特許第6989590号(P6989590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989590
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】フルオロエラストマーコンパウンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/20 20060101AFI20211220BHJP
   C08F 214/28 20060101ALI20211220BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20211220BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20211220BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20211220BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20211220BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   C08L27/20
   C08F214/28
   C08K3/04
   C08K3/22
   C08K3/30
   C08K5/25
   C09K3/10 M
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-507900(P2019-507900)
(86)(22)【出願日】2017年8月9日
(65)【公表番号】特表2019-531369(P2019-531369A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(86)【国際出願番号】US2017046030
(87)【国際公開番号】WO2018038917
(87)【国際公開日】20180301
【審査請求日】2020年7月20日
(31)【優先権主張番号】62/379,713
(32)【優先日】2016年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジェイ.ビッシュ
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−099895(JP,A)
【文献】 特開2005−314653(JP,A)
【文献】 特表2008−500408(JP,A)
【文献】 特表2011−529977(JP,A)
【文献】 特表2008−532808(JP,A)
【文献】 特表2004−500459(JP,A)
【文献】 特表平08−512355(JP,A)
【文献】 特開2005−314702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/20
C08F 214/28
C08K 3/04
C08K 3/22
C08K 3/30
C08K 5/25
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロエラストマーコンパウンドであって、
A.
(1)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、又はこれらの混合物;
(2)少なくとも1種のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、又はこれらの混合物;及び
(3)ニトリル基、臭素原子、及びヨウ素原子からなる群から選択される官能基を含む1種以上の硬化部位モノマー;
の共重合単位を含むパーフルオロエラストマー;
B.少なくとも60nmの平均粒子サイズを有する少なくとも1種のカーボンブラック;
C.二酸化チタン、硫酸バリウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される無機フィラー;並びに
D.オキサリジヒドラジド、カルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、及びt−ブチルカルバザートからなる群から選択される硬化剤;
を含み、
O−リングの形状の前記パーフルオロエラストマーコンパウンドが、硬化させてWykeham−Farrence試験装置を使用して225℃の蒸留水及び20%の圧縮に1500時間曝露した後に、前記無機フィラーを含まない同一のパーフルオロエラストマーコンパウンドよりも少なくとも25%大きい、90℃で測定されるシール力保持率を示す、パーフルオロエラストマーコンパウンド。
【請求項2】
前記無機フィラーが硫酸バリウムである、請求項1に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド。
【請求項3】
前記無機フィラーが二酸化チタンである、請求項1に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド。
【請求項4】
前記硬化部位モノマーがニトリル基を含む、請求項1に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド。
【請求項5】
前記硬化部位モノマーがニトリル含有パーフルオロビニルエーテルである、請求項1に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド。
【請求項6】
前記カーボンブラックが少なくとも100nmの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド。
【請求項7】
請求項1に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドを含む物品。
