(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護フィルムには、前記保護フィルムが前記防曇性フィルムの防曇層に貼着した状態で、前記ガラス板に前記防曇性フィルムを貼着させる際に、前記ガラス板に対する前記防曇性フィルムの貼着位置を示す位置決め印が付されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の防曇性フィルム。
前記防曇層は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類のポリマ
ーを含み、
前記ポリマーの含有量は、50質量%以上99質量%以下である、
請求項1から10のいずれか1項に記載の防曇性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、以下の説明では、説明の便宜のため、図面内の向きを基準として説明を行う。
【0038】
§1 構成例
まず、
図1及び
図2を用いて、本実施形態に係る防曇性フィルム4を説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係る防曇性フィルム4の一例を模式的に例示する断面図及び正面図である。
【0039】
本実施形態に係る防曇性フィルム4は、ガラス板の情報取得領域に貼着して、その部分に防曇機能を付与するフィルムである。
図1に例示されるように、本実施形態では、防曇性を有する防曇層43が基材層42の一方の面に積層されており、この防曇層43上には保護フィルム5が貼着されている。これによって、本実施形態では、防曇性フィルム4をガラス板に貼り付ける過程で、防曇層43に傷が付かないようになっている。以下、各構成要素について説明する。
【0040】
[防曇性フィルム]
まず、防曇性フィルム4について説明する。
図1に示されるとおり、防曇性フィルム4は、断面矩形状に形成されており、シート状の基材層42と、基材層42の一方の面に積層された防曇層43と、基材層42の他方の面に積層された粘着層41と、粘着層に貼着された離型シート40と、を備えている。防曇性フィルム4は、離型シート40を剥離した上で、基材層42の他方の面を向けた状態で、粘着層41を介して対象物に貼着される。以下、各層について説明する。
【0041】
(A)防曇層
まず、防曇層43について説明する。防曇層43は、防曇性フィルム4の最外層として配置され、防曇機能を発揮する層である。防曇層43の種類は、防曇性を有しているものであれば、特に限定されなくてもよく、公知のものを用いることができる。一般的に防曇層の種類として、水蒸気から生じる水を水膜として表面に形成する親水タイプ、水蒸気を吸収する吸水タイプ、及び水蒸気から生じる水滴を撥水する撥水タイプがある。防曇層43には、いずれのタイプも利用可能である。
【0042】
吸水タイプを採用する場合、防曇層43は、例えば、次のように構成することができる。すなわち、防曇層43は、撥水基と金属酸化物成分とを含み、好ましくは吸水性樹脂をさらに含むように構成することができる。防曇層43は、必要に応じ、その他の機能成分をさらに含んでいてもよい。吸水性樹脂は、水を吸収して保持できる樹脂であればその種類を問わない。撥水基は、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)から防曇層43に供給することができる。金属酸化物成分は、撥水基含有金属化合物その他の金属化合物、金属酸化物微粒子等から防曇層43に供給することができる。以下、各成分について説明する。
【0043】
<吸水性樹脂>
まず、吸水性樹脂について説明する。防曇層43は、吸水性樹脂として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含むことができる。ウレタン樹脂として、ポリイソシアネートとポリオールとで構成されるポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、アクリルポリオール及びポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。エポキシ系樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。好ましいエポキシ樹脂は、環式脂肪族エポキシ樹脂である。以下、好ましい吸水性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂(以下、単に「ポリアセタール」)について説明する。
【0044】
ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールにアルデヒドを縮合反応させてアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコールのアセタール化は、酸触媒の存在下で水媒体を用いる沈澱法、アルコール等の溶媒を用いる溶解法等公知の方法を用いて実施すればよい。アセタール化は、ポリ酢酸ビニルのケン化と並行して実施することもできる。アセタール化度は、2〜40モル%、さらには3〜30モル%、特に5〜20モル%、場合によっては5〜15モル%が好ましい。アセタール化度は、例えば
13C核磁気共鳴スペクトル法に基づいて測定することができる。アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタールは、吸水性及び耐水性が良好である防曇層の形成に適している。
【0045】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、200〜4500、さらに500〜4500が好ましい。高い平均重合度は、吸水性及び耐水性が良好である防曇層の形成に有利であるが、平均重合度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎて防曇層の形成に支障をきたすことがある。ポリビニルアルコールのケン化度は、75〜99.8モル%が好適である。
【0046】
ポリビニルアルコールに縮合反応させるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルカルバルデヒド、オクチルカルバルデヒド、デシルカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒドを挙げることができる。また、ベンズアルデヒド;2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル基置換ベンズアルデヒド;クロロベンズアルデヒド、その他のハロゲン原子置換ベンズアルデヒド;ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等のアルキル基を除く官能基により水素原子が置換された置換ベンズアルデヒド;ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド等の縮合芳香環アルデヒド等の芳香族アルデヒドを挙げることができる。疎水性が強い芳香族アルデヒドは、低アセタール化度で耐水性に優れた防曇層を形成する上で有利である。芳香族アルデヒドの使用は、水酸基を多く残存させながら吸水性が高い防曇層を形成する上でも有利である。ポリビニルアセタールは、芳香族アルデヒド、特にベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含むことが好ましい。
【0047】
防曇層43における吸水性樹脂(ポリマー)の含有量は、硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上であり、99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。これにより、親水性の無機材料のみを利用した場合に比べて、防曇層43を比較的に熱膨張しやすくすることができる。すなわち、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの熱膨張しやすい材料で基材層42を構成しても、基材層42の熱膨張に防曇層43を追従させることができる。そのため、比較的に温度の高い雰囲気に配置しても、防曇性フィルム4がガラス板から剥がれ難いようにすることができる。なお、上記のように、ポリマーを主成分とすると、防曇層43は、比較的柔らかく構成され得る。例えば、防曇層43の鉛筆硬度は2H以下になる可能性がある。
【0048】
<撥水基>
次に、撥水基について説明する。撥水基は、防曇層の強度と防曇性との両立を容易にすると共に、防曇層の表面を疎水性として水滴が形成されたとしても入射する光の直進性を確保することに貢献する。撥水基による効果を十分に得るためには、撥水性が高い撥水基を用いることが好ましい。例えば、防曇層43は、(1)炭素数3〜30の鎖状又は環状のアルキル基、及び(2)水素原子の少なくとも一部をフッ素原子により置換した炭素数1〜30の鎖状又は環状のアルキル基(以下、「フッ素置換アルキル基」ということがある)から選ばれる少なくとも1種類の撥水基を含むことができる。
【0049】
(1)及び(2)に関し、鎖状又は環状のアルキル基は、鎖状アルキル基であることが好ましい。鎖状アルキル基は、分岐を有するアルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。炭素数が30を超えるアルキル基は、防曇層を白濁させることがある。防曇層の防曇性、強度及び外観のバランスの観点から、鎖状アルキル基の炭素数は、20以下が好ましく、例えば1〜8であり、また例えば4〜16であり、好ましくは4〜8である。特に好ましいアルキル基は、炭素数4〜8の直鎖アルキル基、例えばn−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、及びn−オクチル基である。(2)に関し、フッ素置換アルキル基は、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子の一部のみをフッ素原子により置換した基であってもよく、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子のすべてをフッ素原子により置換した基、例えば直鎖状のパーフルオロアルキル基、であってもよい。フッ素置換アルキル基は撥水性が高いため、少ない量の添加によって十分な効果を得ることができる。ただし、フッ素置換アルキル基は、その含有量が多くなり過ぎると、防曇層を形成するための塗工液中でその他の成分から分離することがある。
【0050】
(撥水基を有する加水分解性金属化合物)
撥水基を防曇層43に配合するためには、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)、特に撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、防曇層を形成するための塗工液に添加するとよい。言い換えると、撥水基は、撥水基含有加水分解性金属化合物に由来するものであってもよい。撥水基含有加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)に示す撥水基含有加水分解性シリコン化合物が好適である。
【0051】
R
mSiY
4-m (I)
ここで、Rは、撥水基、すなわち水素原子の少なくとも一部がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜30の鎖状又は環状のアルキル基であり、Yは加水分解可能な官能基又はハロゲン原子であり、mは1〜3の整数である。加水分解可能な官能基は、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはアルコキシ基、特に炭素数1〜4のアルコキシ基である。アルケニルオキシ基は、例えばイソプロペノキシ基である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。なお、ここに例示した官能基は、以降に述べる「加水分解可能な官能基」としても使用することができる。mは好ましくは1〜2である。
【0052】
式(I)により示される化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)により表示される成分を供給する。
【0053】
R
mSiO
(4-m)/2 (II)
ここで、R及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)により示される化合物は、実際には、防曇層中において、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。
【0054】
このように、式(I)により示される化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらには少なくとも一部が重縮合して、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に含まれるシリコン原子には撥水基Rが接続している。言い換えると、撥水基Rは、結合R−Siを介してシロキサン結合のネットワーク構造に固定される。この構造は、撥水基Rを防曇層に均一に分散させる上で有利である。ネットワーク構造は、式(I)により示される撥水基含有加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、シランカップリング剤)から供給されるシリカ成分を含んでいてもよい。撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有するシリコン化合物(撥水基非含有加水分解性シリコン化合物)を撥水基含有加水分解性シリコン化合物と共に防曇層を形成するための塗工液に配合すると、撥水基と結合したシリコン原子と撥水基と結合していないシリコン原子とを含むシロキサン結合のネットワーク構造を形成できる。このような構造とすれば、防曇層中における撥水基の含有率と金属酸化物成分の含有率とを互いに独立して調整することが容易になる。
【0055】
防曇層が吸水性樹脂を含む場合、撥水基は、吸水性樹脂を含む防曇層表面における水蒸気の透過性を向上させることにより防曇性能を向上させる。吸水と撥水という2つの機能は互いに相反するため、吸水性材料と撥水性材料とは、従来、別の層に振り分けて付与されてきたが、防曇層に含まれる撥水基は、防曇層の表面近傍における水の偏在を解消して結露までの時間を引き延ばし、防曇層の防曇性を向上させる。以下ではその効果を説明する。
【0056】
吸水性樹脂を含む防曇層へと侵入した水蒸気は、吸水性樹脂等の水酸基と水素結合し、結合水の形態で保持される。量が増加するにつれ、水蒸気は、結合水の形態から半結合水の形態を経て、ついには防曇層中の空隙に保持される自由水の形態で保持されるようになる。防曇層において、撥水基は、水素結合の形成を妨げ、かつ形成した水素結合の解離を容易にする。吸水性樹脂の含有率が同じであれば、防曇層中における水素結合可能な水酸基の数には差がないが、撥水基は水素結合の形成速度を低下させる。したがって、撥水基を含有する防曇層において、水分は、最終的には上記のいずれかの形態で防曇層に保持されることになるが、保持されるまでには防曇層の底部まで水蒸気のまま拡散することができる。また、一旦保持された水も、比較的容易に解離し、水蒸気の状態で防曇層の底部まで移動しやすい。結果的に、防曇層の厚さ方向についての水分の保持量の分布は、表面近傍から防曇層の底部まで比較的均一になる。つまり、防曇層の厚さ方向の全てを有効に活用し、防曇層表面に供給された水を吸収することができるため、表面に水滴が凝結しにくく、防曇性が高くなる。
