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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100027
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/02 20060101AFI20220628BHJP
   B25J 9/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B25J5/02 Z
B25J9/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214153
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】520409497
【氏名又は名称】株式会社アイナックシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】稲員 重典
(72)【発明者】
【氏名】田志 宗一郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS02
3C707CT05
3C707DS01
3C707HT02
3C707HT04
(57)【要約】
【課題】余分な可動域を発生させることなく、栽培設備から収穫した果実や、店舗や倉庫の製品等の被搬送物を効率良く搬送することが可能な搬送装置の提供。
【解決手段】台車10上で鉛直軸周りに回転可能な台座11と、台座11から鉛直上方向に延びる第1のアーム12と、第1のアーム12に対して摺動自在に支持され、鉛直方向に移動可能なスライダー13と、水平方向に延び、スライダー13に対して水平方向に移動可能に支持された第2のアーム14であり、一端部に被搬送物を保持する保持部15が設けられる第2のアーム14とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車上で鉛直軸周りに回転可能な台座と、
前記台座から鉛直上方向に延びる第1のアームと、
前記第1のアームに対して摺動自在に支持され、鉛直方向に移動可能なスライダーと、
水平方向に延び、前記スライダーに対して水平方向に移動可能に支持された第2のアームであり、一端部に被搬送物を保持する保持部が設けられる第2のアームと
を有する搬送装置。
【請求項2】
前記第1のアームの上端部および下端部にそれぞれ回転可能に支持された第1のローラーおよび第2のローラーと、
前記第2のアームの前記保持部が設けられる側と反対側の端部に回転可能に支持された第3のローラーと、
前記スライダーの四隅部にそれぞれ回転可能に支持された4つの中間ローラーと、
前記第2のアームの前記保持部が設けられる側の端部に両端が固定され、前記第1、第2および第3のローラーと前記4つの中間ローラーとに十文字状に掛け渡された第1のベルトと、
前記第1のアームの下部または前記台座に設けられ、前記第1のローラーを回転駆動する第1のモーターと、
前記第1のローラーと前記第1のモーターとに掛け渡された第2のベルトと、
前記第1のアームの下部または前記台座に設けられ、前記第2のローラーを回転駆動する第2のモーターと
を有する請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記台車を有し、
前記台車は、前記被搬送物の搬送方向に沿って張られたワイヤーに移動方向をガイドされるワイヤーガイドを有する請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
並設された複数の搬送レーンであり、前記ワイヤーがそれぞれ張られる複数の搬送レーンと、
前記ワイヤーの端部に設けられ、前記台車が乗り上げる高台であり、前記複数の搬送レーンの並ぶ方向に並設された高台と
を有し、
前記台車は、前記搬送レーンの延設方向と前記高台の並設方向とに走行方向を方向転換可能な駆動輪を有し、前記ワイヤーにガイドされ、前記駆動輪により前記搬送レーンの延設方向に駆動されて前記高台へ乗り上げ、前記駆動輪の走行方向を前記高台の並設方向に転換して隣の高台に移動した後、前記駆動輪の走行方向を前記搬送レーンの延設方向に転換して前記搬送レーンの隣の搬送レーンに降り、前記ワイヤーの隣のワイヤーにガイドされて前記駆動輪により前記隣の搬送レーンの延設方向に駆動されるものである
