特許第6989568号(P6989568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989568
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20211220BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   G21F9/30 519C
   G21F9/12 501D
   G21F9/30 519A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-111207(P2019-111207)
(22)【出願日】2019年6月14日
(62)【分割の表示】特願2018-524151(P2018-524151)の分割
【原出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-174482(P2019-174482A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年6月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-124309(P2016-124309)
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木ノ瀬 豊
(72)【発明者】
【氏名】宮部 慎介
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−175726(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02919237(EP,A1)
【文献】 特開昭60−100100(JP,A)
【文献】 特開昭58−024338(JP,A)
【文献】 特開昭57−117341(JP,A)
【文献】 特開昭60−137854(JP,A)
【文献】 特開昭60−056299(JP,A)
【文献】 特開2002−087842(JP,A)
【文献】 米国特許第05662579(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 9/12
C03C 1/00−14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤、SiO源及びMO源(Mは、アルカリ金属元素を示す。)、並びにZr、Al、Nb、Zn、Ca及びMgから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含有する金属酸化物源を含み、且つ前記金属酸化物源の含有量が金属酸化物換算で1〜10質量%である混合物を加熱溶融し、得られた均質なガラス融液を冷却してガラス固化体とすることを特徴とする放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項2】
チタンを含む吸着剤が、シリコチタネート、9チタン酸アルカリ及び水酸化チタンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項3】
放射性元素が、セシウム及び/又はストロンチウムであることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項4】
SiO源及びMO源が、ケイ酸アルカリであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項5】
ケイ酸アルカリが、無水物であることを特徴とする請求項4に記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項6】
ケイ酸アルカリが、メタケイ酸ソーダであることを特徴とする請求項4又は5の何れか一項に記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【請求項7】
加熱溶融温度が、1000℃以上であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の放射性廃棄物固化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤をガラス化する放射性廃棄物固化体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
福島第一原子力施設から排出される放射性元素を含む汚染水は、多くの場合は、吸着剤を用いて処理されているが、現在、処理済み吸着剤の処理も問題になっている。
放射性廃棄物をガラス化する方法は、原子力発電所の使用済み燃料や再処理施設において発生した放射性廃棄物を長時間安定的に保管する観点から、検討が進められている。
【0003】
放射性廃棄物ガラス固化体としては、例えば、ホウケイ酸塩ガラスを用いる方法(例えば、特許文献1〜2参照。)、PbO−B−ZnOやPbO−B−SiO系ガラスを用いる方法(例えば、特許文献3参照。)、リン酸マグネシウム系ガラスを用いる方法(例えば、特許文献4参照。)、Fe−P系ガラスを用いる方法(例えば、特許文献5参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−526967号公報
【特許文献2】特表2007−527005号公報
【特許文献3】特開2003−50297号公報
【特許文献4】特開2005−207885号公報
