(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項8の車両用窓ガラスを含み、JIS C8904:2011に規定するエアマス1.5の太陽光を照射したとき、車室内における波長域400nm以下での紫外線照度が0.45J・s-1・m-2以下である、車両用ガラス窓。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下は、本発明の実施形態に関する説明であって本発明を説明した対象に限定する趣旨ではない。以下では、各成分の含有率を示す%表示は、特記する場合を除きすべて質量%であり、含有率の比も質量基準で記述する。YAはCIE標準のA光源を用いて測定した可視光透過率を、Tuv380はISO9050:1990に定める紫外線透過率を、Tuv400はISO13837:2008 convention Aに定める紫外線透過率を、それぞれ意味し、これらの透過率は各々記載する厚さのガラス板における値である。TG2500は波長300〜2500nmで測定した全太陽光エネルギー透過率を意味し、%T1500は波長1500nmで測定した光線透過率を意味する。DWはCIE標準のC光源を用いて測定した主波長を意味し、PeはCIE標準のC光源を用いて測定した刺激純度を意味し、a
*及びb
*はJIS Z 8781−4:2013に規定されるCIE 1976(L
*,a
*,b
*)色空間(CIELAB)におけるクロマティクネス指数(色座標)を意味する。
【0011】
また、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの総称として、R
2OはLi
2O、Na
2O及びK
2Oの総称として使用する。さらに、本明細書において「実質的に含まれていない」は、含有率が0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満であることを示す用語として使用する。
【0012】
[母組成の各成分]
まず、本発明のガラス組成物及びガラス板の母組成の各成分について説明する。
【0013】
(SiO
2)
SiO
2はガラス骨格を形成する主成分である。ガラス組成物の耐久性のみを考慮すると、SiO
2は65%程度以上含まれていればよい。SiO
2の含有率が高すぎるとガラス原料の溶融が困難となる。このため、SiO
2の含有率は85%以下である必要があり、さらに、より低い紫外線透過率と20〜30%のYAとを両立させるためには、SiO
2の含有率は71%以下であることが好ましい。
【0014】
(B
2O
3)
B
2O
3は、必須成分ではないが、溶融助剤等として5%を限度として含まれていてよい成分である。B
2Oの含有率が高すぎると、その揮発性により製造上の問題が生じることがある。B
2O
3の好ましい含有率は、3.0%未満、特に2.0%未満である。B
2O
3は実質的に含まれていなくてもよい。
【0015】
(Al
2O
3)
Al
2O
3の含有率は0〜5%の範囲に調整される。ROの含有率が低い組成では、ガラス組成物の耐久性の低下を補う観点から、Al
2O
3は、1.0%以上、特に1.2%以上含ませることが好ましい。ただし、Al
2O
3の含有率が高すぎるとガラス原料の溶融が困難になりやすい。また、Al
2O
3は熱膨張係数を低下させる。このため、ガラス組成物を熱強化(風冷強化)する場合、Al
2O
3の含有率は3.0%以下が好ましい。
【0016】
(MgO)
MgOの含有率は0〜20%の範囲に調整される。MgOは、ガラス組成物の耐久性の向上に寄与し、失透温度及び粘度の調整に使用できる成分である。MgOの含有率が高すぎると、失透温度が上昇してフロート法による量産ができなくなることがある。具体的にはMgOの含有率は、3〜10%が好ましい。
【0017】
(CaO)
CaOの含有率は0〜20%の範囲に調整される。CaOも、MgOとはその影響の程度が相違するものの、ガラス組成物の耐久性の向上に寄与し、失透温度及び粘度の調整に使用できる成分である。CaOの含有率が低すぎるとガラス融液の粘性が高くなりすぎて融液の清澄に不都合をきたす場合がある。CaOの含有率は、5〜15%が好ましい。
