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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100083
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】吸引ファン制御装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/22 20060101AFI20220628BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20220628BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B65H5/22 C
B65H5/02 A
B41J11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214233
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】大河原 弥貴
【テーマコード(参考)】
2C058
3F049
【Fターム(参考)】
2C058AB17
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF31
2C058DA13
2C058DA38
3F049AA10
3F049BA04
3F049FB02
3F049FB07
3F049LA07
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】複数の吸引ファンの振動を抑制することができる吸引ファン制御装置を提供する。
【解決手段】印刷媒体を吸着させるための負圧を発生させる第1~第4の吸引ファン85a~85dを有する吸引部と、第1~第4の吸引ファン85a~85dを制御する制御部70とを備え、制御部70が、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転数を、互いに異なる回転数であって、かつ第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転による振動の共振を抑制するような回転数に制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を吸着させるための負圧を発生させる複数の吸引ファンを有する吸引部と、
前記吸引ファンを制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記複数の吸引ファンの回転数を、互いに異なる回転数であって、かつ前記複数の吸引ファンの回転による振動の共振を抑制するような回転数に制御する吸引ファン制御装置。
【請求項2】
前記印刷媒体を吸着して搬送する搬送部を備え、
前記吸引部が、前記搬送部に前記印刷媒体を吸着させるための負圧を発生させる請求項1記載の吸引ファン制御装置。
【請求項3】
前記吸引部が、前記吸引ファンの回転によって負圧を発生させる気室を、前記印刷媒体の搬送方向の上流側と下流側とにそれぞれ有し、
前記制御部が、前記上流側の気室に負圧を発生させる吸引ファンの回転数を前記下流側の気室に負圧を発生させる吸引ファンの回転数よりも高くする請求項1または2記載の吸引ファン制御装置。
【請求項4】
前記吸引部が、前記複数の吸引ファンの回転によって負圧を発生させる1つの気室を有し、
前記制御部が、前記複数の吸引ファンの回転数を全て同一の回転数とした場合に発生する吸引力と同じ吸引力が得られるように、前記複数の吸引ファンの回転数の平均値が前記同一の回転数に近づくように制御する請求項1または2記載の吸引ファン制御装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記印刷媒体の搬送速度に基づいて、前記複数の吸引ファンの回転数を設定する請求項1から4いずれか1項記載の吸引ファン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体を吸着させるための負圧を発生させる複数の吸引ファンを制御する吸引ファン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙またはフィルムなどからなる印刷媒体を搬送しつつ、インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
このようなインクジェット印刷装置における印刷媒体の搬送装置として、搬送ベルトを用いた搬送装置が提案されている。具体的には、搬送ベルトの印刷媒体の設置面の裏側の面に対向させて吸引ファンを設け、吸引ファンの回転によって搬送ベルトに形成された多数の吸引孔に負圧を発生させ、これにより搬送ベルトに印刷媒体を吸着させる搬送装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-127364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したような搬送装置に用いられる吸引ファンを始め、回転体は、回転軸に対して重心のズレ(偏心)がある場合、回転数に応じて振動が発生する。これは、偏心によって発生する力が、回転体が1回転する間に1往復の振動を発生させるからである。
【0006】
