特許第6989443号(P6989443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989443
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20211220BHJP
【FI】
   G01N27/416 376
   G01N27/416 331
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-100595(P2018-100595)
(22)【出願日】2018年5月25日
(65)【公開番号】特開2019-203848(P2019-203848A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】古田 斉
【審査官】 小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−142243(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/189889(WO,A1)
【文献】 特開2004−117098(JP,A)
【文献】 特開2004−219384(JP,A)
【文献】 特開2002−228626(JP,A)
【文献】 米国特許第6660142(US,B2)
【文献】 特開2001−242124(JP,A)
【文献】 特開2005−077210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/30
G01N 27/409
G01N 27/414
G01N 27/416
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性を有する絶縁部材の上に設置され、前記絶縁部材から近い順に、電気絶縁性を有する多孔質の材料で形成された絶縁多孔質層と、参照電極と、固体電解質体と、検知電極とが積層された構造を有し、被検出雰囲気内における検出対象ガスの濃度を検出するガスセンサであって、
前記絶縁部材と前記絶縁多孔質層との間に配置される参照電極リードを備え、
前記絶縁多孔質層には、前記参照電極リードと前記参照電極とにより挟まれる箇所に、前記絶縁多孔質層を貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔の内部には、前記貫通孔における一端側の開口部から他端側の開口部に至るようにして、導電性を有する材料で形成された導電性物質が配置され、前記導電性物質を介して前記参照電極リードと前記参照電極とが電気的に導通するガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサであって、
前記貫通孔は、前記絶縁多孔質層と前記参照電極と前記固体電解質体と前記検知電極とが積層される積層方向に対して垂直な基準面への正射投影において前記検知電極と重なる部分が存在しないように配置されるガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検出雰囲気中に存在するガスの濃度を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気絶縁性を有する絶縁部材の上に設置され、絶縁部材から近い順に、絶縁多孔質層、参照電極、固体電解質体および検知電極が積層された構造を有し、被検出雰囲気内における検出対象ガスの濃度を検出するガスセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−142243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のガスセンサでは、絶縁部材の上に絶縁多孔質層が積層されているために、絶縁部材の表面と絶縁多孔質層の表面との間に段差が形成されている。そして、参照電極と電気的に接続される参照電極リードは、絶縁部材の表面に形成されている。このため、参照電極リードが上記の段差を乗り上げるように参照電極リードを形成することにより、絶縁多孔質層の上に積層されている参照電極と、絶縁部材の表面に形成されている参照電極リードとが接続される。しかし、このように参照電極リードを形成することにより、参照電極リードにも段差が形成され、この段差の部分で、参照電極リードの断線が発生し易くなる恐れがあった。
【0005】
本開示は、参照電極リードにおける断線の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、電気絶縁性を有する絶縁部材の上に設置され、絶縁部材から近い順に、電気絶縁性を有する多孔質の材料で形成された絶縁多孔質層と、参照電極と、固体電解質体と、検知電極とが積層された構造を有し、被検出雰囲気内における検出対象ガスの濃度を検出するガスセンサである。
