【実施例】
【0040】
本発明の一態様は、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質が脂肪酸誘導体を介して連結されたタンパク質結合体を提供する。特に、本発明のタンパク質結合体は、前記生理活性ポリペプチド及び前記生体適合性物質が脂肪酸誘導体とそれぞれ共有結合により連結されたものであってもよい。
【0041】
本発明における「生理活性ポリペプチド」とは、前記結合体の一部(moiety)をなす一構成であり、生体内で何らかの生理作用を有するポリペプチドを総称する概念であり、ポリペプチド構造を有するという共通点を有し、様々な生理活性を有する。前記生理活性ポリペプチドには、遺伝表現と生理機能を調整することにより、生体内における機能調節に関与する物質の欠乏や過度な分泌により正常でない病態を示す場合にそれを正常にする役割を果たすものが含まれ、一般的なタンパク質治療剤も含まれる。また、前記生理活性ポリペプチドは、天然ポリペプチドだけでなく、その誘導体も全て含む概念である。
【0042】
本発明の結合体において、生理活性ポリペプチドは、本発明の結合体構造により血中半減期延長を示す生理活性ポリペプチドであれば、特にその種類やサイズが限定されるものではない。
【0043】
本発明の生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターロイキン結合タンパク質、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、構造タンパク質、リガンドタンパク質又は受容体、細胞表面抗原、受容体拮抗物質であることを特徴とする。
【0044】
他の具体例として、本発明によるタンパク質結合体に含まれる生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン、GIP、オキシントモジュリン、キセニン、インスリン、CCK、アミリン、ガストリン、グレリン、PYYなどのように胃や腸で血糖と体重を調節するインクレチン類;レプチン、アディポネクチン、アディポリン、アペリン、カルトネクチンのように脂肪質から分泌されるアディポカイン類;キスペプチン、ネスファチン−1のように脳から分泌されるニューロペプチド類;イリシン、マイオネクチン、デコリン、フォリスタチン、マスクリンのように筋肉から分泌されるペプチド又はタンパク質類;血管作動性腸管ペプチド、ナトリウム利尿ペプチド類、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体、インターロイキン類、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α1−アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質E、高グリコシル化エリスロポエチン、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性化ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性化因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体並びに抗体フラグメントからなる群から選択されることを特徴とする。
【0045】
他の具体例として、本発明による生理活性ポリペプチドは、天然に存在するものでない、天然生理活性ポリペプチドの誘導体から選択されることを特徴とする。生理活性ポリペプチドの誘導体とは、アミノ酸の置換、挿入、欠失、糖鎖付加、糖鎖欠失、非天然アミノ酸挿入、リング挿入、メチル残基のような化学的修飾などにより固有の受容体に対する結合力が変化したものや、物理化学的な性質、すなわち水溶性向上、免疫原性低下のように性質が変異したものを意味し、2つ以上の各種受容体に結合力を有するように操作された人工のペプチド類も含まれる。
【0046】
本発明における「生理活性ポリペプチド」、「生理活性タンパク質」、「活性タンパク質」又は「タンパク質薬物」とは、生体内で生理的現象に拮抗作用を示すポリペプチド又はタンパク質を意味するものであり、相互交換的に用いられる。
【0047】
本発明における「生体適合性物質」とは、前記結合体の一部(moiety)をなす一構成であり、生理活性ポリペプチドに結合されて生体内半減期を延長させる物質を意味する。本発明における「生体適合性物質」とは、生体内半減期を延長させられる物質であるので「キャリア」ともいい、相互交換的に用いられる。前記生体適合性物質又は前記キャリアは、生理活性ポリペプチドに結合されてその半減期を延長させられる物質を全て含むものであり、例えばポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)、コレステロール、アルブミン及びそのフラグメント、アルブミン結合物質、特定アミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体フラグメント、FcRn結合物質、生体内結合組織又はその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカライド(saccharide)、高分子重合体並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであるが、これらに限定されるものではない。前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域を含むポリペプチドであってもよく、例えばIgG Fcであってもよい。前記生体適合性物質又はキャリアは、脂肪酸誘導体を介して生理活性ポリペプチドに結合されてもよい。
【0048】
