(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンクに接続するベーパ通路と、前記燃料タンクから前記ベーパ通路を介して送られる蒸発燃料を貯留するキャニスタと、内燃機関に接続する吸気通路と前記キャニスタとに接続するパージ通路と、前記パージ通路に設けられるパージポンプと、前記キャニスタに接続する大気通路と、前記大気通路を開閉する大気遮断弁と、を有し、前記キャニスタから前記パージ通路を介して前記吸気通路に前記蒸発燃料を含むパージガスを導入するパージ制御を実行する蒸発燃料処理装置において、
前記ベーパ通路と、前記パージ通路における前記パージポンプの上流側の通路と、を含むポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定する通路詰まり判定部を有し、
前記通路詰まり判定部は、前記内燃機関の停止中または前記パージ制御の停止中にて、前記大気遮断弁を閉弁状態とし、かつ、前記パージポンプを駆動させて前記ポンプ上流側通路に対して正圧を印加したときの前記ポンプ上流側通路内の圧力の上昇状況に基づき、前記ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定するものであって、
前記ポンプ上流側通路内の圧力は、前記パージ通路における前記パージポンプの上流側の通路、または、前記大気通路における前記大気遮断弁の下流側の通路、または、前記ベーパ通路に設けられる圧力センサで検出される圧力であること、
を特徴とする蒸発燃料処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される装置においては、まず、車両停車中かつアイドル運転状態のときに、パージ制御弁とキャニスタ閉塞弁を全閉にして大気圧密閉下での圧力変化量を計測する。次に、一旦パージ制御弁を全閉から全開状態に切り換えて密閉区間に吸気管負圧を導入し、負圧密閉下での圧力変化量を計測する。そして、大気圧密閉下での圧力変化量の計測値と負圧密閉下での圧力変化量の計測値とをもとに、密閉区間におけるリーク原因となる異常の有無を検出している。
【0006】
しかしながら、このように特許文献1に開示される装置においては、大気圧密閉下と負圧密閉下の2つの条件を設定して圧力変化量を計測することにより、密閉区間における異常の有無を検出しているので、検出を行うための制御が煩雑となってしまう。
【0007】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、簡素な制御でパージポンプの上流側の通路の詰まりの有無を判定できる蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、燃料タンクに接続するベーパ通路と、前記燃料タンクから前記ベーパ通路を介して送られる蒸発燃料を貯留するキャニスタと、内燃機関に接続する吸気通路と前記キャニスタとに接続するパージ通路と、前記パージ通路に設けられるパージポンプと、前記キャニスタに接続する大気通路と、前記大気通路を開閉する大気遮断弁と、を有し、前記キャニスタから前記パージ通路を介して前記吸気通路に前記蒸発燃料を含むパージガスを導入するパージ制御を実行する蒸発燃料処理装置において、前記ベーパ通路と、前記パージ通路における前記パージポンプの上流側の通路と、を含むポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定する通路詰まり判定部を有し、前記通路詰まり判定部は、前記内燃機関の停止中または前記パージ制御の停止中にて、前記大気遮断弁を閉弁状態とし、かつ、前記パージポンプを駆動させて前記ポンプ上流側通路に対して正圧を印加したときの前記ポンプ上流側通路内の圧力の上昇状況に基づき、前記ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定する
ものであって、前記ポンプ上流側通路内の圧力は、前記パージ通路における前記パージポンプの上流側の通路、または、前記大気通路における前記大気遮断弁の下流側の通路、または、前記ベーパ通路に設けられる圧力センサで検出される圧力であること、を特徴とする。
【0009】
この態様によれば、パージポンプによりポンプ上流側通路に対して正圧を印加するだけで、ポンプ上流側通路内の圧力の上昇状況に基づいて、ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定できる。そのため、簡素な制御でポンプ上流側通路の詰まりの有無を判定できる。
【0010】
