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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100143
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20220628BHJP
   A63B 53/06 20150101ALI20220628BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220628BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B53/06 Z
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214329
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 梢
(72)【発明者】
【氏名】竹地 隆晴
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH02
2C002CH06
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】突き当て構造の耐久性を向上したゴルフクラブヘッドの提供。
【解決手段】本ゴルフクラブヘッドは、フェース部、ソール部、及びクラウン部を有する中空構造体のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部は、ボールを打撃する前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を有し、前記ソール部は、突き当て構造を有し、前記突き当て構造は、前記ソール部に固定される金属製のソール固定部材と、弾性部材と、前記背面と接する金属製のピン部材と、を有し、前記ピン部材は、前記弾性部材を介して、前記ソール固定部材に接続されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部、ソール部、及びクラウン部を有する中空構造体のゴルフクラブヘッドであって、
前記フェース部は、ボールを打撃する前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を有し、
前記ソール部は、突き当て構造を有し、
前記突き当て構造は、前記ソール部に固定される金属製のソール固定部材と、弾性部材と、前記背面と接する金属製のピン部材と、を有し、
前記ピン部材は、前記弾性部材を介して、前記ソール固定部材に接続されている、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記ピン部材は、軸部と、前記軸部の一端側に連続し、前記背面と接する先端部と、を有し、
前記先端部は、前記軸部よりも細い部分を含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記先端部は、曲面を有し、
前記曲面の一部が前記背面と接する、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記ソール固定部材は、一方の端部側に開口する凹部を有し、
前記弾性部材は、前記凹部に挿入されて前記凹部の底面と接し、
前記軸部は、前記先端部の反対側から前記凹部に挿入されて前記弾性部材と接し、
前記先端部は、前記ソール固定部材の一方の端部側に露出する、請求項2又は3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記軸部は、長手方向の長さの30%以上が前記凹部に収納されている、請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記軸部は、前記凹部の長手方向に沿って前記凹部内を移動自在である、請求項4又は5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記凹部の中心軸を通る断面視において、前記弾性部材の幅は、前記凹部の幅よりも狭い、請求項4乃至6のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記弾性部材は、中心側に空間部を有する、請求項4乃至7のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記弾性部材の材料は、樹脂組成物またはゴム組成物のうちのいずれかである、請求項4乃至8のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記ピン部材のヤング率は、90GPa以上である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記ソール固定部材のヤング率は、60GPa以上である、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記ピン部材の材料はチタンを主とした材料であり、前記ソール固定部材の材料はアルミニウムを主とした材料またはチタンを主とした材料である、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記ピン部材は、前記背面のフェースセンターの下方に接する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェース部、ソール部、及びクラウン部を有するウッドタイプのゴルフクラブヘッドが知られている。