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特開2022-100088マスクインナー、マスク及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100088
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】マスクインナー、マスク及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214245
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】中野 克哉
(57)【要約】
【課題】本発明は、マスクインナー着用時における肌トラブルを予防するマスクインナーを提供することを課題とする。また、マスクインナーと肌の摩擦を低減するための化粧料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決するために、マスクインナー着用時における肌トラブルを予防するマスクインナーを提供する。また、マスクインナーと肌の摩擦を低減するための化粧料組成物を提供する。マスクインナーをマスクに配置、あるいはマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物をマスク又はマスクインナーに塗布して装着することで、マスクと肌が接触して摩擦を起こすことを抑制するとともに、マスク内のムレを低下させ、肌のバリア機能の乱れを予防することが可能となる。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクの内側に配置して用いるマスクインナーであって、
1種又は2種以上の有効成分を含有し、
少なくとも一つ以上の開口部を有することを特徴とする、マスクインナー。
【請求項2】
前記マスクインナーは、マスクに固定するための固定部を有することを特徴とする、請求項1に記載のマスクインナー。
【請求項3】
前記マスクインナーは、不織布からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のマスクインナー。
【請求項4】
前記有効成分は、セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のマスクインナー。
【請求項5】
前記有効成分は、保湿剤を含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のマスクインナー。
【請求項6】
前記マスクインナーは、水分含有量が10質量%以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のマスクインナー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のマスクインナーを有することを特徴とする、マスク。
【請求項8】
マスク又はマスクインナーに塗布するための化粧料組成物であって、
セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする、マスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクの内側に配置して用いるマスクインナー及びこのマスクインナーを備えるマスク並びにマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、感染症対策や花粉症対策の一つとして、マスクを着用する人が増加している。特に、感染症対策として、社会活動時における飛沫飛散を抑制するために、マスクを常時着用することが日常化しつつある。
【0003】
感染症対策や花粉症対策のためにマスクを長時間着用する機会が増加したことにより、マスク着用による肌荒れなどの肌トラブルが急増している。このようなマスク着用による肌トラブルに対して、マスクインナーが開発されている。
例えば、特許文献1では、水分及び保湿剤を含む組成物を含浸する衛生マスクインナーシートが開示されている。特許文献1では、衛生マスクインナーシートを衛生マスクの内側に装着することで、シートに呼気を接触させ衛生マスク内の空気を温熱させることで口周りに温感が得られ、また同時に保湿も行うことができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-244153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマスクインナーは、肌に密着して使用するため、装着者とマスクインナーの間に呼気が溜まりやすく、ムレやすい状態となる。また、その呼気を利用することは衛生的に好ましくない。このような環境により、肌荒れやニキビなどの肌トラブルを引き起こすという問題がある。
そこで、本発明は、マスク着用時における肌トラブルを予防するマスクインナーを提供することを課題とする。
【0006】
別の観点では、マスクインナーと肌の摩擦により肌トラブルを引き起こすという問題もある。
そこで、本発明の別の課題としては、マスクインナーと肌の摩擦を低減し、肌トラブルを予防するための化粧料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討したところ、美容成分等の有効成分を含有するマスクインナーにおいて、マスクインナーに開口部を設け、呼気をマスクインナーの外側に排気することにより、マスクインナーの内側を衛生的に保つことができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