【請求項8】
ガスケット、シール、チューブ、ダイヤフラム、又はO−リングの形態である、請求項に記載の物品。
【請求項9】
請求項1に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドの製造方法であって、
1)
A.(1)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、又はこれらの混合物;
(2)少なくとも1種のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、又はこれらの混合物;及び
(3)ニトリル基、臭素原子、及びヨウ素原子からなる群から選択される官能基を含む1種以上の硬化部位モノマー;
の共重合単位;
B.少なくとも60nmの平均粒子サイズを有する少なくとも1種のカーボンブラック;
C.二酸化チタン、硫酸バリウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される無機フィラー;並びに
D.オキサリジヒドラジド、カルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、及びt−ブチルカルバザートからなる群から選択される硬化剤;
を含むパーフルオロエラストマーコンパウンドを硬化させる工程;
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ニトリル硬化部位を有するパーフルオロエラストマーコンパウンドを明確に含み、無機フィラーとカーボンブラックとの組み合わせを含有する、パーフルオロエラストマーコンパウンド(硬化性組成物とも呼ばれる)が記載される。本明細書には、これらのコンパウンドから硬化した物品も記載される。
【背景技術】
【0002】
フルオロエラストマーを含有するエラストマーコンパウンドは、過酷な環境の中で、特には高温や反応性が高い化学物質に曝露されている最中に使用できることから、際立った商業的成功を収めてきた。例えば、これらのコンパウンドは、航空機エンジンの高温又はその他の部分のシールにおいて、油井掘削装置において、高温で作動する産業機器のシーリング要素として、及び高温、高圧、水性環境において使用されている。
【0003】
硬化したエラストマーコンパウンドの特性は、主にこれらのコンパウンドの高分子主鎖の大部分を占める共重合した含フッ素モノマーの安定性及び不活性さにより生じる。そのようなモノマーとしては、テトラフルオロエチレンやパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルが挙げられる。エラストマー特性を完全に発現させるためには、フルオロエラストマーは典型的には架橋される。すなわち加硫又は硬化される。この目的のために、わずかな割合の硬化部位モノマーがモノマーと共重合される。架橋により、硬化部位モノマーは硬化剤と反応して物品の形態の架橋したエラストマー体を形成する。本明細書に記載の硬化部位モノマーには、ニトリル基又はハロゲン含有硬化部位モノマー、好ましくはニトリル含有硬化部位モノマーを含む硬化部位モノマーが含まれる。硬化部位モノマーを含むパーフルオロエラストマーは、ニトリル基又はハロゲン含有硬化部位モノマーとの使用のために適した任意の硬化剤によって硬化することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、改善された圧縮応力緩和を示す、特定のカーボンブラックと無機フィラーとの組み合わせを含むパーフルオロエラストマーコンパウンド、並びにこれらのコンパウンドを含む物品が記載される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
略語
本明細書における請求項及び記述は、以下に示す略語及び定義を使用して解釈すべきである。
「h」、「hrs」は時間を意味する。
「N」はニュートンを意味する。
「%」は用語パーセントを意味する。
「部」は重量部を意味する。
「phr」はパーフルオロエラストマー(ゴム)100部当たりの部を意味する;当業者はこの測定の用語を使用及び認識している。例えば、パーフルオロエラストマー100部当たり3部の成分は3phrと記述される。本明細書に記載のコンパウンド、手順、及び物品において、phrは100部のパーフルオロエラストマーAを基準とする。
【0006】
定義
本明細書において、用語「物品」は、硬化した又は部分的に硬化した品物、物、物体、又は要素を意味する。本明細書において、物品が部分的に硬化している場合、用語「物品」は、硬化した物品になるために更に硬化され得る形態、形状、構成を有する任意の品物、物、物体、要素、装置等を意味する場合がある。物品が部分的に硬化している場合、用語「プリフォーム」は、その任意の一部が更に硬化され得る形態、形状、構成を意味する場合がある。
【0007】
本明細書において、物品が硬化している場合、用語「物品」は、全体又はその一部を更に硬化することなしで具体的な用途/目的に適切な形態、形状、構成である品物、物、物体、要素、装置等を意味する。
【0008】
物品は、部分的に完成し更なる処理を待っているか又は一緒に完成品を含むことになる他の要素/組立部品で組み立てられるかのどちらかである1つもしくは複数の要素又は組立部品を含んでもよい。更に、本明細書において、用語「物品」は物品のシステム又は構成を意味する場合がある。
【0009】
本明細書において、用語「アルコキシ」又は「アルコキシル」は、単結合によって酸素原子と連結しているアルキル基を意味する。酸素原子の他方の結合は炭素原子と結合している。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、及びシクロヘキシルオキシが挙げられる。
【0010】
