特許第6989536号(P6989536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6989536エラストマ表面下構造を有する衝撃吸収パディングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989536
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】エラストマ表面下構造を有する衝撃吸収パディングシステム
(51)【国際特許分類】
   F41C 23/08 20060101AFI20211220BHJP
   F41H 1/04 20060101ALI20211220BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   F41C23/08
   F41H1/04
   A41D13/015 101
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-568431(P2018-568431)
(86)(22)【出願日】2017年7月8日
(65)【公表番号】特表2019-523381(P2019-523381A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】US2017041276
(87)【国際公開番号】WO2018009922
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2020年2月26日
(31)【優先権主張番号】15/644,683
(32)【優先日】2017年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/360,243
(32)【優先日】2016年7月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518432584
【氏名又は名称】シームレス・アテニュエイティング・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】ベターリッジ,ブライス・エル
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,ロバート・サミュエル
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0360075(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0186025(US,A1)
【文献】 米国特許第04948116(US,A)
【文献】 米国特許第03147562(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41C 23/06
F41H 1/04
A63B 71/10
A63B 71/12
E04F 15/10
E04F 15/22
F16F 1/376
F16F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのパッドを備える弾性パッドシステムであって、前記パッド(100)は、表面を有し、
前記パッド(100)は、複数の支持弾性基礎構造の中空の柱(120)を含み、複数の柱の各柱(120)は、柱の中心軸および柱の中央空所(121)を囲む柱壁(124)と、柱の第1の端部(127)および第2の端部をさらに有し、前記第2の端部は閉じており、前記空所は、前記柱の第1の端部(127)から前記第2の端部まで延在しており、
前記複数の柱(120)の各柱壁(124)は、前記閉じた第2の端部よりも、それぞれの柱の前記第1の端部(127)において薄い断面厚さを有しており、
前記柱壁(124)は、前記柱壁の断面が厚い前記壁の前記第2の端部に当接する領域の圧潰性が低いゾーン(103)に比べて、前記柱壁の断面が薄い、より圧潰性の高いゾーン(105)を、前記柱の第1の端部(127)に当接する領域に有しており、
前記パッド表面のうちの少なくとも1つが、非平面の表面になるように輪郭形成されており、
前記パッドシステムが、前記パッドの一方の側から他方の側に向かって連続的に増加する断面パッド厚さTを有しており、