上記の態様においては、前記通路詰まり判定部は、前記ポンプ上流側通路内の圧力の上昇状況として、前記ポンプ上流側通路内の圧力の上昇速度が所定の判定速度未満であれば、前記ポンプ上流側通路に詰まりが生じていないと判定すること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、ポンプ上流側通路内の圧力の上昇速度に基づいて判定すればよいので、短時間で、ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定できる。そのため、判定を行うに際して、パージポンプの駆動時間を短くできるので、電力の消費を抑えることができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた本開示の他の形態は、燃料タンクに接続するベーパ通路と、前記燃料タンクから前記ベーパ通路を介して送られる蒸発燃料を貯留するキャニスタと、内燃機関に接続する吸気通路と前記キャニスタとに接続するパージ通路と、前記パージ通路に設けられるパージポンプと、前記キャニスタに接続する大気通路と、前記大気通路を開閉する大気遮断弁と、を有し、前記キャニスタから前記パージ通路を介して前記吸気通路に前記蒸発燃料を含むパージガスを導入するパージ制御を実行する蒸発燃料処理装置において、前記ベーパ通路と、前記パージ通路における前記パージポンプの上流側の通路と、を含むポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定する通路詰まり判定部を有し、前記通路詰まり判定部は、前記内燃機関の停止中または前記パージ制御の停止中にて、前記大気遮断弁を閉弁状態とし、かつ、前記パージポンプを駆動させて前記ポンプ上流側通路に対して正圧を印加したときの前記ポンプ上流側通路内の圧力の上昇状況に基づき、前記ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定するものであって、前記通路詰まり判定部は、前記ポンプ上流側通路内の圧力の上昇状況として、前記ポンプ上流側通路内の圧力の所定時間毎の圧力差が所定値未満となるサチュレート状態に達するまでのサチュレート時間が所定の判定時間より長ければ、前記ポンプ上流側通路に詰まりが生じていないと判定すること、
を特徴とする。
【0013】
この態様によれば、ポンプ上流側通路内の圧力の変化の推移を見て判定するので、精度よく、ポンプ上流側通路の詰まりの有無を判定できる。
【0014】
上記の態様においては、前記所定の判定速度または前記所定の判定時間は、前記燃料タンクにおける燃料の残量に対応して規定されること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、燃料タンクにおける燃料の残量に関わらず、精度よくポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定できる。
【0016】
上記の態様においては、前記通路詰まり判定部は、前記パージポンプを逆回転で駆動させて、前記ポンプ上流側通路に対して正圧を印加すること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、ポンプ上流側通路に対して正圧を印加するための手段として、新たな手段を設けずに、蒸発燃料処理装置における既存の構成であるパージポンプを使用するので、コストを低減できる。
【0018】
上記課題を解決するためになされた本開示の他の形態は、燃料タンクに接続するベーパ通路と、前記燃料タンクから前記ベーパ通路を介して送られる蒸発燃料を貯留するキャニスタと、内燃機関に接続する吸気通路と前記キャニスタとに接続するパージ通路と、前記パージ通路に設けられるパージポンプと、前記キャニスタに接続する大気通路と、前記大気通路を開閉する大気遮断弁と、を有し、前記キャニスタから前記パージ通路を介して前記吸気通路に前記蒸発燃料を含むパージガスを導入するパージ制御を実行する蒸発燃料処理装置において、前記ベーパ通路と、前記パージ通路における前記パージポンプの上流側の通路と、を含むポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定する通路詰まり判定部を有し、前記通路詰まり判定部は、前記内燃機関の停止中または前記パージ制御の停止中にて、前記大気遮断弁を閉弁状態とし、かつ、前記パージポンプを駆動させて前記ポンプ上流側通路に対して正圧を印加したときの前記ポンプ上流側通路内の圧力の上昇状況に基づき、前記ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定するものであって、前記パージポンプの吸入口と吐出口が各々接続する通路を切り換える切り換え弁を有し、前記通路詰まり判定部は、前記切り換え弁により、前記吸入口を前記パージ通路における前記パージポンプの下流側の通路に接続する一方で、前記吐出口を前記パージ通路における前記パージポンプの上流側の通路に接続した状態で、前記パージポンプを正回転で駆動させることにより、前記ポンプ上流側通路に対して正圧を印加すること、