【特許文献5】特開2014−142336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、高レベル放射性廃棄物はホウケイ酸ガラスによりガラス化されている。
結晶性シリコチタネートは、セシウム、更にはストロンチウムに対して優れた吸着能を有することから原子力発電所の排水処理の吸着剤として使用されている。しかしながら、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤をホウケイ酸ガラスでガラス化する場合には、1500℃以上の高温を必要とし、また、ガラス中に封じ込める放射性元素を含む吸着剤は、ガラス組成的に多くても25質量%程度にする必要がある。このため、放射性廃棄物を保管するのに必要なスペースの確保も、これまで以上に必要になる。
【0006】
従って、本発明の目的は、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤をガラス化し、多くの放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤を封じ込めることができ、更に、放射性元素の溶出を抑制した放射性廃棄物固化体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤を主たるTiO源として、更にSiO源及びMO源(Mは、アルカリ金属元素を示す。)を添加して得られる混合物を加熱溶融するとMO−SiO−TiO系のガラス固化体が得られること。また、該ガラス固化体は、ホウケイ酸ガラスを用いた場合に比べて、低温で、且つ多くの使用済みのチタンを含む吸着剤をガラス中に封じ込めることができること。また、該ガラス固化体は放射性元素の溶出が抑制された放射性廃棄物固化体となることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、本発明が提供しようとする発明は、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤、SiO源及びMO源(Mは、アルカリ金属元素を示す。)を含む混合物を加熱溶融してガラス固化体とすることを特徴とする放射性廃棄物固化体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放射性廃棄物固化体の製造方法によれば、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤をガラス化し、多くの放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤を封じ込めることができ、また、放射性元素の溶出を抑制した放射性廃棄物固化体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で用いた吸着剤(GTS+SNT)のX線回折図。
図2】実施例で用いた吸着剤(Nb−CST)のX線回折図。
図3】実施例1で得られた水砕品試料のX線回折図。
図4】比較例1及び比較例2で得られた水砕品試料のX線回折図。
図5】実施例4〜6で得られた空冷品試料のX線回折図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の放射性廃棄物固化体の製造方法は、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤、SiO源及びMO源(Mは、アルカリ金属元素を示す。)を含む混合物を加熱溶融してガラス固化体とすることを特徴とするものである。
即ち、本発明は、基本的に下記の(a)〜(c)の工程を有するものである。
(a)原料混合工程
(b)溶融化工程
(c)冷却工程
【0012】
(a)原料混合工程
原料混合工程は、各原料を混合処理して均一な原料混合物を調製する工程である。
【0013】
原料混合工程に係る放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤は、チタンを含む吸着剤に放射性元素を吸着させたものである。
【0014】
チタンを含む吸着剤が吸着する放射性元素としては、例えばCs、Sr、Ru、Sb等の金属イオン元素が挙げられ、これらは1種又は2以上の金属イオンが吸着されているものであってもよい。これらの中、特にCs、Srが好ましい。
【0015】
チタンを含む吸着剤としては、例えば、シリコチタネート、9チタン酸アルカリ及び水酸化チタン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いられたものであってもよい。また、チタンを含む吸着剤は、結晶質のものであっても非晶質のものであってもよい。
【0016】
前記シリコチタネートとしては、一般式;ATiSi16・nHO(式中、AはNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、nは0〜8の数を示す。)で表されるTi/Siのモル比が4/3のシリコチタネート(以下、「GTS」と呼ぶことがある)及びA’Ti(SiO)・nHO(式中、Aは、Na及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属元素を示す。xはnは0〜2を示す。)で表されるTi/Siのモル比が2/1のシリコチタネート(以下、「CST」と呼ぶことがある)が挙げられる。
また、シリコチタネートは、Nb、Al、Zr等を0.1〜20質量%含有するものであってもよい。
【0017】
前記9チタン酸アルカリは、一般式;A”Ti20・mHO(式中、A”はNa及びKから選ばれる1種又は2種のアルカリ金属を示し、mは0〜10の数を示す。)で表される9チタン酸アルカリ(以下、「SNT」と呼ぶことがある)が挙げられる。