そして、吸引ファンを用いた搬送装置において、吸引ファンの振動が発生した場合、その振動が搬送ベルトに伝搬し、搬送ベルトによって搬送される印刷媒体へのインクの着弾位置に影響を与える場合がある。具体的には、印刷媒体の搬送方向について吸引ファンの振動が発生した場合、搬送ベルトが搬送方向に寄るため、印刷媒体の搬送が本来よりも早まり、インクの着弾間隔が粗くなる。一方、印刷媒体の搬送方向と逆方向について吸引ファンの振動が発生した場合、搬送ベルトが搬送方向と逆方向に寄るため、印刷媒体の搬送が本来よりも遅くなり、インクの着弾間隔が密集する。特に、吊り下げ式のベルトプラテンの場合、吸引ファンの振動の影響を受けやすい。
【0007】
また、特に同一の吸引ファンを複数設置し、同一の回転数で使用した場合には、複数の吸引ファンの回転による振動が共振し、その影響がより強調される。図13Aは、4つの吸引ファンを同一の回転数とした場合における共振の発生状況を示す図である。図13Aは、A3サイズの印刷媒体を搬送する過程において、各吸引ファンが約70回振動した場合の共振の発生状況を示している。図13Bに示すグラフが、各吸引ファンの振動周期を表しており、図13Aに示すグラフが、図13Bに示す4つの吸引ファンの振動周期の合成波を示している。4つの吸引ファンの振動周期が同じ周期であるため、合成波では共振して4倍に強調されている。このような振動の共振が発生した場合、図14に示すような周期的な濃度ムラが発生し、印刷品質の低下を招く。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、複数の吸引ファンの振動を抑制することができる吸引ファン制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸引ファン制御装置は、印刷媒体を吸着させるための負圧を発生させる複数の吸引ファンを有する吸引部と、吸引ファンを制御する制御部とを備え、制御部が、複数の吸引ファンの回転数を、互いに異なる回転数であって、かつ複数の吸引ファンの回転による振動の共振を抑制するような回転数に制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸引ファン制御装置によれば、複数の吸引ファンの回転数を、互いに異なる回転数であって、かつ複数の吸引ファンの回転による振動の共振を抑制するような回転数に制御するようにしたので、複数の吸引ファンの振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の吸引ファン制御装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
図2】搬送ユニットを上方から見た図
図3図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
図4】第1~第4の吸引ファンの駆動電圧のデューティ比を10%ずつずらして制御した場合における共振の発生状況を示す図
図5図4に示す合成波を形成する第1~第4の吸引ファンの振動周期の一例を示す図
図6】第1~第4の吸引ファンの4つの回転周波数が、不協和音を形成する4つの音程に応じた周波数となるように制御した場合における共振の発生状況を示す図
図7図6に示す合成波を形成する第1~第4の吸引ファンの振動周期の一例を示す図
図8】1つの気室に対して4つの第1~4の吸引ファンを設けた例を示す図
図9】吸引ファンの回転速度変化に応じたムラの間隔の変化を示すグラフを搬送速度毎に示す図
図10】搬送モータの振動も考慮して第1~4の吸引ファンのデューティを設定するテーブルの一例を示す図
図11】印刷媒体の搬送方向に直交する方向に3つの気室を並べて設けた例を示す図
図12】搬送ユニットの動作の流れを説明するためのフローチャート
図13】4つの吸引ファンを同一の回転数とした場合における共振の発生状況および各吸引ファンの振動周期を示す図
図14】複数の吸引ファンの回転による振動の共振によって発生する濃度ムラの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の吸引ファン制御装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、印刷媒体の搬送ユニットの吸引ファンの制御方法に特徴を有するものであるが、まずは、インクジェット印刷装置全体の構成について説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、図1に矢印で示す上下左右が、本実施形態のインクジェット印刷装置1における上下左右方向とする。また、図1の紙面に対して手前側を前方向、奥側を後方向とする。
【0013】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、サイド給紙部10と、内部給紙部20と、画像形成部30と、上部排紙部40と、反転部50と、サイド排紙部60と、制御部70と、操作パネル71と、搬送ユニット80とを備えている。
【0014】
サイド給紙部10は、紙またはフィルムなどの印刷媒体Pが積載される給紙台11と、給紙台11に積載された印刷媒体Pを上部より一枚ずつ繰り出して、後述するレジストローラ14に向けて搬送する1次給紙ローラ12と、1次給紙ローラ12により送り出された印刷媒体Pを所定の用紙間隔を空けて画像形成部30へ引き渡すレジストローラ14とを備えている。
【0015】
内部給紙部20は、印刷媒体Pが載置される給紙台21a,21b,21c,21dと、給紙台21a,21b,21c,21dに積載された印刷媒体Pをそれぞれ上部より一枚ずつ繰り出して給紙搬送路FR上へ搬送する1次給紙ローラ22a,22b,22c,22dとを備えている。
【0016】
内部給紙部20の1次給紙ローラ22a,22b,22c,22dからそれぞれ送り出された印刷媒体Pもレジストローラ14に向けて搬送され、さらに反転部50からもレジストローラ14に向けて印刷媒体Pが搬送される。
