特許第6989726号(P6989726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和リース株式会社の特許一覧

特許6989726杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具
<>
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000002
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000003
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000004
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000005
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000006
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000007
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000008
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000009
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000010
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000011
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000012
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000013
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000014
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000015
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000016
  • 特許6989726-杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6989726
(24)【登録日】2021年12月6日
(45)【発行日】2022年1月5日
(54)【発明の名称】杭と柱脚の連結構造、および溶接補助治具
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20211220BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20211220BHJP
【FI】
   E02D27/00 D
   E02D27/12 Z
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-143161(P2021-143161)
(22)【出願日】2021年9月2日
【審査請求日】2021年9月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591241718
【氏名又は名称】大和リース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄次
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6096367(JP,B1)
【文献】 特開2003−003487(JP,A)
【文献】 特開平04−281932(JP,A)
【文献】 特開平09−253892(JP,A)
【文献】 特開2018−131740(JP,A)
【文献】 特開2006−161278(JP,A)
【文献】 実開昭47−006018(JP,U)
【文献】 実開昭55−038599(JP,U)
【文献】 特開2003−278279(JP,A)
【文献】 特開平10−166184(JP,A)
【文献】 特開2020−193512(JP,A)
【文献】 特開2016−070047(JP,A)
【文献】 特開2006−104780(JP,A)
【文献】 特開2005−061171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上の設計位置に構築される杭と、
前記杭の杭頭に設置される柱脚との連結構造であって、
前記杭頭には、上下方向に延びて当該杭頭の外周面に周方向に間隔を空けて配列される鋼製プレートである複数の杭側連結部が、前記杭頭の外周面に周方向に間隔を空けて取付固定され、
前記柱脚は、
前記杭頭の天端に載置されるベース部と、上下方向に延びる鋼製プレートであって上端が前記ベース部に固定されて下端が該ベース部から下方へ突出し、前記杭頭の外周面に沿って周方向に間隔を空けて配列される複数の柱側連結部と、前記ベース部に設けられて当該ベース部から上方へ突出する柱脚本体とを含み、
前記杭側連結部は、前記柱側連結部に連結固定される、杭と柱脚の連結構造。
【請求項2】
前記柱脚のうち、
前記ベース部の中心が前記杭の杭芯に一致し、
前記柱脚本体の柱芯が前記設計位置に一致し、
前記設計位置に対する前記杭芯の平面上の位置ずれに対応して、前記ベース部の前記中
心は前記柱脚本体の柱芯からずれている、請求項1に記載の杭と柱脚の連結構造。
【請求項3】
前記ベース部は、前記天端に載置された状態で自身の高さ位置を調整する上下方向調整
手段を有する、請求項1または2に記載の杭と柱脚の連結構造。
【請求項4】
前記杭側連結部の鋼製プレート側縁が前記杭頭の外周面に溶接され、
前記柱側連結部の鋼製プレート上縁が前記ベース部の下面に溶接される、請求項3に記
載の杭と柱脚の連結構造。
【請求項5】
前記柱脚本体の下縁が前記ベース部の上面に溶接される、請求項1〜4のいずれかに記
載の杭と柱脚の連結構造。
【請求項6】
前記杭頭、前記ベース部、前記柱側連結部、および前記杭側連結部を包み込む根巻コン
クリートをさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の杭と柱脚の連結構造。
【請求項7】
杭の杭頭外周面に周方向に間隔を空けて配列される複数の鋼製プレートに関し、1枚の前記鋼製プレートの側縁を前記杭頭外周面に溶接するための治具であって、
前記杭の杭頭上縁に係合する係合部、および一端が前記係合部と結合し他端が前記杭頭
上縁から離れる方向に突出する片持部とを有する係合部材と、
前記片持部に吊り下げられる部材であって、互いに向き合う1対の側壁部と、
前記1対の側壁部の間に通される前記鋼製プレートを当該鋼製プレートの板厚方向に挟持して前記側縁を前記杭頭外周面に沿わせる姿勢に着脱可能に保持する保持部とを有する保持部材と、を備える、溶接補助治具。
【請求項8】
前記片持部の前記吊り下げ箇所に設けられて、前記鋼製プレートを保持する前記保持部
材を前記杭頭へ近づけたり前記杭頭から遠ざけたりするように移動させる案内部をさらに
備える、請求項7に記載の溶接補助治具。
【請求項9】
前記係合部材および/または前記保持部材から下方へ延び、前記鋼製プレートの下端を
支持する支持部材をさらに備える、請求項7または8に記載の溶接補助治具。
【請求項10】
前記支持部材は、1対の壁部と、前記壁部に設けられて上下方向に延びる1対の長孔と
を有し、
前記保持部材は前記1対の壁部間に配置され、
前記保持部は、
前記支持部材の前記1対の長孔を通り、前記保持部材の前記1対の側壁部にそれぞれ
設けられるねじ孔にねじ込まれて、前記1対の側壁部間へ突出し、前記鋼製プレートを挟
持する1対のねじであり、
前記ねじは、前記1対の壁部よりも外側で、ナットと螺合し、
前記ナットを緩められて前記支持部材は上下方向移動を許容され、前記ナットを締め付
けられて前記支持部材は上下方向の移動を禁止される、請求項9に記載の溶接補助治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭に柱脚を継ぎ足す構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎構造として例えば特開2006―161278号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1記載の構造では、杭頭にコンクリートフーチングが構築され、このコンクリートフーチングには、杭頭を取り巻くフープ筋および複数のアンカーボルトが埋設される。アンカーボルトの雄ねじ部は、コンクリートフーチングの天端から突出する。