特許第6989526号(P6989526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6989526フルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー及びフリーラジカル硬化性成分をベースとする組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989526
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】フルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー及びフリーラジカル硬化性成分をベースとする組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20211220BHJP
   C08F 291/04 20060101ALI20211220BHJP
   C08F 291/12 20060101ALI20211220BHJP
   C08F 291/06 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   C08F2/44 C
   C08F291/04
   C08F291/12
   C08F291/06
【請求項の数】29
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-559330(P2018-559330)
(86)(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公表番号】特表2019-515116(P2019-515116A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】US2017032331
(87)【国際公開番号】WO2017197220
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2020年5月11日
(31)【優先権主張番号】62/335,813
(32)【優先日】2016年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クルト・エイ・ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・クラング
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/024886(WO,A1)
【文献】 特開2015−178593(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/046472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44
C08F 291/00−291/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フッ化ビニリデンのホモポリマーであるか、又はフッ化ビニリデンモノマー単位少なくとも約70重量%及び少なくとも1つのタイプのコモノマー単位約30重量%までを含むコポリマーである、少なくとも1種のフルオロポリマー;
b)前記少なくとも1種のフルオロポリマーと少なくとも部分的に熱力学的混和性の少なくとも1種のフルオロポリマー混和性ポリマーであって、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドより成る群から選択される少なくとも1種のモノマーから成るポリマー又はコポリマーである前記フルオロポリマー混和性ポリマー;並びに
c)フリーラジカル硬化性のエチレン性不飽和官能基を1分子当たり少なくとも個含有する少なくとも1種の化合物(重合性官能基を含有する含窒素芳香族複素環化合物を除く)から成るフリーラジカル硬化性成分:
を含む組成物。
【請求項2】
a)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約40〜約80重量%の量で組成物中に存在させ、b)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約10〜約40重量%の量で組成物中に存在させ、且つc)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約5〜約50重量%の量で組成物中に存在させた、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約50〜約70重量%の量で組成物中に存在させ、b)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約15〜約25重量%の量で組成物中に存在させ、且つc)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約15〜約25重量%の量で組成物中に存在させた、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記フリーラジカル硬化性成分が1分子当たり少なくとも1個の(メタ)アクリレート官能基を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記フリーラジカル硬化性成分が、1分子当たり少なくとも2個のフリーラジカル硬化性官能基を含有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
a)がフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンより成る群から選択される少なくとも1種のコモノマーとの少なくとも1種のコポリマーを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
b)が少なくとも1種のアクリルポリマーを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
b)がメタクリル酸メチルモノマー単位50〜100重量%及びメタクリル酸メチルモノマー単位以外の少なくとも1つのタイプの(メタ)アクリレートコモノマー単位0〜50重量%を含む少なくとも1種のアクリルポリマーを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
b)がメタクリル酸メチルとアクリル酸エチル、アクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルより成る群から選択される少なくとも1種のモノマーとのコポリマーである、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
c)が1分子当たり3個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
c)がアクリル化ポリオール、アクリル化アルコキシル化ポリオール及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種のアクリレートを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
c)がエトキシル化ペンタエリトリットテトラアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化2−ネオペンチルグリコールジアクリレート及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種のアクリレートを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を追加的に含む、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
a)、b)及びc)用の少なくとも1種の溶剤又はキャリヤーを追加的に含む、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記の少なくとも1種の溶剤又はキャリヤーが揮発性有機化合物(VOC)と分類される溶剤を含まない、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
a)及びb)用のキャリヤーとして水を含み、a)及びb)が水性分散体として存在する、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
水がa)、b)及びc)用のキャリヤーであり、a)、b)及びc)が水性分散体として存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記フリーラジカル硬化性成分c)がUV硬化性ポリウレタン分散体を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
顔料、可塑剤、安定剤、シリコーン及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の添加剤を追加的に含む、請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
表面を有する基材と前記表面の少なくとも一部の上にコーティングされた請求項1〜19のいずれかに記載の組成物の層とを含む、コーティングされた基材。
【請求項21】
前記組成物の層を硬化させた、請求項20に記載のコーティングされた基材。
【請求項22】
前記基材が布帛を含む、請求項20又は21に記載のコーティングされた基材。
【請求項23】
前記基材が少なくとも1種のプラスチック又は金属を含む、請求項20〜22のいずれかに記載のコーティングされた基材。
【請求項24】
前記基材の表面がポリ塩化ビニル、フルオロポリマー又はアルミニウムを含む、請求項20〜22のいずれかに記載のコーティングされた基材。
【請求項25】
コーティングされる基材が建築用布帛、屋根用膜材、窓枠、風力タービン羽根、柵部材又は壁板部材である、請求項20〜24のいずれかに記載のコーティングされた基材。
【請求項26】
基材の表面に請求項1〜19のいずれかに記載の組成物の層を塗布する工程及び前記組成物の層を硬化させる工程を含む、基材をコーティングする方法。
【請求項27】
硬化が前記組成物の層を紫外線、電子ビーム線又は熱に曝露することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
