(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
運搬対象物を上面に支持し、前記運搬対象物を搬送する搬送路上に配置される基部と、 前記基部の上面に設けられ、前記運搬対象物が載置されるとともに、載置された前記運搬対象物が操作されることで前記運搬対象物が摺動可能に構成された第1摺動部材と、
前記基部の下面に設けられ、前記搬送路上を摺動可能に構成された第2摺動部材と、
を備え、
前記第2摺動部材は、下面及び側面の稜部に平面又は曲面で構成される面取り部を有する、運搬装置。
前記基部は、底面に前記第2摺動部材が固定される基板と、上面に前記第1摺動部材が固定されるとともに、一部が開口して構成された、前記基板上に固定された支持部材と、を備える、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の運搬装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る運搬装置1について
図1乃至
図7を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る運搬装置1の構成を分解して示す平面図、
図2は、運搬装置1の構成を示す側面図、
図3は、運搬装置1の構成であって、運搬装置1を用いた運搬対象物100の運搬の一例を示す説明図である。
図4は、運搬装置1を用いた電気盤100の設置方法の一例を示す流れ図、
図5は、運搬装置1を用いた電気盤100の設置方法の一例の流れを模式的に示す説明図である。
図6及び
図7は、従来の電気盤100の設置方法の一例であって、一連の流れを模式的に示す説明図である。なお、各図において、説明の便宜上、適宜構成を省略して示す。
【0010】
図1、
図3及び
図5に示すように、運搬装置1は、作業者が操作することで、運搬対象物100の搬入位置から建造物内の運搬対象物100を配置する基礎台110までの搬送路120上で、運搬対象物100を運搬するために用いられる装置である。
【0011】
例えば、運搬装置1は、運搬対象物100である電気設備に用いられる受変電盤、制御盤及び配電盤等の電気盤100を、建造物の電気室等に設置された基礎台110まで運搬し、そして、基礎台110に電気盤100を配置することに用いられる。
【0012】
ここで、電気盤100は、基礎台110上に立設されるいわゆる自立型のキャビネットに、各種電気部品が配置されたものである。基礎台110は、チャンネルベースとも呼ばれ、例えば、C形鋼等により構成され、電気室の床面から所定の高さに延びる、電気盤100が固定される架台である。また、搬送路120は、例えば、電気盤100を搬入する位置から基礎台110までの経路であって、建造物の床面か、又は、床面に設けられたブルーベニヤ等の養生シートにより構成される。
【0013】
図1乃至
図3に示すように、運搬装置1は、本体2と、本体2に設けられた操作部材3と、を備えている。
【0014】
本体2は、基部11と、基部11の上面に設けられた第1摺動部材12と、基部11の下面に設けられた第2摺動部材13と、第1摺動部材12上に配置され、電気盤100を固定する固定部材14と、固定部材14及び電気盤100を基部11に固定する締結部材15と、を備えている。
【0015】
基部11は、例えば、電気盤100の底面形状よりも大きい矩形状に構成される。換言すると、基部11の直交する二方向の幅は、電気盤100の直交する二方向のそれぞれの幅よりも大きく設定される。基部11は、上面及び下面が平面状に構成される。基部11は、上面及び下面の面方向が、運搬装置1を搬送路120に配置したときに、搬送路120の上面に沿って構成される。基部11は、上面の一部に複数の開口11aを有する。
【0016】
基部11は、基板21と、基板21上に設けられた支持部材22と、を備えている。基板21は、矩形平板状に構成される。具体例として、基板21は、上面視で略正方形の平板状に構成される。また、基板21は、外周縁に面方向に直交する方向に立設する壁部21aを有する。基板21は、底面に第1摺動部材12が固定され、上面に支持部材22が固定される。
