【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2017年12月4日に公開された、以下の論文。Sangmin Kang著、ACS Applied Materials & Interfaces(「Roll−to−Roll Laser−Printed Graphene−Graphitic Carbon Electrodes for High−Performance Supercapacitors」)、2018年、第10巻、第1号、1033〜1038頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記黒鉛質炭素ナノ粒子は、黒鉛(graphite)および高配向性熱分解黒鉛(highly oriented pyrolytic graphite;HOPG)の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電極構造体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0016】
本明細書において、「グラフェン層」は、複数の炭素原子が互いに共有結合で連結されてポリサイクリック芳香族分子を形成するグラフェンがフレークまたはシート状に層を形成したものであって、前記共有結合で連結された炭素原子は基本繰り返し単位として6員環を形成するが、5員環および/または7員環をさらに含むことも可能である。前記グラフェン層は多様な構造を有することができ、このような構造はグラフェン内に含まれる5員環および/または7員環の含有量に応じて異なる。前記グラフェン層は単一層からなってもよいし、これらが複数積層されて複数層を形成することも可能であり、通常、前記グラフェンの側面末端部は水素原子で飽和される。
【0017】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0018】
本発明の一実施態様は、金属薄膜と、前記金属薄膜上に位置したパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層とを含み、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、グラフェン層および黒鉛質炭素ナノ粒子を含む電極構造体を提供する。
【0019】
図1は、本発明の一実施態様に係る電極構造体の断面構造を概略的に示す図である。具体的には、
図1は、金属薄膜100、金属薄膜100上に位置したグラフェン層200、およびグラフェン層200上に位置した黒鉛質炭素ナノ粒子300の断面を示す図である。また、
図1を参照すれば、グラフェン層200および黒鉛質炭素ナノ粒子300は、パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層400を形成する。
図1は、前記電極構造体の断面構造を説明するためのものであって、パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層のパターン形態などについては省略された。
【0020】
図2は、本発明の他の実施態様に係る電極構造体の断面構造を概略的に示す図である。具体的には、
図2は、金属薄膜100、金属薄膜100上に位置したグラフェン層200、およびグラフェン層200が形成されていない金属薄膜100上に位置した黒鉛質炭素ナノ粒子300の断面を示す図である。また、
図2を参照すれば、グラフェン層200および黒鉛質炭素ナノ粒子300は、パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層400を形成する。
図2は、前記電極構造体の断面構造を説明するためのものであって、パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層のパターン形態、2以上の離隔したグラフェン層などについては省略された。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、前記金属薄膜は、銅薄膜またはニッケル薄膜であってもよい。例えば、前記金属薄膜は、市販の箔状の銅薄膜またはニッケル薄膜であってもよい。
【0022】
前記金属薄膜は、前記電極構造体において集電体の役割を果たすか、前記グラフェン−黒鉛質炭素複合層の支持体の役割を果たすことができる。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、前記金属薄膜上に多様な電極パターンで備えられる。例えば、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、前記金属薄膜上に、櫛(comb)状のパターンが互いに噛み合った形態の電極パターンで備えられる。
【0024】
図3は、本発明の一実施態様に係る電極構造体のパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層の電極パターンを示す図である。具体的には、本発明の一実施態様に係る電極構造体の前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、