【0017】
レジストローラ14の搬送方向手前には、給紙された印刷媒体Pの搬送経路と、一方の面が印刷された用紙が循環して反転部50から搬送されてくる経路とが合流する合流地点が存在する。この合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙搬送路FRと呼び、それ以外の経路を循環搬送路CRと呼ぶものとする。
【0018】
レジストローラ14から給紙された印刷媒体Pは、搬送ユニット80まで搬送される。搬送ユニット80は、搬送ベルト81と、プラテンローラ82と、第1の気室83および第2の気室84と、第1~第4の吸引ファン85a~85dとを備えている。なお、本実施形態においては、第1の気室83および第2の気室84並びに第1~第4の吸引ファン85a~85dが、本発明の吸引部に相当する。
【0019】
搬送ベルト81およびプラテンローラ82は、インクジェット印刷装置1の筐体から直接または筐体に設けられた筐体以外の部材から間接的に吊り下げられて支持されている。
【0020】
搬送ベルト81は、環状ベルトであって、印刷媒体Pを吸着するための多数の吸引孔が形成されている。プラテンローラ82は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるローラである。本実施形態では、図1に示すように、4本のプラテンローラ82が設けられている。具体的には、レジストローラ14の下流側近傍と、後述する第1の切り替え機構32の上流側近傍とにそれぞれ1本のプラテンローラ82が設置され、この1組のプラテンローラ82の下方に、もう一組のプラテンローラ82が設置されている。
【0021】
搬送ベルト81は、図1に示すように、上述した4つのプラテンローラ82に掛け渡されており、4つのプラテンローラ82が回転することによって、搬送ベルト81が移動し、搬送ベルト81に吸着された印刷媒体Pが搬送される。
【0022】
搬送ベルト81における印刷媒体Pの吸着面の裏側には、負圧を発生させる第1の気室83と第2の気室84とが設けられている。第1の気室83と第2の気室84は、閉塞された空間を形成する箱型の部材であって、搬送ベルト81の吸引孔に連通するとともに、それぞれ2つの吸引ファンが設けられている。
【0023】
図2は、搬送ユニット80を上方から見た図である。図2に示すように、第1の気室83は、印刷媒体Pの搬送方向上流側に設けられ、第2の気室84は、印刷媒体Pの搬送方向下流側に設けられている。第1の気室83および第2の気室84は、それぞれ搬送ベルト81における印刷媒体Pの設置可能範囲の半分の範囲にわたって形成されている。
【0024】
そして、第1の気室83の底部には、第1の吸引ファン85aと第2の吸引ファン85cとが設けられ、第2の気室84の底部には、第3の吸引ファン85bと第4の吸引ファン85dとが設けられている。
【0025】
第1の吸引ファン85aと第2の吸引ファン85cが回転することによって第1の気室83および第1の気室83の範囲に分布にする搬送ベルト81の吸引孔に負圧が発生し、これにより搬送ベルト81に印刷媒体Pが吸着する。
【0026】
また、第3の吸引ファン85bと第4の吸引ファン85dが回転することによって第2の気室84および第2の気室84の範囲に分布にする搬送ベルト81の吸引孔に負圧が発生し、これにより搬送ベルト81に印刷媒体Pが吸着する。このように搬送ベルト81上に印刷媒体Pが吸着された状態で搬送ベルト81が移動することによって、印刷媒体Pは、上流側から下流側に向けて所定の搬送速度で搬送される。
【0027】
そして、上述したように印刷媒体Pが搬送ベルト81によって搬送されながら、ヘッドユニット31から印刷媒体Pに対してインクが吐出され、これにより印刷媒体Pに対して印刷処理が施される。
【0028】
画像形成部30は、搬送ユニット80の搬送ベルト81に対向する位置に設けられ、ヘッドユニット31と、ヘッドホルダ33とを備えている。
【0029】
ヘッドユニット31は、4つのラインヘッド32a,32b,32c,32dを備えている。各ラインヘッド32a~32dは、インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを複数備えている。
【0030】
各ラインヘッド32a~32dは、それぞれ印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるものであり、搬送ユニット80によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出するものである。4つのラインヘッド32a~32dは、図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。4つのラインヘッド32a~32dは、それぞれ異なる色(例えばブラック、シアン、マゼンタおよびイエロー)のインクを吐出するものである。
【0031】
ヘッドホルダ33は、各ラインヘッド32a~32dが設置される部材である。ヘッドホルダ33は、箱型の支持部材から構成されており、ヘッドホルダ33の底面には、各ラインヘッド32a~32dが有する各インクジェットヘッドが嵌め込まれて設置される複数の設置孔が形成されている。設置孔は貫通孔であって、各インクジェットヘッドのインク吐出面がヘッドホルダ33の底面外側に露出して配置されるように形成されている。
【0032】
