特許第6989724号(P6989724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6989724
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】注型ポリウレタンエラストマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/65 20060101AFI20211220BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20211220BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   C08G18/65 011
   C08G18/10
   C08G18/76 057
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-100059(P2021-100059)
(22)【出願日】2021年6月16日
【審査請求日】2021年9月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】田子 浩明
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛史
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507459(JP,A)
【文献】 特開2017−186553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物を含む注型ポリウレタンエラストマーであって、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、結晶性マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、
前記硬化剤は、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを含み、
前記硬化剤の総量に対して、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールの含有割合が、20質量%以上であ
引裂強度が、50kN/m以上である、
注型ポリウレタンエラストマー。
【請求項2】
前記芳香族ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項1に記載の注型ポリウレタンエラストマー。
【請求項3】
水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールの総量に対して、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合が、20質量%以上である、請求項1または2に記載の注型ポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールが、ジエチレングリコールを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の注型ポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
前記硬化剤の総量に対して、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールの含有割合が、80質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の注型ポリウレタンエラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンエラストマーは、ポリイソシアネートおよび低分子量ポリオールの反応により形成されるハードセグメントと、ポリイソシアネートおよびマクロポリオールの反応により形成されるソフトセグメントとを有している。ポリウレタンエラストマーは、ゴム弾性体であり、優れた機械物性を有するため、各種産業分野において広範に使用される。
【0003】
より具体的には、以下の方法で得られるポリウレタンエラストマーが知られている。すなわち、この方法では、まず、分子量2000のポリアルキレンオキシドと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて、NCO基末端ウレタンプレポリマーを合成する。次いで、NCO基末端ウレタンプレポリマーと、1,4−ブタンジオールとを混合し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を得る。その後、ポリウレタンエラストマー形成性組成物をモールドに流し込み、キュアさせる。これにより、ポリウレタンエラストマーを得る(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−190394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリウレタンエラストマー形成性組成物には、作業性の観点から、優れたポットライフが要求される。しかし、特許文献1のポリウレタンエラストマー形成性組成物は、十分なポットライフを有していない。
【0006】
本発明は、優れた機械物性と、優れたポットライフとを兼ね備えるポリウレタンエラストマーである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物を含むポリウレタンエラストマーであって、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、結晶性マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、前記硬化剤は、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを含み、前記硬化剤の総量に対して、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールの含有割合が、20質量%以上である、ポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記芳香族ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、上記[1]に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールの総量に対して、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合が、20質量%以上である、上記[1]または[2]に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールが、ジエチレングリコールを含む、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、前記硬化剤の総量に対して、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する前記直鎖状多価アルコールの含有割合が、80質量%以上である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリウレタンエラストマーを、含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレタンエラストマーにおいて、イソシアネート基末端プレポリマーは、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、結晶性マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含む。そのため、本発明のポリウレタンエラストマーは、優れた機械物性を有する。
