特許第6989679号(P6989679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6989679
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20211220BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20211220BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20211220BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20211220BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20211220BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/38 C
   A23L2/52
   A23F3/16
   A23L27/20 G
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-189145(P2020-189145)
(22)【出願日】2020年11月13日
【審査請求日】2020年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】高岸 知輝
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−193614(JP,A)
【文献】 特開2019−180299(JP,A)
【文献】 特開2013−176306(JP,A)
【文献】 特開平3−247239(JP,A)
【文献】 におい・かおり環境学会誌,2015年,vol.46, no.2,pp.110-120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
A23F 3/00−3/42
FSTA/CAplus/REGISTRY/AGRICOLA/
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.02〜1ppbの含有量の2−イソブチル−3−メトキシピラジンを含有する飲料であり、
2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを0.1〜1000ppbの含有量で含有する、
飲料。
【請求項2】
前記2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量が1〜100ppbである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
カフェインの含有量が10ppm以下である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
前記飲料が茶飲料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
焙煎したゴボウの抽出液、焙煎したタンポポの根の抽出液のうち、少なくとも一つを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
飲料の製造方法であって、
2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料に、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンをその含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加することを含む、
飲料の製造方法。
【請求項7】
飲料の風味を改善させる方法であって、
2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料に、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンをその含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加する、
風味改善方法。
【請求項8】
飲料の風味を改善させる風味改善剤であって、
2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを含み、
2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料中に、前記2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加して用いられる、
風味改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種飲料において、より濃い味わいに関するニーズがある。例えば、麦茶には夏場の止渇性目的でスッキリごくごく飲めるような設計が求められている一方で、止渇性を損なわずに、より濃い仕立ての設計が求められるようになってきている。
【0003】
このようなニーズに対応するべく、例えば茶飲料においては、たんぽぽの根やごぼうのような味が濃い素材を使用する方法が挙げられる。しかし、これらの素材には「2−イソブチル−3−メトキシピラジン」という「土っぽさ」のような違和感を付与する香気成分が含まれており、後味のすっきり感等を低減させてしまうという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、例えば特許文献1には、ごぼう搾汁液の土臭さを低減させるために、珪藻土やイオン交換樹脂で処理して特定の香気成分のバランスを調整する方法が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載された方法では、珪藻土やイオン交換樹脂の準備や煩雑な作業が必要であり、手間やコストといった点で容易に行うことが難しいという問題がある。したがって、より簡便に作製でき、濃い味わいを維持しつつも土っぽさのような違和感が低減され、嗜好性に優れた飲料が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−312366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、濃い味わいを維持しつつ、土っぽさ等の違和感が低減された飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定の量の2−イソブチル−3−メトキシピラジンを含有する飲料において、所定の量の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンが含有されることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
