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特開2022-100123エアゾール組成物、エアゾール製品及び無人飛行体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100123
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】エアゾール組成物、エアゾール製品及び無人飛行体
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/30 20060101AFI20220628BHJP
   B64D 1/16 20060101ALI20220628BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220628BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20220628BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20220628BHJP
   B65D 83/38 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
C09K3/30 C
B64D1/16
B64C39/02
B05B9/04
B05B17/00 101
B65D83/38 200
C09K3/30 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214296
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 康友
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 玲美
(72)【発明者】
【氏名】山本 直輝
【テーマコード(参考)】
3E014
4D074
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA03
3E014PB05
3E014PC02
3E014PC03
3E014PC07
3E014PD01
3E014PF07
4D074AA01
4D074BB01
4D074BB05
4D074CC09
4F033RA02
4F033RB02
4F033RC01
(57)【要約】
【課題】顔料分散安定性が高く視認性が良好で、集弾性が高く長距離噴射が可能なエアゾール組成物。
【解決手段】エアゾール組成物であって、該エアゾール組成物は、顔料、粘土鉱物A、高分子増粘剤及び水を含有し、該エアゾール組成物中の該粘土鉱物Aの含有量が、0.8質量%~12.0質量%であり、該エアゾール組成物中の該高分子増粘剤の含有量が、0.03質量%~0.9質量%であり、該粘土鉱物Aは、その水分散液がチキソトロピー性を有することを特徴とするエアゾール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール組成物であって、
該エアゾール組成物は、顔料、粘土鉱物A、高分子増粘剤及び水を含有し、
該エアゾール組成物中の該粘土鉱物Aの含有量が、0.8質量%~12.0質量%であり、
該エアゾール組成物中の該高分子増粘剤の含有量が、0.03質量%~0.9質量%であり、
該粘土鉱物Aは、その水分散液がチキソトロピー性を有することを特徴とするエアゾール組成物。
【請求項2】
前記粘土鉱物Aは、スメクタイト系粘土鉱物、マイカ系粘土鉱物、カオリナイト系粘土鉱物及びホルマイト系粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一である請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記粘土鉱物Aは、その水分散液中でカードハウス構造を形成する粘土鉱物である請求項1又は2に記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
前記エアゾール組成物中の前記粘土鉱物Aの含有量が、1.0質量%~10.0質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
前記エアゾール組成物が、アルコール類を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
前記アルコール類が、炭素数1~6の脂肪族ジオールからなる群から選択される少なくとも一である請求項5に記載のエアゾール組成物。
【請求項7】
前記エアゾール組成物中の前記アルコール類の含有量が、3.0質量%~40.0質量%である請求項5又は6に記載のエアゾール組成物。