本明細書において、用語「アルキル」としては、直鎖、分岐、又は環状の炭化水素構造及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルキルには芳香族構造は含まれない。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシル基が挙げられる。分岐アルキル基としては、例えばs−及びt−ブチル、及びイソプロピル基が挙げられる。環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロブチル、及びシクロオクチル基が挙げられる。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、及びシクロヘキシルオキシが挙げられる。
【0011】
本明細書において、用語「コンパウンド」は、硬化することができる組成物、すなわち硬化性組成物だけでなく、少なくともパーフルオロエラストマーと硬化剤とを含有する化学物質の混合物も意味する。化学物質の混合物は硬化されておらず、硬化するための化学物質の混合物の硬化を生じさせ得る処理条件にもおかれていない。
【0012】
本明細書において、用語「パーフルオロエラストマー」は、主に炭素原子とフッ素原子を含む化学物質を意味する。パーフルオロエラストマーは、限定するものではないが、例えば酸素原子及び窒素原子、並びに任意選択的には最大約0.5重量%の水素原子などの他の原子を含み得る。
【0013】
本明細書において、用語「硬化」は、パーフルオロエラストマーを含む結果として得られる物質が、パーフルオロエラストマー分子をこれらの間で十分に架橋させる条件(すなわち硬化条件)に曝露すると、結果として得られる物質が異なるものへと更に成形、押出、又は再形成されることができない形態又は形状又は構成又は構造をとることを意味する。つまり、フルオロエラストマーを含む結果として得られる物質が硬化条件に曝露されることによって硬化すると、その物質は実質的に異なる形態又は形状又は構成又は構造をとるために再硬化することができない。フルオロエラストマーを含有するコンパウンドの硬化した物品としては、限定するものではないが、O−リング、シール、ダイヤフラム、チューブ、及びガスケットが挙げられる。
【0014】
要するに、パーフルオロエラストマーコンパウンドは、最初に形態や形状等を得るために硬化させることができ、これは後に異なる形態又は形状へと再形成又は再成形することができない。硬化したパーフルオロエラストマーコンパウンドは、更に追加的な硬化条件におくことができ、これは最初の形態又は形状の追加的な後続の硬化をもたらす。そのような追加的な硬化条件は、本明細書では「硬化」として、あるいは「後硬化」として、様々に呼ばれる場合がある。すなわち、用語「硬化する」、「硬化した」は、ある形態又は形状を有する最初に硬化した結果物をもたらす最初の硬化プロセスを意味すると共に、最初に硬化したものと同じ形態又は形状を有するその後に硬化したものをもたらすその後の任意の硬化プロセスも明示的に意味する。
【0015】
範囲及び好ましい変形形態
本明細書に記載される任意の範囲は、特に明記されない限り、その端点を明確に包含する。範囲としての量、濃度、又は他の値もしくはパラメーターの記載は、そのような範囲の上限及び下限の対が本明細書に明示的に開示されているか否かに関わらず、任意の可能な範囲の上限と任意の可能な範囲の下限から形成される全ての可能な範囲を具体的に開示する。本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド、手順、及び物品は、明細書における範囲の定義で開示されている具体的な値に限定されない。
【0016】
本明細書に記載のプロセス、コンパウンド、及び物品の材料、方法、工程、値、及び/又は範囲等についての任意の変形形態の本明細書における開示は、好ましい又は好ましくないとして特定されているかどうかに関わらず、材料、方法、工程、値、範囲等の任意の可能な組み合せを含むことが具体的に意図されている。請求項についての正確かつ十分な裏付けを与えることを目的として、任意の開示の組み合せは、本明細書に記載の手順、コンパウンド、及び物品の好ましい変形形態である。
【0017】
本明細書において、ある式の助剤などの本明細書に記載の任意の化学種の化学名に関しての命名の誤り又は誤字が存在する場合には、化学名よりも化学構造が優先される。また、本明細書に記載の任意の化学種の化学構造中に誤りが存在する場合には、当業者が意図されている記述を理解する化学種の化学構造が優先される。
【0018】
総則
本明細書では、特定の無機フィラーとカーボンブラックとの組み合わせを含むパーフルオロエラストマーコンパウンドが記述され、これは、硬化した際に、同一であるが前記無機フィラーを含まないパーフルオロエラストマーコンパウンドと比較して、圧縮応力緩和試験により測定される改善されたシール力を示す。更に、本発明は、本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドを硬化させることによって作製される物品、及び本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドの製造方法に関する。
【0019】
より具体的には、本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドは:
A.
(1)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、又はこれらの混合物;
(2)少なくとも1種のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、又はこれらの混合物;及び
(3)ニトリル基、臭素原子、及びヨウ素原子からなる群から選択される官能基を含む1種以上の硬化部位モノマー;