<1> 0.02〜1ppbの含有量の2−イソブチル−3−メトキシピラジンを含有する飲料であり、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを0.1〜1000ppbの含有量で含有する、飲料。
【0010】
<2> 上記2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量が1〜100ppbである、<1>に記載の飲料。
【0011】
<3> カフェインの含有量が10ppm以下である、<1>又は<2>に記載の飲料。
【0012】
<4> 上記飲料が茶飲料である、<1>〜<3>のいずれか一つに記載の飲料。
【0013】
<5> 焙煎したゴボウの抽出液、焙煎したタンポポの根の抽出液のうち、少なくとも一つを含む、<1>〜<4>のいずれか一つに記載の飲料。
【0014】
<6> 飲料の製造方法であって、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料に、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンをその含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加することを含む、飲料の製造方法。
【0015】
<7> 飲料の風味を改善させる方法であって、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料に、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンをその含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加する、風味改善方法。
【0016】
<8> 飲料の風味を改善させる風味改善剤であって、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを含み、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料中に、前記2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加して用いられる、風味改善剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、濃い味わいを維持しつつ、土っぽさ等の違和感が低減された飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0019】
<1.飲料>
飲料は、0.02〜1ppbの含有量の2−イソブチル−3−メトキシピラジンを含有する飲料であり、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを0.1〜1000ppbの含有量で含有する。このような飲料であることにより、濃い味わいを維持しつつも、土っぽさ等の違和感が低減された飲料となる。
【0020】
また、本発明においては、より濃い仕立ての飲料設計において2−イソブチル−3−メトキシピラジンを含む素材を含有させた場合でも、特定の量の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを含有させることにより、その2−エチル−3,5−ジメチルピラジンが、2−イソブチル−3−メトキシピラジンに起因する異風味を有効にマスクすることができる。したがって、飲料を濃い仕立てとするための素材の設定度合いが拡がり、その素材の含有割合を増大させることもできる。
【0021】
なお、本明細書において、違和感の一例としている「土っぽさ」とは、「土臭さを感じさせる異風味」のことを意味する。
【0022】
飲料の種類は特に限定されるものではなく、2−イソブチル−3−メトキシピラジンを含む素材の添加が行われる飲料や、2−イソブチル−3−メトキシピラジンが含まれた原料から製造される飲料等が挙げられる。このような飲料の具体例としては、茶飲料、ココア飲料、コーヒー飲料等が挙げられる。中でも、本発明の効果が奏されやすいという観点から、飲料は茶飲料であることが好ましい。
【0023】
飲料が茶飲料である場合、飲料に含まれる抽出物の由来となる植物の品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法は限定されない。植物の種類も特に限定されず、例えば、ハトムギ、大麦、玄米、ハブ茶、黒豆、トウモロコシ、大豆、小豆、芋、びわの葉、チャの葉、昆布、熊笹、ごま、柿の葉、アマチャヅル、桑の葉、霊芝、クコ、みかんの皮、杜仲葉、シソの葉、ドクダミ、オオバコ、ギムネマ、ルイボス、ラフマ、タンポポ、ペパーミント、モロヘイヤ、イチョウ、松葉、蓮、オリーブ、大麦若葉、カワラケツメイ、仙草、明日葉、よもぎ、月見草等を用いることができる。これらの植物のうち、ハトムギ、大麦、玄米、ハブ茶、トウモロコシ、小豆、びわの葉、チャの葉、昆布、みかんの皮、杜仲葉、シソの葉、ドクダミ、ルイボス、カワラケツメイからなる群から選択される一種以上を用いることがより好ましく、ハトムギ、大麦、玄米、ハブ茶、トウモロコシからなる群から選択される一種以上を用いることが更に好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0024】
飲料が植物の抽出液を含むものである場合、ある1種の植物を抽出して得られる抽出物を含む液体だけでなく、その抽出物に他の植物の抽出物を混合して得られる液体、あるいはこれらの液体に添加物を加えて得られる液体、又はこれらの液体を乾燥したものを分散させてなる液体等を含む。
【0025】
飲料は、濃い味わいとする観点から、焙煎したゴボウの抽出液、焙煎したタンポポの根の抽出液のうち、少なくとも一つを含むものであることが好ましい。
【0026】
[2−イソブチル−3−メトキシピラジン]
飲料には2−イソブチル−3−メトキシピラジンが含まれる。飲料中の2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量は0.02〜1ppbの範囲である。飲料の濃い味わいを達成する観点から、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量は0.03ppb以上であってもよく、0.04ppb以上であってもよく、0.05ppb以上であってもよい。
【0027】