また、本発明者は、上記課題について鋭意検討したところ、マスク又はマスクインナーに塗布するための化粧料組成物において、セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することにより、マスクインナーと肌の摩擦を低減することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のマスクインナー、マスク及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物を提供するものである。
[1]マスクの内側に配置して用いるマスクインナーであって、1種又は2種以上の有効成分を含有し、少なくとも一つ以上の開口部を有することを特徴とする、マスクインナー。
[2]前記マスクインナーは、マスクに固定するための固定部を有することを特徴とする、[1]に記載のマスクインナー。
[3]前記マスクインナーは、不織布からなることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のマスクインナー。
[4]前記有効成分は、セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一つに記載のマスクインナー。
[5]前記有効成分は、保湿剤を含有することを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一つに記載のマスクインナー。
[6]前記マスクインナーは、水分含有量が10質量%以下であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一つに記載のマスクインナー。
[7][1]~[6]のいずれか一つに記載のマスクインナーを有することを特徴とする、マスク。
[8]マスク又はマスクインナーに塗布するための化粧料組成物であって、セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする、マスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マスクインナー着用時における肌トラブルを予防するマスクインナーを提供することができる。
【0011】
また、本発明によれば、マスクインナーと肌の摩擦を低減するための化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施態様に係るマスクインナーの正面図である。
図2】本発明の第1の実施態様に係るマスクインナーを配置したマスクの概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様に係るマスクインナー及びマスクの使用時の状態を示す概略説明図である。
図4】本発明の第1の実施態様に係るマスクインナーにおける開口部の別態様を示す概略説明図である。
図5】本発明の第1の実施態様に係るマスクインナーの別態様を示す概略説明図である。
図6】本発明の第2の実施態様に係るマスクインナーの概略説明図である。
図7】本発明の第3の実施態様に係るマスクインナーの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、マスクインナー、マスク及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物であって、1種又は2種以上の有効成分を含有した少なくとも一つ以上の開口部を有するマスクインナー及びこのマスクインナーを備えるマスク並びにマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物に関するものである。
本発明に係るマスクインナーをマスクに装着することや、本発明に係るマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物をマスクまたはマスクインナーに塗布することで、マスクの素材と肌が直接接触して摩擦が生じることを避けるとともに、マスク内のムレを低下させ、肌のバリア機能の乱れを予防することを可能とする。
【0014】
以下、本発明に係るマスクインナー、マスク及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物の実施形態について、詳細に説明する。
なお、本実施形態に記載するマスクインナー、マスク及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0015】
〔第1の実施態様〕
[マスクインナー及びマスク]
本発明に係るマスクインナーとは、マスクの内側に配置して用いるシートをいう。
図1は、本発明の第1の実施態様に係るマスクインナーの正面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るマスクインナー1Aは、略長方形からなる本体部10Aと、開口部11とを有する。各構成の詳細な説明については後述する。
【0016】
また、図2は、本発明の第1の実施態様に係るマスクインナーを配置したマスクの概略説明図である。さらに、図3は、本発明の第1の実施態様に係るマスクインナー及びマスクを使用した時の状態を示す概略説明図である。
