(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6989689
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】閉油圧回路を有するクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/86 20060101AFI20211220BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20211220BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
B66C23/86 A
F15B11/08 C
F15B11/00 R
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-505263(P2020-505263)
(86)(22)【出願日】2018年6月8日
(65)【公表番号】特表2020-528857(P2020-528857A)
(43)【公表日】2020年10月1日
(86)【国際出願番号】EP2018065110
(87)【国際公開番号】WO2019025058
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2020年2月26日
(31)【優先権主張番号】102017117505.9
(32)【優先日】2017年8月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507186322
【氏名又は名称】マニトワック・クレーン・グループ・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・イェニケ
(72)【発明者】
【氏名】フェレナ・ボーマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ズンタイ
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第02631529(DE,A1)
【文献】
特開昭62−031703(JP,A)
【文献】
特開平05−248537(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203699748(CN,U)
【文献】
特表平04−502358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00−23/94
F15B 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプ(2)が供給部(4)と排出部(5)とを介して少なくとも1つの油圧モータ(3,9)に油圧接続された閉油圧回路(1)を有するクレーンであって、前記供給部(4)は、少なくとも1つの油圧モータ(3,9)をバイパスする少なくとも1つのバイパス路(6A,6B)を介して前記排出部(5)に油圧接続され、前記少なくとも1つのバイパス路(6A,6B)は、前記少なくとも1つの油圧モータ(3,9)をバイパスする流体の流れを可変的に制御するために、連続的に調整可能な弁(7A,7B)を備え、
前記連続的に調整可能な弁(7A,7B)が開放状態にある前記少なくとも1つの油圧モータ(3,9)の惰行状態において、前記連続的に調整可能な弁(7A,7B)は、前記少なくとも1つのバイパス路(6A,6B)内の前記流体の流れを可変的に制御して前記少なくとも1つの油圧モータ(3,9)を減速させるために、制御信号に従ってある程度開閉されるよう構成されている、クレーン。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバイパス路(6A,6B)は、少なくとも1つの流れ方向における流体の流れに対してバイパス路(6A,6B)を閉じるように構成された閉鎖弁(8A,8B)を備える、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記供給部(4)は、並列に接続された2つのバイパス路(6A,6B)を介して前記排出部(5)に油圧接続され、前記2つのバイパス路は、それぞれ、連続的に調整可能な弁(7A,7B)と、前記少なくとも1つの油圧モータ(3,9)の対向する旋回方向の流体の流れを可変的に制御するための閉鎖弁(8A,8B)とを備える、請求項1又は2に記載のクレーン。
【請求項4】
少なくとも1つの連続的に調整可能な弁(7A,7B)は、比例弁(7A,7B)である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のクレーン。
【請求項5】
少なくとも1つの閉鎖弁(8A,8B)は、一方向弁(8A,8B)である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のクレーン。