【0007】
そして、本開示のガスセンサは、絶縁部材と絶縁多孔質層との間に配置される参照電極リードを備える。絶縁多孔質層には、参照電極リードと参照電極とにより挟まれる箇所に、絶縁多孔質層を貫通する貫通孔が形成される。また、貫通孔の内部には、貫通孔における一端側の開口部から他端側の開口部に至るようにして、導電性を有する材料で形成された導電性物質が配置され、導電性物質を介して参照電極リードと参照電極とが電気的に導通する。
【0008】
このように構成された本開示のガスセンサでは、参照電極リードが絶縁部材と絶縁多孔質層との間に配置された状態で、参照電極リードと参照電極とが電気的に接続される。このため、本開示のガスセンサは、参照電極リードが、絶縁部材の表面と絶縁多孔質層の表面との間に形成される段差に乗り上げないようにすることができる。これにより、本開示のガスセンサは、参照電極リードにおける断線の発生を抑制することができる。
【0009】
また、本開示の一態様では、貫通孔は、絶縁多孔質層と参照電極と固体電解質体と検知電極とが積層される積層方向に対して垂直な基準面への正射投影において検知電極と重なる部分が存在しないように配置されるようにしてもよい。
【0010】
これにより、本開示のガスセンサは、検知電極が形成されている領域(以下、検知電極形成領域)の下に参照電極リードの端部が配置されないようにすることができる。すなわち、本開示のガスセンサは、検知電極形成領域の下に、絶縁部材の表面と参照電極リードの表面との間に形成される段差が配置されないようにすることができる。これにより、本開示のガスセンサは、絶縁多孔質層と参照電極と固体電解質体と検知電極とが積層されている箇所で、厚さが不均一となってしまう事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】マルチガスセンサの内部構造を示す断面図である。
図2】センサ素子部と制御部の概略構成を示す図である。
図3】アンモニア検出部の分解斜視図である。
図4】積層体の断面を製造工程毎に示す図である。
図5】積層体の表面を製造工程毎に示す図である。
図6】アンモニア検出部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のマルチガス検出装置は、車両に搭載され、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する尿素SCRシステムに用いられる。SCRは、Selective Catalytic Reductionの略である。より具体的には、マルチガス検出装置は、排気ガスに含まれるNOxとアンモニアとを反応させた後の排気ガスに含まれる一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)およびアンモニアの濃度を測定する。以下、マルチガス検出装置を搭載する車両を自車両という。
【0013】
マルチガス検出装置は、図1に示すマルチガスセンサ2と、図2に示す制御部3とを備える。
マルチガスセンサ2は、図1に示すように、センサ素子部5と、主体金具10と、セパレータ34と、接続端子38とを備える。なお、以下の説明では、マルチガスセンサ2のセンサ素子部5が配置されている側(すなわち、図1の下側)を先端側FE、接続端子38が配置されている側(すなわち、図1の上側)を後端側BEという。
【0014】
センサ素子部5は、軸線Oの方向(以下、軸線方向DA)に延びる板形状を有する。センサ素子部5の後端には電極端子部5A,5Bが配置されている。図1においては、図示を容易にするために、センサ素子部5に形成された電極端子部を、電極端子部5Aおよび電極端子部5Bのみとしているが、実際には、後述するNOx検出部101およびアンモニア検出部102が有する電極等の数に応じて複数の電極端子部が形成されている。
【0015】
主体金具10は、マルチガスセンサ2をディーゼルエンジンの排気管に固定するネジ部11が外表面に形成された筒状の部材である。主体金具10は、軸線方向DAに貫通する貫通孔12と、貫通孔12の径方向内側に突出する棚部13とを備える。棚部13は、貫通孔12の径方向外側から中心に向かって先端側FEへ近づく傾きを有する内向きのテ―パ面として形成されている。
【0016】
主体金具10は、センサ素子部5の先端側FEを、貫通孔12から先端側FEに突出させ、センサ素子部5の後端側BEを貫通孔12の後端側BEに突出させた状態で保持する。
【0017】
主体金具10の貫通孔12の内部には、先端側FEから後端側BEに向かって順に、センサ素子部5の径方向周囲を取り囲む筒状の部材であるセラミックホルダ14と、粉末充
填層である滑石リング15,16と、セラミックスリーブ17とが積層されている。
【0018】