ポリエチレングリコールをキャリアとして用いる場合、位置特異的にポリエチレングリコールを付着することができるAmbrx社のRecode技術が用いられてもよく、糖鎖部位に特異的に付着することができるNeose社のグリコPEG化(glycopegylation)技術が用いられてもよい。また、生体内でポリエチレングリコールが徐々に除去されるreleasable PEG技術が用いられてもよいが、これに限定されるものではなく、PEGを用いて生体内利用率を向上させる技術が用いられてもよい。さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸などの高分子重合体が前記技術により本発明の結合体に結合されてもよい。
【0049】
本発明において、アルブミンをキャリアとして用いる場合、本発明のタンパク質結合体は、アルブミン又はアルブミンフラグメントが脂肪酸誘導体に直接共有結合された結合体であってもよく、アルブミンを直接結合しなくてもアルブミンに結合する物質、例えばアルブミン特異的結合抗体又は抗体フラグメントを脂肪酸誘導体に結合させてアルブミンに結合した結合体であってもよい。また、アルブミンに結合力を有する特定ペプチド/タンパク質/化合物などを脂肪酸誘導体に結合することにより結合されるタンパク質結合体であってもよく、アルブミンに結合力を有する脂肪酸自体が結合されたタンパク質結合体であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明において、抗体又は抗体フラグメントをキャリアとして用いることができ、それはFcRn結合部位を有する抗体又は抗体フラグメントであってもよく、FabなどのFcRn結合部位を含まない抗体フラグメントであってもよいが、これらに限定されるものではない。具体的には、本発明において、免疫グロブリンFc領域をキャリアとして用いることができる。
【0051】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるので、薬物のキャリアとして安全に使用できる。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が小さいので、結合体の作製、精製及び収率の面で有利であるだけでなく、アミノ酸配列が抗体毎に異なるため、高い非均質性を示すFab部分を除去することにより、物質の同質性が非常に高くなり、血中抗原性を誘発する可能性が低くなるという効果も期待することができる。
【0052】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖定常領域1(CH1)及び軽鎖定常領域(CL1)を除いたものであり、重鎖定常領域を意味する。ただし、前記Fcフラグメントは、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。
【0053】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFcフラグメントであってもよい。
【0054】
このような免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるので、薬物のキャリアとして安全に使用できる。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が小さいので、結合体の作製、精製及び収率の面で有利であるだけでなく、アミノ酸配列が抗体毎に異なるため、高い非均質性を示すFab部分を除去することにより、物質の同質性が非常に高くなり、血中抗原性を誘発する可能性が低くなるという効果も期待することができる。
【0055】
本発明において、免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列変異体(mutant)も含まれる。アミノ酸配列変異体とは、天然アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214〜238、297〜299、318〜322又は327〜331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられてもよい。
【0056】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された変異体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去された変異体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された変異体など、様々な変異体が用いられてもよい。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFcフラグメントの配列誘導体を作製する技術は、特許文献1、2などに開示されている。
【0057】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知である(非特許文献2)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0058】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0059】
記述したFc変異体は、本発明のFcフラグメントと同じ生物学的活性を示すが、Fcフラグメントの熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させた変異体である。
【0060】
また、このようなFc領域は、ヒト、及びウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法においては、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得ることができる。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペブシンで処理するとpF’c及びF(ab)
2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。
【0061】