図2及び図3に示すように、本実施態様に係るマスク100は、マスク本体110及び耳掛け部120からなり、本実施態様におけるマスクインナー1Aが配置されているものである。また、図2及び図3に示すように、マスクインナー1Aは、マスク本体110よりも小さいサイズとすることが好ましい。これにより、装着者Pがマスク100を装着した際に、外観上、マスクインナー1Aを使用していることが見えなくなる。したがって、マスク100自体のデザイン性等、マスク100を装着した装着者Pの外観的特徴に影響を与えることがないため、装着者Pは自分の好みに合う材質やデザイン性を有するマスク100を使用することが可能となる。
【0017】
本実施態様におけるマスク100については、マスクインナー1Aを備え、装着者Pの顔面(特に鼻、口)を覆い、装着者Pからの飛沫を外部に飛散させることを抑制する機能、及び、大気中の花粉、粉塵、PM2.5などの微粒子、ウイルスや細菌などを捕捉する粒子捕捉性を有するものであればよく、具体的な構造や素材については特に限定されない。例えば、マスク本体110が不織布からなる使い捨てを前提とするマスクのほか、マスク本体110が洗って繰り返し使用できる通気性素材からなるマスクなどが挙げられる。なお、このような通気性素材としては、織布、ガーゼのほか、ポリウレタンやポリエステルなどの樹脂からなるシートなどが挙げられる。
【0018】
以下、本実施態様におけるマスクインナー1Aの各構成について説明する。
本実施態様におけるマスクインナー1Aは、略長方形からなる本体部10Aを有するものである。
本体部10Aは、後述する有効成分を保持し、マスク本体110と装着者Pの顔面の間に配置されるシート状のものである。これにより、マスク本体110の素材と装着者Pの肌が直接接触することを避け、摩擦による肌トラブルを予防することが可能となる。なお、このとき、本体部10Aの配置箇所については、マスク本体110と装着者Pの顔面の間にあるものであればよく、特に限定されない。例えば、本体部10Aは装着者Pの顔面に直接接触するように配置されるものであってもよく、装着者Pの顔面近傍かつ装着者Pの顔面と直接接触しないように配置されるものであってもよい。
また、本体部10Aの形状は略長方形であればよく、図1に示すように、本体部10Aは略長方形において角に丸みを持たせる形状としてもよい。これにより、マスクインナー1Aをマスク本体110に配置し、装着者Pがマスク100を装着した際に、マスクインナー1Aの角が装着者Pの肌に触れて肌を刺激することを抑制することが可能となる。
【0019】
本体部10Aは、マスク100のマスク本体110に納まる大きさであれば特に制限されるものではない。例えば、本体部10Aの上限値としては、長辺方向に140mm以下、より好ましくは120mm以下とし、短辺方向に90mm以下、より好ましくは80mm以下とすることが挙げられる。また、例えば、本体部10Aの下限値としては、長辺方向に50mm以上、より好ましくは80mm以上、更に好ましくは100mm以上とし、短辺方向に、40mm以上、より好ましくは50mm以上、更に好ましくは60mm以上とすることが挙げられる。
本体部10Aの大きさを、上述した上限値及び下限値の範囲内とすることで、マスクインナー1Aが含有する有効成分をより広く肌に接触させることができ、また、マスクインナー1Aを配置したマスク100を装着者Pが装着した際におけるマスクインナー1Aのずれをより少なくすることができる。
【0020】
本体部10Aの材質は、後述する有効成分を保持することができ、シート状に成形可能なものであればよく、特に軽量であり、かつマスク本体110や装着者Pの顔面の凹凸に合わせて形状が容易に変形するものが好ましい。このような材質としては、例えば、紙、織布、不織布のほか、コットン、パルプ、レーヨン、ポリエステル、ポリウレタンなどの樹脂からなるシートやフィルムなどが挙げられる。ここで、不織布とは、織らない布状のものをいい、繊維を一定方向またはランダムに集積して接着樹脂で化学的に結合させたり、機械的に絡ませたり、圧力をかけた水流で絡ませたり、熱融着繊維で結合させたもの等をいう。
本実施態様のマスクインナー1Aにおける本体部10Aの材質としては、不織布とすることが特に好ましい。これにより、マスクインナー1Aを粒子捕捉性や通気性に優れるものとすることができ、衛生状態を保ちやすく、またコストの面においても有益である。
【0021】
本体部10Aには、1つ以上の開口部11が設けられる。この開口部11は、装着者Pの呼気による湿気を、マスクインナー1Aと装着者Pの間から、マスク100とマスクインナー1Aの間に放出するために設けられるものである。これにより、マスクインナー1Aと装着者P間のムレを低下させ、肌のバリア機能の乱れを予防することができる。また、そうすることでマスクインナーの内部を衛生的に保つことができる。
【0022】
開口部11の形状及び設置箇所は特に限定されないが、マスクインナー1Aをマスク本体110に配置した際に、装着者Pの呼気がマスクインナー1A外に放出されやすいものとすることが好ましい。例えば、図1に示すように、開口部11としては、本体部10Aの下方部中央に楕円形となるように設けることが挙げられる。これにより、図2及び図3に示すように、マスクインナー1Aをマスク本体110に配置した際、開口部11が装着者Pの口部分に重なることにより、装着者Pの呼気が開口部11を介してマスクインナー1A外に放出される。
【0023】
また、開口部11の形状及び設置箇所は、図1のように装着者Pの口部分に重なる形状及び設置箇所のみに限定されるものではない。
図4は、本実施態様のマスクインナー1Aにおける開口部11の別態様を示す概略説明図である。