セラミックスリーブ17と主体金具10の後端側BEの端部との間には、加締めパッキン18が配置されている。セラミックホルダ14と主体金具10の棚部13との間には、金属ホルダ19が配置されている。金属ホルダ19は、滑石リング15とセラミックホルダ14を保持する。主体金具10の後端側BEの端部は、加締めパッキン18を介してセラミックスリーブ17を先端側FEに向かって押し付けるように加締められる部分である。
【0019】
主体金具10の先端側FEの端部には、外部プロテクタ21および内部プロテクタ22が設けられている。外部プロテクタ21および内部プロテクタ22は、先端側FEの端部が閉塞されたステンレス鋼などの金属材料から形成された筒状の部材である。内部プロテクタ22は、センサ素子部5の先端側FEの端部を覆った状態で主体金具10に溶接され、外部プロテクタ21は、内部プロテクタ22を覆った状態で主体金具10に溶接されている。
【0020】
主体金具10の後端側BEの端部には、筒状に形成された外筒31の先端側FEの端部が固定されている。さらに、外筒31の後端側BEの端部である開口には、この開口を閉塞するグロメット32が配置されている。
【0021】
グロメット32には、リード線41が挿入されるリード線挿入孔33が形成されている。リード線41は、センサ素子部5の電極端子部5Aおよび電極端子部5Bに電気的に接続される。
【0022】
セパレータ34は、センサ素子部5の後端側BEに配置された筒状に形成された部材である。セパレータ34の内部に形成された空間は、軸線方向DAに貫通する挿入孔35である。セパレータ34の外表面には、径方向外側に突出する鍔部36が形成されている。
【0023】
セパレータ34の挿入孔35には、センサ素子部5の後端部が挿入され、電極端子部5A,5Bがセパレータ34の内部に配置される。
セパレータ34と外筒31との間には、筒状に形成された保持部材37が配置されている。保持部材37は、セパレータ34の鍔部36と接触するとともに、外筒31の内面と接触することにより、セパレータ34を外筒31に対して固定した状態で保持する。
【0024】
接続端子38は、セパレータ34の挿入孔35内に配置される部材であり、センサ素子部5の電極端子部5Aおよび電極端子部5Bと、リード線41とをそれぞれ独立に電気的に接続する導電部材である。なお、図1では、図示を容易にするために、2つの接続端子38のみが図示されている。
【0025】
マルチガス検出装置の制御部3は、図2に示すように、自車両に搭載された電子制御装置200と電気的に接続されている。電子制御装置200は、制御部3で算出された排気ガス中のNO濃度、NO濃度およびアンモニア濃度を示すデータを受信し、受信データに基づいてディーゼルエンジンの運転状態の制御処理を実行したり、触媒に蓄積されたNOxの浄化処理を実行したりする。
【0026】
センサ素子部5は、NOx検出部101と、アンモニア検出部102とを備える。
NOx検出部101は、絶縁層113、セラミック層114、絶縁層115、セラミック層116、絶縁層117、セラミック層118、絶縁層119および絶縁層120が順次積層されて構成されている。絶縁層113,115,117,119,120は、アルミナを主体として形成されている。
【0027】
NOx検出部101は、セラミック層114とセラミック層116との間に形成される第1測定室121を備える。NOx検出部101は、第1測定室121に隣接するようにしてセラミック層114とセラミック層116との間に配置された拡散抵抗体122を介して、外部から第1測定室121の内部に排気ガスを導入する。拡散抵抗体122は、アルミナ等の多孔質材料で形成されている。
【0028】
NOx検出部101は、第1ポンピングセル130を備える。第1ポンピングセル130は、固体電解質層131と、ポンピング電極132,133を備える。
固体電解質層131は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。第1測定室121と接触する領域における一部分のセラミック層114が除去され、セラミック層114の代わりに固体電解質層131が充填されている。
【0029】
ポンピング電極132,133は、白金を主体として形成されている。ポンピング電極132は、固体電解質層131において第1測定室121と接触する面上に配置される。ポンピング電極133は、固体電解質層131を挟んでポンピング電極132とは反対側で固体電解質層131の面上に配置される。ポンピング電極133が配置された領域とその周辺の領域の絶縁層113は除去され、絶縁層113の代わりに多孔質体134が充填される。多孔質体134は、ポンピング電極133と外部との間で酸素の出入りを可能とする。
【0030】
NOx検出部101は、酸素濃度検出セル140を備える。酸素濃度検出セル140は、固体電解質層141と、検知電極142と、基準電極143とを備える。
