【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0047】
≪試験1:2−エチル−3,5−ジメチルピラジン添加による検証≫
(基準品及び試験サンプルの作製)
純水に2−イソブチル−3−メトキシピラジンを0.2ppbの濃度となるように添加し、基準品1を得た。次に、調製した基準品1に2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを0.1〜1000ppbの各濃度となるように添加し、試験サンプルを作製した。
【0048】
(2−イソブチル−3−メトキシピラジン含有量の分析)
基準品1及び試験サンプル中における2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、超純水で10倍希釈した分析対象の抽出液10mL、塩化ナトリウム3.5gをバイアル瓶(容量20mL)に入れてセプタム付きキャップにて密栓し、SPME法によりGC−MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC−MSの分析条件>
・機器 GC:6890A(G1530A)GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:5973N MSD(アジレント・テクノロジー社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:Multipurpose sampler MPS2(ゲステル社製)
・SPMEファイバー:DVB/CAR/PDMS(スペルコ社製)
・前処理条件:Incubation 50℃,10min
Extraction 50℃,30min
Desorption 5min
・カラム:DB−WAX、30m×0.25mm 0.25μm(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法:スプリットレス
・注入口温度:240℃
・キャリアガス:He(1.0mL/分)
・昇温プログラム:40℃(2分間保持)→8℃/分→240℃(10分間保持)
・MSトランスファーライン:240℃
・イオン化方法:EI
・イオン源温度:230℃
・四重極温度:150℃
・定量イオン(2−イソブチル−3−メトキシピラジン):124
・定量イオン(シクロヘキサノール):57
【0049】
(2−エチル−3,5−ジメチルピラジン含有量の分析)
基準品1及び試験サンプル中における2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量は、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC−MS/MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、分析対象である飲料100μLをバイアル瓶(容量10mL)に入れ、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC−MS/MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC−MS/MSの分析条件>
・機器 GC:Agilent 7980B GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:Agilent 7000D GC/MS Triple Quad(アジレント・テクノロジー社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:MPS Robotic Pro/DHS/TDU2/CIS4(ゲステル社製)
捕集管(吸着剤):Tenax TA
TM、Carbopack−B/Carbopack−X
・カラム:DB−WAX UI、20m×0.18mm、膜厚0.30μm(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法:スプリットレス
・キャリアガス:He(1.0mL/分)
・トランスファーライン:250℃
・昇温プログラム:40℃(3分間保持)→5℃/分→240℃(7分間保持)
・プリカーサーイオン>プロダクトイオン(CE(コリジョンエネルギー))
:2−エチル−3,5−ジメチルピラジン 135>135(5V)
:シクロヘキサノール 82>72(5V)
・イオン化方法:EI
・四重極温度:150℃
・イオン源温度:230℃
【0050】
(官能評価)
作製した基準品1及び試験サンプルについて、専門パネル6名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品1に対して、「後味の良さ」、「すっきり感」、「土っぽさ」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。なお、「後味の良さ」は「後味が良いか否か」を、「すっきり感」は「すっきりした香味か」を、「土っぽさ」は「飲みやすさを低減する土のような香味が感じられるか」をそれぞれ評価した。
【0051】
「後味の良さ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり良い
6点:良い
5点:やや良い
4点:基準品と同等
3点:やや悪い
2点:悪い
1点:かなり悪い
【0052】
「すっきり感」、「土っぽさ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0053】
かかる評価においては、基準品1の点数を基準値(4点)として評価した。
【0054】
下記表1に基準品1及び試験サンプル中の、2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度、及び官能評価結果を示す。なお、「後味の良さ」、「すっきり感」、については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「土っぽさ」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示されるとおり、いずれの実施例においても、基準品に比べて「土っぽさ」が低減された。また、実施例1−2〜1−5では、基準品に比べて「後味の良さ」及び「すっきり感」の向上も認められ、実施例1−2〜1−4では「後味の良さ」が5点以上と特に良好であった。
【0057】
≪試験2:焙煎ゴボウ抽出液を用いた検証≫
(抽出液の作製)
ゴボウを焙煎して、ゴボウの抽出液を作製した。なお、焙煎したゴボウのL*値(焙煎度)は67.7であった。上記L*値は、室温にした焙煎ゴボウを、ミルサー IFM−300(岩谷産業社製)を用いて20秒間粉砕した後に、粉砕後の試料を分光色差計 SE7700(日本電色工業社製)を用いて反射法にて測定して得られた値である。
【0058】
得られた抽出液の2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度は0.25ppbであり、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度は5.3ppbであった。
【0059】
(基準品及び試験サンプルの作製)
上記で得られた抽出液を、2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度が0.0125ppbとなるように希釈して、基準品2を作製した。なお、基準品2の2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度は0.265ppbであった。得られた基準品2に、2−イソブチル−3−メトキシピラジンを0.02ppbの濃度となるように添加して比較例2−1を、0.2ppbの濃度となるように添加して比較例2−2を作製した。更に、比較例2−1に2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを10ppbの濃度となるように添加して実施例2−1を、比較例2−2に2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを10ppbの濃度となるように添加して実施例2−2を作製した。
【0060】
(官能評価)
作製した基準品2及び試験サンプルについて、専門パネル6名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品2に対して、「後味の良さ」、「すっきり感」、「土っぽさ」、「ゴボウ茶らしさ」について比較評価することで行った。「後味の良さ」、「すっきり感」、「土っぽさ」の各評価点数は、試験1と同様の評価基準に従い、「ゴボウ茶らしさ」の評価点数は、下記の評価基準に従って、各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。なお、「ゴボウ茶らしさ」は「濃い味わいが感じられるか」を評価した。
【0061】
「ゴボウ茶らしさ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0062】
かかる評価においては、基準品2の点数を基準値(4点)として評価した。
【0063】
下記表2に基準品2及び試験サンプル中の、2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度、及び官能評価結果を示す。なお、「後味の良さ」、「すっきり感」、「ゴボウ茶らしさ」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「土っぽさ」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示されるとおり、比較例2−1では基準品2に比べて「ゴボウ茶らしさ」が向上した一方で、「土っぽさ」が強く感じられ、「後味の良さ」及び「すっきり感」も低下した。他方で、実施例2−1では比較例2−1に比べて「土っぽさ」が低減され、「すっきり感」が良好であった。
【0066】
また、比較例2−2では基準品2に比べて「ゴボウ茶らしさ」が向上した一方で、「土っぽさ」が強く感じられ、「後味の良さ」及び「すっきり感」も低下した。他方で、実施例2−2では比較例2−2に比べて「土っぽさ」が低減され、「後味の良さ」及び「すっきり感」が良好であった。