(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100098
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】建設用搬送装置
(51)【国際特許分類】
E04D 15/04 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
E04D15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214259
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 晃二
(57)【要約】
【目的】建築現場において、屋根施工現場或いはデッキ施工現場等で建築資材を貯蔵挿入箇所から施工する所定位置までの搬送で特に小回り操作が良好な建設用搬送装置を提供すること。
【構成】上面側に建築用材を載置可能とした搬送ベース1と、搬送ベース1の下面に設けられると共に搬送ベース1を走行させるキャスタ群Aとを備えること。キャスタ群Aは、複数のキャスタ2とキャスタベース3とを有すること。キャスタベース3の下面に複数のキャスタ2が前後方向において同一方向に走行するように装着され、キャスタ2の列2Lの前後方向において中央近くに位置するキャスタ2が最高位置となるようにキャスタベース3の下面を弧形膨出状とすること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に建築用材を載置可能とした搬送ベースと、該搬送ベースの下面に設けられると共に該搬送ベースを走行させるキャスタ群とを備え、該キャスタ群は、複数のキャスタとキャスタベースとを有し、該キャスタベースの下面に複数の前記キャスタが前後方向において同一方向に走行するように装着され、該キャスタの列の前後方向において中央近くに位置する前記キャスタが最高位置となるように前記キャスタベースの下面を弧形膨出状としてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタ群は、複数の前記キャスタを直線の列とすると共に、前記キャスタ群は少なくとも2個で且つ平行に配列されてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタ群は、複数の前記キャスタを弧状の列とすると共に、前記キャスタ群は2個で且つ弧状とした前記列が幅方向において左右対称となるように配列されてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタ群は、円形状としてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタベースの下面は前後方向において曲率半径を有する真円状としてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項6】
請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタベースの下面は、傾斜角度の異なる複数の小単位面部を有し、各該小単位面部に複数且つ同数の前記キャスタが設けられてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタベースの下面は、前後方向の中心を基準として対称形状としてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記搬送ベースは方形状としてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【請求項9】
請求項1,2,3,4,5,6,7又は8の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記搬送ベースにはハンドルが具備されてなることを特徴とする建設用搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場において、屋根施工現場或いはデッキ施工現場等で建築資材を貯蔵挿入箇所から施工する所定位置までの搬送で特に小回り操作が良好な建設用搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折板タイプの金属屋根、特に大型面積の施工現場において、金属部品等の建築用資材が施工箇所の所定位置に設置されたストックヤードに保管される。その保管される資材の量は、現場の規模によって変化するが、いずれにしても、重量物であることが多い。そのために、これらを人力によって、施工箇所まで搬送するのは、あまりにも非効率的である。そのために、これら資材を搬送する作業の効率を向上させるために建設用の搬送装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の建設用の搬送装置で特に一般的なものが、特許文献1に開示されている。この特許文献1等に見られる多くのものは、小さなローラを多数備えた台車が存在し、折板屋根板材の付属部品等を載置して、既設の折板屋根上を渡って、部品を屋根未施工の位置まで搬送するものである。特許文献1に開示された搬送台車は、走行のために小さなローラを多数設け、走行する路面が屋根施工ベースとなるフラット状デッキ上で、溝や隙間が存在する場所であっても、円滑に資材を搬送するための走行ができるようにしている。
