび10.77±2.7×10
3/μlまで上昇した(−7日目、それぞれWBCの35.46±7.08%およびWBCの44.33±5.4%に等しい)。7日以内に、好中性顆粒球数は減少し、誘導の7日後には、MTX高用量療法群での数は実験の初めのそれらと同等だった(1.94±1.1×10
3/μl、WBCの12.63±6.1%に等しい)。この効果は、cgtx−544療法群およびビヒクル対照群でも同様に観察された。MTX低用量療法群は、0.33±0.36×10
3/μlの好中性顆粒球と、ずっと大きな減少を示した(7日目、WBCの4.41±4.63%に等しい)。
【0283】
1.2.3リンパ球
実験の開始時(−21日目)、MTX高用量および低用量療法群の絶対的リンパ球数は、それぞれ、7.39±1.05×10
3/μlおよび9.21±2.4×10
3/μlであった(
図17A)(それぞれ、WBCの78.77±4.76%およびWBCの78.97±3.94%に等しい(
図17B))。WBCおよび好中性顆粒球数と異なり、MTX高用量および低用量療法の両群でのリンパ球数は、1回目および2回目の免疫化の後に有意に上昇せず、それぞれの数は11.68±2.8×10
3/μlおよび11.83±1.35×10
3/μlであった(−7日目)。これは、それぞれWBCの57.01±6.45%およびWBCの49.83±5.45%に等しく(−7日目)、全WBC数が強く増加したので百分率の低下を示している。7日以内に、リンパ球のWBC百分率は再び増加し、誘導の7日後、MTX高用量療法群では、それは実験の初めの百分率と同等であって(WBCの78.16±7.20%、7日目)、それがさらにより高くなったMTX低用量療法群(WBCの93.13±4.66%、7日目)とは異なる。実験の初めと比較して、MTX高用量療法群での絶対数は増加し、MTX低用量療法群は減少した:それぞれ、11.38±1.15×10
3/μlおよび6.14±1.11×10
3/μl(7日目)。実験の初めと比較してMTX低用量療法群の絶対的リンパ球数は関節炎誘導の7日後に低減するが、それは全白血球の約93%をなお占める。これから、白血球の他の亜集団がリンパ球集団よりも細胞傷害性効果によって影響を受けるという仮定が導かれる。
【0284】
MTXによる処置は、ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害につながり、増殖細胞への細胞増殖抑制効果をもたらす。全身性免疫抑制を示さなかったcgtx−544療法下の個体と異なり、MTXで処置された個体は、ビヒクル対照群と比較してヘモグラムで異なる効果を示した。関節炎誘導の7日後に、低用量で処置された個体は、WBC数、好中性顆粒球数およびリンパ球数が低減した。さらに、これは全ての白血球百分率の異なる組成をもたらす。さらに、両方のMTXレジメンで、関節炎誘導の24時間後に、cgtx−544療法ラットにおける60%と比較してずっと小さい膝腫脹の低減を観察した(7%および15%)。
【0285】
MTX有効性結果の統計分析のために、ウェルシュの2試料t検定を用いた。以下では、全ての試験したMTX用量レベル(0.1mg/kg BW静脈内および1mg/kg BW皮下)の統計分析を、1日目および3日目について示す(
図28)。
【0286】
要約すると、MTXによる処置は、ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害につながり、増殖細胞への細胞増殖抑制効果をもたらす。cgtx−544ペプチド療法下の個体と異なり、MTXで処置された個体は、ビヒクル対照群と比較してヘモグラムで異なる効果を示した。関節炎誘導の7日後に、低用量で処置された個体は、WBC数、好中性顆粒球数およびリンパ球数が低減した。さらに、これは全ての白血球百分率の異なる組成をもたらす。さらに、両方のMTXレジメンで、関節炎誘導の24時間後に、cgtx−544ペプチド療法ラットにおける最大の70%と比較してずっと小さい膝腫脹の低減を観察した(7%および15%)。
【実施例7】
【0287】
cgtx−544のさらなる特徴付け