図4に示すように、開口部11としては、装着者Pの口部分に重なる箇所に設けるもの(図4の開口部11a)以外に、装着者Pの呼気が排出される他の箇所として、装着者Pの鼻部分に重なる箇所に開口部11bを設けるものとすることが挙げられる。このとき、図4に示すように、開口部11bの形状としては、装着者Pの鼻全体に重なる形状として、略二等辺三角形とすることのほか、装着者Pの鼻孔と重なる形状として、開口部11bの形状を2つの円形、長方形、三角形等とすることが挙げられる。
また、開口部11の他の例としては、装着者Pの頬部分に重なる箇所に設けるものとしてもよい。
【0024】
また、本実施態様におけるマスクインナー1Aは、マスク100に固定するための固定部20を有してもよい。固定部20は、マスク100の内側に配置して用いるマスクインナー1Aがずれないようにする為に効果的である。
固定部20は、マスクインナー1Aをマスク100に固定することができるものであればよく、固定手段の具体的な構造については特に限定されない。
【0025】
図5は、本実施態様におけるマスクインナー1Aの別態様として固定部を設けたものを示す概略説明図である。
図5に示すように、固定部20としては、例えば、少なくとも一つ以上の係止部21を設けることが挙げられる。係止部21の形状は特に限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、本体部10Aの長辺方向上端部に設けたフック状の係止部21が挙げられる。係止部21をフック状とすることにより、マスク100の素材に限定されず、マスクインナー1Aをマスク100に係止させることが可能である。
その他の固定部20としては、例えば、面ファスナーを本体部10Aに設けるものや、接着面を有するシール部材を用いることなどが挙げられる。これにより、マスク100に対するマスクインナー1Aの着脱作業が容易にできる。
【0026】
[有効成分]
本実施態様のマスクインナー1Aに含有させる有効成分は、特に限定されないが、例えば、肌トラブルを予防するための化粧料組成物等が挙げられる。本実施態様における有効成分の具体例としては、セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体等が挙げられる。
なお、有効成分をマスクインナー1Aに含有させる手段については特に限定されない。例えば、液体の有効成分あるいは有効成分が溶解・分散した溶液にマスクインナー1Aを浸漬し、マスクインナー1Aに有効成分を含浸させることや、固体・液体(溶液含む)の有効成分をマスクインナー1Aに塗布あるいは噴霧すること、あるいは有効成分を保持する転写シートから有効成分をマスクインナー1Aに転写することなどが挙げられる。
【0027】
(セラミド若しくはセラミド誘導体)
セラミドとは、スフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合した化合物群の総称である。肌の角層における細胞間脂質の主な成分の一つであり、角層のうるおいを保つのに重要な役割を担っている。
本実施態様におけるマスクインナー1Aにセラミド若しくはセラミド誘導体を含有することで、肌のバリア機能の正常化を促進させることができ、更には、よい肌触りを保持することができる。
【0028】
有効成分として用いるセラミド若しくはセラミド誘導体は、特に制限されないが、例えば、天然セラミド、植物性セラミド、バイオセラミド、糖セラミド、合成類似セラミド等が挙げられる。具体的には、セラミドセラミドEOP、セラミドNS(NG)、セラミドNP、セラミドEOH、セラミドAS(AG)、セラミドAP、セラミドAH、セラミドNH、セラミドEOS、セラミドNDS、セラミドADS、セラミドEODS等が挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0029】
有効成分におけるセラミド若しくはセラミド誘導体の含有量は、特に制限されるものではなく、例えば0.01質量%以上10質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。これにより、肌のバリア機能の正常化をより効果的に促進させることができる。上限値としては、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下とすることが挙げられる。これにより、セラミド若しくはセラミド誘導体の経時安定性を向上させ、また、セラミド若しくはセラミド誘導体以外の有効成分を効果的に含有させることが可能となる。
【0030】
(リン脂質若しくはリン脂質誘導体)
リン脂質とは、構造中にリン酸エステル部位をもつ脂質のことをいう。リン脂質は、両親媒性を持ち、脂質二重層を形成して糖脂質やコレステロールと共に細胞膜の主要な構成成分となるほか、生体内でのシグナル伝達にも関わると言われている。
本実施態様におけるマスクインナー1Aにリン脂質若しくはリン脂質誘導体を含有することで、マスクインナー1Aと肌との接触で剥がれ落ちた肌の油分を補うことができ、肌のバリア機能の正常化を促進させることができる。
【0031】
有効成分として用いるリン脂質若しくはリン脂質誘導体は、特に制限されないが、グリセロリン脂質やスフィンゴリン脂質等が挙げられる。具体的には、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、ホスファチジルイノシトール、水添レシチン等が挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