【請求項8】
前記顔料が、無機顔料を含む請求項1~7のいずれか一項に記載のエアゾール組成物。
【請求項9】
前記エアゾール組成物中の前記高分子増粘剤の含有量が、0.05質量%~0.8質量%である請求項1~8のいずれか一項に記載のエアゾール組成物。
【請求項10】
前記高分子増粘剤が、セルロース系増粘剤、植物系増粘剤及びビニル系増粘剤からなる群から選択される少なくとも一である請求項1~9のいずれか一項に記載のエアゾール組成物。
【請求項11】
エアゾール製品であって、
エアゾール組成物が充填された内容器が、吐出機構を備えた外容器内に格納されるとともに、外容器内側と内容器との間に形成される空間に噴射剤が充填されており、
該エアゾール組成物が請求項1~10のいずれか一項に記載のエアゾール組成物であるエアゾール製品。
【請求項12】
請求項11に記載のエアゾール製品が搭載された無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マーキング剤などに用いるエアゾール組成物並びに該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品及び無人飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少子高齢化やインフラの老朽化を背景に、土木・建築分野ではドローンやマルチコプターなど、遠隔操作可能な無人飛行体の活用が積極的に進められている。例えば、インフラ点検現場においては、点検時に補修が必要な個所へのマーキングが必要となるが、ドローンなどの無人飛行体にエアゾールを搭載することで、足場が必要な橋梁や構造物に対しても、簡便に効率よく、かつ安全にマーキングすることができる。
例えば、特許文献1では、無人飛行体に備えられたエアゾール容器から液体を噴出させマーキングを行うことが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-175683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドローンなどの無人飛行体からのエアゾールの噴射によるマーキングを想定した場合、例えば3m以上といった長距離噴射や、様々な角度からの安定した噴射が可能であるなど、エアゾールとしての機能が重要であることがわかってきた。しかしながら、このようなニーズに応えられるようなエアゾール組成物は存在しないのが現状である。
このような課題に鑑み、本開示は、顔料分散安定性が高く視認性が良好で、集弾性が高く長距離噴射が可能なエアゾール組成物、並びに該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品及び無人飛行体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、エアゾール組成物であって、
該エアゾール組成物は、顔料、粘土鉱物A、高分子増粘剤及び水を含有し、
該エアゾール組成物中の該粘土鉱物Aの含有量が、0.8質量%~12.0質量%であり、
該エアゾール組成物中の該高分子増粘剤の含有量が、0.03質量%~0.9質量%であり、
該粘土鉱物Aは、その水分散液がチキソトロピー性を有するエアゾール組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、顔料分散安定性が高く視認性が良好で、集弾性が高く長距離噴射が可能なエアゾール組成物、並びに該エアゾール組成物を用いたエアゾール製品及び無人飛行体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0008】
以下、上記エアゾール組成物に用いる各成分について説明する。
エアゾール組成物は顔料を含む。顔料は特に制限されず、無機顔料、有機顔料など公知の顔料を採用しうる。顔料を用いることでマーキング剤として必要な視認性をエアゾール組成物に付与することができる。顔料は、無機顔料を含むことが好ましい。
【0009】
無機顔料は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカなどの白色顔料;カーボンブラック、チタンブラック、鉄黒などの黒色顔料;ベンガラ、カドミウムレッドなどの赤色顔料;黄鉛、黄土、カドミウムイエローなどの黄色顔料;紺青、海碧、コバルト青などの青色顔料;などが挙げられる。
有機顔料は、例えば、アルカリブルー、リゾールレッド、カーミン6B、ジスアゾエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエローなどが挙げられる。
【0010】