cgtx−544ペプチドは改変なしで38個の天然アミノ酸からなり、概ね4220Daの分子量を有する。それは、ある特定の機能的ドメイン類似性をサソリペプチドのα−KTx6サブファミリーと共有する。cgtx−544は4つのジスルフィド架橋によって拘束され、その3D構造はα−ヘリックス/β−シート立体配置を含む。
【0288】
cgtx−544の製造
図29は、cgtx−544ペプチドの製造ステップの概略図を提供する。ペプチド合成は、F−moc戦略により不溶性ポリスチロール樹脂で実行する。固相結合ペプチドの遊離のN末端アミンを、単一のN保護アミノ酸単位に結合する。この単位を次に脱保護し(F−moc基はピペリジンによって塩基性pHで切断される)、さらなるアミノ酸を結合することができる新しいN末端アミンを露出させる。tert.−ブチルオキシカルボニル(Boc)基は恒久的な側鎖保護基の役割を果たし、ペプチド合成の終了後にTFA(トリフルオロ酢酸)処理によって切断される。
【0289】
ペプチド合成の完了後、ペプチドを脱保護し、ポリスチロール樹脂から切断する。この時点で、生のペプチド生成物は、分析的UPLCおよびLC−MSに従って約50%の純度を示す。以降のステップでは、分取HPLCによって生のペプチドを精製し、≧90%の純度を有する直鎖ペプチド生成物をもたらす。
【0290】
cgtx−544ペプチドの折畳み
このペプチド溶液は、酸化(ジスルフィド結合の形成)によって折り畳まれる。折畳み方法は、大気酸素の存在下のpH8.3のリン酸緩衝液での結合形成に基づく。このプロトコールに従って折り畳まれたcgtx−544のHPLC分析は、このペプチドが、折り畳まれたおよび部分的に折り畳まれた変異体の混合物として存在することを示した。この中間折畳み生成物は、cgtx−544(混合物)と呼ばれる。異なる単離されたUPLCピークの材料で生成された電気生理学的データに基づくと、折畳み混合物の1つのピーク(滞留時間12.77分)は天然の活性ペプチドと相関するが、他の全てのピークは電気生理学的活性と相関しないと結論付けられた(
図30)。そこで、折畳み反応の後、折り畳まれたおよび部分的に折り畳まれたペプチドのcgtx−544混合物から、活性ペプチド(滞留時間12.77分)を分取HPLCによって精製した。この精製ステップの後、cgtx−544(Sing)と呼ばれる活性ペプチドは、95%を超える推定純度を通常有する。精製されたcgtx−544(Sing)ペプチドは、室温および4℃で最高数週間、0.9%NaCl溶液に高度に可溶性で安定している。
【0291】
プロセス開発のために、精製ペプチドcgtx−544(Sing)は、小規模フォーマットだけで生成した。したがって、材料が制限されており、Kv1.3、Kv1.1、Kv1.2およびKv1.5でのcgtx−544(Sing)のIC
50値を特定することを目的とした実験で用いた(実施例8を参照する)。用語cgtx−544(sing)によって特記されない限り、本明細書(実施例1〜6)に記載される他の全ての実験では、cgtx−544の未精製折畳み混合物(cgtx−544(混合物))を用いた。混合物中の活性物質の含有量は、15%であると計算された。
【0292】
要約すると、cgtx−544ペプチドは、生化学的分析にとって重要になる以下の生化学的特性を示す:
・cgtx−544は高塩基性のペプチドであり、6つのリジンおよび2つのアルギニンアミノ酸を含有し、低濃度(<100ng/ml)でガラスバイアルの表面に固着することができる。
・それは8つのシステインアミノ酸を含有し、それらは4つのジスルフィド架橋で連結される。
・等電点:9.29。
・MW:4212Da、ジスルフィド架橋が結合しているとき、MW:4220.2Da、還元形態
・4つのジスルフィド架橋の存在のために、cgtx−544の構造はコンパクトである。
【実施例8】
【0293】
電気生理学的分析に基づくcgtx−544(sing)のイオンチャネル選択性のさらなる特徴付け
1.材料および方法
