(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0013】
本発明において、%、ppm、ppbの値は特に断りのない限り、それぞれ質量対質量の値を示す。
【0014】
本発明において高甘味度甘味料とはショ糖の数百倍から数千倍の高い甘味を有する甘味料であり、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、レバウディオサイドA、ネオテーム、アリテーム、モナチン、タウマチン、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、ラカンカ抽出物(モグロシド)および甘茶抽出物(フィロズルチン)を例示することができ、これらは単独であっても組み合わせて使用されたものであっても良い。本発明の呈味改善剤は高甘味度甘味料の種類には制限されずに使用できるが、特にスクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物への使用が好ましい。
【0015】
本発明において、高甘味度甘味料の呈味改善とは、高甘味度甘味料が有する特有の後に尾を引く不自然な甘さ、不快な後味や苦味、エグ味を改善することをいい、これらの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することをいう。
【0016】
本発明の化合物である、7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸または10−ドデセン酸は、(E)体および(Z)体の混合物でもよいし、(E)体または(Z)体単体でも本発明の効果を有する。
【0017】
本発明の化合物である、7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸または10−ドデセン酸は、例えば特許文献12に記載される、以下に示す反応経路に従って製造することができる。
【0019】
上記反応の工程は、末端に二重結合を有する不飽和脂肪酸を原料として任意のアルコールおよびパラトルエンスルホン酸などの酸触媒を用いてエステル化し、オゾン酸化によりアルデヒドとする。得られたアルデヒドと、ホスホニウム塩から得られたリンイリドとのウィッティヒ反応を行い、得られたドデセン酸エステルをアルカリ加水分解することにより、7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸または10−ドデセン酸を製造することができる。
【0020】
高甘味度甘味料により甘味が付与されている飲食品に対し、本発明の化合物である、7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸または10−ドデセン酸を、そのまま飲食品に配合することにより、高甘味度甘味料を含んでなる飲食品の、高甘味度甘味料に由来する前記呈味の欠点を改善することができる。高甘味度甘味料により甘味が付与されている飲食品とは、甘味の一部または全部が高甘味度甘味料により甘味が付与されている飲食品であって、甘味料の一部として通常の甘味料である、ショ糖、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、乳糖、ガラクトース、マルチトース、トレハロースなどの糖類を含んでいても良い。さらに、本発明の7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸または10−ドデセン酸を2種以上の任意の割合で混合して用いることもできる。
【0021】
本発明の7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸もしくは10−ドデセン酸、またはこれらの2種以上の混合物の高甘味度甘味料の呈味改善剤組成物への含有量は、その目的あるいは呈味改善剤組成物の種類によっても異なるが、高甘味度甘味料の呈味改善剤組成物の全体質量に対して0.1ppm〜0.1%、好ましくは0.2ppm〜500ppm、さらに好ましくは0.5ppm〜200ppm、より好ましくは1ppm〜100ppm、特に好ましくは2ppm〜50ppmの範囲を例示することができる。これらの範囲内では、高甘味度甘味料の呈味を改善する優れた効果を有する。
【0022】
本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤は、単独で高甘味度甘味料含有飲食品に添加することもできるが、香料成分と任意に組み合わせて、高甘味度甘味料含有飲食品用の呈味改善剤組成物として使用することもできる。本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤と共に含有しうる他の香料成分としては、各種の合成香料、天然香料、天然精油、植物エキスなどを挙げることができる。例えば、「特許庁、周知慣用技術集(香料)第II部食品香料」または「合成香料、化学と商品知識、増補新版、化学工業日報発行」に記載されている天然精油、天然香料、合成香料を挙げることができる。
【0023】