【0018】
(SrO、BaO)
SrO及びBaOは、必須成分ではないが、ガラス組成物の耐久性の向上等に寄与する成分として、それぞれ1.0%を限度として、好ましくは0.5%を限度として含まれていてよい成分である。SrOとBaOの添加には、CaO等と比較して相対的に高価な原料を使用する必要がある。BaOについてはその取扱いに注意を要する。このため、SrO及びBaOは、それぞれ、実質的に含まれていなくてもよい。
【0019】
(RO)
ROの含有率(MgO、CaO、SrO及びBaOの含有率の合計)は20%以下、好ましくは15%以下である。ROの含有率の下限は、特に限定されないが、前述のMgO、CaOの好ましい効果を得る点からは、通常は5%以上、さらには10%以上である。
【0020】
さらに、SrO及びBaOを実質的に含まない、ガラス組成物としてもよい。
【0021】
(Li
2O、Na
2O、K
2O)
Li
2O、Na
2O及びK
2Oは、アルカリ金属酸化物であり、溶融促進剤としてガラス原料の溶融に役立つ成分である。Na
2Oは、製造コストの観点から使用が望ましいアルカリ金属酸化物である。Na
2Oの含有率は10〜20%の範囲に調整される。Na
2Oの含有率は10〜15%が好ましい。
K
2Oは、任意成分であり、5%を限度として、好ましくは2%を限度として、含まれていてもよい。K
2Oの含有率は、例えば0.5〜2.0%であってもよい。
また、Li
2Oも、任意成分であり、1.0%を限度として含まれていてもよい。Li
2Oは実質的に含まれていなくてもよい。
【0022】
(R
2O)
R
2Oの含有率(Li
2O、Na
2O及びK
2Oの含有率の合計)は、10〜20%の範囲に調整される。R
2Oの含有率は10〜15%の範囲が好ましい。R
2Oの含有率が高すぎるとガラス組成物の耐久性が低下する場合がある。
【0023】
(SO
3)
SO
3は、ガラスの清澄を促進する任意成分として、0.5%を限度として含まれていてもよい成分である。SO
3の含有率は0.05〜0.5%の範囲が好ましい。SO
3の含有率が高すぎると、その分解により生成したSO
2が泡としてガラス組成物に残留したり、リボイルにより泡が発生したりすることがある。SO
3の含有率は0.05〜0.25%がさらに好ましい。SO
3は、通常、ガラス原料の一部に清澄剤として硫酸塩を添加することによりガラス組成物に導入される。
【0024】
[着色成分]
つぎに、本発明のガラス組成物及びガラス板における各着色成分について説明する。以下、特に好適な実施形態として、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄含有量であるT−Fe
2O
3の含有率が2.0%以上3.0%以下であるものを実施形態Iと称し、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄含有量であるT−Fe
2O
3の含有率が1.0%以上2.0%未満であるものを実施形態IIと称する。
【0025】
(酸化鉄)
酸化鉄は、ガラス組成物中ではFe
2O
3又はFeOとして存在し、Fe
2O
3は紫外線を吸収する機能を有し、FeOは近赤外線を吸収する機能を有する。ガラス組成物においてこれらの総量をFe
2O
3に換算したT−Fe
2O
3は1.0〜3.0%の範囲に調整される。T−Fe
2O
3の含有率が高すぎると、ガラス原料を溶融する際に炎の輻射熱が溶融ガラスの上面部で著しく吸収されて窯底部付近まで十分に加熱できなくなる。実施形態Iにおいて、T−Fe
2O
3は、2.0%以上3.0%以下であり、2.1%以上3.0%以下が好ましく、2.3%以上2.9%以下がより好ましく、2.4%超2.9%以下がさらに好ましい。実施形態IIにおいて、T−Fe
2O
3は、1.0%以上2.0%未満であり、1.2%以上1.8%以下が好ましい。さらに、ガラス板におけるT−Fe
2O
3は、ガラス板1cm
2当たり2.5〜25mgの範囲に調整される。実施形態Iにおいて、ガラス板におけるT−Fe
2O
3は、ガラス板1cm