を特徴とする。
【0019】
この態様によれば、パージポンプを逆回転で駆動させなくてもよい。そのため、パージポンプとして、1方向の運転が可能な(正回転のみ可能な)ポンプも使用可能である。したがって、パージポンプとして使用されるポンプの種類を問わずに、ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定できる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の蒸発燃料処理装置によれば、簡素な制御でパージポンプの上流側の通路の詰まりの有無を判定できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の蒸発燃料処理装置の実施形態について説明する。
【0023】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
【0024】
<蒸発燃料処理装置の概要について>
本実施形態の蒸発燃料処理装置1の概要について説明する。蒸発燃料処理装置1は、自動車等の車両に用いられる。
【0025】
ここで、
図1に示すように、車両に搭載されるエンジンENG(内燃機関)には、エンジンENGに空気(吸気、吸入空気)を供給するための吸気通路IPが接続されている。吸気通路IPには、吸気通路IPを開閉してエンジンENGに流入する空気量(吸入空気量)を制御する電子スロットルTHR(スロットルバルブ)が設けられている。吸気通路IPにおける電子スロットルTHRの上流側(吸入空気の流れ方向の上流側)には、吸気通路IPに流入する空気から異物を除去するエアクリーナACが設けられている。これにより、吸気通路IPでは、空気がエアクリーナACを通過してエンジンENGに向けて吸入される。
【0026】
本実施形態の蒸発燃料処理装置1は、燃料タンクFT内の蒸発燃料を、吸気通路IPを介してエンジンENGに供給する装置である。
図1に示すように、蒸発燃料処理装置1は、キャニスタ11と、パージ通路12と、パージポンプ13と、パージ制御弁14(パージバルブ)と、大気通路15と、ベーパ通路16と、制御部17と、フィルタ18と、大気遮断弁19と、圧力センサPS1(第1圧力センサ)と、圧力センサPS2(第2圧力センサ)などを有する。
【0027】
キャニスタ11は、ベーパ通路16を介して燃料タンクFTに接続されており、燃料タンクFTからベーパ通路16を介して流入される蒸発燃料を貯留する。また、キャニスタ11は、パージ通路12と大気通路15とに連通している。
【0028】
パージ通路12は、吸気通路IPとキャニスタ11とに接続している。これにより、キャニスタ11から流出するパージガス(蒸発燃料を含む気体)は、パージ通路12を流れて、吸気通路IPに導入される。パージ通路12は、
図1に示す例では吸気通路IPにおける電子スロットルTHRの下流側(吸入空気の流れ方向の下流側)の位置に接続されているが、これに限定されず、吸気通路IPにおける電子スロットルTHRの上流側の位置に接続されていてもよい。
【0029】
パージポンプ13は、パージ通路12に設けられており、パージ通路12を流れるパージガスの流れを制御する。すなわち、パージポンプ13は、キャニスタ11内のパージガスをパージ通路12に送出し、パージ通路12に送出されたパージガスを吸気通路IPに供給する。
【0030】
パージ制御弁14は、パージ通路12において、パージポンプ13の下流側(パージ制御実行時のパージガスの流れ方向の下流側)の位置、すなわち、パージポンプ13と吸気通路IPとの間の位置に設けられている。パージ制御弁14は、パージ通路12を開閉する。パージ制御弁14の閉弁時(弁が閉まった状態のとき)には、パージ通路12のパージガスは、パージ制御弁14によって停止され、吸気通路IPに向かって流れない。一方、パージ制御弁14の開弁時(弁が開いた状態のとき)には、パージガスは吸気通路IPに向かって流入する。
【0031】
大気通路15は、その一端が大気に開放され、その他端がキャニスタ11に接続されており、キャニスタ11を大気に連通させている。そして、大気通路15には、大気から取り込まれた空気が流れる。
【0032】
ベーパ通路16は、燃料タンクFTとキャニスタ11に接続されている。これにより、燃料タンクFTの蒸発燃料が、ベーパ通路16を介してキャニスタ11に流入する。
【0033】
制御部17は、車両に搭載されたECU(不図示)の一部であり、ECUの他の部分(例えばエンジンENGを制御する部分)と一体的に配置されている。なお、制御部17は、ECUの他の部分と別に配置されていてもよい。制御部17は、CPUとROM,RAM等のメモリを含む。制御部17は、メモリに予め格納されているプログラムに応じて、蒸発燃料処理装置1および蒸発燃料処理システムを制御する。例えば、制御部17は、パージポンプ13やパージ制御弁14を制御する。また、制御部17は、圧力センサPS1と圧力センサPS2から、圧力の検出結果を取得する。