コンクリートフーチングの天端には、クレーンで柱脚を吊り込んで載置される。柱脚はアンカーボルトとナットで締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―161278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のような基礎にあっては、コンクリートが十分に硬化するまでに時間を要するため、工期短縮の観点から改善の余地がある。また施工現場では、配筋作業、コンクリート型枠作業、生コンクリート打設作業、等が順次実行されるところ、これら一連の作業に人手および工数を有し、施工費および省力化の観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述の実情に鑑み、従来よりも短工期かつ低コストである杭と柱の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため本発明による杭と柱脚の連結構造は、平面上の設計位置に構築される杭
と、当該杭の鋼製の杭頭に設置される柱脚との連結構造であって、杭頭には、上下方向に延びて当該杭頭の外周面に周方向に間隔を空けて配列される鋼製プレートである複数の杭側連結部が、杭頭の外周面に周方向に間隔を空けて取付固定され、柱脚は、杭頭の天端に載置されるベース部と、上下方向に延びる鋼製プレートであって鋼製プレート上端がベース部に固定されて鋼製プレート下端が該ベース部から下方へ突出し、杭頭の外周面に沿って周方向に間隔を空けて配列される複数の柱側連結部と、ベース部に設けられて当該ベース部から上方へ突出する柱脚本体とを含み、杭側連結部柱側連結部に連結固定される。
【0007】
かかる本発明によれば、杭頭に基礎コンクリートを打設せず、基礎コンクリートにアンカーボルトを埋設せず、杭頭に柱脚を機械的に連結することから、コンクリートの養生期間が不要となり、短工期で杭頭に柱脚を継ぎ足して固定することができる。また施工に係る工数が少なくなり、低コスト化に資する。また杭側連結部および柱側連結部の上下方向寸法に長くすることにより、連結構造の剛性が向上する。なお杭は、鋼管杭であり、あるいはSC杭(steel-concrete pile)であり、あるいは少なくとも杭上端領域の外周面が鋼材からなる杭である。杭側連結部および柱側連結部の相互の固定は、例えば溶接に依る。あるいは杭側連結部および柱側連結部にそれぞれ、上下方向に間隔を空けて複数の貫通孔が形成され、杭側連結部の貫通孔および柱側連結部の貫通孔に連結具を通される。連結具は特に限定されず、例えばボルトおよびナットの組み合わせであったり、あるいはピンであったりする。
【0008】
杭の杭芯は平面上の設計位置に一致することが好ましいが、必ずしも一致せず、ずれる場合がある。そこで本発明の一局面として柱脚のうち、ベース部の中心が杭芯に一致する一方で、柱脚本体の柱芯が設計位置に一致し、設計位置に対する杭芯の平面上の位置ずれに対応して、ベース部の中心は柱脚本体の柱芯からずれている。かかる局面によれば、杭芯がずれていても、柱芯が設計位置に一致する。なお杭打作業は建物の施工現場で行われる。これに対し、柱脚の作製は、施工現場外で行われる。これにより工期が短縮される。
【0009】
杭の天端は設計高さに一致することが好ましいが、必ずしも一致せず、ずれる場合がある。そこで本発明の好ましい局面としてベース部は、杭の天端に載置された状態で自身の高さ位置を調整する上下方向調整手段を有する。かかる局面によれば、柱脚を設計高さに一致させることができる。上下方向調整手段は例えば、ベース部を上下方向に貫通するねじ孔と、当該ねじ孔に螺合して下端が天端に当接するボルトである。
【0010】
杭側連結部を杭頭に取付固定する構造と、柱側連結部をベース部に取付固定する構造は特に限定されないが、本発明のさらに好ましい局面として、杭側連結部の鋼製プレート側縁が杭頭の外周面に溶接され、柱側連結部の鋼製プレート上縁がベース部の下面に溶接される。かかる局面によれば、連結構造の強度を確保することができる。他の局面として連結部と相手材はボルトおよびナット等の他の手段によって取付固定されてもよい。
【0011】
柱脚本体をベース部に取付固定する構造は特に限定されないが、本発明のさらに好ましい局面として、柱脚本体の下縁がベース部の上面に溶接される。かかる局面によれば連結構造の強度を確保することができる。他の局面として、柱脚本体とベース部はボルトおよびナット等の他の手段によって取付固定されてもよい。