アルコール類としては、例えば、3−ヘプタノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、プレノール、10−ウンデセン−1−オール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロムゴール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、オシメノール、テルピネオール、3−ツヤノール、ベンジルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、3−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、2,6−ジメチルヘプタノール、1−デカノール、トランス−2−ヘキセノール、シス−4−ヘキセノール、シトロネロール、ロジノール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、テトラヒドロリナロール、ジメチルオクタノール、ヒドロキシシトロネロール、イソプレゴール、メントール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、カルベオール、ジヒドロカルベオール、ペリラアルコール、4−ツヤノール、ミルテノール、α−フェンキルアルコール、ファルネソール、ネロリドール、セドレノール、アニスアルコール、ヒドロトロパアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、シンナミックアルコール、アミルシンナミックアルコール等を挙げることができる。
【0024】
アルデヒド類としては、例えば、アセトアルデヒド、n−ヘキサナール、n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナール、2−メチルオクタナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルデカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−4−デセナール、シス−4−デセナール、トランス−2−デセナール、10−ウンデセナール、トランス−2−ウンデセナール、トランス−2−ドデセナール、3−ドデセナール、トランス−2−トリデセナール、2,4−ヘキサジエナール、2,4−デカジエナール、2,4−ドデカジエナール、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、シトラール、ジメチルオクタナール、α−メチレンシトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、ミルテナール、ネラール、α−あるいはβ−シネンサール、マイラックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、オクタナールジメチルアセタール、ノナナールジメチルアセタール、デカナールジメチルアセタール、デカナールジエチルアセタール、2−メチルウンデカナールジメチルアセタール、シトラールジメチルアセタール、シトラールジエチルアセタール、シトラールプロピレングリコールアセタール、n−バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2−メチルブタナール、2−ペンテナール、トランス−2−ヘプテナール、トランス−2−ノネナール、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、2,4−ウンデカジエナール、トリメチルデカジエナール、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、サフラナール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−イソプロピルフェニルアセトアルデヒド、p−メチルヒドロトロパアルデヒド、フェニルプロピオンアルデヒド、2−メチル−3−(4−メチルフェニル)プロパナール、シクラメンアルデヒド、シンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、p−メチルフェノキシアセトアルデヒド、アセトアルデヒドジエチルアセタール、シトロネリルメチルアセタール、アセトアルデヒド 2−フェニル−2,4−ペンタンジオールアセタール、2−ヘキセナールジエチルアセタール、シス−3−ヘキセナールジエチルアセタール、ヘプタナールジエチルアセタール、2−ヘキシル−5−メチル−1,3−ジオキソラン、シトロネラールシクロモノグリコールアセタール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等を挙げることができる。
【0025】
ケトン類としては、例えば、3−ヘプタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、2−ウンデカノン、2−トリデカノン、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、ゲラニルアセトン、2,3,5−トリメチル−4−シクロヘキセニル−1−メチルケトン、ネロン、ヌートカトン、ジヒドロヌートカトン、アセトフェノン、4,7−ジヒドロ−2−イソペンチル−2−メチル−1,3−ジオキセピン、2−ペンタノン、3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、2,3−ヘキサジオン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−ノナノン、エチルイソアミルケトン、ジアセチル、アミルシクロペンテノン、2−シクロペンチルシクロペンタノン、ヘキシルシクロペンタノン、ヘプチルシクロペンタノン、シス−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、トリメチルペンチルシクロペンタノン、α−ダイナスコン、トリメチルシクロヘキセニルブテノン、ヨノン、アリルヨノン、プリカトン、カシュメラン、l−カルボン、メントン、カンファー、p−メチルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、ベンジリデンアセトン、ラズベリーケトン、メチルナフチルケトン、ベンゾフェノン、フルフラールアセトン、ホモフロノール、マルトール、エチルマルトール、アセト酢酸エチルエチレングリコールケタール等を挙げることができる。