ヒト由来のFc領域、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域であることが好ましい。
【0062】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)の結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的に適する。
【0063】
本発明における「糖鎖が除去(Deglycosylation)」されたFc領域とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、「非グリコシル化(Aglycosylation)」されたFc領域とは、原核生物、好ましくは大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFcフラグメントを意味する。
【0064】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であり、ヒト起源であることが好ましい。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来であるか、又はそれらの組み合わせ(combination)もしくはそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来であることが好ましく、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来であることが最も好ましい。
【0065】
一方、本発明における「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFcフラグメントをコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fcフラグメントからなる群から選択される少なくとも2つのフラグメントから二量体又は多量体を作製することができる。
【0066】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリンFcフラグメント内に、少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリンFcフラグメントに相当する配列が存在することを意味する。本発明においては、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群から選択される1つ〜4つのドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0067】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けてもよく、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリッド化も可能である。IgG2及びIgG4サブクラスであることが好ましく、補体依存的傷害(CDC, complementdependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc領域であることが最も好ましい。特に、本発明のタンパク質結合体に含まれるキャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFcフラグメントであってもよい。ヒト由来のFcフラグメントは、ヒト生体において抗原として作用し、それに対する新規な抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を起こす非ヒト由来のFcフラグメントに比べて優れた効果を発揮することができる。
【0068】
本発明においては、生体内半減期を延長させるために、ペプチド又はタンパク質フラグメントをキャリアとして用いることができる。用いられるペプチド又はタンパク質フラグメントは、特定アミノ酸の組み合わせの繰り返し単位で構成されるElastin like polypeptide(ELP)であってもよく、生体内安定性が高いことが知られているトランスフェリン(transferrin)、結合組織の構成成分であるフィブロネクチン(fibronectin)などとその誘導体などであってもよいが、これらに限定されるものではなく、生体内半減期を延長させるあらゆるペプチド又はタンパク質が本発明に含まれる。
【0069】
本発明における「脂肪酸(fatty acid)」とは、前記結合体の一部(moiety)をなす一構成であり、1つのカルボキシ基(−COOH)を有する炭化水素鎖のカルボン酸を意味し、R−COOHの化学式を有する1価のカルボン酸を総称して脂肪酸という。本発明の脂肪酸は、炭化水素鎖を形成する炭素骨格の結合に応じて、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。前記不飽和脂肪酸とは、炭化水素鎖を形成する炭素骨格の結合に二重結合を少なくとも1つ含む脂肪酸を意味し、炭素骨格の結合が全て単結合だけで構成された脂肪酸は飽和脂肪酸である。
【0070】
また、本発明の脂肪酸は、直鎖構造を有する脂肪酸であってもよく、アルキル基に分枝鎖を有する脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、炭化水素鎖を形成する炭素数によって短鎖/中鎖/長鎖脂肪酸に分類され、一般に炭素数1〜6のものは短鎖脂肪酸、炭素数6〜12のものは中鎖脂肪酸、炭素数14以上のものは長鎖脂肪酸に分類される。また、不飽和脂肪酸の場合、二重結合の位置によって特性が異なることがある。
【0071】
さらに、本発明の「脂肪酸誘導体」は、前述した脂肪酸の骨格に少なくとも2つの反応基が直接又はリンカーを介して結合された物質であってもよい。例えば、前記反応基としては、2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、アリールジスルフィド、ヘテロアリールジスルフィド、ハロアセトアミド又はC