【0017】
支持部材22は、例えば、断面がコの字状に構成され、基板21に取り付けるためのフランジが設けられた複数の鋼板を組み合わせることで構成される。支持部材22は、例えば、上面視の形状が井型となる形状に構成される。このような形状に支持部材22が構成されることで、基板21により底部が構成された複数の開口11aが、基部11に構成される。
【0018】
支持部材22は、例えば、基板21上に溶接により構成される。支持部材22は、締結部材15が締結されるネジ孔22aを上面部に複数有する。なお、ネジ孔22aは、支持部材22を構成する鋼板に直接設けられるか、又は、鋼板に孔部が設けられ、支持部材22の底面にナット等が固定されることで設けられる。なお、複数のネジ孔22aは、支持部材22の所定の位置に配置される。
【0019】
ここで、複数のネジ孔22aが設けられる所定の位置とは、固定部材14及び電気盤100等を締結部材15で固定するために締結部材15が配置される位置である。当該所定の位置は、運搬装置1の形状及び運搬する電気盤100の形状等によって適宜設定される。
【0020】
第1摺動部材12は、支持部材22の上面の形状と同形状、且つ、シート状に構成される。第1摺動部材12は、支持部材22の上面に固定される。第1摺動部材12は、上面に載置された電気盤100を引っ張ったとき、又は、押圧したときに、電気盤100が上面を摺動可能な摩擦係数を有する材料により構成される。換言すると、第1摺動部材12は、基部11上を電気盤100が滑走するための滑走部材を構成する。
【0021】
第1摺動部材12は、当該摩擦係数が、第1摺動部材12を構成する材料により得られる構成で良い。または、第1摺動部材12は、当該摩擦係数が第1摺動部材12の形状により得られる構成でも良い。さらに、第1摺動部材12は、第1摺動部材12の材料及び形状の複合により得られる構成であっても良い。例えば、第1摺動部材12は、スライダーボード(株式会社ダイサン製)が用いられる。また、第1摺動部材12は、支持部材22の複数のネジ孔22aにそれぞれ対向する部位に設けられ、ネジ孔22aの内径以上の内径に構成された孔部12aを有する。
【0022】
第2摺動部材13は、基板21の底面の形状と同形状又は若干小さい形状、且つ、シート状に構成される。第2摺動部材13は、基板21の底面に固定される。第2摺動部材13は、基板21を引っ張ったとき、又は、押圧したときに、電気盤100を支持する本体2が搬送路120上を移動可能に、搬送路120の上面と摺動可能な摩擦係数を有する材料により構成される。換言すると、第2摺動部材13は、基部11が搬送路120を滑走するための滑走部材を構成する。
【0023】
第2摺動部材13は、第1摺動部材12と同様に、当該摩擦係数が、第2摺動部材13を構成する材料により得られる構成で良く、また第2摺動部材13の形状により得られる構成でも良く、これらの複合により得られる構成であって良い。例えば、第2摺動部材13は、スライダーボード(株式会社ダイサン製)が用いられる。また、第2摺動部材13は、外縁である下面及び側面の稜部が、平面又は曲面で構成される面取り部を有していることが好ましい。
【0024】
固定部材14は、支持部材22上に設けられた第1摺動部材12と当接する下面、及び、下面と直交する方向に延びる電気盤100の側面と当接する側面を含む形状に構成される。固定部材14は、締結部材15が挿通される孔部14aを有する。
【0025】
固定部材14は、例えば、側面視でL字状に構成される部材である。具体例として、固定部材14は、L字状に構成された鋼板により構成される。例えば、このような、固定部材14は、L字曲げにより構成された鋼板、又は、山形鋼により構成される。固定部材14は、例えば、電気盤100の対向する一対の側面を当接するように、
図1及び
図3に示すように一対設けられる。
【0026】
締結部材15は、例えば六角ボルトである。締結部材15は、固定部材14の孔部14a、第1摺動部材12の孔部12aに挿入されるとともに、支持部材22のネジ孔22aに締結される。
【0027】