固体電解質層141は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。固体電解質層131よりも後端側BEの領域における一部分のセラミック層116が除去され、セラミック層116の代わりに固体電解質層141が充填されている。
【0031】
検知電極142と基準電極143は、白金を主体として形成されている。検知電極142は、固体電解質層141における第1測定室121と接触する面上に配置される。基準電極143は、固体電解質層141を挟んで検知電極142とは反対側で固体電解質層141の面上に配置される。
【0032】
NOx検出部101は、基準酸素室146を備える。基準酸素室146は、基準電極143が配置された領域とその周辺の領域の絶縁層117が除去されることにより形成された貫通孔である。
【0033】
NOx検出部101は、第2測定室148を備える。第2測定室148は、検知電極142および基準電極143よりも後端側BEで固体電解質層141および絶縁層117を貫通して形成される。NOx検出部101は、第1測定室121から排出された排気ガスを第2測定室148の内部に導入する。
【0034】
NOx検出部101は、第2ポンピングセル150を備える。第2ポンピングセル150は、固体電解質層151と、ポンピング電極152,153とを備える。
固体電解質層151は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。基準酸素室146および第2測定室148と接触する領域とその周辺の領域のセラミック層118が除去され、セラミック層118の代わりに固体電解質層151が充填されている。
【0035】
ポンピング電極152,153は、白金を主体として形成されている。ポンピング電極152は、固体電解質層151において第2測定室148と接触する面上に配置される。
ポンピング電極153は、基準酸素室146を挟んで基準電極143とは反対側で固体電解質層151の面上に配置される。基準酸素室146の内部において、ポンピング電極153を覆うように多孔質体147が配置されている。
【0036】
NOx検出部101は、ヒータ160を備える。ヒータ160は、白金を主体として形成され、通電されることで発熱する発熱抵抗体であり、絶縁層119と絶縁層120との間に配置される。
【0037】
アンモニア検出部102は、NOx検出部101の外表面、より具体的には、絶縁層120の上に形成されている。アンモニア検出部102は、NOx検出部101における基準電極143と軸線方向DA(すなわち、図2の左右方向)に略同位置に配置されている。
【0038】
アンモニア検出部102は、多孔質層211、参照電極212、アンモニア用固体電解質体213および検知電極214が、この順に積層された構造となっている。
多孔質層211は、多孔質体134と同じ材料で構成されており、絶縁層120の表面に接触した状態で配置される。
【0039】
参照電極212は、電極材として白金(Pt)を主体に構成されており、具体的には、Ptおよび酸化ジルコニウム(ZrO)を含む材料から構成されている。アンモニア用固体電解質体213は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の酸素イオン伝導性材料で構成されている。また、参照電極212は、多孔質層211よりも気孔率の小さい緻密な層になっている。検知電極214は、電極材として金(Au)を主体に構成されており、具体的には、Auおよび酸化ジルコニウム(ZrO)を含む材料から構成されている。
【0040】
これにより、参照電極212とアンモニア用固体電解質体213との界面には、アンモニアと参照電極212とアンモニア用固体電解質体213とが接する三相界面が形成される。同様に、検知電極214とアンモニア用固体電解質体213との界面には、アンモニアと検知電極214とアンモニア用固体電解質体213とが接する三相界面が形成される。
【0041】
制御部3は、制御回路180と、マイクロコンピュータ190(以下、マイコン190)とを備える。
制御回路180は、回路基板上に配置されたアナログ回路である。制御回路180は、Ip1ドライブ回路181、Vs検出回路182、基準電圧比較回路183、Icp供給回路184、Vp2印加回路185、Ip2検出回路186、ヒータ駆動回路187および起電力検出回路188を備える。
【0042】
そして、ポンピング電極132、検知電極142およびポンピング電極152は、基準電位に接続される。ポンピング電極133は、Ip1ドライブ回路181に接続される。基準電極143は、Vs検出回路182とIcp供給回路184に接続される。ポンピング電極153は、Vp2印加回路185とIp2検出回路186に接続される。ヒータ160は、ヒータ駆動回路187に接続される。
【0043】