【0026】
フェノール類としては、例えば、チモール、カルバクロール、β−ナフトールイソブチルエーテル、アネトール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、グアヤコール、クレオゾール、ベラトロール、ハイドロキノンジメチルエーテル、2,6−ジメトキシフェノール、4−エチルグアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、エチルイソオイゲノール、tert−ブチルハイドロキノンジメチルエーテル等を挙げることができる。
【0027】
エーテル類としては、例えば、デシルビニルエーテル、α−テルピニルメチルエーテル、イソプロキセン、2,2−ジメチル−5−(1−メチル−1−プロペニル)−テトラヒドロフラン、ローズフラン、1,4−シネオール、ネロールオキサイド、2,2,6−トリメチル−6−ビニルテトラヒドロピラン、メチルヘキシルエーテル、オシメンエポキシド、リモネンオキサイド、ルボフィクス、カリオフィレンオキサイド、リナロールオキサイド、5−イソプロペニル−2−メチル−2−ビニルテトラヒドロフラン、テアスピラン、ローズオキサイド等を挙げることができる。
【0028】
ラクトン類としては、例えば、γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、ジャスンミラクトン、メチルγ−デカラクトン、ジャスモラクトン、プロピリデンフタリド、δ−ヘキサラクトン、δ−2−デセノラクトン、ε−ドデカラクトン、ジヒドロクマリン、クマリン等を挙げることができる。
【0029】
炭化水素類としては、例えば、オシメン、リモネン、α−フェランドレン、テルピネン、3−カレン、ビサボレン、バレンセン、アロオシメン、ミルセン、ファルネセン、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、テルピノーレン、p−サイメン、セドレン、β−カリオフィレン、カジネン等を挙げることができる。
【0030】
含窒素及び/又は含硫化合物類としては、例えば、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、N−メチルアントラニル酸メチル、N−2′−メチルペンチリデンアントラニル酸メチル、リガントラール、ドデカンニトリル、2−トリデセンニトリル、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、3,7−ジメチル−2,6−ノナジエノニトリル、インドール、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム、リモネンチオール、1−P−メンテン−8−チオール、アントラニル酸ブチル、アントラニル酸シス−3−ヘキセニル、アントラニル酸フェニルエチル、アントラニル酸シンナミル、ジメチルスルフィド、8−メルカプトメントン等を挙げることができる。
【0031】
酸類としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、2−デセン酸、ゲラン酸、2−メチル酪酸、2−エチル酪酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、3−メチル吉草酸、2−ヘキセン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、2−メチルヘプタン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、乳酸、ピルビン酸、シクロヘキサンカルボン酸等を挙げることができる。
【0032】
これらの、合成香料に関しては、市場で容易に入手可能であり、必要により容易に合成することもできる。
【0033】
また、天然香料としては、例えば、スイートオレンジ、ビターオレンジ、ネロリ、マンダリン、プチグレン、ベルガモット、タンゼリン、温州ミカン、ダイダイ、ハッサク、イヨカン、レモン、ライム、グレープフルーツ、ユズ、スダチ、カボス、スウィーティー等から選ばれる1種以上の天然香料を好ましく例示することができる。
【0034】