【請求項6】
前記油圧ポンプ(2)の送出流量は、可変的に調整可能である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のクレーン。
【請求項7】
少なくとも1つの油圧モータ(3,9)の容積変位は、可変的に調整可能である、請求項1〜6のいずれか1つに記載のクレーン。
【請求項8】
少なくとも1つのインターフェースを介して前記油圧ポンプ(2)と前記少なくとも1つの連続的に調整可能な弁(7A,7B)とに接続され、クレーン動作中に前記油圧ポンプ(2)と前記少なくとも1つの連続的に調整可能な弁(7A,7B)とを協調的に作動させるように構成された、制御装置を更に備える、請求項1〜7のいずれか1つに記載のクレーン。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のクレーンの閉油圧回路(1)を作動させる制御装置であって、前記制御装置は、少なくとも1つのインターフェースを介して前記油圧ポンプ(2)と前記少なくとも1つの連続的に調整可能な弁(7A,7B)とに接続され、クレーン動作中に前記油圧ポンプ(2)と前記少なくとも1つの連続的に調整可能な弁(7A,7B)とを協調的に作動させるように構成されている、制御装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のクレーン、特に移動式クレーンの閉油圧回路(1)を駆動させるためのクレーン制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプが供給部と排出部とを介して少なくとも1つの油圧モータに油圧接続され、供給部と排出部との間のバイパス路が油圧モータをバイパスする閉油圧回路を有するクレーン、特に移動式クレーンに関する。また、本発明は、対応する制御装置、及び、前記閉油圧回路を作動させるための対応するクレーン制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンでは、原則として、駆動ポンプによって生成された出力が、油圧シリンダ、ウィンチ、又は上部構造(superstructure)の旋回機構などの、駆動されるべきクレーン機能に中継されることによって、2種類の油圧回路に引かれる。
【0003】
小型クレーンにおいて、旋回機構は、開油圧回路で駆動されることが多く、オイルの供給部と排出部とを個別に制御可能である。これにより、旋回機構の様々な機能を可能にする多数の制御オプションが可能になる。例えば、送出流量が弁のみで調整される固定容量ポンプを使用することができる。その結果、様々な加速及び減速のシナリオを実現することができる。重要な機能の1つは、旋回機構を積極的に利用せずに、外力を利用してクレーンの上部構造を静止位置から旋回させる、いわゆる「惰行(coasting)」である。クレーンの上部構造は、例えば、持ち上げるべき荷物をリフト機構によって引くことができる。その後、旋回機構の駆動がゼロの力に効果的に切り替えられ、旋回機構が低い力で旋回運動から外れるようにするオプションが提供される。経験豊富なクレーンのオペレータは、旋回機構を所望の速度に調整して、例えばジョイスティックを介して入力される作動信号をキャンセルすることによって、クレーンが所望の作業ポイントに向けられるようにすることができる。その後、ブレーキペダルを操作するか、クレーンが所望の作業ポイントの前に停止することが予測できる場合は加速を更新することによって、正確に位置決めすることができる。また、クレーンが別のクレーンと一緒にタンデムリフトを行っている場合、惰行が役立つ。タンデムリフトでは、2台以上のクレーンによって荷物が持ち上げられる。そのため、2台以上のクレーンは、作業動作に同期して動作する必要がある。旋回機構において、惰行は、一方のクレーンが旋回運動を積極的に誘導し、もう一方のクレーンが惰行によって受動的に追従するオプションを提供する。
【0004】
閉油圧回路は、主に大型クレーンの旋回機構を駆動するために使用される。旋回運動は一般に、送出流量に応じて1以上の油圧モータの速度を制御する調整可能なポンプによって制御される。このシステムでは、惰行への切り替えを実行する最も簡単な方法は、デジタル的に切り替え可能なバイパス弁が油圧モータの供給部側と排出部側との間に直接短絡を生成することである。その後、クレーンを自由に旋回させることができるが、揺れることなく移動中に再加速することは、繊細なブレーキングと同じように不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上部構造の旋回駆動部を作動させるため、先行技術文献:独国特許発明第2701297号明細書、独国特許出願公開第3346800号明細書、独国特許発明第4231637号明細書、独国特許出願公開第4405472号明細書、独国特許出願公開第19920867号明細書、欧州特許第1175318号明細書、及び、米国特許第5448148号明細書には、閉油圧回路を含む解決策が提供され、先行技術文献:独国特許出願公開第102006040459号明細書、及び、欧州特許第2791427号明細書には、開油圧回路を含む解決策を提供されている。