【0018】
前記水酸化チタンは、例えば、特開2014−142336号公報、特開2013−78725号公報に記載された水酸化チタンが挙げられる。
本発明において、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤は、1種又は2種以上で原料混合物に含有させることができる。
また、放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤は、有機及び/又は無機バンダーを含有するものであってもよい。
【0019】
放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤は、多くの場合、粒径が300〜2000μmの大きな粒状の造粒粒子として用いられる場合があるが、これらの造粒粒子は、原料混合物中への分散性をよくするため、本発明において、各原料を混合する前に、予め所望により粉砕や解砕処理を施すことができる。
【0020】
原料混合工程に係るSiO源としては、ホワイトカーボン、シリカゾル、ヒュームドシリカ、シリカゲル、溶融シリカ等の化学合成シリカ、珪砂、珪藻、珪石等の天然シリカ等を用いることが出来る。
【0021】
原料混合工程に係るMO源(Mは、アルカリ金属元素を示す。)としては、M元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を用いることが出来る。本発明において、原料混合物に含有させるアルカリ金属元素(M)としてはNaが特にガラス化した場合にM2O−SiO2の結合力が他のアルカリ金属元素よりも強いという観点から好ましい。
【0022】
また、本発明において、SiO源及びMO源は、SiO源とMO源を含む化合物であってもよい。SiO源とMO源を含む化合物としては、ケイ酸アルカリが挙げられる。
前記ケイ酸アルカリとしては、例えばメタケイ酸アルカリ、オルトケイ酸アルカリ、二ケイ酸アルカリ、四ケイ酸アルカリ、水ガラス等が挙げられる。
【0023】
本発明において、SiO源及びMO源は、SiOとMOを含む化合物であるケイ酸アルカリが好ましく、特に、メタケイ酸ナトリウムがNa2O:SiO2モル比が1:1であり、組成調整が容易となる観点から特に好ましい。
【0024】
本発明において、SiO源及びMO源は含水物であっても無水物であってもよいが、溶融・ガラス化する際に重量減少が少なく、溶融効率が良いという観点から、無水物が特に好ましい。
【0025】
各原料の配合量は、原料混合物の組成が少なくとも下記組成となるように調製することが、多くの放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤をガラス固化体中に封じ込めつつ、放射性元素の溶出を抑えた放射性廃棄物固化体を得る観点から好ましい。
O;15〜35質量%、好ましくは15〜30質量%、
TiO;25〜50質量%、好ましくは28〜45質量%、
SiO;15〜35質量%、好ましくは15〜30質量%
【0026】
また、原料混合物中のMO/SiOのモル比は、0.80〜1.20、好ましくは0.85〜1.15とすることが1200℃以下の温度でガラス化できるという観点から好ましい。
また、原料混合物中のTiO/SiOのモル比は、0.80〜1.30、好ましくは0.85〜1.25とすることが1200℃以下の温度でガラス化できるという観点から好ましい。
【0027】
放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤の原料混合物の配合量は,50〜75質量%,好ましくは65〜72質量%として、原料混合物の組成を前記範囲に調製することが、多くの放射性元素を吸着したチタンを含む吸着剤を封じ込めることができ、また、放射性元素の溶出を抑制した放射性廃棄物固化体を得る観点から好ましい。
【0028】
本発明では、更に原料混合物に、Zr、Al、Nb、Zn、Ca及びMgから選ばれる1種又は2種以上の金属元素(A)を含有する金属酸化物源を添加することにより、よりいっそう放射性元素の溶出を抑えた放射性廃棄物固化体を得ることが出来る。
【0029】
用いることが出来る金属酸化物源としては、金属元素(A)を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を用いることが出来る。
また、本発明において金属酸化物源として、(1)金属酸化物源とSiO源を含む化合物、(2)金属酸化物源とMO源を含む化合物、(3)金属酸化物源、SiO源及びMO源を含む化合物を用いても差し付けえない。
【0030】
金属酸化物源の添加量は、原料混合物中に金属酸化物換算で1〜10質量%、好ましくは3〜10質量%含有させることが、よりいっそう放射性元素の溶出を抑えた放射性廃棄物固化体を得る観点で好ましい。なお、金属酸化物源として、前記(1)〜(3)のものを使用する場合は、原料混合物中のMO、SiO、TiO及び金属酸化物源に由来する金属酸化物の量が、それぞれ上記範囲となるように金属酸化物源を添加すればよい。
【0031】
原料混合工程に係る各原料の混合手段は、特に制限されるものではなく、上記各原料が均一に分散した混合物となるように、乾式法にて行うことが好ましい。
【0032】
均一混合操作で用いる装置としては、例えばハイスピードミキサー、スーパーミキサー、ターボスフェアミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びリボンブレンダー、V型混合機等の装置を用いることができる。なお、これら均一混合操作は、例示した機械的手段に限定されるものではない。また、所望によりジェットミル等で粉砕処理して粒度調整を行っても差し支えない。また、実験室レベルでは、家庭用ミキサー或いは手作業での混合でも十分である。