Ip1ドライブ回路181は、ポンピング電極132とポンピング電極133との間に電圧Vp1を印加して第1ポンピング電流Ip1を供給するとともに、供給した第1ポンピング電流Ip1を検出する。
【0044】
Vs検出回路182は、検知電極142と基準電極143との間の電圧Vsを検出し、
検出した結果を基準電圧比較回路183へ出力する。
基準電圧比較回路183は、基準電圧(例えば、425mV)とVs検出回路182の出力(すなわち、電圧Vs)とを比較し、比較結果をIp1ドライブ回路181へ出力する。そしてIp1ドライブ回路181は、電圧Vsが基準電圧と等しくなるように、第1ポンピング電流Ip1の流れる向きと第1ポンピング電流Ip1の大きさとを制御するとともに、第1測定室121内の酸素濃度を、NOxが分解しない程度の所定値に調整する。
【0045】
Icp供給回路184は、検知電極142と基準電極143との間に微弱な電流Icpを流す。これにより、酸素が第1測定室121から固体電解質層141を介して基準酸素室146に送り込まれるため、基準酸素室146は、基準となる所定の酸素濃度に設定される。
【0046】
Vp2印加回路185は、ポンピング電極152とポンピング電極153との間に、一定電圧Vp2(例えば、450mV)を印加する。これにより、第2測定室148では、第2ポンピングセル150を構成するポンピング電極152,153の触媒作用によって、NOxが解離(還元)される。この解離により得られた酸素イオンがポンピング電極152とポンピング電極153との間の固体電解質層151を移動することにより第2ポンピング電流Ip2が流れる。Ip2検出回路186は、第2ポンピング電流Ip2を検出する。
【0047】
ヒータ駆動回路187は、発熱抵抗体であるヒータ160の一端にヒータ通電用の正電圧を印加するともに、ヒータ160の他端にヒータ通電用の負電圧を印加することにより、ヒータ160を駆動する。
【0048】
起電力検出回路188は、参照電極212と検知電極214との間の起電力(以下、アンモニア起電力EMF)を検出し、検出結果を示す信号をマイコン190へ出力する。
マイコン190は、CPU191、ROM192、RAM193および信号入出力部194を備える。
【0049】
CPU191は、ROM192に記憶されたプログラムに基づいて、センサ素子部5を制御するための処理を実行する。信号入出力部194は、Ip1ドライブ回路181、Vs検出回路182、Ip2検出回路186、ヒータ駆動回路187および起電力検出回路188に接続される。CPU191は、信号入出力部194を介してヒータ駆動回路187へ駆動信号を出力することによりヒータ160を制御する。
【0050】
またCPU191は、ROM192に記憶されている各種のデータに基づいて、第2ポンピング電流Ip2の電流値、アンモニア起電力EMFから酸素濃度の影響を取り除く処理を行い、さらに、NO濃度およびNO濃度等のNOx濃度と、アンモニア濃度とを算出する処理を行う。なお、これらの処理としては、特開2011−075546号公報などに記載された処理を用いることができ、特に限定するものではない。
【0051】
次に、アンモニア検出部102の製造方法を説明する。
まず、図4における積層体SB1の断面と、図5における積層体SB1の表面とで示すように、NOx検出部101の絶縁層120となる未焼成絶縁層シートの表面に、参照電極リード215となる参照電極リードパターンと、第1検知電極リード218となる第1検知電極リードパターンとを形成する。参照電極リードパターンおよび第1検知電極リードパターンは、白金(Pt)、酸化ジルコニウム(ZrO)、バインダおよび有機溶剤を含む白金ペーストを印刷(例えば、スクリーン印刷)することにより形成される。
【0052】
参照電極リード215は、図3に示すように、線状部215aと、分岐部215b,215cとを備える。線状部215aは、センサ素子部5における後端側BEの端部から先端側FEへ向かうようにして線状に形成される。分岐部215b,215cは、線状部215aにおける先端側FEの端部から先端側FEへ向かうようにして線状に形成される。分岐部215b,215cはそれぞれ、線状部215aにおける先端側FEの端部を通って軸線方向DAに対して平行な中心線CLを挟んで一方側と他方側とに配置される。
【0053】
2本の第1検知電極リード218は、センサ素子部5における後端側BEの端部から先端側FEへ向かうようにして線状に形成される。第1検知電極リード218における先端側FEの端部は、線状部215aにおける先端側FEの端部よりも後端側BEに配置される。2本の第1検知電極リード218はそれぞれ、中心線CLを挟んで一方側と他方側とに配置される。
【0054】
次に、図4における積層体SB2の断面と、図5における積層体SB2の表面とで示すように、絶縁層120となる未焼成絶縁層シートの表面の一部分と、参照電極リードパターンの表面の一部分との上に、多孔質層211となる多孔質層パターンを形成する。多孔質層パターンは、アルミナ、カーボン、バインダおよび有機溶剤を含むペーストを印刷することにより形成される。