【0012】
本発明の一局面として、杭頭、ベース部、柱側連結部、および杭側連結部を包み込む根巻コンクリートをさらに備えていてもよい。かかる局面によれば、連結構造の強度が一層大きくなる。
【0013】
本発明の溶接補助治具は、杭の杭頭外周面に周方向に間隔を空けて配列される複数の鋼製プレートに関し、1枚の鋼製プレートの側縁を杭頭外周面に溶接するための治具であって、杭の杭頭上縁に係合する係合部、および一端が係合部と結合し他端が杭頭上縁から離れる方向に突出する片持部とを有する係合部材と、片持部に吊り下げられる部材であって互いに向き合う1対の側壁部と1対の側壁部間に通される鋼製プレートを当該鋼製プレートの板厚方向に挟持して鋼製プレート側縁を杭頭外周面に沿わせる姿勢に着脱可能に保持する保持部とを有する保持部材と、を備える。かかる溶接補助治具によれば、溶接する作業が容易になり、工期短縮および低コスト化に資する。なお杭は、鋼管杭であり、あるいはSC杭(steel-concrete pile)であり、あるいは少なくとも杭上端領域の外周面が鋼材からなる杭である。
【0014】
本発明の一局面として、片持部の吊り下げ箇所に設けられて、鋼製プレートを保持する保持部材を杭頭へ近づけたり杭頭から遠ざけたりするように移動させる案内部をさらに備える。かかる局面によれば、保持部材に鋼製プレートを容易に供給することができる。
【0015】
本発明の一局面として、係合部材および/または保持部材から下方へ延び、鋼製プレートの下端を支持する支持部材をさらに備える。かかる局面によれば、重量物である鋼製プレートが不用意に脱落することを防止できる。
【0016】
本発明の一局面として、支持部材は、1対の壁部と、これら壁部に設けられて上下方向に延びる1対の長孔とを有し、保持部材は支持部材の1対の壁部間に配置され、 保持部材の保持部は、支持部材の1対の長孔を通り、保持部材の1対の側壁部にそれぞれ設けられるねじ孔にねじ込まれて、1対の側壁部間へ突出し、鋼製プレートを挟持する1対のねじであり、該ねじは1対の壁部よりも外側でナットと螺合し、該ナットを緩められて支持部材は上下方向に移動可能にされ、反対にナットを締め付けられて支持部材は上下方向の移動を禁止される。かかる局面によれば、鋼製プレートの上下方向寸法が異なっても、支持部材は鋼製プレートを下方から支持することができる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、杭に柱脚を連結固定する作業が従来よりも短期間で実行される。また現場における人手・工数が省力化され、低コスト化に資する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】地盤に打ち込まれる鋼管杭の杭頭を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態になる杭頭を示す側面図である。
図3】同実施形態の杭頭を示す平面図および側面図である。
図4】本発明の一実施形態になる柱脚を示す全体図である。
図5】同実施形態の杭頭に柱脚を取り付ける作業途中を示す側面図である。
図6】同実施形態の杭頭に柱脚を取り付ける作業途中を示す側面図である。
図7】同実施形態の杭頭および柱脚の位置関係を示す平面図である。
図8】同実施形態の杭頭および柱脚を示す側面図である。
図9】同実施形態の杭頭および柱脚の連結構造を示す側面図である。
図10】同実施形態の連結構造を鉄筋コンクリートで巻く作業を示す側面図である。
図11】同実施形態の連結構造に柱を建て込んだ状態を示す側面図である。
図12】本発明の一実施形態になる溶接補助治具を示す側面図である。
図13】同実施形態の溶接補助治具を示す断面図である。
図14】同実施形態の溶接補助治具を示す平面図である。
図15】同実施形態の溶接補助治具を示す断面図である。
図16】同実施形態の溶接補助治具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の実施に先立ち、地盤に構築された杭および杭頭を示す側面図である。図2は、本発明の一実施形態になる杭頭を示す側面図である。図3は、同実施形態の杭頭を示す平面図および側面図である。図4は、本発明の一実施形態になる柱脚を示す全体図であって、図面上側が平面図を、図面下側が側面図を表す。図5および図6は、図2に示す杭頭に図4に示す柱脚を取り付ける作業途中を示す側面図である。図7は同実施形態の杭頭および柱脚の位置関係を示す平面図である。図8は同実施形態の杭頭および柱脚を示す側面図である。図9は、同実施形態の杭頭および柱脚の連結構造を示す側面図であって、図6図8に示す杭頭および柱脚が連結固定される状態を表す。