このようなゴルフクラブヘッドにおいて、例えば、フェース部の補強や剛性分布の調整等のため、フェース部の背面に接する突き当て構造を設けることが提案されている。
【0003】
このゴルフクラブヘッドでは、ゴルフボールの打撃のたびに、フェース部に衝撃が作用し、フェース部の背面に接する突き当て構造にも衝撃が伝わるため、突き当て構造の耐久性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-092906号公報
【特許文献2】特許第5542914号
【特許文献3】特許第4608437号
【特許文献4】特許第4608426号
【特許文献5】特開2016-158915号公報
【特許文献6】特開2017-023216号公報
【特許文献7】特許第6363406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、突き当て構造の耐久性を向上したゴルフクラブヘッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ゴルフクラブヘッドは、フェース部、ソール部、及びクラウン部を有する中空構造体のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース部は、ボールを打撃する前面と、前記前面の反対側に位置する背面と、を有し、前記ソール部は、突き当て構造を有し、前記突き当て構造は、前記ソール部に固定される金属製のソール固定部材と、弾性部材と、前記背面と接する金属製のピン部材と、を有し、前記ピン部材は、前記弾性部材を介して、前記ソール固定部材に接続されている。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、突き当て構造の耐久性を向上したゴルフクラブヘッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する底面図である。
図3】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する断面図(その1)である。
図4】第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する断面図(その2)である。
図5】突き当て構造について説明する図である。
図6】フェース部の反発性の分布の違いについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態の説明を行う。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する底面図である。図1及び図2において、矢印dはトウ-ヒール方向(左右方向)を、矢印dはクラウン-ソール方向(上下方向)を、矢印dはフェース-バック方向(前後方向)を示している。
【0011】
クラウン-ソール方向は、ゴルフクラブヘッド1を規定ライ角及び規定ロフト角通りに水平面に設置した場合の鉛直方向である。クラウン-ソール方向は、トウ-ヒール方向及びフェース-バック方向と、およそ直角の関係にある。また、トウ-ヒール方向とフェース-バック方向とは、およそ直角の関係にある。
【0012】
図1及び図2に示すゴルフクラブヘッド1は、ウッド型のゴルフクラブヘッドであって、例えばドライバーであるが、ユーティリティやフェアウェイウッドであってもよい。ゴルフクラブヘッド1は、本体部10と、フェース部20と、第2クラウン32とが接合されて一体化された中空構造体である。なお、中空構造体の内側の面を内面、外側の面を外面と称する場合がある。
【0013】
本体部10は、第1クラウン12と、ソール部13と、サイド部14と、ホゼル15とを有している。第1クラウン12は、第2クラウン32と共にゴルフクラブヘッド1の上部を形成する部分である。つまり、第1クラウン12と第2クラウン32により、クラウン部30を形成している。
【0014】
ソール部13は、ゴルフクラブヘッド1の底部を形成する部分である。サイド部14は、クラウン部30とソール部13との間に位置する部分である。ホゼル15は、シャフトと連結されるスリーブが収容される部分である。
【0015】