【0013】
また、本発明のポリウレタンエラストマーにおいて、硬化剤は、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを含み、硬化剤の総量に対して、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合が、所定値以上である。そのため、本発明のポリウレタンエラストマーは、優れたポットライフを有する。
【0014】
その結果、本発明のポリウレタンエラストマーは、優れた機械物性と、優れたポットライフとを兼ね備える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリウレタンエラストマーは、イソシアネート基末端プレポリマーと、硬化剤(後述)との反応生成物を含むウレタン硬化物である。
【0016】
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物を含む。好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応生成物である。
【0017】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、芳香族ポリイソシアネートを含んでいる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体および芳香族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0018】
芳香族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0019】
芳香族ポリイソシアネート誘導体としては、上記芳香族ポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変成体が挙げられる。変性体としては、例えば、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(p−MDI)も挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用できる。
【0020】
芳香族ポリイソシアネートとして、好ましくは、芳香族ポリイソシアネート単量体が挙げられ、より好ましくは、芳香族ジイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられ、とりわけ好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。
【0021】
つまり、芳香族ポリイソシアネートは、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートを含み、とりわけ好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネートからなる。芳香族ポリイソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネートを含んでいれば、とりわけ機械物性に優れたポリウレタンエラストマーを得ることができる。
【0022】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用できる。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)として、好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、任意成分として、その他のポリイソシアネートを含有できる。その他のポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートを除くポリイソシアネートである。その他のポリイソシアネートとして、より具体的には、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0024】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0025】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、鎖状脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体の上記変性体が挙げられる。
【0026】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、脂環族ポリイソシアネート単量体および脂環族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。脂環族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、脂環族ポリイソシアネート単量体の上記変性体が挙げられる。
【0027】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体および芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体の上記変性体が挙げられる。
【0028】
その他のポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用できる。その他のポリイソシアネートの含有割合は、機械物性の観点から、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0029】
すなわち、芳香族ポリイソシアネートの含有割合が、機械物性の観点から、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。つまり、ポリイソシアネート成分は、とりわけ好ましくは、芳香族ポリイソシアネートからなる。
【0030】
ポリオール成分は、マクロポリオールを含み、好ましくは、マクロポリオールからなる。マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、300を超過、好ましくは、400以上、より好ましくは、1000以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下、さらに好ましくは、2000以下である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、2以上である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下である。マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、とりわけ好ましくは、2である。
【0031】
マクロポリオールは、必須成分として、結晶性マクロポリオールを含む。結晶性とは、常温(20℃)において固体であることを示す。
【0032】
結晶性マクロポリオールとして、より具体的には、例えば、結晶性ポリエーテルポリオール、結晶性ポリエステルポリオールおよび結晶性ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0033】