【0020】
図1を参照して、地盤Aの平面上の設計位置Cには、図示しない杭打機で既製の杭10が鉛直に打ち込まれる。杭10の図示しない下端部は地盤に固定されている。杭10の上端部11は地上に露出している。杭10は例えば下端から上端まで円形断面の鋼管杭である。あるいは杭10は鋼管内部にコンクリートが充填されたSC杭(steel-concrete pile)等、他の鋼管コンクリート杭であってもよい。杭10は、設計高になるよう施工現場で上端部11を切断され、杭天端12が作成される。杭天端12を含む杭頭13の外周は鋼製であり、地上に露出している。
【0021】
杭10の杭芯Bは、杭10の円形断面の中心である。杭芯Bの実際の平面上の位置は、図示しない測量機等によって測量され、設計位置Cからの杭芯ずれ量Epが求められる。杭芯ずれ量Epは例えば平面上のX座標、Y座標で表示される。また杭天端12の実際の天端高さも測量され、設計高から高さずれ量Eqが求められる。高さずれ量Eqは例えばZ座標で表示される。杭芯ずれ量Epおよび高さずれ量Eqについては後述する。
【0022】
次に図2および図3に示すように、杭頭13には杭側連結部14が取付固定される。杭側連結部14は帯状の鋼製プレートであり、上下方向に真っ直ぐ延びる。具体的には杭側連結部14は、鋼製プレート側縁14bを、図3に示すように端へ行くほど板厚が小さくなるよう断面先細に形成され、溶接によって杭頭13外周面に固定される。本実施形態では、杭側連結部14が杭10の周方向に間隔を空けて複数設けられる。また杭側連結部14は、板厚方向を周方向にして、杭芯Bを中心に放射状に配列される。
【0023】
本実施形態の杭側連結部14は、施工現場で周方向45°間隔に8枚設けられる。あるいは周方向90°間隔に4枚設けられてもよいし、あるいは周方向30°間隔に12枚設けられてもよい等、複数枚であればよい。各杭側連結部14には鋼製プレートの板厚方向に貫通する貫通孔15が複数形成される。貫通孔15は上下方向に所定間隔を空けて配列される。貫通孔15の形状は特に限定されず、例えば本実施形態のように軸線Bに対して非平行に延びる横長の長孔である。
【0024】
施工現場とは異なる場所、具体的には鉄骨工場、では図4に示す柱脚20が作製される。柱脚20は、ベース部21と、ベース部21から下方へ突出する柱側連結部31と、ベース部21から上方へ突出する柱脚本体41とを有する。
【0025】
本実施形態のベース部21は、杭頭13の断面形状および柱脚本体41の断面形状よりも大きな鋼製プレートであり、例えば八角形などの多角形であって板厚方向が鉛直方向になるよう、杭天端12に載置される(図6)。あるいはベース部21は、四角形や他の形状であってもよい。
【0026】
柱側連結部31はベース部21の周縁部に取付固定される。柱側連結部31は帯状の鋼製プレートであり、上下方向に真っ直ぐ延びる。具体的には柱側連結部31は、鋼製プレート上端を、溶接によってベース部21の下面に固定される。柱側連結部31の配置は杭側連結部14と同じく放射状に配列され、ベース部21の中心B´を確定させる。
【0027】
各柱側連結部31には鋼製プレートの板厚方向に貫通する貫通孔32が複数形成される。貫通孔32は上下方向に所定間隔を空けて配列され、この所定間隔は杭側連結部14の貫通孔15に等しい。貫通孔32の形状は特に限定されず、例えば本実施形態のように軸線Bに対して平行に延びる縦長の長孔である。つまり、貫通孔15,32の一方が横長の長孔とされ、他方が縦長の長孔とされる。
【0028】
柱脚本体41は、鋼管からなり、上下方向へ鉛直に延びる。本実施形態の柱脚本体41は正方形断面の四角鋼管であるが、断面形状はこれ限定されず、図示しない変形例として柱脚本体41は例えばH型鋼であってもよい。柱脚本体41の上端部には、4枚の各側面にプレート42が溶接で取付固定される。柱脚本体41の下端は溶接によってベース部21の上面に固定される。この溶接は四角鋼管の全周に亘る。図4を参照して、柱脚本体41の柱芯C´は正方形断面の中心である。互いに接合されるベース部21と柱脚本体41の芯同士を対比すると、柱芯C´はベース部21の中心B´から杭芯ずれ量Epずれている。
