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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100005
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】コイル装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20220628BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220628BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20220628BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
H01F37/00 F
H01F37/00 G
H01F37/00 E
H01F37/00 A
H01F41/04 A
H01F27/29 T
H01F27/32 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214113
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】山口 喬之
(72)【発明者】
【氏名】内堀 敏男
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
5E062
【Fターム(参考)】
5E043EB01
5E044BB05
5E062FF10
(57)【要約】
【課題】 端子台を併設した場合にも、電装基板におけるコイル装置の占有面積の増大を抑制し得るコイル装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 1対のE字状コア3A、Bと、これら1対のE字状コア3A、Bの、互いに対応する脚部33A、B等を突き合せた状態で、これらE字状コア3A、Bの中脚部33A、Bが嵌挿された筒状ボビン6と、筒状ボビン6の外周面に巻回されるコイル部4と、コイル部4を収納するケース部2とを備え、コイル部4の始端41Aと終端41Bに各々接続された金属端子5A、Bと、これら金属端子5A、Bが外部配線と接続するように取り付けられる、絶縁性の端子台7とを備え、端子台7が、少なくとも一部において、ケース部2の上方に配置されるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のE字状コアと、これら1対のE字状コアの、互いに対応する脚部を突き合せた状態で、これらE字状コアの中脚部が嵌挿された筒状ボビンと、該筒状ボビンの外周面に巻回されるコイル部と、該コイル部を収納するケースとを備えたコイル装置において、
該コイル部の始端と終端に各々接続された金属端子と、これら金属端子が外部配線と接続するように取り付けられる、絶縁性の端子台とを備え、該端子台が、少なくとも一部において、前記ケースの上方に配置されていることを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記金属端子と前記コイル部の間の絶縁をとるための樹脂製カバーを備え、前記端子台が該樹脂製カバーと一体とされていることを特徴とする請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記樹脂製カバーは、前記筒状ボビンの上方の少なくとも一部と係合され、前記筒状ボビンの下方の少なくとも一部に対応する部分が欠如していることを特徴とする請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記コイル部の一端側から、前記始端と前記終端が引き出され、前記コイル部の他端側に前記端子台が配置され、前記コイル部の一端側に対応する前記筒状ボビンの位置に、前記始端と前記終端の途中部分を各々からげる、からげ部が配されていることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記ケースの一方側に、前記E字状コアを該ケースの他方側に押圧して、該E字状コアの外側面を該ケースの内側面に当接させる弾性部材が配されていることを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1項に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記ケースの他方側の一方の角部に、前記E字状コアの角部が遊挿される堀込み部が形成され、該E字状コアの該堀込み部に遊挿される角部を挟む該E字状コアの2つの外側面を、該堀込み部が形成された前記角部を挟む前記ケースの2つの内側面に当接させる構成とされていることを特徴とする請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