a)、b)及びc)を含む混合物を均質になるまでブレンドすることを含む、請求項1〜19のいずれかに記載の組成物の製造方法。
【請求項29】
前記混合物がa)、b)及びc)用の少なくとも1種の溶剤を追加的に含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル手段によって硬化して耐久性コーティング等を提供することができる組成物であって、フルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー(例えばアクリルポリマー)及びフリーラジカル硬化性成分、例えば(メタ)アクリレート類を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のようなフルオロポリマーは、良好な耐候性及び可撓性並びにその他の望ましい属性を有する熱可塑性樹脂であると認知されている。しかしながら、ある種の最終用途、例えばコーティング用途においては、かかるフルオロポリマーから製造されるフィルムの硬度及び耐汚染性を改善できる方法を開発するのが有利であろう。かかるフィルムはまた、高い光沢及び透明性を示すのが望ましい。これらの特徴すべてを同時に達成することは非常に困難であることが認められている。と言うのも、1つの特性を改善するために取られる方策は他の1つ以上の特性の劣化につながることが頻繁にあるからである。
【発明の概要】
【0003】
様々な例示的で非限定的な本発明の局面を、以下にまとめることができる。
【0004】
局面1:以下のものを含み、以下のものを必須とし(以下のものから本質的に成り)又は以下のものから成る組成物。
a)少なくとも1種のフルオロポリマー;
b)前記の少なくとも1種のフルオロポリマーと少なくとも部分的に熱力学的混和性の少なくとも1種のフルオロポリマー混和性ポリマーであって、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドより成る群から選択される少なくとも1種のモノマーを含み、必須とし又はから成るポリマー又はコポリマーである前記フルオロポリマー混和性ポリマー;並びに
c)フリーラジカル硬化性のエチレン性不飽和官能基を1分子当たり少なくとも1個含有する少なくとも1種の化合物を含み、必須とし又はから成るフリーラジカル硬化性成分。
【0005】
局面2:a)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約40〜約80重量%の量で組成物中に存在させ、b)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約10〜約40重量%の量で組成物中に存在させ、且つc)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約5〜約50重量%の量で組成物中に存在させた、局面1の組成物。
【0006】
局面3:a)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約50〜約70重量%の量で組成物中に存在させ、b)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約15〜約25重量%の量で組成物中に存在させ、且つc)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約15〜約25重量%の量で組成物中に存在させた、局面1の組成物。
【0007】
局面4:前記フリーラジカル硬化性成分が、1分子当たり少なくとも1個の(メタ)アクリレート官能基を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートを含み、必須とし又はから成る、局面1〜3のいずれかの組成物。
【0008】
局面5:前記フリーラジカル硬化性成分が、1分子当たり少なくとも2個のフリーラジカル硬化性官能基を含有する少なくとも1種の化合物を含み、必須とし又はから成る、局面1〜4のいずれかの組成物。
【0009】
局面6:a)がフッ化ビニリデンのホモポリマー又はフッ化ビニリデンモノマー単位少なくとも約70重量%及び少なくとも1つのタイプのコモノマー単位約30重量%までを含み、必須とし若しくはから成るコポリマーである少なくとも1種のフルオロポリマーをを含み、必須とし又はから成る、局面1〜5のいずれかの組成物。
【0010】
局面7:a)がフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンより成る群から選択される少なくとも1種のコモノマーとの少なくとも1種のコポリマーを含み、必須とし又はから成る、局面1〜6のいずれかの組成物。
【0011】
局面8:b)が少なくとも1種のアクリルポリマーを含み、必須とし又はから成る、局面1〜8のいずれかの組成物。
【0012】
局面9:b)がメタクリル酸メチルモノマー単位50〜100重量%及びメタクリル酸メチルモノマー単位以外の少なくとも1つのタイプの(メタ)アクリレートコモノマー単位0〜50重量%を含み、必須とし又はから成る少なくとも1種のアクリルポリマーを含み、必須とし又はから成る、局面1〜8のいずれかの組成物。
【0013】
局面10:b)がメタクリル酸メチルとアクリル酸エチル、アクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルより成る群から選択される少なくとも1種のモノマーとのコポリマーである、局面1〜9のいずれかの組成物。
【0014】
局面11:c)が1分子当たり3個以上の(メタ)アクリレート官能基を含有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートを含み、必須とし又はから成る、局面1〜9のいずれかの組成物。
【0015】
局面12:c)がアクリル化ポリオール、アクリル化アルコキシル化ポリオール及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種のアクリレートを含み、必須とし又はから成る、局面1〜11のいずれかの組成物。
【0016】
局面13:c)がエトキシル化ペンタエリトリットテトラアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化2−ネオペンチルグリコールジアクリレート及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種のアクリレートを含み、必須とし又はから成る、局面1〜12のいずれかの組成物。
【0017】
局面14:少なくとも1種のフリーラジカル開始剤(例えば過酸化物又はアゾ化合物等の光開始剤及び/又は熱式開始剤)を追加的に含む、局面1〜13のいずれかの組成物。
【0018】
局面15:a)、b)及びc)用の少なくとも1種の溶剤又は分散剤(キャリヤー)を追加的に含む、請求項1〜14のいずれかの組成物。
【0019】
局面16:前記の少なくとも1種の溶剤又はキャリヤーが揮発性有機化合物(VOC)と分類される溶剤を含まない、請求項15の組成物。
【0020】
局面17:a)及びb)用のキャリヤーとして水を含み、a)及びb)が水性分散体として存在する、請求項15又は16の組成物。
【0021】
局面18:水がa)、b)及びc)用のキャリヤーであり、a)、b)及びc)が水性分散体として存在する、請求項17の組成物。
【0022】
局面19:前記フリーラジカル硬化性成分c)がUV硬化性ポリウレタン分散体を含む、請求項18の組成物。
【0023】
局面20:顔料、可塑剤、安定剤、シリコーン類及びそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の添加剤を追加的に含む、局面1〜19のいずれかの組成物。
【0024】
局面21:表面を有する基材と前記表面の少なくとも一部の上にコーティングされた局面1〜20のいずれかに従う組成物の層とを含み、必須とし又はから成る、コーティングされた基材。
【0025】
局面22:前記組成物の層を硬化させた、局面21のコーティングされた基材。
【0026】
局面23:前記基材が布帛を含み、必須とし又はから成る、局面21又は局面22のコーティングされた基材。
【0027】
局面24:前記基材が少なくとも1種のプラスチック又は金属を含み、必須とし又はから成る、局面21〜23のいずれかのコーティングされた基材。
【0028】
局面25:前記基材の表面がポリ塩化ビニル、フルオロポリマー又はアルミニウムを含み、必須とし又はから成る、局面21〜24のいずれかのコーティングされた基材。
【0029】
局面26:コーティングされる基材が建築用布帛、屋根用膜材、窓枠、風力タービン羽根、柵部材又は壁板部材である、局面21〜25のいずれかのコーティングされた基材。
【0030】
局面27:基材の表面に局面1〜20のいずれかに従う組成物の層を塗布する工程及び前記組成物の層を硬化させる工程を含み、必須とし又はから成る、基材をコーティングする方法。
【0031】
局面28:硬化が前記組成物の層を紫外線、電子ビーム線又は熱に曝露することを含み、必須とし又はから成る、局面27の方法。
【0032】
局面29:a)、b)及びc)を含み、必須とし又はから成る混合物を均質になるまでブレンドすることを含み、必須とし又はから成る、局面1〜20のいずれかに従う組成物の製造方法。
【0033】
局面30:前記混合物がa)、b)及びc)用の少なくとも1種の溶剤を追加的に含む、局面29の方法。
【0034】
フルオロポリマー
【0035】
本発明において有用なフルオロポリマーには、1種以上のフルオロモノマーのホモポリマー及びフルオロモノマー単位を50重量%超、好ましくは65重量%超、より一層好ましくは75重量%超、特に好ましくは90重量%超有するコポリマーが包含される。フルオロポリマーを生成させるための特に有用なフルオロモノマーには、以下のものが含まれる(これらに限定されるわけではない):フッ化ビニリデン(VDF又はVF2)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)、ペンタフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロペン、フッ素化ビニルエーテル、例えばペルフルオロメチルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、長鎖ペルフッ素化ビニルエーテル、フッ素化ジオキソール、C4以上の部分又は完全部分又は完全フッ素化α−オレフィン、C3以上の部分又は完全フッ素化環状アルケン及びそれらの組合せ。本発明の組成物に有用なフルオロポリマーは、有利には熱可塑性のものである。