【0057】
一方、撥水基を含まない従来の防曇層においては、防曇層中に侵入した水蒸気は極めて容易に結合水、半結合水又は自由水の形態で保持される。したがって、侵入した水蒸気は、防曇層の表面近傍で保持される傾向にある。結果的に、防曇層中の水分は、表面近傍が極端に多く、防曇層の底部へ進むにつれて急速に減少する。つまり、防曇層の底部では未だ水を吸収できるにも拘わらず、防曇層の表面近傍では水分により飽和して水滴として凝結するため、防曇性が限られたものとなる。
【0058】
撥水基含有加水分解性シリコン化合物(式(I)参照)を用いて撥水基を防曇層に導入すると、強固なシロキサン結合(Si−O−Si)のネットワーク構造が形成される。このネットワーク構造の形成は、耐摩耗性のみならず、硬度、耐水性等を向上させる観点からも有利である。
【0059】
撥水基は、防曇層の表面における水の接触角が70度以上、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上になる程度に添加するとよい。水の接触角は、4mgの水滴を防曇層の表面に滴下して測定した値を採用することとする。特に撥水性がやや弱いメチル基又はエチル基を撥水基として用いる場合は、水の接触角が上記の範囲となる量の撥水基を防曇層に配合することが好ましい。この水の接触角は、その上限が特に制限されるわけではないが、例えば150度以下、また例えば120度以下、さらには105度以下である。撥水基は、防曇層の表面のすべての領域において上記水の接触角が上記の範囲となるように、防曇層に均一に含有させることが好ましい。
【0060】
ここで、
図3A及び
図3Bを用いて、水の接触角と防曇層43との関係について説明する。
図3A及び
図3Bは、接触角の異なる水滴(430、431)が防曇層43に取り付いた状態を示す。
図3A及び
図3Bに示すように、防曇層43の表面に同量の水蒸気が凝結して形成された水滴(430、431)が防曇層43を覆う面積は、その表面の水の接触角が大きいほど小さくなる傾向を有する。また、水滴(430、431)により覆われる面積が小さいほど、防曇層43に入射する光が散乱する面積の比率も小さくなる。したがって、撥水基の存在により水の接触角が大きくなった防曇層43は、その表面に水滴が形成された状態において透過光の直進性を保持するうえで有利である。
【0061】
防曇層43は、水の接触角が上述の好ましい範囲となるように、撥水基を含むことが好ましい。吸水性樹脂を含む場合、防曇層43は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上の範囲内となるように、また、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、の範囲内となるように、撥水基を含むことが好ましい。
【0062】
<金属酸化物成分>
次に、金属酸化物成分について説明する。金属酸化物成分は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物成分であり、好ましくはSiの酸化物成分(シリカ成分)である。吸水性樹脂を含む場合、防曇層43は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、場合によっては7質量部以上、必要であれば10質量部以上、また、60質量部以下、特に50質量部以下、好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下、場合によっては18質量部以下となるように、金属酸化物成分を含むことが好ましい。金属酸化物成分は、防曇層の強度、特に耐擦傷性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が過多となると防曇層の防曇性が低下する。
【0063】
金属酸化物成分の少なくとも一部は、防曇層を形成するための塗工液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分であってもよい。ここで、加水分解性金属化合物は、a)撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)及びb)撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有する金属化合物(撥水基非含有加水分解性金属化合物)から選ばれる少なくとも1つである。a)及び/又はb)に由来する金属酸化物成分は、加水分解性金属化合物を構成する金属原子の酸化物である。金属酸化物成分は、防曇層を形成するための塗工液に添加された金属酸化物微粒子に由来する金属酸化物成分と、その塗工液に添加された、加水分解性金属化合物又その加水分解物に由来する金属酸化物成分とを含んでいてもよい。ここでも、加水分解性金属化合物は、上記a)及びb)から選ばれる少なくとも1つである。上記b)、すなわち撥水基を有しない加水分解性金属化合物は、テトラアルコキシシラン及びシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。以下、既に説明した上記a)を除き、金属酸化物微粒子と上記b)とについて説明する。
【0064】
(金属酸化物微粒子)
防曇層43は、金属酸化物成分の少なくとも一部として金属酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。金属酸化物微粒子を構成する金属酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより防曇層に導入できる。金属酸化物微粒子は、防曇層に加えられた応力を防曇層を支持する透明物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、金属酸化物微粒子の添加は、防曇層の耐摩耗性及び耐擦傷性を向上させる観点から有利である。また、防曇層に金属酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から防曇層中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、金属酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。金属酸化物微粒子は、防曇層を形成するための塗工液に予め形成した金属酸化物微粒子を添加することにより、防曇層に供給することができる。
【0065】
金属酸化物微粒子の平均粒径は、大きすぎると防曇層が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、金属酸化物微粒子の好ましい平均粒径は、1〜20nm、特に5〜20nmである。なお、ここでは、金属酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。金属酸化物微粒子は、その含有量が過大となると、防曇層全体の吸水量が低下し、防曇層が白濁するおそれがある。防曇層が吸水性樹脂を含む場合、金属酸化物微粒子は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜50質量部、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜30質量部、特に好ましくは5〜25質量部、場合によっては10〜20質量部となるように添加するとよい。
【0066】
(撥水基を有しない加水分解性金属化合物)
また、防曇層43は、撥水基を有しない加水分解性金属化合物(撥水基非含有加水分解性化合物)に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい撥水基非含有加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。
【0067】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であってもよい。
【0068】
SiY
4 (III)
上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。
【0069】
撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、金属酸化物微粒子と吸水性樹脂とを強固に接合し、防曇層の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。防曇層が吸水性樹脂を含む場合、撥水基を有しない加水分解性金属化合物に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜40質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部、特に好ましくは3〜10質量部、場合によっては4〜12質量部の範囲とするとよい。
【0070】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1〜4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン及びテトラ−tert−ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
【0071】
テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇層の防曇性が低下することがある。防曇層の柔軟性が低下し、水分の吸収及び放出に伴う防曇層の膨潤及び収縮が制限されることが一因である。防曇層が吸水性樹脂を含む場合、テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜10質量部の範囲で添加するとよい。
【0072】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい別の一例は、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、互いに異なる反応性官能基を有するシリコン化合物である。反応性官能基は、その一部が加水分解可能な官能基であることが好ましい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシ基及び/又はアミノ基と加水分解可能な官能基とを有するシリコン化合物である。好ましいシランカップリング剤としては、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びアミノアルキルトリアルコキシシランを例示できる。これらのシランカップリング剤において、シリコン原子に直接結合しているアルキレン基の炭素数は1〜3であることが好ましい。グリシジルオキシアルキル基及びアミノアルキル基は、親水性を示す官能基(エポキシ基、アミノ基)を含むため、アルキレン基を含むものの、全体として撥水性ではない。
【0073】
シランカップリング剤は、有機成分である吸水性樹脂と無機成分である金属酸化物微粒子等とを強固に結合し、防曇層の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。しかし、シランカップリング剤に由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇層の防曇性が低下し、場合によっては防曇層が白濁する。防曇層が吸水性樹脂を含む場合、シランカップリング剤に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部の範囲で添加するとよい。
【0074】
<架橋構造>
また、防曇層43は、架橋剤、好ましくは有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、防曇層の耐摩耗性、耐擦傷性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、防曇層の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。
【0075】
金属酸化物成分がシリカ成分である防曇層に架橋剤に由来する架橋構造を導入した場合、その防曇層は、金属原子としてシリコンと共にシリコン以外の金属原子、好ましくはホウ素、チタン又はジルコニウム、を含有することがある。
【0076】
架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート系化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ−ト系化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテートは、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート系化合物、特にチタンラクテートである。
【0077】
吸水性樹脂がポリビニルアセタールである場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。
【0078】
<その他の任意成分>
防曇層43には、その他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。防曇層43の材料に界面活性剤を配合することにより、基材層42上に液剤を塗布して、防曇層43を形成する際に、基材層42上で液剤が拡がりやすくなる。そのため、形成される防曇層43の表面に凹凸が生じ難いようにすることができ、これによって、防曇層43に生じる歪みを軽減することができる。したがって、情報取得領域3に貼着するのに適した防曇性フィルムを提供することができる。なお、界面活性剤として、例えば、BYK社のBYK-323、BYK-333、BYK-342、BYK-377、BYK-3455、信越化学社のKP-109、KP-110、KP-112、モメンティブ社のTSF4440、TSF4452、TSF4450を用いることができる。
【0079】
以上の説明から明らかなように、防曇層43の好ましい形態としては、以下が挙げられる。すなわち、防曇層43は、好ましくは、吸水性樹脂100質量部に対し、金属酸化物成分を0.1〜60質量部、撥水基を0.05〜10質量部含む。このとき、撥水基は、炭素数1〜8の鎖状アルキル基であり、撥水基は、金属酸化物成分を構成する金属原子に直接結合しており、金属原子がシリコンであってよい。また、金属酸化物成分の少なくとも一部が、防曇層を形成するための塗工液に添加された、加水分解性金属化合物又は加水分解性金属化合物の加水分解物に由来する金属酸化物成分であって、加水分解性金属化合物は、撥水基を有する加水分解性金属化合物、及び撥水基を有しない加水分解性金属化合物から選ばれる少なくとも1種であってよい。更に、撥水基を有しない加水分解性金属化合物が、テトラアルコキシシラン及びシランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を含んでよい。防曇層43をこのようにすることで、情報取得領域3の曇りを抑えることができ、カメラ81による車外の情報の取得を適切に行えるようになる。
【0080】