1対のE字状コアを、互いに対応する脚部を突き合せた状態で、これらE字状コアの中脚部に嵌挿された筒状ボビンの外周面にコイル部が巻回されてなるコイル組立体をケース内に収納してなるコイル装置の製造方法において、
該コイル部の一端側から始端と終端を各々引き出し、
前記筒状ボビンから外れた位置で、該コイル部の始端と終端に各々金属端子を装着し、
少なくとも一部が前記ケースの上方であって、前記コイル部の他端側に配置された端子台に、前記始端と前記終端に装着された金属端子を取り付けることを特徴とするコイル装置の製造方法。
【請求項8】
前記コイル部の始端と終端に各々金属端子を装着した後、前記コイル部の一端側に対応する前記筒状ボビンの所定位置に形成されたからげ部に、前記始端と前記終端の途中部分を各々からげることを特徴とする請求項7に記載のコイル装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車やハイブリッド車に搭載されるコイル装置およびその製造方法に関し、詳しくは、コイル部の始端部と終端部を取り付け、外部配線との電気的な中継を行う端子台を備えたコイル装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル部の始端部と終端部を取り付け、外部配線との電気的な中継を行う端子台としては、従来より、アルミ等の金属ケースの側壁部に増設される構成とされたものが知られている(特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-041919号公報
【特許文献2】特開2018-195684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車載用のコイル装置においては、電装部品の高集積化の要請に伴って、電装基板の占有面積がより小さいものが要求されており、ケースの側壁部の外側に配された端子台により、電装基板におけるコイル装置の占有面積が増大することが問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、端子台を併設した場合にも、電装基板におけるコイル装置の占有面積の増大を抑制し得るコイル装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル装置は、
1対のE字状コアと、これら1対のE字状コアの、互いに対応する脚部を突き合せた状態で、これらE字状コアの中脚部が嵌挿された筒状ボビンと、該筒状ボビンの外周面に巻回されるコイル部と、該コイル部を収納するケースとを備えたコイル装置において、
該コイル部の始端と終端に各々接続された金属端子と、これら金属端子が外部配線と接続するように取り付けられる絶縁性の端子台とを備え、該端子台が、少なくとも一部において、前記ケースの上方に配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記金属端子と前記コイル部の間の絶縁をとるための樹脂製カバーを備え、前記端子台が該樹脂製カバーと一体とされていることが好ましい。この場合において、前記樹脂製カバーは、前記筒状ボビンの上方の少なくとも一部と係合され、前記筒状ボビンの下方の少なくとも一部に対応する部分が欠如していることが好ましい。
【0008】
また、前記コイル部の一端側から、前記始端と前記終端が引き出され、前記コイル部の他端側に前記端子台が配置され、前記コイル部の一端側に対応する前記筒状ボビンの位置に、前記始端と前記終端の途中部分を各々からげる、からげ部が配されていることが好ましい。
また、前記ケースの一方側に、前記E字状コアを該ケースの他方側に押圧して、該E字状コアの外側面を該ケースの内側面に当接させる弾性部材が配されていることが好ましい。