画像形成部30により印刷された印刷媒体Pは、搬送ユニット80から搬出された後、循環搬送路CR上に配置された搬送ローラ等によって搬送される。循環搬送路CR上には、印刷処理の施された印刷媒体Pをサイド排紙部60に案内するか、または上側の循環搬送路CR上に案内するかを切り替える第1の切り替え機構32が設けられている。さらに、循環搬送路CR上には、印刷処理が施され、上側の循環搬送路CR上に搬送された印刷媒体Pを上部排紙部40に案内するか、または反転部50側の循環搬送路CR上に案内するかを切り替える第2の切り替え機構43が設けられている。
【0033】
サイド排紙部60は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出した排紙台61と、排紙台61に印刷済の印刷媒体Pを案内する一対の排紙ローラ62とを有している。そして、第1の切り替え機構32によりサイド排紙部60に案内された印刷済の印刷媒体Pは、排紙ローラ62により排紙台61に搬送され、排紙台61に印刷面を上にして載置される。
【0034】
上部排紙部40は、インクジェット印刷装置1の筐体から突出した排紙台41と、排紙台41に印刷済の印刷媒体Pを案内する一対の排紙ローラ42とを有している。そして、第2の切り替え機構43により上部排紙部40に案内された印刷済の印刷媒体Pは、排紙ローラ42により排紙台41に搬送され、排紙台41に印刷面を下にして載置される。
【0035】
反転部50は、印刷媒体Pを反転させる反転台51と、循環搬送路CRから反転台51へ印刷媒体Pを搬送し、または反転台51から循環搬送路CR上へ印刷媒体Pを搬送する反転ローラ52とを備えている。
【0036】
第2の切り替え機構43により反転部50に案内された印刷媒体Pは、反転ローラ52により循環搬送路CRから反転台51に搬送され、所定時間経過後、反転台51から循環搬送路CRへ再び搬送されることにより、表裏が反転する。そして、表裏が反転された印刷媒体Pは、循環搬送路CR上に設けられた搬送ローラ53等の複数のローラにより画像形成部30へ向かって搬送される。
【0037】
操作パネル71は、たとえば液晶ディスプレイを有するタッチパネルなどから構成されるものであり、ユーザによる種々の設定入力を受け付けるものである。特に、本実施形態の操作パネル71は、搬送ベルト81に要求される吸引力の設定値や搬送ベルト81の搬送速度の設定入力を受け付ける。
【0038】
図3は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部70は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御するものである。
【0039】
特に、本実施形態の制御部70は、第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動モータに印加される駆動電圧のデューティ比を変更することによって、その回転数を制御する。具体的には、制御部70は、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転数を、それぞれ異なる回転数であって、かつ第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転による振動の共振を抑制するような回転数に制御する。
【0040】
これにより、上述したような複数の吸引ファンの振動を抑制することができる。したがって、上記振動による濃度ムラの発生を抑制することができ、印刷品質の向上を図ることができる。
【0041】
本実施形態においては、第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動モータに印加される駆動電圧のデューティ比を10%ずつずらすことによって、それぞれ異なる回転数に制御する。
【0042】
具体的には、制御部70は、たとえば第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動モータに印加される駆動電圧のデューティ比を下表1に示すような大きさに設定する。
【表1】
【0043】
図4は、第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動モータに印加される駆動電圧のデューティ比を上表1に示すように制御した場合における共振の発生状況を示す図である。図5A図5Dに示すグラフが、第1~第4の吸引ファン85a~85dの振動周期を表しており、図4に示すグラフが、第1~第4の吸引ファン85a~85dの振動周期の合成波を示している。図4に示すように、図13Aに示す4つの吸引ファンを同一の回転数とした場合における共振の発生状況と比較すると、合成波の振幅が部分的に小さくなっており、共振を抑制できていることが分かる。これにより、第1~第4の吸引ファン85a~85dの振動の共振によって発生する濃度ムラを抑制することができる。なお、図4および図13Aに示す合成波の振幅が、吸引ファン3台分(4分の3)である75%以上となる辺りから印刷画像に影響を与えることが実験により分かっている。
【0044】
また、本実施形態においては、上表1に示すように第1の気室83に設けられた第1の吸引ファン85aと第2の吸引ファン85cのデューティ比(回転数)の方が、第2の気室84に設けられた第3の吸引ファン85bと第4の吸引ファン85dのデューティ比(回転数)よりも大きく(高く)なるように設定している。
【0045】
これにより、上流側の第1の気室83に発生する負圧の方が、下流側の第2の気室84に発生する負圧よりも高くすることができる。すなわち、上流側の第1の気室83に対応する範囲の搬送ベルト81の吸引力を、下流側の第2の気室84に対応する範囲の搬送ベルト81の吸引力よりも強くすることができる。
【0046】