7-10アルキニルが挙げられる。具体的には、前記反応基は、マレイミド、N−ヒドロスクシンイミド、スクシンイミド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide; OPSS)、ヨードアセトアミド、前記ヨードの代わりに臭素、フッ素、塩素又はアスタチンを含むハロアセトアミド、ジフルオロシクロオクチン(difluorocyclooctyne; DIFO)、ジベンゾシクロオクチン(dibenzocyclooctyne; DIBO)、ジベンゾ−アザ−シクロオクチン(Dibenzo-aza-cyclooctyne; DIBACもしくはDBCO)、ビアリールアザシクロオクチノン(biarylazacyclooctynones; BARAC)、テトラメチルチアシクロヘプチン(tetramethylthiacycloheptyne; TMTH)、ビシクロノニン(bicyclononyne; BCN)ソンドハイマージイン(Sondheimer diyne)、シクロオクチン(cyclooctyne; OCT)、モノフッ素化シクロオクチン(monofluorinated cyclooctyne; MOFO)、ジメトキシアザシクロオクチン(dimethoxyazacyclooctyne; DIMAC)、2,3,6,7−テトラメトキシ−ジベンゾシクロオクチン(2, 3, 6, 7-tetramethoxy-DIBO, TMDIBO)、スルホン化ジベンゾシクロオクチン(sulfonylated DIBO; S-DIBO)、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン(carboxymethylmonobenzocyclooctyne; COMBO)、ピロロシクロオクチン(pyrrolocyclooctyne; PYRROC)又はアルキン(alkyne)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
また、前記反応基は、C
1-3アルキルアミノ、(C
1-3アルコキシ)
n(C
1-3アルキルアミノ)鎖(ここで、nは1〜3の整数)を含むリンカーを介して脂肪酸骨格に結合されてもよいが、リンカーの種類はこれらに限定されるものではない。
【0073】
本発明の脂肪酸は、R−COOHの化学式を有するカルボン酸であって当該R基が直鎖状又は分枝状飽和炭化水素基を含むものであってもよく、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸であってもよく、短鎖、中鎖又は長鎖脂肪酸であってもよく、具体的には炭化水素鎖を形成する炭素数1〜40のものであってもよく、より具体的には炭素数4〜30のものであってもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、本発明の脂肪酸は、ギ酸(HCOOH,formic acid)、酢酸(CH
3COOH)、プロピオン酸(C
2H
5COOH)、酪酸(C
3H
7COOH)、吉草酸(C
4H
9COOH)、カプロン酸(C
5H
11COOH)、エナント酸(C
6H
13COOH)、カプリル酸(C
7H
15COOH)、ペラルゴン酸(C
8H
17COOH)、カプリン酸(C
9H
19COOH)、ウンデシル酸(C
10H
21COOH)、ラウリン酸(C
11H
23COOH)、トリデシル酸(C
12H
25COOH)、ミリスチン酸(C
13H
27COOH)、ペンタデシル酸(C
14H
29COOH)、パルミチン酸(C
15H
31COOH)、マルガリン酸(C
16H
33COOH)、ステアリン酸(C
17H
35COOH)、ノナデシル酸(C
18H
37COOH)、アラキジン酸(C
19H
39COOH)、ベヘン酸(C
21H
43COOH)、リグノセリン酸(C
23H
47COOH)、セロチン酸(C
25H
51COOH)、ヘプタコサン酸(C
26H
53COOH)、モンタン酸(C
28H
57COOH)、メリシン酸(C
29H
59COOH)、ラッセル酸(C
31H
63COOH)、アクリル酸(CH
2=CHCOOH)、クロトン酸(CH
3CH=CHCOOH)、イソクロトン酸(CH
3CH=CHCOOH)、ウンデシレン酸(CH
2=CH(CH
2)
8COOH)、オレイン酸(C
17H
33COOH)、エライジン酸(C
17H
33COOH)、セトレイン酸(C
21H
41COOH)、エルカ酸(C
21H
41COOH)、ブラシジン酸(C
21H
41COOH)、ソルビン酸(C
5H
7COOH,F2)、リノール酸(C
17H
31COOH,F2)、リノレン酸(C
17H
29COOH,F3)、アラキドン酸(C
19H
31COOH,F4)、プロピオール酸(CH≡CCOOH)及びステアロール酸(C
17H
31COOH,F1)からなる群から選択されたものであってもよく、より具体的にはパルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸又はオレイン酸であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0074】
また、本発明の脂肪酸は、前述した脂肪酸の誘導体、類似体などであってもよく、特に脂肪酸を形成する炭化水素が直鎖状、分枝状ではなく、環基を含む変異体であってもよい。前記炭化水素に含まれる環基は、飽和単環又は複素環、芳香族縮合又は非縮合単環又は複素環であってもよく、エーテル結合、不飽和結合及び置換基を有してもよい。
【0075】
また、本発明の脂肪酸として特許文献3、4、5、6、7、8及び9に記載されている脂肪酸誘導体が用いられてもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、少なくとも2つのカルボキシ基を含む多価脂肪酸、脂肪酸のカルボキシ基の代わりにカルボン酸同配体(carboxylic acid (bio)isostere)、リン酸基又はスルホン酸基を含む物質、脂肪酸エステルなどが制限なく用いられてもよい。