の共重合単位を含むパーフルオロエラストマー;
B.少なくとも60nmの粒子サイズを有する少なくとも1種のカーボンブラック;
C.二酸化チタン、硫酸バリウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される無機フィラー;並びに
D.硬化剤;
を含み、
O−リングの形状の前記パーフルオロエラストマーコンパウンドは、硬化させてWykeham−Farrence試験装置を使用して225℃の蒸留水及び20%の圧縮に1500時間曝露した後に、前記無機フィラーを含まない同一のパーフルオロエラストマーコンパウンドよりも少なくとも25%大きい、90℃で測定されるシール力保持率を示す。
【0020】
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドは、硬化させてWykeham−Farrence試験装置を使用して225℃の水及び20%の圧縮に1100時間曝露した後に、90℃で測定した場合に少なくとも20Nのシール力を示す。
【0021】
本明細書に記載の方法は、少なくとも60nmの粒子サイズを有する少なくとも1種のカーボンブラック及び硬化剤を伴う、パーフルオロエラストマーと、二酸化チタンか硫酸バリウムか硫酸バリウムと二酸化チタンとの混合物と、の混合物に関する。方法は、A)パーフルオロエラストマー;B)少なくとも60nmの粒子サイズを有する少なくとも1種のカーボンブラック;C)二酸化チタン、硫酸バリウム、又はこれらの組み合わせ;及びD)硬化剤;を含有するパーフルオロエラストマーコンパウンドを硬化させる工程を含み;O−リングの形状の前記パーフルオロエラストマーコンパウンドは、硬化させてWykeham−Farrence試験装置を使用して225℃の蒸留水及び20%の圧縮に1500時間曝露した後に、前記無機フィラーを含まない同一のパーフルオロエラストマーコンパウンドよりも少なくとも25%大きい、90℃で測定されるシール力保持率を示す。
【0022】
本明細書では、本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドを硬化させることにより作製された物品も記述される。
【0023】
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド、物品、並びにパーフルオロエラストマーコンパウンドを硬化させるための方法の変形形態は、任意の次の要素又は次の要素の任意の組み合わせを明示的に包含する場合がある。つまり、本明細書に記載の及び請求項に列挙されているパーフルオロエラストマーコンパウンド、物品、及び方法は、この段落に列挙されている具体的な要素又はこれらの具体的な要素の任意の組み合わせを包含するように変更される場合がある。
【0024】
A)パーフルオロエラストマー
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーは、パーフルオロ化されており、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びこれらの混合物;パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のパーフルオロビニルエーテルモノマー;並びに硬化部位モノマー;の共重合したモノマー単位を含み得る。本明細書に記載のパーフルオロエラストマーAはパーフルオロ化されており、少なくとも次の3つ:A(1)約25〜74.9モル%の、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、及びこれらの混合物;A(2)約25〜74.9モル%の、1種以上のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル、パーフルオロ(アルコキシビニル)エーテル、及びこれらの混合物;A(3)約0.1〜10モル%の、1種以上の硬化部位モノマー;の共重合したモノマー単位を含み、A(1)、A(2)、及びA(3)のそれぞれのモルパーセントは、パーフルオロエラストマーA中のA(1)、A(2)、及びA(3)の合計モルパーセントを基準とする。
【0025】
A(2)パーフルオロビニルエーテル
明細書に記載の好適なパーフルオロビニルエーテルモノマーとしては、パーフルオロ(アルキルビニル)エーテル及びパーフルオロ(アルコキシビニル)エーテルモノマーが挙げられ、本明細書の以下の式(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)のいずれか1つから選択されるものが含まれる。
CF2=CFO(Rf’O)n(Rf”O)mf (II)
(式中、Rf’及びRf”は2〜6個の炭素原子の直鎖又は分岐のパーフルオロアルキレン基であり、m及びnは独立に0〜10であり、Rfは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)。
CF2=CFO(CF2CFXO)nf (III)
(式中、XはF又はCF3であり、nは0〜5であり、Rfは1〜6個の炭素原子のパーフルオロアルキル基である)。好ましくは、nは0又は1であり、Rfは1〜3個の炭素原子を含む。このようなフルオロビニルエーテルモノマーの例としては、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテルが挙げられる。
CF2=CFO[(CF2mCF2CFZO]nf (IV)
(式中、Rfは、1〜6個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、m=0又は1であり、n=0〜5であり、Z=F又はCF3である)。
CF2=CFO[(CF2CFCF3O)n(CF2CF2CF2O)m(CF2p]Cx2x+1 (V)