【0034】
本実施形態では、制御部17は、通路詰まり判定部21を備えている。通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定する。ここで、「ポンプ上流側通路22」は、パージポンプ13の上流側の通路であり、ベーパ通路16と、パージ通路12におけるパージポンプ13の上流側にある上流側通路12aと、大気通路15における大気遮断弁19の下流側にある下流側通路15aと、を含む通路である。なお、「パージポンプ13の上流側」とは、パージ制御実行時のパージガスの流れ方向の上流側、すなわち、キャニスタ11側ということである。また、「大気遮断弁19の下流側」とは、大気(空気)の流れ方向の下流側、キャニスタ11側ということである。また、通路詰まり判定部21は、制御部17とは別に独立して設けられていてもよい。
【0035】
フィルタ18は、大気通路15に流入する大気(空気)から異物を除去する。大気遮断弁19は、大気通路15を開閉する。
【0036】
圧力センサPS1と圧力センサPS2は、ポンプ上流側通路22の圧力を検出する。
図1に示す例では、圧力センサPS1は、ポンプ上流側通路22のうち、パージ通路12における上流側通路12aに設けられ、当該上流側通路12aの圧力を検出する。また、圧力センサPS2は、ポンプ上流側通路22のうち、大気通路15における下流側通路15aに設けられ、当該下流側通路15aの圧力を検出する。なお、圧力センサPS1と圧力センサPS2が設けられる位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、ポンプ上流側通路22のいずれかの位置(例えば、ベーパ通路16)に設けられていればよい。
【0037】
このような構成の蒸発燃料処理装置1において、エンジンENGの運転中にパージ条件が成立すると、制御部17は、パージポンプ13とパージ制御弁14を制御して、すなわち、パージポンプ13を正回転で駆動させながらパージ制御弁14を開弁して、パージ制御を実行する。なお、パージ制御とは、パージガスをキャニスタ11からパージ通路12を介して吸気通路IPに導入する制御である。
【0038】
そして、パージ制御が実行されている間、エンジンENGには、吸気通路IPに吸入される空気と、燃料タンクFTからインジェクタ(不図示)を介して噴射される燃料と、パージ制御により吸気通路IPに供給されるパージガスと、が供給される。そして、制御部17は、インジェクタの噴射時間やパージ制御弁14の開弁時間などを調整することによって、エンジンENGの空燃比(A/F)を最適な空燃比(例えば理想空燃比)に調整する。
【0039】
<ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定する制御について>
車両の自己診断機能(On−board diagnostics、OBD)として、ベーパ通路16を含むポンプ上流側通路22の詰まりの有無を判定する場合に、その判定を車両の走行中に行うと、判定動作の影響で車両の走行中にパージ流量(パージガスの流量)が減ってしまうおそれがある。そうすると、エンジンENGの空燃比を最適な空燃比に調整できなくなるおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、車両の走行中にパージ流量が減ることがないようにしつつ、ベーパ通路16を含むポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定する制御を行う。
【0041】
具体的には、制御部17の通路詰まり判定部21は、
図2に示す制御チャートに基づいて制御する。
【0042】
図2に示すように、通路詰まり判定部21は、エンジンENGが停止した直後である場合(ステップS1:YES)に、パージ制御弁14を開く(開弁状態にする)一方で、大気遮断弁19を閉じる(閉弁状態にする)(ステップS2)。
【0043】
次に、通路詰まり判定部21は、パージポンプ13を所定回転数(例えば、20,000rpm)にて逆回転で駆動させる(ステップS3)。このようにして、通路詰まり判定部21は、パージポンプ13を逆回転で駆動させて、ポンプ上流側通路22に気体(吸気など)を供給して、ポンプ上流側通路22に対して正圧を印加する。なお、パージポンプ13として、2方向の運転(正回転と逆回転)が可能なポンプ(例えば、ウエスコポンプ)を使用する。
【0044】