かくして得られる各原料が均一に混合された原料混合物は、次工程の(b)溶融化工程に付される。
【0033】
(b)溶融化工程
溶融化工程は、上記で得られた各原料が均一に混合された原料混合物を加熱溶融する工程である。
【0034】
加熱溶融する温度は、1000℃以上である。この理由は、加熱溶融する温度が1000℃未満では、該混合物の溶融が困難であり、均質なガラス融液が得られに難い傾向があるからである。なお、本発明において、ホウケイ酸ガラスを用いる方法に比べて、低温でのガラス化が可能であることから、この利点を生かす観点から加熱溶融する温度は、1100〜1300℃、特に1100〜1250℃とすることが好ましい。
【0035】
また、本発明において加熱溶融する時間は、臨界的ではなく、均質なガラス融液が得られるように行えばよい。一般に1時間以上、好ましくは2〜5時間加熱処理すれば、均質なガラス融液を得ることができる。
かくして得られる均質なガラス融液は、次工程の(c)冷却工程に付される。
【0036】
(c)冷却工程
冷却工程は、上記で得られた均質なガラス融液を冷却してガラス固化体として放射性廃棄物固化体を得る工程である。
【0037】
冷却条件については急冷、徐冷を問わず、いずれにしても容易にガラス固化体を得ることが出来るが、より放射性元素の溶出を抑えた放射性廃棄物固化体を得る観点から急冷で行うことが好ましい。
【0038】
ガラス融液を急冷する方法としては、急冷できる方法であれば特に制限されるものではなく、公知の水冷、空冷により行うことが出来る。
【0039】
かくして、ガラス固化体とした本発明の放射性廃棄物固化体が得られるが、更に必要に応じて粉砕、分級等を行って粒度調整を行ってもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<Csを吸着した吸着剤の調製>
1.Cs吸着(GTS+SNT)試料:
<吸着剤(GTS+SNT)の調製>
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ90g、苛性ソーダ水溶液667.49g及び純水84.38gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、四塩化チタン水溶液443.90gをペリスタポンプで1時間20分にわたって連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該混合ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温で静置熟成した。
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて170℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に24時間反応を行った。反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートと9チタン酸ナトリウムの混合物を得た。得られた塊状の吸着剤を乳鉢粉砕および100μmのフルイによる分級によりフルイ下の粉末を、吸着剤(GTS+SNT)試料とした。
得られた粒状物をX線回折構造した。その結果を図1に示す。図1に示すように、得られた粒状物は主相Na4Ti4Si316・nH2Oであり、Na4Ti920・mH2Oが検出され、前記結晶性シリコチタネート及び前記9チタン酸ナトリウムの混合物であることが確認された。また粒状物は2θ=10〜13°の範囲に観察されるNa4Ti4Si316・6H2Oに由来するメーンピーク(M.P.)の高さに対して、2θ=8〜10°に範囲に観察されるNa4Ti920・5〜7H2Oに由来するM.P.の高さの比が38.5%であった。
【0041】
<Cs吸着(GTS+SNT)試料の調製>
CsNO3.77gをイオン交換水1000mlに溶解して、ここに上記で調製した吸着剤(GTS+SNT)50gを添加して、室温(25℃)で24時間撹拌を行い、Csを飽和吸着させた。攪拌終了後、常法によりろ過、リパルプ洗浄したのち、乾燥、卓上ミルにより解砕を行いCs吸着(GTS+SNT)試料を得た。
Cs吸着(GTS+SNT)試料を蛍光X線分析を行った結果、Cs吸着(GTS+SNT)試料は下記の組成を有していた。
NaO;10.4wt%
SiO;13.8wt%
TiO;50.8wt%
CsO;7.0wt%
【0042】
2.Cs吸着Nb−CST試料:
<吸着剤(Nb−CST)の調製>
(1)第一工程
3号ケイ酸ソーダ115g、苛性ソーダ水溶液670.9g、及びイオン交換水359.1gを混合し撹拌して混合水溶液を得た。この混合水溶液に、水酸化ニオブ25.5g(Nb:76.5質量%)を加えて撹拌混合した後、四塩化チタン水溶液412.3gをペリスタポンプで0.5時間にわたり連続的に添加して混合ゲルを製造した。当該ゲルは、四塩化チタン水溶液の添加後、1時間にわたり室温(25℃)で静置熟成した。
(2)第二工程
第一工程で得られた混合ゲルをオートクレーブに入れ、1時間かけて160℃に昇温したのち、この温度を維持しながら撹拌下に18時間反応を行った。
反応後のスラリーをろ過、洗浄、乾燥して塊状の結晶性シリコチタネートを得た。得られた塊状の吸着剤を乳鉢粉砕および100μmのフルイによる分級によりフルイ下の粉末を、Cs吸着Nb−CST試料とした。