【0036】
好ましいフルオロポリマーには、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のホモポリマー、並びにこれらの内の1種以上のモノマーと1種以上の共反応性(フッ素化又は非フッ素化)モノマー(例えばヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロビニルエーテル、プロパン、酢酸ビニル等)とのコポリマーが包含される。
【0037】
特に好ましいフルオロポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ホモポリマー及びコポリマーである。フッ化ビニリデンポリマーが、本発明を例示するために用いられ、好ましいタイプのフルオロポリマーである。
【0038】
本明細書において用いられる用語「フッ化ビニリデンポリマー」(PVDF)には、その意味内でフッ化ビニリデンの重合した単位を含有するホモポリマー、コポリマー及びターポリマーが包含される。かかるコポリマーには、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より一層好ましくは少なくとも80モル%、さらにより一層好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデンを上に挙げたフルオロモノマーの群から選択される少なくとも1種のコモノマーと共重合させたものが包含される。特に好ましいのは、少なくとも約70〜99モル%までのフッ化ビニリデンと、それに応じて1〜30%のテトラフルオロエチレンとから成るコポリマー、例えば英国特許第827308号に開示されたコポリマー組成物;及び約70〜99%のフッ化ビニリデンと1〜30%のヘキサフルオロプロペンとから成るコポリマー(例えば米国特許第3178399号明細書);及び約70〜99モル%のフッ化ビニリデンと1〜30モル%のトリフルオロエチレンとから成るコポリマーである。
【0039】
本発明において用いられるPVDFは、一般的に当技術分野において周知の任意の重合手段によって、例えば水性フリーラジカル乳化重合によって調製することができるが、懸濁重合法、溶液重合法及び超臨界CO2重合法を用いることもできる。一般的な乳化重合法では、反応器に脱イオン水、重合の間反応物を乳化させておくことができる水溶性界面活性剤及び随意としてのパラフィンワックス防汚剤を装填する。この混合物を撹拌し、酸素を除去する。次いで反応器に所定量の連鎖移動剤CTAを導入し、反応器の温度を所望のレベルに上昇させ、反応器にフッ化ビニリデン(及び場合により1種以上のコモノマー)を供給する。初期装填分のフッ化ビニリデンを導入して反応器中の圧力が所望のレベルに達したら、重合反応を開始させるために開始剤エマルション又は溶液を導入する。反応温度は用いる開始剤の特徴に応じて変えることができ、当業者であればそのやり方がわかるだろう。典型的には、この温度は約30〜150℃、好ましくは約60〜110℃であろう。反応器中のポリマーが所望の量に達したら、モノマーの供給を停止し、しかし残留医モノマーを消費させるために随意に開始剤の供給を続けてもよい。残留ガス(未反応モノマーを含有)を排気し、ラテックスを反応器から回収する。重合に用いられる界面活性剤は、PVDFの乳化重合に有用であると当技術分野において知られている任意の界面活性剤であることができ、完全フッ素化、部分フッ素化及び非フッ素化界面活性剤が包含される。規制上の理由で、PVDFエマルションをフッ素化界面活性剤なしで作るのが好ましい。PVDF重合に有用な非フッ素化界面活性剤は、イオン性及び非イオン性の両方であることができ、非限定的な例としては、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸及びそれらの塩、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール並びにそれらのブロックコポリマー、アルキルホスホン酸塩並びにシロキサン系界面活性剤が挙げられる。
【0040】
本発明の様々な実施形態において、フルオロポリマーは、15000〜4000000g/モル、好ましくは25000〜300000g/モル、より一層好ましくは50000〜150000g/モルの重量平均分子量を有することができる。
【0041】
フルオロポリマー混和性ポリマー
【0042】
本発明の組成物は、(フルオロポリマーに加えて、)前記の少なくとも1種のフルオロポリマーと少なくとも部分的に熱力学的混和性の少なくとも1種のフルオロポリマー混和性ポリマーであって、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドより成る群から選択される少なくとも1種のモノマーから成るホモポリマー又はコポリマーである前記フルオロポリマー混和性ポリマーを含む。ある実施形態において、フルオロポリマー混和性ポリマーは、少なくとも1種のフルオロポリマーと完全に熱力学的混和性である。好適な(メタ)アクリルモノマーには、フルオロポリマー混和性ポリマーがアクリルポリマーである実施形態に関して下で論じる任意のメタクリル酸アルキル及び/又はアクリル酸アルキルモノマーが包含される。好適なビニルエステルには、例えば酢酸ビニルが包含される。(メタ)アクリロニトリルモノマーにはメタクリロニトリル及びアクリロニトリルが包含され;(メタ)アクリルアミドモノマーにはメタクリルアミド及びアクリルアミドが包含される。
【0043】
熱力学的混和性ポリマー組成物は単一のガラス転移温度値を示し、この単一のガラス転移温度値は一般的に個々のポリマー成分のガラス転移温度の中間に位置するであろう。対応して、部分的に混和性又は非混和性の組成物は、2つ以上のガラス転移温度値を示すであろう。従って、混合の自由エネルギーが負である時に、2種以上のポリマーは熱力学的に混和性であると言われる。追加的に、2種以上のポリマーの混合物が単一のはっきり画定されたガラス転移温度を示す材料をもたらす場合には、熱力学的混和性が存在すると言われる。
【0044】
本発明のある有利な実施形態において、フルオロポリマー混和性ポリマーはアクリルポリマーである。本明細書において用いた時、用語「アクリルポリマー」には、メタクリル酸アルキル及び/又はアクリル酸アルキルモノマー並びにそれらの混合物から形成されるポリマー及びコポリマーが包含される。1つの実施形態において、メタクリル酸アルキルモノマーはメタクリル酸メチルであり、これはモノマー混合物の50〜100%を構成することができる。モノマー混合物の残部(0〜50%)は、1種以上の他のアクリレート若しくはメタクリレートモノマー又は他のエチレン性不飽和モノマーであることができ、これにはビニル芳香族モノマー(例えばスチレン及びα−メチルスチレン)、アクリロニトリルが包含される(これらに限定されるわけではない)。また、架橋剤をモノマー混合物中に存在させることもできる。モノマー混合物に有用な他のメタクリレート及びアクリレートモノマーには、以下のものが包含される(これらに限定されるわけではない):アクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソオクチル及びアクリル酸イソオクチル、アクリル酸ラウリル及びメタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル及びメタクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボルニル及びメタクリル酸イソボルニル、アクリル酸メトキシエチル及びメタクリル酸メトキシエチル,アクリル酸2−エトキシエチル及びメタクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸ヒドロキシメチル及びメタクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル及びメタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル及びメタクリル酸ジメチルアミノモノマー。メタクリル酸及びアクリル酸等の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル並びに(メタ)アクリルアミドもコモノマーとして用いることができる。アクリルポリマーがコポリマーである場合、コポリマーは本発明の様々な実施形態においてランダムコポリマーであることができる。
【0045】
1つの実施形態において、アクリルポリマーは、メタクリル酸メチルモノマー単位65〜97重量%及び1種以上のC1〜C6アクリル酸アルキルモノマー単位3〜35重量%から構成される。
【0046】
本発明において用いられるアクリルポリマーは、2種、3種又はそれ以上の異なるアクリレートモノマーのコポリマー、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルの混合物のコポリマーであることができる。異なるアクリル樹脂の組合せ物又は混合物を用いることもできる。
【0047】
アクリルポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマーであるが、熱硬化性ポリマー又は2つのタイプのポリマーの混合物であることもできる。
【0048】
様々な実施形態において、アクリルポリマーはフルオロポリマーと部分的に又は完全に熱力学的混和性である。
【0049】
本発明において用いるのに好適なアクリルポリマーは、乳化重合、溶液重合及び懸濁重合を含めて、当技術分野において周知の任意の手段によって製造することができる。
【0050】
ある実施形態において、フルオロポリマー混和性ポリマー(例えばアクリルポリマー)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定して約50000〜500000g/モル又は約75000〜約200000g/モルの重量平均分子量を有する。フルオロポリマー混和性ポリマーの分子量分布は、単一モードであってもマルチモードであってもよい;多分散度は低くても(例えば1〜1.5)比較的高くても(例えば1.5超)よい。
【0051】
フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和成分
【0052】