次に、通路詰まり判定部21は、所定時間TA毎(例えば、1sec毎)の圧力P(圧力P1、圧力P2、圧力P3)を記憶する(ステップS4)。ここで、圧力Pは、圧力センサPS1の検出値である。また、圧力Pとして、時間経過により、圧力P1、圧力P2、圧力P3の順に検出されたとする。なお、圧力Pは、圧力センサPS2の検出値であってもよい。
【0045】
次に、通路詰まり判定部21は、例えば
図3に示すマップを使用して、燃料タンクFT内における燃料の残留量であるタンク残量TRより、判定値X(所定の判定速度)を決める(ステップS5)。
図3に示すように、判定値Xは、タンク残量TRに対応して規定され、タンク残量TRが多くなるほど大きくなるように規定されている。
【0046】
次に、通路詰まり判定部21は、圧力上昇代ΔPA(圧力Pの上昇速度)が判定値X未満であるか否かを判断する(ステップS6)。ここで、ΔPA=(P2−P1)、または、ΔPA=(P3−P1)、または、ΔPA=(P3−P2)である。
【0047】
そして、通路詰まり判定部21は、圧力上昇代ΔPAが判定値X未満である(ステップS6:YES)場合には、ポンプ上流側通路22を形成するホースに詰まりが無いと判定する(ステップS7)。すなわち、圧力上昇代ΔPAが判定値X未満であって圧力Pの上昇速度が通常である場合には、ポンプ上流側通路22に流入できる気体の容量が維持されていると考えられるので、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていないと判定する。なお、このようにポンプ上流側通路22に詰まりが生じていないと判定される場合には、ポンプ上流側通路22の一部であるベーパ通路16においても詰まりが生じていないと考えられる。
【0048】
このようにして、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22内の圧力の上昇速度が所定の判定速度未満であれば、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていないと判定する。
【0049】
一方、通路詰まり判定部21は、圧力上昇代ΔPAが判定値X以上である(ステップS6:NO)場合には、通路詰まり判定部21を形成するホースに詰まりが有ると判定する(ステップS8)。すなわち、圧力上昇代ΔPAが判定値X以上であって圧力Pの上昇速度が通常より速い場合には、ポンプ上流側通路22に流入できる気体の容量が少なくなっていると考えられるので、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていると判定する。なお、このようにポンプ上流側通路22に詰まりが生じていると判定される場合には、ポンプ上流側通路22の一部であるベーパ通路16において詰まりが生じている可能性がある。
【0050】
このようにして、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22内の圧力の上昇速度が所定の判定速度以上であれば、通路詰まり判定部21に詰まりが生じていると判定する。
【0051】
そして、このような
図2に示す制御チャートに基づいて制御が行われることにより、
図4のような制御タイムチャートの一例が実施される。
図4に示すように、圧力上昇代ΔPA(=P3−P2)が判定値X(例えば、3kPa)未満であれば通路詰まり判定部21に詰まりが生じておらず正常であると判定される。一方、圧力上昇代ΔPAが判定値X以上であれば通路詰まり判定部21に詰まりが生じており異常であると判定される。なお、圧力P1は時間T1での圧力Pであり、圧力P2は時間T2での圧力Pであり、圧力P3は時間T3での圧力Pである。
【0052】
なお、変形例として、
図2のステップS3において、通路詰まり判定部21は、
図5に示す切り換え弁23により、パージポンプ13の吸入口13aと吐出口13bが各々接続する通路を切り換えて、ポンプ上流側通路22に気体を供給して、ポンプ上流側通路22に対して正圧を印加してもよい。
【0053】
詳しくは、切り換え弁23は、第1通路部24と第2通路部25とを備え、パージポンプ13とパージ通路12との間に第1通路部24または第2通路部25を配置することができる。
【0054】
第1通路部24は、第1通路24aと第2通路24bを備えている。第1通路24aは、パージポンプ13の吸入口13aを、パージ通路12における上流側通路12aに接続させる。第2通路24bは、パージポンプ13の吐出口13bを、パージ通路12におけるパージポンプ13の下流側(パージ制御実行時のパージガスの流れ方向の下流側、吸気通路IP側)にある下流側通路12bに接続させる。
【0055】
また、第2通路部25は、第1通路25aと第2通路25bを備えている。第1通路25aは、パージポンプ13の吸入口13aを下流側通路12bに接続させる。第2通路25bは、パージポンプ13の吐出口13bを上流側通路12aに接続させる。