【0009】
また、前記ケースの他方側の角部の一方に、前記E字状コアの角部が遊挿される堀込み部が形成され、該E字状コアの該堀込み部に遊挿される角部を挟む該E字状コアの2つの外側面を、該堀込み部が形成された前記角部を挟む前記ケースの2つの内側面に当接させる構成とされていることが好ましい。
【0010】
本発明のコイル装置の製造方法は、
1対のE字状コアを、互いに対応する脚部を突き合せた状態で、これらE字状コアの中脚部に嵌挿された筒状ボビンの外周面にコイル部が巻回されてなるコイル組立体をケース内に収納してなるコイル装置の製造方法において、
該コイル部の一端側から始端と終端を各々引き出し、
前記筒状ボビンから外れた位置で、該コイル部の始端と終端に各々金属端子を装着し、
少なくとも一部が前記ケースの上方であって、前記コイル部の他端側に配置された端子台に、前記始端と前記終端に装着された金属端子を取り付けることを特徴とするものである。
この場合において、前記コイル部の始端と終端に各々金属端子を装着した後、前記コイル部の一端側に対応する前記筒状ボビンの所定位置に形成されたからげ部に、前記始端と前記終端の途中部分を各々からげることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコイル装置は、コイル装置における端子台を、ケース側壁部に配置するのではなく、少なくとも一部が、ケースの上方に位置するように構成し、端子台がケースの外側にはみ出す部分を小さくして、電装基板におけるコイル装置の占有面積が増大するのを抑制している。
これにより、車載用のコイル装置に端子台を設ける場合においても、電装基板上における電装部品の集積化を高めることが可能となり、電子化が急激に進む車載用のコイル装置においては特に有用である。
【0012】
また、本発明のコイル装置の製造方法は、上述したように、電装基板におけるコイル装置の占有面積が増大するのを抑制し得るコイル装置を製造することができるが、その他に以下のような効果を奏することができる。
すなわち、前記ケースの上方から外れた位置で、該コイル部の始端と終端に各々金属端子を装着しており、コイル部と金属端子の接続工程の自動化、機械化を可能として製造効率を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る端子台付きコイル装置の全体を示す斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3図1に示すコイル装置の充填剤を充填する前の状態を示す断面斜視図である。
図4】一対のE字状コア部品の斜視図である。
図5】金属端子を接続したコイル部の斜視図である。
図6】筒状ボビンの斜視図である。
図7】端子台を備えた樹脂製カバーの斜視図である。
図8】ケース部の内部形態を示す斜視図である。
図9】E字状コアとこれを押圧する弾性部材の斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態における堀込み構造を示す要部斜視図である。
図11】本発明の一例の製造方法における途中工程を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[コイル装置]
以下、本発明の実施形態に係るコイル装置1について、図1図9を適宜用いて説明する。なお、本実施形態のコイル装置1の概略は、上部が開口した金属(アルミニウム等)製等の熱伝導性の良い材料からなる金属ケース部2と、その内部に収納された主にE字状コア3A,3Bとコイル部4からなるコイル組立体10を備え、前記ケース部2およびコ
イル組立体10の間に絶縁性を有する冷却用の充填剤11が注入されて構成される。
【0015】
前記コイル組立体10において、前記コイル部4の巻線部から一端側に引き出された巻線の始端41Aと終端41Bに金属端子5A,5Bが各々接続され、これらの金属端子5A,5Bが不図示の外部配線と接続するように樹脂製端子台7に取り付けられるものであり、この端子台7が前記ケース部2の上部(上方部位)に配設されている。
次に、各構成部分を順に説明する
【0016】
<E字状コア>