本発明の組成物のフリーラジカル硬化性成分に用いるのに好適なエチレン性不飽和化合物には、炭素−炭素二重結合、特にフリーラジカル反応に関与することができる炭素−炭素二重結合(炭素−炭素二重結合の少なくとも1つの炭素が第2の分子の原子、特に炭素原子に共有結合する)を少なくとも1つ含有する化合物が包含される。かかる反応は、重合又は硬化をもたらし、それによってエチレン性不飽和化合物が重合したマトリックス又はポリマー鎖の一部になることができる。本発明の様々な実施形態において、エチレン性不飽和化合物は1分子当たり1個、2個、3個、4個、5個又はそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有することができる。ある実施形態において、本発明の組成物のフリーラジカル硬化性成分は、1分子当たり少なくとも2個の炭素−炭素二重結合を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物を含み、必須とし又はから成る。別の実施形態において、本発明の組成物のフリーラジカル硬化性成分は、1分子当たり少なくとも3個の炭素−炭素二重結合を含有する少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物を含み、必須とし又はから成る。
【0053】
異なる数の炭素−炭素二重結合を含有する複数のエチレン性不飽和化合物の組合せを、本発明の組成物に利用できる。炭素−炭素二重結合は、α,β−不飽和カルボニル部分の一部として、例えばアクリレート官能基やメタクリレート官能基のようなα,β−不飽和エステル部分の一部として、存在することができる。炭素−炭素二重結合はまた、ビニル基−CH=CH2の形でエチレン性不飽和化合物中に存在することもできる(例えばアリル基−CH2−CH=CH2)。炭素−炭素二重結合を含有する2種以上の異なるタイプの官能基がエチレン性不飽和化合物中に存在していてもよい。例えば、エチレン性不飽和化合物は、ビニル基(アリル基を含む)、アクリレート基、メタクリレート基及びそれらの組合せより成る群から選択される2種以上の官能基を含有していてもよい。
【0054】
本発明の組成物は、様々な実施形態において、フリーラジカル重合(硬化)することが可能な1種以上の(メタ)アクリレート官能性化合物を含有することができる。本明細書において用語「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート(−O−C(=O)−C(CH3)=CH2)及びアクリレート(−O−C(=O)−CH=CH2)官能基を指す。好適なフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートには、1分子当たり1個、2個、3個、4個又はそれ以上の(メタ)アクリレートを含有する化合物が包含される;フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートは、オリゴマー又はモノマーであることができる。
【0055】
存在するフルオロポリマー(成分(a))及びポリマー(成分(b))の合計量に対する組成物中のフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物(成分(c))の合計量は、特に臨界的なものではないと思われるが、一般的には、同じ成分(a)及び(b)を含有するがフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を含有しない組成物と比較して組成物の特徴の少なくとも1つを改善するのに有効な量となるように選択される。改善される特徴には、次の内の1つ以上が含まれ得る:
a)改善された(高い)フィルム硬度;
b)改善された(高い)耐汚染性;及び
c)改善された(高い)光沢。
【0056】
本発明の組成物中には、例えば(メタ)アクリレート化ポリオール及び(メタ)アクリレート化アルコキシル化ポリオール並びに他のタイプの(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマーを含めて、様々なタイプの広範なフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を用いることができる。
【0057】
フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレート化ポリオール及び(メタ)アクリレート化アルコキシル化ポリオール
【0058】
本発明のある実施形態において、組成物のフリーラジカル硬化性成分は、1種以上の(メタ)アクリレート化ポリオール及び/又は(メタ)アクリレート化アルコキシル化ポリオール(特に1種以上のアクリレート化エトキシル化及び/又はプロポキシル化ポリオール)を含み、必須とし又はから成る。かかる化合物中に存在するポリオール部分は、1分子当たり2個以上のヒドロキシル基を含有する任意の有機化合物をベースとするものであることができ、例えばジオール類(例えば2−ネオペンチルグリコール等のグリコール類)、トリオール類(例えばグリセリン、トリメチロールプロパン)、テトラロール(例えばペンタエリトリット)が包含される。ポリオールの1個以上のヒドロキシル基は(メタ)アクリレート官能基で、特にアクリレート官能基(−OC(=O)CH=CH2)で置換されていてもよい。本発明のある実施形態においては、ポリオールのすべてのヒドロキシル基が(メタ)アクリレート化されていてもよい。別の実施形態においては、ポリオールのヒドロキシル基をアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はそれらの混合物との反応によってアルコキシル化する。ポリオールのアルコキシル化から得られるヒドロキシル基の1個以上(1つの実施形態においては全部)が、(メタ)アクリレート官能基、特にアクリレート官能基で置換される。アルコキシル化の度合いは、所望により変えることができる。例えば、(メタ)アクリレート化アルコキシル化ポリオールは、ポリオール部分1個当たり1〜20個のオキシアルキレン単位(例えば−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−)を含有することができる。
【0059】
好適なアクリル化ポリオール及びアクリル化アルコキシル化ポリオールの非限定的な例には、エトキシル化ペンタエリトリットテトラアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化2−ネオペンチルグリコールジアクリレート、及びそれらの組合せがある。
【0060】
フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマー
【0061】
好適なフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーには、例えばポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート及びそれらの組合せが包含される。
【0062】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートには、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とヒドロキシル基を末端とするポリエステルポリオールとの反応生成物が包含される。反応プロセスは、ポリエステル(メタ)アクリレート中に残留ヒドロキシル基が有意の濃度で残るように実施することもでき、ポリエステルポリオールのすべての又は本質的にすべてのヒドロキシル基が(メタ)アクリレート化されるように実施することもできる。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能性成分(特にジオール)及びポリカルボン酸官能性化合物(特にジカルボン酸及び酸無水物)の重縮合反応によって作ることができる。ポリヒドロキシル官能性及びポリカルボン酸官能性成分はそれぞれ直鎖、分岐鎖、環状脂肪族又は芳香族構造を有することができ、個別に又は混合物として用いることができる。
【0063】
好適なエポキシ(メタ)アクリレートの例には、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とグリシジルエーテル又はエステルとの反応生成物が包含される。
【0064】
好適なポリエーテル(メタ)アクリレートの非限定的な例には、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とポリエーテルポリオールであるポリエーテルオールとの縮合反応生成物が包含される。好適なポリエーテルオールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含有する直鎖状又は分岐鎖状物質であることができる。ポリエーテルオールは、テトラヒドロフランやアルキレンオキシドのような環状エーテルをスターター分子を用いて開環重合させることによって、調製することができる。好適なスターター分子には、水、ヒドロキシ官能性物質、ポリエステルポリオール及びアミンが包含される。
【0065】
本発明の組成物に用いることができるポリウレタン(メタ)アクリレート(「ウレタン(メタ)アクリレート」と称されることもある)には、脂肪族及び/又は芳香族のポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールと脂肪族及び/又は芳香族のポリエステルジイソシアネート又はポリエーテルジイソシアネートとをベースとし、(メタ)アクリレートを末端基とするウレタンが包含される。
【0066】
様々な実施形態において、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートとOH基を末端基とするポリエステルポリオール(芳香族、脂肪族及び脂肪族/芳香族混合ポリエステルポリオールを含む)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール若しくはポリブタジエンポリオール又はそれらの組合せとを反応させてイソシアネート官能化オリゴマーを生成させ、次いでこれをヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート(例えばアクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシエチル)と反応させて末端(メタ)アクリレート基を提供することによって、調製することができる。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートは1分子当たり2個、3個、4個又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含有することができる。