結晶性ポリエーテルポリオールとしては、例えば、結晶性ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。結晶性ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、結晶性ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0034】
結晶性ポリエステルポリオールとしては、例えば、結晶性の縮合系ポリエステルポリオール、および、結晶性の開環系ポリエステルポリオールが挙げられる。縮合系ポリエステルポリオールとしては、例えば、直鎖状アルコールとアジピン酸との縮合反応により得られるアジペート系ポリエステルポリオール、および、直鎖状アルコールとテレフタル酸との縮合反応により得られるテレフタレート系ポリエステルポリオールが挙げられる。開環系ポリエステルポリオールとしては、例えば、ラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0035】
結晶性ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、公知の低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物が挙げられる。
【0036】
これら結晶性マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。結晶性マクロポリオールとして、好ましくは、結晶性ポリエステルポリオールおよび結晶性ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0037】
また、結晶性マクロポリオールとして、好ましくは、比較的高い融点を有するマクロポリオールが挙げられる。融点は、例えば、後述する実施例に準拠した示差走査熱分析において、マクロポリオールを−100℃から10℃/minで120℃まで昇温させることによって観察される吸熱ピークのピークトップ温度である。
【0038】
結晶性マクロポリオールの融点は、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上、より好ましくは、50℃以上、さらに好ましくは、52℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。
【0039】
マクロポリオールは、任意成分として、非晶性マクロポリオールを含有できる。非晶性とは、常温(20℃)において液状(すなわち、液体または流動体)であることを示す。
【0040】
非晶性マクロポリオールとして、より具体的には、例えば、非晶性ポリエーテルポリオール、非晶性ポリエステルポリオール、非晶性ポリカーボネートポリオール、非晶性ポリウレタンポリオール、非晶性エポキシポリオール、非晶性植物油ポリオール、非晶性ポリオレフィンポリオール、非晶性アクリルポリオール、および、非晶性ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0041】
非晶性マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。非晶性マクロポリオールの含有割合は、機械強度の観点から、ポリオール成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0042】
すなわち、結晶性マクロポリオールの含有割合が、機械強度の観点から、ポリオール成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、80質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。つまり、ポリオール成分は、とりわけ好ましくは、結晶性マクロポリオールからなる。
【0043】
イソシアネート基末端プレポリマーは、例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、所定の割合で反応させることによって得られる(プレポリマー工程)。
【0044】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合割合は、水酸基に対してイソシアネート基が過剰となるように、調整される。より具体的には、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、1.5以上、好ましくは、1.8以上、より好ましくは、2以上、さらに好ましくは、2.5以上である。また、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、10以下、好ましくは、7以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、5以下である。
【0045】
重合方法としては、例えば、バルク重合および溶液重合が挙げられる。バルク重合では、例えば、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、窒素気流下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。溶液重合では、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、公知の有機溶剤の存在下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。
【0046】
また、必要に応じて、公知のウレタン化触媒を添加できる。ウレタン化触媒としては、例えば、アミン類および有機金属化合物が挙げられる。ウレタン化触媒の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0047】
これによりイソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合物が得られる。反応混合物のイソシアネート基濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、4質量%以上である。また、反応混合物のイソシアネート基濃度は、例えば、30質量%以下、好ましくは、19質量%以下、より好ましくは、16質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。なお、イソシアネート基濃度(イソシアネート基含有率)は、ジ−n−ブチルアミンによる滴定法や、FT−IR分析などの公知の方法によって求めることができる。
【0048】
また、上記の反応で得られる反応混合物は、イソシアネート基末端プレポリマーの他、未反応のポリイソシアネート成分(イソシアネートモノマー)を含有できる。未反応のポリイソシアネート成分は、必要に応じて、公知の除去方法により反応混合物から除去される。また、ウレタン化触媒および有機溶剤は、必要に応じて、公知の除去方法により反応混合物から除去される。除去方法としては、例えば、蒸留法および抽出法が挙げられる。
【0049】
そして、ポリウレタンエラストマーは、上記のイソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤とを反応させることにより、製造される(鎖伸長工程)。
【0050】
硬化剤は、必須成分として、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを含んでいる。