前記柱壁によって画成されたそれぞれの中央空所は、前記パッドの一方の側から他方の側に向かってhが連続的に増加するように、前記断面厚さTの範囲内で前記柱の中心軸において高さhを有しており、
断面厚さtを有するパッド表面層は、前記断面パッド厚さTの範囲内でそれぞれの中央空所の前記閉じた端部を超えて延在し、それによりT=t+hである、弾性パッドシステム。
【請求項2】
前記柱壁(124)が先細りであり、錐台形状の柱を形成している、請求項1に記載の弾性パッドシステム。
【請求項3】
前記柱壁(124)の前記断面厚さが、前記柱の前記第1の端部から前記柱の前記閉じた端部に向かって、184%超〜231%未満の範囲内の割合で増大している、請求項2に記載の弾性パッドシステム。
【請求項4】
前記柱壁(124)が、前記柱の前記閉じた端部においてドーム(128)に合しそれを形成するように厚さが増大している、請求項2に記載の弾性パッドシステム。
【請求項5】
h:tの比が調節可能であり、4.0超〜6.0未満の範囲内にある、請求項1に記載の弾性パッドシステム。
【請求項6】
nが、前記パッドの一方の側から他方の側にわたる前記柱の番号付けを指している場合には、前記中央空所の高さhは、式
h=0.0116n−0.0362n+0.53+または−0.04まで]
に従って、前記パッドの一方の側から他方の側に向かって増える、請求項1に記載の弾性パッドシステム。
【請求項7】
前記[0.53+または−0.04まで]は、0.49であり、次式
h=0.0116n−0.0362n+0.49
となる、請求項6に記載の弾性パッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年7月8日に出願された米国仮特許出願第62/360243号の優先権を主張し、本明細書において完全に記載されたものとして本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、加えられた力を減衰し、衝撃エネルギーを吸収するためのシステムに関し、より詳細には、本発明は、加えられた力を減衰し、衝撃エネルギーを吸収するためのエラストマ表面下構造および変形可能な構造に関し、より詳細には、本発明は、加えられた力を減衰し、衝撃エネルギーを吸収するための、銃床パッドなどのスポーツ物品における構造および変形可能な構造に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、肩で保持する火器の反動衝撃を減衰するために、いくつかの種類のシステムが使用される。そのようなシステムは、数多く知られている。一部のものは、クローズドセル発泡体、またはまとめて固められた加硫ゴムチップを使用して、ショック吸収構造を提供する。ほとんどの従来型の銃パッド構造などに伴う問題は、2つある。発泡体およびほとんどの他の従来型の衝撃減衰構造は、それらに加わる力が大きくなるほど、実際には硬くなり、底打ち(bottom out)をおこし得る。ほとんどの従来型システムでは、力吸収メカニズムは、パッドのまさに表面での即時変位から始まる。
【0004】
ゴムの高密度形態は、底打ちに対する防護を提供することはなく、相対的に非圧縮性が高く、反動衝撃の減衰をほとんど実現しない。
最近、力減衰の分野で私達が特許取得した利点が、上述した問題の側面のすべてではないにしても多くにおいて、躍進につながっている。高さが25〜75mm程の範囲にある変形可能なセルで構成される材料の領域において、私達が特許取得した技術は優れた業績をあげている。しかし、より薄い材料においてさらに小さいセルの必要性が明らかになったことから、セル形状、寸法、および高圧縮性領域と低圧縮性領域との高さ比における私達の以前の公式では、私達の以前の革新に匹敵するレベルで機能することができる衝撃吸収材料を得られないことが、明確になった。これは、火器用の反動パディングとして使用することが意図される材料において、特に注目されている。
【0005】
身体の隣で、または身体に取り付けて使用するための従来型のパディングは、上述した技術と同様の技術を有している。クローズドセル発泡体、ゲルまたは液体を使用することが一般的であり、用途に応じて剛性のあるもの、またはより圧縮性の高いものがある。これらのシステムのすべてが、何らかのパディングシステムの難点を呈しており、そのうちの多くを上記で議論した。
【0006】