請求項3項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記台車は、自在キャスターを支持する底板と、前記底板を貫通して前記駆動輪を支持する支持軸と、前記支持軸を支持する支持板と、前記底板上に立設され、前記支持板を貫通する支柱と、前記支柱の上部に締結されるボルトと、前記ボルトにより押圧される押さえ板と、前記支持板と前記押さえ板との間に設けられる弾性体とを備えたものである請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第2のアームは、前記台車の移動の際は前記搬送レーンの延設方向と平行に保持されることを特徴とする請求項4または5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記第2のアームの前記保持部が設けられる側と反対側の端部に前記保持部と同等の保持部または錘を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培設備から収穫した果実や、店舗や倉庫の製品等の被搬送物を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業に限らず自動化の一環としてアーム型ロボットが普及してきている。しかし、アーム型ロボットは多用な用途を想定されているため、多関節で複雑な機構が採用されている。例えば、栽培植物が植え付けられているラインに沿って移動しながら果実を収穫する果実収穫ロボットとして、屈伸自在な多関節アームの先端に摘果ハンドを設け、多関節アームを適当に屈伸させて摘果ハンドの位置を調節するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3052471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多関節アームの各アームの長さは一定であるため、使用する場所によってはアームの可動領域が不足する。図20は上記従来の果実収穫ロボットの多関節アームの可動領域を示す説明図である。図20に示すように、多関節アーム100の最大可動領域A1は台座101を中心とする円弧状となっているため、多関節アーム100の最大可動高さA2内であっても台座100中心から離れた位置(座標A3)に多関節アーム100は届かない。
【0005】
したがって、座標A3に多関節アーム100を届かせるためには多関節アーム100そのものを大きくする必要があり、その結果、重量の増加や消費電力の増加といった課題が生じてしまう。また、座標A3に多関節アーム100を届かせるために、図21に示すように余分な可動域A4が発生することになる。
【0006】
そこで、本発明においては、余分な可動域を発生させることなく、栽培設備から収穫した果実や、店舗や倉庫の製品等の被搬送物を効率良く搬送することが可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送装置は、台車上で鉛直軸周りに回転可能な台座と、台座から鉛直上方向に延びる第1のアームと、第1のアームに対して摺動自在に支持され、鉛直方向に移動可能なスライダーと、水平方向に延び、スライダーに対して水平方向に移動可能に支持された第2のアームであり、一端部に被搬送物を保持する保持部が設けられる第2のアームとを有するものである。本発明の搬送装置によれば、被搬送物を保持する保持部は第2のアームによって水平方向に移動可能であるとともにスライダーによって鉛直方向に移動可能であり、さらにスライダーを支持する第1のアームが台車上で鉛直軸周りに回転可能であるため、台車の走行方向に直交する面に対しては台車の中心から第2のアームおよびスライダーのそれぞれの最大移動範囲内を全てカバーすることが可能となる。
【0008】
本発明の搬送装置は、さらに、第1のアームの上端部および下端部にそれぞれ回転可能に支持された第1のローラーおよび第2のローラーと、第2のアームの保持部が設けられる側と反対側の端部に回転可能に支持された第3のローラーと、スライダーの四隅部にそれぞれ回転可能に支持された4つの中間ローラーと、第2のアームの保持部が設けられる側の端部に両端が固定され、第1、第2および第3のローラーと4つの中間ローラーとに十文字状に掛け渡された第1のベルトと、第1のアームの下部または台座に設けられ、第1のローラーを回転駆動する第1のモーターと、第1のローラーと第1のモーターとに掛け渡された第2のベルトと、第1のアームの下部または台座に設けられ、第2のローラーを回転駆動する第2のモーターとを有することが望ましい。これにより、第1のモーターおよび第2のモーターによりそれぞれ第1のローラーおよび第2のローラーを互いに同一方向に回転させるとスライダーが鉛直上下方向に移動し、互いに反対方向に回転させると第2のアームが水平左右方向に移動する。