有効成分におけるリン脂質若しくはリン脂質誘導体の含有量は、特に制限されるものではなく、例えば0.01質量%以上10質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。これにより、肌の機能を正常化させる効果を向上させることができる。また、有効成分におけるセラミド若しくはセラミド誘導体は経時での安定性が悪いことが知られており、リン脂質若しくはリン脂質誘導体の含有量の下限値を好ましい量とすることにより、セラミド若しくはセラミド誘導体を含有するマスクインナー、又はセラミド若しくはセラミド誘導体を含有する化粧料組成物の経時安定性を高めることができる。ここでは、リン脂質若しくはリン脂質誘導体がセラミド分子と結合することで、セラミド分子の高い凝集性を抑制して結晶化を防ぐことにより、上述の経時安定性が得られると考えられる。
また、上限値としては、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。これにより、リン脂質若しくはリン脂質誘導体以外の有効成分を効果的に含有させることが可能となり、かつ、リン脂質若しくはリン脂質誘導体が経時で劣化することにより生じるニオイを低減することが可能となる。
【0033】
なお、本実施態様のマスクインナー1Aは、有効成分として、少なくとも上述したセラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。これにより、摩擦による肌荒れのような肌トラブルを予防する効果を高めることが可能となる。
【0034】
(保湿剤)
また、本実施態様の有効成分としては、保湿剤を含有することが好ましい。保湿剤とは、肌の角質層に潤いを持たせるものをいう。有効成分として用いる保湿剤の具体例については、特に限定されないが、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、キシリトール、コンドロイチン硫酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、メチルグルセス-20、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イサイヨバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物などが挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0035】
例えば、グリセリンは湿度を調整する機能を有している。具体的には、湿度が低いと水分を放出し、湿度が高いと水分を吸収する。この機能を利用し、マスクインナー1Aと装着者Pの間の呼気による湿気を、有効成分としてグリセリンを含有させたマスクインナー1Aに吸収させることにより、マスクインナー1Aと装着者Pの間の湿度を低下させることができる。
【0036】
さらに、本実施態様のマスクインナー1Aは、水分含有量に上限値を設けることが好ましい。これは、マスクインナー1A自体の水分活性を下げることを目的としている。肌に触れるマスクインナー1Aを適切な湿度に保つことでマスクインナー1Aと装着者Pの間のムレを防ぐことができ、これにより摩擦や肌のバリア機能低下による肌荒れや、アクネ菌の繁殖によるニキビを防ぐことができる。
【0037】
マスクインナー1Aにおける水分含有量の上限値は特に限定されないが、例えば、10質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。これにより、マスクインナー1Aが装着者Pの肌と触れた際に、装着者Pの肌に余剰の水分を与えることを防ぎ、ムレによる肌荒れやニキビを防ぐことができる。
【0038】
マスクインナー1Aの水分含有量を調整する手段については特に限定されない。例えば、本体部10Aの材質を選択することにより、マスクインナー1Aの水分含有量を調整するものとすることや、有効成分を含浸あるいは塗布したマスクインナー1Aに対し、乾燥処理を行うことなどが挙げられる。
【0039】
[マスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物]
マスクの装着に伴う肌トラブルを予防する手段としては、上述したマスクインナー1Aを用いること以外に、マスク100に直接塗布する化粧料組成物を用いることが挙げられる。
本実施態様におけるマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物としては、セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有した化粧料組成物が挙げられる。この化粧料組成物をマスク100に直接塗布することで、マスクの素材と肌が直接接触することによる摩擦を避けるとともに、マスク内のムレを低下させ、肌のバリア機能の乱れを予防することができる。
【0040】
本実施態様におけるマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物には、セラミド若しくはセラミド誘導体、リン脂質若しくはリン脂質誘導体から選ばれる成分に加え、その他の有効成分として上述した成分(保湿剤等)を更に含むことが好ましい。
また、本実施態様におけるマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物には、上述した有効成分以外の他の成分が含まれてもよい。例えば、本実施態様におけるマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物には、上記有効成分以外に、機能性添加物や一般的な化粧料組成物に含まれる成分等を更に含むものとしてもよい。