なかでも、視認性の観点から、顔料は白色顔料からなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましく、酸化チタンを含むことがより好ましい。
必要に応じて、白色顔料に加え、視認性の観点から、赤色顔料、黄色顔料及び青色顔料からなる群から選択される少なくとも一を混合してもよい。また、視認性の観点から、顔料に加え、赤色染料、黄色染料及び青色染料からなる群から選択される少なくとも一を併用してもよい。
【0011】
エアゾール組成物中の顔料の含有量は、必要な視認性に応じて適宜変更すればよく、特に制限されないが、好ましくは1.0質量%~10.0質量%であり、より好ましくは1.00質量%~10.00質量%であり、さらに好ましくは2.0質量%~5.0質量%であり、さらにより好ましくは2.00質量%~5.00質量%である。
酸化チタンなどのように無機顔料が微粒子である場合、その一次粒子の個数平均粒径は、好ましくは10nm~30μmであり、より好ましくは50nm~1000nmであり、さらに好ましくは100nm~500nmである。
【0012】
エアゾール組成物は、粘土鉱物Aを含有する。粘度鉱物Aは、その水分散液がチキソトロピー性を有することが必要である。
「水分散液がチキソトロピー性を有する」とは、該水分散液にせん断応力を与えると粘度が低下し、応力を除くと徐々に粘度が元に戻ることを意味する。例えば、粘土鉱物の1質量%水分散液がチキソトロピー性を有する場合、その粘土鉱物を粘土鉱物Aと判断しうる。
粘度鉱物Aの水分散液がチキソトロピー性を有することで、エアゾールの噴射時など、該水分散液に圧力が加わった際に該水分散液の粘性が低下する。その結果、エアゾール組成物の飛距離が大きく向上し、長距離噴射が可能となる。また、エアゾール組成物が粘土鉱物Aのような粘土鉱物を含有することで、エアゾール組成物の粘度が向上し、噴射時に拡散しにくくなるため、エアゾール組成物の飛距離が向上する。
【0013】
粘度鉱物Aはエアゾール組成物にチキソトロピー性を付与することができればよく、とくに制限されず、公知の粘土鉱物を用いることができる。また、粘度鉱物Aは顔料の分散安定性に寄与する。
粘土鉱物Aは、スメクタイト系粘土鉱物、マイカ系粘土鉱物、カオリナイト系粘土鉱物及びホルマイト系粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一であることが好ましく、スメクタイト系粘土鉱物からなる群から選択される少なくとも一であることがより好ましい。
粘土鉱物Aは、その水分散液中(例えば、粘土鉱物の1質量%水分散液中)でカードハウス構造を形成する粘土鉱物であることが好ましい。カードハウス構造とは、板状粒子が
配向せずに複雑に積層したような構造である。例えば、負電荷を帯びた層面と正電荷を帯びた端面がお互いに引き合い、層面-端面結合の立体的な会合構造を形成する。剪断力が加えられると、カードハウス構造が破壊されて分散液の粘度が低下する。
【0014】
スメクタイト系粘土鉱物としては、サポナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、ソーコナイト、スチブンサイトなどが挙げられる。より好ましくは、エアゾール組成物はサポナイトを含む。
【0015】
エアゾール組成物中の粘土鉱物Aの含有量は、0.8質量%~12.0質量%である。上記下限未満であると顔料分散安定性が低下し、良好な飛距離が得られない。一方、上記上限を超えると、十分な飛距離が得られない。
エアゾール組成物中の粘土鉱物Aの含有量は、好ましくは0.80質量%~12.00質量%であり、より好ましくは1.0質量%~10.0質量%であり、さらに好ましくは1.00質量%~10.00質量%であり、さらにより好ましくは1.8質量%~7.0質量%であり、特に好ましくは1.80質量%~7.00質量%である。
【0016】
粘土鉱物Aの一次粒子の平均厚さは、好ましくは0.2nm~10.0nmであり、より好ましくは0.5nm~3.0nmである。
粘土鉱物Aの一次粒子の長径の平均値は、好ましくは10nm~1000nmであり、より好ましくは20nm~600nmであり、さらに好ましくは50nm~150nmである。
【0017】
粘土鉱物Aは、例えば、4質量%水分散液の粘度が、好ましくは100mPa・s~10000mPa・sであり、より好ましくは200mPa・s~7000mPa・sであり、さらに好ましくは2000mPa・s~6000mPa・sである。ここでの粘度は、粘土鉱物の4質量%水分散液を調整後直ちに、BM型粘度計を用い、ローターNo.4にて、60rpm、60sec、25℃の条件で測定した値である。
【0018】
エアゾール組成物は、高分子増粘剤を含む。高分子増粘剤により、集弾性が良好になる。さらに、集弾性が向上することで拡散しにくくなるため、エアゾール組成物の飛距離が向上する。また、高分子増粘剤により、エアゾール組成物の噴射量を一定に制御しやすくなる。