2当たり14.0mg以上25.0mg以下であることが好ましく、14.0mg以上21.0mg以下であることがより好ましく、16.0mg以上20.8mg以下であることがさらに好ましく、18.0mg以上20.8mg以下であることが特に好ましい。実施形態IIにおいて、ガラス板におけるT−Fe
2O
3は、ガラス板1cm
2当たり2.5mg以上14.0mg未満であることが好ましく、7.0mg以上13.4mg以下であることがより好ましく、8.0mg以上12.0mg以下であることがさらに好ましい。
【0026】
Fe
2O
3に換算したFeO含有率の、T−Fe
2O
3含有率に対する比(FeO比)は、5〜30%に調整される。FeO比が高すぎると、溶融したガラス原料にシリカリッチの筋やシリカスカムを生じやすくなる。一方、高いFeO比は近赤外線の吸収機能の向上に有利である。実施形態Iにおいて、FeO比は、20〜30%が好ましい。実施形態IIにおいて、FeO比は、6〜29%が好ましい。
【0027】
(TiO
2)
TiO
2は、紫外線の吸収機能を担う成分の1つであり、必須成分である。TiO
2は、FeO比が高いガラスの色調を青味がかった色から緑がかった色へと調整する色調の調整機能を有する。ただし、TiO
2の含有率が高くなるとガラス組成物が黄色味を帯びやすくなる。このため、ガラス組成物におけるTiO
2の含有率は、0.2〜2.2%であることが必要である。また、実施形態IにおけるTiO
2の含有率は、0.9〜2.2%であることが必要で、1.3〜2.1%であることが好ましく、1.5〜2.1%あることがより好ましく、1.8〜2.0%であることがさらに好ましい。実施形態IIにおけるTiO
2の含有率は、0.3〜1.8%であることが好ましく、0.4〜1.8%であることがより好ましい。さらにガラス板におけるTiO
2の含有量は、ガラス板1cm
2当たり0.5〜25mgであることが必要で、実施形態Iにおいては、ガラス板1cm
2当たり3〜25mgであることが必要で、5〜25mgであることが好ましく、8〜23mgであることがより好ましく、10〜20mgであることがさらに好ましい。また、実施形態IIにおいては、0.5〜15mgであることが好ましく、3.0〜15mgであることがより好ましく、4.0〜13mgであることがさらに好ましい。また、実施形態IIにおいては、ガラス板1cm
2当たり5.0〜15mgであることが好ましく、5.0〜14mgであることがより好ましく、5.0〜13mgであることがさらに好ましい。
【0028】
(CeO
2)
CeO
2も、紫外線の吸収機能を担いうる成分の1つであり、実施形態IIにおいては必須成分である。ただし、CeO
2の添加は原料コストの増加を招く。このため、ガラス組成物におけるCeO
2の含有率は、0.2〜2.0%であることが必要で、0.2〜1.5%であることが好ましい。さらにガラス板におけるCeO
2の含有量は、ガラス板1cm
2あたり0.5〜15mgであることが好ましく、2.0〜13mgであることがより好ましく、3.0〜12mgであることがさらに好ましい。実施形態Iにおいては、CeO
2を含まないことが好ましい。
【0029】
(T−Fe
2O
3、TiO
2及びCeO
2の含有率の合計)
ガラス組成物におけるT−Fe
2O
3、TiO
2及びCeO
2の含有率の合計(T−Fe
2O
3+TiO
2+CeO
2)は、3.0%超6.0%以下であることが必要であり、より低い紫外線透過率を達成するために、3.2〜5.5%が好ましく、3.5〜5.8%がより好ましく、4.0〜5.0%がさらに好ましい。実施形態Iにおいて、T−Fe
2O
3、TiO
2及びCeO
2の含有率の合計は、より低い紫外線透過率を達成するために、3.2〜5.5%が好ましく、3.5〜5.0%がより好ましい。
【0030】
(T−Fe
2O
3とTiO
2の含有率の合計)
実施形態Iにおいて、低い紫外線透過率を達成するために、ガラス組成物におけるT−Fe
2O
3及びTiO
2の含有率の合計は、3.2〜5.5%であることが必要であり、さらには、3.2〜5.0%であることが好ましい。
【0031】
(TiO
2とCeO
2の含有率の合計)
実施形態IIにおいて、低い紫外線透過率を達成するために、ガラス組成物におけるTiO