(式中、m及びn=1〜10、p=0〜3、x=1〜5であり、n=0〜1かつm=0〜1かつx=1であるモノマーを含む)。
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mn2n+1 (VI)
(式中、n=1〜5であり、m=1〜3であり、好ましくはn=1である)。
【0026】
パーフルオロエラストマーコンパウンド中のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテルもしくはパーフルオロ(アルコキシビニル)エーテルモノマー、又はこれらの組み合わせの濃度は、0.01〜100phr、好ましくは少なくとも約1〜30phr、より好ましくは約5phr〜30phrの範囲である。
【0027】
A(3)硬化部位モノマー
パーフルオロエラストマーAは、1種以上の硬化部位モノマーA(3)の共重合した単位を更に含む。好適な硬化部位モノマーとしては、ニトリル基、臭素原子、及びヨウ素原子からなる群から選択される官能基(ニトリル基が好ましい)を分子内に含むパーフルオロオレフィンが挙げられる。
【0028】
好適なニトリル含有硬化部位モノマーA(3)としては、次の式の化合物が挙げられる:
CF2=CF−O(CF2n−CN (VII)
(式中、n=2〜12であり、好ましくは2〜6である);
CF2=CF−O[CF2−CFCF3−O]n−CF2−CFCF3−CN (VIII)
(式中、n=0〜4であり、好ましくは0〜2である);
CF2=CF−[OCF2CFCF3x−O−(CF2n−CN (IX)
(式中、x=1〜2であり、n=1〜4である);
並びに
CF2=CF−O−(CF2n−O−CF(CF3)CN (X)
(式中、n=2〜4である)。
【0029】
ニトリル基を含む特に好ましい硬化部位モノマーとしては、ニトリル基及びトリフルオロビニルエーテル基を有するパーフルオロポリエーテルが挙げられる。最も好ましい硬化部位モノマーは、式(XI)で表されるパーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)(8−CNVE)である:
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN (XI)
【0030】
臭素原子を含む硬化部位モノマーの例としては、ブロモトリフルオロエチレン;4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(BTFB);臭化ビニル;1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン;パーフルオロアリルブロミド;4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン−1;4−ブロモ−1,1,3,3,4,4−ヘキサフルオロブテン;4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン;6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン;4−ブロモパーフルオロブテン−1;3,3−ジフルオロアリルブロミド;2−ブロモ−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテル;及び式(XII)で表される含フッ素化合物:
CF2BrRf−OCF=CF2 (XII)
(式中、Rfはパーフルオロアルキレン基である)
が挙げられる。臭素原子を含む硬化部位モノマーの追加的な例としては、CF=CFOCF2CF2CF2OCF2CF2Br及びCF2BrCF2O CF=CF2、並びに式(XIII)及び(XIV)で表される硬化部位モノマー:
ROCF=CFBr (XV)及びROCBr=CF2 (XIV)
(式中、RはC1〜C6アルキル基又はフルオロアルキル基である)
が挙げられる。具体例としては、CH3OCF=CFBr及びCF3CH2OCF=CFBrが挙げられる。
【0031】
ヨウ素原子を含む好適な硬化部位モノマーとしては、式(XV)により表されるもの:
CHR=CHZ−CH2CHRI (XV)
(式中、RはH又は−CH3であり、Zは、直鎖又は分岐であってもよく任意選択的に1つ以上のエーテル酸素原子を含んでいてもよいC1〜C18パーフルオロアルキルラジカルである)
が挙げられる。有用な含ヨウ素硬化部位モノマーの追加的な例は、式(XVI)及び(XVII)により表される不飽和エーテルである:
I(CH2CF2CF2nOCF=CF2 (XVI)
ICH2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF=CF2 (XVII)
(式中、n=1〜3である)。
【0032】
ヨウ素原子を含む硬化部位モノマーの追加的な例としては、ヨードエチレン;4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1(ITFB);3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン;2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン;2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)−1,1,−2,2−テトラフルオロエチレン;1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)プロパン;2−ヨードエチルビニルエーテル;3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ4−ヨードペンテン;ヨードトリフルオロエチレン;ヨウ化アリル;及び2−ヨード−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルが挙げられる。