他方で、土っぽさ等の違和感が過度にならないようにする観点から、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量の上限は、0.8ppb以下であってもよく、0.4ppb以下であってもよく、0.1ppb以下であってもよい。
【0028】
飲料中の2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量は、添加された素材に含まれる2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量や、原料中の2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量を含めて調整する。
【0029】
飲料中の2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いて測定することができる。GC−MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。また、各原料中における濃度が把握できている場合には計算することもできる。
【0030】
[2−エチル−3,5−ジメチルピラジン]
飲料には2−エチル−3,5−ジメチルピラジンが含まれる。2−エチル−3,5−ジメチルピラジンとしては、特に限定されないが、化合物の市販品を用いて配合したり、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンが含まれる天然物やその抽出物等を配合することができる。
【0031】
飲料中の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量は0.1〜1000ppbの範囲である。飲料中の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量をこのような範囲に設定することで、2−イソブチル−3−メトキシピラジンが含まれる飲料における土っぽさ等の違和感を低減させることができる。土っぽさ等の違和感をより低減させる観点から、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量は1ppb以上であることが好ましく、5ppb以上であることがより好ましく、10ppb以上であることが更に好ましい。
【0032】
他方で、後味の良さやすっきり感を良好に保つという観点から、飲料中の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量は100ppb以下であってもよく、50ppb以下であってもよく、20ppb以下であってもよい。
【0033】
飲料中の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量は、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの化合物の配合量により調整できる。また、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンが含まれる穀物等の抽出物が含まれる飲料では、その抽出物に含まれる2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量を含めて、その含有量を調整する。
【0034】
飲料中の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量は、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC−MS/MS)を用いて測定することができる。GC−MS/MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。また、各原料中における濃度が把握できている場合には計算することもできる。
【0035】
[カフェイン]
飲料中のカフェインの含有量は、特に限定されないが、カフェインによる苦味が土っぽさ等の違和感を増強させることがある。したがって、カフェインによる苦味を低減させる観点から、飲料中のカフェインの含有量は10ppm以下であることが好ましく、7ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることが更に好ましい。
【0036】
飲料中のカフェインの含有量は、高速液体クロマトグラフィ法(HPLC法)によって測定することができる。
【0037】
[その他の成分]
飲料においては、その効果を阻害しない範囲で、一般的な飲料に通常用いられる他の原料や添加剤を適宜配合できる。なお、配合量は目的とする効果に応じて適宜調整できる。具体的には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
[容器]
飲料においては、容器に充填することで容器詰飲料とすることができる。容器としては、飲料業界で公知の密封容器であればよく、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定できる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体、又はこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。特に、透明(半透明も含む)容器が好ましい。透明容器は全体が透明であっても、一部が透明であってもよい。
【0039】
<2.飲料の製造方法>
飲料は、飲料の製造において採用される任意の条件や方法を用いて製造できる。例えば、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料に、含有量が0.1〜1000ppbとなるように2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを添加し、更にその他必要に応じて加えられる成分を添加するなどして飲料を調製する。
【0040】
飲料中の2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量は、添加された素材に含まれる2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量や、原料中の2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量を含めて、任意の適当な方法により調整すればよい。また、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを添加する方法は、常法に従えばよい。
【0041】