本発明の実施形態に係るコイル装置1(コイル組立体10)は、図4に示すような、1対のE字状コア3A,3Bを備える。両E字状コア3A,3Bは、各ベース部31A,31Bから直角に突出した各脚部(両外脚部32A,32B、中脚部33A,33B、および両外脚部34A,34B)の先端が互いに対向するように端面を突き合わせる配置とすることで、図4に示すように、日字状コアが形成されて閉磁路が構成される。
【0017】
そして、前記コイル装置1は、上記E字状コア3A,3Bの中脚部33A,33Bが嵌挿された筒状ボビン6と、該筒状ボビン6の外周面に巻回されたコイル部4とを備えている(図3参照)。なお、上記中脚部33A,33Bの突合せ部分の両先端部間にはスペーサー35が介在されている。このスペーサー35は中脚部33A,33Bに沿って複数に分割して配置してもよい。
【0018】
前記E字状コア3A,3Bを構成する部材は、Mn-Znを主材料として形成されている。Mn-Znを材料として用いることにより、コアの透磁率、磁束密度を高く設定することができる。
そのほか鉄系材料(電磁鋼板、圧粉磁心(純鉄、Fe-Si-AL系合金、Ni-Fe-Mo系合金、Ni-Fe系合金)、アモルファス等)を用いることも可能である。
【0019】
<コイル部>
上記のように突き合わせられた棒状の中脚部33A,33Bの外周側には、図5に示すコイル部4が巻回されるように形成される。すなわち、このコイル部4は、例えば、被覆丸導線が、筒状ボビン6(図6参照)の外周に、内周側始端41Aから外周側終端41Bに、複数層(偶数層)に巻回積層され筒状の巻線部41に形成される。なお、図5においては、巻線部41の各導線は図示を省略している。
【0020】
コイル部4は、図5に示すように、巻回始端41Aおよび終端41Bが巻線部41の一端側の縁部から引き出され、各々の先端部に金属端子5A,5Bが接続されている。この金属端子5A,5Bは、コイル部4の他端側の上部に設置された端子台7に装着され、ここで外部配線と接続され給電される。
上記コイル部4は、1対のE字状コア3A,3Bに応じて1つ設けられ、突き合わせた中脚部33A,33Bに筒状ボビン6を介して嵌挿されるように組付けられる。
【0021】
上記コイル部4の巻線部41は予めボビン6に筒状に巻回されていて、金属ケース部2に収納される際に、E字状コア3A,3Bの中脚部33A,33Bに該巻線部41を嵌挿してE字状コア3A,3Bと組み合わせ、その始端41Aおよび終端41Bを、金属端子5A,5Bと接続し、途中部分をからげ部65A,65Bに各々からげてから、金属端子5A,5Bを上部の端子台7に保持させるものである。
【0022】
<金属端子>
上記金属端子5A,5Bは、図5に示すように、先端側に平板接続部51A,51Bを有し、これに孔部52A,52Bが開口され、締結ボルト(不図示)が挿通される。該平板接続部51A,51Bは、端子台7のスリット71A,71B(図7)に挿通され、該端子台7に保持される。前記金属端子5A,5Bと下方の前記コイル部4との間の絶縁をとるための樹脂カバー8(図7参照)が配設され、該樹脂カバー8と端子台7とが一体に成型されている。
【0023】
金属端子5A,5Bにおいて上記平板接続部51A,51Bと反対側の基部は、折り返されてカシメ部53A,53Bとして構成されている。このカシメ部53A,53Bは、前記巻線始端41Aおよび巻線終端41Bの先端部を巻き込んで押圧カシメによって結合されてなる。平板接続部51A,51Bの根元部の側辺には、端子台7の並列したスリット71A,71Bに嵌挿した際の位置決めストッパとなる係止突起54A,54Bを備えるとともに、ギザギザ突起状の戻り止め(スリット71A,71Bの樹脂製の内壁部に喰い込むように形成される)55A,55Bを備える。
【0024】
<ボビン>
図6に示すように、外周に巻線部41が巻回される筒状ボビン6は、内周部にコイル部4の内孔4aに沿う筒部61を備え、この筒部61の内側には前記E字状コア3A,3Bの棒状の中脚部33A,33Bの周面との間に隙間を保つ突条61aが形成されている。
前記筒部61の両端部には、コイル部4の断面形状に対応する楕円形をした平板輪状のフランジ62,62が各々設けられている。該フランジ62,62の下端には、ケース部2の内部に設置した際に、該ケース部2の底壁21の上面に先端が当接する脚部62aが各々2か所に形成され、この脚部62a,62aの間には開口通路62bが形成され、後述の注入された充填剤11が流通する。