図3に示されるように、多様なスケールで互いに噛み合った櫛(comb)状の電極パターンで備えられる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェン層は、1層〜10層のグラフェンシートを含むことができる。
【0026】
前記グラフェン層に含まれるグラフェンシートの層数は、金属薄膜の金属材質に応じて異なる。具体的には、前記金属薄膜が銅薄膜の場合には、前記グラフェン層は、1層〜2層のグラフェンシートを含むことができ、前記金属薄膜がニッケル薄膜の場合には、前記グラフェン層は、2層以上のグラフェンシートを含むことができる。
【0027】
また、前記グラフェン層は、グラフェンシートのほかにも、グラフェンフレークなど多様な形態のグラフェンを含むことができる。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェン層は、前記金属薄膜上に直接接して、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層に含まれる。具体的には、前記グラフェン層は、別の粘着物質を介在せずに前記金属薄膜上に直接接して備えられる。前記電極構造体は、前記金属薄膜と前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層との付着力が非常に優れ、さらにより優れた電気伝導性が実現できる。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記グラフェン層は、前記金属薄膜上の前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層領域の全体に備えられる。この場合、
図1のように、前記黒鉛質炭素ナノ粒子300は、前記グラフェン層200上に備えられる。
【0030】
また、本発明の一実施態様によれば、前記グラフェン層は、前記金属薄膜上の前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層領域内で互いに離隔した2以上のグラフェン層で備えられる。この場合、
図2のように、前記黒鉛質ナノ粒子300は、前記グラフェン層200および前記グラフェン層が形成されていない前記金属薄膜100上に備えられて、パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層を形成することができる。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記黒鉛質炭素ナノ粒子は、1nm以上500nm以下の直径を有することができる。具体的には、前記黒鉛質炭素ナノ粒子は、50nm以上500nm以下、または100nm以上500nm以下の直径を有することができる。前記直径は、ナノ粒子の最大直径を意味することができる。
【0032】
前記グラフェン−黒鉛質炭素複合層は、前記黒鉛質炭素ナノ粒子によって高い表面積を実現することができ、これによって、電気化学素子の電極への適用時に優れた電極性能を発揮できる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記黒鉛質炭素ナノ粒子は、黒鉛(graphite)、高配向性熱分解黒鉛(highly oriented pyrolytic graphite;HOPG)の少なくとも1種を含むことができる。
【0034】
前記黒鉛質炭素ナノ粒子の形状は、球状、楕円形、棒状など多様な形状であってもよいし、具体的には、球状であってもよい。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層の厚さは、1nm以上50μm以下であってもよい。具体的には、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層の厚さは、1nm以上30μm以下、500nm以上30μm以下、または1μm以上10μm以下であってもよい。
【0036】
前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、薄膜で実現可能なため、スーパーキャパシタのような小型の高容量電気化学素子への適用に有利である。
【0037】
本発明の他の実施態様は、炭素粉末を含むレーザプリンタトナーを用いて、レーザプリンティングによって金属薄膜上にパターニングされた印刷層を形成するステップと、前記パターニングされた印刷層が形成された金属薄膜をアニーリングして、前記金属薄膜上にパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層を形成するステップとを含む前記電極構造体の製造方法を提供する。
【0038】
図4は、本発明の一実施態様に係る電極構造体の製造方法を示す図である。具体的には、
図4は、商用のレーザプリンタトナーを用いて、レーザプリンティングによって金属薄膜上にパターニングされた印刷層を形成した後、アニーリングして電極構造体を製造することを簡略に示す図である。
【0039】