【0033】
パーフルオロエラストマーは、重合時に様々な開始剤又は連鎖移動剤を使用する結果としての任意の様々な末端基を含んでいてもよい。末端基の非限定的な例としては、スルホネート、スルホン酸、カルボキシレート、カルボン酸、カルボキサミド、ジフルロメチル基、トリフルオロビニル基、又はパーフルオロ置換アルキル基が挙げられる。
【0034】
B)カーボンブラック
カーボンブラックは、ポリマー組成物の弾性率、引張強さ、伸び、硬度、耐摩耗性、導電性、及び加工性のバランスをとることが知られている。本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドにおいては、少なくとも60nmの粒子サイズを有する少なくとも1種のカーボンブラックがパーフルオロエラストマーコンパウンドの中に存在する。本明細書に記載のパーフルオロエラストマー組成物に有用な具体的なカーボンブラックは、大きな平均粒子サイズを特徴とするものである。大きい平均粒子サイズとは、ASTM D−3849により決定される典型的な平均粒子サイズが少なくとも約60nm〜約500nmであることを意味する。この範囲の平均粒子サイズを有するカーボンブラックは、ゴム製品に使用されるカーボンブラックの分類体系であるASTM D−1765のグループ番号7の上端(平均粒子サイズ61〜100nm)並びにグループ番号8(平均粒子サイズ101〜200nm)及び9(平均粒子サイズ201〜500nm)で等級付けされている。好ましいカーボンブラックは、範囲の上限で、通常少なくとも約150nm〜約500nmの平均粒子サイズを有する。最も好ましいカーボンブラックは少なくとも約200nmの平均粒子サイズを有する。そのようなカーボンブラックの例は、N−991、N−990、N−908、及びN−907と呼ばれるMTブラック(中粒径サーマルブラック)、並びに大粒径ファーネスブラックである。MTブラックが好ましい。本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド中のカーボンブラックの濃度は、約10〜100phr、好ましくは約20〜50phrの範囲である。
【0035】
C)無機フィラー
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドは、二酸化チタン、硫酸バリウム、又はこれらの混合物からなる群から選択される無機フィラーも含む。二酸化チタンは酸化チタンとも呼ばれる場合があり、式TiO2を有する。二酸化チタンの例としては、Chemoursから入手可能なTi−PureTM R−101及びPigment White 6が挙げられる。
【0036】
硫酸バリウムは、化学式がBaSO4である無機材料である。硫酸バリウムの例としては、Solvay Chemicalsから入手可能なBlanc Fixe、及びHuber Engineering Materialsから入手可能なHuberbrite(登録商標)が挙げられる。本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンド中の無機フィラーの濃度は、約1〜35phr、好ましくは約2〜30phr、より好ましくは約4〜25phrの範囲である。
【0037】
D)硬化剤
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドのための硬化剤としては、ヘテロ環構造又は完全にフッ素化された炭化水素として架橋を生成することができる任意の化合物が挙げられる。より具体的には、硬化剤は、カルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、t−ブチルカルバザート、又はオキサジヒドラジドであってもよい。硬化剤の濃度は、約0.1〜10phr、好ましくは0.5〜5phrの範囲である。
【0038】
E)任意選択的な助剤
過酸化物硬化の場合、本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドは、限定するものではないが、ジブロモプロピルイソシアヌレート、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリ(メチル)アリルシアヌレート、ポリ−トリアリルイソシアヌレート(ポリ−TAIC)、キシリレン−ビス(ジアリルイソシアヌレート)(XBD)、N、N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン、トリアリルホスファイト、1,2−ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、及びジエチレングリコールジアクリレートなどの1種以上の任意の助剤を含んでいてもよい。別の助剤は式(XVIII)を有し得る:
CH2=CH−R4−CH=CH2 (XVIII)
(式中、R4は1〜8個の炭素原子のパーフルオロアルキレンであってもよい)。
【0039】
存在する場合、1種以上の助剤の濃度は、約0.1〜10phr、好ましくは0.5〜5phrの範囲である。
【0040】
添加剤
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドは、安定剤、可塑剤、潤滑剤、及び加工助剤などの1種以上の添加剤を含んでいてもよく、これらは意図する用途に対して十分な安定性を保持する場合にフルオロエラストマーコンパウンド中で典型的に利用される。特に、パーフルオロポリエーテルは低温性能を向上させることができる。これらのパーフルオロエラストマーコンパウンド中の添加剤の濃度は、0.01〜100phr、好ましくは少なくとも約1〜30phr、より好ましくは約5〜30phrの範囲である。
【0041】