飲料の製造においては、例えば、準備されたそれぞれ所定量の成分を含有する抽出液等及び所定量の2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを、順次又は同時に添加し、撹拌等により混合する方法が挙げられる。各成分の混合順序等については、特に限定されない。また、複数の植物を予め混合して抽出処理を行って抽出液を得た後に、得られた抽出液に2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを所定濃度となるように添加する方法も挙げられる。2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを添加するにあたっては、香料(化学合成された化合物等)として添加する方法、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを含む食品素材を添加する方法等が挙げられる。
【0042】
製造された飲料は、容器に充填して容器詰飲料とすることができ、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0043】
<3.風味改善方法>
上記のとおり、本発明によれば、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料に、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンをその含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加することで、飲料の土っぽさ等の違和感が低減され、風味を改善させることができる。
【0044】
<4.風味改善剤>
飲料の風味を改善させる風味改善剤は、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを含むものである。この風味改善剤は、2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量が0.02〜1ppbである飲料における2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量が0.1〜1000ppbとなるように添加して用いられる。
【0045】
風味改善剤は、本分野において採用される任意の方法や適当な改良を加えた方法によって製造することができる。また、風味改善剤に2−エチル−3,5−ジメチルピラジン以外の成分が含まれる場合、その種類及び含量は、得ようとする効果に応じて適宜設計できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0047】
≪試験1:2−エチル−3,5−ジメチルピラジン添加による検証≫
(基準品及び試験サンプルの作製)
純水に2−イソブチル−3−メトキシピラジンを0.2ppbの濃度となるように添加し、基準品1を得た。次に、調製した基準品1に2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを0.1〜1000ppbの各濃度となるように添加し、試験サンプルを作製した。
【0048】
(2−イソブチル−3−メトキシピラジン含有量の分析)
基準品1及び試験サンプル中における2−イソブチル−3−メトキシピラジンの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、超純水で10倍希釈した分析対象の抽出液10mL、塩化ナトリウム3.5gをバイアル瓶(容量20mL)に入れてセプタム付きキャップにて密栓し、SPME法によりGC−MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC−MSの分析条件>
・機器 GC:6890A(G1530A)GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:5973N MSD(アジレント・テクノロジー社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:Multipurpose sampler MPS2(ゲステル社製)
・SPMEファイバー:DVB/CAR/PDMS(スペルコ社製)
・前処理条件:Incubation 50℃,10min
Extraction 50℃,30min
Desorption 5min
・カラム:DB−WAX、30m×0.25mm 0.25μm(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法:スプリットレス
・注入口温度:240℃
・キャリアガス:He(1.0mL/分)
・昇温プログラム:40℃(2分間保持)→8℃/分→240℃(10分間保持)
・MSトランスファーライン:240℃
・イオン化方法:EI
・イオン源温度:230℃
・四重極温度:150℃
・定量イオン(2−イソブチル−3−メトキシピラジン):124
・定量イオン(シクロヘキサノール):57
【0049】
(2−エチル−3,5−ジメチルピラジン含有量の分析)
基準品1及び試験サンプル中における2−エチル−3,5−ジメチルピラジンの含有量は、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC−MS/MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、分析対象である飲料100μLをバイアル瓶(容量10mL)に入れ、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC−MS/MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC−MS/MSの分析条件>
・機器 GC:Agilent 7980B GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:Agilent 7000D GC/MS Triple Quad(アジレント・テクノロジー社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:MPS Robotic Pro/DHS/TDU2/CIS4(ゲステル社製)
捕集管(吸着剤):Tenax TATM、Carbopack−B/Carbopack−X
・カラム:DB−WAX UI、20m×0.18mm、膜厚0.30μm(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法:スプリットレス
・キャリアガス:He(1.0mL/分)
・トランスファーライン:250℃
・昇温プログラム:40℃(3分間保持)→5℃/分→240℃(7分間保持)