また、上記の天然香料以外に、例えば、シトロネラ、エレミ、オリバナム、マジョラム、アンゲリカルート、スターアニス、バジル、ヘイ、カラマス、キャラウェイ、カルダモン、ペッパー、カスカリラ、ジンジャー、セージ、クラリセージ、クローブ、コリアンダー、ユーカリ、フェンネル、ピメント、ジュニパー、フェネグリーク、ローレル、メース、スギ、センキュウ、アーモンド、アップルミント、アニス、アルテミシア、アルファルファ、アンズ、アンブレット、イグサ、イチゴ、イチジク、イランイラン、ウインターグリーン、ウメ、エルダー、エンジュ、オークモス、オールスパイス、オリス、カーラント、カッシー、カモミル、ガランガ、カリン、ガンビア、グァバ、グーズベリー、クスノキ、クチナシ、クベバ、クミン、クランベリー、コーラ、サンショウ、サンダラック、サンダルウッド、サンダルレッド、シソ、シベット、ジャスミン、ショウガ、ジンセン、シンナモン、スターフルーツ、スチラックス、スペアミント、ゼラニウム、タイム、ダバナ、タンジー、タンジェリン、チャンパカ、チュベローズ、ツバキ、ディタニー、トルーバルサム、トンカ、ナッツ、ナツメ、ナツメグ、ナンテン、ニアウリ、ニンジン、バイオレット、パイナップル、ハイビスカス、ハチミツ、ハッカ、パッションフルーツ、バニラ、バラ、ヒソップ、ヒノキ、フーゼル油、ブチュ、ペパーミント、ペピーノ、ベルベナ、ボアドローズ、ポポー、ボルドー、ボロニア、マツ、マンゴー、ミツロウ、ミモザ、ミルフォイル、ムスク、メープル、メリッサ、メロン、モモ、ラベンダー、リキュール、リツェア、リンデン、ルー、レンブ、ローズマリー、ロベージなどの天然香料(ハーブを含む)を使用することができる。
【0035】
上記に示した、天然香料類は、精油、エキス、オレオレジン、レジノイド、アブソリュート、エッセンス、テルペンレスオイル、回収フレーバーなど任意の形状で使用することができる。これらは蒸留、抽出、クロマトグラフィー(吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど)など公知の手段により容易に精製することができる。
【0036】
また、各種の動植物エキスとしてはハーブ・スパイス抽出物、コーヒー・緑茶・紅茶・ウーロン茶抽出物、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼ・プロテアーゼなどの酵素分解物も挙げられる。
【0037】
また、調合香料としては、具体的には、オレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ユズフレーバー、スダチフレーバー、などのシトラス系香料、ストロベリーフレーバー、ラズベリーフレーバー、ブルーベリーフレーバーなどのベリー類系香料、マンゴーフレーバー、パパイヤフレーバー、グァバフレーバー、パッションフルーツフレーバー、ライチフレーバーなどのトロピカルフルーツ系香料、アップルフレーバー、グレープフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズフレーバー、ウメフレーバー、チェリー(サクランボ)フレーバーなどのフルーツ系香料、緑茶フレーバー、ウーロン茶フレーバー、紅茶フレーバー、コーヒーフレーバーなどの茶、コーヒー系香料、ビーフフレーバー、ポークフレーバー、チキンフレーバーなどのミート系香料、アサフェチダフレーバー、アジョワンフレーバー、アニスフレーバー、アンゼリカフレーバー、ウイキョウフレーバー、オールスパイスフレーバー、シナモンフレーバー、カッシャフレーバー、カモミールフレーバー、カラシナフレーバー、カルダモンフレーバー、キャラウェイフレーバー、クミンフレーバー、クローブフレーバー、コショウフレーバー、コリアンダーフレーバー、サッサフラスフレーバー、セイボリーフレーバー、サンショウフレーバー、シソフレーバー、ジュニパーベリーフレーバー、ジンジャーフレーバー、スターアニスフレーバー、セイヨウワサビフレーバー、セージフレーバー、タイムフレーバー、タラゴンフレーバー、ディルフレーバー、トウガラシフレーバー、ナツメフレーバー、ナツメグフレーバー、バジルフレーバー、パセリフレーバー、マジョラムフレーバー、ローズマリーフレーバー、ローレルフレーバー、ワサビフレーバーなどのハーブ、スパイス系香料、オニオンフレーバー、ガーリックフレーバー、ネギフレーバー、キャベツフレーバー、キャロットフレーバー、セロリーフレーバー、シイタケフレーバー、松茸フレーバー、トマトフレーバー、ゴボウフレーバー、ミツバフレーバーなどの野菜系香料、ペパーミントフレーバー、スペアミントフレーバー、和種ハッカフレーバーなどのミント系香料、バニラ系香料、アーモンドフレーバー、カシューナッツフレーバー、ピーナッツフレーバー、ヘーゼルナッツフレーバー、ウォルナッツフレーバー、チェスナッツフレーバー、マカデミアナッツフレーバー、ペカンナッツフレーバー、ピスタチオフレーバー、ブラジルナッツフレーバー、ココナッツフレーバーなどのナッツ系香料、ワインフレーバー、ウイスキーフレーバー、ブランデーフレーバー、ラムフレーバー、ジンフレーバー、リキュールフレーバーなどの洋酒系香料、魚介類フレーバー、甲殻類フレーバー、節類フレーバー、海草類フレーバーなどの水産物系香料、コーンフレーバー、ポテトフレーバー、スイートポテトフレーバー、米飯フレーバー、ブレッドフレーバーなどの穀物系香料、ハネーフレーバー、メープルシロップフレーバー、シュガーフレーバー、黒糖フレーバー、モラセスフレーバーなどのシュガー系香料などが挙げられる。
【0038】
本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤または呈味改善剤組成物はそのまま飲食品に添加して使用することができるが、水混和性有機溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤などして飲食品に添加することもできる。
【0039】
本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤または呈味改善剤組成物を溶解するための水混和性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、2−プロパノール、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノール、グリセリンまたはプロピレングリコールが特に好ましい。