前記レーザプリンタトナーとして、炭素粉末を含むレーザプリント用トナーであれば制限なく使用可能である。具体的には、前記レーザプリントトナーとして商用の黒色レーザトナーを用いることができる。前記電極構造体の製造方法は、商用のレーザプリンタトナーを炭素系電極の前駆体として用いて容易に電極材料を入手可能なため、従来のインクジェットプリンティングを利用した炭素系電極の製造方法における炭素前駆体インクの開発といった問題を容易に解決できるという利点がある。
【0040】
また、本発明の一実施態様によれば、前記レーザプリンティングは、一般的なレーザプリンティング方法を利用することができる。具体的には、前記レーザプリンティングは、従来知られているレーザプリンティング技術が適用された装置を用いて行われる。
【0041】
すなわち、前記パターニングされた印刷層を形成するステップは、一般的に使用されるレーザを用いたプリンティング装置および商用のレーザプリンタトナーを用いて印刷層を形成することができる。また、商用のレーザプリンタに紙の代わりに金属薄膜を適用することにより、容易にパターニングされた印刷層が形成された金属薄膜が得られるという利点もある。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記パターニングされた印刷層を形成するステップにおける金属薄膜は、銅薄膜またはニッケル薄膜であってもよい。具体的には、前記パターニングされた印刷層を形成するステップにおける金属薄膜は、前述した電極構造体における金属薄膜と同一であってもよい。
【0043】
前記金属薄膜の厚さは、レーザプリンティング装置のロール間の間隔および/または前記電極構造体の用途に合わせて適宜選択可能である。
【0044】
また、前記電極構造体の製造方法は、レーザプリンティングにより容易にパターニングされた印刷層を形成可能なため、従来の炭素系電極のパターニングのためのレーザスクライビングまたはリソグラフィのような別の工程を追加する必要なく簡単に電極パターンを形成できるという利点がある。
【0045】
図5は、本発明の一実施態様に係る電極構造体の製造方法によるパターニングされた印刷層およびパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層を示す図である。具体的には、
図5の(a)は、レーザプリンティングによってパターニングされた印刷層(Before Annealing)を示す図であり、
図5の(b)は、パターニングされた印刷層をアニーリングしてパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層(After Annealing)が形成されたことを示す図である。
図5を通して、レーザプリンティングにより簡単な方法で多様なパターンの印刷層を印刷できることが分かる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記パターニングされた印刷層は、前記アニーリングによってパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層で形成される。すなわち、前記パターニングされた印刷層のパターン形態と、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層のパターン形態は、同一であってもよい。ただし、アニーリング過程により前記パターニングされた印刷層が前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層に形成される過程で、炭素粉末以外の有機添加剤などが除去されて厚さが減少するため、前記パターニングされた印刷層の厚さは、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層の厚さよりも厚い。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、前記パターニングされた印刷層は、1.5nm以上75μm以下の厚さに形成される。具体的には、前記パターニングされた印刷層は、1.5nm以上45μm以下、750nm以上45μm以下、または1.5μm以上15μm以下の厚さに形成される。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、前記アニーリングは、700℃〜1,000℃の温度で加熱するステップと、常温に冷却するステップとを含むことができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記加熱するステップは、700℃〜900℃、具体的には、約800℃で行われるものであってもよい。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記加熱するステップは、20分〜60分間行されるものであってもよい。具体的には、前記加熱するステップは、約30分間行われるものであってもよい。前記時間の間加熱する場合、前記パターニングされた印刷層内の不純物の除去および前記金属薄膜への炭素原子の吸着などが十分に行われる。
【0051】