【0005】
特許文献1に開示されている装置では、多数のローラを一列状に配置した列を台座の下に複数配置した搬送台車が、フラット状デッキ上を直接移動する前方又は後方の一方向のみの走行は極めて安定しており、重量物の搬送にも好適である。しかし、多数のローラが一列状となり、これらのローラ列が複数備わった搬送台車は重量物が載置されている場合には、進行方向を変化させること、つまり右折又は左折時に相当の労力を要する。特に、施工現場は、部品等が所々に散らばっており、また山積み状態である場合が多く、これらが搬送台車の走行において障害物となる。このような状況で、搬送台車が施工現場を走行するときには、障害物を避けて走行しなければならず、走行台車は頻繁に旋回及びカーブ走行を行う必要がある。
【0006】
しかも、そのカーブ走行は、極めて小半径の小回りでなければならいことが多く、略旋回、つまり台車の一点を中心として水平方向に回転しなければならないものである。特許文献1に開示されたものや、これと同等のものでは、小半径の小回りを有するカーブ走行や、旋回は苦手な操作であり、作業員も困難な操作を要求されることになる。そこで、本発明の目的は、屋根の施工工事現場において、ストックヤード等に保管された建築部品を所定の施工箇所まで搬送でき、しかも、カーブ走行における小回り及び旋回を得意とし、資材,部品等の建築用材の搬送作業を極めて効率的にできる建設用搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、上面側に建築用材を載置可能とした搬送ベースと、該搬送ベースの下面に設けられると共に該搬送ベースを走行させるキャスタ群とを備え、該キャスタ群は、複数のキャスタとキャスタベースとを有し、該キャスタベースの下面に複数の前記キャスタが前後方向において同一方向に走行するように装着され、該キャスタの列の前後方向において中央近くに位置する前記キャスタが最高位置となるように前記キャスタベースの下面を弧形膨出状としてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項2の発明を、請求項1に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタ群は、複数の前記キャスタを直線の列とすると共に、前記キャスタ群は少なくとも2個で且つ平行に配列されてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタ群は、複数の前記キャスタを弧状の列とすると共に、前記キャスタ群は2個で且つ弧状とした前記列が幅方向において左右対称となるように配列されてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項4の発明を、請求項1に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタ群は、円形状としてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタベースの下面は前後方向において曲率半径を有する真円状としてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタベースの下面は、傾斜角度の異なる複数の小単位面部を有し、各該小単位面部に複数且つ同数の前記キャスタが設けられてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項7の発明を、請求項1,2,3,4,5又は6の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタベースの下面は、前後方向の中心を基準として対称形状としてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記搬送ベースは方形状としてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項9の発明を、請求項1,2,3,4,5,6,7又は8の何れか1項に記載の建設用搬送装置において、前記搬送ベースにはハンドルが具備されてなる建設用搬送装置としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、搬送ベースに設けられたキャスタ群における、キャスタの列の前後方向においてその中央近くに位置するキャスタが最高位置となるように前記キャスタベースの下面を弧形膨出状としたことにより、キャスタの列も中央付近が下方に向かって最も高くなる弧形膨出状としたことにより、キャスタ群の複数のキャスタで、路面と接地(接触)するキャスタは、キャスタの列の一部となる。従来タイプの多輪(多キャスタ)付きの建設用搬送装置では、全キャスタが路面に接触してキャスタと路面とが略面接触状態となり、キャスタには、走行方向だけでなく、走行方向とは異なる方向へのズレの動作も加わって、路面からの走行に対する抵抗が大きく、カーブ走行及び旋回動作には極めて大きな労力を要し、操作し難いものであった。