本体部10は、フェース側に開口する開口部を備えており、開口部を塞ぐようにフェース部20が接合されている。フェース部20は、ボールを打撃する打撃面となるフェース面20f(前面)を備えている。なお、フェース部20は所定の厚みを有しており、フェース面20fはフェース部20の外面をなしている。
【0016】
本体部10は、クラウン側に開口する開口部を備えており、開口部を塞ぐように第2クラウン32が接合されている。前述のように、第2クラウン32は、第1クラウン12と共にゴルフクラブヘッド1の上部をなすクラウン部30を形成している。
【0017】
本体部10、フェース部20、及び第2クラウン32は、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄系金属、マグネシウム、マグネシウム合金等を用いて形成できる。本体部10、フェース部20、及び第2クラウン32は、繊維強化樹脂を用いて形成してもよい。本体部10、フェース部20、及び第2クラウン32は、同一材料から形成してもよいし、異なる材料から形成してもよい。
【0018】
なお、繊維強化樹脂とは、補強部材となる繊維と樹脂との複合材料である。繊維強化樹脂を構成する繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等が挙げられる。また、繊維強化樹脂を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0019】
図3及び図4は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッド1を例示する断面図である。図1及び図2に加えて図3及び図4を参照しながら、突き当て構造について説明する。
【0020】
図1図4に示すように、ソール部13は、フェース部20の背面20bと接する突き当て構造40を有している。より詳しくは、ソール部13には中空構造体の内側に向かって窪む凹部131が設けられており、凹部131のフェース部20側の壁部に固定部132が形成されている。固定部132は、フェース部20からd方向に離間した位置に設けられ、突き当て構造40を本体部10に固定する。換言すると、固定部132は、突き当て構造40の取付部である。
【0021】
本実施形態では、固定部132のd方向の位置は、中央部であるが、固定部132はトウ側に位置していてもよいし、ヒール側に位置していてもよい。また、本実施形態では、固定部132のd方向の位置はフェース部20側であるが、バック側であってもよい。なお、固定部132の配設部位は、サイド部14やクラウン部30であってもよい。また、本実施形態の場合、固定部132及び突き当て構造40の組みは1組であるが、異なる部位に2組以上設けてもよい。
【0022】
突き当て構造40は、フェース部20の背面20b側に向かってd方向に延伸する軸状の部材であり、先端部がフェース部20の背面20bに接する。背面20bは、フェース面20fの反対側に位置する面である。突き当て構造40の中心軸CLは、d方向と平行である。なお、d方向は、d方向でバック側からフェース部20側へ向かって斜め上方へ向かう方向である。
【0023】
図5は、突き当て構造について説明する図であり、図5(a)は側面図、図5(b)は中心軸CLを通る縦断面図、図5(c)は分解図である。図1図4に加えて図5を参照すると、突き当て構造40は、ソール固定部材41と、弾性部材42と、ピン部材43とを有している。なお、本願において、弾性部材には、弾性体及び粘弾性体も含むものとする。
【0024】
ソール固定部材41は、頭部411と、筒状部412と、ねじ部413とを含む軸状の一体部品であり、ソール部13に固定される。筒状部412は、頭部411の一端側に頭部411と同心的に設けられている。筒状部412の長手方向の一部分には、外周側にねじ部413が設けられている。筒状部412は、例えば、円筒形である。ソール固定部材41は金属製であり、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、タングステン等から形成できる。
【0025】
筒状部412は、中心軸CL上に位置し、一方の端部側(頭部411とは反対側の端部側)に開口する有底の凹部415を有している。凹部415の横断面(中心軸CLと垂直な方向の断面)の形状は例えば円形である。この場合、円の中心は中心軸CLを通る。凹部415の底面は、例えば、ねじ部413の頭部411側の端部と同程度の位置にある。筒状部412が円筒状である場合、筒状部412の外径は、例えば、5mm以上7mm以下である。この場合、凹部415の直径(筒状部412の内径)は、例えば、3mm以上5mm以下である。
【0026】