本明細書に記載のコンパウンド中で添加剤として使用されるテトラフルオロエチレンポリマーとしては、PTFEよりも下に融点を下げるための十分な濃度の1種以上のモノマーの共重合された単位を有するTFEのコポリマーが挙げられる。そのようなコポリマーは、通常0.5〜60×103Pa.sの範囲の融解粘度を有するが、この範囲外の粘度も公知である。
【0042】
本明細書に記載のパーフルオロコンパウンドの調製及びこれらのパーフルオロコンパウンドを含む本明細書に記載の硬化した物品
本明細書に記載のパーフルオロコンパウンドは、二本ロールゴムミル、インターナルミキサー(例えばバンバリーインターナルミキサー等)などのゴム混錬手順を使用して、又は押出機内で、パーフルオロエラストマーと、カーボンブラックと、無機フィラーと、硬化剤と、任意選択的な添加剤及び助剤(存在する場合)とを均一になるまで混合することによって調製することができる。
【0043】
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドは、硬化剤を硬化部位モノマーと架橋させるのに十分な熱及び/又は圧力をかけることによって硬化させてもよい。コンパウンドを硬化させるためにデュアル硬化系を使用することもできる。硬化のために圧縮成形が使用される場合、加圧硬化サイクルの後に好ましくは後硬化サイクルが行われ、その際、加圧硬化されたコンパウンドは窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中で300℃を超える高温で数時間加熱される。本明細書に記載のコンパウンドは、硬化すると本明細書に記載の物品になり、これら物品が使用される用途のために有用かつ好適な熱安定性、耐薬品性、及び圧縮応力緩和を示す。これらの物品は、高温用途のための及び多様な化学環境におけるシール及びガスケットとして、並びに高温での自動車用途のためのシールにおいて、並びにO−リングとして、特に有用である。
【0044】
シール力は、本明細書に記載のO−リングの形態の物品の圧縮応力緩和試験によって測定される。本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドは、O−リングの形態に硬化した場合、Wykeham−Farrence試験装置を使用して225℃の水及び20%の圧縮に1500時間曝露した後に、少なくとも20Nの90℃で測定した場合のシール力を示す。
【実施例】
【0045】
以下の表で「E」として識別される例示的なパーフルオロエラストマーコンパウンドは、本明細書に記載及び列挙するコンパウンド、手順、及び物品の範囲を更に明らかにすることのみを意図し、限定するものではない。比較例は以下の表で「C」として識別される。
【0046】
材料
以下の表で例示されるコンパウンド、手順、及び物品においては次の材料を使用した:
FFKM(パーフルオロエラストマーA):48.8重量%のTFEの単位、49.0重量%のパーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)の単位、及び2.2重量%の8−CNVEの単位から調製されたパーフルオロエラストマー。フルオロエラストマーAは、米国特許第5,789,489号明細書第10〜11欄に開示の方法によって調製することができる。
硬化剤:オキサリジヒドラジド
カーボンブラック:CancarbからThermax(登録商標)N990として入手可能な280nmの平均粒子サイズを有するサーマルカーボンブラックフィラー。
酸化マグネシウム:Hallstar,OH,USAからMaglite(登録商標)Dとして入手可能。
二酸化チタン:Chemours,DE,USAからTiPureTM R101として入手可能。
硫酸バリウム:Taber Incorporatedからblanc fixe XRHNとして入手可能。
酸化亜鉛:Alfa Aesar,Havehill,MA,USAから入手可能な99%の酸化亜鉛
【0047】
方法
以下の表で例示されるパーフルオロエラストマーコンパウンド、手順、及び物品においては次の方法を使用した。
【0048】
本明細書に記載の物品の製造のための具体的な手順
以降の具体的な手順は、本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドから本明細書に記載の物品を作製するために使用することができる。パーフルオロエラストマーコンパウンドのシートをロールミルで約2mmの厚さに押し出した。押し出されたシートから直径1インチの円形ワッシャを打ち抜いた。1インチの円形ワッシャが2.5g未満の重さの場合には、打ち抜かれた試験試料が少なくとも2.5gになるまでニップロールのギャップの幅をより広くしてシートを再押出する。コンパウンドの円形のワッシャ試験試料は、次の硬化手順によってO−リングを作製するために使用した。
【0049】
TC90+5分間、199℃で最大35000psiの圧力を使用する8”×8”PHIプレス中で、円形ワッシャ試験試料から、標準の214サイズのO−リング(3cm×0.34cm)を圧縮成形した。O−リング試料は更に硬化させた。すなわち、不活性雰囲気中で数時間300℃を超える高温で加熱することにより後硬化させた。O−リングは圧縮応力緩和試験のために使用した。結果は表1及び2に示されている。
【0050】
圧縮応力緩和試験によるシール力の決定
本明細書に記載の通りに作製されたO−リング(3cm×0.34cm)を、Wykeham−Farrence装置を使用して20%まで圧縮しながら、225℃で24、504、1008、及び1512時間、蒸留水に曝露した。各時間の後、O−リングを、Tuckner,Paul,Fall Technical Meeting of the Rubber Division,American Chemical Society,182nd,Cincinnati,OH,United States,Oct.9−11,2012 Volume3 Pages 1550−1572のとおりに90℃でシール力について試験した。