前記加熱するステップにより前記パターニングされた印刷層内に含まれた炭素粉末のほか、有機添加剤などの不純物は除去可能である。具体的には、前記パターニングされた印刷層は、商用のレーザプリンタトナーを用いてレーザプリンティング可能なため、前記パターニングされた印刷層は、前記レーザプリンタトナーに含まれた各種有機染料および添加剤が含まれる。このような有機染料および添加剤は、前記グラフェン−黒鉛質炭素複合層の不純物になりうるが、前記加熱するステップにより除去可能である。
【0052】
また、前記加熱するステップにより、前記印刷層の炭素粉末は、炭素原子の形態で前記金属薄膜の金属格子内に浸透または吸着される。さらに、前記冷却するステップにより、前記金属薄膜の金属格子内に浸透された炭素原子が前記金属薄膜の表面に拡散し、グラフェン層が形成される。これによって、前記グラフェン層は、前記金属薄膜に直接接して形成される。
【0053】
前記グラフェン層に含まれるグラフェンシートの層数は、金属薄膜の金属材質によって決定可能である。すなわち、高温での前記金属薄膜の炭素溶解度(carbon solubility)に応じて、前記グラフェンシートの層数が決定可能である。例えば、前記金属薄膜が銅薄膜の場合には、1層〜2層のグラフェンシートが形成され、前記金属薄膜がニッケル薄膜の場合には、2層以上のグラフェンシートが形成される。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記冷却するステップにおける常温は、20℃〜30℃、具体的には、25℃であってもよい。
【0055】
具体的には、前記冷却するステップは、前記加熱するステップにおける加熱のための炉(furnace)から前記パターニングされた印刷層が形成された金属薄膜を取り出して常温で放置するものであってもよい。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記アニーリングは、水素ガス雰囲気下で行われる。具体的には、前記加熱するステップおよび冷却するステップは、水素ガス雰囲気下で行われる。また、前記アニーリングは、反応チャンバの圧力調節のために不活性ガスを前記水素ガスと共に供給して行われる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記アニーリングは、30sccm〜100sccmの流量の水素ガスを供給して加熱および冷却するものであってもよい。
【0058】
前記加熱するステップにおける水素ガスは、前記パターニングされた印刷層内に含まれた炭素粉末以外の有機添加剤を除去するのに寄与できる。また、前記水素ガスは、前記金属薄膜の酸化を防止して、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層が前記金属薄膜上に直接形成できるようにする。
【0059】
さらに、前記パターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層を形成するステップにより、前記パターニングされた印刷層の炭素粉末は、黒鉛質炭素ナノ粒子に形成される。具体的には、前記金属薄膜に吸収されていない炭素粉末は、前記金属薄膜上で黒鉛質炭素ナノ粒子に形成される。
【0060】
具体的には、前記グラフェン層が前記金属薄膜上のグラフェン−黒鉛質炭素複合層領域全体に形成される場合、前記黒鉛質炭素ナノ粒子は、前記グラフェン層上に形成される。また、前記グラフェン層が前記金属薄膜上のグラフェン−黒鉛質炭素複合層領域の一部に形成される場合、前記黒鉛質炭素ナノ粒子は、前記グラフェン層および前記グラフェン層が形成されていない金属薄膜上に形成される。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記パターニングされた印刷層は、前記金属薄膜上に複数形成される。具体的には、前記金属薄膜上に前記レーザプリンティングを利用して複数のパターニングされた印刷層を形成することにより、複数のパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層を形成することができる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記金属薄膜上に複数のパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層を形成した後、それぞれのパターニングされたグラフェン−黒鉛質炭素複合層単位に金属薄膜を切断する簡単な方法により、多数の電極構造体を得ることができる。
【0063】
本発明の一実施態様によれば、前記電極構造体の製造方法における前記ステップは、ロールツーロールの連続工程で順次に繰り返し行われる。具体的には、前記レーザプリンティングは、ロールツーロール方式をベースとするので、ロールツーロールの連続工程に容易に適用可能である。これによって、前記電極構造体の製造方法は、容易に電極構造体を大量生産できるという利点があり、また、大面積で実現できるという利点もある。
【0064】
前記電極構造体の製造方法により製造された電極構造体は、別の処理工程なしに、電気化学素子の電極に適用可能である。具体的には、前記電極構造体の製造方法により製造された電極構造体は、パターニング完了したグラフェン−黒鉛質炭素複合層が集電体の役割を果たす金属薄膜上に直接形成されているため、従来の製造方法における電極層の転写およびパターニング工程などを別に行う必要がないという利点がある。