【0011】
これに対して、本発明では、前述したように、キャスタの列も中央付近が下方に向かって最も高くなる弧形膨出状としたことにより、キャスタ群の複数のキャスタで、路面と接触するキャスタは、キャスタの列の一部となることで、建設用搬送装置と、路面との間でキャスタ群におけるキャスタの列において実際に路面と接地(接触)するキャスタは少数となり部分的接触であり、換言すると点接触状態となる。したがって、本発明における建設用搬送装置では、カーブ走行及び旋回動作においても路面からの走行に対する抵抗が極めて小さくなり、作業員は極めて少ない力で、カーブ走行及び旋回動作の操作を行い易いものにできる。さらに、キャスタ群のキャスタの列において、路面と接触するキャスタ以外でも、路面と接触するキャスタに隣接或いは付近に位置するキャスタも、実際には路面と極めて近接状態にある。そして、搬送機の手押し走行中では、このような路面と接触するキャスタだけでなく、その付近のキャスタも路面との略接触状態となり、建設用搬送装置の走行での個々のキャスタにかかる負担が分散され、直線走行でも安定した走行を実現できる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1に記載の建設用搬送装置において、前記キャスタ群は、複数の前記キャスタを直線の列とすると共に、前記キャスタ群は少なくとも2個で且つ平行に配列されてなる建設用搬送装置としたことにより、安定した手押し走行ができる。請求項3の発明では、キャスタ群は、複数の前記キャスタを弧状の列とすると共に、前記キャスタ群は2個で且つ弧とした前記列が幅方向において左右対称となるように配列され、また請求項4の発明では、前記キャスタ群は、円形状としたこと等により、建設用搬送装置の搬送ベースを前後方向において前傾或いは後傾により、両キャスタ群の両キャスタの間隔が狭くなり、これによって、カーブ走行におけるカーブ半径を小さくすることができる。
【0013】
請求項5の発明では、キャスタベースの下面は前後方向において曲率半径を有する真円状としたことで、建設用搬送装置におけるキャスタ群のキャスタの列における路面との接触するキャスタの数は、常時、略同一数にでき、建設用搬送装置の手押し走行を極めて安定した状態で行うことができる。請求項6の発明では、キャスタベースの下面の形状を簡単にできる。請求項7の発明では、前記キャスタベースの下面は、前後方向の中心を基準として対称形状としてなる建設用搬送装置としたことにより、建設用搬送装置におけるキャスタ群のキャスタの列における路面との接触するキャスタの数は、常時、略同一数にでき、建設用搬送装置の手押し走行を極めて安定した状態で行うことができる。請求項8の発明では、搬送ベースは方形状としてなる建設用搬送装置とし、また、請求項9の発明では、搬送ベースにはハンドルが具備されてなる建設用搬送装置としたことにより、操作し易いものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は本発明における第1実施形態の側面図、(B)は(A)の底面図である。
【
図2】(A)は側面の要部拡大図、(B)は(A)の(α)部拡大図である。
【
図3】(A)は建築用材等の積載物を前後方向中央に載置した状態の建設用搬送装置の側面図、(B)は(A)の(β)部拡大図、(C)は建築用材等の積載物を前後方向中央から偏った位置に載置した状態の建設用搬送装置の側面図、(D)は(C)の(γ)部拡大図である。
【
図4】(A)は本発明における第2実施形態の側面図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)は(B)の(δ)部拡大図である。
【
図5】(A)は建設用搬送装置の搬送ベースの前後方向中央に建築用材等の積載物を載置した状態の路面と接触するキャスタを示す側面図、(B)は旋回動作を示す底面図である。
【
図6】(A)は建設用搬送装置の搬送ベースの前後方向前方側に建築用材等の積載物を載置した状態の路面と接触するキャスタを示す側面図、(B)はカーブ走行動作を示す底面図である。
【