イオンチャネルは、実施例1、2および4に記載の通り、バキュロウイルス(Kv1.1、Kv1.3およびKv1.5構築物)感染Sf21細胞または安定してトランスフェクトされたCHO細胞(Kv1.2)によって発現させた。電気生理学的分析は、自動化パッチクランプ装置「Patchliner」(Nanion Technologies、Munich、Germany)で実施した。Patchlinerは、ガラスピペットの代わりに平面パッチクランプ方法のホウケイ酸ガラスチップ(NPC−16)に基づく。Patchlinerは、同時に4つの細胞を記録することができる。全てのチャネル記録は、全細胞モードで行った。データの記録は、PatchMasterソフトウェア(HEKA Electronics、Lambrecht/Pfalz、Germany)で実施した。実験結果の可視化は、IGORソフトウェア(Wavemetrics、USA)で実現した。平均データは、平均±平均の標準誤差(SEM)で提供される。
【0294】
試験化合物は、濃縮した保存溶液(大部分は1.5μg/μl)として用いた。保存溶液は、必要な最終濃度に緩衝液で希釈した。
【0295】
2.結果
2.1 IC
50 − 標的チャネルKv1.3の分析
化学合成(実施例7を参照する)の後、大気酸素による酸化によってペプチドを折り畳み、正しく折り畳まれた(生物学的に活性な)ペプチド画分を分取HPLCによって精製した。この精製されたcgtx−544ペプチドは、単一のピークを有するのでcgtx−544(Sing)と命名した。
【0296】
cgtx−544(Sing)の電気生理学的分析は、6.9nMの優れたIC
50値をもたらした(
図31)。
【0297】
2.2 Kv1.1、Kv1.2およびKv1.5でのcgtx−544(Sing)の電気生理学的分析
Kv1.1、Kv1.2およびKv1.5でのcgtx−544(Sing)の電気生理学的分析は、cgtx−544が高度に選択的であることを実証した。Kv1.1、Kv1.2およびKv1.5でのcgtx−544(Sing)の電気生理学的特徴付けの結果を、
図32に要約する。
【実施例9】
【0298】
cgtx−544(Sing)のプロテアーゼ抵抗性
実施例3に記載される実験に加えて、cgtx−544ペプチドの安定性をin vitro条件下において血清試料で試験した。したがって、ヒト血清中でのcgtx−544(Sing)の安定性は、ヒト血清へのcgtx−544(Sing)の既知量の添加および以降の37℃でのインキュベーションによって決定した。ctx−544(Sing)のブロッキング活性を57日間にわたってKv1.3チャネルで測定した。cgtx−544(Sing)は、ヒト血清中で極めて安定している。その活性は少なくとも16時間一定であり、57日後にいかなるペプチドブロッキング効果も検出できなくなるまで徐々に衰える。これは、cgtx−544が血中プロテアーゼの作用に非常に抵抗性であることを実証する(
図33)。
【0299】
血清の非存在下で実行された測定に対してブロッキング効力の低減は観察されず、IC50は7nM域のままである。ペプチドなしの血清対照試料は、Kv1.3の非特異的遮断を示さなかった。したがって、見られたブロッキング効果はcgtx−544(Sing)の効果だけによると結論付けられた。57日間のインキュベーション溶液で測定されたcgtx−544(Sing)の濃度に対応することには、37℃のヒト血清でcgtx−544(Sing)の50%活性が5日間保たれた。
【0300】
要約すると、37℃のヒト血清中でのcgtx−544の持続性は非常に高い。cgtx−544は血清構成成分に結合せず、たとえ結合したとしても非常に低い親和性においてのみ結合し、ヒト血清中に存在するプロテアーゼによる分解に極めて抵抗性である。
【実施例10】
【0301】
cgtx−544(Sing)のin vivo半減期
この研究の目的は、ラットにおいてcgtx−544(Sing)のin vivo半減期を評価する生物検定を実行することであった。以前の実験(実施例3)は、血清に混入させて37℃でインキュベートしたときに、cgtx−544は速やかに分解されないことを示していた。
【0302】
1.材料および方法