このような本体2は、第1摺動部材12の上面に載置された電気盤100を摺動させることで、基礎台110上に配置可能な形状に構成される。即ち、本体2は、搬送路120に配置したときに、第1摺動部材12の上面の高さ位置が、基礎台110の上面の高さ位置と同一か、又は、基礎台110の上面よりも若干高い位置に構成される。
【0028】
より具体的に説明すると、本体2は、搬送路120が床面であるときは、本体2の厚さである基部11、第1摺動部材12及び第2摺動部材13の厚さの和が、基礎台110の床面から上面までの高さと同一又は当該高さより若干大きくなるように、基部11、第1摺動部材12及び第2摺動部材13の厚さが設定される。
【0029】
また、本体2は、搬送路120が、床面上に設けられた養生シートであるときは、養生シート、基部11、第1摺動部材12及び第2摺動部材13の厚さの和が、基礎台110の床面から上面までの高さと同一又は当該高さより若干大きくなるように、基部11、第1摺動部材12及び第2摺動部材13の厚さが設定される。即ち、本体2の厚さは、本体2の上面から基礎台110の上面へ電気盤100が移動するときに、本体2の上面から基礎台110の上面へ乗り上げることなく、且つ、本体2の上面から基礎台110の上面へ乗り下がり、電気盤100が前傾姿勢となることで電気盤100の移動が阻害されることがない厚さに設定される。
【0030】
操作部材3は、作業者が本体2を引っ張り又は押圧によって搬送路120上を移動させるために用いられるハンドル等である。操作部材3は、基部11に固定された取付部材41と、取付部材41に着脱可能に構成された把持部材42と、を備える。
【0031】
取付部材41は、例えば、基板21の外周縁側であって、且つ、開口11aに位置する基板21上に固定される。取付部材41は、把持部材42を着脱可能に構成される。例えば、取付部材41は、基板21の4箇所に設けられる。
【0032】
把持部材42は、作業者が把持し、引っ張ること、又は、押圧することで操作する部材である。把持部材42は、例えば、金属材料で構成されたハンドルや、ロープ等の、引っ張ることに適した部材である。
【0033】
次に、このように構成された運搬装置1を用いた電気設備を製造する工程の一部である、電気盤100の設置方法について、
図4の流れ図及び
図5の説明図を用いて説明する。なお、ここで、本実施形態の運搬装置1を用いた電気盤100の設置方法は、電気設備を電気室等に構築するに際し、電気室を有する建造物に電気盤100を搬入し、その後、搬入場所から電気室の基礎台110まで電気盤100を運搬することを含む。また、以下の各工程は、1人又は複数人の作業者によって行われる。
【0034】
先ず、建造物へ電気盤100を搬入する搬入場所に本体2を設置する。次いで、トラックの荷台等にある電気盤100をクレーン200等により吊り下げて、電気盤100を搬入場所に設置した本体2の上面に載置する(ステップST1)。このとき、電気盤100の底面に設けられた孔部が支持部材22のネジ孔22aに位置するように、電気盤100の位置合わせを行う。
【0035】
次に、電気盤100を本体2に固定する(ステップST2)。具体例として、締結部材15をネジ孔22aに締結することにより、支持部材22の上面に電気盤100を固定する。次に、固定部材14により電気盤100を固定する。具体的には、支持部材22の上面に固定部材14を配置する。次いで、固定部材14の側面が電気盤100の側面を当接させ、固定部材14を支持部材22に固定する。これにより、固定部材14及び締結部材15によって電気盤100が本体2に固定される。
【0036】
次いで、取付部材41に把持部材42を取り付けて操作部材3を操作することで、本体2を搬送路120に沿って移動させ、電気盤100を基礎台110に隣接する位置まで運搬する(ステップST3)。例えば、操作部材3の操作は、引っ張りや押圧により行われる。また、操作部材3の作業者による操作に加えて、他の作業者による電気盤100の押圧を合わせて行っても良い。
【0037】