図7】(A)は本発明の第3実施形態の底面図、(B)は本発明の第3実施形態における一部切除した側面図、(C)は本発明に第4実施形態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。本発明の建設用搬送装置は、特に屋根等の建築現場において、使用される部品等の建築用材等をストックヤードから所定の施工位置まで搬送するための装置である。本発明における建設用搬送装置は、主に、搬送ベース1と、キャスタ群Aと、ハンドル5等により構成される(
図1,
図2等参照)。ここで、本発明の建設用搬送装置において、理解をし易くするために方向を示す文言を付与する。まず、建設用搬送装置は、基本的に前後方向に手押し走行するものであり、その走行方向を前後方向とする。また、前後方向に直交する平面方向を幅方向とする。さらに前後方向及び幅方向に対して垂直となる方向を上下方向とする。上下方向は、換言すると高さ方向のことである。前後方向,幅方向及び上下方向は、図中に示されている。
【0016】
搬送ベース1は、木製,合成樹脂製或いは金属製等からなる板状部材であり、その形状は長方形又は正方形等の方形状に形成されている〔
図1(B)参照〕。また、搬送ベース1は、円形状又は長円形状(楕円形状を含む)に形成されることもある(
図7参照)。キャスタ群Aは、搬送ベース1の下面側部に設けられると共に該搬送ベース1を手押しで走行させる役目をなすものである。搬送ベース1には、ハンドル5が設置されている〔
図1(A),
図4(A)等参照〕。該ハンドル5は、略門形状をなしている。キャスタ群Aは、複数のキャスタ2,2,…と、キャスタベース3とを有する(
図1,
図2等参照)。キャスタ群Aは、搬送ベース1の下面側部に固着される。また、キャスタベース3は、搬送ベース1とは別部材とし、該搬送ベース1の下面側部に固着されるものとしたり、又は搬送ベース1の下面側部に該搬送ベース1と一体的となるように形成されることもある。
【0017】
キャスタ群Aは、複数の前記キャスタ2,2,…が建設用搬送装置の前後方向において同一方向に走行するようにキャスタベース3の下面側部3sに装着されている(
図1,
図2等参照)。該下面側部3sは、キャスタ2の取付面である(
図2参照)。キャスタ2は、ローラ21とローラ枠部22とからなるものであり、該ローラ枠部22が下面側部3sにビス等の固着具にて固着される(
図2参照)。キャスタ2は、ローラ21が水平方向に対して固定であり、一方向のみに走行するタイプのものであり、自在キャスタ(いわゆる首ふりタイプ)は使用されない。全てのキャスタ2は、同一形状且つ同大としたものであり、ローラ枠部22の上端からローラ21の下端までの高さ寸法Hcは、全てのキャスタ2において同一である〔
図2(B)参照〕。
【0018】
キャスタ群Aは、キャスタベース3の下面側部3sに、複数のキャスタ2,2,…による列2Lを構成している。列2Lを構成するキャスタ2の数は、通常、多数であり、この数は多いほど良いが、具体的には10以上であることが好適である。複数のキャスタ2,2,…は、略等間隔である。そして、列2Lを構成する複数のキャスタ2,2,…の配列において、前後方向の中央及びその付近に位置するキャスタ2が、上下(高さ)方向において最高位置となるよう構成されている(
図1,
図2参照)。
【0019】
上記のようなキャスタ2,2,…の配列となるように、キャスタベース3の下面側部3sは、弧形膨出状に形成され、前後方向の中央付近が上下方向において最も高い位置となるように形成されている〔
図1(A),
図2(A)参照〕。そして、キャスタベース3の下面である下面側部3sは、前後方向の中心を基準として対称形状にされている〔
図1(A)参照〕。また、キャスタベース3の下面である下面側部3sは、前後方向の中心を基準として略対称形状としても良いし、曲率半径が異なる非対称形状とすることもある。また、下面側部3sは、曲率半径を有する真円(略真円状も含む)の一部とした円弧形状としたり、或いは弧状に形成され、最高位置から前後方向に離間するに従い、接線角度は次第に大きくなるように、つまり、最高位置を除いて、変曲点が存在しないに設定されるタイプとしたものも存在する。
【0020】
本発明の建設用搬送装置の第1実施形態では、キャスタ群Aにおけるキャスタベース3の下面である下面側部3sを円弧状とした「円弧タイプ」のものであり、キャスタ群Aは少なくとも2個以上で、それぞれのキャスタ群Aの列2Lは直線とする(
図1,
図2参照)。そして直線状の複数のキャスタ群Aは、平行に配列される。また、特に図示しないが、キャスタ群Aを3個とした場合も、3個のキャスタ群Aが平行且つ等間隔に配列されている。実際には、1つの建設用搬送装置に、2個のキャスタ群Aが設けられることが好適であり、本発明の説明においては、1つの建設用搬送装置において、キャスタ群Aは、2個備えられた実施形態として説明する。
【0021】