【0006】
本発明の目的は、繊細なブレーキング及び油圧モータの再加速を可能にするクレーン用の閉油圧回路を提供することにある。この目的は、従属請求項1,9,及び10の主題により実現され、当該従属請求項は本発明の好適な実施形態を定義する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、油圧ポンプが供給部と排出部とを介して少なくとも1つの油圧モータに油圧接続された閉油圧回路を有するクレーン、特に移動式クレーンであって、前記供給部は、少なくとも1つの油圧モータをバイパスする少なくとも1つのバイパス路を介して前記排出部に油圧接続され、前記少なくとも1つのバイパス路は、前記少なくとも1つの油圧モータをバイパスする流体の流れを可変的に制御するために、連続的に調整可能な弁を備える、クレーンが提供される。
【0008】
言い換えれば、前記供給部を前記排出部に短絡する少なくとも1つのバイパス路は、制御信号に従ってバイパス路を非段階的に開閉する比例切替弁を備え、バイパス路を通過する流体の流れは、結果として同様に非段階的に変化することができる。これにより、関連する油圧回路を介して駆動されるクレーン機能の非常に繊細な動き、加速、及び遅延が可能になる。これは、ジブを備え、クレーンの下部構造及び/又は台車に回転可能に取り付けられたクレーンの上部構造を、垂直軸の周りに回転させるクレーンの旋回機構にとって特に望ましい。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、少なくとも1つのバイパス路は、少なくとも1つの流れ方向における流体の流れに対してバイパス路を、特に自動的に閉じるように構成された閉鎖弁を備える。連続的に調整可能な弁に加えて提供されるこのような閉鎖弁は、例えば、流体の流れがバイパスを望ましくない反対方向に流れるとすぐに、流体の流れに対してバイパス路を閉じるように接続されることできる。
【0010】
本発明に係る油圧回路は、好ましくは、並列に接続され、供給部を排出部に油圧接続する2つのバイパス路を備え、各バイパス路は、少なくとも1つの油圧モータの2つの旋回方向の一方に対して流体の流れを可変的に制御するように設けられ、各バイパス路は、少なくとも1つの連続的に調整可能な弁と、2つの旋回方向に供給される流体の流れを非段階的に変更及び/又は閉じることができる少なくとも1つの閉鎖弁とを備えることができる。
【0011】
言い換えれば、バイパス路は、油圧モータの正確に1つの旋回方向に関与し、それぞれ反対方向にバイパス路を通る流体の流れは、閉鎖弁によって抑えることができる。
【0012】
少なくとも1つの連続的に調節可能な弁は、好ましくは比例弁、特に電動式の比例弁である。しかしながら、関連するバイパス路を流れる流体の流れを可変的に制御するために、調整弁又はサーボ弁も同様に考えられる。
【0013】
バイパス路をシールするのに適した任意の閉鎖弁が原理的に考えられるが、本発明の別の好適な実施形態は、バイパス路をシールする弁として自動的にシールする一方向弁を用いる。したがって、油圧液は、バイパス路を介して望ましくない反対方向に流れることが自動的に抑えられる。2つのバイパス路が並列に接続されている場合、油圧モータが正確に1つの旋回方向に移動している間、流体の流れが2つのバイパス路のそれぞれを自動的に流れるように、一方向弁が反対方向に接続されてもよい。
【0014】
油圧ポンプの送出流量を可変的に調整、特に、電気比例レギュレータ(EPレギュレータ)によって調整することも可能である。これにより、連続的に調整可能な弁と油圧ポンプとの間の協調が適切な作動によって実現され、油圧回路、特に旋回機構の油圧回路を介して駆動されるクレーン機能に対して、非常に繊細な動き、加速、及び遅延が可能になる。これにより、特に、油圧回路の惰行状態からの加速が更新される。
【0015】
また、少なくとも1つの油圧モータの容積変位を可変的に調整、特に、油圧回路を介して駆動されるクレーン機能の緩やかな「操作」が適切な作動によって可能になるように調整できるようにすることも考えられる。
【0016】
本発明の別の好適な実施形態によれば、クレーンは、少なくとも1つのインターフェースを介して油圧ポンプと少なくとも1つの連続的に調整可能な弁とに接続され、クレーン動作中に油圧ポンプと少なくとも1つの連続的に調整可能な弁とを協調的(co-ordinated wey)に作動させるように構成された制御装置を更に備えている。言い換えれば、制御装置は、油圧ポンプ、少なくとも1つの連続的に調整可能な弁、及び場合によっては油圧モータを作動させて、閉油圧回路によって駆動されるクレーン機能の緩やかな「操作」を可能にする。