【0051】
換言すると、硬化剤は、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコール、および、硫黄を含有する直鎖状多価アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいる。
【0052】
直鎖状多価アルコールは、分子中に水酸基(−OH)を2つ以上有する、比較的低分子量の有機化合物である。直鎖状多価アルコールは、分岐鎖を有さず、直鎖構造を有している。直鎖状多価アルコールの分子量は、例えば、300以下、好ましくは、250以下である。また、直鎖状多価アルコールの分子量は、例えば、50以上である。また、直鎖状多価アルコールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、2以上である。また、直鎖状多価アルコールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下である。直鎖状多価アルコールの平均官能基数(平均水酸基数)は、とりわけ好ましくは、2である。
【0053】
水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールは、分子中の水酸基(−OH)に含まれる酸素原子以外の酸素原子(O)を含有する、直鎖状多価アルコールである。
【0054】
水酸基(−OH)に含まれる酸素原子以外の酸素原子(O)は、例えば、酸素を含有する結合として、直鎖状多価アルコール中に含まれる。結合としては、例えば、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−(C=O)−)、エステル結合(−O(C=O)−)およびカーボネート結合(−O−(C=O)−O−)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。結合として、好ましくは、エーテル結合(−O−)が挙げられる。
【0055】
また、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールは、好ましくは、硫黄原子を含有しない。水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールは、より好ましくは、酸素以外のヘテロ原子を含有しない。つまり、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールは、より好ましくは、ヘテロ原子として、酸素のみを含有する。
【0056】
水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールとして、より具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、および、ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル(別名:ジ(1,3−プロピレングリコール))が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0057】
水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールとして、好ましくは、ジエチレングリコールが挙げられる。ジエチレングリコールによれば、より優れた機械物性と、より優れたポットライフとを兼ね備えるポリウレタンエラストマーが得られる。
【0058】
硫黄を含有する直鎖状多価アルコールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、かつ、分子中に硫黄原子(S)を含有する有機化合物である。また、硫黄を含有する直鎖状多価アルコールは、さらに、水酸基(−OH)に含まれる酸素原子以外の酸素原子(O)を含有することができる。
【0059】
硫黄原子は、例えば、硫黄を含有する結合として、直鎖状多価アルコール中に含まれる。結合としては、例えば、チオエーテル結合(−S−)、チオカルボニル結合(−(C=S)−)、チオエステル結合(−S(C=O)−)およびチオカーボネート結合(−S−(C=S)−S−)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。結合として、好ましくは、チオエーテル結合(−S−)が挙げられる。
【0060】
硫黄を含有する直鎖状多価アルコールとして、より具体的には、2,2’−チオジエタノール、および、ビス(3−ヒドロキシプロピル)チオエーテルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0061】
硫黄を含有する直鎖状多価アルコールとして、好ましくは、2,2’−チオジエタノールが挙げられる。
【0062】
これら水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0063】
水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを用いることにより、優れたポットライフを得ることができる。
【0064】
すなわち、水酸基以外の酸素および/または硫黄は、電気陰性度が比較的高いため、酸素および/または硫黄の電子吸引により、分子末端の水酸基の反応性が低下する。そのため、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを用いることにより、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する多価アルコールを用いない場合に比べて、比較的長いポットライフを得ることができる。
【0065】
また、水酸基以外の酸素および/または硫黄は、原子半径(単結合の共有結合半径)が比較的大きいため、酸素および/または硫黄の立体障害により、直鎖状多価アルコール中において、分子末端の水酸基の反応性を低下させる。そのため、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを用いることにより、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する多価アルコールを用いない場合に比べて、比較的長いポットライフを得ることができる。
【0066】
また、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールとして、好ましくは、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールが挙げられる。
【0067】
より具体的には、酸素の電気陰性度(ポーリングの電気陰性度)は、3.44である。また、硫黄の電気陰性度(ポーリングの電気陰性度)は、2.58である。そのため、電子吸引により分子末端の水酸基の反応性を低下させる観点から、酸素および/または硫黄として、好ましくは、より電気陰性度が高い酸素が挙げられる。
【0068】
また、酸素の原子半径(単結合の共有結合半径)は、63pmである。また、硫黄の原子半径(単結合の共有結合半径)は、103pmである。そのため、立体障害により分子末端の水酸基の反応性を低下させる観点から、酸素および/または硫黄として、好ましくは、より原子半径が大きい硫黄が挙げられる。
【0069】