【0065】
必要によっては、ポリマー支持層を伴う金属エッチング方法を利用して、前記製造方法で製造した電極構造体から金属薄膜を除去した後、グラフェン−黒鉛質炭素複合層のみを電気化学素子の電極として使用可能である。
【0066】
本発明のさらに他の実施態様は、前記電極構造体を含む電気化学素子を提供する。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記電気化学素子は、スーパーキャパシタ、リチウム二次電池、燃料電池、またはガス発生装置であってもよい。前記リチウム二次電池は、リチウム金属電池またはリチウムイオン電池であってもよい。また、前記ガス発生装置は、水分解装置のような水素ガス発生装置、二酸化炭素還元装置のようなガス分解装置であってもよい。
【0068】
前記スーパーキャパシタ、リチウム二次電池、燃料電池、およびガス発生装置は、電極に前記電極構造体を適用するほか、当業界で知られた構造であれば制限なく適用可能である。
【0069】
[実施例]
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0070】
[実施例1]
銅箔(Alfa Aesar、99.999%)を用意し、FUJI XEROX社のCP405dおよびそのレーザプリンタトナーカートリッジを用いて、前記銅箔上に直接レーザプリンティングして電極パターンの印刷層を形成した。
【0071】
50sccmの流量の水素ガスおよび500sccmの流量のアルゴンガスの混合ガスが注入されるチャンバに前記印刷層が形成された銅箔を備え、チャンバ内の約800℃の温度の炉(furnace)で約30分間加熱した。さらに、前記印刷層が形成された銅箔を炉(furnace)から取り出して常温(25℃)で冷却して、電極構造体を形成した。
【0072】
前記実施例1で製造された電極構造体の表面構造の観察のために、FE−SEM(field emission scanning electron microscope;AURIGA Carl Zeiss)を用い、モルフォロジーの観察のためにTEM(transmission electron microscope;JEOL JEM−2100)を用いた。
【0073】
図6は、実施例1により製造された電極構造体のFE−SEMイメージを示す図である。
図6によれば、電極パターンが形成された領域(Patterned)は、電極パターンが形成されていない領域(Non−patterned)とは異なり、球状の黒鉛質炭素ナノ粒子が電極パターンの表面に形成されたことを確認することができる。
【0074】
図7は、実施例1により製造された電極構造体の断面のFE−SEMイメージを示す図で、銅箔上にグラフェン−黒鉛質炭素複合層が約4μmの厚さに形成されたことが分かる。
図7の右側上端のイメージは、電極パターンに形成された印刷層領域のアニーリング前の断面のFE−SEMイメージに相当し、アニーリング前の電極パターンが形成された領域の厚さは約7μmであった。したがって、アニーリング前のトナー内に含まれた非−炭素不純物、例えば、バインダー、顔料などがアニーリングでの加熱により除去されて、グラフェン−黒鉛質炭素複合層の厚さは、印刷層の厚さよりも減少したと考えられる。
【0075】
図8は、前記実施例1により製造された電極構造体の断面のTEMイメージを示す図である。
図8の左側上端に挿入された図は、実施例1により製造された電極構造体のグラフェン−黒鉛質炭素複合層の炭素リングの回折パターンで、これによって、グラフェン−黒鉛質炭素複合層は、多層構造の炭素層で形成されたことを確認することができる。さらに、
図8のTEMイメージによれば、グラフェン−黒鉛質炭素複合層は、全体的に炭素層が形成されたことが分かり、(001)は各炭素層の厚さ(層間間隔)を意味し、これによって、炭素層が多層構造に形成されたことを確認することができる。
【0076】
[実施例2]
純度99.9%のニッケル箔を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で電極構造体を製造した。
【0077】
図9は、実施例2により製造された電極構造体のFE−SEMイメージを示す図である。
図9によれば、電極パターンが形成された領域(Patterned)は、電極パターンが形成されていない領域(Non−patterned)とは異なり、球状の黒鉛質炭素ナノ粒子が電極パターンの表面に形成されたことを確認することができる。
【0078】
図10は、実施例2により製造された電極構造体の断面のFE−SEMイメージを示す図で、ニッケル箔上にグラフェン−黒鉛質炭素複合層が約13μmの厚さに形成されたことが分かる。高温でニッケルの炭素溶解度(carbon solubility)は、銅の炭素溶解度(carbon solubility)より高いため、ニッケル箔上に形成されるグラフェン−黒鉛質炭素複合層の厚さが銅箔上に形成されたものの厚さよりも厚いものと考えられる。
【0079】