2及びCeO
2の含有率の合計は、1.7%以上であることが必要であり、さらには、2%以上であることが好ましい。さらにガラス板におけるTiO
2及びCeO
2の含有量の和は、ガラス板1cm
2あたり5mg以上であることが好ましく、より好ましくは10〜30mgでありさらに好ましくは13〜20mgである。
【0032】
(CoO)
CoOに換算したコバルトの酸化物(CoO)は、ガラス板の透過色調を中性色に調節するための必須成分の1つである。CoOは、Se及び/又はNiO、及びFe
2O
3と共存させることにより中性色に近い色調を得るための成分であり、また可視光透過率をコントロールする成分でもあり、ガラス組成物における含有率が質量ppmで示して50〜300ppmである必要があり、CoOの含有率が前記範囲を下回ると所望の色調が得られず、前記範囲を越えると色調は青味が強くなり過ぎ、可視光透過率も低下する。また、実施形態Iにおいて、CoOの含有率は、50〜160ppmであり、50〜155ppmが好ましく、80〜140ppmがより好ましい。実施形態IIにおいて、CoOの含有率は、150〜300ppmであり、180〜280ppmが好ましく、205〜261ppmがより好ましい。さらにガラス板におけるCoOの含有量は、ガラス板1cm
2あたり37.5〜255μgであることが好ましい。実施形態Iにおいて、CoOの含有量は、ガラス板1cm
2あたり40〜160μgであることがより好ましく、45〜140μgであることがさらに好ましい。実施形態IIにおいて、CoOの含有量は、ガラス板1cm
2あたり100〜200μgであることがより好ましく、150〜190μgであることがさらに好ましい。
【0033】
実施形態Iにおいて、T−Fe
2O
3/CoO比は、149以上であることが好ましく、149〜450であることがより好ましく、150〜350であることがさらに好ましい。実施形態IIにおいて、T−Fe
2O
3/CoO比は、40〜90であることが好ましく、45〜80であることがより好ましい。
【0034】
(NiO)
NiOは、CoOとともに可視光透過率を調整し、刺激純度を低減するための成分である、任意の成分である。そのため、実施形態I及び実施形態IIのいずれにおいても、含めてもよく、含まなくてもよい。ただし、NiOの含有率が高くなると可視光透過率が低下し、色調も緑味が強くなりすぎ好ましくない。また製品中に硫化ニッケル石を生じることもあり得る。このため、実施形態Iのガラス組成物においては、可視光透過率の低下を抑制するために、NiOを実質的に含有しないことが好ましい。ただし、50ppm以下、好ましくは30ppm以下のNiOは、可視光透過率の低下を無視できる程度であるため、含有してもよい。実施形態Iのガラス板におけるNiOの含有量は、ガラス板1cm
2当たり50μg以下であることが好ましく、30μg以下であることが好ましい。実施形態IIのガラス組成物におけるNiOの含有率は、質量ppmで示して200ppm以下であることが必要であり、50〜200ppmが好ましく、70〜180ppmがより好ましく、80〜160ppmがさらに好ましい。さらに、実施形態IIのガラス板におけるNiOの含有量は、ガラス板1cm
2あたり150μg以下であることが好ましく、50〜150μgであることがより好ましく、60〜140μgであることがさらに好ましい。
【0035】
(Se)
Seも、ガラス板の透過色調を中性色に調節するための成分であり、実施形態IIにおいては必須成分の1つである。Seは、ピンクの発色によりCoOの補色と相まって刺激純度を低減するための成分である。ただし、Seの含有率が高くなるとガラス板のYAが低下する。実施形態Iにおいては、Seの含有率は、質量ppmで示して0〜2ppmであることが好ましく、含まないことがより好ましい。実施形態IIのガラス組成物におけるSeの含有率は、質量ppmで示して8〜35ppmであることが必要であり、9〜34ppmであることが好ましい。さらに、実施形態IIにおいて、ガラス板におけるSeの含有量は、ガラス板1cm
2当たり2.5〜30μgであることが好ましく、5〜25μgであることがより好ましく、10〜20μgであることがさらに好ましい。