また、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールとして、好ましくは、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールが挙げられる。水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールは、硫黄を含有しない。そのため、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールが、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールであれば、硫黄による臭気が生じず、作業性の向上を図ることができる。
【0070】
水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールの総量に対して、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、50質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すると、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールは、とりわけ好ましくは、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコールからなる。
【0071】
また、硬化剤は、任意成分として、その他の多価アルコールを含有できる。その他の多価アルコールは、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを除く多価アルコールである。
【0072】
その他の多価アルコールの分子量は、例えば、300以下、好ましくは、250以下である。また、その他の多価アルコールの分子量は、例えば、50以上である。また、その他の多価アルコールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、2以上である。また、その他の多価アルコールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下である。その他の多価アルコールの平均官能基数(平均水酸基数)は、とりわけ好ましくは、2である。
【0073】
その他の多価アルコールとしては、例えば、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する分岐状多価アルコールが挙げられ、より具体的には、例えば、ジプロピレングリコール(別名:ジ(1,2−プロピレングリコール))、および、ジグリセリンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0074】
また、その他の多価アルコールとしては、例えば、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有しない多価アルコールが挙げられ、より具体的には、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有しない直鎖状多価アルコール、および、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有しない分岐状多価アルコールが挙げられる。水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有しない直鎖状多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、および、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有しない分岐状多価アルコールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0075】
その他の多価アルコールは、単独使用または2種類以上併用できる。その他の多価アルコールの含有割合は、硬化剤の総量に対して、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0076】
すなわち、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合が、硬化剤の総量に対して、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上、さらに好ましくは、90質量%以上である。
【0077】
水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合が上記範囲であれば、優れた機械物性と、優れたポットライフとを兼ね備えるポリウレタンエラストマーが得られる。
【0078】
水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合は、とりわけ好ましくは、硬化剤の総量に対して、100質量%である。換言すると、硬化剤は、とりわけ好ましくは、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールからなる。硬化剤が、酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールからなる場合、とりわけ優れた機械物性と、とりわけ優れたポットライフとを兼ね備えるポリウレタンエラストマーが得られる。
【0079】
イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応において、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、イソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基に対する、硬化剤の水酸基の当量比(水酸基/イソシアネート基)が、例えば、0.75以上、好ましくは、0.85以上、例えば、1.3以下、好ましくは、1.2以下である。
【0080】
また、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応では、例えば、バルク重合および/または溶液重合が、採用される。反応温度は、例えば、室温以上、好ましくは、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間が、例えば、5分以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、72時間以下、好ましくは、48時間以下である。イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との混合時には、必要に応じて、ウレタン化触媒を、適宜の割合で添加できる。
【0081】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物を含むポリウレタンエラストマーが得られる。
【0082】
また、好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との混合物は、必要に応じて脱泡され、予備加熱した成形型内で硬化し、脱型される。これにより、所望形状に成形されたポリウレタンエラストマーが得られる。
【0083】
また、ポリウレタンエラストマーを、熱処理することができる。熱処理温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、熱処理温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、熱処理時間が、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上である。また、熱処理時間が、例えば、30時間以下、好ましくは、20時間以下である。