[実験例1]−グラフェン−黒鉛質炭素複合層のラマン分光分析およびFT−IR(fourier transform infrared spectroscopy)分光分析
本発明の製造方法で製造された電極構造体に、レーザプリンタトナーに含まれた顔料および有機バインダーなどが残留するか否かを測定するために、ラマン分光法およびFT−IR(fourier transform infrared spectroscopy)分光法を利用して、前記実施例1で電極パターンに形成された印刷層(アニーリング前)およびグラフェン−黒鉛質炭素複合層(アニーリング後)を分析した。
【0080】
ラマン分光法は、ラマンスペクトロメータ(RM 1000−Invia、Renishaw、514nm)を用いて測定し、FT−IR分光法は、FT−IRスペクトロメータ(Thermo Scientific Nicolet 6700 spectrometer)を用いて測定した。
【0081】
図11は、実験例1によるラマン分光法の分析結果を示す図である。
図11によれば、実施例1でのアニーリング後に形成されるグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、DバンドおよびGバンドが大きく増加したことを確認することができる。これは、アニーリング前の印刷層に含まれた顔料などの不純物が除去され、グラフェン−黒鉛質炭素複合層が形成されたと考えられる。
【0082】
図12は、実験例1によるFT−IR分光法の分析結果を示す図である。
図12のFT−IR分析結果によれば、実施例1でアニーリング前の印刷層に含まれた顔料の多様なピークは、アニーリングによる黒鉛化(graphitization)によってC−Oピークを除けば消えていることを確認することができる。これは、アニーリング前の印刷層に含まれた顔料などの不純物がアニーリングにより除去されてグラフェン−黒鉛質炭素複合層が形成されたことを意味する。
【0083】
[実験例2]−グラフェン−黒鉛質炭素複合層のXPS分析
本発明の製造方法で製造された電極構造体のグラフェン−黒鉛質炭素複合層の炭素結合形態を確認するために、前記実施例1で電極パターンに形成された印刷層(アニーリング前)およびグラフェン−黒鉛質炭素複合層(アニーリング後)に対するXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)分析を実施した。XPS分析は、Research Institute of Advanced MaterialsのKRATOS AXIS−hisモデルを用いて測定した。
【0084】
図13は、実験例2による炭素(C)の1sピークに対するXPS分析結果を示す図である。
図13によれば、アニーリング前(Before)の印刷層でレーザプリンタトナー内に含まれている有機添加剤による二重結合(C=C)の炭素が分析された。また、アニーリング後(After)のグラフェン−黒鉛質炭素複合層は炭素系物質層が形成されたことが確認できただけで、強い炭素ピークによって有機添加剤が除去されたか否かについて明確な確認が困難であった。参照として、
図13のアニーリング後(After)の炭素(C)の1sピークに対するXPS分析結果における点線は、C=CおよびC−Oの参照ピーク(reference peak)である。
【0085】
これにより、アニーリングによって有機添加剤が除去されたか否かを確認するために、下記のように酸素(O)の1sピークに対するXPS分析を追加的に実施した。
【0086】
図14は、実験例2による酸素(O)の1sピークに対するXPS分析結果を示す図である。
図14によれば、アニーリングによってC=O結合(〜532.0eV)を示すOの1sピークがC−O結合(〜533.0eV)を示すピークに移動(shift)したことが分かる。これによって、アニーリング後のグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、アニーリング前に大部分を占めていたsp2炭素が安定したC−O結合になって、表面に酸素が吸着されたことが分かる。これによって、前記実施例1による電極構造体は、スーパーキャパシタのような苛酷な電気化学的反応でも耐えられることが分かる。
【0087】
[実験例3]−グラフェン−黒鉛質炭素複合層の印加電圧による伝導度の測定
前記実施例1で製造された電極構造体のグラフェン−黒鉛質炭素複合層の電気的物性を測定するために、前記実施例1で製造された電極構造体上にポリマー支持層をコーティングし、銅箔をエッチング液を用いて除去した。さらに、ポリマー支持層上に付着したグラフェン−黒鉛質炭素複合層をSiO
2/Siウエハに転写した後、前記ポリマー支持層をアセトンを用いて除去した。さらに、前記グラフェン−黒鉛質炭素複合層上に金属電極を備えてFET(Filed effect transistor)素子を作製した後、電圧を調節して伝導度を測定した。
【0088】
図15は、実験例3による電圧−電流の変化を示すグラフである。具体的には、
図15の結果によれば、実施例1で製造されたグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、約−50V付近でディラックコーン(Dirac Cone)形態の電流値の変化が明らかに現れることが分かる。