【0076】
それ以外にも、本発明の脂肪酸には、当該分野で公知の前記脂肪酸の誘導体、類似体、及び当該分野の技術水準で容易に作製できる誘導体、類似体も含まれる。本発明の脂肪酸は、分子量が0.1〜100kDaの範囲、具体的には0.1〜30kDaの範囲のものであってもよく、1種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせが用いられてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0077】
本発明のタンパク質結合体に含まれる脂肪酸誘導体の少なくとも2つの反応基は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、一方の反応基にはマレイミド基、他方の反応基にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒドなどのアルキルアルデヒド基を有してもよい。2つの反応基にヒドロキシ反応基を有する脂肪酸を用いる場合、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基として活性化するか、商業的に入手可能な修飾された反応基を有する脂肪酸を用いることにより、本発明の結合体を製造することができる。
【0078】
本発明のタンパク質結合体は、前記生理活性ポリペプチドのN末端又はC末端や、ポリペプチドの末端でない中間アミノ酸残基に脂肪酸が連結され、生理活性ポリペプチドに連結された脂肪酸部分に生体適合性物質が連結されたものであってもよい。前記N末端又はC末端には、末端自体でないN末端又はC末端側の1〜25個のアミノ酸からなる領域が含まれる。
【0079】
本発明のタンパク質結合体は[生理活性ポリペプチド−脂肪酸誘導体−生体適合性物質]の構造を1つ以上含んでもよく、これを構成する要素は共有結合により直鎖状又は分枝状に連結されてもよく、本発明のタンパク質結合体は各構成要素を1つ以上含んでもよい。本発明の脂肪酸は、少なくとも2つの反応基を含んでいるので、生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質とそれぞれ共有結合により連結されてもよい。また、1つの生体適合性物質に、生理活性ポリペプチドと脂肪酸誘導体が結合された連結体を共有結合により少なくとも1つ連結することにより、生体適合性物質を媒体として生理活性ポリペプチド単量体、二量体又は多量体を形成することができ、それにより生理活性ポリペプチドの生体内活性及び安定性の向上をより効果的に達成することができる。
【0080】
本発明のタンパク質結合体において、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質は様々なモル比で結合されてもよい。
【0081】
本発明の他の態様は、(a)脂肪酸誘導体を介して生理活性ペプチドと生体適合性物質を連結するステップと、(b)前記(a)ステップの反応結果物であるタンパク質結合体を分離するステップとを含む、タンパク質結合体を製造する方法を提供する。
【0082】
前記生理活性ペプチド、前記生体適合性物質及び前記脂肪酸誘導体については前述した通りである。
【0083】
前記(a)ステップにおいて、三構成要素の連結は共有結合であってもよく、当該共有結合は順次又は同時に行われてもよい。例えば、少なくとも2つの反応基を有する脂肪酸誘導体の反応基にそれぞれ生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質を結合させる場合、生理活性ポリペプチドと生体適合性物質のいずれかを先に脂肪酸誘導体の一方の反応基に結合させ、その後残りの成分を脂肪酸誘導体の他方の反応基に結合させる方式で反応を順次行うことが、目的とするタンパク質結合体以外の副産物の生成を最小限に抑えるのに有利である。
【0084】
よって、前記(a)ステップは、(a1)脂肪酸誘導体の一方の反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方を連結するステップと、(a2)前記(a1)ステップの反応混合物から脂肪酸誘導体に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドのいずれか一方が連結された連結体を分離するステップと、(a3)前記(a2)ステップで分離された連結体の脂肪酸誘導体の他方の反応基に生体適合性物質と生理活性ポリペプチドの他方を連結し、脂肪酸の反応基がそれぞれ生理活性ポリペプチド及び生体適合性物質に連結されたタンパク質結合体を生成するステップとを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0085】
前記(a1)ステップ及び前記(a3)ステップの反応は、反応に関与する脂肪酸誘導体の反応基の種類を考慮して、必要に応じて還元剤の存在下で行ってもよい。具体的な還元剤としては、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
3)、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンホウ酸塩、ピコリンボランコンプレックス、ピリジンホウ酸塩(borane pyridine)などが用いられてもよい。
【0086】
前記(a2)ステップ及び前記(b)ステップは、要求される純度及び生成される産物の分子量、電荷量などの特性を考慮して、タンパク質の分離に用いられる通常の方法を必要に応じて適宜選択して行ってもよい。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーをはじめとする様々な公知の方法を用いることができ、必要に応じて、より高い純度に精製するために複数の各種方法を組み合わせて用いることができる。
【0087】