上記防曇層43の実施例として、ポリビニルアセタール樹脂含有溶液(積水化学工業社製「エスレックKX−5」、固形分8質量%、アセタール化度9モル%、ベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含む) 87.5質量%、n−ヘキシルトリメトキシシラン(HTMS、信越化学工業社製「KBM−3063」) 0.526質量%、3−グリシドキシプロピルトリメトキシラン(GPTMS、信越化学工業社製「KBM−403」) 0.198質量部、テトラエトキシシラン(TEOS、信越化学工業社製「KBE−04」) 2.774質量%、アルコール溶媒(日本アルコール工業製「ソルミックスAP−7」) 5.927質量%、精製水2.875質量%、酸触媒として塩酸0.01質量%、レベリング剤(信越化学工業社製「KP−341」) 0.01質量%をガラス製容器に入れ、室温(25℃)で3時間撹拌する。これにより、防曇層43を形成するための塗工液を調製することができる。
【0081】
(B)基材層及び粘着剤層
次に、基材層42及び粘着層41について説明する。基材層42は、防曇性フィルム4の基となり、それぞれの面側で防曇層43及び粘着層41を保持する層である。また、粘着層41は、防曇性フィルム4を対象物に接着するための層である。基材層42及び粘着層41の材料は、そのように利用可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、粘着層41は、アクリル系、シリコーン系の接着剤等の透明な接着剤により形成することができる。また、基材層42は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの透明の樹脂シートにより形成することができる。
【0082】
なお、基材層42は、熱伝導率が5×10
-4 cal/cm・sec・℃以下の材料で構成されるのが好ましい。このような条件を満たす材料として、例えば、コスモシャインA4300(東洋紡社)やルミラー(東レ社)を挙げることができる。例えば、防曇層43を上記の吸水タイプで構成した場合には、防曇性フィルム4周辺の温度が低下すると、防曇層43の防曇性が低下してしまう。また、後述する自動車用のガラス板1の車内側の面のように、防曇性フィルム4は、通常、ガラス板の両面のうち温かい環境に置かれやすい面に貼り付けられる。このとき、ガラス板において、防曇性フィルム4を貼着した面から他方の面側に熱が放熱されやすくなっていると、防曇性フィルム4付近が冷えやすくなってしまい、これによって、防曇層43の防曇機能が低下しやすくなってしまう。これに対して、熱伝導率が5×10
-4 cal/cm・sec・℃以下の材料で基材層42を構成することで、防曇性フィルム4を貼着した面側から他方の面側に熱が放熱され難いようにし、防曇性フィルム4の防曇機能が低下してしまうのを抑制することができる。
【0083】
(C)離型シート
次に、離型シート40について説明する。離型シート40は、防曇性フィルム4を使用するまで、粘着層41が他の物(ホコリ等)と接着しないように保護するためのシートである。離型シート40は、粘着層41を覆うことができるように適宜寸法決めされている。離型シート40は、例えば、プラスチックフィルム等の透明なシートにより形成することができる。また、離型シート40は、例えば、公知の剥離紙等により形成することができる。ただし、離型シート40の材料は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。離型シート40の粘着層41側の面は、粘着層41から容易に剥離可能なように、公知の加工方法によって適宜加工されている。
【0084】
本実施形態では、
図1に例示されるように、離型シート40は、中央に配置されたスリット401によって、2つに分割されている。これによって、各離型シート40は、粘着層41から剥離しやすくなっている。また、粘着層41全体を一度に露出するのではなく、各離型シート40を段階的に剥離することで、粘着層41を部分的に露出するようにすることができる。そのため、剥離した後に露出する粘着層41をガラス板の所望の位置に段階的に貼り付けていくことにより、防曇性フィルム4をガラス板に容易に貼り付けることができる。
【0085】
(D)製造方法
次に、上記のような防曇性フィルム4の製造方法について説明する。防曇性フィルム4は、例えば、次のようにして、作製することができる。すなわち、基材層42を用意し、用意した基材層42の一方の面に防曇層43を成膜する。次に、基材層42をシート状に切断した上で、高温高湿処理(温度:70℃〜90℃、湿度:80%〜100%、時間:20分〜40分)又は高温処理(温度:100〜120℃、時間:20分〜30分)を適用する。続いて、基材層42の他方の面に粘着剤を塗布して粘着層41を形成する。そして、粘着層41に離型シート40を貼り付け、スリット401を適宜形成する。これによって、防曇性フィルム4を作製することができる。
【0086】
防曇層43の成膜は、防曇層43を形成するための塗工液(液剤)を基材層42上に塗布し、塗布した塗工液を乾燥させ、必要に応じてさらに高温高湿処理等を実施することにより、行うことができる。塗工液の調製に用いる溶媒、塗工液の塗布方法は、従来から公知の材料及び方法を用いればよい。
【0087】
塗工液の塗布工程では、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
【0088】
塗工液の乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に塗工液を曝すことにより、実施するのが好ましい。風乾工程は、非加熱工程として、言い換えると室温で実施できる。塗工液に加水分解性シリコン化合物が含まれている場合、加熱乾燥工程では、シリコン化合物の加水分解物等に含まれるシラノール基及び透明物品上に存在する水酸基が関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si−O結合のネットワーク)が発達する。
【0089】
吸水性樹脂等の有機物の分解を避けるべく、加熱乾燥工程において適用する温度は過度に高くしないほうがよい。この場合の適切な加熱温度は、300℃以下、例えば100〜200℃であり、加熱時間は、1分〜1時間である。
【0090】
防曇層43の成膜に際しては、適宜、高温高湿処理工程を実施してもよい。高温高湿処理工程の実施により、防曇性と膜の強度との両立がより容易になりうる。高温高湿処理工程は、例えば50〜100℃、相対湿度60〜95%の雰囲気に5分〜1時間保持することにより、実施することができる。高温高湿処理工程は、塗布工程及び乾燥工程の後に実施してもよく、塗布工程及び風乾工程の後であって加熱乾燥工程の前に実施してもよい。特に前者の場合には、高温高湿処理工程の後に、さらに熱処理工程を実施してもよい。この追加の熱処理工程は、例えば、80〜180℃の雰囲気に5分〜1時間保持することにより、実施することができる。
【0091】
また、塗工液から形成した防曇層43は、必要に応じ、洗浄及び/又は湿布拭きを行ってもよい。具体的には、防曇層43の表面を、水流に曝したり、水を含ませた布で拭いたりすることにより実施できる。これらで用いる水は純水が適している。洗浄のために洗剤を含む溶液を用いることは避けたほうがよい。この工程により、防曇層43の表面に付着した埃、汚れ等を除去して、清浄な塗膜面を得ることができる。
【0092】
なお、粘着層41の形成、離型シート40の貼着、及びスリット401の形成は、公知の方法により適宜実施することができる。
【0093】
(E)厚み
次に、各層の厚みについて説明する。各層の厚みは、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。粘着層41の厚みは、例えば、数μm〜数百μmの範囲で設定されてよい。また、基材層42の厚みD2は、例えば、75μm〜150μmの範囲で設定されてよい。
【0094】
防曇層43の厚みD3は、要求される防曇特性等に応じて適宜調節されてよい。例えば、後述するウインドシールド100の情報取得領域3に防曇性フィルム4を利用する場合には、防曇層43の厚みD3は、1μm〜20μmの範囲で設定されてよく、2μm〜15μmの範囲で設定するのが好ましく、3μm〜10μmの範囲で設定するのが更に好ましい。
【0095】
(F)形状及び平面寸法
次に、防曇性フィルム4の形状及び平面寸法について説明する。
図1及び
図2に例示されるように、本実施形態では、各層の平面寸法がほぼ一致していることにより、防曇性フィルム4は、平面視矩形状に形成されており、4つの角部46を有している。各角部46は、丸みを帯びている。これによって、防曇性フィルム4は、ガラス板の面から剥がれにくいようになっている。
【0096】
この防曇性フィルム4の平面寸法は、貼着するガラス板の寸法、種類、用途等に応じて適宜設定されてよい。例えば、後述するウインドシールド100の情報取得領域3に防曇性フィルム4を利用する場合には、遮蔽層2の開口部23の平面寸法より小さくなるように、防曇性フィルム4の平面寸法は、開口部23の平面寸法より垂直方向及び水平方向それぞれ2mmずつ小さくなるように設定されてよい。
【0097】
(G)その他
図2に例示されるように、本実施形態に係る防曇性フィルム4では、基材層42の左端辺に沿って、2つの貼着印45が付されている。各貼着印45は、防曇性フィルム4がガラス板に貼着していることを示す不透明な印である。各貼着印45は、例えば、基材層42にインク等で印刷することで形成することができる。また、貼着印45は、インク等によらず、打ち抜き等によって形成されてもよい。
【0098】
防曇性フィルム4の各層は透明な材料で構成されるため、防曇性フィルム4をガラス板に貼り付けても、そのことを確認できない場合がある。これに対して、本実施形態によれば、不透明な貼着印45に基づいて、防曇性フィルム4がガラス板に貼り付いていることを容易に確認することができる。
【0099】
なお、貼着印45の数は、2つに限定されなくてもよく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、貼着印45の種類は、
図2で例示されるような丸印に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて、文字、図形、記号等から適宜選択されてよい。更に、貼着印45の色は、視認可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0100】
[保護フィルム]
次に、保護フィルム5について説明する。保護フィルム5は、防曇性フィルム4の防曇層43を保護するためのフィルム材である。保護フィルム5は、例えば、プラスチック等の透明なシート材で構成することができる。保護フィルム5の厚みは、実施の形態に応じて適宜設定されてよく、例えば、0.5μm〜25μmの範囲で設定されてよい。
図1に例示されるように、保護フィルム5は、微粘着層53を介して、防曇性フィルム4の防曇層43上に貼着されている。
【0101】
微粘着層53は、一般的な粘着層よりも粘着力の低い層であり、例えば、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリウレタンポリエーテル等のエステル又は合成ゴム、天然ゴム等を主成分とした樹脂で構成された粘着剤により形成される。この微粘着層53の粘着力は、例えば、30N/25mm以下が好ましい。また、微粘着層53の厚みは、25μm以下であるのが好ましい。この微粘着層53は、リワーク性(すなわち、繰り返し貼着できる機能)を有さなくてもよい。この微粘着層53は、保護フィルム5の防曇性フィルム4側の面において、平面視において防曇性フィルム4と重なる部分に設けられている。防曇層43が上記のような吸水タイプで構成される場合には、保護フィルム5を剥がした後に、防曇層43上に粘着剤が残留すると、その部分で水蒸気を吸収できなくなり、曇りを防止することができなくなってしまう。これに対して、微粘着層53によれば、保護フィルム5を防曇性フィルム4から剥がす際に、粘着剤が防曇層43上に残り難いようにすることができる。そのため、粘着剤が残留することに起因する悪影響を生じ難いようにすることができる。
【0102】
また、
図2に示されるとおり、保護フィルム5は、平面視略矩形状に形成されている。この保護フィルム5の平面寸法は、防曇性フィルム4の平面寸法より大きくなっている。例えば、保護フィルム5は、防曇性フィルム4の基材層42よりも15mm程度大きく形成される。そのため、保護フィルム5は、平面視において防曇性フィルム4からはみ出した部分を有しており、この部分を利用することで、防曇性フィルム4から保護フィルム5を容易に剥離することができるようになっている。
【0103】
また、
図1及び
図2に例示されるように、2つの第1の位置決め印51及び2つの第2の位置決め印52の合計4つの不透明な位置決め印が付されている。各位置決め印(51、52)は、保護フィルム5が防曇性フィルム4の防曇層43上に貼着した状態で、防曇性フィルム4をガラス板に貼着させる際に、当該ガラス板に対する防曇性フィルム4の貼着位置を示す。各位置決め印(51、52)の作用については、後述で詳細に説明する。各位置決め印(51、52)は、例えば、保護フィルム5にインク等で印刷することで形成することができる。また、各位置決め印(51、52)は、インク等によらず、打ち抜き等によって形成されてもよい。
【0104】
また、保護フィルム5には、防曇性フィルム4を貼着する対象を識別するための識別表記54が付されている。利用場面に応じて、複数種類の防曇性フィルム4を用意する場合がある。例えば、後述するウインドシールドの場合、寒冷地仕様と非寒冷地仕様とで要求される防曇機能の性能が相違する。このような場合に、防曇層43の防曇機能の性能が相違する複数種類の防曇性フィルム4を用意し得る。この識別表記54によれば、各防曇性フィルム4を識別することができるようになるため、異なる種類の防曇性フィルム4を取り違えないようにすることができる。
【0105】
なお、
図2では、識別表記54として、「BC」という文字列が採用されている。しかしながら、識別表記54の種類は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて、文字、図形、記号等から適宜選択されてよい。また、識別表記54の色は、視認可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0106】
ただし、識別表記54は、「BC」という文字列で例示されるように、左右非対称であるのが好ましい。防曇性フィルム4及び保護フィルム5は透明な材料で構成されるため、識別表記54が左右対称であると、表裏のいずれの方向からも識別表記54が同じに見えてしまい、防曇性フィルム4の表裏を取り違えてしまう可能性がある。これに対して、識別表記54を左右非対称に構成することで、それぞれの面から識別表記54が異なって見えるようにすることができ、これによって、防曇性フィルム4の表裏を取り違えるのを防ぐことができる。
【0107】
§2 使用方法
次に、防曇性フィルム4の使用方法について説明する。本実施形態に係る防曇性フィルム4は、ガラス板の情報取得領域に貼り付けて、その貼り付けた部分に防曇性を付与することができる。本実施形態に係る防曇性フィルム4は、例えば、以下のようなウインドシールド100に利用することができる。
【0108】
[貼着対象]
まず、
図4A及び
図4Bを用いて、防曇性フィルム4の貼着対象となるウインドシールド100について説明する。