【0040】
また、乳化製剤とするためには、本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤または呈味改善剤組成物を乳化剤と共に乳化して得ることができる。例えば、キラヤ抽出物、酵素処理レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アラビアガムなどの乳化剤ないし安定剤の1種以上を配合して、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化することにより乳化香料製剤の形態とすることもできる。かかる乳化剤ないし安定剤の使用量は乳化剤ないし安定剤の種類などにより異なるが、例えば、乳化香料製剤の質量を基準として0.1〜25質量%の範囲、好ましくは5〜20質量%の範囲内を挙げることができる。
【0041】
さらに、例えば、前記乳化香料製剤に砂糖、乳糖、ブドウ糖、トレハロース、セロビオース、水飴、還元水飴などの糖類;糖アルコール類;デキストリンなどの各種デンプン分解物およびデンプン誘導体、デンプン、ゼラチン、アラビアガムなどの天然ガム類などの賦形剤を適宜配合した後、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥などの適宜な乾燥手段により乾燥して粉末香料製剤の形態とすることもできる。これらの賦形剤の配合量は粉末香料製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0042】
本発明では、前記高甘味度甘味料により甘味が付与されている飲食品に対し、本発明の7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸もしくは10−ドデセン酸、またはこれらの2種以上の混合物を配合することにより、高甘味度甘味料を含んでなる飲食品の、高甘味度甘味料に由来する前記呈味の欠点を改善することができる。高甘味度甘味料により甘味が付与されている飲食品とは、甘味の一部または全部が高甘味度甘味料により甘味が付与されている飲食品であって、甘味料の一部として通常の甘味料である、ショ糖、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、乳糖、ガラクトース、マルチトース、トレハロースなどの糖類を含んでいても良い。
【0043】
飲食品の種類としては特に制限がなく、高甘味度甘味料により甘味が付与されている飲食品であればいかなる飲食品でも良く、例えば、果実ジュース、果粒入り果実ジュース、果実飲料、果汁飲料、果汁入り飲料、野菜ジュース、野菜入りジュース、果実野菜ミックスジュースなどの果汁または野菜汁飲料;コーラ、ジンジャーエール、サイダー等の炭酸飲料;スポーツドリンク、ニアウォーターなどの清涼飲料;コーヒー、ココア、紅茶、抹茶、緑茶、ウーロン茶等の茶系あるいは嗜好性飲料;乳飲料、乳成分入りコーヒー、カフェオレ、ミルクティー、抹茶ミルク、フルーツ乳飲料、ドリンクヨーグルト、乳酸菌飲料等の乳成分を含有する飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、ドリンクゼリー、プディング、ババロア、ブラマンジェ及びムース等のデザート類(おやつや食後に食される甘味が付与された食品);アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等のアイスクリーム類(乳製品に甘味料やその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品)、シャーベット、かち割り氷等の氷菓(糖液にその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品)などの冷菓;ケーキ、クラッカー、ビスケットや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類;米菓、スナック類;チューインガム、ハードキャンデー、ヌガーキャンデー、ゼリーなどの糖菓一般;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類;イチゴジャムやマーマレード等のジャム;菓子パン等を含むパン;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆなどの調味料一般;スティックシュガーなどの甘味料組成物;蒲鉾などの練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。中でも好ましい食品としては飲料、デザート、冷菓を挙げることができる。
【0044】
また、飲料のうち特に好ましいものは、スポーツドリンクおよび炭酸飲料であり、さらに炭酸飲料としては、特に、発泡酒、新ジャンルビール、非発酵のビールテイスト飲料、ノンアルコールビール、チューハイ、ノンアルコールチューハイを好ましく例示することができる。
【0045】
本発明の7−ドデセン酸、8−ドデセン酸、9−ドデセン酸もしくは10−ドデセン酸、またはこれらの2種以上の混合物の配合量は、その目的あるいは飲食品の種類によっても異なるが、例えば、飲食品の全体重量に対して1ppb〜10ppm、好ましくは2ppb〜5ppm、さらに好ましくは5ppb〜2ppm、より好ましくは10ppb〜1ppm、特に好ましくは20ppb〜500ppbの範囲を例示することができる。これらの範囲内では、飲食品対し高甘味度甘味料の呈味を改善する優れた効果を有する。