【0084】
また、ポリウレタンエラストマーを、養生することができる。養生温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上である。また、養生温度は、例えば、50℃以下、好ましくは、40℃以下である。また、養生時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上である。また、養生時間が、例えば、20日間以下、好ましくは、10日間以下である。
【0085】
ポリウレタンエラストマーは、必要に応じて、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物の他、公知の添加剤を含むことができる。すなわち、ポリウレタンエラストマーは、ポリウレタンエラストマー組成物であってもよい。
【0086】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、ブロッキング防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、防錆剤およびブルーイング剤が挙げられる。添加剤の添加量および添加タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、添加剤は、イソシアネート基末端プレポリマーに添加されていてもよい。また、添加剤は、硬化剤に添加されていてもよい。さらに、添加剤は、イソシアネート基末端プレポリマーおよび硬化剤とは別途用意され、イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との混合時に添加されてもよい。
【0087】
そして、上記のポリウレタンエラストマーは、優れた機械物性と、優れたポットライフとを兼ね備える。
【0088】
すなわち、上記のポリウレタンエラストマーにおいて、硬化剤は、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを含み、硬化剤の総量に対して、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合が、所定値以上である。そのため、上記のポリウレタンエラストマーは、優れたポットライフを有する。
【0089】
一方、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールは、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含むため、これらを含まずに水酸基および炭化水素からなる多価アルコールに比べて、ポリウレタンエラストマーのハードセグメントの結晶性を低下させる。そのため、ポリウレタンエラストマーの機械物性が劣る場合がある。
【0090】
しかし、上記のポリウレタンエラストマーでは、イソシアネート基末端プレポリマーが、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、結晶性マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含む。すなわち、ポリオール成分が、結晶性マクロポリオールを含む。そのため、結晶性マクロポリオールによって、ポリウレタンエラストマーのソフトセグメントの結晶性が、向上する。
【0091】
つまり、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールによって低下した結晶性が、結晶性マクロポリオールによって補完される。そのため、上記のポリウレタンエラストマーは、優れた機械物性を有する。その結果、上記のポリウレタンエラストマーは、優れた機械物性と、優れたポットライフとを兼ね備える。
【0092】
ポリウレタンエラストマーは、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)またはTSU(熱硬化性ポリウレタン樹脂)として製造される。好ましくは、ポリウレタンエラストマーは、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)として製造される。ポリウレタンエラストマーは、公知の成形法で成形される。
【0093】
成形法としては、例えば、注型成形、熱圧縮成形、射出成形、押出成形、溶融紡糸成形が挙げられる。また、成形後の形状としては、例えば、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、ボトル状、中空状、箱状およびボタン状が挙げられる。
【0094】
ポリウレタンエラストマーは、好ましくは、注型成形される。すなわち、ポリウレタンエラストマーは、好ましくは、注型ポリウレタンエラストマーである。ポリウレタンエラストマーの成形品は、目的および用途に応じた所定形状を単独で有する物品であって、被塗物に対して塗布されるコーティング剤とは区別される。ポリウレタンエラストマーおよび成形品は、優れた機械強度を有する。例えば、ポリウレタンエラストマーおよび成形品の引裂強度(後述する実施例に準拠)は、例えば、50kN/m以上である。さらに、このような成形品は、ポットライフにも優れる。そのため、成形品は、各種産業分野において、好適に使用される。
【0095】
成形品の用途としては、例えば、透明性硬質プラスチック、防水材、シート、バンド、ベルト、チューブ、ブレード、スピーカー、センサー、アウトソール、糸、繊維、不織布、化粧品、靴用品、断熱材、シール材、テープ材、封止材、太陽光発電部材、ロボット部材、アンドロイド部材、ウェアラブル部材、衣料用品、衛生用品、化粧用品、家具用品、食品包装部材、スポーツ用品、レジャー用品、医療用品、介護用品、住宅用部材、音響部材、照明部材、防振部材、防音部材、日用品、雑貨、クッション、寝具、応力吸収材、応力緩和材、自動車内装材、自動車外装材、鉄道部材、航空機部材、光学部材、OA機器用部材、雑貨表面保護部材、半導体封止材、自己修復材料、健康器具、メガネレンズ、玩具、パッキン、ケーブルシース、ワイヤーハーネス、電気通信ケーブル、自動車配線、コンピューター配線、工業用品、衝撃吸収材および半導体用品が挙げられる。
【実施例】
【0096】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0097】
1.原料
<ポリイソシアネート成分>
1) 4,4’−MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、商品名;コスモネートPH、三井化学SKC社製
2) 1,5−NDI:1,5−ナフタレンジイソシアネート
3) 1,4−HXDI:国際公開WO2019/069802号公報の製造例3に記載の方法で合成した1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス体86モル%
【0098】
<マクロポリオール成分>
1)UH−200W:結晶性ポリカーボネートポリオール(PCD)、数平均分子量(Mn)2000、商品名;ETERNACOL UH−200W、水酸基価=56.1mgKOH/g、融点53℃、常温固体、宇部興産社製
2)PES4040:結晶性ポリエステルポリオール(ポリエチレンアジペートポリオール、PEA)、数平均分子量(Mn)2000、商品名;ニッポラン4040、水酸基価=56.1mgKOH/g、融点51℃、常温固体、東ソー社製