人体の輪郭に合わせて型取られ、形作られる効果的なパディングの必要性が存在する。そのような衝撃減衰パディングは、ライフルの床尾、もしくはヘルメットの内側などのスポーツ機器に取り付けられてもよく、または例えば、膝、肘、もしくは肩のパッド、またはグローブの中など、人体に取り付けられた状態で着用されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
火器の当接端部に装着するための衝撃減衰パッドが開示される。パッドは、火器の銃床に取り付けられる底部側と、使用者の身体に当てるように意図された使用者側とを有している。本開示の目的のために、底部側を底部と呼び、使用者側をパッドの上部と呼ぶ。上部から見ると、パッドは、曲線状の側壁が先細りになりそれぞれの端部で曲線状の端部になる概ね卵型の形状である。
【0008】
任意選択で、横から見ると、パッドは一方の端部から他方の端部に向かって厚さが先細りになっている。有利には、パッドは一方の端部における2.03〜2.54cm(0.8〜1インチ)の範囲にある総厚さ(示されている厚さは2.53cm(0.998インチ))から、他方の端部における2.79〜3.81cm(1.1〜1.5インチ)(示されている厚さは3.29cm(1.295インチ))に先細りになっていてもよい。
【0009】
パッド内には、それぞれが空所を包含している一続きの錐台形状の円筒または柱が包含されている。それぞれの錐台円筒の中心軸は、パッドの底部に対して垂直に立っている。円筒の上部は、円筒のドーム状上部でドーム形状になっており、パッドの使用者側を構成している表面層にある。
【0010】
任意選択で、円筒壁は、それぞれの円筒壁の断面が、円筒の底部において狭く、上部において広くなるように、内側と外側の両方で先細りになっている。特定の点で、円筒の内壁は線形ではなくなり、曲がって円筒のドーム状上部になる。円筒壁は、底部においてより狭く、圧縮性が高く、内壁が曲がってドームになる点に近づくにつれて広く、圧縮性が低くなっている。
【0011】
円筒壁の外側抜き勾配は、錐台形状の円筒の中心軸と、円筒の垂直方向断面内の、円筒の先細りの外側壁に沿って伸ばした線とによって形成される角度である。好ましくは、この角度は5度超〜11度未満である(示されている角度は10度である)。同様に、円筒の内側抜き勾配は、円筒の中心軸と、円筒の垂直方向断面内の、円筒の先細りの内側壁に沿って伸ばした線とによって形成される角度である。好ましくは、この角度は2度超〜5度未満である(示されている角度は4度である)。
【0012】
企図される一実施形態では、一続きの錐台形状の円筒は、パッドの一方の端部から他方に向かって高さが増大する。この実施形態では、円筒の底部の周囲は、一定に維持されている。特定の点で、円筒の内壁は線形ではなくなり、曲線状になり始める(曲がって円筒のドーム状上部になる)。この点において切り取られた断面スライスは、円筒が錐台形状であることから、高さが漸進的に増えるごとに小さくなる。
【0013】
この実施形態の特定のバージョンでは、一続きのドーム状の錐台円筒は、高さが徐々に変化する。一続きのうちのそれぞれの円筒が、1からnまで番号付けされた場合、一続きのうちのそれぞれの円筒の高さhは、おおよそ式
h=0.0116n−0.0362n+0.53[+または−0.04まで]
に従って、増大する。
【0014】
これにより、内壁が線形ではなくなる点で切り取られた円筒の円形断面の半径rは、おおよそ式
r=−0.0004n+0.0014n+0.20[+または−0.02まで]
に従って、小さくなる。
【0015】
内壁が線形ではなくなる点で切り取られた円筒壁の厚さTは、おおよそ式
=0.0013n−0.0037n+0.13[+または−0.02まで]
に従って、広くなる。
【0016】
弾性パディングシステムの実施形態は、相対的に非平面の形状にパッドが一致しなくてはならないところで使用するために開示される。この弾性パディングシステムは、複数の支持弾性基礎構造の中空の柱である基礎構造も含んでおり、それぞれの柱が、柱を形成している柱壁、第1の端部、および閉じた第2の端部を有している。柱壁は、中央空所を囲んでおり、空所は、柱の第1の端部から閉じた第2の端部まで延在している。また柱壁は、壁の閉じた第2の端部よりも、壁の第1の端部において細くなっている断面厚さを有している。柱の第1の端部に当接する壁の部分は、壁の第2の端部に当接する断面が厚い領域の圧潰性が低いゾーンに比べて、柱壁の断面が薄い、より圧潰性の高いゾーンである。
【0017】