得られた粒状物をX線回折測定した。その結果を図2に示す。また、ICP−AESによる組成分析を行った結果、Nbを12.2質量%含有するNaTi(SiO)・2HOで表されるTi/Siのモル比が2/1の結晶性シリコチタネートであることを確認した。
【0043】
<Cs吸着Nb−CSTの調製>
CsNO3.77gをイオン交換水1000mlに溶解して、ここに上記で調製した吸着(Nb−CST)50gを添加して、室温(25℃)で24時間撹拌を行い、Csを飽和吸着させた。攪拌終了後、常法によりろ過、リパルプ洗浄したのち、乾燥、卓上ミルにより解砕を行いCs吸着Nb−CST試料を得た。
Cs吸着Nb−CST試料を蛍光X線分析を行った結果、Cs吸着Nb−CST試料は下記の組成を有していた。
NaO;11.3wt%
SiO;16.4wt%
TiO;34.9wt%
Nb;9.2wt%
CsO;5.7wt%
【0044】
{実施例1}
<NaO・SiO成分の調製>
25%苛性ソーダ160gに非晶質シリカ(ホワイトカーボン)31.5gを添加して、90℃で2時間加熱反応を行い、更に乾燥機で濃縮したのち電気炉で300℃に加熱して蒸発乾固させた。冷却後、乳鉢にて粉砕してNaO・SiO(NaO;50.8質量%、SiO;49.2質量%、NaO/SiOモル比=1.0)を得た。
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料10gと、上記で調製したNaO・SiO3.84gを混合して、少なくとも下記の組成の原料混合物を得た。
NaO;23.5wt%
SiO;27.2wt%
TiO;42.2wt%
CsO;5.8wt%
NaO/SiOモル比;0.88
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、水を張ったSUS槽にルツボを傾斜させて、加熱溶融物を流出して水砕(急冷)した。
水砕品は乾燥後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた水砕品試料のX線回折図を図3に示す。また、図3に原料混合物のX線回折図も併記した。
図3の結果より、明確な回折ピークが確認できず、完全にガラス化されていることが確認できた。
【0045】
{比較例1}
ZnO60部、B20部にCs吸着(GTS+SNT)試料20部を混合して、原料混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、水を張ったSUS槽にルツボを傾斜させて、加熱溶融物を流出して水砕(急冷)した。
水砕品は乾燥後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた水砕品試料のX線回折図を図4に示す。また、図4に原料混合物のX線回折図も併記した。
図4の結果より、明確な回折ピークが確認でき、完全にガラス化を行うことは出来なかった。
【0046】
{比較例2}
Cs吸着(GTS+SNT)試料の添加量を26.7部とした以外は比較例1と同様な条件で水砕品を得た。水砕品は乾燥後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた水砕品試料のX線回折図を図4に示す。
図4の結果より、明確な回折ピークが確認でき、完全にガラス化を行うことは出来なかった。
【0047】
【表1】
【0048】
図3図4及び表1から明らかなように、比較例1及び比較例2のホウケイ酸ガラスを用いる方法では、1100℃の加熱温度では、完全にガラス化したものが得られなかったのに対して、本発明の方法によれば、比較例1及び比較例2に比べ原料混合物中の吸着剤の含有量(72wt%)が多いにも拘わらず完全にガラス化したガラス固化体が得られていることが分かる。
【0049】
{実施例2}
<NaO・SiO成分の調製>
NaO・SiO成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
NaO;50.93wt%
SiO;45.93wt%
NaO/SiOモル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料10gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ 3.84gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
NaO;21.7wt%
SiO;22.7wt%
TiO;36.7wt%
CsO;5.0wt%
NaO/SiOモル比;0.93
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、融液を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた空冷品試料のXRD分析したところ、明確な回折ピークが確認できず、完全にガラス化されていることが確認できた。
【0050】
{実施例3}
<NaO・SiO成分の調製>
NaO・SiO成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
NaO;50.93wt%
SiO;45.93wt%
NaO/SiOモル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着Nb−CST試料10gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ 3.84gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