前記(a1)ステップにおいて、生理活性ポリペプチドと脂肪酸誘導体の反応モル比及び生体適合性物質と脂肪酸誘導体の反応モル比は、それぞれ独立して1:1〜1:20の範囲から選択される比率であってもよい。具体的には、生理活性ポリペプチドと脂肪酸誘導体の反応モル比は1:2〜1:10であってもよく、生体適合性物質と脂肪酸誘導体の反応モル比は1:4〜1:20であってもよい。一方、前記(a3)ステップにおいて、(a2)ステップで分離された連結体と生体適合性物質又は生理活性ポリペプチドの反応モル比は1:0.5〜1:20の範囲であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明のさらに他の態様は、本発明のタンパク質結合体を製造する方法により製造したタンパク質結合体と、前記製造したタンパク質結合体を含む薬剤学的組成物を提供する。本発明の薬剤学的組成物は、生体内持続性及び安定性が天然生理活性ポリペプチドより向上した持続性製剤であってもよい。
【0089】
本発明の結合体を含む薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含んでもよい。薬剤学的に許容される担体は、経口投与の場合は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、鎮痛剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤などを用いることができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、前述したような薬剤学的に許容される担体と混合して様々な形態に製造することができる。例えば、経口投与の場合は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態に製造することができ、注射剤の場合は、単位投薬アンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0090】
なお、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などが挙げられる。
【0091】
また、本発明の薬剤学的組成物は、充填剤、抗凝集剤、滑滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0093】
作製例1:少なくとも2つの反応基を有する脂肪酸誘導体の作製のための中間体1−2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)−N−(2−(2−(2,2−ジメトキシエトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミドの合成
【0094】
[反応式1]
【化1】
【0095】
工程1.ベンジル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルカルバメートの作製
テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran; THF, 5L)に溶解した2−(2−アミノエトキシ)エタノール(150mL,1.459mol)にトリエチルアミン(229mL,1.645mol)、クロロギ酸ベンジル(211mL,1.495mol)を加え、その後12時間攪拌した。固体を濾過して酢酸エチルで洗浄し、その後濾液を濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物(202g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.37-7.29(m, 5H), 5.25(br, 1H), 5.10(s, 2H), 4.13-4.11(m, 2H), 3.57-3.54(m, 4H), 3.43-3.38(m, 2H), 2.24(br, 1H).
【0096】
工程2.t−ブチル3−オキソ−1−フェニル−2,7,10−トリオキサ−4−アザドデカン−12−オエートの作製
前記工程1で得たベンジル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルカルバメート(129g,0.539mol)をTHF(2L)に溶解し、その後カリウムt−ブトキシド(60.5g,0.593mol)を0℃で滴下した。30分後にt−ブチルブロモアセテートを加えて0℃で3時間攪拌し、常温で15時間さらに攪拌した。この反応溶液に水を入れて反応を終結させ、その後濃縮して酢酸エチルを入れて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過して濾液を濃縮し、その後カラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物(87.5g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.36-7.30(m, 5H), 5.38(br, 1H), 5.10(s, 2H), 4.00(s, 2H), 3.70-3.64(m, 4H), 3.60-3.56(m, 2H), 3.43-3.40(m, 2H), 1.46(s, 9H).
【0097】
工程3.3−オキソ−1−フェニル−2,7,10−トリオキサ−4−アザドデカン−12−オイック酸の作製
前記工程2で得たt−ブチル3−オキソ−1−フェニル−2,7,10−トリオキサ−4−アザドデカン−12−オエート(22.0g,62.249mmol)をジクロロメタン(138mL)に溶解し、その後トリフルオロ酢酸(138mL)を加えて常温で5時間攪拌した。この反応溶液を濾過し、濾液を濃縮して標題化合物(13.0g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.36-7.31(m, 5H), 5.11(s, 2H), 4.15(s, 2H), 3.74-3.58(m, 6H), 3.42-3.40(m, 2H).