ラットは、cgtx−544(Sing)(750μg/kg BW)の静脈内注射を受けた。0、1、10および60分の時点で、血液を抜き取った。その後、血液試料から血清を調製した。これらの試料中のcgtx−544含有量は、CHO細胞で発現されるKv1.3チャネルへのブロッキング効果を測定することによって電気生理学的に分析した。ペプチドのない血清対照試料(0分)はKv1.3の非特異的遮断を示さず、1分試料のcgtx−544(Sing)活性は100%と考えられた。第3の時点(60分)で収集した試料は、元のブロッキング活性の10%を示した。ラットで未結合のcgtx−544(Sing)の量を研究するために、上記の時点での循環血液中に存在するcgtx−544(Sing)の量を、較正曲線によって計算した。この較正曲線は、血清へのcgtx−544(Sing)の既知量の添加および以降のKv1.3チャネルでの電気生理学的測定によって得られた。これらの混入試料によるKv1.3電流の遮断は、血清の非存在下でcgtx−544(Sing)で得られたものに類似していた(データ示さず)。
【0303】
2.結果
処置ラットの血液でのcgtx−544(Sing)の減衰は一般的な減衰曲線に従い、およそt
1/2=26分(
図34)の半減期を与え、循環血液中のcgtx−544(Sing)のおよその濃度は62nMであった。この濃度は、Kv1.3チャネルの完全な遮断を達成するのに十分である。この半減期は、他のペプチドチャネルブロッカーで見られる範囲内であり、ShK毒素の変異体は20から50分の間の半減期を示す。
【0304】
要約すると、ラットにおける静脈内適用の後のcgtx−544のin vivo半減期は、競合剤ペプチドShKの範囲内である。in vivo半減期は、概ね26分である。cgtx−544の小さいサイズおよびコンパクトな構造のため、このペプチドはおそらく腎臓濾過を通して血液から除かれると仮定される。ラットはヒトよりずっと速い代謝速度を有するので、ヒトでのcgtx−544の半減期はラットでより長いと仮定することは合理的である。ペプチドはイオンチャネルにタイトに結合して長時間それを遮断するので、in vivo半減期は薬物効果の持続期間に対応しない。
【実施例11】
【0305】
臨床データ
臨床試験は、今日まで実施されていない。
【0306】
ファースト−イン−マン研究
フェーズ1研究は、健康対象における無作為化二重盲検プラセボ対照単一施設試験であってもよい。
【0307】
この研究の第1部は、より低い用量群のための4被験者(3+1)およびより高い用量群のための8被験者(2+6)のコホートにおける、単回投与用量増加試験であってもよい。初回用量は、産業のためのFDA指針「成人健康ボランティアで治療薬のための初期臨床治験で最大安全初回用量を推定する」で定められた、毒性研究におけるNOAELから推定される。
【0308】
フェーズ1aの第2部は、多回投与研究として設計することができる。8被験者(6+2)の1つのコホートは、7回の毎日の連続適用のためにMTD未満の1つの用量レベルに曝露させられる。
【0309】
この標準のフェーズ1a研究の主な目標は、健康対象でcgtx−544の安全性、耐容性および薬物動態を評価することであってもよい。
【0310】
概念実証試験
このフェーズ2a試験は、中等度から重度のプラーク型乾癬患者での、無作為化二重盲検プラセボ対照多施設概念実証および用量設定試験であってもよい。
【0311】
プレーンフェーズ2a概念実証試験は、80人の成人患者(20+60)および3つの用量レベルを含む。各用量レベルは、12週の間、20人の患者で試験される。
【0312】
一次エンドポイント:12週でPASI 75を達成する被験者(少なくとも75%のベースラインPASIからの改善を有する患者)の割合。
【0313】
二次エンドポイント:有害事象、バイタルサイン、臨床検査パラメータ、身体検査およびEEGを評価することによる、最高12週間のcgtx−544の安全性の評価。
【0314】
最初の処置から12週間の異なる時点のcgtx−544の薬物動態。12週でIGAスコア「クリア」または「ほとんどクリア」を達成する被験者の割合。
【0315】
12週でPASI 50を達成する被験者(少なくとも50%のベースラインPASIからの改善を有する患者)の割合。
【0316】
12週でPASI 90を達成する被験者(少なくとも90%のベースラインPASIからの改善を有する患者)の割合。
【0317】
類似の研究を、脈管炎のために実行することができる。それに応じて、エンドポイントを評価しなければならない。