【0025】
さらに、ボビン6における前記コイル部4の巻線始端41Aおよび終端41Bが引き出される一端側である後端部(図6で右側)には、この一端側のフランジ62の上部に後方に突出するプレート63が配設されている。該プレート63には前記コイル部4の一端側から後方に引き出された巻線始端41Aと終端41Bとを分離する中央突起64が立設され、その両側に巻線始端41Aおよび終端41Bの途中部分を各々からげる鍵状のからげ部65A,65Bが配設されてなる。これら両からげ部65A,65Bにはそれぞれ巻線を係止してからげるための係合溝部66A,66Bが形成されている。
【0026】
<樹脂製カバー、端子台>
前記E字状コア3A,3Bとコイル部4は、前記ボビン6の筒部61が間に介在することにより絶縁され、また、コイル部4の外周側には、樹脂製カバー8の湾曲プレート81が存在することにより金属端子5A,5Bと絶縁される。
【0027】
上記樹脂製カバー8は前記ボビン6の外側に嵌め込むことで、該ボビン6の上方の少なくとも一部と係合されて、前記コイル部4の外周を覆うように固定される。この樹脂製カバー8には、前述のように、端子台7が一体に設置されている(図7参照)。上記樹脂製カバー8は、前記コイル部4の上方を覆う湾曲プレート81を有し、該湾曲プレート81の前部に端子台7が一体成型されてなる。なお、湾曲プレート81の下半分(下方の少なくとも一部)はコイル部4の放熱性を高める目的で除去され欠如している。また樹脂製カバー8の前部は、コイル部4の上半分の前方を覆う弧状(帯状)の形状となっている。後部にはコイル部4の側部後方を覆う側板82が設置されている。
【0028】
前記筒状ボビン6および樹脂製カバー8の成型材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、等及び上記樹脂成形体材料にガラスおよび熱伝導性フィラーを添加したものを用いることができる。
【0029】
一方、端子台7は、上記湾曲プレート81と一体成型され、前記始端用および終端用の金属端子5A,5Bを嵌挿状態で保持するスリット71A,71Bをそれぞれ備えた保持部72A,72Bが、中央枠73の両側に並設されている。この保持部72A,72Bには締結ナット(不図示)がはめ込まれる六角形状の凹部76を備え、図示しない外部端子と締結され、電気的接続が行われる。
【0030】
<ケース部>
前記1対のE字状コア3A,3Bを含むコイル組立体10を収容するケース部2は、上部が開口した金属(アルミニウム等)製等の熱伝導性の良い材料からなり、図8に示すように、矩形状の底壁21の四方に側壁22が立設されて、該コイル組立体10を収容し得る高さと平面的広さを有する。下部には4本の取付用の脚部24が一体に配設されている。上記側壁22の内面下部には略半周に渡って壁面の厚みが増大するフランジ部23が形成されている。また、このフランジ部23が形成されていない、図8で手前側に位置する側壁22の両端部近傍には、後述の弾性部材9を固定するためのネジ穴25を有する。
【0031】
前記ケース部2の側壁22の上縁は、図3に示すように、収容したコイル組立体10のE字状コア3A,3Bの高さより若干高く、後に充填される冷却用充填剤11の充填高さLより高く設定され、この充填剤11があふれ出さないように形成している。
【0032】
<弾性部材>
ケース部2に収容したE字状コア3A,3Bをケース部2の内壁面に押圧付勢する弾性部材9は、図9に示すような板バネ部材によって構成される。該弾性部材9は、図1,3にも示すように、中間部の水平板部91が取付面となり、ケース部2の側壁22の上端面に載置され、その両側端部が固定ピン90の締め付けにより該ケース部2に取り付けられる。
【0033】
前記弾性部材9の水平板部91は、中央部が下方に折り曲げられて垂下部92となり、その下端部が水平に折り曲げられ、その内端部で上方に折り返されて、略U字状の板バネ部93が形成される。前記ケース部2に組み立てたコイル組立体10を収容し、そのケース部2の側壁22とE字状コア3Bの一端側のベース部31Bとの間に、上方より弾性部材9を押し込み、固定ピン90を締め付けて固定する。この組み付けで板バネ部93の先端が一方のE字状コア3Bの一端側のベース部31Bにおける端面に接触し、このE字状コア3A,3Bを対向するケース側壁22の内面に押圧し、このE字状コア3A,3Bの端面とケース面との密着を得ることができる。