【0029】
図5に示すように、柱脚20は鉄骨工場から施工現場に搬入され、玉掛ロープ100で連結相手になる杭頭13の直上に吊り下げられる。そして図6に太矢印で示すように降ろされてベース部21が杭天端12に載置される。この施工作業では、ベース部21の中心B´が杭芯Bに一致させられる。そうすると図7に示すように柱芯C´は設計位置Cに自ずと一致する。本実施形態につき補足説明すると、柱脚本体41の断面形状の一辺の寸法は、杭頭13の断面形状の半径よりも長くかつ直径よりも短い。なお断面形状は本実施形態に限られない。
【0030】
ここで附言すると図8に示すようにベース部21は自身の高さ位置を調整する上下方向調整手段として、複数のZ方向調節ねじ16が設けられる。本実施形態のZ方向調節ねじ16は、図7に示すように中心B´回りに円周状に配列される。具体的には、柱脚本体41よりも外側で、ベース部21の板厚方向に貫通するねじ孔が形成される。ねじ孔が配列される円周は、杭頭13を構成する丸形鋼管の円形断面に等しい。このねじ孔にZ方向調節ねじ16が螺合する。本実施形態のねじ孔は、柱脚本体41の正方形断面の各辺に沿って2個ずつ設けられ、全部で8個設けられる。Z方向調節ねじ16も同様である。Z方向調節ねじ16は、ねじ頭部(図略)をベース部21よりも上側にして、ねじ孔にねじ込まれ、ねじ軸部がベース部21の下面から突出可能である。Z方向調節ねじ16をねじ込む程、ねじ軸部がベース部21の下面から長く突出し、杭頭13の杭天端12に当接する。これにより柱脚20の高さが図8の両矢印で示すように調整される。なお図7に示すように、Z方向調節ねじ16の平面上の位置(X位置、Y位置)は、、柱脚本体41よりも外側に配置されて、柱脚本体41の断面と重ならないことが望ましい。なおねじ孔の個数およびZ方向調節ねじ16の本数は本実施形態に限られない。
【0031】
なおZ方向調節ねじ16の突出寸法を互いに異ならせることにより、杭天端12の凹凸を吸収可能である。
【0032】
図9を参照して、連通する貫通孔15,32には、ハイテンションボルト等のボルト33が通され、ナット34で締結固定される。かくして各柱側連結部31は、対応する杭側連結部14に強固に連結される。本実施形態になる杭と柱脚の連結構造は、生コンクリートを打設して建物基礎のアンカーボルトを作成するする施工工法と比較して、コンクリートの硬化を待つ必要がなく、遥かに短時間で完了する。本実施形態によれば、縦長および横長の長孔である貫通孔15,32同士が連通することから、柱側連結部31は特に強固に杭側連結部14に連結固定される。
【0033】
また本実施形態になる杭と柱脚の連結構造は、杭側連結部14および柱側連結部31の枚数を多くする程、これら連結部の上下方向寸法を長くする程、連結構造の剛性が飛躍的に向上する。
【0034】
図10および図11は本実施形態の杭と柱脚の連結構造を示す側面図である。本実施形態では、上述した杭10と柱脚20の機械的な連結に重畳して、選択的に、根巻コンクリート51を設けてもよい。具体的には、図9に示すように杭頭13を地上に露出させた状態で、図10に示すフープ鉄筋52およびコンクリート型枠53を設置して、フープ鉄筋52およびコンクリート型枠53で杭頭13と杭側連結部14と柱側連結部31を包囲する。次にコンクリート型枠53で区画された内部空間にコンクリートを打設して、根巻コンクリート51を作製する。上述した杭側連結部14と柱側連結部31とベース部21は根巻コンクリート51に埋設される。
【0035】
次に図11に示すように、建物の階数に応じて、柱60を柱脚20に継ぎ足す。柱脚20と柱60の連結は、柱脚20上端部に設けられるプレート42と、柱60の下端部に設けられるプレート62をガゼットプレート、ボルト、およびナットで連結固定することによって実現する。
【0036】
次に上述した図3の溶接作業について補足説明する。
【0037】
杭側連結部14を杭頭13に溶接して固定する際、図12の側面図および図13の断面図に示す溶接補助治具70が用いられる。なお図面の理解を容易にするため、図13以降で一部の部品が図略される。溶接補助治具70は、杭頭13に着脱可能に係合する係合部材71と、杭側連結部14を着脱可能に保持する保持部材81を備える。係合部材71は、水平方向に延び、一端に係合部72を、他端に片持部73を有する。係合部72は、下方へ突出する形状にされ、上方から杭頭13の上縁に係合する。片持部73は、係合部72と結合し、杭頭13上縁から離れる方向に突出する帯状の水平な平板である。