・プリカーサーイオン>プロダクトイオン(CE(コリジョンエネルギー))
:2−エチル−3,5−ジメチルピラジン 135>135(5V)
:シクロヘキサノール 82>72(5V)
・イオン化方法:EI
・四重極温度:150℃
・イオン源温度:230℃
【0050】
(官能評価)
作製した基準品1及び試験サンプルについて、専門パネル6名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品1に対して、「後味の良さ」、「すっきり感」、「土っぽさ」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。なお、「後味の良さ」は「後味が良いか否か」を、「すっきり感」は「すっきりした香味か」を、「土っぽさ」は「飲みやすさを低減する土のような香味が感じられるか」をそれぞれ評価した。
【0051】
「後味の良さ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり良い
6点:良い
5点:やや良い
4点:基準品と同等
3点:やや悪い
2点:悪い
1点:かなり悪い
【0052】
「すっきり感」、「土っぽさ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0053】
かかる評価においては、基準品1の点数を基準値(4点)として評価した。
【0054】
下記表1に基準品1及び試験サンプル中の、2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度、及び官能評価結果を示す。なお、「後味の良さ」、「すっきり感」、については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「土っぽさ」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示されるとおり、いずれの実施例においても、基準品に比べて「土っぽさ」が低減された。また、実施例1−2〜1−5では、基準品に比べて「後味の良さ」及び「すっきり感」の向上も認められ、実施例1−2〜1−4では「後味の良さ」が5点以上と特に良好であった。
【0057】
≪試験2:焙煎ゴボウ抽出液を用いた検証≫
(抽出液の作製)
ゴボウを焙煎して、ゴボウの抽出液を作製した。なお、焙煎したゴボウのL*値(焙煎度)は67.7であった。上記L*値は、室温にした焙煎ゴボウを、ミルサー IFM−300(岩谷産業社製)を用いて20秒間粉砕した後に、粉砕後の試料を分光色差計 SE7700(日本電色工業社製)を用いて反射法にて測定して得られた値である。
【0058】
得られた抽出液の2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度は0.25ppbであり、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度は5.3ppbであった。
【0059】
(基準品及び試験サンプルの作製)
上記で得られた抽出液を、2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度が0.0125ppbとなるように希釈して、基準品2を作製した。なお、基準品2の2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度は0.265ppbであった。得られた基準品2に、2−イソブチル−3−メトキシピラジンを0.02ppbの濃度となるように添加して比較例2−1を、0.2ppbの濃度となるように添加して比較例2−2を作製した。更に、比較例2−1に2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを10ppbの濃度となるように添加して実施例2−1を、比較例2−2に2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを10ppbの濃度となるように添加して実施例2−2を作製した。
【0060】
(官能評価)
作製した基準品2及び試験サンプルについて、専門パネル6名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品2に対して、「後味の良さ」、「すっきり感」、「土っぽさ」、「ゴボウ茶らしさ」について比較評価することで行った。「後味の良さ」、「すっきり感」、「土っぽさ」の各評価点数は、試験1と同様の評価基準に従い、「ゴボウ茶らしさ」の評価点数は、下記の評価基準に従って、各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。なお、「ゴボウ茶らしさ」は「濃い味わいが感じられるか」を評価した。
【0061】
「ゴボウ茶らしさ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0062】
かかる評価においては、基準品2の点数を基準値(4点)として評価した。
【0063】
下記表2に基準品2及び試験サンプル中の、2−イソブチル−3−メトキシピラジン濃度、2−エチル−3,5−ジメチルピラジン濃度、及び官能評価結果を示す。なお、「後味の良さ」、「すっきり感」、「ゴボウ茶らしさ」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「土っぽさ」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。
【0064】
【表2】
【0065】
表2に示されるとおり、比較例2−1では基準品2に比べて「ゴボウ茶らしさ」が向上した一方で、「土っぽさ」が強く感じられ、「後味の良さ」及び「すっきり感」も低下した。他方で、実施例2−1では比較例2−1に比べて「土っぽさ」が低減され、「すっきり感」が良好であった。
【0066】
また、比較例2−2では基準品2に比べて「ゴボウ茶らしさ」が向上した一方で、「土っぽさ」が強く感じられ、「後味の良さ」及び「すっきり感」も低下した。他方で、実施例2−2では比較例2−2に比べて「土っぽさ」が低減され、「後味の良さ」及び「すっきり感」が良好であった。
【要約】
【課題】濃い味わいを維持しつつ、土っぽさ等の違和感が低減された飲料を提供すること。
【解決手段】飲料は、0.02〜1ppbの含有量の2−イソブチル−3−メトキシピラジンを含有する飲料であり、2−エチル−3,5−ジメチルピラジンを0.1〜1000ppbの含有量で含有する。飲料のカフェインの含有量は10ppm以下であってもよい。飲料は茶飲料であってもよい。飲料は焙煎したゴボウの抽出液、焙煎したタンポポの根の抽出液のうち、少なくとも一つを含んでいてもよい。
【選択図】なし