NaO;22.3wt%
SiO;24.6wt%
TiO;25.2wt%
Nb2;6.6wt%
CsO;4.1wt%
NaO/SiOモル比;0.88
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1100℃で2時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。その結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0051】
{実施例4}
<NaO・SiO成分の調製>
NaO・SiO成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
NaO;50.93wt%
SiO;45.93wt%
NaO/SiOモル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化アルミニウム2.22gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
NaO;19.5wt%
SiO;20.5wt%
TiO;33.2wt%
CsO;4.6wt%
Al;6.3wt%
NaO/SiOモル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で2.5時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた空冷品試料のXRDを図5に示す。図5の結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0052】
{実施例5}
<NaO・SiO成分の調製>
NaO・SiO成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
NaO;50.93wt%
SiO;45.93wt%
NaO/SiOモル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化アルミニウム3.17gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
NaO;18.8wt%
SiO;19.7wt%
TiO;31.8wt%
CsO;4.4wt%
Al;8.7wt%
NaO/SiOモル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で3時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。
得られた空冷品試料のXRDを図5に示す。図5の結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0053】
{実施例6}
<NaO・SiO成分の調製>
NaO・SiO成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
NaO;50.93wt%
SiO;45.93wt%
NaO/SiOモル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化ジルコニウム3.48gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
NaO;18.5wt%
SiO;19.4wt%
TiO;31.4wt%
CsO;4.3wt%
ZrO;4.3wt%
NaO/SiOモル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で2時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mに粒度調製した後、XRD分析を行った。得られた空冷品試料のXRDを図5に示す。図5の結果、明確な回折ピークが観察されず、完全にガラス化していることを確認した。
【0054】
{実施例7}
<NaO・SiO成分の調製>
NaO・SiO成分として下記組成の市販の無水メタ珪酸ソーダ(日本化学工業社製)を使用した。
NaO;50.93wt%
SiO;45.93wt%
NaO/SiOモル比;1.072
<ガラス固化体の調製>
上記で調製したCs吸着(GTS+SNT)試料15gと、上記で調製した無水メタ珪酸ソーダ5.76g、水酸化ジルコニウム4.87gを混合して、少なくとも下記の組成の混合物を得た。
NaO;17.5wt%
SiO;18.4wt%
TiO;29.7wt%
CsO;4.1wt%
ZrO;5.7wt%
NaO/SiOモル比;0.92
次いで、該混合物を白金ルツボに入れ、1140℃で3時間加熱溶融した。
次いで、加熱溶融物を板状のSUSに流し入れ、そのまま空冷してガラス固化体を得た。
空冷品は冷却後、粉砕して、0.5〜1mmに粒度調製した後、XRD分析を行った。
得られた空冷品試料のXRDを図5に示す。図5の結果、明確な回折ピークが観察されず完全にガラス化していることを確認した。

【表2】
【0055】
<Cs溶出試験>
実施例で得られた水砕品試料又は空冷品試料2.5gをそれぞれ50mlのイオン交換水とともにテフロン(登録商標)性圧力容器に入れ、2気圧(121℃)、48時間でPCT試験(プレッシャークッカーテスト)を行った。PCT試験後、濾過し、ろ液中のCsイオン濃度をICP−AESで分析した。また、水砕品試料からのCsイオン溶出率を下記計算式により求めた。その結果を表3に示した。
【0056】
【数1】
【0057】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5