【0038】
図14は溶接補助治具70を示す平面図である。図15および図16は溶接補助治具70を示す断面図であって、図12中、XV―XVおよびXVI―XVIで示す水平断面で溶接補助治具70を切断し、切断面を上方から見下ろした状態を表す。図14に示すように、片持部73には、一端から他端へ延び、片持部73を上下方向に貫通する長孔74が形成される。長孔74には、上方からボルト75の軸部が通される。
【0039】
図13を参照して、保持部材81は、互いに向き合う1対の側壁部82,83と、側壁部82の上縁および側壁部83の上縁と結合する中間壁としての上壁部84を有する。上壁部84の中心には、板厚方向に貫通するねじ孔が形成され、かかるねじ孔にボルト75の軸部が螺合する。またボルト75の軸部は、片持部73よりも上方でナット77と螺合する。ナット77は長孔74の幅よりも大きいため、片持部73に係止する。これにより保持部材81はボルト75を介して片持部73に吊り下げられる。
【0040】
ボルト75は、長孔74に沿って移動可能である。これにより保持部材81は図12および図14に両矢印で示すように移動可能とされ、杭頭13に近づいたり、杭頭13から遠ざかったりすることができる。ボルト75および長孔74は保持部材81の案内部になる。なおナット77を締め込むことによって、保持部材81は移動不能に固定される。上壁部84よりも下方で、側壁部82,83の間には杭側連結部14が通される。
【0041】
図13および図15に示すように、一方の側壁部82は、杭側連結部14を着脱可能に保持する保持部として、ねじ孔と、該ねじ孔に螺合するボルト86を有する。他方の側壁部83も同様に、ねじ孔とボルト87を有する。これらのねじ孔は、側壁部82,83を板厚方向に貫通し、側壁部82のねじ孔と側壁部83のねじ孔が互いに整列する。ボルト86,87は、側壁部の外側からねじ孔にねじ込まれ、ボルト86,87の軸部同士が互いに接近する。そしてボルト86,87の先端同士が杭側連結部14を板厚方向に挟持する。反対にボルト86,87が緩められると、ボルト86,87の先端同士が杭側連結部14から離れる。
【0042】
図15に示すように、1対の側壁部82,83のうち杭頭13から遠い側の側縁同士には、中間壁85が架設される。中間壁85は、1対の側壁部82,83間の空間を、他端側から閉塞する。これにより中間壁85は、杭側連結部14が1対の側壁部82,83から抜け出して、杭頭13から遠ざかることを防止する。
【0043】
本実施形態の溶接補助治具70は、杭頭13の上縁に係合して、杭側連結部14を杭頭13の外周面に接触する姿勢に保持する。これにより杭側連結部14を杭頭13に溶接する作業準備が実現する。そしてボルト86,87を締め緩めされて、繰り返し利用される。
【0044】
本実施形態の保持部材81には、杭側連結部14を下方から支持する支持部材91がさらに設けられる。支持部材91は互いに対向する1対の壁部92,93と、壁部92の下縁および壁部93の下縁と結合する中間壁としての下壁部94を有する。
【0045】
壁部92には、上下方向に延びて、壁部92を板厚方向に貫通する長孔97が形成される。壁部93にも同様に長孔97が形成される。長孔97,97の上端は、係合部材71よりも上方に位置する。長孔97,97のかかる上端には、共通するボルト98が通され、ボルト98の先端にナット99が螺合する。このようにして壁部92,93の上端部同士は、ボルト98およびナット99で連結される。
【0046】
支持部材91は上下方向に延び、その全長は、保持部材81の上下方向長よりも長く、杭側連結部14の上下方向長よりも長い。1対の壁部92,93間には、1対の側壁部82,83が設置され、1対の側壁部82,83間には杭側連結部14が設置される。杭側連結部14は側壁部82,83よりも長尺であり、保持部材81から下方に突出する。本実施形態によれば、杭側連結部14の下端が下壁部94に下方から支持される。これにより重量物の杭側連結部14は、不用意な脱落を防止される。
【0047】
ボルト86,87の軸部は、1対の長孔97,97をそれぞれ通され、長孔97,97に沿って移動することができる。これにより支持部材91は、保持部材81に整列しながら、上下方向に移動可能である。またボルト86,87は、1対の壁部92,93よりも外側でナット88,89と螺合する。ナット88,89を締め込むことによって、支持部材91は移動不能に固定される。