高分子増粘剤は特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、以下のものが挙げられる。
【0019】
セルロースガム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、セルロース末などのセルロース系増粘剤;
アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天などの植物系増粘剤。
デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン類。
アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系ポリマー;
また、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、及びポリアクリル酸Naなどのビニル系増粘剤;
高重合ポリエチレングリコール(高重合PEG、好ましくは平均重合度2000~150000)、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリ
ウレタンなどの重合系ポリマー。
【0020】
上記の中でも、セルロース系増粘剤、植物系増粘剤、ビニル系増粘剤からなる群から選択される少なくとも一が好ましく、セルロース系増粘剤及び植物系増粘剤からなる群から選択される少なくとも一がより好ましい。
また、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム及びポリアクリル酸Naからなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましい。さらにより好ましくはキサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース及びポリアクリル酸Naからなる群から選択される少なくとも一であり、特に好ましくはキサンタンガム及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一である。
【0021】
エアゾール組成物中の高分子増粘剤の含有量は、0.03質量%~0.9質量%である。上記下限未満であると、十分な集弾性が得られない。一方、上記上限を超えると十分な飛距離が得られず、またノズルの詰まりが発生する場合がある。
高分子増粘剤の含有量は、好ましくは0.03質量%~0.90質量%であり、より好ましくは0.05質量%~0.8質量%であり、さらに好ましくは0.05質量%~0.80質量%であり、さらにより好ましくは0.18質量%~0.6質量%であり、特に好ましくは0.18質量%~0.60質量%である。
【0022】
エアゾール組成物は、水を含む。水及び粘土鉱物Aの組み合わせにより、エアゾール組成物に好適なチキソトロピー性を付与することができ、エアゾール組成物の飛距離が向上する。また、ドローンやマルチコプターなどの無人飛行体にエアゾールを搭載することを想定すると、有機溶剤などの危険物は使用できないため、水を基剤とすることが必要になる。
エアゾール組成物中の水の含有量は、好ましくは50.0質量%~90.0質量%であり、より好ましくは50.00質量%~90.00質量%であり、さらに好ましくは60.0質量%~85.0質量%であり、さらにより好ましくは60.00質量%~85.00質量%であり、殊更好ましくは65.0質量%~80.0質量%であり、特に好ましくは65.00質量%~80.00質量%である。
【0023】
エアゾール組成物は、アルコール類を含有することが好ましい。エアゾール組成物をマーキング剤として使用する場合、マーキングの役目が終了した後は、顔料が水や雨などで速やかに流れ落ちるように洗浄性が高いことが好ましい。エアゾール組成物が、アルコール類を含有することで洗浄性が向上する。
アルコール類により顔料の洗浄性が向上する理由については、アルコール類が顔料の表面に膜を形成するなど湿潤剤として作用し、水とのなじみが良くなったためであると本発明者らは考えている。
【0024】
また、エアゾール組成物の飛距離を向上させるためには、エアゾール容器に取り付けるノズルはある程度長いものであることが好ましい。その際、ノズルの詰まり防止の観点からも洗浄性が向上するアルコール類が有効である。
特に、無人飛行体にエアゾールを搭載することを想定すると、エアゾール容器は重量物となるため、なるべく中心近くに設置される。さらに、吐出したエアゾール組成物に対して、プロペラなどによる風の影響を低減するために、ある程度ノズルは長くする必要性が生じる。このような場合において、ノズルの詰まりを防ぐため、エアゾール組成物は、洗浄性が向上するアルコール類を含有することが好ましい。