【0017】
本発明の別の態様は、クレーン、特に移動式クレーンの閉油圧回路を作動させるための前記制御装置に関する。前記制御装置は、上述した本発明に係るクレーンの一部であってもよいが、制御装置は、可変的に調整可能な油圧ポンプと、各インターフェースを介して少なくとも1つの連続的(非段階的)に調整可能な弁とに接続され、クレーン動作中に油圧ポンプと少なくとも1つの連続的に調整可能な弁とを協調的に作動させ、クレーン機能、特にクレーンの旋回機構のクレーン機能の繊細な動き、加速、及び遅延を可能にするように構成された、独立した発明とみなすこともできる。
【0018】
本発明の別の態様は、上述の実施形態の1つにおいて、クレーン、特に移動式クレーンの閉油圧回路を作動させるための対応するクレーン制御プログラムに関する。前記クレーン制御プログラムは、例えば、上述の制御装置で作動し、油圧ポンプと少なくとも1つの連続的に調整可能な弁とを協調的に作動させるソフトウェアベースのレギュレータ及び/又はコントローラであってもよい。
【0019】
少なくとも1つの油圧モータの容積変位を可変的に調整、及び/又は調節できる場合、制御装置及び/又はクレーン制御プログラムは、前記少なくとも1つの油圧モータを、前記油圧ポンプと前記少なくとも1つの連続的に調整可能な弁と協調して、作動及び/又は調整するようにも構成される。
【0020】
以下においては、添付の図面を参照することによって、本発明の好適な実施形態がより詳細に説明される。本発明は、個々に及び任意の適切な組み合わせで、本明細書に記載される特徴のいずれかを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、クレーンの閉油圧回路1の油圧回路図を示している。2つの油圧モータ3,9は、共用供給部(shared feed)4と共用排出部(shared discharge)5との両方を介して、調整可能な油圧ポンプ2に支持されている。この際、モータ3,9の回転方向が逆になった場合、供給部4は排出の機能を果たし、排出部5は供給部4の機能を果たすことに留意すべきである。
【0023】
並列に接続された油圧モータ3,9に加えて、回路1は、並列に接続され、2つのモータ3,9をバイパスする反対方向の2つのバイパス路6A,6Bを備えている。油圧流体は、一方向弁8Aによってバイパス路6Aを通じて反時計回りにのみ流れるとともに、一方向弁8Bによってバイパス路8Bを通じて時計回りにのみ流れる。したがって、各バイパス路6A,6Bは、クレーンの旋回機構(図示せず)の正確に1つの旋回方向に関与し、それに割り当てられた比例弁7A,7Bが開くと直ぐに、油圧流体がそれを通じて流れる。
図1に見られるように、比例弁7A,7Bは、ばねによって閉鎖ベース位置に保持され、詳細には示されていない操作部材によって非段階的に開くことができる。但し、弁は、逆に設計することもできる。すなわち、弁は、流れがないときに開き、その後、比例して閉じてもよい。それぞれの比例弁7A,7Bが開いている程度に応じて、油圧流体の一部は、関連するバイパス路6A,6Bを流れるので、モータ3,9を駆動するように利用することができない。
【0024】
以下に、
図1に示す油圧回路の様々な動作状態について詳細に説明する。
【0025】
開油圧回路1において、ジョイスティックを動かすと、旋回方向に割り当てられた比例弁7A(及び/又は7B)が開き、軸方向ピストンポンプとして構成された油圧ポンプ2が、外回転(pivot out)によって油圧流体の流量を増加させ、既知の閉回路のように、旋回機構が加速する。供給部4の高圧が一方向弁8Aを閉じるように作用するため、油圧流体は比例弁7A(及び/又は7B)を流れない。
【0026】
惰行時、比例弁7Aは開いたままであるので、油圧ポンプ2が内回転(pivot in)し、搬送される油圧流体の流量を減少させる。油圧モータ3,9の負荷側が変化し、従来の閉回路の惰行と同様に、周方向の惰行が生じる。反対方向に制御される場合、比例弁7A(及び/又は7B)はランプ機能(ramp function)を利用して閉じられ、排出部5の圧力が増加する。このランプ機能は、制御又は調整することができる。静止位置に達すると、反対側のバイパス路6B(及び/又は6A)の比例弁7B(及び/又は7A)が開き、油圧ポンプ2が他の旋回方向に駆動する。クレーンは、反対方向に加速する。
【0027】
2つの弁7A,7Bにはブレーキペダル(図示せず)が連結されており、旋回方向を認識することによって、弁7A,7Bのどちらを作動させるかが設定される。対応する比例弁7A,7Bは比例的に閉じられ、ポンプが旋回される。これにより、搬送される油圧流体の体積流量が減少する。ブレーキ圧力が増加し、旋回機構が遅くなる。再加速するために、比例弁7A,7Bが開くように制御され、油圧ポンプ2が外回転される(体積流量が増加する)。駆動負荷圧力がそれぞれの排出部5の圧力よりも高くなるとすぐに、一方向弁8A,8Bが閉じる。