【0067】
本発明のある実施形態においては、1種以上のウレタンジアクリレートが用いられる。例えば、二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー及びそれらの組合せを含む少なくとも1種のウレタンジアクリレートを組成物中に含ませることができる。ある実施形態においては、前記の少なくとも1種のウレタンジアクリレートとして、Sartomer USA, LLC(米国Pennsylvania州Exton所在)からCN9782の商品名で入手できるもののような二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることができる。ある実施形態においては、前記の少なくとも1種のウレタンジアクリレートとして、Sartomer USA, LLCからCN9023の商品名で入手できるもののような二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることができる。CN9782、CN9023、CN978、CN965、CN9031、CN8881及びCN8886(すべてSartomer USA, LLCから入手可能)はすべて、本発明の組成物中にウレタンジアクリレートとして有利に用いることができる。
【0068】
フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマー
【0069】
好適なフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和モノマーの例には、以下のものが包含される:1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレート シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、n−アルカンジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットペンタ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットペンタ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、高プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルコキシル化ラウリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、環状脂肪族アクリレートモノマー、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシル化(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及び/又はトリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシエタノール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、並びにそれらの組合せ。
【0070】
溶剤
【0071】
ある実施形態において、本発明の組成物は、1種以上の溶剤を含む。この溶剤は、組成物の他の成分(例えばフルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー及び/又はフリーラジカル硬化性成分)の1種以上を溶解させ且つ/又は均質の組成物を提供することができるように選択するのが有利であり得る。この組成物をコーティングとして用いることが意図される場合、溶剤は組成物の粘度を下げ又は組成物の流動学的特性を変化させて基材の表面に組成物を薄膜として塗布するのを容易にする手助けをすることができる。溶剤は潜溶剤、即ち25℃超の温度に加熱された時にだけ組成物の1種以上の溶剤(特にフルオロポリマー成分)を溶解させる化合物であることができる。
【0072】
前記組成物は特に1種以上の有機溶剤を含有することができ、これは非反応性有機溶剤であることができる。
【0073】
好適な溶剤には、例えば以下のような有機溶剤が包含され得る:ケトン類(非環状ケトン及び環状ケトンの両方)、例えばアセトン、メチルエチルケトン、イソブチルエチルケトン及びシクロペンタノン;エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート類、例えばジメチルカーボネート、プロピレングリコールカーボネート及びエチレングリコールカーボネート;アルコール類、例えばエトキシエタノール、メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール及びジアセトンアルコール;芳香族溶剤、例えばキシレン、ベンゼン、トルエン及びエチルベンゼン;アルカン類、例えばヘキサン及びヘプタン;グリコールエーテル類、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(2−エトキシエタノール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(2−プロポキシエタノール)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(2−イソプロポキシエタノール)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(2−フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(2−ベンジルオキシエタノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトールセロソルブ)、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル及びエチレングリコールジブチルエーテル;エーテル類、例えばテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル;並びにアミド類、例えばN−メチルピロリドン及びジメチルホルムアミド;並びにそれらの組合せ。
【0074】
本発明の有利な実施形態においては、揮発性有機化合物(VOC)と分類される溶剤を組成物中に存在させない。本明細書において「揮発性有機化合物」又は「VOC」とは、40C.F.R.§51.100(s)の下で揮発性有機化合物と分類される化合物を意味する。別の実施形態において、溶剤又は溶剤の組合せを組成物中に存在させるが、それぞれの溶剤は非VOC溶剤であるものとする。
【0075】
様々な実施形態において、前記組成物はケトン類、エステル類、カーボネート類、アルコール類、アルカン類、芳香族類、エーテル類、アミド類及びグリコールエーテル類並びにそれらの組合せより成る群から選択される少なくとも1種の溶剤を含む。本発明のある局面に従えば、前記の少なくとも1種の溶剤は、本明細書に記載される組成物を基材に適用するのに十分流動可能にするのに足りる量で、含まれる。例えば、本発明の様々な実施形態において、本明細書に記載される組成物は、Brookfield粘度計DV-II型を用い、27番スピンドルを用いて(スピンドル速度は粘度に依存して典型的には50〜200rpmの間で変化する)25℃において測定して、4000cPs未満、又は3500cPs未満、又は3000cPs、又は2500cPs未満の粘度を有する。
【0076】
特定実施形態において、前記の少なくとも1種の溶剤は、エネルギー源(放射線、加熱)への曝露による硬化を開始させる前に、本明細書に記載される組成物から除去される。例えば、溶剤をエネルギー誘発性硬化の前に蒸発させることによって除去することができる。所望ならば、表面に塗布された組成物の1つ以上の層を有する基材を、加熱したり、気体を吹き付けたり、真空下に置いたりすることによって、溶剤の蒸発を促進することができる。
【0077】
本発明のある実施形態において、前記組成物は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50% (重量による)の溶剤(単一の溶剤又は溶剤の組合せ)を含む。別の実施形態において、前記組成物は、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下又は75%以下(重量による)の溶剤を含む。例えば、前記組成物は、50〜75重量%の溶剤を含むことができる(即ち固形分25〜50重量%)。
【0078】
本発明の組成物は、非反応性溶剤をほとんど又は全く含有しないように、例えば含有する非反応性溶剤が組成物の総重量を基準として10%未満又は5%未満又はさらには0%となるように、配合することができる。このような溶剤なし又は低溶剤組成物は、例えば低粘度の反応性希釈剤を含めて、様々な成分を用いて配合することができ、前記反応性希釈剤は、非反応性溶剤が何ら存在しなくても好適な塗布温度において基材表面に容易に組成物を塗布することができて比較的薄い均一のコーティング層を形成させることができるように、組成物を十分低粘度にするものから選択される。例えば、組成物中に存在する1種以上のフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物は、反応性希釈剤としての働きをすることができる。
【0079】
水性系
【0080】
本発明のある実施形態においては、非反応性溶剤よりむしろ水を含有するように組成物を配合する。このような組成物は、水性系と称することができ、組成物の成分の1種以上又は全部が水中に分散物として存在する。フルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物及び/又はその他の組成物の成分の安定な水性分散体を作って維持するために、乳化剤及び/又は分散剤を用いることができる。ある実施形態においては、組成物の1種以上の成分が自己分散性のものであることができる。
【0081】
このような水性組成物は、基材の表面に塗布することができ、水が組成物の粘度を低下させる働きをする。塗布されたコーティングは次いで水を除去するために(例えば蒸発又は加熱/ベーク(焼き付け)によって)処理することができる。水を蒸発させた後に、組成物のフリーラジカル重合性成分の硬化を、(例えば適当なエネルギー源によってコーティングを照射することによって)実施することができる。