【0009】
本発明の搬送装置は、さらに、台車を有し、台車は、被搬送物の搬送方向に沿って張られたワイヤーに移動方向をガイドされるワイヤーガイドを有するものであることが望ましい。これにより、被搬送物の搬送方向に沿ってワイヤーを張ることで、このワイヤーに沿って台車がワイヤーガイドにガイドされ移動する。
【0010】
本発明の搬送装置は、さらに、並設された複数の搬送レーンであり、ワイヤーがそれぞれ張られる複数の搬送レーンと、ワイヤーの端部に設けられ、台車が乗り上げる高台であり、複数の搬送レーンの並ぶ方向に並設された高台とを有し、台車は、搬送レーンの延設方向と高台の並設方向とに走行方向を方向転換可能な駆動輪を有し、ワイヤーにガイドされ、駆動輪により搬送レーンの延設方向に駆動されて高台へ乗り上げ、駆動輪の走行方向を高台の並設方向に転換して隣の高台に移動した後、駆動輪の走行方向を搬送レーンの搬送方向に転換して搬送レーンの隣の搬送レーンに降り、ワイヤーの隣のワイヤーにガイドされて駆動輪により隣の搬送レーンの延設方向に駆動されるものであることが望ましい。これにより、ワイヤーにガイドされて搬送レーンを駆動輪により走行した台車がワイヤーの端部に到達すると、高台へと乗り上げ、駆動輪の走行方向を高台の並設方向に転換して隣の高台に移動した後、駆動輪の走行方向を搬送レーンの搬送方向に転換して隣の搬送レーンへ降り、隣のワイヤーにガイドされて搬送レーンを駆動輪により走行する。
【0011】
第2のアームは、台車の移動の際は搬送レーンの延設方向と平行に保持されることが望ましい。これにより、台車の移動の際には第2のアームが台車の移動方向を向くため、第2のアームが搬送レーンの両脇に接触するのを防止することができる。
【0012】
第2のアームの保持部が設けられる側と反対側の端部に保持部と同等の保持部または錘を有することが望ましい。これにより、水平方向に延びる第2のアームのバランスを取ることができる。
【発明の効果】
【0013】
(1)台車上で鉛直軸周りに回転可能な台座と、台座から鉛直上方向に延びる第1のアームと、第1のアームに対して摺動自在に支持され、鉛直方向に移動可能なスライダーと、水平方向に延び、スライダーに対して水平方向に移動可能に支持された第2のアームであり、一端部に被搬送物を保持する保持部が設けられる第2のアームとを有する構成により、台車の走行方向に直交する面に対しては台車の中心から第2のアームおよびスライダーのそれぞれの最大移動範囲内を全てカバーすることが可能であるため、余分な可動域を発生させることなく、栽培設備から収穫した果実や、店舗や倉庫の製品等の被搬送物を効率良く搬送することが可能となる。また、稼働軸が、鉛直軸周りに回転する台座、第1のアームに対して鉛直方向に移動するスライダー、およびスライダーに対して水平方向に移動する第2のアームの3軸に限定されているため、簡易性とメンテナンス性が向上する。
【0014】
(2)第1のアームの上端部および下端部にそれぞれ回転可能に支持された第1のローラーおよび第2のローラーと、第2のアームの保持部が設けられる側と反対側の端部に回転可能に支持された第3のローラーと、スライダーの四隅部にそれぞれ回転可能に支持された4つの中間ローラーと、第2のアームの保持部が設けられる側の端部に両端が固定され、第1、第2および第3のローラーと4つの中間ローラーとに十文字状に掛け渡された第1のベルトと、第1のアームの下部または台座に設けられ、第1のローラーを回転駆動する第1のモーターと、第1のローラーと第1のモーターとに掛け渡された第2のベルトと、第1のアームの下部または台座に設けられ、第2のローラーを回転駆動する第2のモーターとを有する構成により、第1のアームの下部または台座に設けられた第1のモーターおよび第2のモーターの2つのモーターにより保持部を上下左右に移動させることが可能となる。また、第1のモーターおよび第2のモーターが第1のアームの下部または台座に設けられていることから重心位置が低くなるため、第1のアームを鉛直方向へ延長してもぐらつくことなく安定し、第1のアームおよび第2のベルトを交換するだけで鉛直方向の可動域を変更することが可能となる。また、第2のアームを交換するだけで水平方向の可動域を変更することが可能となる。
【0015】
(3)台車を有し、台車は、被搬送物の搬送方向に沿って張られたワイヤーに移動方向をガイドされるワイヤーガイドを有する構成により、被搬送物の搬送方向に沿ってワイヤーを張るだけで、台車の直進性が確保でき、簡単に台車の移動方向をガイドして被搬送物を安定して搬送することが可能となる。