基礎台110まで本体2を移動させたら、本体2に固定されている電気盤100の固定を解除する(ステップST4)。例えば、先ず、固定部材14及び把持部材42を支持部材22から取り外して作業スペースを確保し、次いで電気盤100を支持部材22に固定している締結部材15を取り外す。これにより、電気盤100が支持部材22上に載置された状態となる。
【0038】
次いで、電気盤100を操作して、基礎台110上に電気盤100を移動させる(ステップST5)。例えば、基礎台110上で電気盤100を移動させる場合には、作業者は、電気盤100の横及び後ろから電気盤100を操作する。
【0039】
次いで、基礎台110上に載置された電気盤100を、締結部材15等により基礎台110上に固定する(ステップST6)。これらの工程により、電気盤100の運搬及び設置が完了する。これらの工程を電気設備に用いる全ての電気盤100で繰り返し、その後、配置した電気盤100の電気的な接続や設定を行うことで、電気設備が構築される。
【0040】
このように構成された運搬装置1によれば、電気盤100を基礎台110に設置するに際し、作業工程を削減することが可能となる。この点について、
図6及び
図7に示す従来の電気盤100の設置方法を用いて説明する。なお、
図6及び
図7は、従来の電気盤100の運搬における作業工程の一連の流れを示す図である。
【0041】
図6及び
図7に示すように、従来の電気盤100の設置方法においては、先ず、建造物へ電気盤100を搬入する搬入場所に電気盤100を仮置きする仮置材300を設置する(ステップST11)。次いで、トラックの荷台からクレーン200等により吊り下げた電気盤100を仮置材300へ載置する(ステップST12)。
【0042】
次いで、ハンドリフト301を電気盤100の下へ挿入し(ステップST13)、ハンドリフト301で電気盤100をリフトアップする(ステップST14)。次いで、仮置材300を除去し、ハンドリフト301をリフトダウンし、ハンドリフト301を操作して(ステップST15)、電気盤100を基礎台110に隣接する位置まで運搬する(ステップST16)。次いで、ハンドリフト301をリフトアップし(ステップST17)、ハンドリフト301の下に仮置材300を配置する(ステップST18)。次いで、ハンドリフト301をリフトダウンして電気盤100を仮置材300に載置する(ステップST19)。
【0043】
次いで、電気盤100をジャッキ302によりジャッキアップし(ステップST20)、仮置材300を、基礎台110と同じ高さの支持材303に置き換える(ステップST21)。次いで、支持材303上に複数のコロ304を配置し(ステップST22)、ジャッキ302を操作して電気盤100をジャッキダウンする(ステップST23)。これにより、電気盤100が複数のコロ304上に配置される。次いで、電気盤100を押圧して基礎台110へ移動させる(ステップST24)。次いで、バール305によって電気盤100を傾斜させて、基礎台110及び電気盤100の間に残るコロ304を除去する(ステップST25)。次いで、基礎台110上に載置された電気盤100を、締結部材等により基礎台110上に固定する(ステップST26)。これらの工程により、電気盤100の運搬及び設置が完了する。このように、従来の製造方法によれば、上述の工程を電気設備に用いる電気盤100毎に繰り返し行い、その後、電気的な接続を行うことで、電気設備が構築される。
【0044】
このため、従来の製造方法においては、作業工程が多くなる。また、電気盤100を運搬する作業者に加えて、各工程において必要な治工具を準備する作業者も必要となることから、人件費もかかる。また、運搬及び設置において常時複数の人手が必要ではなく、次作業の準備等を行う場合に人手が必要となる。このため、上述の工程において、荷卸し待ちが生じることや、治工具を準備する作業者が次工程まで待機する必要が生じること等、作業者が待機する時間が生じる虞がある。
【0045】
しかしながら、本実施形態の運搬装置1によれば、本体2に電気盤100及び操作部材3を固定し、本体2を搬送路120に沿って摺動させ、基礎台110に隣接する位置で電気盤100の固定を解除し、電気盤100を基礎台110へ移動させるだけでよい。このため、運搬装置1を用いることで、作業工程を大幅に低減するとともに、必要な人手を削減できる。即ち、電気盤100を基礎台110へ設置する作業において、工程の削減に加えて、作業量である工数の低減が可能となる。