図4Aは、防曇性フィルム4を貼着するウインドシールド100の一例を模式的に例示する正面図である。
図4Bは、当該ウインドシールド100の情報取得領域3付近を模式的に例示する部分断面図である。
【0109】
図4A及び
図4Bに例示されるように、本実施形態に係るウインドシールド100は、ガラス板1と、濃色のセラミックにより構成され、車外からの視野を遮蔽する遮蔽層2と、を備えている。遮蔽層2は、ガラス板1の周縁部に沿って設けられており、環状の周縁部21、及び周縁部21の上辺部中央から面方向内側に突出する突出部22を有している。
【0110】
突出部22には、セラミックが積層していない開口部23が設けられており、開口部23の周囲には枠状のブラケット6が固定されている。このブラケット6には、光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置を付設するためのカバー7を取り付けることができるようになっている。これにより、ウインドシールド100は、情報取得装置を車内に配置可能に構成されている。
【0111】
本実施形態では、情報取得装置の一例として、カメラ81が車内に取り付けられる。カメラ81は、撮影装置の一例である。カメラ81が車内に取り付けられると、ガラス板1では、開口部23内のカメラ81に対向する範囲に、光の通過する情報取得領域3が設定される。カメラ81は、この情報取得領域3を介して、車外の情報を取得する。なお、カメラ81の他、レーダ等のレーザー装置(図示せず)を情報取得領域3に対向する位置に取り付けてもよい。本実施形態に係る防曇性フィルム4は、この情報取得領域3の車内側の面に貼り付けられて防曇機能を付与する。以下、ウインドシールド100の各構成要素について説明する。
【0112】
(A)ガラス板
まず、
図5を更に用いて、ガラス板1について説明する。
図5は、本実施形態に係るガラス板1を模式的に例示する断面図である。
図5に示されるとおり、ガラス板1は、車外側に配置される外側ガラス板11と、車内側に配置される内側ガラス板12と、を備えている。外側ガラス板11と内側ガラス板12との間には中間膜13が配置されており、この中間膜13は、外側ガラス板11の車内側の面と内側ガラス板12の車外側の面とを接合している。これにより、ガラス板1は、いわゆる合わせガラスとして構成されている。
【0113】
<外側ガラス板及び内側ガラス板>
両ガラス板(11、12)は、互いにほぼ同形であり、平面視台形状に形成されている。両ガラス板(11、12)は、面直方向に湾曲していてもよいし、平らであってもよい。本実施形態では、後述する成形工程により、各ガラス板(11、12)の車外側の面が凸となり、車内側の面が凹となるように湾曲した形状を有している。
【0114】
各ガラス板(11、12)には、公知のガラス板を用いることができる。例えば、各ガラス板(11、12)は、熱線吸収ガラス、クリアガラス、グリーンガラス、UVグリーンガラス等であってよい。ただし、各ガラス板(11、12)は、自動車の使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現するように構成される。例えば、各ガラス板(11、12)は、JIS R 3211で定められるように、可視光(380nm〜780nm)の透過率が70%以上になるように構成されてもよい。なお、この透過率は、JIS R 3212(3.11 可視光透過率試験)で定められているように、JIS Z 8722に規定された分光測定法によって測定することができる。また、例えば、外側ガラス板11によって所望の日射吸収率を確保し、内側ガラス板12によって可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することもできる。以下に、各ガラス板(11、12)を構成可能なガラスの組成の一例として、クリアガラスの組成の一例と、熱線吸収ガラス組成の一例を示す。
【0115】
(クリアガラス)
SiO
2:70〜73質量%
Al
2O
3:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
R
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3):0.08〜0.14質量%
【0116】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO
2の比率を0〜2質量%とし、TiO
2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO
2やAl
2O
3)をT−Fe
2O
3、CeO
2およびTiO
2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0117】
本実施形態に係るガラス板1の厚みは特に限定されないが、軽量化の観点からは、両ガラス板(11、12)の厚みの合計を、2.5mm〜10.6mmとすることが好ましく、2.6mm〜3.8mmとすることがさらに好ましく、2.7mm〜3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、両ガラス板(11、12)の合計の厚みを小さくすればよい。各ガラス板(11、12)の厚みは特に限定されないが、例えば、以下のように、各ガラス板(11、12)の厚みを決定することができる。
【0118】
すなわち、外側ガラス板11は、主として、小石等の飛来物等の衝撃に対する耐久性及び耐衝撃性が求められる。他方、外側ガラス板11の厚みを大きくするほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板11の厚みは、1.6mm〜2.5mmとすることが好ましく、1.9mm〜2.1mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、実施の形態に応じて適宜決定することができる。
【0119】
一方、内側ガラス板12の厚みは、外側ガラス板11の厚みと同等にすることができるが、例えば、ガラス板1の軽量化のために、外側ガラス板11よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、内側ガラス板12の厚みは、0.6mm〜2.1mmであることが好ましく、0.8mm〜1.6mmであることがさらに好ましく、1.0mm〜1.4mmであることが特に好ましい。更には、内側ガラス板12の厚みは、0.8mm〜1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板12についても、何れの厚みを採用するかは、実施の形態に応じて適宜決定することができる。
【0120】
<中間膜>
中間膜13は、両ガラス板(11、12)の間に挟持され、両ガラス板(11、12)を接合する膜である。中間膜13は、実施の形態に応じて種々の構成が可能である。例えば、中間膜13は、軟質のコア層を、これよりも硬質の一対のアウター層で挟持した3層構造で構成することができる。中間膜13をこのように軟質の層及び硬質の層の複数層で構成することによって、ガラス板1の耐破損性能及び遮音性能を高めることができる。
【0121】
この中間膜13の材料は、特に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、中間膜13を上記のように硬さの異なる複数の層で構成する場合、硬質のアウター層には、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)を用いることができる。このポリビニルブチラール樹脂(PVB)は、外側ガラス板11及び内側ガラス板12それぞれとの接着性及び耐貫通性に優れるため、アウター層の材料として好ましい。また、軟質のコア層には、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、又はアウター層に利用するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質のポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。
【0122】
なお、一般的に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、(a)〜(d)の少なくともいずれかの条件を適切に調整することにより、アウター層に用いる硬質のポリビニルアセタール樹脂とコア層に用いる軟質のポリビニルアセタール樹脂とを作製してもよい。
【0123】
更に、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化によって、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。
【0124】
また、中間膜13の総厚は、実施の形態に応じて適宜設定可能である。例えば、中間膜13の総厚は、0.3〜6.0mmとすることができ、0.5〜4.0mmであることが好ましく、0.6〜2.0mmであることが更に好ましい。コア層とコア層を挟持する一対のアウター層との3層構造で中間膜13を構成する場合、コア層の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。一方、各アウター層の厚みは、コア層の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。
【0125】
このような中間膜13の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作製した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。また、中間膜13は、上記のような複数の層で形成する以外に、1層で形成することもできる。
【0126】
(B)遮蔽層
次に、
図6及び
図7を更に用いて、車外からの視野を遮蔽する遮蔽層2について説明する。
図6は、本実施形態に係るウインドシールド100の情報取得領域3付近を模式的に例示する部分拡大図である。
図7は、本実施形態に係る遮蔽層2を模式的に例示する断面図である。
【0127】
図4B及び
図7に示されるとおり、遮蔽層2は、ガラス板1の車内側の面、すなわち、内側ガラス板12の車内側の面に設けられている。遮蔽層2は、ガラス板1の車内側の面の周縁部に沿って環状に積層された周縁部21と、周縁部21の上辺部中央から面方向内側に突出する略矩形状の突出部22とを有している。
【0128】
図4A及び
図6に示されるとおり、突出部22には、情報取得領域3に対応して配置された開口部23が設けられている。開口部23の形状は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。本実施形態では、開口部23は、略台形状に形成されている。開口部23の平面寸法は、情報取得領域3の平面寸法より大きくなるように設定される。
【0129】
遮蔽層2の各部の寸法は、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。例えば、周縁部21において、ガラス板1の上端辺及び下端辺それぞれに沿う部分の幅は20mm〜100mmの範囲で設定されてよく、ガラス板1の左端辺及び右端辺それぞれに沿う部分の幅は15mm〜70mmの範囲で設定されてよい。また、突出部22は、200mm(縦)×100mm(横)〜400mm(縦)×200mm(横)の範囲で設定されてよい。
【0130】
また、情報取得領域3の平面寸法は、車内に設置する情報取得装置によって定まる。これに対して、開口部23の平面寸法は、情報取得領域3の平面寸法より大きくなるように、適宜設定されてよい。開口部23は、例えば、平面視で上辺85mm、下辺95mm、高さ65mmの台形状の領域として設定されてよい。
【0131】
開口部23は、遮蔽層2を構成する濃色のセラミックが積層されていない領域である。つまり、この開口部23では、濃色のセラミックが積層されておらず、光の通過が可能となっている。
図4Bに示されるとおり、ガラス板1よりも車内側に配置されるカメラ81は、この開口部23内の情報取得領域3を介して車外の情報を取得する。そのため、情報取得領域3は、例えば、上記のとおり、JIS R 3211で定められるように、可視光の透過率が70%以上になるように構成されてよい。
【0132】
同様に、周縁部21の面方向内側の領域でも、濃色のセラミックが積層されておらず、光の通過が可能となっている。ウインドシールド100を取り付けた自動車に乗車した運転者及び助手席に座る同行者は、周縁部21の面方向内側の領域を介して車外前方を確認することになる。そのため、周縁部21の面方向内側の領域は、少なくとも車外の交通状況を目視可能な程度に可視光の透過率を有するように構成される。
【0133】
図6に示されるとおり、本実施形態では、突出部22は、開口部23よりも上側に配置された上部領域221、上部領域221より下方で開口部23を含む下部領域222、及び下部領域222の側部に形成された矩形状の側部領域223で構成されている。この突出部22は、
図7に示されるような層構造を有している。
【0134】
すなわち、上部領域221は、濃色のセラミックで構成される第1セラミック層241により1層で形成されている。下部領域222は、ガラス板1の内表面から積層される上記第1セラミック層241、銀層242、及び第2セラミック層243により3層で形成されている。銀層242は銀により形成され、第2セラミック層243は第1セラミック層241と同じ材料で形成される。
【0135】
また、側部領域223は、ガラス板1の内表面から積層される第1セラミック層241及び銀層242により形成されており、銀層242が車内側に露出している。最下層の第1セラミック層241は、各領域で共通であり、2層目の銀層242は下部領域222と側部領域223で共通である。
【0136】
なお、後述するとおり、内側ガラス板12の車内側の面に形成された突出部22には、カメラ81のカバーを取り付けるためのブラケットが接着剤で接着される。このとき、例えば、ウレタン・シリコン系の接着剤を利用すると、接着剤が紫外線などによって劣化するおそれがある。そのため、遮光性を担保し、接着剤の劣化を防ぐ観点から、各セラミック層(241、243)の厚みは、例えば、20μm〜50μmとするのが好ましい。また、銀層242の厚みは、例えば、20μm〜50μmとするのが好ましい。そのため、突出部22の下部領域222の厚みD1は、例えば、60μm〜150μmとするのが好ましい。なお、この厚みD1は、基材層42の厚みD2よりも小さくなるように適宜設定されてよい。
【0137】
上記のような周縁部21及び突出部22を備える遮蔽層2は、例えば、次のように形成することができる。まず、ガラス板上に、第1セラミック層241を塗布する。第1セラミック層241は、周縁部21及び突出部22で共通である。次に、第1セラミック層241上において、下部領域222及び側部領域223に該当する領域に銀層242を塗布する。最後に、銀層242上において、下部領域222に該当する領域に第2セラミック層243を塗布する。
【0138】
なお、側部領域223において露出する銀層242には接地用の配線が施される。両セラミック層(241、243)及び銀層242は、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。このように、銀層242を含むように下部領域222を構成することにより電磁波を遮蔽することができ、これによって、下部領域222に固定されるブラケット6を介して取り付けられるカメラ81が電磁波の影響を受け難いようにすることができる。