【0082】
ある水性実施形態において、本発明のフルオロポリマー及びフルオロポリマー混和性ポリマーは、両成分を含有する水性分散体として、例えばフルオロポリマー及びフルオロポリマー混和性ポリマーの両方を単一の分散体粒子中に組み合わせたハイブリッド分散体として、供給することができる。フルオロポリマーは、種ポリマーとして用いることができ、これに対して1種以上のモノマーが加えられて、重合する。1つ又は2つ以上の一連の工程で数種のモノマーを加えて、2つ以上の個々のフェーズでハイブリッド粒子を形成させることができる。このような粒子は、米国特許出願公開第2011/0118403号明細書、米国特許第5349003号明細書、米国特許第5646201号明細書及びN. Tsuda, "Fluoropolymer Emulsion for High Performance Coatings", (http://www.pcimag.com/articles/85878-fluoropolymer-emulsion-for-high-performance-coatings)に記載されている。特に有利な実施形態は、フルオロポリマーがフッ化ビニリデンホモポリマー又はフッ化ビニリデンと1種以上のコモノマーのヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン又は テトラフルオロエチレンとのコポリマーであり、フルオロポリマー混和性ポリマーがアクリルコポリマーであり、フルオロポリマー対アクリルの重量比フルオロポリマー:アクリルが約50:50〜80:20の範囲、より一層好ましくは約60:40〜75:25の範囲であるハイブリッド粒子水性分散体である。これらの有利な水性実施形態については、水性分散体が約50℃未満の最低フィルム形成温度を有するように成分のガラス転移温度が選択される場合に、特に有用である。かかる場合、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を添加した後に、どんな種類の追加有機溶剤も含有せずに水を唯一の溶剤とする配合物にすることが可能であり得る。これらの組成物は、非常に低い割合の揮発性有機化合物を有するという点で、特に有利である。
【0083】
ある種のこれらの水性実施形態において、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物は、1種以上(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを含むことができる。これらは、フルオロポリマー及びフルオロポリマー混和性ポリマーを含有する水性分散体に直接加えることもでき、また、当技術分野においてよく知られたような界面活性剤又は他の乳化剤を用いて予め乳化させることもできる。別法として、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物は、UV硬化性ポリウレタン分散体(UV−PUD)を含むこともできる。UV−PUDは、水中に分散させた自己分散性(メタ)アクリレート化ポリウレタンオリゴマーを含み、1種以上の別の(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーを追加的に含有することもできる。UV−PUDは当技術分野において周知であり、UV硬化性木材コーティング並びに他の用途、例えばプラスチック、金属又は紙のコーティング、インク及び接着剤に、商品として広く用いられている。UV−PUDの例には、Arkema, Inc.のビジネスユニットであるSartomer Americas社から入手できるCN9500及びCN9501が包含される。
【0084】
その他の成分
【0085】
本発明の組成物には、フルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー、フリーラジカル硬化性成分並びに随意としての溶剤及び/又は水に加えて、所望ならば1種以上の追加の成分又は添加剤を含有させることができる。好適な添加剤の例には、フリーラジカル開始剤(光開始剤並びに光開始剤以外のフリーラジカル開始剤、例えば熱式開始剤、例えば過酸化物及びアゾ化合物)、顔料、可塑剤、安定剤、シリコーン類、難燃剤、フィラー、耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤及びそれらの組合せが包含される。
【0086】
本発明のある実施形態において、本明細書に記載される組成物は、少なくとも1種の光開始剤を含み、放射エネルギーによって硬化可能である。例えば、光開始剤は、α−ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、α−アミノケトン、モノアシルホスフィン、ビスアシルホスフィン、ホスフィンオキシド、メタロセン及びそれらの組合せより成る群から選択することができる。特定的な実施形態において、前記の少なくとも1種の光開始剤は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン及び/又は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンであることができる。
【0087】
好適な光開始剤の非限定的な例には、以下のものが包含される:2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−ベンジルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2−ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5−アセトナフチレン、エチル−p−ジメチルアミノベンゾエート、ベンジルケトン、α−ヒドロキシケト、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、ベンジルケタール(2,2−diメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、オリゴマー状α−ヒドロキシケトン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸,ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの50/50ブレンド、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4−ベンゾイルビフェニル、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−クロロチオキサンテン−9−オン、ジベンゾスウベレノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンジル、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンの50/50ブレンド、4’−エトキシアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチル ベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3’−ヒドロキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’−フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、9,10−ジエトキシ及び9,10−ジブトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、チオキサンテン−9−オン及びそれらの組合せ。
【0088】
光開始剤の量は臨界的ではないと考えられるが、選択した光開始剤や、組成物中に存在させるフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の量、用いる放射線源及び照射条件他のファクターに応じて適宜変えることができる。しかしながら、典型的には、光開始剤は組成物の総重量(存在させる場合の非反応性溶剤を含まない)を基準として0.05〜5重量%とすることができる。
【0089】
本発明のある実施形態においては、本明細書に記載される組成物は、開始剤を含まず、電子ビームエネルギーによって硬化可能である。別の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、加熱された時又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を含み、化学的に硬化可能である(即ち、組成物を放射線に曝露しなくてよい)。加熱された時又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1種のフリーラジカル開始剤は、例えば過酸化物又はアゾ化合物を含むことができる。この目的のために好適な過酸化物には、ペルオキシ(−O−O−)部分を少なくとも1個含有する任意の化合物、特に任意の有機化合物、例えば過酸化ジアルキル、ジアリール及びアリール/アルキル、ヒドロペルオキシド、ペルカーボネート、ペルエステル、過酸、アシルペルオキシド等が包含され得る。前記の少なくとも1種の促進剤は、例えば、少なくとも1種の第3アミン及び/又は1種以上の別の金属塩系還元剤(例えば鉄やコバルト、マンガン、バナジウム等及びそれらの組合せ等の遷移金属のカルボン酸塩)を含むことができる。前記促進剤は、組成物を加熱したりベークしたりしなくても組成物の硬化が達成できるように、周囲温度においてフリーラジカル開始剤が分解して活性フリーラジカル種を発生するのを促進するように選択することができる。別の実施形態においては、促進剤を存在させず、フリーラジカル開始剤の分解を引き起こしてフリーラジカル種(これが組成物中に存在するフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の硬化を開始させる)を発生させるのに効果的な温度に組成物を加熱する。
【0090】
かくして、本発明の様々な実施形態において、本明細書に記載される組成物は、放射線硬化(UV線又は電子ビーム硬化)、電子ビーム硬化、化学硬化(加熱された時又は促進剤、例えば過酸化物の存在下で分解するフリーラジカル開始剤を用いた硬化)、加熱硬化又はそれらの組合せより成る群から選択される技術によって硬化可能である。