【0046】
また、運搬装置1は、搬送路120に設置したときに、摺動だけで電気盤100を本体2上から基礎台110へ移動させることが可能に、第1摺動部材12の上面の高さ位置が設定される。このため、容易に電気盤100を基礎台110に載置することができる。また、電気盤100は、搬入場所で本体2に載置された後は、水平方向に移動するだけである。
【0047】
このため、運搬時に電気盤100に衝撃が印加されることを極力防止できる。結果、電気盤100の運搬時に、電気盤100が衝撃により損傷することを防止できる。また、運搬時はボルトの着脱、並びに、本体2及び電気盤100の水平方向の操作が主となることから、作業に高い熟練度を要さず、運搬装置1は、作業が容易となる。
【0048】
また、本体2は、車輪を有さず、且つ、電気盤100が摺動によって基礎台110に移動可能な高さでよいことから、運搬装置1は小型であり、そして、移動時に小回りがきくため、作業性が良い。また、把持部材42を取り付ける取付部材41を複数箇所に設けることで、本体2を回転させることなく、本体2の移動方向を変更することが可能となり、高い操作性を得られる。また、基部11の直交する二方向の幅は、電気盤100の直交する二方向の幅よりも大きいことから、電気盤100を安定して保持することが可能となる。
【0049】
また、本体2は、底面の第2摺動部材13を矩形の平面状とすることで、設置面積が広くなることから、電気盤100の荷重を均等に分散させることが可能となる。結果、搬送路120への負荷を低減できる。また、荷重を均等に分散させることが可能であるため、養生シートを搬送路120に用いる場合においては、養生シートの強度が車輪に比べて低い強度でよく、養生シートの簡素化が可能となる。
【0050】
また、本体2は、支持部材22及び第1摺動部材12に開口11aを設ける構成とすることで、取付部材41を配置するスペースを確保できる。加えて、本体2は、電気盤100の底面と接触する面積を低減できる。このような構成とすることで、電気盤100が第1摺動部材12上を摺動するために必要な電気盤100を操作する力を低減できることから、運搬装置1は、高い作業性を有する。
【0051】
また、運搬装置1は、締結部材15を介して電気盤100を支持部材22に固定する構成に加えて、固定部材14を介して電気盤100を固定する。これにより、電気盤100を本体2に強固に固定することができることから、運搬時に電気盤100が転倒するリスクを低減できる。
【0052】
さらに、本体2は、広い面で搬送路120に接地されることから、安定して搬送路120上に配置される。また、運搬作業は、本体2に電気盤100を載置し、そして本体2に電気盤100を固定した後は、運搬装置1を用いた搬送となる。即ち、従前の方法に比べて、ジャッキアップやジャッキダウンの作業や、コロ304上を移動させる工程等が削減できる。このため、煩雑な作業を要さず、作業効率の向上及び安全性の向上が可能となる。
【0053】
具体的に説明すると、
図6及び
図7に示す従来の電気盤100の設置方法においては、ハンドリフト301によるリフトアップやリフトダウンを行うこと、コロ304を設置するためにジャッキ302を用いて電気盤100をジャッキアップやジャッキダウンを行うこと、コロ304を除去するためにバール305を用いて電気盤100を傾斜させること等が行われる。しかしながら、このような電気盤100を上下方向に移動させる工程や傾斜させる作業は、工程及び工数が増加するとともに、手足や指等の挟み込みが生じるリスクや電気盤100が転倒するリスクが生じる。また、コロ304を用いて電気盤を移動させると、コロ304の方向や位置が所望の位置でない場合にコロ304から電気盤100が落下し、手足や指等の挟み込みや電気盤100の転倒が生じるリスクがある。同様に、コロ304を除去するときにバール305を用いて電気盤100を傾斜させたときにおいても、手足や指等の挟み込みや、電気盤100の転倒のリスクもある。
【0054】