【0016】
(4)並設された複数の搬送レーンであり、ワイヤーがそれぞれ張られる複数の搬送レーンと、ワイヤーの端部に設けられ、台車が乗り上げる高台であり、複数の搬送レーンの並ぶ方向に並設された高台とを有し、台車は、搬送レーンの延設方向と高台の並設方向とに走行方向を方向転換可能な駆動輪を有し、ワイヤーにガイドされ、駆動輪により搬送レーンの延設方向に駆動されて高台へ乗り上げ、駆動輪の走行方向を高台の並設方向に転換して隣の高台に移動した後、駆動輪の走行方向を搬送レーンの搬送方向に転換して搬送レーンの隣の搬送レーンに降り、ワイヤーの隣のワイヤーにガイドされて駆動輪により隣の搬送レーンの延設方向に駆動されるものであることにより、簡単な構成により、搬送レーンを走行する台車はワイヤーにガイドされて高台に乗り上げて隣の搬送レーンへ移り、隣の搬送レーンを走行する動作を繰り返し行うことが可能となる。
【0017】
(5)第2のアームが、台車の移動の際は搬送レーンの延設方向と平行に保持されることにより、第2のアームが搬送レーンの両脇に接触するのを防止することができる。
【0018】
(6)第2のアームの保持部が設けられる側と反対側の端部に保持部と同等の保持部または錘を有することが望ましい。これにより、水平方向に延びる第2のアームのバランスを確保することができる。また、両端部に保持部を有する場合には2つの保持部により作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態における搬送装置本体の斜視図である。
図2図1の搬送装置本体を走行させる搬送レーンを示す平面図である。
図3図2の高台を正面からみた断面図である。
図4図1の搬送装置本体の可動部分を示す説明図である。
図5図1の搬送装置本体の駆動機構の配置を示す説明図である。
図6図5の駆動機構を模式化した図である。
図7】保持部を水平方向に移動させる場合の駆動機構の動作を示す模式図である。
図8】保持部を鉛直方向に移動させる場合の駆動機構の動作を示す模式図である。
図9】台車の側面図である。
図10】台車の駆動機構を示す側面図である。
図11】台車の駆動機構を示す斜視図である。
図12】台車を底面側からみた斜視図である。
図13】駆動押さえ機構の説明図である。
図14図9のワイヤーガイドの斜視図である。
図15図9のワイヤーガイドを底面側からみた図である。
図16】台車が高台に乗り上げた状態を示す側面図である。
図17】台車が隣の高台へ移動する様子を示す説明図である。
図18】台車が高台から搬送レーンへ降りる様子を示す説明図である。
図19】本実施形態における搬送装置の台車の走行方向に直交する面に対する保持部の可動範囲を示す説明図である。
図20】従来の果実収穫ロボットの多関節アームの可動領域を示す説明図である。
図21】従来の可動領域を拡大した多関節アームを示す説明図である。
図22】本実施形態における搬送装置の搬送経路の例を示した平面図である。
図23図22の搬送経路を台車で移動した場合の保持部の可動域を示す斜視図である。
図24】従来の多関節アームを図22の搬送経路に沿って移動した場合の可動域を示す斜視図である。
図25】(A)は台車の移動中の第2のアームの向きを示す概略平面図、(B)は台車を停止して作業中の第2のアームの向きを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の実施の形態における搬送装置本体の斜視図、図2図1の搬送装置本体を走行させる搬送レーンを示す平面図、図3図2の高台を正面からみた断面図、図4図1の搬送装置本体の可動部分を示す説明図、図5図1の搬送装置本体の駆動機構の配置を示す説明図、図6図5の駆動機構を模式化した図である。
【0021】
本発明の実施の形態における搬送装置は、図1に示す搬送装置本体1と、この搬送装置本体1が走行する図2に示す搬送レーン2A,2Bとから構成される。搬送レーン2A,2Bは、例えばイチゴ高設棚などの果実の栽培設備4に沿って延設される。各搬送レーン2A,2Bには、栽培設備4から収穫された被搬送物としてのイチゴなどの果実の搬送方向に沿ってワイヤー3が張られる。各搬送レーン2A,2Bの端部には高台5が設けられている。ワイヤー3は、図3に示すように高台5間において地面6から所定高さの位置に張られる。なお、図2に示す例では、搬送レーン2A,2Bは2つであるが、多数の搬送レーンが並設されていても良い。
【0022】