【0091】
本発明の組成物を用いて得られるコーティング又はフィルムの可撓性は、1種以上の可塑剤を含ませることによって改善することができる。好適な可塑剤非限定的な例には、ジベンゾエート可塑剤及びフタレート可塑剤が包含される。前記組成物は、例えば組成物の総重量を基準として少なくとも0.1重量%であって10重量%以下の可塑剤を含むことができる。
【0092】
本発明の組成物を用いて得られるコーティング又はフィルムの表面特性は、配合物を基材に塗布した後であって硬化の前に表面で濃縮することができる1種以上の低表面エネルギー添加剤を含ませることによって、改善することができる。このタイプの好適な低表面エネルギー添加剤の非限定的な例には、ペルフッ素化オリゴマー、フルオロ界面活性剤、フルオロシリコーン、オルガノシラン、低分子量ポリシロキサン並びにメチル及びエチルシリケートが包含される。このタイプの特に好適な添加剤は、フリーラジカル硬化メカニズムにより又は他の化学的方法(例えばシラノール基の縮合)により、架橋させることによって、表面に固定することができるものである。前記組成物は、例えば、組成物の総重量を基準として少なくとも0.01重量%であって5重量%未満のかかる低表面エネルギー添加剤を含むことができる。
【0093】
フルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー及びフリーラジカル硬化性成分の割合
【0094】
フルオロポリマー、フルオロポリマー混和性ポリマー及びフリーラジカル硬化性成分の相対的割合は、変えることができ、所望ならば、得られる組成物において(特にフィルム又はコーティングを形成させるために組成物を硬化させた後に)ある種の特性を達成するために、選択することができる。前記組成物中に用いられる成分の特定タイプも、硬化した組成物の特徴に影響を及ぼすであろう。
【0095】
例えば、フルオロポリマー(「a)」)は約1〜約98重量%の量で組成物中に存在させることができ、フルオロポリマー混和性ポリマー(「b)」)は約1〜約98重量%の量で組成物中に存在させることができ、フリーラジカル硬化性成分(「c)」)は約1〜約98重量%の量で組成物中に存在させることができる。ここで、a)+b)+c)の合計は100%であり、a)、b)及びc)の記載した重量割合はa)+b)+c)の合計重量を基準とする。しかしながら、典型的にはc)の量はa)+b)の合計量より少ないであろう。ある実施形態において、フルオロポリマーa)の量は、少なくともフルオロポリマー混和性ポリマーの重量と同程度である。
【0096】
本発明のある特に望ましい実施形態において、a)、b)及びc)の相対割合は、以下のようにすることができる:
I.a)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約40〜約80重量%の量で組成物中に存在させ、b)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約10〜約40重量%の量で組成物中に存在させ、且つc)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約5〜約50重量%の量で組成物中に存在させる;
II.a)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約50〜約70重量%の量で組成物中に存在させ、b)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約15〜約25重量%の量で組成物中に存在させ、且つc)をa)+b)+c)の合計重量を基準として約15〜約25重量%の量で組成物中に存在させる。
【0097】
製造方法
【0098】
本発明の組成物は、各種成分のブレンド又は混合を含めて、任意の好適な方法によって調製することができる。成分を一緒にする順番は特に臨界的ではないと思われる。溶剤を用いる実施形態においては、最初に溶剤又は溶剤組合せ物をフルオロポリマーと一緒にして溶液を形成させ、その後に他の成分と混合する。フリーラジカル硬化性成分は、溶剤として用いることもでき、フルオロポリマーを最初に溶解させるために非反応性溶剤と組み合わせることもできる。
【0099】
用途及び使用方法
【0100】
本発明の組成物は、例えば金属基材、熱可塑性基材、熱硬化性基材、複合基材、セラミック基材、ガラス基材等を含めて、広範な基材上にコーティング(フィルム)を形成させるのに特に好適である。前記組成物でコーティングされるべき基材の表面は、複数の異なる材料を含んでいてもよい。任意の慣用のコーティング技術、例えばキャスティング、押出及び当技術分野において周知の他の方法を用いることができる。
【0101】
本発明の組成物は、パイプ、建築構造物、布帛/織物(建築用布帛を含む)、窓枠、壁板、柵を含めて(これらに限定されない)多くのタイプの物品に耐ひび割れ性、可撓性、高耐候性、耐化学薬品性及び/又は汚染防止性の保護コーティングを提供することができる。
【0102】
様々な実施形態において、本発明の組成物は、フルオロポリマーを含む基材層上にトップコートとして適用することができる。このトップコートは、透明(クリア)であっても顔料を添加させていてもよい。
【0103】
前記組成物のコーティングは、周囲温度又は周囲温度付近、例えば10〜35℃の範囲において、基材の表面に適用することができる。ひとたび適用したら、フリーラジカル硬化を用いて組成物を硬化させることができる(組成物中に存在するフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物が重合反応において反応する)。フリーラジカル硬化技術は特に制限はなく、組成物を重合促進剤に曝露する技術を包含し得る。このような技術には、可視光線やUVエネルギー(中圧Hgランプ又はLED等の光源からのもの)等の放射エネルギーへの曝露や、電子ビーム線への曝露、化学薬品(例えば加熱された時又は促進剤の存在下で分解するフリーラジカル開始剤)への曝露が包含され得る。
【0104】
フリーラジカル重合は、放射エネルギー(例えばUV光、可視光線及び/若しくはLED光)又は電子ビームエネルギー又は化学薬品(例えば加熱された時若しくは過酸化物等の促進剤の存在下で分解してフリーラジカル反応を開始させるフリーラジカル開始剤)に、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の架橋/重合を引き起こすのに有効な時間、曝露することによって行うことができる。放射エネルギーの強度及び/又は波長は、所望の程度の硬化を達成するために所望のように調節することができる。曝露時間は、組成物が硬化して実行可能な物品(例えば固体フィルム)になるのに有効でありさえすれば、特に臨界的ではない。十分な架橋を引き起こすためにエネルギーに曝露するための時間枠には制限はなく、数秒から数分であることができる。
【0105】
本発明の組成物は、任意の既知の慣用的な方法で、例えばスプレー、ナイフコーティング、ローラーコーティング、キャスティング、ドラムコーティング、ディッピング等及びそれらの組合せによって、基材表面に適用することができる。また、転写法を用いた間接塗布を用いることもできる。基材は、任意の商品として妥当な基材、例えば高表面エネルギー基材や低表面エネルギー基材(例えばそれぞれ金属基材やプラスチック基材)であることができる。基材には、金属、紙、厚紙、ガラス、熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びそれらのブレンド、複合材、木材、皮革並びにそれらの組合せが含まれ得る。
【0106】
フルオロポリマー+フルオロポリマー混和性ポリマー系にフリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物を加えることによって、フリーラジカル硬化性エチレン性不飽和化合物の不在下では達成できない傑出した組合せ特性、例えば良好な耐候性、良好な可撓性、高い光沢、高いフィルム硬度、透明性及び耐汚染性を有するコーティングを得ることができる。
【0107】
本明細書においては、明瞭且つ簡潔な明細が書かれることが可能になるように実施形態を記載してきたが、実施形態は本発明から逸脱することなく様々に組み合わせたり分けたりすることができるものである。例えば、ここに記載したすべての好ましい特徴は、ここに記載した本発明のすべての局面に適用可能である。
【0108】
ある実施形態において、本発明は、前記組成物又はプロセスの基本的特徴及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない任意の要素及びプロセスステップを除外するものと解釈することができる。追加的に、ある実施形態において、本発明は、ここに記載していない要素又はプロセスステップを除外するものと解釈することができる。
【0109】
特定的な実施形態を参照して本発明をここに例示して説明しているが、本発明は、示された詳細に限定されるものではない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲と均等の範囲内で、前記詳細に様々な変更を為すことができる。
【実施例】
【0110】
例1
【0111】
この例では、第1表に示したように、様々な量のKynar(登録商標)ADS-2、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(Arkemaから入手可能)、Paraloid(登録商標)B-44メタクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー(Dow Chemicalから入手可能)及びSR 494エトキシル化4ペンタエリトリットテトラアクリレート(米国Pennsylvania州Exton所在のSartomer USA LLCから入手可能)を用いて、21のクリアコートを配合した。光開始剤として、Irgacure(登録商標)1173(BASFから入手可能)を不揮発性物質に対して2重量%の割合で用いた。溶剤として、メチルエチルケトン及びN−メチルピロリドンを用いた;最終配合物は、20〜25%の不揮発性物質(固体)含有率を有していた。この配合物にガラスビーズを加え、この混合物をローリングして均質コーティング組成物を得た。次いでこれらの配合物をクロム化アルミニウムQ-panels AL-412上に及び5ミルのギャップのスクエアツールを用いて「Platamid 1176」(Arkema, Inc.から入手可能)で下塗りされた生建築用布帛上にキャスティングし、空気乾燥させ、50℃において30分間ベークした。ベーク後に、H電球を備えたUVEXS Conveyor Fusion Curing Unit model 15645-6型「A」を用い、50ft/分の速度で4回通過及び330W/inのランプ電力で、サンプルをUV硬化させた。