しかしながら本実施形態の運搬装置1によれば、本体2上に電気盤100を設置した後の電気盤100の上下方向の移動を無くし、そして、ジャッキ302やコロ304等を用いずに運搬装置1のみで電気盤100の搬送を行う。このため、運搬装置1を用いた電気盤100の設置方法によれば、工程の削減及び工数の低減に加えて、高い安全性を確保することができる。
【0055】
また、本体2に電気盤100を載置して固定した状態で、電気盤100を保管できるため、荷卸し作業における待ちが生じることがない。即ち、トラック等からの荷卸し作業と、設置場所への電気盤100の運搬作業とを、別々に実施することが可能となる。これにより、一方の作業の進行具合を待つ必要がないことから、作業効率が向上する。
【0056】
また、本体2は、第2摺動部材13の外縁の稜部に面取り部を設けることで、搬送路120上に突起が生じていた場合であっても、当該面取り部によって、第2摺動部材13が突起を乗り上げることができる。これにより、本体2の搬送路120の移動において、突起により移動が規制されることを極力防止できる。
【0057】
さらに、本体2を操作する操作部材3は、引っ張り操作に適した構成とすることで、本体2の移動操作が容易となる。また、より操作に力が必要となる初動時においても、スムースに本体2を移動させることが可能となる。本体2の移動作業が容易となることから、本体2を操作して電気盤100を運搬する作業時に、極力人手を低減することができる。
【0058】
上述したように本実施形態に係る運搬装置1によれば、運搬作業において、工程を削減すること及び工数を低減することができるとともに、安全性を向上することができる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る運搬装置1Aについて、
図8を用いて説明する。なお、第2の実施形態に係る運搬装置1Aのうち、上述した第1の実施形態に係る運搬装置1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、
図8中、操作部材3、固定部材14は、省略して運搬装置1Aを示す。
【0060】
運搬装置1Aは、複数の本体2と、複数の本体2のいずれかに設けることが可能な操作部材3と、複数の本体2を連結する連結部材4と、を備えている。即ち、運搬装置1Aは、複数の本体2を連結部材4で一体に組み立てて、複数の本体2により電気盤100を運搬する構成である。
【0061】
本体2は、複数の基部11と、基部11の上面にそれぞれ設けられた第1摺動部材12と、基部11の下面にそれぞれ設けられた第2摺動部材13と、固定部材14と、締結部材15と、を備えている。本体2は、運搬する電気盤100の底面形状よりも大きい外形状となる数が設定される。
図8においては、本体2を3つ用いる構成を説明する。
【0062】
基部11は、例えば、電気盤100の底面形状よりも小さい矩形状に構成される。換言すると、基部11の直交する二方向の幅のうち一方向の幅は、電気盤100の直交する二方うち一方向の幅よりも小さく設定され、基部11の他方向の幅は、電気盤100の他方向の幅よりも大きく設定される。
【0063】
連結部材4は、複数の本体2が電気盤100の底面形状よりも大きい矩形状となるように、複数の本体2を連結可能、且つ、複数の本体2のうち、一部の本体2を取り外すことが可能に構成される。即ち、連結部材4は、それぞれの本体2とボルト等の締結部材15により結合される。連結部材4は、例えば、複数の本体2の上面であって、電気盤100が載置される範囲外に、二本用いられる。
【0064】
このように構成された運搬装置1Aによれば、上述した運搬装置1と同様の効果を奏し、運搬作業において工程を削減すること及び工数を低減することができるとともに、安全性を向上することができる。加えて、基礎台110上に電気盤100を移動させるときに、電気盤100が載っていない本体2を順次連結部材4から取り外すことで、電気盤100の移動方向で後方に電気盤100を押圧するため等の作業スペースを確保することができる。このため、運搬装置1Aは、作業性を向上できる。
【0065】