【0089】
グラフェンの電子は、ディラックコーン(Dirac Cone)という特別なエネルギー帯を有し、価電子帯(valence band)と伝導帯(conduction band)との接するディラックポイント(Dirac Point)を有する特徴があり、一般的な炭素物質はこのような電気的特性を示さない。すなわち、
図15のようなディラックコーン(Dirac Cone)形態の電気的特性は典型的なグラフェン層で現れるものであるので、実施例1のグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、グラフェン層を含むことを確認することができる。
【0090】
[実験例4]−付着力テスト
付着力テストのために、前記実施例1と同様の方法で製造された電極構造体サンプルに対して、商用のテープ(3M社)を前記サンプルの表面に手で圧着して付着させた後、これを手で剥がす方法を利用してピールオフ(peel−off)テストを行った。
【0091】
図16は、実験例4によるピールオフ(peel−off)テストイメージを示す図である。
図16によれば、ピールオフ(peel−off)を行った結果、テープに電極構造体のグラフェン−黒鉛質炭素複合層が滲み出ないことを確認することができる。
【0092】
また、付着力テストのために、前記実施例1と同様の方法で製造された電極構造体サンプルの表面をゴム手袋を着した状態で擦る方法を利用してラビング(rubbing)テストを行った。
【0093】
図17は、実験例4によるラビング(rubbing)テストイメージを示す図である。
図17によれば、ラビング(rubbing)テストを行った結果、電極構造体のグラフェン−黒鉛質炭素複合層が手袋に滲み出ないことを確認することができる。
【0094】
実験例4による付着力テストによれば、本発明に係る電極構造体は、別の接着物質などを用いてグラフェン−黒鉛質炭素複合層と金属薄膜とを付着させなくても、グラフェン−黒鉛質炭素複合層と金属薄膜との間に優れた付着力が実現されることを確認することができる。
【0095】
[実験例5]−耐薬品性テスト
耐薬品性テストのために、前記実施例1と同様の方法で製造された電極構造体サンプルを多様な溶液(浸漬液)に浸漬させた後、損失する質量を測定した。
【0096】
具体的には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(EC/DMC;1:1vol%)にLiPF
6が溶解した1Mの有機溶液、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)にLiTFSI(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)が溶解した1Mの有機溶液、水(water)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(IPA)、およびアセトン(acetone)それぞれに、製造された電極構造体サンプルを30分間浸漬させた後、浸漬時間による質量の変化を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0098】
前記表1によれば、最大約3%の質量損失が発生する結果を示し、これは実質的に無視できる水準の質量損失が発生することが分かる。すなわち、本発明に係る電極構造体、具体的には、グラフェン−黒鉛質炭素複合層は、優れた耐薬品性を示すことを確認することができる。これによって、本発明の電極構造体は、電気化学素子への適用時、多様な電解液に対する耐薬品性に優れて電気化学素子の耐久性を向上させることができることが分かる。
【0099】
[実験例6]電極構造体の電気的特性
前記実施例1により製造された電極構造体の電気的特性を評価するために、グローブボックス内にリチウム金属を対電極として、前記電極構造体を作用電極として配置し、1MのLiPF
6がエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(EC/DMC;1:1vol%)に溶解した電解質が備えられた実験用リチウムイオン電池を製造した。さらに、GF/F等級の分離膜(Whatman、U.S.A.)をアセトンで超音波処理をした後、180℃で乾燥して使用した。
【0100】
前記実験用リチウムイオン電池は、前記電極構造体のリチウムイオン電池またはスーパーキャパシタの適用可能性を確認することができる。すなわち、前記実験用リチウムイオン電池の特性によりリチウムイオン電池またはスーパーキャパシタに前記電極構造体を適用する場合の性能を予測することができる。
【0101】
図18は、実施例1により製造された電極構造体およびその他の炭素系電極それぞれを作用電極として用いたリチウムイオン電池の一定電流におけるラゴンプロット(ragone plot)を示す図である。具体的には、