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
本発明における、7−ドデセン酸(本発明品1)、8−ドデセン酸(本発明品2)、9−ドデセン酸(本発明品3)、10−ドデセン酸(本発明品4)を特許文献12に記載されている合成反応に従って調製した。
【0048】
実施例1:7−ドデセン酸によるステビア含有飲料に対する効果
クエン酸0.05g、クエン酸三ナトリウム0.01g、ステビア甘味料(α−グルコシルレバウディオサイドAを85%含有)0.04g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとし、ステビア含有飲料を調製した。これに、7−ドデセン酸(本発明品1)を表1に示す濃度で添加したステビア甘味料含有飲料を得た。
【0049】
これらについて、よく訓練されたパネラー10名を用いて官能評価を行った。官能評価は、以下の2つの項目について6段階で評価し、その平均点を計算した。表1にその結果を示す。
(1)後味の苦味について(以下、「苦味」という):後味に苦味を非常に強く感じる(1点)、後味に苦味を強く感じる(2点)、後味に苦味を感じる(3点)、後味に苦味が多少感じられる(4点)、後味に苦味がわずかに感じられる(5点)、 後味に苦味が全く感じられない(6点)
(2)甘味が後に尾を引く欠点について(以下、「甘みの後引き」という): 甘味の後引きが非常に強く、好ましい甘味ではない(1点)、甘味の後引きが強く、好ましい甘味ではない(2点)、甘味の後引きがあり、好ましい甘味が弱い(3点)、甘みの後引きを多少感じる(4点)、甘味の後引きをわずかに感じる(5点)、甘味の後引きが感じられず、好ましい甘味を強く感じる(6点)。
【0050】
【表1】
【0051】
以上の官能評価から、ステビア甘味料の呈味の欠点は、7−ドデセン酸をステビア含有飲料に1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、呈味の改善は7−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0052】
実施例2:8−ドデセン酸によるステビア含有飲料に対する効果
実施例における7−ドデセン酸を8−ドデセン酸(本発明品2)に置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
以上の官能評価から、ステビア甘味料の呈味の欠点は、8−ドデセン酸をステビア含有飲料に1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、呈味の改善は8−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0055】
実施例3:9−ドデセン酸によるステビア含有飲料に対する効果
実施例における7−ドデセン酸を9−ドデセン酸(本発明品3)に置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
以上の官能評価から、ステビア甘味料の呈味の欠点は、9−ドデセン酸をステビア含有飲料に1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、呈味の改善は9−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0058】
実施例4:10−ドデセン酸によるステビア含有飲料に対する効果
実施例における7−ドデセン酸を10−ドデセン酸(本発明品4)に置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
以上の官能評価から、ステビア甘味料の呈味の欠点は、10−ドデセン酸をステビア含有飲料に1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、呈味の改善は9−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0061】
実施例5:9−ドデセン酸によるアセスルファムK含有飲料に対する効果
クエン酸0.05g、クエン酸三ナトリウム0.01g、アセスルファムKを0.026g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとし、アセスルファムK含有飲料を調製した。これに、9−ドデセン酸(本発明品3)を表5に示す濃度で添加したアセスルファムK含有飲料を得た。
【0062】
これらについて、よく訓練されたパネラー10名を用いて官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同じ方法で評価し、その平均点を計算した。表5にその結果を示す。
【0063】
【表5】
【0064】
以上の官能評価から、アセスルファムK甘味料の呈味の欠点は、9−ドデセン酸をアセスルファムK含有飲料に1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、呈味の改善は9−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0065】
実施例6:9−ドデセン酸によるスクラロース含有飲料に対する効果