図1に示すように、搬送装置本体1は、搬送レーン2A,2Bを走行する台車10と、台車10上に設けられた台座11と、台座11から鉛直上方向に延びる第1のアーム12と、第1のアーム12に対して摺動自在に支持され、鉛直方向に移動可能なスライダー13と、水平方向に延び、スライダー13に対して水平方向に移動可能に支持された第2のアーム14とを有する。
【0023】
台座11は、台車10上で鉛直軸周りに回転可能となっている。図4および図5に示すように、第1のアーム12は台座11上に固定されており、台座11とともに鉛直軸周りに回転する。第1のアーム12は、その上端部および下端部にそれぞれ回転可能に支持された第1のローラー21および第2のローラー22を有する。
【0024】
第1のアーム12は、この第1のアーム12に沿って鉛直方向に延びるリニアレール12Aを備える。スライダー13は、リニアレール12Aに対して鉛直方向に摺動自在に支持されている。すなわち、スライダー13は、第1のアーム12に対してリニアレール12Aを介して摺動自在に支持され、第1のアーム12に対して鉛直方向に移動可能となっている。
【0025】
第2のアーム14は、スライダー13に対して水平方向に摺動自在に支持された水平方向に延びるリニアレールである。第2のアーム14は、一端部に被搬送物を保持する保持部15を有する。保持部15は、例えば栽培設備から果実を収穫するロボットハンドや、店舗や倉庫の製品を棚からピッキングするロボットアーム等である。第2のアーム14は、保持部15が設けられる側と反対側の端部に回転可能に支持された第3のローラー23を有する。
【0026】
スライダー13は、図5に示すように、その四隅部にそれぞれ回転可能に支持された4つの中間ローラー24,25,26,27を有する。スライダー13を正面からみて左側に保持部15が配置されている状態において、中間ローラー24はスライダー13の左上に、中間ローラー25は右上に、中間ローラー26は右下に、中間ローラー27は左下にそれぞれ位置している。
【0027】
また、搬送装置本体1は、第1のローラー21を回転駆動する第1のモーター31と、第2のローラー22を回転駆動する第2のモーター32と、台座11を回転駆動する第3のモーター33と、第1のアーム12および第2のアーム14を鉛直方向および水平方向に動作させるための第1のベルト34と、第1のローラー21を回転動作させるための第2のベルト35とを有する。なお、図4においては、第1のベルト34の図示を省略している。
【0028】
第1のモーター31および第2のモーター32は第1のアーム12の下部に設けられている。第1のモーター31および第2のモーター32としては、例えばサーボモーターを使用することができる。
【0029】
第1のローラー21は、第1のアーム12の上部を貫通して回転支持される軸21Aの一端部に固定されている。軸21Aの他端部には第4のローラー28が固定されている。第2のベルト35は、第1のモーター31の回転軸に固定された第5のローラー29と第4のローラー28とに掛け渡されており、第1のモーター31の回転動作を第5のローラー29、第2のベルト35および第4のローラー28を介して第1のローラー21に伝達する。
【0030】
第2のローラー22は、第2のモーター32の回転軸に固定されており、第2のモーター32の回転動作は第2のローラー22に直接伝達される。なお、第2のモーター32の回転動作は前述の第1のモーター31と同様に別途ベルトやギヤ等を介して第2のローラー22に伝達する構成とすることも可能である。また、第1のモーター31および第2のモーター32は第1のアーム12ではなく台座11に設けてもよい。
【0031】
図6に示すように、第1のベルト34は、第2のアーム14の保持部15が設けられる側の端部に両端34A,34Bが固定され、第1、第2および第3のローラー21,22,23と4つの中間ローラー24,25,26,27とに十文字状に掛け渡されている。
【0032】
ここで、搬送装置本体1の駆動機構の動作について説明する。図7は保持部15を水平方向に移動させる場合の駆動機構の動作を示す模式図、図8は保持部15を鉛直方向に移動させる場合の駆動機構の動作を示す模式図である。表1は保持部15の移動方向と第1のローラー21および第2のローラー22の回転方向との関係を示している。
【0033】
【表1】
【0034】