図18のHPGC(Hierarchial porous graphitic carbon)は「Wang,D.W.;Li,F.;Liu,M.;Lu,G.Q.;Cheng,H.M.3D Aperiodic Hierarchical Porous Graphitic Carbon Material for High−Rate Electrochemical Capacitive Energy Storage.Angew.Chem.,Int.ED.2008,47,373376」のように製造されたものであり、微細気孔炭素(Small−pore carbon)は「Chmiola,J.;Yushin,G.;Gogotsi,Y.;Portet,C.;Simon,P.;Taberna,P.L.Anomalous Increase in Carbon Capacitance at Pore Sizes Less than 1 Nanometer.Science2006,313,17601763」のように製造されたものであり、ピスタチオナッツ殻を用いたマイクロポーラス炭素(Pistachio nutshellmicroporous carbon)は「Xu,J.D.;Gao,Q.M.;Zhang,Y.L.;Tan,Y.L.;Tian,W.Q.;Zhu,L.H.;Jiang,L.Preparing Two−Dimensional Microporous Carbon from Pistachio Nutshellwith High Areal Capacitance as Super−capacitorMaterials.Sci.Rep.2015,4,5545」のように製造されたものであり、活性炭(Activated carbon)は「Frackowiak,E.;Lota,G.;Pernak,J.Room−Temperature Phosphonium Ionic Liquids for SupercapacitorApplication.Appl.Phys.Lett.2005,86,164104」により製造されたものを使用した。
【0102】
図18によれば、実施例1による電極構造体を含むリチウムイオン電池は、従来知られた炭素系物質に比べてはるかに優れた重量エネルギー密度(gravimetric energy)を示すことを確認することができる。この結果は、実施例1により製造された電極構造体のグラフェン−黒鉛質炭素複合層は、結晶質炭素であるグラフェン層および非晶質炭素である黒鉛質炭素ナノ粒子を共に有しているためと考えられる。
【0103】
さらに、0.1mV/s〜10mV/sの走査速度(scan rate)で循環電圧電流法(CV:cyclic voltammetry)を利用して、実験例6によるリチウムイオン電池の貯蔵性能を評価した。
【0104】
図19は、実験例6によるリチウムイオン電池の循環電圧電流法(CV:cyclic voltammetry)による結果を示す図である。
図19によれば、実施例1により製造された電極構造体を含むリチウムイオン電池は、〜1.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(a)および〜0.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(b)が特徴的に現れる。
【0105】
図20は、
図19による循環電圧電流法(CV:cyclic voltammetry)の結果をlog−log plotに変換したものである。すなわち、
図19の〜1.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(a)および〜0.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(b)をそれぞれlog(走査速度)およびlog(電流ピーク)に変換したものである。
図20によるlog−log plotの結果で、〜1.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(a)の傾きは0.95であり、〜0.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(b)の傾きは0.78であった。これは、静電容量性の寄与(capacitive contribution)は〜1.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(a)で支配的に発生し、後に続く〜0.1V(vs.Li
+/Li)での電流ピーク(b)は、静電容量性反応(capacitive reaction)および拡散律速(diffusion−controlled)インターカレーション(intercalation)が発生することを示す。すなわち、このようなインターカレーション反応が起こることから、実施例1により製造された電極構造体のグラフェン−黒鉛質炭素複合層は層状構造に形成されたことが分かる。
【0106】
図21は、実験例6によるリチウムイオン電池の充放電特性を示すグラフである。具体的には、
図21は、前記実験例6により製造されたリチウムイオン電池の充放電特性を確認するために、0.05A/gで充放電過程時の安定性を測定したものである。
図21によれば、実施例1による電極構造体を適用したリチウムイオン電池は、3,000サイクルの充放電の間に安定した静電容量を示し、3,000サイクルの充放電後にも約100%の保存容量を示すことが分かる。