【0139】
また、各セラミック層(241、243)の材料は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、各セラミック層(241、243)は、黒色、茶色、灰色、濃紺等の濃色のセラミックにより形成することができる。具体的に、以下の表1に示す組成のセラミックにより各セラミック層(241、243)を形成することができる。ただし、各セラミック層(241、243)を形成するセラミックの組成は、以下の表1に限定される訳ではなく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0140】
【表1】
*1,アサヒ化成工業株式会社製:Black 6350(Pigment Green 17)
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0141】
また、銀層242の材料も、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、銀層242には、以下の表2に示される組成の材料を利用することができる。
【0142】
【表2】
*1,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0143】
また、スクリーン印刷の条件として、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、各セラミック層(241、243)及び銀層242を形成することができる。なお、第1セラミック層241、銀層242、及び第2セラミック層243をこの順で積層する場合には、上述したスクリーン印刷及び乾燥を繰り返せばよい。
【0144】
(C)情報取得装置
次に、カメラ81について説明する。カメラ81は、車内に配置される情報取得装置の一例である。カメラ81は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary MOS)等のイメージセンサ及びレンズ系を備え、情報取得領域3を通して車外の状況を撮影可能に構成されている。カメラ81により取得された画像は、画像処理装置(不図示)に送られる。
【0145】
画像取得装置は、カメラ81により取得された画像に基づいて、被写体の種別等を解析する。例えば、被写体の種類は、パターン認識等の公知の画像解析方法によって推定することができる。画像処理装置は、そのような画像解析を行い、その結果をユーザ(運転者)に提示可能なように、記憶部、制御部、入出力部等を有するコンピュータとして構成される。このような画像処理装置は、提供されるサービス専用に設計された装置の他、PC(Personal Computer)、タブレット端末等の汎用の装置であってもよい。
【0146】
なお、情報取得領域3に対向する位置には、上記カメラ81以外の情報取得装置を配置可能である。例えば、レーダ等のレーザー装置をカメラ81に並列に配置してもよい。このレーザー装置は、光線の照射及び/又は受光が可能に構成されている。例えば、レーザー装置は、レーザー光を照射するレーザー発光素子と、このレーザー光が先行車等の障害物で反射した反射光を受光する受光素子と、を備える。レーザー発光素子は、例えば、レーザーダイオード等により、850nm〜950nmの近赤外線波長域のレーザー光を発信することができるように構成される。このレーザー装置によれば、レーザー光を照射してから反射光を受光するまでの時間によって、自車と障害物との距離を算出することができる。算出された距離は、コネクタを介して外部機器に送信され、自動車のブレーキの制御等に用いられる。
【0147】
(D)ブラケット及びカバー
次に、
図8及び
図9A〜
図9Cを更に用いて、上記カメラ81をウインドシールド100に付設するためのブラケット6及びカバー7について説明する。
図8は、ウインドシールド100にブラケット6及びカバー7を取り付けた状態を模式的に例示する。
図9Aは、本実施形態に係るブラケット6の車外側の状態を模式的に例示する。
図9Bは、本実施形態に係るブラケット6の車内側の状態を模式的に例示する。
図9Cは、本実施形態に係るカバー7を模式的に例示する。
【0148】
図9A及び
図9Bに例示されるように、本実施形態では、ブラケット6は、カメラ81を保持するカバー7が配置される取付開口61を有する矩形の枠状に形成されている。このブラケット6は、取付開口61を囲む矩形状の本体部62と、この本体部62の両側の辺に配置され、カバー7を固定するための支持部63とを備えている。
【0149】
図4A及び
図8に示されるとおり、ブラケット6は、遮蔽層2の開口部23の周囲に配置されている。本体部62には、平坦面が形成されており、この平坦面には、接着剤64及び両面テープ65が取り付けられている。本体部62は、この接着剤64及び両面テープ65によって、遮蔽層2(突出部22)又はガラス板1に接着される。これによって、ブラケット6は、全体又は少なくとも部分的に遮蔽層2(突出部22)により遮蔽されるように固定される。
【0150】
接着剤64及び両面テープ65の種類は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、接着剤64には、ウレタン樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤等の接着剤を利用することができる。また、両面テープ65には、公知の両面テープを利用することができる。
【0151】
なお、
図9Aに示される接着剤64及び両面テープ65の配置は、一例であり、この例に限定されなくてもよい。ただし、本実施形態では、開口部23の下方側の領域232は開放されている。そのため、
図9Aに示されるとおり、この部分では、ブラケット6を車外側から視認可能であるため、濃色の両面テープ65を利用して、車外から視認しにくいようにするのが好ましい。
【0152】
このブラケット6には、ハーネス(不図示)等が取り付けられた後に、
図8に示されるように、カメラ81を保持するカバー7が車内側から取り付けられる。これにより、カメラ81は、ブラケット6、カバー7、及びガラス板1に囲まれた空間に収容される。
【0153】
図9Cに示されるとおり、カバー7は、矩形状に形成されており、支持部63によってブラケット6に支持され、取付開口61を塞ぐように配置される。カバー7の筐体において、取付開口61を介してガラス板1と対向する面には、凹部71が形成されている。この凹部71は、上端が最も深く、下端側にいくにしたがって浅くなるように傾斜しており、上端の壁面72には、カメラ81のレンズ73が配置されている。各レンズ73は、情報取得領域3及び開口部23に対応するように適宜位置合わせされている。
【0154】
そのため、このカバー7をブラケット6に取り付けることで、カメラ81は、ブラケット6及びカバー7に支持された状態で、情報取得領域3(開口部23)を介して車外の情報を取得することができるようになる。なお、取付開口61に外部から光が侵入すると、カメラ81の撮影に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、凹部71を囲むように、接着剤64、両面テープ65等の遮光部材を設けるのが好ましい。なお、ブラケット6及びカバー7は、公知の加工方法によって適宜作製されてよい。
【0155】
[ガラス板の製造方法]
次に、
図10を用いて、上記ガラス板1の製造方法について説明する。
図10は、本実施形態に係るガラス板1の製造ラインを模式的に例示する。なお、以下で説明するガラス板1の製造工程は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する製造工程について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0156】
図10で例示される製造ラインは、リング状の成形型200と、この成形型200を搬送する搬送台201と、加熱炉202と、徐冷炉203と、を備えている。まず、この製造ラインの成形型200に各ガラス板(11、12)を載置する前に、平板状の各ガラス板(11、12)を用意し、用意した各ガラス板(11、12)を所定の形状に切断する。そして、内側ガラス板12の車内側の面に、スクリーン印刷等によって、遮蔽層2を構成するセラミックを印刷(塗布)する。
【0157】
次に、各領域に印刷したセラミックを適宜乾燥させる。セラミックを乾燥させた後、外側ガラス板11の車内側の面と内側ガラス板12の車外側の面とが向かい合うように、外側ガラス板11と内側ガラス板12とを上下に重ね合わせることで、平板状の合わせガラス10を形成する。そして、形成した平板状の合わせガラス10を成形型200に載置する。この成形型200は搬送台201上に配置されており、成形型200に合わせガラス10を載置した状態で、搬送台201は、加熱炉202及び徐冷炉203内を順に通過する。
【0158】
加熱炉202内で軟化点温度付近まで加熱されると、両ガラス板(11、12)は自重によって周縁部よりも内側が下方に湾曲し、曲面状に成形される。続いて、両ガラス板(11、12)は加熱炉202から徐冷炉203に搬入され、徐冷処理が行われる。その後、両ガラス板(11、12)は、徐冷炉203から外部に搬出されて放冷される。
【0159】
このようにして、両ガラス板(11、12)が成形された後、両ガラス板(11、12)の間に中間膜13を挟み込むことで、両ガラス板(11、12)及び中間膜13の積層した積層体を作製する。この積層体をゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70〜110℃で予備接着する。予備接着の方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0160】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた積層体を、オートクレーブにより、例えば、8〜15気圧で、100〜150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で135℃の条件で本接着を行うことができる。以上の予備接着及び本接着を通して、中間膜13を挟んだ状態で各ガラス板(11、12)は接着される。これにより、開口部23を有する遮蔽層2が設けられた湾曲したガラス板1を作製することができる。
【0161】
[貼着過程]
次に、
図11A〜
図11Hを用いて、上記のとおりに作成したガラス板1の情報取得領域3の車内側の面に、本実施形態に係る防曇性フィルム4を貼着する方法について説明する。
図11A〜
図11Hは、防曇性フィルム4を情報取得領域3に貼着し、ウインドシールド100を作製する過程を模式的に例示する。なお、以下で説明する防曇性フィルム4の貼着工程及びウインドシールド100の製造工程は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する貼着工程及び製造工程について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0162】
(第1ステップ)
まず、第1ステップとして、
図11Aに示されるように、防曇性フィルム4を貼着する対象となるガラス板1を用意する。例えば、上記製造工程によってガラス板1を作製することで、情報取得領域3に対応して開口部23が設けられた遮蔽層2を備えるガラス板1を用意することができる。
【0163】
(第2ステップ)
次に、第2ステップとして、
図11Bに示されるように、保護フィルム5が防曇層43上に貼着した防曇性フィルム4を用意する。続いて、各離型シート40を剥離した上で、粘着層41を、情報取得領域3の車内側の面の方に向ける。そして、スキージ等の器具を用いて、手動又は自動で、情報取得領域3の車内側の面に対して防曇性フィルム4を保護フィルム5越しに押し付ける。これにより、
図11C及び
図11Dに示されるように、情報取得領域3の車内側の面に防曇性フィルム4を貼着することができる。なお、
図11Dは、
図11Cの示す場面における情報取得領域3付近を模式的に例示する。
【0164】
ここで、本実施形態では、離型シート40及び保護フィルム5は透明に構成される。そのため、防曇性フィルム4を情報取得領域3に貼着する前に、すなわち、防曇性フィルム4を用意した時点で、透明な離型シート40及び保護フィルム5を介して、防曇性フィルム4の各層41〜43の歪みを確認することができる。そのため、本第2ステップにおいて、各離型シート40を剥離する前に、情報取得領域3で許容されない歪みが防曇性フィルム4に存在するか否かを確認することにより、当該防曇性フィルム4が不良品であるか否かを判別することができる。
【0165】
また、本実施形態では、
図11Bに示されるように、離型シート40は、中央に配置されたスリット401によって2つに分割されている。そのため、各離型シート40は、剥離しやすくなっている。また、各離型シート40を別々に剥離することで、粘着層41を部分的に露出させ、情報取得領域3の車内側の面に防曇性フィルム4を段階的に貼り付けていくことができる。したがって、本実施形態によれば、情報取得領域3の車内側の面に防曇性フィルム4を容易に貼り付けることができる。
【0166】
加えて、このスリット401を用いて各離型シート40を剥離した場合には、各離型シート40の剥離開始地点はスリット401の位置(左右方向中央)になる。一方、同じく使用時には剥離される保護フィルム5は、防曇性フィルム4よりも大きく、一体に形成されている。そのため、防曇性フィルム4からはみ出した部分を引っ張って保護フィルム5を剥離した場合には、保護フィルム5の剥離開始地点は、防曇性フィルム4の縁501の位置となる。したがって、本実施形態では、各離型シート40の剥離開始地点と保護フィルム5の剥離開始地点とを平面視において引き離すことができる。よって、各離型シート40を剥離する際に、保護フィルム5を誤って剥離しないようにすることができる。
【0167】
また、
図11C及び
図11Dに示されるとおり、本実施形態に係る保護フィルム5の平面寸法は、突出部22の幅よりも大きくなっており、平面視において突出部22からはみ出した部分を有している。そして、このはみ出した部分には、上記各位置決め印(51、52)が設けられており、この各位置決め印(51、52)を用いて、防曇性フィルム4の位置決めを行うことができる。
【0168】
具体的には、各位置決め印(51、52)は、保護フィルム5が防曇性フィルム4の防曇層43上に貼着した状態で、情報取得領域3の車内側の面に防曇性フィルム4を貼着させる際に、情報取得領域3の車内側の面に対する防曇性フィルム4の貼着位置を示す。各第1の位置決め印51は、防曇性フィルム4を正確な位置に貼着した場合に、突出部22の右端辺224に沿うように配置されている。そのため、各第1の位置決め印51は、防曇性フィルム4の水平方向(
図11Dの左右方向)の位置決めに利用することができる。同様に、各第2の位置決め印52は、防曇性フィルム4を正確な位置に貼着した場合に、突出部22の下端辺225に沿うように配置されている。そのため、各第2の位置決め印52は、防曇性フィルム4の垂直方向(
図11Dの上下方向)の位置決めに利用することができる。
【0169】