一実施形態では、パッド表面のうちの少なくとも1つは、非平面の表面を形成するように輪郭形成されている。パッドシステムは、パッドの広がりにわたって変化する断面パッド厚さTを有しており、柱壁によって画成されたそれぞれの中央空所は、パッドの広がりわたってhが変化するように、断面厚さTの範囲内で柱の中心軸において高さhを有している。それに加えて、断面厚さtを有する表面層は、断面パッド厚さTの範囲内でそれぞれの中央空所の閉じた端部を超えて延在し、それによりT=t+hであり、ここで中央空所は、それぞれの柱の中心軸においてtに合(meet)する。この実施形態では、h:tの比が調節可能であり、この比は、4.0超〜6.0未満の範囲内にあってもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、柱壁は先細りになっており、錐台形状の柱を形成している。柱壁は、内側表面と外側表面を有し、したがっていくつかの実施形態では、柱壁は、内側と外側において先細りになっており、壁の内側表面と外側表面の両方について抜き勾配を有している。壁が先細りになるにつれて、柱壁の断面厚さは、柱壁の第1の端部から柱壁の閉じた端部に向かって、184%超〜231%未満の範囲内の割合で増大してもよい。
【0019】
有利には、いくつかの実施形態では、柱壁は、閉じた端部においてドームに合しそれを形成するように厚さが増大する。
一実施形態、例えばライフル床尾のパッドに好適な実施形態では、発砲したときにライフルが当たる身体の部分に合わせて輪郭形成するために、それぞれの柱の高さが、パッドの一方の端部から他方に向かって増大してもよい。この例では、柱の高さは、上に表した二次関数に従って変化してもよく、nは、パッドの一方の側から他方の側にわたる柱の番号付けを指しており、中央空所の高さhは、パッドの一方の側から他方の側に向かって増大する。あるいは、式
h=0.0116n−0.0362n+0.50[+または−0.04まで]
が適用されてもよい。表された式および関係のうちの任意のもののわずかな変更は、開示されるパッドの特定のスポーツおよび身体の使用法に適合するために、本開示の一部分とみなされることが、理解される。
【0020】
追加的な実施形態は、有利には、スポーツおよびレクリエーション環境において衝撃ストレスを減衰するために使用される競技用パディングにおいて使用されてもよい。そのようなパディングは、ライフルの床尾、またはヘルメット内側のパッドなどスポーツ用品に取り付けられてもよく、または例えば膝、肘、もしくは肩パッドで、またはグローブで身体に取り付けられた状態で着用されてもよい。したがって、人体とスポーツ用品の間で、または重要な部位のパディングとして人体に取り付けられた場合に、衝撃減衰を提供するために、相対的に非平面な形状に合わせて輪郭形成するように、同じ技術が異なるセル形状、寸法、および高さ比を用いて公式化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】静止状態の従来型のクローズドセル発泡体緩衝材の概略図である。
図1B】負荷下にある従来型のクローズドセル発泡体緩衝材の概略図である。
図2A】静止状態のエラストマ構造の開示される実施形態の図である。
図2B】負荷下にあるエラストマ構造の開示される実施形態の図である。
図3】わかりやすくするために特定の要素が拡大されている、開示されるパッドの態様を示す断面正面図である。
図4】わかりやすくするために特定の要素が拡大されている、開示されるパッドの態様を示す断面正面図である。
図5】開示されるパッドの実施形態の断面正面図である。
図6】選択された実施形態についてのピーク衝撃力対落下高さのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで図面を見ると、本発明は、図面の符号を参照しながら好ましい実施形態において記述されており、図面では、同様の符号は同様の部分を示している。
開示される銃パッドの一実施形態の、断面図および他の詳細図を含む複数の図が示されている。先細りの壁を有するドーム状の内部エラストマ円筒が、上面または肩に接触する表面とともに示されている。