【0056】
そして、切り換え弁23は、パージポンプ13とパージ通路12との間に配置する通路部を、第1通路部24または第2通路部25に切り換える。これにより、切り換え弁23は、パージポンプ13の吸入口13aと吐出口13bが各々接続する通路を、上流側通路12aまたは下流側通路12bに切り換えることができる。
【0057】
そして、このような変形例においては、通路詰まり判定部21は、切り換え弁23により、パージポンプ13の吸入口13aをパージ通路12における下流側通路12bに接続する一方で、パージポンプ13の吐出口13bをパージ通路12における上流側通路12aに接続する。そして、通路詰まり判定部21は、この状態で、パージポンプ13を正回転で駆動させて、ポンプ上流側通路22に対して正圧を印加することができる。
【0058】
また、変形例として、通路詰まり判定部21は、エンジンENGの駆動中におけるパージ制御の停止中に、ポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定してもよい。
【0059】
<本実施形態の作用効果について>
以上のように本実施形態では、通路詰まり判定部21は、エンジンENGの停止中またはパージ制御の停止中にて、大気遮断弁19を閉弁状態とし、かつ、パージポンプ13を駆動させてポンプ上流側通路22に対して正圧を印加する。そして、通路詰まり判定部21は、このときのポンプ上流側通路22内の圧力の上昇状況に基づき、ポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定する。
【0060】
このように、パージポンプ13によりポンプ上流側通路22に対して正圧を印加するだけで、ポンプ上流側通路22内の圧力の上昇状況に基づいて、ポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定できる。そのため、簡素な制御でポンプ上流側通路22の詰まりの有無を判定できる。
【0061】
また、新たな構成を追加することなく蒸発燃料処理装置1における既存の構成を使用して、ポンプ上流側通路22の詰まりの有無を判定できる。したがって、簡素な装置構成でポンプ上流側通路22の詰まりの有無を判定できるので、コストを低減できる。
【0062】
また、エンジンENGの停止中やパージ制御の停止中に判定するため、車両の走行時においてパージ制御を行うときにパージガスの流量が目減りせず、また、判定するタイミングの制約が少なくなる。また、パージポンプ13によりポンプ上流側通路22に対して正圧を印加してポンプ上流側通路22内の圧力の上昇状況を1回見るだけでよいので、短時間でポンプ上流側通路22の詰まりの有無の判定を完了させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22内の圧力の上昇状況として圧力上昇代ΔPAが判定値X未満であれば、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていないと判定する。
【0064】
このようにして、ポンプ上流側通路22内の圧力の圧力上昇代ΔPAに基づいて判定すればよいので、短時間で、ポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定できる。そのため、判定を行うに際して、パージポンプ13の駆動時間を短くできるので、電力の消費を抑えることができる。
【0065】
また、判定値Xは燃料タンクFTにおける燃料の残量に対応して規定されるので、燃料タンクFTにおける燃料の残量に関わらず、精度よくポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定できる。
【0066】
また、通路詰まり判定部21は、パージポンプ13を逆回転で駆動させて、ポンプ上流側通路22に対して正圧を印加する。このようにして、ポンプ上流側通路22に対して正圧を印加するための手段として、新たな手段を設けずに、蒸発燃料処理装置1における既存の構成であるパージポンプ13を使用するので、コストを低減できる。
【0067】
また、通路詰まり判定部21は、切り換え弁23により、パージポンプ13の吸入口13aをパージ通路12における下流側通路12bに接続する一方で、パージポンプ13の吐出口13bをパージ通路12における上流側通路12aに接続した状態で、パージポンプ13を正回転で駆動させて、ポンプ上流側通路22に対して正圧を印加してもよい。
【0068】
これにより、パージポンプ13を逆回転させなくてもよい。そのため、パージポンプ13として、1方向の運転が可能な(正回転のみ可能な)ポンプ(例えば、遠心ポンプ)も使用可能である。したがって、パージポンプ13として使用されるポンプの種類を問わずに、ポンプ上流側通路22における詰まりの有無を判定できる。