【0098】
工程4.エチル3−オキソ−1−フェニル−2,7,10−トリオキサ−4−アザドデカン−12−オエートの作製
前記工程1で得たベンジル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルカルバメート(15.0g,62.691mmol)をTHF(240mL)に溶解し、その後カリウムt−ブトキシド(7.0g,62.691mmol)を0℃で滴下した。30分後にエチルブロモアセテートを加えて0℃で3時間攪拌し、常温で15時間さらに攪拌した。この反応溶液に水を入れて反応を終結させ、その後濃縮して酢酸エチルを入れて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過して濾液を濃縮し、その後カラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物(8.6g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.36-7.30(m, 5H), 5.32(br, 1H), 5.10(s, 2H), 4.19(q, 2H), 4.12(s, 2H), 3.72-3.65(m, 4H), 3.59-3.56(m, 2H), 3.41-3.38(m, 2H), 1.26(t, 3H).
【0099】
工程5.2−(2−(2,2−ジメトキシエトキシ)エトキシ)エタン−1−アミンの作製
前記工程4で得たエチル3−オキソ−1−フェニル−2,7,10−トリオキサ−4−アザドデカン−12−オエート(5.0g,15.368mmol)を無水THF(30mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下、−78℃で水素化ジイソブチルアルミニウム(diisobutylaluminium hydride; DIBAL-H,23.0mL,23.051mmol)を徐々に滴下し、その後0℃で1時間攪拌した。この反応溶液に10%塩酸を加えて0℃で30分間攪拌し、その後酢酸エチルを入れて抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、次いで濾過して濾液を濃縮した。生成物をアルゴン雰囲気下でメタノール(18mL)に溶解し、オルトギ酸トリメチル(13.4mL,122.941mmol)、p−トルエンスルホン酸(146mg,0.768mmol)を入れて常温で2時間攪拌した。酢酸エチルを入れて抽出し、次いで有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、その後濾過して濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を再びメタノール(10mL)に溶解し、10%Pd/C(76mg,0.4wt%)を入れて水素雰囲気下、常温で3時間攪拌した。反応溶液を濾過して濾液を濃縮し、その後減圧乾燥して標題化合物(673mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 4.53(t, 1H), 3.68-3.62(m, 6H), 3.56-3.50(m, 2H), 3.40(s, 6H), 2.87(t, 2H).
【0100】
工程6.2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)−N−(2−(2−(2,2−ジメトキシエトキシ)エトキシ)エチル)アセトアミドの作製
前記工程3で得た3−オキソ−1−フェニル−2,7,10−トリオキサ−4−アザドデカン−12−オイック酸(952mg,3.204mmol)をアセトニトリル(30mL)に溶解し、BOP((benzotriazol-1-yloxy)tris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate, 1.6g,3.522mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(N,N-diisopropylethylamine; DIPEA, 1.7mL,9.606mmol)を入れ、その後常温で30分間攪拌した。この反応溶液に工程5で得た2−(2−(2,2−ジメトキシエトキシ)エトキシ)エタン−1−アミン(650mg,3.364mmol)を入れて常温で3時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルを添加して重曹(炭酸水素ナトリウム)で洗浄した。その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を再びメタノール(8mL)に溶解し、10%Pd/C(104mg,0.4wt%)を入れて水素雰囲気下、常温で3時間攪拌した。反応溶液を濾過して濾液を濃縮し、その後減圧乾燥して中間体1(173mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, MeOD) δ 4.52(t, 1H), 4.03(s, 2H), 3.71-3.32(m, 22H), 2.97(t, 2H).
【0101】
作製例2:少なくとも2つの反応基を有する脂肪酸誘導体の作製のための中間体2−(S)−24−(t−ブトキシカルボニル)−3−メトキシ−12,21,26−トリオキソ−2,5,8,14,17−ペンタオキサ−11,20,25−トリアザトリテトラコンタン−43−オイック酸の合成
【0102】
[反応式2]
【化2】
【0103】
工程1.18−(ベンジルオキシ)−18−オキソオクタデカン酸の作製
トルエン(3.7L)にオクタデカン二酸(octadecandioic acid, 100g,318mmol)、p−トルエンスルホン酸(756mg,3.975mmol)、ベンジルアルコール(26.4mL,254.4mol)を加えて蒸留した。この反応溶液にセライトを入れ、40℃に冷却して1時間攪拌し、その後シリカゲルで濾過した。濾液を減圧濃縮し、50℃でヘプタンを加えた。固体を濾過してヘプタンで洗浄し、その後乾燥して標題化合物(67.9g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.36-7.34(m, 5H), 5.11(s, 2H), 2.35(t, 4H), 1.64(t, 4H), 1.25(s, 24H).