よって、各位置決め印(51、52)によれば、防曇性フィルム4の水平方向及び垂直方向の位置決めを行うことができる。なお、各位置決め印(51、52)の数は、2つに限定されなくてもよく、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。各位置決め印(51、52)の種類は、
図11Dで例示される三角印に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて、文字、図形、寄贈等から適宜選択されてよい。各位置決め印(51、52)の色は、視認可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。各位置決め印(51、52)の配置は、
図11Dの例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0170】
また、本実施形態では、防曇性フィルム4は、正確な位置に貼着した場合に、右側の縁44が開口部23の縁231に接するように配置されるように構成される。そのため、防曇性フィルム4を貼着する際に、防曇性フィルム4の縁44を開口部23の縁231に当接するようにしても、防曇性フィルム4の位置決めを行うことができる。したがって、本実施形態では、これらの特徴によって、本第2ステップにおける防曇性フィルム4の貼り付け作業が容易に行えるようになっている。
【0171】
また、本実施形態では、
図11Cに例示されるように、防曇性フィルム4の基材層42の厚みD2を、遮蔽層2(突出部22)の厚みD1よりも大きくすることができる。基材層42の厚みD2を遮蔽層2の厚みD1より大きくすると、ガラス板1側を下方とした場合に、遮蔽層2の上面よりも防曇性フィルム4の上面の方が高い位置に配置されるようにすることができる。そのため、スキージ等の器具で防曇性フィルム4を押し付ける際に、当該器具に遮蔽層2が物理的に干渉するのを防ぐことができる。これによっても、本実施形態では、本第2ステップにおける防曇性フィルム4の貼り付け作業を容易に行えるようにすることができる。
【0172】
加えて、上記のように、遮蔽層2の厚みD1を基準にして、基材層42の厚みD2を比較的に大きくすることで、車内側、特に、防曇層43付近の熱が情報取得領域3を介して車外に放熱され難いようにすることができる。そのため、基材層42の厚みD2を遮蔽層2の厚みD1よりも大きくすることにより、防曇層43付近の温度が低下しやすくなるのを防止し、防曇層43の防曇性が低下してしまうのを抑制することができる。なお、この熱の交換を遮断する観点からは、熱遮断層42の厚みD2は、50μm以上が好ましく、75μm以上が更に好ましく、100μm以上が最も好ましい。
【0173】
また、
図11Dに示されるように、本実施形態では、防曇性フィルム4の平面寸法は、情報取得領域3の平面寸法より大きく、遮蔽層2の開口部23の平面寸法より小さくなっている。そのため、防曇性フィルム4を開口部23内に収まるようにすることができるため、情報取得領域3の車内側の面と遮蔽層2(突出部22)との間の段差を防曇性フィルム4がまたがないようにすることができる。これにより、防曇性フィルム4を情報取得領域3に貼着させやすくし、かつ、情報取得領域3の車内側の面と防曇性フィルム4との間に、カメラ81による情報の取得を阻害するような隙間(気泡)が生じ難いようにすることができる。
【0174】
また、上記のとおり、遮蔽層2は、濃色のセラミック等で構成されるため、高温(例えば、105℃)になる場合がある。そのため、防曇性フィルム4の一部でも遮蔽層2上に貼着すると、当該防曇性フィルム4は高い耐熱性を要求される可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、防曇性フィルム4を、遮蔽層2上に乗り上げないようにして、情報取得領域3に貼り付けることができる。そのため、防曇性フィルム4として、耐熱性の比較的に高くない防曇性フィルムを利用することができる。
【0175】
更に、基材層42は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの、ガラス板1に比べて熱膨張しやすい材料で構成される。そこで、防曇性フィルム4の平面寸法を開口部23の平面寸法より小さくすることで、
図11Dに例示されるように、防曇性フィルム4と開口部23の縁との間に少なくとも一部でも隙間を設けておくことができる。これによって、防曇性フィルム4が熱膨張した際に、防曇性フィルム4が、開口部23の縁を越えて膨張しようとして、情報取得領域3の車内側の面から剥がれてしまうのを抑止することができる。
【0176】
なお、
図11Dに示されるように、防曇性フィルム4の平面寸法は情報取得領域3の平面寸法より大きくなっているため、防曇性フィルム4は、情報取得領域3に対して面方向外側にはみ出す部分を有している。上記2つの貼着印45は、この情報取得領域3に対して面方向外側にはみ出した部分に付されることで、カメラ81による情報の取得を阻害しないように構成されている。
【0177】
(第3ステップ)
次に、第3ステップとして、カバー7を取り付けるためのブラケット6を用意する。そして、
図11Eに示されるように、用意したブラケット6を、遮蔽層2の開口部23の周囲に配置して、接着剤64及び両面テープ65によって、遮蔽層2により少なくとも部分的に遮蔽されるように固定する。
【0178】
本実施形態では、保護フィルム5の平面寸法は、突出部22の幅よりも大きくなっている。そのため、ブラケット6を突出部22に固定する際に、保護フィルム5が干渉し得る。そこで、
図11Eに示されるように、平面視において防曇性フィルム4からはみ出した部分、すなわち、保護フィルム5において防曇性フィルム4に貼着していない部分をやや折り曲げて、この部分を取付開口61に通す。これにより、保護フィルム5をブラケット6の上方を通るようにすることができ、保護フィルム5に干渉されることなく、ブラケット6を突出部22に固定することができる。
【0179】
(第4ステップ)
次に、第3ステップの後に、第4ステップとして、
図11Fに示されるように、保護フィルム5を防曇性フィルム4から取り外す。このとき、保護フィルム5の平面寸法は防曇性フィルム4の平面寸法より大きくなっているため、保護フィルム5の防曇性フィルム4に貼着していない部分を引っ張ることで、保護フィルム5を防曇性フィルム4から簡単に剥離することができる。また、保護フィルム5と防曇性フィルム4とは微粘着層53により貼着されているため、粘着剤が防曇層43上に極力残らないようにすることができる。
【0180】
更に、保護フィルム5に付される各位置決め印(51、52)及び識別表記54は、上記の各機能の他、保護フィルム5と防曇性フィルム4とを区別する機能を発揮し得る。各位置決め印(51、52)及び識別表記54は、防曇性フィルム4と区別するための識別手段の一例である。各位置決め印(51、52)及び識別表記54によれば、防曇性フィルム4に保護フィルム5が貼着しているか否かを容易に特定することができるため、保護フィルム5の剥がし忘れを防止することができる。すなわち、第4ステップの実施をし忘れるのを防止することができる。
【0181】
保護フィルム5を取り外した後、カメラ81を保持するカバー7をブラケット6に取り付ける。これにより、
図11G及び
図11Hに例示されるように、カメラ81が付設され、かつ、情報取得領域3には防曇性フィルム4が貼り付けられたウインドシールド100を作製することができる。
【0182】
なお、本実施形態では、情報取得装置として、情報取得領域3を通して車外の状況を撮影するカメラ81の他に、光線の照射及び/又は受光するように構成されたレーザー装置を配置可能である。このレーザー装置とカメラ81とを水平方向に並んで配置する場合には、開口部23の縁231と防曇性フィルム4の縁44とが接する側に、カメラ81を配置するのが好ましい。
【0183】
カメラ81とレーザー装置とを比較した場合には、カメラ81のほうがレーザー装置よりも広い画角、すなわち、広い情報取得領域3が要求される。これに対して、開口部23の縁231と防曇性フィルム4の縁44とをカメラ81側で接するようにすることで、防曇性フィルム4の貼着されていない部分がカメラ81の画角に入るのを防止することができる。加えて、防曇性フィルム4の縁44からはみ出した粘着層41が、カメラ81の画角に入り、カメラ81による撮影を阻害するのを防止することができる。
【0184】
<特徴>
以上のとおり、本実施形態によれば、防曇性フィルム4の防曇層43上に、保護フィルム5が設けられる。そのため、上記第2ステップを実行する際、すなわち、情報取得領域3に防曇性フィルム4を貼り付ける際に、スキージ等の器具で防曇性フィルム4を情報取得領域3に押し付けても、保護フィルム5によって防曇層43に傷が付くのを防ぐことができる。したがって、本実施形態に係る防曇性フィルム4によれば、ガラス板1(情報取得領域3)に防曇機能を適切に付与することができる。
【0185】
なお、所望の場所に防曇性を付与する方法として、機能液を塗布して防曇性のコーティングを形成する方法がある。この方法によれば、スキージ等の器具で押し付けることはないため、防曇性を付与する過程で、コーティングに傷が付く可能性は低い。これに対して、本実施形態によれば、そのようなコーティングではなく、粘着層41を介して防曇性フィルム4をガラス板1に貼り付ける。そのため、防曇性フィルム4をスキージ等の器具で押し付けることになり、この過程において防曇層43に傷が付くという問題点が発生するところ、本実施形態によれば、防曇層43に保護フィルム5を積層することで、当該問題点を解決している。
【0186】
特に、上記実施形態では、情報取得領域3のような小さな領域に防曇性フィルム4を貼付している。そのため、保護フィルム5がなければ、上記第2ステップを実行する際、すなわち、情報取得領域3に防曇性フィルム4を貼り付ける際に、防曇層43に傷が付きやすく、これによって、防曇機能に深刻な悪影響がもたらされる可能性がある。すなわち、上記実施形態のような、防曇性フィルム4を情報取得領域3に採用する場面では、保護フィルム5を利用する効果はより顕著に表れる。
【0187】
ここで、ガラス板1の厚みの値をT1(単位:mm)とし、中間膜13の厚みの値をT2(単位:mm)としたときに、T1×T2が4(次元上の単位は「mm
2」)以下である場合、ガラス板1の車内側の面が結露しやすくなる。T1×T2が3以下、2.5以下になった場合には、ガラス板1の車内側の面は更に結露しやすくなる。また、情報取得領域3がガラス板1の上端部から250mm以下の範囲に設けられている場合には、情報取得領域3の車内側の面は結露しやすくなる。情報取得領域3がガラス板1の上端部から200mm以下の範囲に設けられている場合には、情報取得領域3の車内側の面は更に結露しやすくなる。これは、気流の流れが影響しているからである。同様の観点から、左右方向の両端それぞれから200mm以下、更には150mm以下の範囲に情報取得領域3が設けられた場合には、情報取得領域3の車内側の面は結露しやすくなる。更に、ウインドシールド100が水平方向に近い角度で取り付けられるほど、ガラス板1の車内側の面は結露しやすくなる。例えば、ウインドシールド100が水平方向からの角度が45度以内、更には30度以内に取り付けられると、ガラス板1の車内側の面は結露しやすくなる。このような場合に、防曇性フィルム4による防曇機能はより発揮される。
【0188】
また、本実施形態によれば、カバー7をブラケット6に取り付ける直前に第4ステップを実施するようにすることで、防曇性フィルム4の防曇層43を極力外気にさらすのを防ぐことができる。これにより、カメラ81が車外の情報を取得するのを阻害するような阻害物(例えば、ホコリ等)が防曇性フィルム4に付着するのを防止することができる。なお、カバー7をブラケット6に取り付けてしまえば、防曇性フィルム4の貼り付けられた空間は、ブラケット6、カバー7、及びガラス板1で閉じられるため、防曇性フィルム4に阻害物は殆ど付着しなくなる。そのため、カバー7をブラケット6に取り付ける直前に第4ステップを実施することで、防曇性フィルム4に長期的に阻害物を付着しないようにすることができる。
【0189】
§3 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、上記防曇性フィルム4、保護フィルム5、及びウインドシールド100の各構成要素に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が行われてもよい。また、上記防曇性フィルム4、保護フィルム5、及びウインドシールド100の各構成要素の形状及び大きさも、実施の形態に応じて適宜決定されてもよい。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、また、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。
【0190】
また、防曇性フィルム4は利用されるまで、倉庫などで保管される場合がある。加えて、ウインドシールドは、製造されてから使用されるまで(例えば、上記の第3ステップを実施してから第4ステップを実施するまで)倉庫で半年以上保管される場合がある。このとき、倉庫では、湿度及び温度の管理がなされていないことが多い。そのため、防曇性フィルムの防曇性能が低下してしまう可能性がある。例えば、上記実施形態のように、防曇性フィルムが吸水タイプの防曇層を有する場合、倉庫内の湿度が高くなった際に、防曇層が水を吸ってしまい、これによって、防曇性フィルムの防曇性能が低下してしまう。これに対して、上記実施形態では、ウインドシールド100を使用するまで、防曇層43は保護フィルム5によって保護される。保護フィルム5は、プラスチック等の水蒸気のガスバリア性の高い材料で構成されるため、防曇層43が水を吸ってしまうのを抑止することができる。したがって、本実施形態によれば、防曇性フィルム4の防曇性能が低下してしまうのを防止することができる。なお、保護フィルム5を紙材等の水分を通しやすい材料で形成した場合には、保護フィルム5による防曇性能低下防止の効果が低くなってしまう又は期待できない可能性がある。そのため、保護フィルム5の材料は、紙材等の水蒸気のガスバリア性の低い材料ではなく、水蒸気のガスバリア性の高い材料(例えば、プラスチック)で構成されるのが好ましい。
【0191】
また、上記のように、ポリマーを主成分として防曇層43を構成した場合には、防曇層43は比較的に柔らかくなってしまうため、防曇層43の耐傷性が低くなってしまう。そのため、ウインドシールド100の流通過程において、防曇層43に傷がついてしまう。これに対して、上記実施形態によれば、保護フィルム5によって、流通過程において防曇層43に傷が付くことを防止することができる。
【0192】
目安として、鉛筆硬度が4H以上であれば、防曇層43は比較的に硬く、耐傷性は問題になり難い。しかしながら、鉛筆硬度が2H以下であれば、防曇層43は比較的に柔らかく、耐傷性が問題になりやすい。保護フィルム5は、このような鉛筆硬度が2H以下の比較的に柔らかい防曇層43を保護する場面で、非常に有益な効果を発揮する。特に、防曇性能を高めようとすると、防曇層43の飽和給水量を高めるために、硬度を上げるための無機物質の含有率を減らし、ポリマーの含有率を高めることになる。そのため、防曇性能を高めようとすればするほど、防曇層43の鉛筆硬度は2Hより更に低くなり、防曇層43の耐傷性は低くなり得てしまう。このような場合に、防曇層43に傷が付いてしまうと、ポリマーの含有量を高めたことによる高い防曇性能が発揮できなくなってしまう。これに対して、上記保護フィルム5によれば、防曇層43に傷が付くのを防止することによって、ポリマーの含有量を高めたことによる高い防曇性能が使用時に発揮できるようにすることができる。