【0055】
多孔質層211は、図3に示すように、矩形状に形成されている。多孔質層211における先端側FEの端部は、参照電極リード215における先端側FEの端部よりも先端側FEに配置される。多孔質層211における後端側BEの端部は、第1検知電極リード218における先端側FEの端部よりも先端側FEに配置される。
【0056】
多孔質層211には、貫通孔211a,211b,211cが形成されている。貫通孔211aは、参照電極リード215の分岐部215bと分岐部215cとにより挟まれる領域と対向するように配置される。貫通孔211bは、分岐部215bにおける先端側FEの端部と対向するように配置される。貫通孔211cは、分岐部215cにおける先端側FEの端部と対向するように配置される。
【0057】
次に、図4における積層体SB3の断面と、図5における積層体SB3の表面とで示すように、多孔質層パターンの表面の一部分の上に、参照電極212となる参照電極パターンを形成する。参照電極パターンは、白金(Pt)、酸化ジルコニウム(ZrO)、バインダおよび有機溶剤を含む参照電極用白金ペーストを印刷することにより形成される。ここで、参照電極用白金ペーストは、前述のリードパターン用の白金ペーストと、例えば白金の粒径や白金と酸化ジルコニウムの比率が異なる。参照電極212は、図3に示すように、連結部212aと、被覆部212b,212cとを備える。連結部212aは、被覆部212bと被覆部212cとを連結する。被覆部212b,212cはそれぞれ、貫通孔211b,211cを覆う。
【0058】
次に、図4における積層体SB4の断面と、図5における積層体SB4の表面とで示すように、多孔質層パターンと参照電極パターンとの上に、第1絶縁層216となる第1絶縁層パターンを形成する。第1絶縁層パターンは、アルミナ、バインダおよび有機溶剤を含むペーストを印刷することにより形成される。
【0059】
第1絶縁層216は、図3に示すように、矩形状に形成されている。第1絶縁層216における先端側FEの端部は、参照電極リード215における先端側FEの端部よりも先端側FEに配置される。第1絶縁層216における後端側BEの端部は、第1検知電極リード218における先端側FEの端部よりも先端側FEに配置される。
【0060】
第1絶縁層216には、貫通孔216a,216b,216cが形成されている。貫通孔216aは、参照電極リード215の分岐部215bと分岐部215cとにより挟まれる領域と対向するように配置される。貫通孔216b,216cは、参照電極212の連結部212aと対向するように配置される。貫通孔216b,216cはそれぞれ、中心線CLを含み且つ積層方向SDに平行な平面を挟んで一方側と他方側とに配置される。積層方向SDは、多孔質層211、参照電極212、アンモニア用固体電解質体213および検知電極214が積層される方向である。
【0061】
次に、図4における積層体SB5の断面と、図5における積層体SB5の表面とで示すように、第1絶縁層パターンの表面の一部分の上に、アンモニア用固体電解質体213となる固体電解質体パターンを形成する。固体電解質体パターンは、固体電解質体の成分となる酸化物粉末、バインダおよび有機溶剤を含むペーストを印刷することにより形成される。アンモニア用固体電解質体213は、図3に示すように、矩形状に形成されている。そしてアンモニア用固体電解質体213は、貫通孔216b,216cを覆うように配置される。
【0062】
次に、図4における積層体SB6の断面と、図5における積層体SB6の表面とで示すように、第1絶縁層パターンの表面と固体電解質体パターンの表面との上に、第2絶縁層217となる第2絶縁層パターンを形成する。第2絶縁層パターンは、アルミナ、バインダおよび有機溶剤を含むペーストを印刷することにより形成される。
【0063】
第2絶縁層217は、図3に示すように、矩形状に形成されている。第2絶縁層217における先端側FEの端部は、参照電極リード215における先端側FEの端部よりも先端側FEに配置される。第2絶縁層217における後端側BEの端部は、第1検知電極リード218における先端側FEの端部よりも先端側FEに配置される。
【0064】
第2絶縁層217には、貫通孔217a,217b,217cが形成されている。貫通孔217aは、参照電極リード215の分岐部215bと分岐部215cとにより挟まれる領域と対向するように配置される。貫通孔217b,217cはそれぞれ、アンモニア用固体電解質体213を挟んで第1絶縁層216の貫通孔216b,216cと対向するように配置される。貫通孔217b,217cはそれぞれ、中心線CLを含み且つ積層方向SDに平行な平面を挟んで一方側と他方側とに配置される。
【0065】