【0041】
機能性添加物としては、特に限定されないが、例えば、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海草エキスなどが挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、一般的な化粧料組成物に含まれる成分としては、例えば、油脂成分、エモリエント剤、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水などが挙げられる。これらの中から1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、本発明におけるマスクインナーの構造は、第1の実施態様に示したマスクインナー1Aに限定されない。
以下、本発明におけるマスクインナーの他の構造を示す実施態様について説明する。
【0044】
〔第2の実施態様〕
図6は、本発明の第2の実施態様におけるマスクインナーの構造を示す概略説明図である。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
図6に示すように、第2の実施態様に係るマスクインナー1Bは、本体部10Bと、開口部11と、本体部10Bに設けられた折り目部30を備えている。
【0045】
本実施態様における折り目部30は、山折り部30aと谷折り部30bが交互に設けられている。折り目部30は、図5に示すように、本体部10B全体に設けるものとしてもよく、本体部10Bの一部に設けるものとしてもよい。
なお、図6では、折り目部30として、山折り及び谷折りを形成しているものを示しているが、これに限定されない。例えば、折り目部30は、本体部10Bに山折りや谷折りを示すミシン目や線が引かれたものとし、装着者P自身が使用時に折るものとしてもよい。
【0046】
本実施態様におけるマスクインナー1Bは、折り目部30を設けることで、マスク100に配置した際に、装着者Pの顔面の凹凸に合わせてマスクインナー1B(本体部10B)の形状を変化させることが容易となる。これにより、マスク100と装着者Pの肌が触れることを抑制するとともに、マスクインナー1Bと装着者Pの肌が触れる面積を容易にコントロールすることが可能となる。
また、本体部10Bに折り目部30を設けることで、本体部10B自体をマスク本体110よりも大きいサイズとしても、折りたたむことで本体部10Bがマスク本体110内に収まるようにすることができる。これにより、本体部10Bに対し、より多くの有効成分を含有させることが可能となる。
【0047】
本体部10Bに設けられる折り目部30の個数や方向については特に限定されない。例えば、図6(A)に示すように、本体部10Bの短辺と平行になるように複数の折り目部を設けるものや、図6(B)に示すように、本体部10Bの長辺と平行になるように複数の折り目部を設けるものが挙げられる。
図6(A)に示すように、本体部10Bの短辺と平行に折り目部30を設けた場合、マスクインナー1B(本体部10B)はマスク100内で横方向に広げることが可能となる。これにより、マスクインナー1Bが装着者Pの頬部分を確実に覆うことができ、マスク100と装着者Pの肌が触れることによる肌トラブルをより確実に予防することが可能となる。
また、図6(B)に示すように、本体部10Bの長辺と平行に折り目部30を設けた場合、マスクインナー1B(本体部10B)はマスク100内で縦方向に広げることが可能となる。これにより、マスクインナー1Bが装着者Pの口部分から鼻部分を確実に覆うことができ、マスク100と装着者Pの肌が触れることによる肌トラブルをより確実に予防することが可能となる。
【0048】
〔第3の実施態様〕
図7は、本発明の第3の実施態様におけるマスクインナーの構造を示す概略説明図である。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
図7に示すように、第3の実施態様に係るマスクインナー1Cは、本体部10Cと、開口部11と、開口部11周辺に設けられた切取部12を備えている。
【0049】
本実施態様における切取部12は、開口部11のサイズを変更するためのものである。切取部12としては、本体部10Cにミシン目や切取線を設けることが挙げられる。これにより、装着者P自身に合わせて開口部11のサイズを容易に変更することが可能となり、マスク内のムレを効果的に低下させることができる。また、同様に、装着者P自身に合わせて開口部11のサイズを変更したり、更には会話をする時の口の開閉動作を含めたサイズに変更することで、顔の形状によりフィットさせることが可能になりマスクインナーと肌とのズレを防止することができる。
【0050】
切取部12は、開口部11周辺に少なくとも1つ以上設けるものであればよい。例えば、図7に示すように、開口部11の外周に沿って、複数の切取部12を設けることが好ましい。これにより、装着者Pが、自分に合った開口部11のサイズに調整することがより一層容易となる。
【0051】
[その他の実施態様]
上述の実施態様の他にも、例えば、マスクインナー本体部についてエンボス加工等を用いて凹凸のある形状にしたり、開口部をメッシュ状に複数設けることで、マスクインナーと肌との接触面積を調整することが可能となる。また、複数のシートを熱等で圧着させた張り合わせタイプとすることで、マスクインナーをマスクの形状により近づけてマスクインナーのズレを効果的に防ぐことができる。
【実施例0052】