弾性部材42は、例えば、穴や溝のない円盤状に形成されている。弾性部材42は、中心側に空間部(穴や溝)を有する形状であってもよい。弾性部材42は、中心側に複数の空間部(穴や溝)を有する形状であってもよい。弾性部材42の外径は、例えば、2mm以上4mm以下である。弾性部材42の厚さは、例えば、1mm以上4mm以下である。弾性部材42は、凹部415に挿入できるように、凹部415よりも若干小さく形成されている。弾性部材42の材料は、樹脂組成物またはゴム組成物のうちのいずれかである。樹脂組成物としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン等が挙げられる。ゴム組成物としては、ポリブタジエン等の合成ゴムや天然ゴムからならゴム組成物が挙げられる。
【0027】
なお、弾性部材42は、単純な構造であるため、成形性の悪い材料でも利用可能である。また、弾性部材42は、小型であり材料が少なくて済むため、余計な重量を増やすことがない。また、弾性部材42は、小型であり材料が少なくて済むため、エンジニアリングプラスチック等の非常に高価な材料も利用可能である。
【0028】
ピン部材43は、円筒状の軸部431と、軸部431の一端側に連続して設けられた先端部432と、軸部431の他端側に連続して設けられた基端部433とを有している。ピン部材43は、フェース部20の背面20b側に向かって延伸し、先端部432はフェース部20の背面20bと接する。軸部431は、凹部415に挿入できるように、凹部415よりも若干小さく形成されている。ピン部材43は金属製であり、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、タングステン等から形成できる。
【0029】
ピン部材43は、弾性部材42を介して、ソール固定部材41に接続されている。具体的には、凹部415には、底面側(頭部411側)に弾性部材42が挿入され、さらにピン部材43の軸部431の基端部433側が挿入されている。言い換えれば、弾性部材42は、凹部415に挿入されて凹部415の底面と接し、軸部431は、先端部432の反対側に位置する基端部433側から凹部415に挿入されて、基端部433が弾性部材42と接している。基端部433は、例えば、平面で弾性部材42と接することができる。基端部433は、例えば、外周側が面取りされてもよい。
【0030】
ピン部材43は、凹部415に支持されるため、力を逃がさずに効率的にフェース部20の背面20bを押圧できる。軸部431は、長手方向の長さの30%以上が凹部415に収納されている。これにより、フェース部20の背面20bに接するピン部材43がずれることを防止できる。
【0031】
弾性部材42の厚さ方向の中心からピン部材43の先端部432の最先端までの長さは、弾性部材42の厚さ方向の中心からソール固定部材41の筒状部412の最先端までの長さよりも長い。また、ピン部材43の設計を変えることで、ドライバーからユーティリティまでの異なる付き当て距離のゴルフクラブヘッドにおいてソール固定部材41の共有が可能となる。ピン部材43の設計事項は、例えば、軸部431または先端部432のd方向の長さや形状である。
【0032】
軸部431の外側面は、凹部415の内側面に接しても良いが、軸部431は凹部415には固定されていない。すなわち、軸部431は、凹部415の長手方向に沿って(中心軸CLに沿って)凹部415内を移動自在である。なお、軸部431が凹部415内に最も深く挿入された場合でも、先端部432はソール固定部材41の一方の端部側に露出する。
【0033】
先端部432は、軸部431よりも細い部分を含んでいる。先端部432は、例えば、中心軸CLに沿って軸部431から離れるにしたがって横断面積(中心軸CLと垂直な方向の断面積)が漸減する形状であり、曲面を有する。先端部432は、例えば、半球状である。
【0034】
突き当て構造40が接する背面20bの部位はフェース部20の下部であり、特にフェースセンターの下方である。フェース部20の下部(ソール部13側)に突き当て構造40が接することで、フェース部20の下部の変形が上部よりも拘束される。これは、打撃時に打球の打ち上げ角を増大させることに寄与する。なお、CT値とは、フェース部の反発係数を示す値である。
【0035】
フェースセンターは、所定のライ角及びロフト角になるようにソール部13を接地させたときに、フェース面20fのd方向におけるトウ-ヒールの中間付近の位置にあり、フェース面20fのd方向における最も低い位置と最も高い位置の中間付近の高さにあると特定できる。ここで、d方向における「中間付近」とは、トウ-ヒール方向における一端を0%、他端を100%としたときに、45%以上55%以下となる範囲と定義する。また、d方向における「中間付近」とは、クラウン-ソール方向における一端を0%、他端を100%としたときに、45%以上55%以下となる範囲と定義する。
【0036】
本実施形態では、固定部132とソール固定部材41との固定構造は、ねじ構造であり、固定部132にはd方向のねじ穴133が形成されている。ソール固定部材41の頭部411には、例えば、六角形の溝が設けられている。頭部411の溝に六角レンチ等の先端部を挿入することでソール固定部材41を回転させ、ソール固定部材41のねじ部413を、ねじ穴133に螺合できる。