【0193】
なお、ブラケット6及びカバー7を取り付けた後は、防曇性フィルム4を貼り付けた空間はブラケット6及びカバー7によって覆われる。そのため、防曇層43は、ブラケット6及びカバー7によって保護される。保護フィルム5は、防曇性フィルム4をガラス板1(情報取得領域3)に貼り付けた後、ブラケット6及びカバー7を取り付けるまで、防曇性フィルム4(特に、防曇層43)を保護する役割を担う。
【0194】
<3.1>
また、例えば、上記実施形態に係るウインドシールド100のガラス板1は、外側ガラス板11と内側ガラス板12とを中間膜13を介して互いに接合した合わせガラスとして構成されている。しかしながら、ガラス板1の種類は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。ガラス板1は、例えば、1枚であってもよい。更に、上記実施形態では、ガラス板1は、略台形状に形成されている。しかしながら、ガラス板1の形状は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0195】
また、例えば、上記実施形態では、ガラス板1は、自重曲げ成形によって、湾曲形状に形成されている。しかしながら、ガラス板1を成形する方法は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、ガラス板1は、公知のプレス成形によって、湾曲形状に形成されてもよい。
【0196】
<3.2>
また、例えば、上記実施形態では、情報取得装置として、カメラ81を用いている。しかしながら、情報取得装置は、光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得可能な装置であれば、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。また、車内に設置する情報取得装置の数は、2台に限定されなくてもよく、実施形態に応じて、適宜選択されてよい。例えば、情報取得装置として、車間距離を測定するための可視光線及び/又は赤外線カメラ、光ビーコンなどの車外からの信号を受信する受光装置、道路の白線等を画像にて読み取る可視光線及び/又は赤外線を使用したカメラ、立体視により被写体の位置を特定可能なステレオカメラ等を挙げることができる。
【0197】
<3.3>
また、例えば、上記実施形態では、ブラケット6は枠状に形成され、このブラケット6に取り付け可能なようにカバー7は矩形状に形成されている。しかしながら、ブラケット6及びカバー7の形状は、情報取得装置を支持した上で遮蔽層2に固定可能であれば、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。また、ブラケット6には、複数の情報取得装置に対応するように、複数の開口が設けられていてもよい。また、ウインドシールド100に複数の情報取得装置を付設するため、ブラケット6及びカバー7の組を複数組用意し、用意した複数組のブラケット6及びカバー7をガラス板1に取り付けるようにしてもよい。
【0198】
<3.4>
また、例えば、上記実施形態では、遮蔽層2は、上部領域221と下部領域222とで層構造が異なっている。しかしながら、遮蔽層2は、このような例に限定されなくてもよく、各領域は、同じ層構造を有してもよい。なお、開口部23内及び/又は周囲に熱線を設ける場合には、上記の銀層242を通じて熱線の通電が可能となる。そのため、このような場合には、遮蔽層2は、上記のような銀層242を含む層構造を備えるのが好ましい。
【0199】
また、例えば、上記実施形態では、ガラス板1の周縁部に沿って遮蔽層2が設けられている。この遮蔽層2は省略されてもよい。また、遮蔽層2の形状は、
図4Aに例示される形状に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。また、遮蔽層2の開口部23の周囲は、完全に閉じられている。しかしながら、開口部23の構成は、このような例に限定されなくてもよい。例えば、1又は複数方向で開口部23の縁が開放されていてもよい。
【0200】
また、例えば、
図12に例示されるように、情報取得装置としてステレオカメラを車内に設置する等の場合には、情報取得領域3及び開口部23を複数個所に設けてもよい。
図12は、2つのカメラ(831、832)を備えるステレオカメラ83を付設可能なウインドシールド100Bを例示する。
【0201】
図12に例示されるウインドシールド100Bでは、遮蔽層2Bは、左右方向にやや長い突出部22Bを有している。この突出部22Bには、ステレオカメラ83の各カメラ(831、832)の位置に対応して、開口部23Bが設けられている。これにより、各開口部23B内に適切に情報取得領域3Bが設定されている。このとき、
図12に示されるとおり、2つの情報取得領域3Bに別々に防曇性フィルム4を貼着してもよい。一方、保護フィルム5は、各防曇性フィルム4で共通で利用してもよい、すなわち、2つの防曇性フィルム4に対して1つの保護フィルム5を貼着してもよい。または、各防曇性フィルム4に別の保護フィルム5を利用してもよい。
【0202】
また、
図13に例示されるように、防曇性フィルム4のいずれの縁も開口部23の縁に接しないようにしてもよい。
図13は、本変形例における防曇性フィルム4Cの配置を模式的に例示する。
図13で例示される防曇性フィルム4Cの平面寸法は開口部23の平面寸法より小さくなっており、防曇性フィルム4Cのいずれの縁も開口部23の縁に接していない。このように、遮蔽層の開口部の縁に接しないように防曇性フィルムを配置してもよい。
【0203】
なお、遮蔽層の開口部の縁と防曇性フィルムの縁とを少なくとも部分的に接するようにすれば、その部分を利用して防曇性フィルムの位置合わせを行うことができる。そのため、このような位置合わせを可能にするためには、防曇性フィルム4の平面寸法を開口部23の平面寸法とほぼ同じにする場合、防曇性フィルム4の縁と開口部23の縁とは全体的に接していてもよい。また、防曇性フィルム4の平面寸法を開口部23の平面寸法より小さくする場合には、防曇性フィルム4のいずれかの縁で開口部23のいずれかの縁に接するようにすればよい。
【0204】
また、例えば、上記実施形態では、遮蔽層2は、内側ガラス板12の車内側の面に積層されている。しかしながら、遮蔽層2を積層する面は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、遮蔽層2は、外側ガラス板11の車内側の面及び/又は内側ガラス板12の車外側の面に積層されてもよい。
【0205】
また、例えば、上記実施形態では、防曇性フィルム4の縁44と開口部23の縁231とは部分的に接している。しかしながら、防曇性フィルム4の配置は、このような例に限られなくてもよい。例えば、防曇性フィルム4は、縁44の全体が開口部23の縁231に接するように配置されてもよい。開口部23の縁231と防曇性フィルム4の縁44とが少なくとも部分的に接していれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0206】
また、例えば、上記実施形態では、左右方向の右側で、遮蔽層の開口部の縁と防曇性フィルムの縁とが接するように構成されている。しかしながら、両者の縁が接する方向は左側でもよい。すなわち、遮蔽層の開口部の縁と防曇性フィルムの縁とが接する部分は、左右方向のいずれか一方に配置されるように構成されてもよい。
【0207】
上記実施形態に係るガラス板1では、遮蔽層2の開口部23は、上端部側に配置されている。そのため、防曇性フィルム4をガラス板1に貼着する際には、作業者は、ガラス板1の上端部側に向かって作業する。この際、作業者は、防曇性フィルム4を貼り付けるためのスキージを利き手で把持し、利き手の方向から反対方向にそのスキージを動かす。よって、遮蔽層2の開口部23の縁と防曇性フィルム4の縁とが接する部分がこの利き手の方向に一致していれば、防曇性フィルム4の貼着作業の作業性を向上させることができる。
【0208】
例えば、右利きの作業者は、スキージを右手に持って、防曇性フィルム4にスキージを押し当てた状態で、右から左へスキージを動かすことで、防曇性フィルム4の貼り付け作業を行う。このとき、上記実施形態のように、開口部の縁と防曇性フィルムの縁とが右側で接している場合には、作業者は、スキージの操作に先立ち、当該スキージを持つ右側で、開口部23の縁231と防曇性フィルム4の縁44とを接するように防曇性フィルム4をガラス板1上に配置することができる。そのため、作業者は、防曇性フィルム4を正確に位置合わせした上で、開口部23の縁231と防曇性フィルム4の縁44と接している状態を利用しながら、両者が接している地点からスキージを右から左へ動かして、ずれないように防曇性フィルム4をガラス板1に貼り付けていくことができる。よって、遮蔽層2の開口部23の縁と防曇性フィルム4の縁とが接する部分を作業者の利き手の方向に一致させることで、防曇性フィルム4の貼着作業の作業性を向上させることができる。つまり、防曇性フィルムの貼着作業を手動で行う場合には、その作業に従事する作業者の利き手の割合に応じて、遮蔽層の開口部の縁と防曇性フィルムの縁とが接する方向を決定すれば、その作業現場での防曇性フィルムの貼着作業の作業性を高めることができる。
【0209】
<3.5>
また、上記実施形態では、防曇性フィルム4の平面寸法は遮蔽層2の開口部23の平面寸法より小さくなっている。しかしながら、防曇性フィルム4の平面寸法は、このような例に限定されなくてもよく、開口部23の平面寸法より大きくなっていてもよい。
【0210】
例えば、防曇性フィルムの平面寸法は、
図14及び
図15に例示されるように設定されてもよい。
図14は、開口部23の平面寸法より大きな平面寸法を有する防曇性フィルム4Dを情報取得領域3に貼り付けたウインドシールド100Dを模式的に例示する。例えば、防曇性フィルム4Dの平面寸法は、開口部23の平面寸法より垂直方向及び水平方向それぞれに10mmずつ大きくなるように設定されてよい。このとき、
図14に例示されるように、防曇性フィルム4Dの平面寸法は、ブラケット6の内寸(取付開口61の平面寸法)よりも小さくなるように設定される。そのため、防曇性フィルム4Dは、遮蔽層2(突出部22)上に乗り上げるが、ブラケット6には乗り上げないようにして、情報取得領域3の車内側の面に貼着される。
【0211】
防曇性フィルム4Dが、上記のような吸水タイプである場合には、防曇性フィルム4Dの大きさを大きくすればするほど、情報取得領域3に付与する防曇機能の能力を高めることができる。したがって、本変形例にように、防曇性フィルム4Dの平面寸法を開口部23の平面寸法よりも大きくすることで、情報取得領域3に付与する防曇機能の能力を高くすることができる。
【0212】
また、
図15は、ウインドシールド100Eにおいて、開口部23の平面寸法より大きな平面寸法を有する防曇性フィルム4Eの右側の縁44Eを開口部23の右側の縁231に接するようにした例を模式的に例示する。このように、防曇性フィルム4Eの平面寸法を開口部23の平面寸法よりも大きくした場合であっても、開口部23の縁と防曇性フィルム4Eの縁とが少なくとも部分的に接するようにしてもよい。
【0213】
なお、
図14及び
図15では、防曇性フィルムの層構造を図示していないが、各防曇性フィルム(4D、4E)は、上記実施形態に係る防曇性フィルム4と同じ層構造を有している。
【0214】
<3.6>
また、上記実施形態では、開口部23の平面寸法は、情報取得領域3の平面寸法より大きくなっており、防曇性フィルム4の平面寸法は、情報取得領域3の平面寸法より大きく、開口部23の平面寸法より小さくなっている。しかしながら、各構成の大きさの関係は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、防曇性フィルム4の作業性を高めるためには、防曇性フィルム4の平面寸法が開口部23の平面寸法より小さければよく、情報取得領域3の平面寸法は適宜設定されてよい。また、例えば、開口部23、情報取得領域3、及び防曇性フィルム4の平面寸法は互いにほぼ同じにしてもよい。
【0215】
<3.7>
また、例えば、上記実施形態では、基材層42の厚みD2が遮蔽層2(突出部22)の厚みD1よりも大きくなっている。しかしながら、基材層42の厚みD2は、このような例に限定されなくてもよく、遮蔽層2の厚みD1よりも小さくてもよい。この場合、基材層42の厚みD2と防曇層43の厚みD3との合計の合計が、遮蔽層2の厚みD1より大きくなるようにしてもよいし、遮蔽層2の厚みD1より小さくなるようにしてもよい。なお、基材層42の厚みD2と防曇層43の厚みD3との合計の合計が遮蔽層2の厚みD1より大きくなるようにした場合には、上記実施形態と同様に、防曇性フィルム4を貼り付ける作業を行う際に、遮蔽層2が物理的に干渉しないようにすることができる。
【0216】
<3.8>
また、上記実施形態では、保護フィルム5の平面寸法が突出部22の幅よりも大きくなっているため、ブラケット6を取り付けた後には、保護フィルム5は、ブラケット6の上方を通過するように配置されている。しかしながら、保護フィルム5の配置は、このような例に限定されなくてもよい。
【0217】
例えば、
図16に示されるように、保護フィルム5を配置してもよい。
図16は、上記実施形態とは異なるように保護フィルム5Fを配置したウインドシールド100Fを模式的に例示する。上記ブラケット6は、接着剤64及び両面テープ65で遮蔽層2に接着される。このとき、ブラケット6の面全体を遮蔽層2に接着しなくてもよい、換言すると、ブラケット6の面において、遮蔽層2に接着されない部分があってもよい。この遮蔽層2に接着されない部分では、ブラケット6と遮蔽層2との間に隙間が生じる。
【0218】
図16で例示されるブラケット6Fは、そのようにして、遮蔽層2との間に隙間66が生じている。すなわち、ブラケット6Fは、遮蔽層2と部分的に接着されており、接着されていない部分で隙間66が生じている。この隙間66が、保護フィルム5を通すことのできる大きさである場合には、
図16に例示されるように、保護フィルム5において防曇性フィルム4に貼着していない部分を隙間66に通すようにしてもよい。このようにする場合、上記第3ステップでは、保護フィルム5が隙間66に入るようにして、ブラケット6を上方から遮蔽層2に接着すればよい。
【0219】
<3.9>
また、例えば、上記実施形態では、保護フィルム5に各位置決め印(51、52)が付されており、防曇性フィルム4の基材層42には、貼着印45が付されている。しかしながら、これらの印(45、51、52)は、適宜省略されてもよい。また、各印(45、51、52)の数、配置、及び形状は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。更に、各位置決め印(51、52)は、突出部22の外側の縁を位置決めの指標として利用している。しかしながら、位置決めの指標は、このような例に限られなくてもよく、作業者又は画像処理等により、その位置を特定可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0220】
<3.10>