【0051】
本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドを含むO−リングのシール力のパーセント保持率は、無機フィラーを含まない同一のパーフルオロエラストマーコンパウンドと比較される。本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドを含むO−リングのシール力のパーセント保持率は、異なる無機フィラーを含む同一のパーフルオロエラストマーコンパウンドとも比較される。無機フィラーを含まないパーフルオロエラストマーコンパウンドから作製されたO−リングが対照として使用される。
【0052】
全ての比較において、0時間ではなく24時間をO−リングのベースラインのシール力として使用した。ゼロの時点ではO−リングが緩和の定常状態に達していない可能性があるため、これによりシール力の保持率がより正確に測定される。
【0053】
表1のデータは、20%圧縮下でO−リングを備えたWykeham−Farrence装置を使用して蒸留水の中に225℃で暴露された試料について得た。必要時間暴露した後、O−リングをWykeham−Farrence装置から取り出し、O−リングのシール力をPaul Tucknerの方法を使用して90℃で決定した。C1は表1のデータについての対照(225℃及び20%圧縮で24時間蒸留水に曝露)であり、無機フィラーを含まない。その後、O−リングを225℃で504時間、1008時間、及び1500時間の曝露時間水に曝露し、各時間の後にシール力を90℃で測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1中のデータは、225℃の蒸留水に504時間曝露した後、全ての実施例及び比較例でシール力が低下したことを示しており、それぞれ無機フィラーとして酸化マグネシウム及び酸化亜鉛を含むC2及びC3で最も大きいシール力の低下を示し、4N及び53Nの値であった。E1及びE2はそれぞれ168Nと155Nの最も高いシール力を保持した。1512時間後、全ての比較例が35N以下のシール力の値を示した。実施例E1及びE2のみが、225℃の蒸留水に1512時間暴露した後に40Nより大きいシール力の値を示した。これは、C1(対照)に対してシール力の保持率が最小で25%の改善率であることを表し、E1は1488時間後に17.1%のシール力のパーセント保持率を有し、C1は13.7%のシール力のパーセント保持率を有する。
【0056】
表1のデータは、E1及びE2が、225℃の蒸留水に様々な時間暴露された後に、異なる無機フィラーを含む比較例よりも優れたシール力の保持を示すことも示している。全ての実施例及び比較例は、1512時間後にシール力のパーセント保持率が有意に低下し、C2及びC3は1512時間の暴露後にシール力の保持率の最大の低下を示した。E1及びE2は、同じ期間中にそれぞれ17.1%及び17.7%の最大のシール力のパーセント保持率を示した。比較例のうち、C1は13.7%で最も優れたシール力のパーセント保持率を示した。実施例E1及びE2は、対照(C1)に対するシール力の保持率において最小で25%の改善を示す。
【0057】
これらの結果は、本明細書に記載のパーフルオロエラストマーコンパウンドが、硬化した際に、二酸化チタン又は硫酸バリウム以外の無機フィラーが無機フィラーとして使用されたか無機フィラーが使用されていないことを除いては同一のコンパウンドについてのシール力の値と比較して、1512時間まで試験した場合に、優れたシール力の保持を示すことを示している。酸化マグネシウム及び酸化亜鉛は、全てポリマー組成物で使用される典型的なフィラーの例である。しかしながら、表1のデータは、二酸化チタン又は硫酸バリウムの特定の組み合わせを特定の種類及びサイズのカーボンブラックと組み合わせて無機フィラーとして使用した場合の、パーフルオロエラストマーコンパウンドのシール力のパーセント保持率における予期しなかった改善を明確に示している。特定のカーボンブラックと組み合わされた無機フィラーである二酸化チタン及び硫酸バリウムのみが他の無機フィラーと比較して優れたシール力の保持を与えるという事実は驚くべきかつ予想外のことである。
【0058】
【表2】
【0059】
表2は、O−リングを225℃の蒸留水及び20%の圧縮に様々な時間曝露した後、高濃度の無機フィラーが本明細書に記載の硬化したパーフルオロエラストマーコンパウンドを含むO−リングのシール力の保持に及ぼした影響を示している。C4は無機フィラーを含まずカーボンブラックを含み、表2の実験の対照である。C5はカーボンブラックを含まないが50phrの硫酸バリウムを含む。E3及びE4は等しい部のカーボンブラックと無機フィラーを含む(25:25)。25phrの二酸化チタンを含むE3は、C4と比較して261%のシール力保持の改善を示す。25phrの硫酸バリウムを含むE4は、C4と比較して77%のシール力保持の改善を示す。C5は、カーボンブラックの不存在下で50phrの硫酸バリウムを使用すると、225℃の蒸留水に1176時間暴露した後に望ましいシール力保持率を有するO−リングが得られないことを示している。
【0060】
実施例及び比較例をその実験についての対照と比較することが重要であり、対照は無機フィラーを含まないことを除いては実施例の組成物と同一のパーフルオロエラストマー組成物である。つまり、全ての実施例及び比較例並びに対照は、同じ実験条件下で同時に行われた実施例及び比較例のみと比較されるべきである。シール力保持におけるパーセント改善率を決定するためには、表1の結果は表1の対照(C1)とのみ比較されるべきであり、表2の結果は表2の対照(C4)とのみ比較されるべきである。