【0023】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」という言及は、この実施形態に関連して記述された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味している。したがって、「一実施形態において」または「実施形態において」というフレーズが、本明細書全体を通して様々な箇所に出現するが、これは必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切なやり方で組み合わされてもよい。
【0024】
本明細書全体を通して「柱」という言及は、典型的には円筒形または多角形のシャフトおよび2つのシャフト端部を有する、管状でシャフト状の支持構造を指す。同様に、本明細書全体を通して「円筒」という言及は、同じく2つのシャフト端部を有する、管状でシャフト状の支持構造を指す。
【0025】
本明細書全体を通して「柱端部」という言及は、柱シャフトが終わったとみなされる点のセットを指す。柱端部は、開いていても閉じていてもよい。全般的に、本明細書において言及される柱は中心軸を有しており、柱端部は、柱の中心軸に対しておおよそ垂直である仮想交差面において、柱シャフトが終わることによって画成される。しかし閉じた柱端部は、ドーム状、くぼみ、または柱の内側表面もしくは外側表面状の任意の他の形状であってもよい。
【0026】
全般的に、本明細書において言及される柱は、柱のシャフトまたは曲線状表面を画成している連続した曲線状の「柱壁」によって囲まれた中央の空所を有する中空の柱である。柱壁は、全体的に均一な断面厚さのものであってもよく、または例えば柱の一方の端部においては相対的に分厚く、他方の端部では相対的に薄い、調節可能な断面厚さのものであってもよい。
【0027】
「錐状」という言葉は、本明細書全体を通して、錐の一般的な高等幾何学的定義によって全体的に記述される形状を指す。錐は、共通の点、すなわち頂点を、底部上の点のセットのすべてにつなげる線分のセットによって形成される任意の三次元形状であり、底部は、頂点を含んでいない平面である。底部は、円を形成する点のセットに限定されず、底部は点の任意のセットから形成される任意の形状であってもよいことに留意すべきである。例えば、多角形の底部を有する錐は角錐を形成し、楕円形の底部を有する錐は楕円錐を形成する。
【0028】
本明細書全体を通して「錐台」形状という言及は、とがった頂点が切り取られ、それにより錐の基底部分が残り、錐が、錐の底部を形成している点のセットから平面内の点のセットまで延在しており、その平面が、錐の中心軸に対しておおよそ垂直である錐形状を指す。
【0029】
本明細書全体を通して「外側抜き勾配」および「内側抜き勾配」という言及は、以下の角度を指す。一般的に、錐の底部の周囲は準線と呼ばれ、準線と頂点との間の線分は、側面の母線である。柱壁の厚さを有する錐状に形成された中空柱の場合には、2つの錐が存在することになり、一方は内側、他方は柱を形成するものである。両方の錐は中心軸をおおよそ共有している。一方の錐の側面は、柱シャフトの外側側面を形成し、一方の錐の側面は、柱シャフトの内側側面を形成する。外側抜き勾配は、外側側面の母線と、共通の中心軸との間に形成される角度である。内側抜き勾配は、内側側面の母線と、共通の中心軸との間に形成される角度である。
【0030】
本明細書全体を通して「底打ち」という言及は、緩衝材料または構造が、力の方向へのさらなる変形が相対的にほぼできない状態に到達した点を指す。
図1Aおよび図1Bは、それぞれ静止状態と負荷下にある従来型のクローズドセル発泡体緩衝材の概略図である。図1Bでは、発泡体緩衝材は、負荷下で表面が変形していることから、不安定な状態を示しており、表面の変形に起因した危険な潜在的結合につながる。衝撃エネルギーは、上から下に発泡体セルを押しつぶすことによって吸収され、負荷下で材料は「どんどん硬く」なる。
【0031】
図2Aおよび図2Bは、それぞれ静止状態および負荷下にあるエラストマ構造の開示される実施形態の図である。構造が衝撃または負荷を受けるとき、表面の変形は最小であり、結合する傾向はなく、衝撃エネルギーは、円筒構造の閉じた第2のゾーンではなく円筒構造の第1のゾーンにおいて、構造(円筒が図示されている)が「制御された態様で」座屈する、または圧潰されることによって、吸収されることに留意すべきである。したがって、圧潰可能な構造が変形し続けるときに、材料は負荷下で「より柔らかく」なり、相対的に耐変形性の高い第2のゾーンの変形によって負荷が吸収されることから、パッドの構造は「底打ち」を起こしにくい。
【0032】