建設用搬送装置のキャスタ群Aにおけるキャスタベース3の下面側部3sの形状は、真円の一部とした円弧形状又は扁平山形とし、その曲率半径中心をPとすると、該曲率半径中心Pは、キャスタベース3の前後方向の中央(中心)位置で直交する垂直の中心線M上に位置し、曲率半径R1を有している〔
図1(B),
図2(A)参照〕。中心線Mは、キャスタベース3の前後方向の略中央(略中心)の位置も含まれる。そして、この曲率半径R1によって、キャスタベース3の下面側部3sに取り付けられた、多数のキャスタ2,2,…の列2Lにおいて、その列2Lにおける中央付近のキャスタ2,2,…が上下方向において最高位置となり、両端付近のキャスタ2,2,…が上下方向において最低位置となる。
【0022】
ここで、キャスタ群Aの上下方向における最高位置及び最低位置については、キャスタベース3の下面側部3sを上下方向における上方端に設定した場合を基準とした高さの位置である。つまり、建設用搬送装置を上下方向において反対とし、各図においてキャスタ群Aを上方にして、搬送ベース1を下方となるように設定したときに、この状態で、キャスタベース3の前後方向中央付近のキャスタ2,2,…が上下方向において最も高い位置に存在し、キャスタベース3の前後方向両端付近のキャスタ2,2,…が上下方向において最も低い位置に存在することになる。
【0023】
具体的には、キャスタ群Aにおいて、キャスタベース3の上端から列2Lの前後方向中央に位置するキャスタ2,2,…の最下端までの平均高さ寸法をH1とし、列2Lの前後方向の両端付近のキャスタ2,2,…の最下端までの平均高さ寸法をH2とすると、寸法H1は、寸法H2よりも大きい。
つまり、
となる〔
図1(A),
図2(A)参照〕。そして、列2Lのキャスタ2,2,…のローラ21をそれぞれ同一直径の単円とした場合、多数のローラ21,21,…の包絡線が前記曲率半径R1と同一中心を有する曲率半径R2となる〔
図1(B),
図2(A)参照〕。
【0024】
本発明の第2実施形態として、建設用搬送装置におけるキャスタ群Aのキャスタベース3の下面側部3sを多角形とした「多角形タイプ」のものであり、該下面側部3sを傾斜角度の異なる複数の小単位面部31,31,…を有し、各小単位面部31に複数且つ同数のキャスタ2,2,…が設けられている(
図4参照)。したがって、この第2実施形態におけるキャスタベース3の下面側部3sは、多角形状面となり、略弧形膨出状となる。
【0025】
具体的には、中央に位置する小単位面部31は水平であり、その水平の小単位面部31に隣接する第2の小単位面部31は、角度θ1であり、さらに、第2の小単位面部31に外方に隣接する第3の小単位面部31の角度はθ2である。そして、第3の小単位面部31の角度はθ2は、第2の小単位面部31は、角度θ1よりも大きくなる。
つまり、
である〔
図4(B),(C)参照〕。これによって、キャスタベース3の下面側部3sは、略弧形膨出状となる。
【0026】
そして、この第2実施形態において、キャスタベース3の下面側部3sにおける前後方向中央の小単位面部31に取り付けられた、キャスタ2,2,…が上下方向において最高位置となり、両端付近の小単位面部31に取り付けられた、キャスタ2,2,…が上下方向において最低位置となる。この第2実施形態においても、最高位置及び最低位置については、キャスタベース3の下面側部3sを上下方向における上方に設定した場合を基準とした高さの位置である。次に、本発明の第3実施形態として、キャスタ群Aは、複数のキャスタ2,2,…を弧状の列とすると共に、キャスタ群Aは2個で、且つ弧状とした前記列2Lが搬送ベース1の幅方向において左右対称となるように配列されることもある〔
図7(A)参照〕。また、キャスタ群Aは、円形状としてなることもある〔
図7(B)参照〕。
【0027】
次に、本発明における建設用搬送装置の走行について説明する。搬送ベース1に設けられたキャスタ群Aにおける、複数(多数を含む)のキャスタ2,2,…列2Lの前後方向においてその中央近くに位置するキャスタ2の先端部分が最高位置となるようにキャスタベース3の下面側部3sを弧形膨出状又は略弧形膨出状としている。これにより、キャスタ2,2,…の列2L列も中央付近が下方に向かって最も高くなる弧形膨出状(略弧形膨出状)となる。このような構成にしたことで、キャスタ群Aの列2Lの複数のキャスタ2,2,…の中で、実際に路面7と接地(接触)するキャスタ2は、常時、列2Lの一部のキャスタ2,2,…となる。ここで、前述した下方に向かって最も高くなるとは、前述したように、キャスタ群Aにおけるキャスタベース3の上下方向上端から列2Lのキャスタ2の最下端位置までの高さ寸法のことを言う。
【0028】
従来タイプの多輪(多キャスタ)付きの建設用搬送装置では、全キャスタ2,2,…が路面7に接触してキャスタ2と路面7とが略面接触状態となり、キャスタ2には、走行方向だけでなく、走行方向とは異なる方向へのズレの動作も加わって、路面7からの走行に対する抵抗が大きく、カーブ走行及び旋回動作には極めて大きな労力を要し、操作し難いものであった。