【0034】
<堀込み構造>
図10は、前述の実施形態に掘込み部20の構造を付加した態様を示し、E字状コア3A,3Bの2つの側面の角度変動を行って、ケース部2の2つの内壁面とE字状コア3A,3Bの2つのコア面との密着性を高める掘り込み構造を付加している。これは、ケース部2の他方側の隅角部に、前記E字状コア3A,3Bの角部38が遊挿される堀込み部20の円筒孔28が形成され、このE字状コア3A,3Bにおける上記円筒孔28に遊挿される角部38を挟む該E字状コア3A,3Bの2つの外側面を、該堀込み部20が形成された前記円筒孔28を含む前記ケース部2の2つの内側面に当接させる構成とされている。
【0035】
具体的には、E字状コア3A,3Bの角部38、つまり2つの側面が直交する直角角部が、ケース部4に形成した円筒内面を有する堀込み部20の円筒孔28の該円筒内面に当接して配置され、角部38が円筒面を滑るように移動することで、E字状コア3A,3Bの姿勢が変動可能となっている。つまり、ケース部4の2つの直交面に対してE字状コア3A,3Bの直交面が直角に当接していない状態で、傾斜して接触している場合には、前述の弾性部材9の付勢力などの力が作用したときに、上記角部38が円筒孔28の当接位置を変更することで、角度が微調整されて両者の2つの面が密着する作用を有している。
【0036】
[コイル装置の製造方法]
次に、本発明実施形態の製造方法について説明する。つまり、1対のE字状コア3A,3Bを、互いに対応する脚部(外脚部32A,32B、中脚部33A,33Bおよび外脚部34A,34B)を突き合わせた状態で、これらE字状コア3A,3Bの中脚部33A,33Bが嵌挿された筒状ボビン6の筒部61の外周面にコイル部4が巻回されてなるコイル装置1の製造方法である。
【0037】
まず、コイル部4の一端側から巻線41の始端41Aと終端41Bを各々長めに引き出し、このコイル部4の上方から外れた位置、例えば図11に示すように、さらに一端側に移動した位置で、このコイル部4の始端41Aと終端41Bに各々金属端子5A,5Bを装着する。その際、コイル部4の一端側に対応する前記筒状ボビン6の所定位置に形成されたからげ部65A,65Bに、前記始端41Aと終端41Bの途中部分を各々からげる。そして、前記コイル部4の他端側の上部に配置された端子台7に適応して、前記始端41Aと終端41Bに装着された金属端子5A,5Bを取り付けてコイル装置1を製造する。
【0038】
具体的には、まず、コイル組立体10を組み立てる。E字状コア3A,3Bの対応する中脚部33A,33Bおよび両脚部32A,32B(34A,34B)をそれぞれ突き合わせて組み合わせ、その際、筒状ボビン6に導線による巻線部41を巻回してコイル部4を作成し、このコイル部4をボビン6とともに前記E字状コア3A,3Bの中脚部33A,33Bの外側に組み付ける。さらに、コイル部4の筒状ボビン6に、端子台7が一体となった樹脂製カバー8を組み付ける。次に、コイル部4の巻線始端41Aと終端41Bを引き出し、ケース部2の上方から外れた位置で先端部に金属端子5A,5Bを装着するとともに、これらコイル部4の巻線始端41Aと終端41Bを折り返すように引き廻して、途中部分をからげ部65A,65Bにからげる。そして、この金属端子5A,5Bを端子部7に装着してコイル組立体10を作成してなる。その後、コイル組立体10をケース部2に弾性部材9とともに収容し、隙間に充填剤11を注入する。
【0039】
上記充填剤11を注入する状態においては、ケース部2に組立体10を上方からセットすると、ボビン6のフランジ62の脚部62aの下端がケース底壁21に当接し、中央の開口通路62bが開口した状態とされる。一方、E字状コア3A,3Bのベース部31A,31Bの下端はケース部2の底面より浮いて下部に空間が形成された状態とされる。そして、上方から注入された充填剤11は、これらの空間を通って下方に移動しつつ、底部を水平方向にも移動して、コイル部4およびE字状コア3A,3Bの周囲に至り、図3の充填ラインLの位置にまで充填を行う。この満たされた充填剤11によりコイル部4、E字状コア3A,3Bなどのコイル装置1の全体の冷却が行われ性能が維持される。
【0040】