図3は、例示を目的として、柱または円筒の長さが拡大されている、開示されるパッド100の実施形態を示す断面正面図である。パッド100は、表面層110を有している。表面層110は、柱壁124および中央空所121を備える柱120によって支持される。柱120は、任意の既存の適切な形状であってもよいが、規則的な幾何形状が好ましく、製造しやすいことから円筒または錐台形状が有利であり、その形状が、本明細書ではすべてのそのような柱のモデルとして議論される。(錐台柱モデルの柱120の抜き勾配および他のテーパ角度の特定の議論を除き、参照しやすくするために、柱は、典型的には随時円筒と呼ばれる。)柱壁124は、有利には管状端部である柱端部127を有し、柱120内の空所121への中空の中央開口部がある。柱端部127における柱壁124は、幅dを有している。一実施形態では、柱の第2の端部はドーム形状であり、ドーム128は、空所121の閉じた端部を形成している。
【0033】
柱壁124は、柱端部127の領域にある第1のゾーン105と、ドーム128の領域にある第2のゾーン103という2つのゾーンを有している。第2のゾーン103は相対的に耐圧潰性が高いが、第1のゾーン105はこれとは異なり、作業負荷圧縮をすべて受けるだけではなく、初期の過負荷圧潰または変形も受けるように設計されており、相対的に第2のゾーン103よりもはるかに圧縮性が高い。第1のゾーン105の典型的な圧縮には、(柱の中心軸に対して)外向きと内向きのわずかな膨らみとして1対の点線109で示されている中程度の変形が伴い、これは、(矢印101で示されている)圧縮力が作用して、エラストマ材料を高さにおいて垂直方向に圧縮し、壁の他の境界から離れるように材料を膨らませるからである。負荷の増加に起因して、または衝撃に起因して、負荷が増すにつれて、第1のゾーン105は1対の破線107で示された態様で、矢印104に示された方向に著しく変形して実際に座屈し、または圧潰される。材料がそれ以上圧縮されるまたは膨らむことは本質的になくなり、その代わりに、概略的に示されている特徴的な座屈崩壊により(柱の中心軸に対して)外向きに圧潰される。
【0034】
第2のゾーン103は、第1のゾーン105の初期の圧縮および変形中、およびその後の著しい圧縮および変形中の全体にわたって、ほぼ受動的に作用する。関連する力、ならびにゴムおよび柱の寸法および特性に応じて、第2のゾーン103は、1対の点線102で概略的に表されたわずかな膨らみを呈するだけである。この差異は意図的なものであり、まだ完全には理解されていない他の要因が作用し得る一方で、圧縮効果および最終的な座屈崩壊(第1のゾーン105のみ)における明白な差異は、ゾーン105に比べてゾーン103の幾何形状の著しい差異に起因するものと考えられる。
【0035】
第1のゾーン105は、相対的に狭い断面として柱端部127から始まり、厚さが増していき、最終的には、上述した変形効果を実現するのに十分な壁厚さまで増大する。柱壁124の大体この領域あたりが、仮想ゾーン境界106である。この仮想ゾーン境界上、およびそれより上では、断面厚さが増大していることから、単純に材料特性によって、いかなる既存の圧縮または圧潰も支持されなくなる。この仮想境界より上では、パッド100の表面層110上の最も激しい衝撃のときにそうなるように、第2のゾーンが完全に圧潰されるまでは、およびそうならない限り、圧縮力は、第2のゾーン内で膨らみまたは他の変形効果を発揮することなく本質的には第1のゾーンに通される。そのようなときに、相対的に圧縮性の低い第2のゾーン103はそれでもなお、第1のゾーン105に向けて通された後に残っている並外れた衝撃エネルギーを吸収することによって、「底打ち」を防止するように作用し始める。十分な衝撃力が与えられると、実際にはゾーン105も変形し、衝撃エネルギーのさらに多くを吸収することになる。
【0036】
図3の概略図は、上に向かって第2のゾーン103になる第1のゾーン105が徐々に先細り、ゾーン間で単に仮想の境界106に交差していることを示しているが、他の実施形態では、徐々にもしくは先細りした態様ではなく、上方で厚さを増大させることによって、境界が明確にされている。例えば、限定するものではないが、厚さの増大が徐々にではなく突然実現されるように、第2のゾーン103は、おそらくは境界106上で、またはその周りで分厚くなった段によって、突然の厚さ変化を有することができる。
【0037】