3)PTMG1000:結晶性ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、PTMEG)、数平均分子量(Mn)1000、商品名;PTMG1000、水酸基価=112.2mgKOH/g、融点23℃、常温固体、三菱ケミカル社製
4)T5652:非晶性ポリカーボネートポリオール(PCD)、数平均分子量(Mn)2000、商品名;デュラノールT5652、水酸基価=56.1mgKOH/g、常温液状、旭化成社製
5)D2000:非晶性ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール、PPG)、数平均分子量(Mn)2000、商品名;アクトコールD2000、水酸基価=56.1mgKOH/g、常温液状、三井化学SKC社製
【0099】
<硬化剤>
1)ジエチレングリコール:DEG、水酸基以外の酸素を含有する直鎖状多価アルコール
2)2,2’−チオジエタノール:硫黄を含有する直鎖状多価アルコール
3)ジプロピレングリコール:DPG、水酸基以外の酸素を含有する分岐状多価アルコール
4)1,4−ブタンジオール:1,4−BD、水酸基以外の酸素および硫黄を含有しない直鎖状多価アルコール
【0100】
<添加剤>
1)耐熱安定剤:商品名;JPP100、城北化学工業社製
2)消泡剤:商品名;BYK−088、ビックケミー・ジャパン社製
3)溶剤:ジイソノニルアジペート、商品名:DINA、大八化学工業社製
【0101】
2.製造
実施例1〜7および比較例1〜6
<イソシアネート基末端プレポリマーの製造>
表1〜表2に記載の処方に従い、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを、還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に仕込んだ。その後、JPP100を0.1質量部、BYK−088を0.2質量部、o−トルエンスルホンアミドを0.1質量部添加した。窒素雰囲気下、80℃で反応させた。また、これらの混合物のイソシアネート基含有率が、表に記載の値に達したときに、反応を停止させた。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。なお、上記反応(プレポリマー化反応)におけるイソシアネート基に対する活性水素基の当量比(NCO/活性水素基)を、表1〜表2に示す。
【0102】
なお、比較例6では、予めDINAにより2質量%に希釈したジブチル錫ジラウレートを、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とともに、4つ口フラスコ中に添加した。添加量は、ジブチル錫ジラウレートが10ppmとなるように調整した。
【0103】
<ポリウレタンエラストマーの製造>
イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤とを、80℃にて、当量比(OH/NCO)が0.95となる割合で混合し、これらを攪拌および真空脱泡した。これらの混合物を、予め110℃に温調した金型(2mm厚みのシート形状)に流し込み、110℃のオーブン中で2時間硬化させ、ポリウレタンエラストマーを得た。また、金型からポリウレタンエラストマーを脱型した。その後、ポリウレタンエラストマーを、110℃のオーブン中で15時間熱処理をした後、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生し、シート形状のポリウレタンエラストマーを得た。
【0104】
なお、比較例6では、予めDINAにより2質量%に希釈したジブチル錫ジラウレートを、イソシアネート基末端プレポリマーに添加した。添加量は、ジブチル錫ジラウレートの添加量(イソシアネート基末端プレポリマーの製造における添加量を含まない。)が100ppmとなるように、調整した。
【0105】
比較例7(ワンショット法)
ポリイソシアネート成分、ポリオール成分および硬化剤を、80℃にて、表2に記載の割合で混合し、これらを攪拌および真空脱泡した。これらの混合物を、予め110℃に温調した金型(2mm厚みのシート形状)に流し込み、110℃のオーブン中で2時間硬化させ、ポリウレタンエラストマーを得た。また、金型からポリウレタンエラストマーを脱型した。その後、ポリウレタンエラストマーを、110℃のオーブン中で15時間熱処理をした後、室温23℃、相対湿度55%の恒温恒湿条件下にて、7日間養生し、シート形状のポリウレタンエラストマーを得た。
【0106】
3.測定
<イソシアネート基濃度>
電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556(2006)に準拠したn−ジブチルアミン法により、イソシアネート基濃度を測定した。
【0107】
<ポットライフ>
イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤を80℃で混合し、その混合開始後、混合液が流動性を失うまでの時間を、以下の5段階で評価した。
評価5:混合開始後12分以内では、混合液は流動性を失わなかった。
評価4:混合開始後9分を超過し12分以内に、混合液は流動性を失った。
評価3:混合開始後6分を超過し9分以内に、混合液は流動性を失った。
評価2:混合開始後3分を超過し6分以内に、混合液は流動性を失った。
評価1:混合開始後3分以内に、混合液は流動性を失った。
【0108】
<引裂強さ>
シート形状のポリウレタンエラストマー(2mm厚み)から、JIS K7311(1995)に従って直角型引裂試験片を作製し、その試験片の引裂強さを、引張速度500mm/minの条件で測定した。
【0109】
<融点>
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:EXSTAR6000 PCステーション、および、DSC220C)を使用して、ポリオール成分の融点を以下の方法で測定した。
【0110】
ポリオール成分をアルミニウム製パンに採取した。これにより、ポリオール成分のサンプルを得た。また、ポリオール成分と同様にしてアルミナを採取した。これにより、アルミナをリファレンス試料とした。サンプルおよびリファレンスをセル内の所定位置にセットした後、流量40NmL/minの窒素気流下、試料を10℃/minの速度で−100℃まで冷却し、同温度で5分間保持後、次いで、10℃/minの速度で120℃まで昇温した。この昇温の間に現れる吸熱ピークの温度を、ポリオール成分の融点とした。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】

【要約】
【課題】優れた機械物性と、優れたポットライフとを兼ね備えるポリウレタンエラストマーを提供すること。
【解決手段】イソシアネート基末端プレポリマーと硬化剤との反応生成物を含むポリウレタンエラストマーにおいて、イソシアネート基末端プレポリマーは、芳香族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、結晶性マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、硬化剤は、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールを含み、硬化剤の総量に対して、水酸基以外の酸素および/または硫黄を含有する直鎖状多価アルコールの含有割合が、20質量%以上である。
【選択図】なし