図7に矢印R0で示すように保持部15を水平右方向へ移動する場合、表1に示すように第1のローラー21を時計回りに、第2のローラー22を反時計回りに、互いに同期した状態で反対方向に回転する。すなわち、第1のモーター31を反時計回りに、第2のモーター32を反時計回りに、互いに同期した状態で回転駆動する。これにより、第1のベルト34は、第1のローラー21と中間ローラー24との間で矢印R1方向へ、第2のローラー22と中間ローラー27との間で矢印R2方向へ送られ、保持部15と中間ローラー24,27との間の部分の長さが短くなり、中間ローラー25,26と第3のローラー23との間の部分の長さが長くなる。この結果、第2のアーム14がスライダー13に対して水平右方向へ移動し、保持部15が水平右方向へ移動することになる。
【0035】
一方、矢印L0で示すように保持部15を水平左方向へ移動する場合、表1に示すように第1のローラー21を反時計回りに、第2のローラー22を時計回りに、互いに同期した状態で反対方向に回転する。すなわち、第1のモーター31を時計回りに、第2のモーター32を時計回りに、互いに同期した状態で回転駆動する。これにより、第1のベルト34は、第1のローラー21と中間ローラー24との間で矢印L1方向へ、第2のローラー22と中間ローラー27との間で矢印L2方向へ送られ、保持部15と中間ローラー24,27との間の部分の長さが長くなり、中間ローラー25,26と第3のローラー23との間の部分の長さが短くなる。この結果、第2のアーム14がスライダー13に対して水平左方向へ移動し、保持部15が水平左方向へ移動することになる。
【0036】
図8に矢印U0で示すように保持部15を鉛直上方向へ移動する場合、表1に示すように第1のローラー21を反時計回りに、第2のローラー22を反時計回りに、互いに同期した状態で同一方向に回転する。すなわち、第1のモーター31を時計回りに、第2のモーター32を反時計回りに、互いに同期した状態で回転駆動する。これにより、第1のベルト34は、第1のローラー21と中間ローラー24との間で矢印U1方向へ、第2のローラー22と中間ローラー27との間で矢印U2方向へ送られ、第1のローラー21と中間ローラー24,25との間の部分の長さが短くなり、第2のローラー22と中間ローラー26,27との間の部分の長さが長くなる。この結果、スライダー13が第1のアーム12に対して鉛直上方向へ移動し、スライダー13に保持されている第2のアーム14とともに保持部15が鉛直上方向へ移動することになる。
【0037】
一方、図8に矢印D0で示すように保持部15を鉛直下方向へ移動する場合、表1に示すように第1のローラー21を時計回りに、第2のローラー22を時計回りに、互いに同期した状態で同一方向に回転する。すなわち、第1のモーター31を反時計回りに、第2のモーター32を時計回りに、互いに同期した状態で回転駆動する。これにより、第1のベルト34は、第1のローラー21と中間ローラー24との間で矢印D1方向へ、第2のローラー22と中間ローラー27との間で矢印D2方向へ送られ、第1のローラー21と中間ローラー24,25との間の部分の長さが長くなり、第2のローラー22と中間ローラー26,27との間の部分の長さが短くなる。この結果、スライダー13が第1のアーム12に対して鉛直下方向へ移動し、スライダー13に保持されている第2のアーム14とともに保持部15が鉛直下方向へ移動することになる。
【0038】
図9は台車の側面図、図10は台車の駆動機構を示す側面図、図11は台車の駆動機構を示す斜視図、図12は台車を底面側からみた斜視図、図13は駆動押さえ機構の説明図、図14図9のワイヤーガイドの斜視図、図15図9のワイヤーガイドを底面側からみた図、図16は台車が高台に乗り上げた状態を示す側面図、図17は台車が隣の高台へ移動する様子を示す説明図、図18は台車が高台から搬送レーンへ降りる様子を示す説明図である。
【0039】
図9に示すように、台車10は、4つの自在キャスター41を支持する底板40(図10参照。)を備える。4つの自在キャスター41は底板40の四隅に備えている。図12に示すように、台車10の駆動輪42は、台車10の底板40の下面側に配置される。台車10の底板40の中央には、駆動輪42を支持する支持軸50(図10参照。)が貫通する開孔(図示せず。)が設けられている。駆動輪42は走行モーター43により回転駆動される。
【0040】
図10および図11に示すように、支持軸50の上部には支持板51が設けられている。支持軸50は支持板51に対して鉛直軸周りに回転自在に支持されている。また、支持板51上には、支持軸50の向きを変えるサーボモーター44が設けられている。サーボモーター44により支持軸50の向きを変えることで、駆動輪42による走行方向を方向転換可能となっている。
【0041】