ここで、搬送ベルト81における印刷媒体Pの進入側については、コシが強く、搬送ベルト81の吸着面に対して反り返っている印刷媒体Pを平坦にして吸着する必要があるため、強めの吸引力が必要となる。
【0047】
したがって、本実施形態のように、上流側の第1の気室83に対応する範囲の搬送ベルト81の吸引力を、下流側の第2の気室84に対応する範囲の搬送ベルト81の吸引力よりも強くすることによって、搬送ベルト81の進入側において、印刷媒体Pを十分に吸着することができ、平坦性を担保することができる。
【0048】
一方、搬送ベルト81における印刷媒体Pの搬出側については、一度吸着した印刷媒体Pを保持するだけであるため、強い吸引力は必要としない。
【0049】
したがって、上記のように第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転数を制御することによって、下流側の第2の気室84に発生する負圧を、上流側の第1の気室83に発生する負圧よりも低くすることができる。すなわち、下流側の第2の気室84に対応する範囲の搬送ベルト81の吸引力を、上流側の第1の気室83に対応する範囲の搬送ベルト81の吸引力よりも弱くすることができる。
【0050】
これにより、搬送ベルト81の搬出側においては、第3の吸引ファン85bおよび第4の吸引ファン85dの消費電力を削減することができ、またプラテンローラ82を駆動する搬送モータ87の負荷も軽減することができるので、これにより、さらに消費電力を削減することができる。
【0051】
また、第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動電圧のデューティ比としては、上表1に示した値に限らず、下表2に示すようなデューティ比とすることによって、さらに共振を抑制することができる。下表2に示す駆動電圧の各デューティ比は、さらに共振を抑制可能な第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転周波数の比率に応じたデューティ比の組み合わせである。具体的には、4つのデューティ比によって決まる第1~第4の吸引ファン85a~85dの4つの回転周波数が、不協和音を形成する4つの音程に応じた4つの周波数の関係となるように設定されている。
【0052】
不協和音の周波数を合成した場合、共振が抑制され、合成波の振幅が小さくなることが分かっている。したがって、上述したように第1~第4の吸引ファン85a~85dの4つの回転周波数を、不協和音を形成する4つの音程に応じた4つの周波数の関係とすることにより、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転に起因する振動の周波数を、不協和音の4つの周波数の関係とすることができる。すなわち、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転に起因する振動の共振を抑制することができる。なお、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転周波数(デューティ比)の関係は、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転に起因する振動の共振が抑制される関係であれば、如何なる組み合わせでもよい。
【表2】
【0053】
図6は、第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動モータに印加される駆動電圧のデューティ比を上表2に示すように制御した場合における共振の発生状況を示す図である。図7A図7Dに示すグラフが、第1~第4の吸引ファン85a~85dの振動周期を表しており、図6に示すグラフが、第1~第4の吸引ファン85a~85dの振動周期の合成波形を示している。図6に示すように、上表1に示すデューティ比とした場合の共振の発生状況(図4参照)と比較すると、合成波の振幅が75%を超える部分がさらに減少しており、さらに共振を抑制できることが分かる。これにより、さらに濃度ムラを抑制することができる。
【0054】
なお、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を上表2のように設定する場合、第1の気室83に設けられた第1の吸引ファン85aおよび第2の吸引ファン85cのデューティ比を100%および72%に設定し、第2の気室84に設けられた第3の吸引ファン85bおよび第4の吸引ファン85dのデューティ比を50%および36%に設定することが好ましい。これにより、上流側の第1の気室83に発生する負圧の方が、下流側の第2の気室84に発生する負圧よりも高くすることができる。
【0055】
なお、上述したように第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を設定した場合、下流側の第2の気室84の吸引量が確保できない場合には、たとえば第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を、上表2のデューティ比から±5%以上間隔を空けてそれぞれ設定し、下流側の第2の気室84の吸引量を確保できるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、第1の気室83と第2の気室84の2つの気室を設けるようにしたが、これに限らず、1つの気室を設けるようにしてもよい。図8は、1つの気室86に対して、4つの第1~第4の吸引ファン85a~85dを設けた例を示す図である。図8に示す例の場合、気室が1つであるので、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転によって生じた負圧は、搬送ベルト81の印刷媒体Pの設置面に均等に発生し、吸引力も均等になる。