【0036】
(NiO/Se比)
前述のNiOとSeの含有率の比NiO/Se比は、質量比で表わして0〜15であることが必要である。この比が15より大きいと緑味が強くなりすぎる色調となるからである。この比は、前記NiOを含む実施形態では好ましくは5〜12であり、より好ましくは5.5〜11.0であり、さらに好ましくは、5.9〜9.9である。
【0037】
(その他の微量成分)
本発明によるガラス組成物は、上記各成分と共にその他の微量成分を含んでいてもよい。微量成分としては、Mo
2O
3、ZnO、SnO
2を例示できる。微量成分の合計は、5.0%以下、さらには2.0%以下、1.0%以下が特に好ましい。なお、各微量成分の含有率のより好ましい上限は、Mo
2O
3については0.01%、ZnOについては0.1%、SnO
2については1.0%である。本発明によるガラス組成物は、上記各成分及び上記各微量成分以外の成分を実質的に含まないことが好ましく、上記各成分(上記で順次説明したSiO
2からSeまでの成分)以外の成分を実質的に含まないものであってもよい。
【0038】
なお、本明細書において、ガラス組成物内において複数の価数を取りうる金属の酸化物の含有率は、鉄の酸化物を除き、本明細書に記載されている価数の酸化物に換算して算出することとする。
【0039】
[光学特性]
本明細書では、Tuv380(紫外線透過率)としてISO9050:1990に規定される紫外線透過率を採用し、Tuv400(紫外線透過率)としてISO13837:2008 convention Aに規定される紫外線透過率を採用し、YA(可視光透過率)としてCIE標準のA光源を用いてJIS R3106:1998に基づいて測定される可視光透過率を採用し、TG(日射透過率)としてJIS R3106:1998に準拠した日射透過率を採用する。
【0040】
Tuv380とTuv400とでは、各々の紫外線透過率を求めるにあたり、測定の範囲とする太陽光の紫外線の波長範囲が異なり、Tuv380は380nm以下、Tuv400では400nm以下の波長範囲で測定する。したがって、Tuv380とTuv400とでは、Tuv400の方が、より長波長域までの紫外線遮蔽性を評価できる。
【0041】
本発明の一実施形態のガラス板によれば、YAが20〜30%と中程度であって、Tuv380が1.5%以下と極めて低く、実質的に紫外線の透過を阻止できる、1.0〜3.5mmの範囲の厚さ、好ましくは1.5〜3.0mm、より好ましくは2.0〜3.0mmの範囲の厚さのガラス板が提供される。なお、本発明によるガラス組成物は、通常、フロート法に代表される量産設備により所定の厚さのガラス板に成形され、徐冷されて製造され、このガラス板は好ましくは風冷強化処理あるいは化学強化処理の強化処理が施されている。
【0042】
本発明の一実施形態のガラス板のTuv380は、1.5%以下であり、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.8%以下であって、紫外線カット特性に関し、付加的なコーティングを必要としない。Tuv380が1.0%以下であるガラス板を用いた車両や建築物の窓は、外側から照射される太陽光に含まれる紫外線の透過を実質的に阻止できる性能をもつ。具体的には、この窓は、JIS C8904:2011に規定する基準太陽光(この基準太陽光はエアマス1.5であり、波長域すべての積分照度は1kW・m
-2である)を照射したとき、車内や屋内に到達する波長400nm以下の範囲の紫外線の照度を0.45W・m
-2以下にすることができる。この照度であれば、6時間に渡ってヒトの皮膚に照射され続けた場合でも、日焼けの発生を効果的に阻止することができる。特にすべての開口部の窓にこのガラス板を用いた車両は、車両の向きや太陽方位の変化に拘わらず、紫外線の車内への到達を実質的に阻止でき、日焼けの阻止に効果的である。
【0043】
後述するように、本発明のガラス板においては、風冷強化によってTuv380は低下する傾向を示す。したがって、本発明の風冷強化したガラス板は、より効果的に紫外線の透過を阻止することができる。