次に、図4における積層体SB7の断面と、図5における積層体SB7の表面とで示すように、第2絶縁層パターンの表面の一部分と、第1検知電極リードパターンの表面の一部分との上に、第2検知電極リード219となる第2検知電極リードパターンを形成する。第2検知電極リードパターンは、前述のリードパターン用の白金ペーストを印刷することにより形成される。
【0066】
2本の第2検知電極リード219は、図3に示すように、貫通孔217b,217cよりも後端側BEとならない位置を先端側FEの端部として、後端側BEへ向かうようにして線状に形成される。第2検知電極リード219における後端側BEの端部は、矢印AL1,AL2で示すように、第1検知電極リード218における先端側FEの端部よりも後端側BEに配置される。2本の第2検知電極リード219はそれぞれ、中心線CLを含み且つ積層方向SDに平行な平面を挟んで一方側と他方側とに配置される。
【0067】
次に、図4における積層体SB8の断面と、図5における積層体SB8の表面とで示すように、第2検知電極リードパターンの表面における先端側FEの端部以外の部分と、参照電極リードパターンおよび第1検知電極リードパターンの表面における後端側BEの端部以外の部分との上に、第3絶縁層220となる第3絶縁層パターンを形成する。第3絶
縁層パターンは、アルミナ、バインダおよび有機溶剤を含むペーストを印刷することにより形成される。
【0068】
第3絶縁層220は、図3に示すように、先端側FEの端部における一部を切り欠いた矩形状に形成されている。第3絶縁層220における先端側FEの端部は、矢印AL3,AL4で示すように、第2検知電極リード219における先端側FEの端部よりも後端側BEに配置される。第3絶縁層220における後端側BEの端部は、矢印AL5,AL6で示すように、参照電極リード215および第1検知電極リード218における後端側BEの端部よりも先端側FEに配置される。第3絶縁層220に形成された切欠部220aは、第2絶縁層217の貫通孔217aと対向するように配置される。
【0069】
そして、積層体SB8を所定温度(例えば、1500℃)で焼成する。
次に、図4における積層体SB9の断面と、図5における積層体SB9の表面とで示すように、第2絶縁層217の表面の一部分と、第2検知電極リード219の表面における先端側FEの端部の部分との上に、検知電極214となる検知電極パターンを形成する。検知電極パターンは、金(Au)、酸化ジルコニウム(ZrO)、バインダおよび有機溶剤を含む金ペーストを印刷することにより形成される。
【0070】
2つの検知電極214は、図3に示すように、矩形状に形成されている。2つの検知電極214のうちの一方は、貫通孔217bと、2本の第2検知電極リード219のうちの一方における先端側FEの端部とを覆うように配置される。2つの検知電極214のうちの他方は、貫通孔217cと、2本の第2検知電極リード219のうちの他方における先端側FEの端部とを覆うように配置される。
【0071】
そして、積層体SB9を所定温度(例えば、1000℃)で焼成する。これにより、アンモニア検出部102が得られる。
次に、アンモニア検出部102の詳細な構造を説明する。
【0072】
アンモニア検出部102は、図6に示すように、上記の多孔質層211、参照電極212、アンモニア用固体電解質体213および検知電極214に加えて、参照電極リード215、第1絶縁層216、第2絶縁層217、第1検知電極リード218、第2検知電極リード219および第3絶縁層220を備える。
【0073】
参照電極リード215は、絶縁層120の表面上に配置される。多孔質層211は、絶縁層120の表面上と、参照電極リード215の表面上とに配置される。多孔質層211には、参照電極リード215における先端側FEの端部と対向する箇所に、貫通孔211cが形成されている。
【0074】
そして参照電極212は、貫通孔211cを塞ぐようにして、多孔質層211の表面上に配置される。これにより、貫通孔211c内に参照電極212が充填され、参照電極212と参照電極リード215とが電気的に接続される。
【0075】
また第1絶縁層216は、多孔質層211の表面上と、参照電極212の表面上とに配置される。第1絶縁層216には、参照電極212と対向する箇所に、貫通孔216cが形成されている。
【0076】
そしてアンモニア用固体電解質体213は、貫通孔216cを塞ぐようにして、第1絶縁層216の表面上に配置される。これにより、貫通孔216c内にアンモニア用固体電解質体213が充填され、アンモニア用固体電解質体213と参照電極212とが接触する。
【0077】
また第2絶縁層217は、第1絶縁層216の表面上と、アンモニア用固体電解質体213の表面上とに配置される。第2絶縁層217には、アンモニア用固体電解質体213と対向する箇所に、貫通孔217cが形成されている。
【0078】