クエン酸0.05g、クエン酸三ナトリウム0.01g、スクラロース0.008g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとし、スクラロース含有飲料を調製した。これに、9−ドデセン酸(本発明品3)を表6に示す濃度で添加したスクラロース含有飲料を得た。
【0066】
これらについて、よく訓練されたパネラー10名を用いて官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同じ方法で評価し、その平均点を計算した。表6にその結果を示す。
【0067】
【表6】
【0068】
以上の官能評価から、スクラロース甘味料の呈味の欠点は、9−ドデセン酸をスクラロース含有飲料に1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、呈味の改善は9−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0069】
実施例7:9−ドデセン酸によるアスパルテーム含有飲料に対する効果
クエン酸0.05g、クエン酸三ナトリウム0.01g、アスパルテーム0.025g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとし、アスパルテーム含有飲料を調製した。これに、9−ドデセン酸(本発明品3)を表7に示す濃度で添加したアスパルテーム含有飲料を得た。
【0070】
これらについて、よく訓練されたパネラー10名を用いて官能評価を行った。官能評価は、実施例1と同じ方法で評価し、その平均点を計算した。表7にその結果を示す。
【0071】
【表7】
【0072】
以上の官能評価から、アスパルテーム甘味料の呈味の欠点は、9−ドデセン酸をアスパルテーム含有飲料に1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、呈味の改善は9−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0073】
実施例8:市販非発酵ノンアルコールビール風味飲料への添加および官能評価
市販の非発酵ノンアルコールビール風味飲料(原材料に「甘味料(アセスルファムK)」の表示がある製品)に、表8に示す濃度となる量の9−ドデセン酸(本発明品3)を添加し、よく訓練されたパネラー10名を用いて官能評価を行った。官能評価基準は、9−ドデセン酸無添加の市販の非発酵ノンアルコールビール風味飲料を「コントロール」として、以下の2つの項目について6段階で評価し、その平均点を計算した。表8にその結果を示す。
【0074】
(1)高甘味度甘味料由来の後味の苦味について(以下、「苦味」という):コントロール(1点)、 後味の苦味がごくわずかに低減している(2点)、後味の苦味がわずかに低減している(3点)、後味の苦味が低減している(4点)、後味の苦味がかなり低減している(5点)、 後味の苦味が大幅に低減しており、ほとんど気にならない(6点)。
(2)高甘味度甘味料由来の甘味が後に尾を引く欠点について(以下、「甘みの後引き」という):コントロール(1点)、甘味の後引きがごくわずかに低減している(2点)、甘味の後引きがわずかに低減している(3点)、甘みの後引きが低減している(4点)、甘味の後引きがかなり低減している(5点)、甘味の後引きが大幅に低減しており、ほとんど気にならない(6点)。
【0075】
【表8】
【0076】
官能評価結果から、市販の非発酵ノンアルコールビール風味飲料(原材料に「甘味料(アセスルファムK)」の表示がある製品)の甘味料由来(アセスルファムK)の苦味および甘味の後引きは9−ドデセン酸を1ppb〜10ppm添加することにより改善されることが認められた。なお、苦味の改善は9−ドデセン酸の添加量で、1ppbでも改善効果が見られ、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。また、甘味の後引きの改善は9−ドデセン酸の添加量で、10ppb以上から特に改善され、100ppb以上では非常によく改善された。
【0077】
実施例9:9−ドデセン酸を配合した香料組成物の調製
表9の調合処方により、スポーツドリンク用香料組成物(比較品1:グレープフルーツ風味)を調製した。
【0078】
【表9】
【0079】
比較品1に9−ドデセン酸を100ppm添加した呈味改善剤組成物(本発明品5)を調製した。
乳化香料の調製
本発明品5(または比較品1)50g、SAIB(シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート)91g、中鎖飽和脂肪酸トリグリセライド8gおよび天然ビタミンE1gを混合溶解して、均一な油性材料混合物を得た。この混合物をグリセリン350g、アラビアガム185gおよび水315gを混合した溶液に加えて、予備撹拌して分散させた後、T.K.ホモミキサー(プライミクス株式会社製)を用いて、5000rpmにて10分間乳化し、粒径約0.2〜0.5μmの均一な乳化物を得た(本発明品6または比較品2)。
【0080】
実施例10:スポーツドリンクへの添加および官能評価
表10に示す調合処方により、スポーツドリンクを調製した。
【0081】
【表10】
【0082】
それぞれの飲料の風味をよく訓練された10名のパネラーにより官能評価した。
その結果、10名全員が、本発明品6を添加したスポーツドリンクの方が、比較品2を添加したスポーツドリンクよりもおいしいと評価した。また、その平均的な評価内容としては、高甘味度甘味料の特有の苦みが改善され、甘味の後引きについても改善され、キレやすっきり感を付与し、のどごし感が良好で、極めておいしく感じるとの評価であった。