【0044】
本発明の一実施形態のガラス板のTuv400は、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは2.0%以下である。したがって、本発明のガラス板は、紫外長波長域の光線遮断能にも優れている。
【0045】
本発明の一実施形態のガラス板のYAは、20〜40%の中程度であり、好ましくは20〜35%である。中程度のYAを有するガラス板を用いた車両や建築物の窓は、車内や屋内からは外部を容易に視認することができるが、外側から車内や屋内を視認することが困難であり、外側から覗かれることを防ぐことができプライバシー性が高い。このプライバシー性の高さは、車両や自動車の後方の窓、特に乗用車における後ドアの窓ガラス、後部の三角窓ガラス、リアガラスに用いて好適である。
【0046】
なお、乗用車の窓ガラスにおいては、法令の規定により部位毎にYAの下限値が規制されている。具体的には、フロントガラスや前ドアの窓ガラス・前部の三角窓の窓ガラスに対し、YAが70%以上であることが要求されている。この要求に対しては、前述の通り後ドアの窓ガラス、後部の三角窓ガラス、リアガラスに本発明の強化ガラス板を用い、前ドアの窓ガラス・前部の三角窓の窓ガラスに例えば特許文献2または3のコーティング付きガラス板を用い、フロントガラスには周知の中間膜を用いた合せガラスを用いた車両を提供することができる。
【0047】
TGは、太陽光の日射のエネルギーの透過率を示す指標である。したがってTGが低い方が、ガラス板を通過する日射のエネルギーを減らすことができ、そのガラス板を用いた車両の車内や建築物の室内の気温の上昇を抑制することができる。本発明の一形態のガラス板のTGは、好ましくは10〜45%であり、好ましくは15〜45%であり、より好ましくは20〜30%以下であるので、前述の気温の上昇の抑制に効果的である。
【0048】
[風冷強化]
風冷強化(熱強化)は、ガラス板を加熱した後、ガラス板の表面に気体を吹き付けて急冷し、その表面に圧縮応力層を形成することにより、ガラス板の強度を向上させる周知の処理である。ガラス板の加熱温度は、典型的にはそのガラス板を構成するガラス組成物の歪点以上軟化点以下である。本発明は、その別の側面から、本発明によるガラス組成物からなるガラス板を風冷強化して得た、厚さ1.0〜3.5mmの強化ガラス板を提供する。概して、本発明によるガラス組成物からなるガラス板のTuv380は、基本的に風冷強化処理によって低下する傾向を示す。強化ガラス板において、a
*の値は−15.0〜−3.0が好ましく、−14.0〜−4.0がより好ましい。b
*の値は−10.0〜30.0が好ましく、−8.0〜25.0がより好ましい。
【0049】
風冷強化の前後において、ガラス組成物のFeO比に実質的な変化がないことが確認されている。したがって、風冷強化に伴う光学特性の変化には、FeO比の変化ではなく、高温のガラス組成物における内部構造が風冷強化により固定されたことに伴って生じるFeOの吸収ピークの位置のシフトが影響していると推定される。
【0050】
特に制限されるわけでないが、強化ガラス板の表面に存在する圧縮応力の大きさは、例えば80〜140MPa、特に90〜110)MPaである。
【0051】
本発明は、第1のガラス板と、合せガラス用中間膜と、第2のガラス板を含む合せガラス板であって、第1のガラス板と第2のガラス板の少なくとも一方が上述の紫外線遮蔽ガラス板である合せガラス板を提供する。他方のガラス板は、従来公知のガラス(例えば、通常の無色のソーダ石灰ガラス)であってもよい。
【0052】
本発明は、上述の強化ガラス板又は上述の合せガラス板を含む車両用窓ガラスを提供する。車両用窓ガラスとしては、特に乗用車における後ドアの窓ガラス、後部の三角窓ガラス、リアガラスに用いて好適である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例も上記と同様、本発明の好ましい形態の例示に過ぎない。
【0054】