底板40上には支柱52が立設されている。図13に示すように、支持板51には支柱52が貫通する開孔51Aが設けられている。支柱52の上部にはボルト53が締結されるネジ穴52Aが設けられている。ボルト53は、支柱52に締結されることで、支持板51と押さえ板54との間に設けられる弾性体55を押圧するものである。弾性体55は、例えばウレタン製ブロックやボルトなどである。ボルト53と押さえ板54との間にはワッシャー56が設けられている。
【0042】
図13の左側はボルト53を緩めて弾性体55を押圧していない状態であり、図13の右側はボルト53を最後まで締め付けて弾性体55を押圧した状態を示している。ボルト53を締め付けることにより弾性体55を押圧することで、弾性体55の反発力が支持板51へ伝わり、支持板51に鉛直下向きの力が発生する。これにより、支持板51に支持される支持軸50を介して駆動輪42が地面6へ押さえ付けられる。
【0043】
また、台車10の底板40の下面にはワイヤー3に移動方向をガイドされるワイヤーガイド45を有する。図14および図15に示すように、ワイヤーガイド45は、ワイヤー3を案内する滑車45Aと、ワイヤー3を滑車45Aの溝45Bに案内する一対のガイド板45Cと、滑車45Aの軸45Dを支持する支持部45Eとを備える。一体のガイド板45Cは水平方向の両端部の間隔が広く、滑車45Aの溝45Bに向かって間隔が狭くなっている。ワイヤーガイド45は、支持部45Eの上面が底板40の下面に固定される。なお、図11および図12においては、ワイヤーガイド45の図示を省略している。
【0044】
各ワイヤー3の端部には、図16に示すように、台車10が乗り上げる高台5が設けられる。高台5の上面の高さは、地面6を走行する台車10が高台5に乗り上げたときにワイヤー3がワイヤーガイド45から離れる高さに設定される。高台5は、図2に示すように複数の搬送レーン2A,2Bの並ぶ方向に並設される。
【0045】
台車10は、走行方向を搬送レーン2Aの延設方向(被搬送物の搬送方向)とした駆動輪42によりワイヤー3にガイドされながら搬送レーン2Aを走行し、ワイヤー3の端部に到達すると高台5へ乗り上げる。このとき、ワイヤー3はワイヤーガイド45から離れる。次に、駆動輪42の走行方向を高台5の並設方向に90°転換し、図17に示すように隣の高台5へ平行移動する。
【0046】
その後、駆動輪42の走行方向を搬送レーン2Bの搬送方向に90°転換し、図18に示すように搬送レーン2Aの隣の搬送レーン2Bに降りる。台車10が高台5から下りた際、ワイヤーガイド45は搬送レーン2Bのワイヤー3を挟み、台車10はワイヤー3にガイドされて駆動輪42により搬送レーン2Bを走行する。そして、台車10がワイヤー3の端部に到達すると高台5へ乗り上げ、同様の手順により次の搬送レーンへと移動する。
【0047】
このように、本実施形態における搬送装置では、上記のような簡単な構成により、搬送レーン2Aを走行する台車10はワイヤー3にガイドされて高台5に乗り上げて隣の搬送レーン2Bへ移り、隣の搬送レーン2Bを走行する動作を繰り返し行うことが可能となっている。
【0048】
図19は本実施形態における搬送装置の台車の走行方向に直交する面に対する保持部15の可動範囲を示す説明図である。図19に示すように、上記構成の搬送装置では、被搬送物を保持する保持部15は第2のアーム14によって水平方向に移動可能であるとともにスライダー13によって鉛直方向に移動可能であり、さらにスライダー13を支持する第1のアーム12が台車10上で鉛直軸周りに回転可能であるため、台車10の走行方向に直交する面(図19に表れる面)に対しては台車10の中心から第2のアーム14およびスライダー13のそれぞれの最大移動範囲内(図19に二点鎖線で示した範囲内)を全てカバーすることが可能となっている。
【0049】
すなわち、前述のように従来の多関節アーム100では、座標A3に届かせるために多関節アーム100そのものを大きくする必要があったが、本実施形態における搬送装置では、第2のアーム14およびスライダー13のそれぞれの最大移動範囲内を全てカバーすることができるため、余分な可動域を発生させることなく、栽培設備から収穫した果実や、店舗や倉庫の製品等の被搬送物を効率良く搬送することが可能である。
【0050】
図22は本実施形態における搬送装置の搬送経路の例を示した平面図、図23図22の搬送経路を台車10で移動した場合の保持部15の可動域を示す斜視図、図24は従来の多関節アーム100を図22の搬送経路に沿って移動した場合の可動域を示す斜視図である。
【0051】
図22に示すように2列の栽培設備4間を台車10で移動した場合、本実施形態における搬送装置では第2のアーム14およびスライダー13のそれぞれの最大移動範囲内を全てカバーすることができるため、図23に示すように栽培設備4の上端角部までが全て保持部15の可動域となる。一方、図24に示すように従来の多関節アーム100では、栽培設備4の上端角部は可動域から外れることになる。