【0057】
図8に示すような気室が1つの構成とした場合、制御部70は、たとえば第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転数を全て同一の回転数とした場合に発生する吸引力と同じ吸引力を得られるように、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転数の平均値が上記同一の回転数に近づくように制御することが好ましい。
【0058】
これにより、所望の吸引力を得ることができるとともに、簡易な演算処理で第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を算出することが可能である。
【0059】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、第1~第4の吸引ファン85a~85dの振動の共振を考慮してデューティ比(回転数)を制御するようにしたが、プラテンローラ82を駆動する搬送モータ87の回転による振動も考慮して第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比(回転数)を設定するようにしてもよい。すなわち、搬送モータ87の振動と第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転による振動との共振も抑制するように、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比(回転数)を設定するようにしてもよい。これにより、搬送モータ87の振動と第1~第4の吸引ファン85a~85dの振動との共振による濃度ムラを抑制することができ、さらに印刷品質の向上を図ることができる。以下、吸引ファンの振動とプラテンローラの搬送モータの振動との共振について説明する。
【0060】
図9は、吸引ファンの回転速度変化に応じたムラの間隔の変化を示すグラフを示しており、プラテンローラの搬送モータの搬送速度(以下、単に搬送速度という)毎の上記グラフを示している。図9に示すグラフの横軸は、吸引ファンの回転速度であり、縦軸は、上述したムラの間隔の変化を示している。なお、吸引ファンの回転速度については、周波数(Hz)で表している。図9に示すグラフaが、搬送速度700mm/sの場合であり、グラフbが、搬送速度600mm/sの場合であり、グラフcが、搬送速度500mm/sの場合である。
【0061】
図9に示すように吸引ファンの回転速度が速いほどその回転による振動によって発生するムラの間隔は狭くなる。また、搬送速度が速いほど吸引ファンの振動によるムラの間隔は広くなる。
【0062】
一方、プラテンローラの搬送モータの振動によるムラの間隔は、搬送モータ自身の振動発生周期と、搬送モータとプラテンローラに接続されたギアの比などの機構によって決まり、搬送モータの速度変化によらず一定であることが分かっている。そして、ここでは搬送モータの振動の間隔を6mmとする。
【0063】
この場合、吸引ファンの回転による振動と搬送モータによる振動とが共振する場合とは、たとえば搬送速度が700mm/sの場合、吸引ファンのデューティ比が70%の場合である。すなわち、搬送速度が700mm/sの場合、上述した第1~第4の吸引ファン85a~85dの中にデューティ比が70%の吸引ファンが存在すると、その吸引ファンの振動と搬送モータ87の振動とが共振し、すなわち吸引ファンのムラの間隔と搬送モータのムラの間隔が重複し、濃度ムラが大きくなる。同様に、搬送読度が600mm/sの場合には、デューティ比が40%の吸引ファンが存在すると、その吸引ファンの振動と搬送モータ87の振動とが共振し、濃度ムラが大きくなる。また、搬送読度が500mm/sの場合には、デューティ比が20%の吸引ファンが存在すると、その吸引ファンの振動と搬送モータ87の振動とが共振し、濃度ムラが大きくなる。
【0064】
すなわち、搬送速度と、その搬送速度の場合に回避すべき吸引ファンのデューティ比との関係は、下表3のようになる。
【表3】
【0065】
そこで、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比の中に、上表3に示す搬送速度に対するデューティ比が存在する場合には、そのデューティ比を修正して設定するようにしてもよい。以下、吸引ファンのデューティ比の修正について、詳細に説明する。
【0066】
図10は、第1~第4の吸引ファン85a~85dの回転周波数が、上述したように不協和音の周波数の関係となるようにデューティ比を設定したテーブルの例を示している。図10に示すテーブルの第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比は、その平均値が、上記テーブルの設定値に近くなるように算出された値である。
【0067】
図10に示すテーブルの設定値は、搬送ベルト81に要求される吸引力に応じて適宜設定される値であり、たとえば印刷媒体Pの種類に応じて設定される。上記設定値は、たとえば操作パネル71においてユーザによって設定入力される。図10に示すテーブルの平均値は、上述したように第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を算出した場合の実際の平均値を示している。
【0068】