珪砂、苦灰石、石灰石、ソーダ灰、芒硝、炭酸カリウム、カーボン、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、セレンを、ガラスの組成が表1〜表4に示したとおりになるように調合してガラス原料バッチを得た。このバッチを、電気炉を用いて1450℃で溶融し、4時間保持した後、ステンレス板上に流し出した。こうして得たガラス板を、650℃に保持した徐冷炉内に30分間保持した後、電源を切って炉内で室温まで徐冷した。この徐冷における650〜550℃の間の冷却速度は約0.1℃/秒であった。得られた徐冷ガラス板を、所定の厚さに研磨した。
【0055】
次いで、各徐冷ガラス板に風冷強化処理を施した。風冷強化処理は、ガラス板を700℃に設定した電気炉内に180秒間保持した後、電気炉から取り出したガラス板に常温の空気を吹きつけて急冷することによって実施した。この急冷における冷却速度は、650〜550℃の温度範囲で80〜100℃/秒であった。得られた強化ガラス板には、90〜110MPaの範囲内の表面圧縮応力が印加されていた。
【0056】
各ガラス板(徐冷ガラス板、強化ガラス板)についてCIE標準のA光源を用いて測定した可視光透過率(YA)、全太陽光エネルギー透過率(TG)、ISOに規定される紫外線透過率(Tuv380及びTuv400)、CIE標準のC光源を用いて測定した主波長(DW)、刺激純度(Pe)およびL
*a
*b
*表色系の色度(a
*,b
*)を測定した。測定した物性値を表2及び表4に示す。なお、表中の含有率の合計が100%にならない場合があるのは、有効桁の相違と四捨五入の影響による。
【0057】
(組成分析)
蛍光X線分析及び化学分析法を用いて、得られた試料ガラスの組成を定量分析した。結果を表1及び表3に示す。
【0058】
まず、徐冷ガラス板についての特性を参照すると、比較例1では、CeO
2を含有しないため、厚さ4mmであってもTuv380が1.6%であり、1.0〜3.5mmの何れの厚さにおいてもTuv380≦1.5%を達成することができなかった。
【0059】
一方、実施例1〜13、20、21、及び23〜25は、2.5〜3.5mmのある厚さにおいて1.0%以下のTuv380と、20〜30%のYAを両立させることができた。また、実施例1〜13、20、21、及び23〜25では、さらに5.0%以下のTuv400もまた同時に実現できた。特に実施例6、7、23、及び25では、厚さが2.5mmであるにも拘わらず、Tuv380を0.6%以下にすることができた。また、これら実施例6、7、23、及び25では、さらにTuv400を3.0%以下にすることができた。
【0060】
実施例6、10、13は、各々厚さ2.5mm、3.5mm、2.8mmでTuv380、Tuv400ともに1.0%以下で極めて高い紫外線遮蔽能を示した。
【0061】
風冷強化処理により、実施例10〜25のすべてにおいて、YAを大きく変化させることなく徐冷ガラス板よりさらにTuv380を低下させることができ、2.5〜3.5mmのある厚さにおいて1.5%以下のTuv380を得ることができた。また、実施例1〜13、16、18、20〜25では、さらに5.0%以下のTuv400もまた同時に実現でき、特に実施例10〜13では、さらにTuv400を2.0%以下にすることができ、実施例10、12、13では、さらにTuv400を1.0%以下にすることができた。
【0062】
なお、実施例23及び25に示すガラス組成物を用いて得られる厚さ3.5mmの各ガラス板においては、何れも徐冷ガラス板でのTuv400が0.8%、風冷強化処理した強化ガラス板でのTuv400が0.7%となる。つまり、本発明の強化ガラス板は、紫外線透過率としてTuv380及びTuv400のどちらの指標に対しても、紫外線透過率1.0%以下という極めて高い紫外線遮蔽性能を実現できる。
【0063】
実施例10〜25の風冷強化処理した強化ガラス板での挙動から、実施例1〜9のガラス板を風冷強化処理した場合、YAを大きく変化させることなく、Tuv380、Tuv400を低下させることができると考えられる。特に、実施例1、3〜6、8、9は、Tuv380、Tuv400ともに1.0%以下を実現できると考えられる。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】