【0052】
また、本実施形態における搬送装置では、稼働軸が、鉛直軸周りに回転する台座11、第1のアーム12に対して鉛直方向に移動するスライダー13、およびスライダー13に対して水平方向に移動する第2のアーム14の3軸に限定されているため、簡易性とメンテナンス性が向上している。
【0053】
また、本実施形態における搬送装置では、第1のモーター31および第2のモーター32が第1のアーム12の下部または台座11に設けられていることから重心位置が低くなるため、第1のアーム12を鉛直方向へ延長してもぐらつくことなく安定し、第1のアーム12および第2のベルト35を交換するだけで鉛直方向の可動域を変更することが可能である。また、水平方向の可動域については、第2のアーム14を交換するだけで変更することが可能である。
【0054】
また、本実施形態における搬送装置では、台車10が、被搬送物の搬送方向に沿って張られたワイヤー3に移動方向をガイドされるワイヤーガイド45を有することから、被搬送物の搬送方向に沿ってワイヤー3を張るだけで、台車10の直進性が確保でき、簡単に台車10の移動方向をガイドして被搬送物を安定して搬送することが可能となっている。
【0055】
また、本実施形態における搬送装置では、第2のアーム14の保持部15が設けられる側と反対側の端部に保持部15と同等の保持部または錘を有する構成とすることができる。このような構成とすることにより、水平方向に延びる第2のアーム14のバランスを確保することが可能となる。また、両端部に保持部15を有する構成とした場合には2つの保持部15により作業効率が向上する。
【0056】
また、本実施形態における搬送装置では、台車10の移動の際に第2のアーム14が搬送レーン2A(2B)の延設方向と平行に保持されることが望ましい。図25(A)は台車10の移動中の第2のアーム14の向きを示す概略平面図、同図(B)は台車10を停止して作業中の第2のアーム14の向きを示す概略平面図である。
【0057】
図25(A)に破線で示すように、台車10の移動中に第2のアーム14を搬送レーン2A(2B)の延設方向(台車10の進行方向)に対して直角に向いている場合、第2のアーム14や保持部15等が搬送レーン2A(2B)の両脇の栽培設備4に接触してしまうことがある。そこで、図25(B)に示すように、作業中は台車10を停止して台座11を回転させて第2のアーム14の向きを変え、保持部15を伸ばして作業を行い、台車10の移動の際は、図25(A)に示すように第2のアーム14が搬送レーン2A(2B)の延設方向と平行に保持した状態とする。これにより、台車10の移動中に、第2のアーム14等が搬送レーン2A(2B)の両脇に接触するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の搬送装置は、栽培設備から収穫した果実や、店舗や倉庫の製品等の被搬送物を搬送する搬送装置として有用であり、特に、余分な可動域を発生させることなく、栽培設備から収穫した果実や、店舗や倉庫の製品等の被搬送物を効率良く搬送することが可能な搬送装置として好適である。
【符号の説明】
【0059】
1 搬送装置本体
2A,2B 搬送レーン
3 ワイヤー
4 栽培設備
5 高台
6 地面
10 台車
11 台座
12 第1のアーム
12A リニアレール
13 スライダー
14 第2のアーム
15 保持部
21 第1のローラー
21A 軸
22 第2のローラー
23 第3のローラー
24,25,26,27 中間ローラー
28 第4のローラー
29 第5のローラー
31 第1のモーター
32 第2のモーター
33 第3のモーター
34 第1のベルト
35 第2のベルト
40 底板
41 自在キャスター
42 駆動輪
43 走行モーター
44 サーボモーター
45 ワイヤーガイド
45A 滑車
45B 溝
45C ガイド板
45D 軸
45E 支持部
50 支持軸
51 支持板
52 支柱
53 ボルト
54 押さえ板
55 弾性体
56 ワッシャー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図18
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図20
図21
図22
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