たとえば設定値が20%の場合、不協和音の周波数の関係となるように算出される4つのデューティ比は、24%、33%、17%および12%となり、その平均値は、約22%である。この場合、4つのデューティ比と上表3に示す回避すべきデューティ比とを比較すると、4つのデューティ比のうちデューティ比24%および17%が、上表3の搬送速度500mm/sに対応する回避すべきデューティ比20%との差が5%未満である。
【0069】
したがって、制御部70は、設定値が20%であり、搬送速度が500mm/sに設定された場合には、第1の吸引ファン85aのデューティ比24%を15%に変更し、第3の吸引ファン85bのデューティ比17%を15%に変更することによって、回避すべきデューティ比20%との差を5%以上とする。
【0070】
なお、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比と回避すべきデューティ比との差が5%未満である場合、デューティ比を変更する方法としては、図10に示すデューティ比よりも大きくする方法と小さくする方法とがあるが、どちらの値に変更するかは、設定値と平均値との関係に基づいて決定することが望ましい。すなわち、設定値が20%であり、平均値が22%である場合には、設定値よりも平均値の方が小さいので、デューティ比の変更方法としては、図10に示すデューティ比よりも小さくなるように変更することが望ましい。これにより平均値が、設定値に近づくようにデューティ比を変更することができる。
【0071】
また、制御部70は、設定値が20%の場合、搬送速度が700mm/sまたは600mm/sに設定された場合には、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を図10に示すテーブルの4つのデューティ比に設定する。
【0072】
また、たとえば設定値が30%の場合、不協和音の周波数の関係となるように算出される4つのデューティ比は、36%、50%、25%および18%となり、その平均値は、約32%である。この場合、4つのデューティ比と上表3に示す回避すべきデューティ比とを比較すると、4つのデューティ比のうちデューティ比18%が、上表3の搬送速度500mm/sに対応する回避すべきデューティ比20%との差が5%未満である。また、デューティ比36%が、上表3の搬送速度600mm/sに対応する回避すべきデューティ比40%との差が5%未満である。
【0073】
したがって、制御部70は、設定値が30%であり、搬送速度が500mm/sに設定された場合には、第4の吸引ファン85dのデューティ比18%を15%に変更することによって、回避すべきデューティ比20%との差を5%以上とする。また、制御部70は、設定値が30%であり、搬送速度が600mm/sに設定された場合には、第1の吸引ファン85aのデューティ比36%を35%に変更することによって、回避すべきデューティ比40%との差を5%以上とする。なお、制御部70は、設定値が30%の場合、搬送速度が700mm/sに設定された場合には、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を図10に示すテーブルの4つのデューティ比に設定する。
【0074】
また、たとえば設定値が40%の場合、不協和音の周波数の関係となるように算出される4つのデューティ比は、48%、67%、33%および24%となり、その平均値は、約43%である。この場合、4つのデューティ比と上表3に示す回避すべきデューティ比とを比較すると、4つのデューティ比のうちデューティ比24%が、上表3の搬送速度500mm/sに対応する回避すべきデューティ比20%との差が5%未満である。また、デューティ比67%が、上表3の搬送速度700mm/sに対応する回避すべきデューティ比70%との差が3%未満である。
【0075】
したがって、制御部70は、設定値が40%であり、搬送速度が500mm/sに設定された場合には、第4の吸引ファン85dのデューティ比24%を15%に変更することによって、回避すべきデューティ比20%との差を5%以上とする。設定値が40%であり、搬送速度が700mm/sに設定された場合には、第2の吸引ファン85cのデューティ比67%を65%に変更することによって、回避すべきデューティ比70%との差を5%以上とする。なお、制御部70は、設定値が40%の場合、搬送速度が600mm/sに設定された場合には、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を図10に示すテーブルの4つのデューティ比に設定する。
【0076】
その他、設定値が50%、60%、70%および80%の場合も同様の考え方により、制御部70は、図10に示すテーブルの変更方法の欄に示すとおり、第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を変更して設定し、それ以外の場合には、図10に示すテーブルの4つのデューティ比に設定する。なお、設定値が80%の場合、平均値は78%であり、設定値よりも小さい。したがって、制御部70は、第3の吸引ファン85bのデューティ比67%を変更する際、65%ではなく、75%に変更することによって平均値が設定値に近づくようにする。
【0077】
また、図10に示すテーブルにしたがって第1~第4の吸引ファン85a~85dのデューティ比を設定する場合、気室の数は、上述したように2つでもよいし、1つでもよい。
【0078】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、印刷媒体Pの搬送方向上流側に第1の気室83を設け、搬送方向下流側に第2の気室84を設けるようにしたが、これに限らず、たとえば図11に示すように、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に、第1の気室90、第2の気室91および第3の気室92の3つの気室を並べて設けるようにしてもよい。