【0025】
アルコール類は、脂肪族アルコールであってもよいし、芳香族アルコールであってもよい。例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソペンチルジオール、1,3-ペンタンジオール、ペンチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリン、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0026】
なかでも、湿潤性や水とのなじみやすさの観点から、(好ましくは炭素数1~6の、より好ましくは炭素数2~4の)脂肪族ジオールからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。例えば、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソペンチルジオール、1,3-ペンタンジオール、ペンチレングリコール、1,3-プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。洗浄性及びノズルの詰まり防止の観点から、より好ましくはエアゾール組成物が、プロピレングリコールを含む。
【0027】
エアゾール組成物中のアルコール類の含有量は、好ましくは3.0質量%~40.0質量%程度であり、より好ましくは3.00質量%~40.00質量%程度であり、さらに好ましくは10.0質量%~30.0質量%程度であり、さらにより好ましくは10.00質量%~30.00質量%程度であり、殊更好ましくは15.0質量%~25.0質量%程度であり、特に好ましくは15.00質量%~25.00質量%程度である。
【0028】
エアゾール組成物の効果を損なわない程度に、エアゾール組成物は、その他の公知の添加剤を含有していてもよい。
例えば、上記以外の増粘剤、界面活性剤、着色剤、蛍光材料などを添加することもできる。エアゾール組成物は、マーキング用であることが好ましい。
【0029】
次に、エアゾール製品について説明する。
エアゾール製品は、
エアゾール組成物が充填された内容器が、吐出機構を備えた外容器内に格納されるとともに、外容器内側と内容器との間に形成される空間に噴射剤が充填されている。
吐出機構及び容器は特段限定されず、公知のものを採用しうる。容器は、噴射剤の圧力に耐えられるものであればよく、公知の樹脂製、金属製の容器を用いることができる。
【0030】
エアゾール製品は、例えば、折り畳み式の可撓性のバッグである内容器が、吐出機構における外容器内側の開口部に封着されている。外容器と内容器との間には空間が形成され、該空間には、エアゾール組成物を吐出機構から吐出させるための噴射剤が充填される。吐出機構は、内容器に充填されたエアゾール組成物を吐出する吐出口を有し、バルブの作動の際、内容器の外への流路が生じる。内容器と外容器との間に配置される噴射剤からの圧により、内容器に対する加圧が生じ、充填されたエアゾール組成物が外容器の外へ吐出される。
このようなエアゾール製品は、一般に、バッグオンバルブ又はバッグインカンと呼ばれている。バッグオンバルブを用いたエアゾール製品は、いずれの角度からでも同様にバッグの内容物を吐出することができ、内容物を95%出し切ることができる。
【0031】
噴射剤は特段限定されず、液化ガスを使用してもよく、圧縮ガスを使用してもよい。無人飛行体にエアゾールを搭載することを想定すると、危険物は使用できないため、エアゾール製品は、好ましくは圧縮ガスを含む。引火性を有する噴射剤は含まないことが好ましい。
圧縮ガスは特に制限されず、エアゾール製品に使用しうる公知のものを用いることができる。圧縮ガスは、好ましくは炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アルゴン、ヘリウム及び圧縮空気などからなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは炭酸ガス及び窒素ガスからなる群から選択される少なくとも一である。
【0032】
圧縮ガスは、エアゾール容器内に充填されたときの容器内の圧力(ゲージ圧力)が、25℃で、0.4MPa~1.0MPaとなるように充填することが好ましく、0.6MPa~0.8MPaとなるように充填することがより好ましい。
【0033】
エアゾール組成物の製造方法は特に制限されない。例えば、以下の方法が挙げられる。
エアゾール組成物は、水、顔料、粘土鉱物A及び高分子増粘剤並びに必要に応じてアルコール類及びその他の成分を任意の割合で混合して得ることができる。
【0034】