以下、本発明のマスクインナー及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物に係る実施例を示し、更に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
[マスクインナー及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物の作成]
表1の処方に従って、本発明に係る化粧料組成物を調製した。
表1に示す原材料を80℃まで加熱し、混合機(TKホモミキサー、プライミクス社製)を用いて撹拌混合し、化粧料組成物を得た。
得られた化粧料組成物を長辺100mm、短辺60mmに裁断した市販のコットン製不織布(ユニチカ社製)に含浸させたのち、エアブローにて余剰の水分を乾燥させて、本発明に係るマスクインナーの実施例を得た。一方、比較例としては、実施例で用いた不織布を長辺100mm、短辺60mmに裁断しただけのものを用意した。
【0054】
[マスクインナーの評価]
20代から50代までの男性6人、女性4人、合計10人のパネラーに、実施例1~3あるいは比較例1~3のマスクインナーを、不織布からなるマスクの内側に配置して装着してもらい、以下の項目について官能評価を行った。評価結果を表1に併せて記載する。
【0055】
評価1:装着時の肌触り
本発明の実施例あるいは比較例のマスクインナーを装着後すぐに、装着後の肌触りについて下記の評点のつけ方にて官能評価を実施した。評価は、10名の評点の平均値を用いて、以下に示す評価基準に基づいて分類した。
<肌触りに関する評点と内容>
4点・・・滑らかな肌触りであり、快適である。
3点・・・擦れをほとんど感じることがなく、良好な肌触りである。
2点・・・気になるような擦れはなく、普通の肌触りである。
1点・・・肌との擦れが気になり、不快である。
(肌ざわりの評価基準)
◎:極めて良好 (10名の平均点が3点以上であった)
○:良好 (10名の平均点が2.5点以上、3点未満であった)
△:普通 (10名の平均点が2点以上、2.5点未満であった)
×:悪い (10名の平均点が2点未満であった)
【0056】
評価2:装着時のムレの感覚
本発明の実施例あるいは比較例のマスクインナーを装着してから3時間後に、装着時のムレの感覚について下記の評点のつけ方にて官能評価を実施した。評価は、10名の評点の平均値を用いて、以下に示す評価基準に基づいて分類した。
<装着時のムレに関する評点と内容>
4点・・・ムレをほとんど感じない
3点・・・ムレをあまり感じない
2点・・・ムレをやや感じるが、マスクインナー未使用時よりは良好である
1点・・・マスクインナー未使用時よりも一層ムレを感じる
(装着時のムレの評価基準)
◎:極めて良好 (10名の平均点が3点以上であった)
○:良好 (10名の平均点が2.5点以上、3点未満であった)
△:やや悪い (10名の平均点が2点以上、2.5点未満であった)
×:悪い (10名の平均点が2点未満であった)
【0057】
評価3:肌の状態
本発明の実施例あるいは比較例のマスクインナーを毎日8時間連続で装着し7日後に、肌荒れの状態について目視による外観および官能による自己申告により、下記の評点のつけ方にて官能評価を実施し、外観による評点と自己申告による評点の合計値を導き出した。評価は、導き出した評点の合計値について10名の平均値を用いて、以下に示す評価基準に基づいて分類した。
<目視による外観での評点と内容>
3点・・・肌荒れ、かさつき、赤み、ニキビのいずれの肌状態も見当たらない
2点・・・肌荒れ、かさつき、赤み、ニキビのうち1つの症状がみられる
1点・・・肌荒れ、かさつき、赤み、ニキビのうち2つ以上の症状がみられる
<官能による自己申告での評点と内容>
3点・・・肌の状態が良い、装着前よりも改善した
2点・・・肌の状態がやや良い
1点・・・肌の状態が悪い、何らかの肌トラブルを実感した
(肌の状態に関する評価基準)
◎:極めて良好 (10名の平均点が5点以上であった)
○:良好 (10名の平均点が3.5点以上、5点未満であった)
△:やや悪い (10名の平均点が2点より高く、3.5点未満であった)
×:悪い (10名の平均点が2点であった)
【0058】
【表1】
【0059】
評価の結果、本発明の実施例のマスクインナーはいずれも、装着時の肌触り、装着時のムレの感覚、肌の状態のすべての項目において普通、良好、極めて良好のいずれかであった。一方で、比較例のマスクインナーはいずれかの項目で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のマスクインナー及びマスク又はマスクインナー塗布用の化粧料組成物は、各種マスクに対して装着あるいは塗布することができ、マスク着用時における肌トラブルの予防手段として好適に利用される。
また、本発明のマスクは、ウイルスや細菌、粉塵等の微粒子が口や鼻に侵入することを防ぐためのマスクとして利用するだけでなく、例えば、美容を目的とした美白用マスク、抗しわ用マスク、ニキビ用マスク等、さまざまな分野におけるマスクとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B,1C マスクインナー、10A,10B,10C 本体部、11,11a,11b 開口部、12 切取部、20 固定部、21 係止部、30 折り目部、30a 山折り部、30b 谷折り部、100 マスク、110 マスク本体、120 耳掛け部、P 装着者

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7