また、例えば、上記実施形態では、防曇性フィルム4は平面視矩形状に形成され、各角部46は丸みを帯びている。しかしながら、防曇性フィルム4の形状は、このような形状に限定される訳ではなく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。同様に、上記実施形態では、情報取得領域3を矩形状で示し、開口部23は台形状に形成されている。しかしながら、このような例に限定される訳ではなく、情報取得領域3の形状は、利用する情報取得装置に応じて適宜設定されてよく、開口部23の形状は、情報取得装置が車外の情報を取得可能なように、適宜決定されてよい。例えば、開口部23の形状は、円形状、楕円形状、瞳形状、矩形状等であってよい。
【0221】
なお、上記実施形態では、各角部46が丸みを帯びていることで、情報取得領域3の車内側の面から防曇性フィルム4が剥がれにくいようにすることができる。特に、上記実施形態では、ブラケット6が取り付けられる。このブラケット6内の温度は、カメラ81の利用などに起因して、比較的に高くなるケースが生じ得る。防曇性フィルムの基材層が熱収縮率の高い材料で構成された場合に、ブラケット6内の温度が高くなると、ガラス板との膨張差により、防曇性フィルムの基材層に応力が作用し、これによって、防曇性フィルムが剥がれてしまう可能性がある。したがって、各角部46が丸みを帯びていることで、情報取得領域3の車内側の面から防曇性フィルム4が剥がれにくいようにすることは、防曇性フィルム4の基材層41に熱収縮率の高い材料を利用する場面で、より優れた効果を発揮する。なお、熱収縮率の高い材料とは、150℃で30分放置した場合、熱収縮率が0.7%以上である材料のことである。このような材料として、例えば、テトロンフィルム(帝人社製)、コスモシャインA4300(東洋紡社製)、ルミラー(東レ社)等を挙げることができる。
【0222】
また、上記各図面では、4つの角部46の丸みは一致している。しかしながら、4つの角部46のうち少なくともいずれかは丸みを有していなくてもよい。また、4つの角部46のうち、少なくとも1つの角部46は、他の角部46よりも丸みの曲率が小さくなっていてもよい。この他の角部46よりも丸みの曲率が小さくなっている状態には、角部46が尖っている状態も含まれてよい。
【0223】
防曇性フィルム4は有機材料で構成されているため、耐久性の観点から、防曇性フィルム4の交換が必要になる可能性がある。また、この他、ブラケット6等の取り付け時に作業ミスが生じた場合に、防曇性フィルム4の交換が必要になる可能性がある。この防曇性フィルム4の交換の際に、角部46の丸みの曲率が小さいほど、すなわち、角部46が尖っているほど、その角部46を起点に防曇性フィルム4は剥離しやすくなる。そのため、他の角部46よりも丸みの曲率の小さい角部46を設けておくことによって、防曇性フィルム4の取り替え作業の作業性を高めることができる。特に、ガラス板1のように平滑性の高い物質では、貼着した防曇性フィルムは剥がし難くなる。したがって、他の角部46よりも丸みの曲率の小さい角部46を設けておくことによって、防曇性フィルム4の取り替え作業の作業性を高めることは、本実施形態のように、防曇性フィルム4をガラス板1に貼着する場面でより優れた効果を発揮する。更に、保護フィルム5を剥がす際に、当該他の角部46よりも丸みの曲率の小さい角部46を起点に利用することができる。これによって、保護フィルム5を剥がす作業の作業性を高めることができる。
【0224】
ただし、全ての角部46の曲率を小さくすると、防曇性フィルム4の剥離が生じやすくなってしまう可能性がある。そのため、このような曲率の小さい角部46は一か所にのみ設け、その他の3つの角部46の曲率は大きくするのが好ましい。これによって、防曇性フィルム4が自然に剥離するのを抑制することができ、かつ、防曇性フィルム4の取り換え作業の作業性を高めることができる。
【0225】
なお、上記変形例(
図14及び
図15)のように、当該他の角部46よりも丸みの曲率の小さい角部46を遮蔽層2(突出部22)上に乗り上げるようにしてもよい。このようにすることで、防曇性フィルム4を更に剥がし易くすることができる。
【0226】
<3.11>
また、上記実施形態では、防曇性フィルム4の断面形状は矩形状に形成されている。しかしながら、防曇性フィルム4の断面形状は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
【0227】
例えば、
図17に例示されるようにしてもよい。
図17は、断面台形状に形成された防曇性フィルム4Gを情報取得領域3に貼着したウインドシールド100Gを模式的に例示する。このウインドシールド100Gでは、防曇性フィルム4Gの断面形状は、防曇層43G側の辺が基材層42G側の辺よりも短い台形状に形成されている。
【0228】
これにより、保護フィルム5が貼着する側の辺が短くなるため、保護フィルム5を剥がしやすくすることができる。また、
図17に例示されるように、開口部23に収まるように防曇性フィルム4Gを貼り付けている場合には、台形状の各脚(47、48)と開口部23の縁との間に隙間を設けることができる。そのため、防曇性フィルム4Gの周囲が高温になっても、その隙間の分だけ防曇性フィルム4Gを熱膨張させることができる。よって、本変形例によれば、防曇性フィルム4Gが熱膨張することに起因する防曇性フィルム4Gの剥離を抑制することができる。
【0229】
更に、
図17で例示される変形例では、カメラ81と共に、レーダ等のレーザー装置(不図示)を水平方向に並んで配置可能である。この場合、防曇性フィルム4Gの台形状は、レーザー装置が配置される側の脚48が、カメラ81が配置される側の脚47よりも大きな角度で傾斜するように構成されるのが好ましい。つまり、ガラス板1側を下方とした場合に、カメラ81が配置される側の脚47が、レーザー装置が配置される側の脚48よりも垂直方向に近い角度で傾斜しているのが好ましい。
【0230】
カメラ81とレーザー装置とを比較した場合、カメラ81のほうがレーザー装置よりも広い画角、すなわち、広い情報取得領域3が要求される。そこで、本変形例では、カメラ81が配置される側の脚47が、レーザー装置が配置される側の脚48よりも大きな角度で傾斜しないようにすることで(すなわち、脚47がガラス板1の面に対して水平な方向に傾かないようにすることで)、防曇性フィルム4Gの脚47がカメラ81の画角に入り難いようにすることができる。これによって、防曇性フィルム4Gの縁が画角に入ることで、カメラ81による撮影が阻害されるのを防止することができる。
【0231】
なお、このような断面台形状の防曇性フィルム4Gは、適宜作製することができる。例えば、上記実施形態のように断面矩形状で平板状の防曇性フィルムを用意し、NC工作機を用いて、防曇層側からカットする。このとき、カッタ刃を垂直に入れるのではなく斜め方向に入れることで、断面台形状の防曇性フィルム4Gを形成することができる。
【0232】
<3.12>
また、ガラス板1の中間膜13には、様々なタイプの中間膜を採用することができる。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)粒子、ATO(アンチモン酸化スズ)粒子等の、熱線を吸収する粒子を含む中間膜を利用してもよい。
【0233】
例えば、
図18に例示されるようにしてもよい。
図18は、本変形例に係るガラス板1Hを模式的に例示する断面図である。
図18に示されるとおり、本変形例に係る中間膜13Hは、第1領域131及び第2領域132の2種類の領域に分かれている。第1領域131は、開口部23を含む遮蔽層2と平面視において重ならない領域である。一方、第2領域132は、開口部23を含む遮蔽層2と平面視において重なる領域である。本変形例では、上記のような熱線を吸収する粒子を、第2領域132には配置せず、第1領域131に配置されるようにしている。
【0234】
本変形例によれば、熱線を吸収する粒子を情報取得領域(開口部23)上に配置しないようにすることで、カメラ81による情報の取得に当該粒子の影響が及ぶのを避けることができる。また、遮蔽層2と平面視で重なる位置に当該粒子を配置しないようにすることで、ガラス板1の車内側の面に配置した遮蔽層2に、車外からの光が到達できるようにすることができる。これにより、遮蔽層2が温まりやすくなるため、防曇性フィルム4の作用の他に、この遮蔽層2の熱によっても、ガラス板1が結露しにくいようにすることができる。
【0235】
なお、このような中間膜13Hは、例えば、次のようにして作製することができる。すなわち、熱線を吸収する粒子を含む第1の中間膜と当該粒子を含まない第2の中間膜とを用意し、第1の中間膜と第2の中間膜とを重ね合わせて、第2領域132を形成する部分を切断する。そして、第1の中間膜の切断した部分を第2の中間膜の切断した部分で置き換えることで、中間膜13Hを作製することができる(例えば、特許4442863号参照)。また、赤外線遮蔽材料であるCWO(セシウム酸化タングステン)粒子は、熱線を吸収する粒子ではない。そのため、上記変形例において、CWO粒子は、第2領域132に含まれていてもよい。
【0236】
<3.13>
また、上記実施形態では、識別表記54は保護フィルム5に付されている。しかしながら、識別表記54の表記場所は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、
図19に例示されるように、識別表記54は、防曇性フィルム4の離型シート40に付されてもよい。
【0237】
図19は、離型シート40に識別表記49を付した防曇性フィルム4Jを模式的に例示する。識別表記49は、上記識別表記54と同じである。このように、離型シート40に識別表記を付してもよい。なお、識別表記は、離型シート40及び保護フィルム5の両方に付してもよい。また、識別表記は、離型シート40及び保護フィルム5のいずれか一方にのみ付してもよい。上記実施形態では、離型シート40及び保護フィルム5は透明で構成されるため、離型シート40及び保護フィルム5の区別がつかない可能性がある。これに対して、離型シート40及び保護フィルム5のいずれか一方にのみ識別表記を付すことで、当該識別表記を手掛かりに、離型シート40及び保護フィルム5を特定することができる。
【0238】
<3.14>
また、上記識別表記54と共に又は上記識別表記54に代えて、離型シート40及び保護フィルム5の少なくとも一方には、防曇層43及び/又は粘着層41の種別を識別するための種別表記が付されてもよい。この識別表記は、上記識別表記54と同様に、左右非対称に構成されてもよい。また、識別表記は、離型シート40及び保護フィルム5の両方に付してもよいし、離型シート40及び保護フィルム5のいずれか一方にのみ付してもよい。
【0239】
上記のとおり、ポリマーの含有率を高め、防曇層43の防曇性を高めると、当該防曇層43の耐傷性が低下する。一方で、無機材料の含有率を高め、防曇層43の耐傷性を高めると、防曇層43の防曇性が低くなる。また、同一車種のウインドシールドであっても、その自動車が利用される地域によって、要求される防曇性及び耐傷性は異なり得る。そのため、同一車種のウインドシールドであっても、防曇層43及び/又は粘着層41の組成が相違し得る場合がある。例えば、防曇層43は、上記の組成で構成されてもよいし、次の表3の組成で構成されてもよい。
【0240】
【表3】
なお、上記各材料は、例えば、以下のものを利用することができる。
・ソルミックスAP−7:アルコール溶媒(日本アルコール工業製)
・エスレックKX−5:ポリビニルアセタール樹脂(積水化学社製、固形分8%)
・スノーテックスOS:コロイダルシリカ(日産化学工業社製、アモルファスシリカ20%、粒子径8nm〜11nm)
・TsOH:p−トルエンスルホン酸(関東化学社製)
・TEOS:テトラエトキシシラン(信越シリコーン製、KBE−04)
・KP−341:レベリング剤(信越シリコーン製)
【0241】
このとき、通常、同一車種のウインドシールドに利用する防曇性フィルムの大きさ及び形状は同じである。そのため、防曇性フィルムの外形からは、防曇層43及び/又は粘着層41の種別を区別することができない。そこで、本変形例のように、離型シート40及び保護フィルム5の少なくとも一方に識別表記を付すことで、防曇層43及び/又は粘着層41の種別を区別することができるようになる。
【0242】
<3.15>
また、上記実施形態では、スリット401が設けられることで、離型シート40が2つに分割されている。しかしながら、スリット401は省略されてもよく、この場合には、離型シート40は一体に形成されてもよい。また、複数のスリット401が設けられてもよい。これにより、離型シート40は、3つ以上に分割されてもよい。
【0243】
また、上記実施形態では、スリット401は左右方向中央に配置されている。しかしながら、スリット401の位置は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜設定されてよい。例えば、スリット401は、
図20に例示されるように配置されてもよい。
【0244】
図20は、スリット401Kが左端辺寄りに設けられた防曇性フィルム4Kを模式的に例示する。この防曇性フィルム4Kでは、離型シート40を分割するスリット401Kが、情報取得領域3の車内側の面に貼着した際に、平面視において情報取得領域3に重ならない位置に配置されている。
【0245】
離型シート40にスリットを設ける方法として、粘着層41に離型シート40を貼着した後に、離型シート40にスリット加工を施す方法がある。この方法を採用した場合、粘着層41のスリットを設けた位置において、情報取得装置による車外の情報の取得を阻害するような凹凸が生じてしまう可能性がある。
【0246】
これに対して、本変形例によれば、スリット401Kは平面視において情報取得領域3に重ならない位置に配置される。そのため、スリット401Kを形成する際に粘着層41に凹凸が生じたとしても、その凹凸は、情報取得装置が車外の情報を取得するのとは無関係な位置に配置される。したがって、本変形例によれば、離型シート40にスリット401Kを設けても、情報取得領域による車外の情報の取得に悪影響を及ぼさないようにすることができる。なお、平面視において情報取得領域3に重ならない位置は、
図20に例示される左端辺寄りの位置に限定される訳ではなく、情報取得領域3の位置と防曇性フィルム4の貼着する位置との関係に応じて適宜選択されてよい。
【0247】
<3.16>
なお、上記実施形態及び変形例では、防曇性フィルムを貼着する対象として、ウインドシールドとして利用するガラス板の情報取得領域を例示した。しかしながら、貼り付ける過程で防曇性フィルムに傷が付く可能性があるのは、このような例に限られない。そのため、上記防曇性フィルムは、上記ウインドシールド以外の種々のガラス板にも利用されてよい。例えば、上記防曇性フィルムは、建築用ガラス板に利用するように構成されてもよい。
【0248】
<3.17>
上記実施形態では、各位置決め印(51、52)及び識別表記54により、保護フィルム5と防曇性フィルム4とが区別可能になっている。しかしながら、防曇性フィルム4と区別するための識別手段は、このような例に限られなくてもよい。この識別手段は、例えば、位置決め印以外の印であってもよいし、少なくとも部分的に防曇性フィルム4と異なる色が着色されていることであってもよい。また、識別手段は、文字、図形、記号等が記述されていることであってもよい。保護フィルム5の平面寸法が防曇性フィルム4とほぼ同じである場合、防曇性フィルム4に保護フィルム5が貼着しているか否かが区別しにくくなる。そのため、この識別手段を設けることは、保護フィルム5の平面寸法を防曇性フィルム4とほぼ同じにするケースで、より優れた効果を発揮し得る。