【0079】
この場合、第1の気室90に第1の吸引ファン93aおよび第2の吸引ファン93bを設け、第2の気室91に第3の吸引ファン93cおよび第4の吸引ファン93dを設け、第3の気室92に第5の吸引ファン93eおよび第6の吸引ファン93fを設けるようにすればよい。そして、第1~第6の吸引ファン93a~93fの回転周波数が、不協和音の周波数の関係となるようにデューティ比を設定するようにすればよい。
【0080】
また、図11に示すように、第1の気室90、第2の気室91および第3の気室92の3つの気室を設ける場合、両側の第1の気室90および第3の気室92の吸引力の方が、中央の第2の気室91の吸引力よりも高くなるように第1~第6の吸引ファン93a~93fのデューティ比を設定することが好ましい。これにより、印刷媒体Pの搬送方向に延びる両側の端部の反りを抑制することができ、上記反りによる印刷媒体Pのジャムを防止したり、印刷品質の低下を抑制することができる。
【0081】
また、上記実施形態にインクジェット印刷装置1において、複数の吸引ファンの回転数を設定する際、事前に吸引ファンを個別で停止させた状態で印刷物への影響の強さを実際に確認するなどして、吸引ファン毎の振動の強弱を確認し、振動の大きい吸引ファンの回転数を全ての吸引ファンの回転数の平均値よりも低い値に設定することが好ましい。これにより、吸引ファンの回転による振動を効率的に抑制することができる。
【0082】
次に、上記実施形態のインクジェット印刷装置1の搬送ユニット80の動作の流れについて、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0083】
まず、印刷媒体Pの給紙動作開始前に、搬送ユニット80の搬送速度が設定される(S10)。そして、制御部70によって搬送モータ87が駆動され、S10で設定された搬送速度に応じた回転数でプラテンローラ82が回転し、搬送ベルト81が移動する(S12)。
【0084】
次いで、制御部70は、第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動電圧のデューティ比を上述したデューティ比に設定する(S14)。
【0085】
続いて、制御部70は、S14で設定したデューティ比の駆動電圧を第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動モータに印加し、第1~第4の吸引ファン85a~85dの駆動を開始する(S16)。そして、制御部70は、印刷媒体Pの給紙動作を開始する(S18)。
【0086】
本発明の吸引ファン制御装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0087】
本発明の吸引ファン制御装置においては、印刷媒体を吸着して搬送する搬送部を備えることができ、吸引部が、搬送部に印刷媒体を吸着させるための負圧を発生させることができる。
【0088】
本発明の吸引ファン制御装置において、吸引部は、吸引ファンの回転によって負圧を発生させる気室を、印刷媒体の搬送方向の上流側と下流側とにそれぞれ有することができ、制御部は、上流側の気室に負圧を発生させる吸引ファンの回転数を下流側の気室に負圧を発生させる吸引ファンの回転数よりも高くすることができる。
【0089】
また、本発明の吸引ファン制御装置において、吸引部は、複数の吸引ファンの回転によって負圧を発生させる1つの気室を有することができ、制御部は、複数の吸引ファンの回転数を全て同一の回転数とした場合に発生する吸引力と同じ吸引力が得られるように、複数の吸引ファンの回転数の平均値が上記同一の回転数に近づくように制御することができる。
【0090】
また、本発明の吸引ファン制御装置において、制御部は、印刷媒体の搬送速度に基づいて、複数の吸引ファンの回転数を設定することができる。
【0091】
また、本発明の吸引ファン制御装置において、制御部は、複数の吸引ファンの回転周波数を、不協和音を形成する複数の音程に応じた周波数に設定することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 インクジェット印刷装置
10 サイド給紙部
11 給紙台
12 1次給紙ローラ
14 レジストローラ
20 内部給紙部
21a,21b,21c,21d 給紙台
22a,22b,22c,22d 1次給紙ローラ
30 画像形成部
31 ヘッドユニット
32a,32b,32c,32d ラインヘッド
32 第1の切り替え機構
33 ヘッドホルダ
40 上部排紙部
41 排紙台
42 排紙ローラ
43 第2の切り替え機構
50 反転部
51 反転台
52 反転ローラ
53 搬送ローラ
60 サイド排紙部
61 排紙台
62 排紙ローラ
70 制御部
71 操作パネル
80 搬送ユニット
81 搬送ベルト
82 プラテンローラ
83 第1の気室
84 第2の気室
85a 第1の吸引ファン
85b 第3の吸引ファン
85c 第2の吸引ファン
85d 第4の吸引ファン
86 気室
87 搬送モータ
90 第1の気室
91 第2の気室
92 第3の気室
93a 第1の吸引ファン
93b 第2の吸引ファン
93c 第3の吸引ファン
93d 第4の吸引ファン
93e 第5の吸引ファン
93f 第6の吸引ファン
CR 循環搬送路
FR 給紙搬送路
P 印刷媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14