また、第2検知電極リード219が、第2絶縁層217の表面上に配置される。そして検知電極214は、貫通孔217cを塞ぐとともに第2検知電極リード219と接触するようにして、第2絶縁層217の表面上に配置される。これにより、貫通孔217c内に検知電極214が充填され、検知電極214とアンモニア用固体電解質体213とが接触する。なお、例えば直線SLで示すように、貫通孔211cは、積層方向SDに対して平行であり且つ検知電極214を通過する直線上に位置しないように配置される。
【0079】
このように構成されたアンモニア検出部102は、電気絶縁性を有する絶縁層120の上に設置され、絶縁層120から近い順に、電気絶縁性を有する多孔質の材料で形成された多孔質層211と、参照電極212と、アンモニア用固体電解質体213と、検知電極214とが積層された構造を有し、排気ガス内におけるアンモニアの濃度を検出する。
【0080】
そしてアンモニア検出部102は、絶縁層120と多孔質層211との間に配置される参照電極リード215を備える。多孔質層211には、参照電極リード215と参照電極212とにより挟まれる箇所に、多孔質層211を貫通する貫通孔211b,211cが形成される。また、貫通孔211b,211cの内部には、貫通孔211b,211cにおける一端側の開口部から他端側の開口部に至るようにして、参照電極212が配置され、参照電極リード215と参照電極212とが電気的に導通する。
【0081】
このようにアンモニア検出部102では、参照電極リード215が絶縁層120と多孔質層211との間に配置された状態で、参照電極リード215と参照電極212とが電気的に接続される。このため、アンモニア検出部102は、参照電極リード215が、絶縁層120の表面と多孔質層211の表面との間に形成される段差に乗り上げないようにすることができる。これにより、アンモニア検出部102は、参照電極リード215における断線の発生を抑制することができる。
【0082】
また貫通孔211b,211cは、多孔質層211と参照電極212とアンモニア用固体電解質体213と検知電極214とが積層される積層方向SDに対して垂直な基準面への正射投影において検知電極214と重なる部分が存在しないように配置される。
【0083】
これにより、アンモニア検出部102は、検知電極214が形成されている領域(以下、検知電極形成領域)の下に参照電極リード215の端部が配置されないようにすることができる。すなわち、アンモニア検出部102は、検知電極形成領域の下に、絶縁層120の表面と参照電極リード215の表面との間に形成される段差が配置されないようにすることができる。これにより、アンモニア検出部102は、多孔質層211と参照電極212とアンモニア用固体電解質体213と検知電極214とが積層されている箇所で、厚さが不均一となってしまう事態の発生を抑制することができる。
【0084】
以上説明した実施形態において、アンモニア検出部102はガスセンサに相当し、絶縁層120は絶縁部材に相当し、多孔質層211は絶縁多孔質層に相当し、アンモニア用固体電解質体213は固体電解質体に相当する。
【0085】
また、排気ガスは被検出雰囲気に相当し、アンモニアは検出対象ガスに相当し、貫通孔211b,211cは貫通孔に相当し、参照電極212は導電性物質に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるも
のではなく、種々変形して実施することができる。
【0086】
例えば上記実施形態では、参照電極212、アンモニア用固体電解質体213および検知電極214が積層された構造を有するアンモニア検出部102がアンモニアの濃度を検出する形態を示した。しかし、本開示は、アンモニアの濃度を検出するガスセンサに限定されるものではない。すなわち、本開示は、参照電極、固体電解質体および検知電極が積層された構造を有するガスセンサであれば、アンモニア以外のガスの濃度を検出するガスセンサにも適用可能である。
【0087】
また上記実施形態では、アンモニア検出部102がNOx検出部101の外表面の上に形成されている形態を示したが、本開示は、ガスセンサの上に形成されるものに限定されるものでなく、電気絶縁性を有する部材の上にアンモニア検出部102が形成されるようにしてもよい。
【0088】
また上記実施形態では、貫通孔211b,211c内に参照電極212が配置される形態を示したが、貫通孔211b,211c内には、導電性を有する材料で形成された導電性物質が配置されるようにすればよい。
【0089】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0090】
102…アンモニア検出部、120…絶縁層、211…多孔質層、211b,211c…貫通孔、212…参照電極、213…アンモニア用固体電解質体、214…検知電極、215…参照電極リード
図1
図2
図3
図4
図5
図6