【0037】
突き当て構造40では、固定部132からフェース部20へ向かう方向(d方向)に、ソール固定部材41の固定位置を調整できる。すなわち、ねじ穴133に対するねじ部413のねじ込み量により、固定部132に対するソール固定部材41の固定位置がd方向に沿って変化する。これにより、ソール固定部材41の、固定部132のフェース部20側の端面からフェース部20への延出長さ(突出量)を調整できる。すなわち、先端部432のd方向の位置を調整できる。
【0038】
突き当て構造40と固定部132にそれぞれ個体差があっても、ねじ穴133に対するねじ部413のねじ込み量の調整によって、突き当て構造40の先端部432を確実にフェース部20の背面20bに接触させることができる。なお、突き当て構造40において、固定部132からの延出長さが最大となるソール固定部材41の固定位置は、ソール固定部材41の頭部411が固定部132のバック側の端面に接する位置である。
【0039】
なお、固定部132とソール固定部材41との固定構造は、ねじ構造に限られず、圧入、接着、溶接、かしめ等、他の固定構造であってもよい。
【0040】
このように、ゴルフクラブヘッド1は、突き当て構造40の先端部432がフェース部20の背面20bに接することで、フェース部20の先端部432との接触部分の変形が拘束される。つまり、突き当て構造40はフェース部20の変形を局所的に拘束する補強部材として機能する。突き当て構造40は、先端部432が先細り形状となっており、フェース部20の背面20bに点接触する。これにより、フェース部20の変形を過剰に拘束することを抑制できる。
【0041】
突き当て構造40の先端部432は、自然状態におけるフェース部20の背面20bを押圧しない程度に接するようにしてもよいし、フェース面20f側に押圧する程度に接するようにしてもよい。また、ソール固定部材41のねじ部413と固定部132のねじ穴133との締結度合によって、押圧の程度を調整可能としてもよい。また、ソール固定部材41のねじ部413と固定部132のねじ穴133とを最大に締結した場合には、突き当て構造40の先端部432がフェース部20の背面20bをフェース面20f側に僅かに変位させてもよい。
【0042】
フェース部20の突き当て構造40の先端部432との接触部分の変形が拘束されることにより、フェース部20の剛性分布としては、相対的に中央部から上部では剛性が低く、相対的に下部では剛性が高くなる。つまり、打撃時にフェース部20の上部がバック側に撓み易くなる。そのため、打球の打出し角を高くできる。
【0043】
また、突き当て構造40の重量により、ゴルフクラブヘッド1の重心は相対的にフェース部20側に位置することになる。よって、打球のバックスピン量が抑制される傾向になる。以上のことから、打球の最大飛距離性能が相対的に高くなる。
【0044】
突き当て構造40の中心軸CLは、背面20bの法線方向と平行ではなく、交差している。突き当て構造40が、フェース部20の背面20bに対して斜めに接することで、打撃時に突き当て構造40や固定部132、或いはフェース部20の突き当て構造40が接する部位に、必要以上の応力が集中することを防止できる。
【0045】
また、先端部432は例えば半球状であり、半球を形成する曲面の一部がフェース部20の背面20bと接する。先端部432が曲面でフェース部20の背面20bに接することで、突き当て構造40の個体差によらず背面20bに対する接触態様をより均一化できる。また、先端部432が曲面でフェース部20の背面20bに接することで、突き当て構造40によって、打撃時のフェース部20の変形を不必要に拘束することを防止できる。
【0046】
さらに、突き当て構造40の構成部品をすべて金属製にしたと仮定した場合、フェース部20から受ける力の逃げ場がないため、打撃時の衝撃により突き当て構造40の構成部品が破壊するおそれがある。しかし、ゴルフクラブヘッド1では、突き当て構造40の構成部品である金属製のソール固定部材41と金属製のピン部材43との間に弾性部材42を配置しているため、突き当て構造40がフェース部20から力を受けたときに弾性部材42が変形する。これにより、フェース部20から力を逃がすことが可能となるため、打撃時の衝撃による金属製のソール固定部材41及び金属製のピン部材43の破壊を防止できる。つまり、突き当て構造40の耐久性(破壊耐性)を向上したゴルフクラブヘッド1を実現できる。
【0047】
金属製のソール固定部材41及び金属製のピン部材43の耐久性を一層向上する観点から、ソール固定部材41のヤング率は、60GPa以上であることが好ましく、90GPa以上であることがより好ましい。また、フェース部20からの直接力を受けるピン部材43のヤング率は、90GPa以上であることが好ましい。
【0048】