図4は、例示を目的として、柱または円筒の長さが拡大されている、開示されるパッド100の実施形態を示す断面正面図である。柱120は、上側層110の直ぐ下の、柱の閉じた端部において幅Cを有している。空所121は、任意のドーム128の直ぐ手前で最上部の幅wを有している。この代替的な実施形態では、柱120は、硬化リブ140、および/または、他の柱もしくは表面層110の下側につながるリンクもしくはブリッジ130を有している(図3も参照)。いずれの場合にも、リブ140またはリンク130の効果は、相対的に圧潰性の低いゾーン103をはるかに硬くすることであり、それにより(図3で議論した)第2のゾーン103の効果を強化することである。少なくとも1つの効果は、リブ140またはリンク130が柱120に接合される限り、その点における柱幅は、リブもしくはリンクの下、または柱の他のどの場所よりも、著しくかつ効果的に大きくなる。リブまたはリンクは、任意選択で丸いリブ端部もしくは平坦な端部で終わってもよい先細部を、任意選択で有する。
【0038】
柱底部127は幅dを有し、空所開口部108は幅Wを有し、ここで円筒形または錐形の空所を閉じる円筒形または錐形の柱については、柱底部の面積Aは、公式
A=(π/4)*((W+2d)−W
によって与えられる。
【0039】
図5は、開示されるパッド100の実施形態の断面正面図である。この実施形態は、例えば様々なタイプの競技およびスポーツ用パディングに使用するのに好適な構成の構造である。例えば、限定するものではないが、図5によって描かれているパッドは、銃パッド、またはライフルの床尾用肩パッドとして機能する。この実施形態は、図3に関して上記で議論した柱120、中央空所121、柱壁124、および柱端部127を備えている。またこの実施形態は、柱壁の相対的に圧潰性の高い第1のゾーン105、および相対的に圧潰性の低い第2のゾーン103を備えており、これらのすべての衝撃吸収特性は図3に関して議論された。
【0040】
図5の実施形態では、柱120は、図4に関して上記で議論されたように、先細りの柱壁124と任意選択のドーム128を有する同じく錐台形状のものである。柱壁124は、内側および外側の柱壁抜き勾配123および125を備えている。好ましくは、外側抜き勾配125は、5度超〜11度未満であり、好ましくは、内側抜き勾配123は、2度超〜5度未満である。1.02〜1.78cm(0.4〜0.7インチ)の範囲にある公称柱高さについては、好ましい抜き勾配は、勾配125については約10度、勾配123については約4度である。
【0041】
企図される一実施形態では、パッドの表面層110は、設計対象である人体の部分に快適に合うように、輪郭形成される。例えば、限定するものではないが、ライフルの床尾に装着されるように作られたパッドは、肩に合うように輪郭形成されてもよく、図5に示されている断面正面図の左側の全体的な厚さT1が、約2.54cm(1インチ)であり(パッド100の左側の1対の矢印T1によって示されている)、他方の端部の全体的な厚さT2が、約3.30cm(1.3インチ)である(パッド100の右側の1対の矢印T2によって示されている)。
【0042】
図5のエラストマ構造は、1対の矢印tによって示されているほぼ一定の厚さtを有する表面層110、および1対の矢印hによって例示されている異なる柱高さhも有している。有利には、スポーツ用途で使用するためのパッドの衝撃減衰および緩衝特性を促進するために、エラストマ円筒のアレイは、表面層110の輪郭に合うように高さが徐々に変化する。
【0043】
図5に示されているライフル床尾パッドの例では、一続きの錐台形状の円筒は、有利には、パッドの一方の端部から他方に向かって高さが徐々に変化している。柱端部127を横切って線が引かれた場合には、徐々に変化しているこの高さは、構造が必要とする輪郭をたどりながら、表面層の一定の厚さtを維持することになる。この実施形態では、円筒の開口部108の周囲は、一定のままである。柱120のシャフト内の仮想周囲107(複数の点線107によって示されている)において、円筒の内壁は線状ではなくなり、曲線状になり始め、曲がってドーム128を形成する。周囲107において切り取られた断面スライスは、円筒が錐台形状であることから、高さが漸進的に増えるごとに小さくなる。
【0044】
例えば、全体的な高さTが2.54cmから3.3cm(1から1.3インチ)に増大し、ドームとは反対側の端部の一定の円筒開口部が直径1.13cm(0.445インチ)である公称輪郭については、一続きのドーム状の錐台円筒は、以下の式