【0029】
本発明における建設用搬送装置では、キャスタ2,2,…の列2Lも中央付近が下方に向かって最も高くなる弧形膨出状としており、キャスタ群Aの複数のキャスタ2,2,…の中で、路面7と接触するキャスタ2,2,…は、キャスタ群Aのキャスタ2,2,…の列2Lの一部となる。建設用搬送装置と、路面7との間でキャスタ群におけるキャスタ2,2,…の列2Lにおいて実際に路面7と接触するキャスタ2,2,…は、少数となり、キャスタ群Aと路面7とは部分的接触となる(
図3参照)。換言するとキャスタ2,2,…の列2Lと、路面7とは、略点接触状態となる。したがって、本発明における建設用搬送装置では、キャスタ群Aと路面7との接触範囲が小さいので、カーブ走行及び旋回動作においても路面7からの走行に対する抵抗が極めて小さくすることができ、作業員は極めて少ない力で、カーブ走行及び旋回動作の操作を行い易いものにできる(
図5及び
図6参照)。
【0030】
そして、搬送ベース1上に建築用材等の積載物Sが載置された状態において、積載物Sが搬送ベース1の前後方向の中心線Mを中心とする中央箇所に均等に載置された場合では、走行時において、キャスタ2,2,…の列2Lの前後方向中央箇所に位置するキャスタ2,2,…のみが路面7に接地する〔
図3(A),(B)参照〕。また、建築用材等の積載物Sが搬送ベース1の前後方向の中央(中心線M)箇所から何れかの側に偏って所に載置された場合では、走行時において、キャスタ2,2,…の列2Lの前後方向一方側(或いは他方側)に位置するキャスタ2,2,…のみが路面7に接地(接触)する〔
図3(C),(D)参照〕。つまり、搬送ベース1に積載物Sが載置されたときでも、キャスタ2,2,…の列2Lの一部のキャスタ2,2,…のみが常時、路面7に接地(接触)する状態となる。
【0031】
さらに、キャスタ群Aのキャスタ2,2,…の列2Lにおいて、路面7と接触するキャスタ2以外でも、路面7と接触するキャスタ2に隣接或いは付近に位置するキャスタ2も、実際には路面7と極めて近接状態にある。そして、搬送機の手押し走行中では、前後の揺れ(天秤的又はシーソー的な揺れ方)等の動作によって、このような路面7と常時接触するキャスタ2だけでなく、その付近のキャスタ2も路面7と略接触状態となり、建設用搬送装置の走行での個々のキャスタ2にかかる負担が分散され、直線走行でも安定した走行を実現できる。
【0032】
次に、搬送ベース1の前後方向中央(中心線M)箇所に建築用材等の積載物Sが均等に載置されたときには、キャスタ群Aのキャスタ2,2,…の列2Lの前後方向中央に位置するキャスタ2,2,…のみが路面7に接地(接触)することとなる〔
図5(A)参照〕。この状態で作業員が建設用搬送装置をカーブ走行又は旋回を行う時には、その旋回中心Qは、搬送ベース1の中心位置に位置することとなり、搬送ベース1の中心位置を旋回中心Qとして旋回又はカーブ走行を行うことができる〔
図5(B)参照〕。
【0033】
さらに、搬送ベース1の前後方向中央(中心線M)から何れか一方側に偏って積載物Sが載置されたときには、キャスタ群Aのキャスタ2,2,…の列2Lの前後方向一方(又は他方)側に位置するキャスタ2,2,…のみが路面7に接地(接触)することとなる〔
図6(A)参照〕。この状態で作業員が建設用搬送装置をカーブ走行又は旋回を行う時には、その旋回中心Qは、搬送ベース1の何れか一方のキャスタ群Aの前後方向の前方側又は後方側に位置するキャスタ2,2,…に位置することになる。ここで、搬送ベース1の何れか一方のキャスタ群Aの列2Lの一部のキャスタ2,2,…に、旋回中心Qとしての役目を与えるには、作業員のハンドル5の操作によって、旋回中心Qとしての役目をするキャスタ2,2,…箇所に建設用搬送装置の重量を集中させるようにする。
【0034】
これによって、所望のキャスタ2,2,…に建設用搬送装置の重量が集中することとなり、搬送ベース1の何れか一方のキャスタ群Aの前後方向一方(又は他方)側のキャスタ2,2,…の一部が路面7に接地し、その部分を旋回中心Qとして旋回又はカーブ走行を行うことができる〔
図6(B)参照〕。さらに、キャスタ群Aのキャスタ2,2,…の列において、路面7と接触するキャスタ2,2,…以外でも、路面7と接触するキャスタ2,2,…に隣接或いは付近に位置するキャスタ2,2,…も実際には路面7と極めて近接状態にある。
【0035】
そして、建設用搬送装置の手押しによる直線状の走行中では、建設用搬送装置は、前後方向において天秤(シーソー)状に揺れることもあり、このようなことから路面7と接地(接触)するキャスタ2,2,…だけでなく、その付近に位置するキャスタ2,2,…も路面7と略接触状態となり易く、建設用搬送装置の走行において個々のキャスタ2,2,…にかかる負担が分散され、直線走行でも安定した走行を実現できる。
【符号の説明】
【0036】
1…搬送ベース、A1…キャスタ群、2…キャスタ、3…キャスタベース、
5…ハンドル。