ソール固定部材41及びピン部材43の材料例については前述のとおりであるが、耐久性を向上可能なソール固定部材41及びピン部材43の好適な材料の一例としては、ヤング率が90GPa以上であるチタンを主とした材料(例えば、チタン、チタン合金等)が挙げられる。また、軽量化を重視する場合には、ソール固定部材41の材料としてヤング率が60GPa以上であるアルミニウムを主とした材料(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等)を使用し、ピン部材43の材料としてヤング率が90GPa以上であるチタンを主とした材料(例えば、チタン、チタン合金等)を用いることができる。なお、チタンの比重が約4.5であるのに対して、アルミニウムの比重は約2.7である。
【0049】
また、突き当て構造40がフェース部20から力を受けたときの力の逃げ場を十分に確保する観点から、凹部415の中心軸CLを通る断面視において(つまり、図5(b)の状態で)、弾性部材42の幅は、凹部415の幅よりも狭いことが好ましい。これにより、突き当て構造40がフェース部20から力を受けたときに、弾性部材42が外側に十分に変形できる空間を形成可能となり、突き当て構造40の耐久性をいっそう向上できる。
【0050】
例えば、凹部415の中心軸CLを通る断面視において、凹部415の幅(凹部415の対向する内側面の間隔)が4mmであれば、弾性部材42の幅を3mmとすることができる。この場合、前記断面視における弾性部材42の側面と凹部415の内側面との間隔が0.5mmとなり、弾性部材42が外側に十分に変形できる空間を形成可能となる。
【0051】
また、弾性部材42の幅を凹部415の幅よりも狭くすることに代えて、或いは、弾性部材42の幅を凹部415の幅よりも狭くすることに加えて、弾性部材42の中心側に空間部を有してもよい。この場合、突き当て構造40がフェース部20から力を受けたときに、弾性部材42が中心軸CLの方向に変形できるため、フェース部20からの力を逃がすことができる。
【0052】
また、突き当て構造40では、先端部432を含むピン部材43を金属製とすることで、先端部が弾性体である従来構造に比べ、フェース部20の反発を抑える力を向上できる。つまり、突き当て構造40では、フェース部の反発係数を示すCT値を抑える力を向上できる。
【0053】
また、フェース部20の反発を抑える力を向上したことで、フェース部20の薄肉化が可能となる。すなわち、一般に、フェース部を薄肉化するとフェース部の反発が上がり、CT値が英国ゴルフ協会の定めるSLE(Spring Like Effect)ルールの上限の257μsを超えてしまうおそれが高い。そのため、フェース部を薄肉化することは困難である。しかし、ゴルフクラブヘッド1では、突き当て構造40の構成部品であるピン部材43を金属製とすることで、フェース部20の反発を抑える力を向上したため、フェース部20を薄肉化してもCT値を上記のルールの範囲内に収めることが可能となる。その結果、ゴルフクラブヘッド1全体の重量を軽量化できる。
【0054】
また、ゴルフクラブヘッド1では、突き当て構造40の先端部432がフェース部20の背面20bに接することで、フェース部20の先端部432との接触部分の変形が拘束される。その結果、フェース部20の反発性を意図的に下げ、従来よりも広い範囲で高い反発性を持つ設計を実現できる。
【0055】
例えば、図6(a)及び図6(b)では、最も反発性の高い部分を100%とした場合の反発性の分布を示している。図6(a)は、突き当て構造を有していないゴルフクラブヘッドの実測データの一例であり、図6(b)は、突き当て構造40を有するゴルフクラブヘッド1の実測データの一例である。
【0056】
図6(a)及び図6(b)より、突き当て構造を有していないゴルフクラブヘッドに比べて、突き当て構造40を有するゴルフクラブヘッド1では、高い反発性を持つ範囲が拡大されていることがわかる。すなわち、ゴルフクラブヘッド1では、従来のゴルフクラブヘッドに比べて、オフセンター部分での反発性が向上している。なお、図6(a)に示すゴルフクラブヘッドにおいてフェース部の重量が34gであるのに対して、図6(b)に示すゴルフクラブヘッド1ではフェース部20の重量が31gに軽量化されている。
【0057】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ゴルフクラブヘッド
10 本体部
12 第1クラウン
13 ソール部
14 サイド部
15 ホゼル
20 フェース部
20b 背面
20f フェース面
30 クラウン部
32 第2クラウン
40 突き当て構造
41 ソール固定部材
42 弾性部材
43 ピン部材
131 凹部
132 固定部
133 ねじ穴
411 頭部
412 筒状部
413 ねじ部
415 凹部
431 軸部
432 先端部
433 基端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6