【0104】
工程2.1−ベンジル18−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オクタデカノエートの作製
前記工程1で得た18−(ベンジルオキシ)−18−オキソオクタデカン酸(20.0g,49.43mmol)をN−ヒドロキシスクシンイミド(6.8g,59.319mmol)、DIC(N,N’-diisopropylcarbodiimide, 12.24g,59.312mmol)をNMP(N-methyl-2-pyrrolidone, 200mL)に溶解し、その後60℃で2.5時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を常温に冷却して固体を濾過した。濾液に水を加え、生成された固体を濾過して水で洗浄した。固体をイソプロピルアルコールで再結晶して標題化合物(21.6g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.37-7.31(m, 5H), 5.11(s, 2H), 2.83(s, 2H), 2.60(t, 2H), 2.35(t, 2H), 1.77-1.53(m, 6H), 1.25(s, 24H).
【0105】
工程3.(S)−1−t−ブチル5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)2−(18−(ベンジルオキシ)−18−オキソオクタデカンアミド)ペンタンジオエートの作製
前記工程2で得た1−ベンジル18−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オクタデカノエート(10.0g,19.934mmol)、L−グルタミン酸5−t−ブチルエステル(4.3g,20.931mmol)をNMP(80mL)に入れて50℃で4時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を常温に冷却し、水(230mL)、0.5M硫酸水素カリウム(34mL)、酢酸エチルを添加して抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して濾液を濃縮した。生成物をNMP(75mL)に溶解し、次いでN−ヒドロキシスクシンイミド(3.7g,31.894mmol)、DCC(N,N’-dicyclohexylcarbodiimide, 5.4g,25.914mmol)を加え、その後常温で16時間攪拌した。固体を濾過して濾液を水で洗浄し、その後有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して濾液を濃縮した。カラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物(7.1g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 7.36-7.31(m, 5H), 6.19(d, 1H), 5.11(s, 2H), 4.64-4.57(m, 1H), 2.83(s, 4H), 2.73-2.62(m, 2H), 2.35(t, 2H), 2.24-2.17(m, 2H), 1.66-1.55(m, 4H), 1.48(s, 9H), 1.24(s, 26H).
【0106】
工程4.(S)−24−(t−ブトキシカルボニル)−3−メトキシ−12,21,26−トリオキソ−2,5,8,14,17−ペンタオキサ−11,20,25−トリアザトリテトラコンタン−43−オイック酸の作製
前記工程3で得た(S)−1−t−ブチル5−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)2−(18−(ベンジルオキシ)−18−オキソオクタデカンアミド)ペンタンジオエート(329mg,0.478mmol)、作製例1で準備した中間体1(170mg,0.502mmol)、トリエチルアミン(0.2mL,1.435mmol)をアセトニトリル(8mL)に入れて常温で16時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮してカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物をメタノール(10mL)に溶解し、10%Pd/C(140mg,0.4wt%)を入れて水素雰囲気下、常温で3時間攪拌した。反応溶液を濾過し、その後濾液を濃縮し、減圧乾燥して中間体2(300mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) δ 6.87(br, 1H), 6.63(d, 1H), 4.52(t, 1H), 4.41(m, 1H), 4.04(s, 2H), 3.70-3.47(m, 18H), 3.41(s, 6H), 2.35-2.2.20(m, 7H), 1.93-1.86(m, 1H), 1.63-1.53(m, 4H), 1.46(s, 9H), 1.26(s, 24H).
【0107】
作製例3:生体適合性物質としての免疫グロブリンFcフラグメントの作製
タンパク質結合体の生体適合性物質として免疫グロブリンFcフラグメントを用いた。免疫グロブリンFcフラグメントは、本発明者らが出願した特許文献10「開始メチオニン残基が除去された免疫グロブリンFc領域の大量生産方法」により製造した。