【0112】
サンプル試験は、コーティングされたアルミニウム上での光沢及びKoenig硬度測定、並びにコーティングされた建築用布帛上での可撓性試験(マンドレル試験及び基材を手で曲げる試験)から成るものだった。Koenig硬度は、3回の測定の平均であり、グロス60は8回の測定の平均である(第1表)。コーティングの高い光沢及び透明性は、3つの成分の良好な混合を示す。
【0113】
【表1】
【0114】
これらの特定成分を用いて、約60重量%のKynar(登録商標)ADS-2フルオロポリマー、約20重量%のParaloid(登録商標)B-44メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル及び約20重量%のSartomer(登録商標)SR494エトキシル化4ペンタエリトリットテトラアクリレートを用いて、硬化したコーティングに全体的な最良の特性の組合せが達成されることがわかった。
【0115】
例2
【0116】
上記の研究を、(上記の試験に基づいて)高いグロス60、高いKoenig硬度及び良好な可撓性の良好なバランスを有することが期待された5つの配合物において、Sartomer(登録商標)SR494エトキシル化4ペンタエリトリットテトラアクリレートに代えて別のフリーラジカル硬化性化合物(「FRCC」)を用いて、繰り返した。
【0117】
4つの別のフリーラジカル硬化性化合物(すべてSartomer USA, LLCの製品)は、SR454(エトキシル化3トリメチロールプロパントリアクリレート)、SR351(トリメチロールプロパントリアクリレート)、SR9020(プロポキシル化3グリセリルトリアクリレート)及びSR 9003B(プロポキシル化2ネオペンチルグリコールジアクリレート)だった。同じ手順に従い、同じ試験を実施した(第2表)。
【0118】
【表2】
【0119】
Sartomer(登録商標)SR351トリメチロールプロパントリアクリレートを含有する組成物は、どの配合についても、最も高いKoenig硬度をもたらすように思われた。さらにフリーラジカル硬化性成分としてトリメチロールプロパントリアクリレートを含有するコーティングは透明に見えた。しかしながら、それらのグロス60値はフリーラジカル硬化性成分としてSartomer(登録商標)SR494エトキシル化4ペンタエリトリットテトラアクリレートを含有する組成物において得られたものより低い。この光沢の減衰は、架橋からの表面のしわ寄りが少量だったことの結果であろう。
【0120】
例3
【0121】
この例では、フルオロポリマー成分としてKynar(登録商標)SL-2(Arkema)を用いて同様の結果が得られるかどうかを調べるために、追加の配合物を作った(第3表)。前記の調製及び試験と同じ手順を実行した。有望な結果が得られた。Kynar(登録商標)SL-2フルオロポリマーを含有するフィルムは、Kynar(登録商標)ADS-2フルオロポリマーを含有するフィルムより光沢がある外観を有していたが、Koenig硬度はそれより低かった。
【0122】
【表3】
【0123】
例4
【0124】
前の例に記載したコーティング組成物は、溶剤担持塗料である。溶剤としてMEK及びNMPを用いて配合物を作った。これらは両方とも、米国の規制の下でVOCとして分類される。これらの溶剤の使用を回避するために、NMPをジメチルカーボネート (DMC)に置き換え、MEKをアセトンに置き換えて、試験を実施した(第4表)。得られたコーティングのグロス60及びKoenig硬度はこの置き換えによって有意の影響を受けなかったが、DMCを含有するすべてのコーティングは、建築用布帛上でそれらの可撓性を失った。この損失は、劣った接着性のせいであると思われるので、クロスハッチ接着試験を実施した。しかしながら、すべてのコーティングは下塗りされた建築用布帛上では非常によく接着した。可撓性を改善する目的で、配合物にジベンゾエート可塑剤(Kflex(登録商標)975P)を加えた;5%のDMCをKflex(登録商標)975Pに置き換えた。可撓性の有意の改善が観察された。可塑剤は、Koenig硬度を低下させたが、グロス60には影響を及ぼさなかった。
【0125】
【表4】
【0126】
例5
【0127】
コーティングの耐汚染性を改善するために、Sartomer(登録商標)CN4002添加剤を配合物に加えた(第5表)。接着剤は、フッ素化アクリレートオリゴマーであり、これは疎水性である。硬化プロセスの間に添加剤がコーティングの表面に移動し、硬化した表面を疎水性にすると思われる。
【0128】
これら4つの配合物はそれぞれ濁っていた。Sartomer(登録商標)CN4002添加剤の存在は、コーティングのKoenig硬度や可撓性に影響を及ぼさなかった(第5表)。疎水性の可能な増加が観察された。
【0129】
【表5】
【0130】
例6〜8
【0131】
様々なフルオロポリマー組成物:Zeffle(登録商標)LC700(フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、融点90℃、Daikin Industries, Ltd.より供給)、KYNAR(登録商標)9301(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのターポリマー、融点90℃、Elf Atochemより供給)及びKynar(登録商標)7201(フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、融点120℃、Elf Atochemより供給):を用いて同様のポジティブな結果が得られるかどうかを調べるために、追加の配合物を調製した。50:50のMEK/DMC溶剤パッケージを用い、フルオロポリマーとParaloid(登録商標)B-44アクリルとSR351(トリメチロールプロパントリアクリレート)との60:20:20ブレンドで、例1におけるものと同じ手順及び試験を実行した。第6表に示したように、これらのフィルムは、第2表及び第3表に示したそれらのADS-2及びSL-2対応物と比較して、硬度、光沢及び可撓性について同様の結果を示した。
【0132】
【表6】
【0133】
例9〜14:顔料入り及びステイン(着色、stain)配合物
【0134】
これらの配合物については、次の成分混合物を調製した。
【0135】
フルオロポリマー溶液A(VF2/HFPコポリマーの20%溶液):
KYNAR(登録商標)ADS-2: 20部
アセトン: 40部
ジメチルカーボネート: 40部
【0136】
アクリル溶液B(アクリルコポリマーの30%溶液):
Paraloid(登録商標)B-44 30部
メチルエチルケトン 35部
メチルイソブチルケトン 35部
【0137】
白色顔料分散液C(20%ルチル型TiO2及び20%アクリルコポリマー):
Paraloid(登録商標)B-44: 20部
メチルエチルケトン: 60部
TiPure(登録商標)TS-6200(Chemours):20部
【0138】
赤色顔料分散液D(20%DPP赤色及び20%アクリルコポリマー):
Paraloid(登録商標)B-44: 20部
メチルエチルケトン: 60部
Irgazin(登録商標)赤色L 3660 HD(BASF):20部
【0139】
次に、以下の例及び比較例を調製した:
【0140】
【表7】
【0141】
【表8】
【0142】
着色のために市販の顔料分散体を用いた上記の例では、組成物中の熱可塑性アクリルは顔料分散体によって提供される。すべての配合物は、75ミクロンのウェットフィルム厚さで取り出し、溶剤を除去するために周囲温度において数分間乾燥させ、次いで小型UV硬化ユニットを用いて硬化させた(H電球、UV強度320W/インチ、ベルト速度40フィート/分、4回通過)。
【0143】
例15
【0144】
次の式に従って、組成物の水性UV硬化性組成物を調製した:
【0145】
TMPTAのプレエマルションE(Sartomer 351A):安定なムースが形成されるまで良好な剪断条件下で以下のものを順次加えた:
【0146】
・水: 56.4
・ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム: 3.6(TMPTA上2%)
・SR351A(TMPTA): 180
【0147】
・KYNAR Aquatec(登録商標) ARC(固体について:70%VF2/HFP コポリマー+30%MMA/BAアクリルコポリマー、最低フィルム形成温度27℃):200
・Byk 346 湿潤剤: 0.2
・Coapur(登録商標)XS-71増粘剤: 1
・TMPTAのプレエマルションE: 17
・Darocur 1173光開始剤: 2
・水: 14
・合計: 234.2
【0148】
配合物を約75ミクロンのウェットフィルム厚さで取り出し、残留水を除去するために50℃において10分間ベークした。次いでそれらをUV硬化させて(H電球、320W/インチ、40f/m、4回通過)、約25ミクロンのドライフィルム厚さの光沢のある、次の特性を有するフィルムを得た:
Lenetaブラックチャート上での60°グロスは73だった。
アルミニウム上でのKonig硬度は、硬化直後で86秒、3週間後で106秒だった。
【0149】
例16〜20:
アクリル溶液F Elvacite(登録商標)2042の30%溶液、MEK中のエチルメタクリレートポリマー
・Elvacite(登録商標)2042(Lucite International):30g、固形分30.0%
・MEK: 70g、固形分0.0%
・合計: 100g、固形分30.0%
【0150】
【表9】
【0151】
すべての配合物は、125ミクロンのウェットフィルム厚さで取り出し、溶剤を除去するために周囲温度において数分間乾燥させ、次いで小型UV硬化ユニットを用いて硬化させた(H電球、UV強度320W/インチ、ベルト速度40フィート/分、4回通過)。
【0152】
本明細書においては、明瞭且つ簡潔な明細が書かれることが可能になるように実施形態を記載してきたが、実施形態は本発明から逸脱することなく様々に組み合わせたり分けたりすることができるものである。例えば、ここに記載したすべての好ましい特徴は、ここに記載した本発明のすべての局面に適用可能である。