エアゾール製品は、ドローンやマルチコプターなどの無人飛行体に搭載して用いることが好ましい。すなわち、上記エアゾール製品が搭載された無人飛行体が好ましい態様である。無人飛行体については特に制限されず、公知のものを採用しうる。
例えば、機体に複数の回転翼が設けられたマルチコプターが挙げられる。回転翼が3つのトライコプタ、回転翼が4つのクアッドコプタ、回転翼が6つのヘキサコプタ等、公知の種々のマルチコプターを使用しうる。
【0035】
エアゾール製品をマルチコプターに搭載する手段も特に制限されず、公知の方法を採用しうる。例えば、機体に水平に搭載してもよいし、吐出機構を下向きにして搭載してもよい。無人飛行体は、エアゾール製品の吐出機構を遠隔操作で開閉可能な開閉機構を備えることが好ましい。
エアゾール製品のノズルの形状も特に制限されず、目的に応じ適宜変更すればよい。壁面にマーキングする場合は、水平のノズルを用いればよいし、地面にマーキングする場合は、水平に搭載されたエアゾール製品から90°下向きに曲げられたノズルを使用すればよい。
【実施例0036】
以下、実施例を参照して本開示を具体的に説明する。ただし、本開示は以下の実施例の態様に制限されない。
【0037】
<実施例1~11及び比較例1~4>
表1に示す処方(質量%)にて各原料を混合し、実施例1~11のエアゾール組成物及び比較例1~4のエアゾール組成物を調整した。
【0038】
【表1】
【0039】
表1において、使用した材料は以下の通りである。
スメクトンSA:サポナイト(クニミネ工業株式会社)
TITANIX JR-806:酸化チタン(テイカ株式会社)
エコーガムT:キサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル株式会社)
HEC SE600:ヒドロキシエチルセルロース(ダイセルミライズ株式会社)
AH-105X:ポリアクリル酸Na(東亜合成株式会社)
工業用プロピレングリコール:プロピレングリコール(株式会社ADEKA)
雪用蛍光水 マゼンタ:法定色素(シンロイヒ株式会社)
【0040】
そして、得られたエアゾール組成物のそれぞれを、バッグオンバルブ方式のエアゾール容器に充填し、エアゾール製品を得た。噴射剤は窒素を用い、容器内の圧力(ゲージ圧力)は、0.7MPaとした。
【0041】
得られたエアゾール組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(1.顔料分散安定性)
50mlバイアル瓶に原液を採取し、加速試験として45℃恒温槽に3ヶ月保存し原液
中の顔料について沈降状態の確認を行った。
A:顔料沈降無し
B:微量の顔料沈降有り
C:顔料沈降有り
【0042】
得られたエアゾール製品を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(飛距離及び集弾性)
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に30分間浸漬した後、長さ20cm、内径3mmのノズルの先端に、内径1.0mm、外径2.6mm、長さ5mmの噴口を取り付けた。このノズルを用いてエアゾール製品の飛距離及び集弾性の評価を行った。
エアゾール製品から、水平に3m離れた位置にA3用紙を設置し、内容物を0.5秒噴射して、以下の基準で飛距離及び集弾性を評価した。
(2.飛距離)
A:吐出された内容物の9割以上(質量基準)が到達
B:吐出された内容物の5割以上8割未満が到達
C:吐出された内容物の5割未満が到達
(3.集弾性)
A:スプレーパターンの直径が11cm未満
B:スプレーパターンの直径が11cm以上~17cm未満
C:スプレーパターンの直径が17cm以上
【0043】
(洗浄性)
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に30分間浸漬した後、噴口径φ0.5mmのボタンを装着したエアゾール製品を、高さ1.5mの台に設置し、1.5m離れたモルタル製の壁に向かって1秒間噴射した。室温(20℃~30℃)にて1週間放置後、壁に付着し
た内容物の洗浄性を確認した。
A:30秒間流水をかけたのみで付着物が落ちる
B:30秒間流水をかけた後、水を含ませた亀の子たわしでの擦り洗い(10回)で付着物が落ちる
C:30秒間流水をかけた後水を含ませた亀の子たわしでの擦り洗い(10回)でも付着物は落ちない
【0044】
(詰り性)
エアゾール製品を25℃の恒温水槽に30分間浸漬した後、噴口径φ0.5mmのボタンを装着したエアゾール製品を、1秒間噴射後、25℃恒温室に1週間保存した。保存後、ボタンを作動させて、詰りの有無を確認した。
A:1回の作動で噴射できる
B:初期詰りはあるが2回~5回の作動で噴射できる
C:6回以上~10回の作動でも噴射できない