【0069】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同等の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に述べる。
【0070】
<ポンプ上流側通路における詰まりの有無を判定する制御について>
本実施形態では、通路詰まり判定部21は、
図6に示す制御チャートに基づいて制御する。
【0071】
図6に示すように、
図2に示す第1実施形態の制御と異なる点として、ステップS14において、通路詰まり判定部21は、所定時間TB毎の圧力差ΔPB(所定時間毎の圧力上昇代)を求める(ステップS14)。
【0072】
次に、通路詰まり判定部21は、例えば
図7に示すマップを使用して、タンク残量TRより、判定時間t(所定の判定時間)を決める(ステップS15)。
図7に示すように、判定時間tは、タンク残量TRに対応して規定され、タンク残量TRが多くなるほど短くなるように規定されている。
【0073】
次に、通路詰まり判定部21は、(圧力差ΔPB)<(所定値Y)の時のサチュレート時間STを記憶する(ステップS16)。すなわち、通路詰まり判定部21は、圧力差ΔPBが所定値Y未満になるサチュレート状態に達するまでの時間であるサチュレート時間STを記憶する。
【0074】
次に、通路詰まり判定部21は、サチュレート時間STが判定時間tより長いか否かを判断する(ステップS17)。
【0075】
そして、通路詰まり判定部21は、サチュレート時間STが判定時間tより長い(ステップS17:YES)場合には、ポンプ上流側通路22を形成するホースの詰まりが無いと判定する(ステップS18)。すなわち、サチュレート時間STが判定時間tより長く、圧力差ΔPBがサチュレート状態に達するまでにある程度の時間を要する場合には、ポンプ上流側通路22に流入できる気体の容量が維持されていると考えられるので、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていないと判定する。
【0076】
このようにして、通路詰まり判定部21は、サチュレート時間STが所定の判定時間より長ければ、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていないと判定する。
【0077】
一方、通路詰まり判定部21は、サチュレート時間STが判定時間t以下である(ステップS17:NO)場合には、ポンプ上流側通路22を形成するホースの詰まりが有ると判定する(ステップS19)。すなわち、サチュレート時間STが判定時間t以下であって、圧力差ΔPBがサチュレート状態に直ぐに達してしまう場合には、ポンプ上流側通路22に流入できる気体の容量が少なくなっていると考えられるので、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていると判定する。
【0078】
このようにして、通路詰まり判定部21は、サチュレート時間STが所定の判定時間以下であれば、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていると判定する。
【0079】
そして、このような
図6に示す制御チャートに基づいて制御が行われることにより、
図8のような制御タイムチャートの一例が実施される。
図8に示すように、圧力差ΔPBのサチュレート時間STが時間T11〜時間T14となった場合(判定時間tより長い場合)には、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていない(正常)と判定される。一方、圧力差ΔPBのサチュレート時間STが時間T11〜時間T12となって短くなった場合(判定時間t以下の場合)には、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じている(異常)と判定される。
【0080】
なお、通路詰まり判定部21は、判定時間tを超えたら正常判定して、制御を終了してもよい。
【0081】
<本実施形態の作用効果について>
以上のように本実施形態では、通路詰まり判定部21は、ポンプ上流側通路22内の圧力の上昇状況として、ポンプ上流側通路22内の圧力の所定時間毎の圧力差ΔPBが所定値Y未満となるサチュレート状態に達するまでのサチュレート時間STが判定時間tより長ければ、ポンプ上流側通路22に詰まりが生じていないと判定する。
【0082】
このようにして、ポンプ上流側通路22内の圧力の変化の推移を見て判定するので、精度よく、ポンプ上流側通路22の詰まりの有無を判定できる。
【0083】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。