【0048】
壁部92,93は保持部材81よりも上方へ突出し、ボルト98およびナット99は保持部材81および係合部材71よりも上方に配置される。これによりボルト98は、支持部材91の脱落を防止する。
【0049】
本実施形態の溶接補助治具70は、杭10の杭頭13外周面に鋼製プレートである杭側連結部14の側縁14bを溶接するための治具であって、杭頭13上縁に係合する係合部72、および一端が係合部72と結合し他端が杭頭13上縁から離れる方向に突出する片持部73とを有する係合部材71と、片持部73に吊り下げられる部材であって、互いに向き合う1対の側壁部82,83と、1対の側壁部82,83の間に通される杭側連結部14を着脱可能に保持する保持部としてのボルト86,86,87,87とを有する保持部材81と、を備える。溶接補助治具70により、杭側連結部14の姿勢が安定し、溶接作業が捗る。
【0050】
また図14に示すように、本実施形態の溶接補助治具70は、片持部73に設けられて、杭側連結部14を保持する保持部材81を両矢印のように杭頭13へ近づけたり杭頭13から遠ざけたりするように移動させる案内部としてのを吊り下げボルト75および長孔74をさらに備える。これにより杭側連結部14を保持部材81に固定する作業が容易になる。
【0051】
また本実施形態の溶接補助治具70は、係合部材71および/または保持部材81から下方へ延び、杭側連結部14の下端を支持する支持部材91をさらに備える。これにより杭側連結部14が不用意に脱落することが防止される。
【0052】
また本実施形態の支持部材91は、1対の壁部92,93と、壁部92,93に設けられて上下方向に延びる1対の長孔97とを有する。保持部材81は1対の壁部92,93間に配置される。保持部としての1対のボルト86,87は、支持部材91の1対の長孔97,97を通り、保持部材81の1対の側壁部82,83にそれぞれ設けられるねじ孔にねじ込まれて、1対の側壁部82,83間へ突出し、杭側連結部14を挟持する。ボルト86,87の軸部は、1対の壁部92,93よりも外側で、ナット88,89と螺合し、ナット88,89を緩められて支持部材91は上下方向に移動し、ナット88,89を締め付けられて支持部材91は上下方向の移動を拘束される。これにより杭側連結部14は、所定の高さで保持される。
【0053】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば杭側連結部14と柱側連結部31は互いに溶接されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、建設業において有利に利用される。
【符号の説明】
【0055】
10 杭、 11 上端部、 12 杭天端、 13 杭頭、
14 杭側連結部、 14b 鋼製プレート側縁、 15,32 貫通孔、
16 Z方向調節ねじ、 20 柱脚、 21 ベース部、
31 柱側連結部、 33 ボルト、
34,77,88,89,99 ナット、 41 柱脚本体、
42,62 プレート、 51 根巻コンクリート、
52 フープ鉄筋、 53 コンクリート型枠、 60 柱、
70 溶接補助治具、 71 係合部材、 72 係合部、
73 片持部、 73,74,97 長孔、
75,86,87,98 ボルト、 81 保持部材、
82,83 側壁部、 84 上壁部、 91 支持部材、
92,93 壁部、 A 地盤、 B´ ベース部の中心、
B 杭芯、 C´ 柱芯、 C 設計位置、
Ep 平面上の杭芯ずれ量、 Eq 高さずれ量。
【要約】
【課題】建物杭基礎のコンクリートに埋設されるアンカーボルトよりも短い工期で、杭と柱脚を連結することができる連結構造を提供する。
【解決手段】鋼製の杭頭13には、杭頭の外周面に周方向に間隔を空けて複数の杭側連結部14,14が取付固定される。柱脚20は、杭頭13の杭天端12に載置されるベース部21と、このベース部21に設けられて杭側連結部14に固定される複数の柱脚側連結部31と、ベース部21に設けられて当該ベース部から上方へ突出する柱脚本体41とを含む。杭側連結部14および柱側連結部41は、上下方向に延びて杭頭13の外周面に放射状に配列される鋼製プレートであり、ボルト33で相互に固定される。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16