h=0.0116n−0.0362n+0.50[+または−0.02まで]
に従って、高さh(インチで測定)が徐々に変化し、ここで一続きのうちのそれぞれの円筒は、1からnまで番号付けされる。
【0045】
同様に、内壁が線形ではなくなる点(複数の点線107によって示されている)で切り取られた円筒の円形断面の直径は、円筒の高さが増すにつれて狭くなり、内壁が線形ではなくなる点(複数の点線107によって示されている)で切り取られた円筒壁の厚さは、円筒の高さが増すにつれて、広くなる。
【0046】
線形の一続きではなく、円筒のアレイの場合には、円筒の高さは、適宜表面層110の輪郭に合うように調整されなくてはならないことが理解される。
図6では、ピーク衝撃力対落下高さの曲線のグラフが提示されている。これは、前の開示で提示された力対変位の曲線とは異なっている。このようなグラフによって、衝撃ショックを吸収するための構造の設計目標とされた性能に関して、より機能的に応用可能なデータが提供される。
【0047】
グラフに提示されたデータに関して、ピーク衝撃力(Gmax)は、ASTM手順、F355−10aに従ってミサイルEを使用して、3つの異なる実施形態について測定された。Gmaxは、落下高さの関数としてインチでプロットされた。曲線は、本明細書に実質的に記述した通りのパッドの実施形態を用いてプロットされたデータから得られる。
【0048】
パッドは、全般的に、有利には、以下の特性を有するSBR/EPDM/天然ゴムのエラストマ材料から作られる。すなわち、マットの表面で測定されたショアAデュロメータ値40〜70(より具体的には40〜50、および有利には約44)、係数約0.5MPa〜約4MPa、および有利には約0.69MPaである。
【0049】
好ましい基礎構造は、一様格子上、またはハニカム構成内のものとすることができる。好ましい基礎構造は、円形、楕円形、または3つから20またはそれ以上の面で作られた多面形状のものとすることができる。好ましい基礎構造は、一方では円筒間のエラストマブリッジによるリンクのない共有壁の構成を有してもよく、または代替的にエラストマリンクによって互いに接合されてもよい。
【0050】
上記で言及されたものの、本明細書において他の態様で特定または詳細に記述されていないシステムおよび構成要素に関して、そのようなシステムおよび構成要素の作用および仕様、ならびにそれらが作られ得る、組み立てられ得る、または使用され得る方法は、本明細書において開示された目的を有効にするようにそれらが互いに協働する場合も、本明細書で開示された他の要素と協働する場合も、すべては十分に当業者の知識内にあると考えられる。したがって、一般的に当業者に知られていることをここで繰り返そうとする具体的な試みはなされていない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
ライフル床尾パッド、ヘルメットハッド、肩、膝、および肘パッド、グローブなどのパディングを必要とする競技用品の衝撃およびショック吸収パッドは、衝撃による負傷を防止し、繰り返される衝撃ストレスを緩衝しなくてはならない。
【0052】
開示されたパッドは、衝撃吸収性能を最大にすることが研究で示されている理想的なコンプライアンスレベルに調節される。最適化された性能によって、特定の身体部分にかかる圧力を低減し、ショックを低減し、疲労低減を最大化しながら、安定性および支持が保証される。従来のコンプライアント材料は、圧縮されるとコンパクトに硬くなる。本明細書に開示されたユニークな構造は、実際に触ると硬いが、加えられる力が増大するにつれて柔らかくなる。したがって、衝撃およびショック吸収パッドは、多くのタイプのスポーツ用品上で、またはその中で使用するように適合される。
【0053】
規則に準拠して、本発明は、構造的特徴に関して多かれ少なかれ特定の言葉で記述されている。しかし、示されている手段および構造は、本発明を実施する好ましい形態を備えていることから、本発明は示されている特定の特徴に限定されないことが、理解されるべきである。したがって本発明は、等価物の原理に従って適切に解釈される、添付の特許請求項の法的かつ正当な範囲内にあるその形態または修正形態のいずれにおいても特許請求される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6