なお、本実施形態は上述した例に限定されない。例えば、上述した例では、操作部材3を設ける構成を説明したがこれに限定されない。例えば、操作部材3を設けず、本体2に固定された電気盤100を操作する構成であってもよい。ただし、上述したように、本体2の移動は、引っ張りにより移動させた方が好ましいことから、引っ張り操作が容易な操作部材3を取り付け可能な構成が好ましい。
【0066】
また、上述した例では、本体2は上面に複数の開口11aを有する構成を説明したがこれに限定されず、本体2は開口11aを有さない構成であってもよい。開口11aを有さない構成とすることで、本体2は、簡単な構成となることから製造が容易となる。また、このような構成の場合に、操作部材3を設ける場合には、例えば、基板21の側壁に取付部材41を固定すればよい。または、取付部材41をネジ孔22aに着脱自在に螺合されるフックやリングとし、ネジ孔22aに取り付けたフック等にロープ等を取り付けて本体2を操作する構成としてもよい。
【0067】
また、上述した例では、一対の固定部材14により電気盤100を本体2に固定する構成を説明したがこれに限定されない。例えば、固定部材14は、電気盤100の4面を固定するように、4つ用いられる構成であってもよい。また、例えば、電気盤100の一面を固定するために、上述の固定部材14よりも小さい幅の固定部材を複数設ける構成であってもよい。また、上述の固定部材14を用いずに、ネジ孔22aに取り付けたフックにロープや固定用のバンドを掛けて電気盤100を本体2に固定する構成であってもよい。
【0068】
さらに上述した例では、複数の本体2を連結部材4で連結する運搬装置1Aを説明したが、連結部材4は他の構成でよく、また、本体2の組み合わせも適宜設定可能である。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に原出願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1] 運搬対象物を上面に支持し、前記運搬対象物を搬送する搬送路上に配置される基部と、 前記基部の上面に設けられ、前記運搬対象物が載置されるとともに、載置された前記運搬対象物が操作されることで前記運搬対象物が摺動可能に構成された第1摺動部材と、
前記基部の下面に設けられ、前記搬送路上を摺動可能に構成された第2摺動部材と、
を備える、運搬装置。
[2] 前記運搬対象物は、電気盤であり、
前記第1摺動部材の上面の高さ位置は、前記電気盤を設置する基礎台の上面の高さ位置と同一か、又は、前記基礎台の高さ位置よりも高い位置に構成される、[1]に記載の運搬装置。
[3] 前記基部は、底面に前記第2摺動部材が固定される基板と、上面に前記第1摺動部材が固定されるとともに、一部が開口して構成された、前記基板上に固定された支持部材と、を備える、[2]に記載の運搬装置。
[4] 前記基部に設けられ、前記基部を操作する操作部材をさらに備える、[1]に記載の運搬装置。
[5] 前記操作部材は、前記基部に固定された取付部材と、前記取付部材に着脱可能に構成された把持部材と、を備える、[4]に記載の運搬装置。
[6] 前記把持部材は、ロープ又は金属材料で構成されたハンドルである、[5]に記載の運搬装置。
[7] 前記基部、前記第1摺動部材及び前記第2摺動部材を具備する複数の本体と、
前記複数の本体を連結する連結部材と、を備える[1]に記載の運搬装置。
[8] 電気盤を搬送する搬送路上に配置される基部、前記基部の上面に設けられ、前記電気盤が載置されるとともに、載置された前記電気盤が操作されることで前記電気盤が摺動可能、且つ、前記電気盤を設置する基礎台上に前記電気盤を載置可能に構成された第1摺動部材、並びに、前記基部の下面に設けられ、前記搬送路上を摺動可能に構成された第2摺動部材を備える運搬装置の前記基部に、前記電気盤を載置し、
前記基部に載置した前記電気盤を前記基部に固定し、
前記搬送路に沿って前記運搬装置を操作して前記基礎台まで前記運搬装置を運搬し、
前記基部に固定された前記電気盤の固定を解除し、
前記電気盤を操作して前記基礎台上に前記電気盤を移動させ、
前記基礎台上に載置された前記電気盤を前記基礎台に固定する、電気盤の設置方法。