上記コイル装置1の製造方法をさらに説明する。図11は、途中工程を示すもので、金属端子5A,5Bに対する巻線始端41Aおよび終端41Bの接続工程を示し、この工程の作業が端子部7の上部配置に対応して容易に行えるように設定している。この接続工程においては、金属端子5A,5Bをコイル部4およびコア3の上方から側方に逃がして、上下に制約のない空間部で上下方向から治具で、金属端子5A,5Bと巻線始端41Aおよび終端41Bとを挟んでカシメ処理を行う。これにより、カシメ工程の自動化、機械化を可能として効率を高めることが可能である。
なお、金属端子5A,5Bに対する巻線始端41Aおよび終端41Bの接続工程として、はんだ処理等による他の接続処理を用いる場合も、同様の効果を奏する。
【0041】
つまり、コイル部4の巻線部41の縁部より始端41Aおよび終端41Bを引き出し、コイル部4の巻線部41の軸方向に延ばし、端子台7と反対側の位置において金属端子5A,5Bの湾曲している折り返しカシメ部53A,53Bの上に、前記始端41Aおよび終端41Bを当てて上下の治具で挟んで押圧してカシメ処理を行い、両者を電気的に接続する工程を端子台7から離れた位置で行う。その後、金属端子5A,5Bとともに始端41Aおよび終端41Bの配線部分を反対側に折り曲げる。その際、始端41Aおよび終端41Bの巻線途中をからげ部65A,65Bに係合し、側方に通して通過させる。ここで、巻線途中をからげ部65A,65Bに1~数ターン絡げて、金属端子5A,5Bをスリット71A,71Bに挿入する際にコイル部上面を這う巻線の引き出しの長さを調整することも可能である。このような、からげ部65A,65Bにおける調整処理は、上記接続の作業を行う位置と端子台7の位置の距離が大きい場合に特に有効である。すなわち、巻線の引出しが長めであっても、コイル部上面における巻線の遊び量が過剰になって不都合が生じる虞がなくなる。
その後、金属端子5A,5Bを端子台7のスリット71A,71Bに、それぞれ挿入し、係止突起54A,54Bによるストッパを端子台7の壁面に充てて停止させるとともに保持させる。その際、端子台7の保持部72A,72Bには、凹部76に締結ナットを嵌めておく。そして、締結ボルトを端子の孔部52A,52Bから締結ナットにねじ込んで締結する。
【0042】
本発明のコイル装置としては上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態の磁気結合型コイル装置においては、ベース部から3つの脚部が突出したE字型コアを2つ組み合わせてコア部が形成されているが、本発明のコイル装置としてはこれに限られるものではなく、複数のコアを組み合わせてE字形状となるようにしたコアを1組揃えてコア部を形成するようにしてもよい。
また、端子台の形成材料としては、樹脂材とすることが好ましいが、その他の絶縁性材料を用いることも可能である。
【0043】
また、上記実施形態に係るコイル装置は単体で構成されているが、本実施形態に示すコイル装置を複数個配列して(例えば、3つのコイル装置を、一列に配列したり、全体としてL字型、あるいは3角形となるように配列して)、所望の特性を得るように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 コイル装置
2 ケース部
3A,3B E字状コア
4 コイル部
4a 内孔
5A,5B 金属端子
6 筒状ボビン
7 端子台
8 樹脂製カバー
9 弾性部材
10 コイル組立体
11 充填剤
20 堀込み部
21 底壁
22 側壁
23 フランジ部
24 脚部
25 ネジ穴
28 円筒孔
31A、31B ベース部
32A、32B 外脚部
33A、33B 中脚部
34A、34B 外脚部
35 スペーサー
38 角部
41 巻線部
41A 始端
41B 終端
51A、51B 接続部
52A、52B 孔部
53A、53B カシメ部
54A、54B 係止突起
55A、55B 戻り止め
61 筒部
61a 突条
62 フランジ
62a 脚部
62b 開口通路
63 プレート
64 中央突起
65A,65B からげ部
66A,66B 係合溝部
71A,71B スリット
72A,72B 保持部
73 中央枠
76 凹部
81 湾曲プレート
82 側板
90 固定ピン
91 水平板部
92 垂下部
93 板バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11