(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100168
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】抗アレルギー用組成物及び抗アレルギー用組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20220628BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220628BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K31/7048
A61P37/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214375
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】520509591
【氏名又は名称】東 禎吉郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197734
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】東 禎吉郎
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB13
4C088AB12
4C088AC05
4C088BA09
4C088CA05
4C088MA17
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZB13
(57)【要約】
【課題】花粉症に対して高い抗アレルギー性を有するキササゲ葉由来の抗アレルギー用組成物と、この抗アレルギー用組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キササゲ葉の抽出物を有効成分とする抗アレルギー用組成物であることを特徴とする。また、抗アレルギー用組成物の製造方法であって、キササゲ葉を乾燥する工程と、乾燥したキササゲ葉を細断する工程と、細断されたキササゲ葉大さじ1杯分に対し水1リットルの割合で混合して混合液を作成し、該混合液を煮出しして、有効成分としてナリルチンを含有する抽出物を生成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キササゲ葉の抽出物を有効成分とする抗アレルギー用組成物。
【請求項2】
前記有効成分としてナリルチンを含有することを特徴とする請求項1記載の抗アレルギー用組成物。
【請求項3】
キササゲ葉を乾燥する工程と、
乾燥したキササゲ葉を細断する工程と、
細断されたキササゲ葉大さじ1杯分に対し水1リットルの割合で混合して混合液を作成し、該混合液を煮出して、有効成分としてナリルチンを含有するキササゲ葉の抽出物を生成する工程と、
を備えたことを特徴とする抗アレルギー用組成物の製造方法。
【請求項4】
前記アレルギーが、少なくとも花粉症であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗アレルギー用組成物。
【請求項5】
前記アレルギーが、少なくとも花粉症であることを特徴とする請求項3に記載の抗アレルギー用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高い抗アレルギー性を有する組成物及び高い抗アレルギー性を有する組成物の製造方法に関し、特にキササゲの葉から抽出された高い抗アレルギー性を有する組成物及び高い抗アレルギー性を有する組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、花粉によって生じるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患の総称である花粉症が広く知られている。花粉症の患者は年々増加の一途を辿っており、花粉症の治療方法や、薬剤、民間医療等、さまざまな技術が提案されている。この花粉症の原因となる物質(「アレルゲン」、「アレルギー物質」ともいう。)についても、多数の特許文献が存在しており、例えば、特許文献1には、「該アレルゲンが樹木花粉である請求項9の医薬組成物。」(「請求項11」参照。)、「該樹木花粉が、ヒマヤラスギ、キササゲ、・・・から選択される・・・、請求項11の医薬組成物。」(「請求項12」参照。)とあり、「キササゲ」の樹木花粉がアレルゲンの一つであることが記載されている。
【0003】
ところで、この「キササゲ」については、例えば、特許文献2に「本発明者らは、キササゲ抽出物、イブキトラノオ抽出物、ゴショイチゴ抽出物、セイヨウシロヤナギ抽出物、キカラスウリ抽出物及びアルピニア・カツマダイ抽出物に優れたmTOR活性化作用があることを見いだした。従って、本発明は特定の化合物を有効成分とするmTORを活性化する製剤並びにmTORを活性化する製剤を用いた皮膚老化を予防する方法を提供するものである」(段落「0014」参照。)と記載され、特許文献3に「本発明の有効成分であるキササゲ、フクボンシ、セイヨウシロヤナギ、カロニン、ソウズクから選ばれる1種又は2種以上の植物抽出物は、優れたメラニン生成抑制作用を有しており、これを化粧料組成物に応用することによりシミ、ソバカス、くすみ又は紫外線曝露に起因する皮膚黒色化等の皮膚の色素沈着を効果的に抑制及び改善と入った美白効果を提供することが可能となった。更に、本発明のメラニン生成抑制剤、化粧料組成物及び皮膚の美白方法は人体に対しても非常に安全性の高いものであり、医薬品、医薬部外品、飲料品等の分野において広い範囲での使用を可能とするものである」(段落「0010」参照。)とあるように、キササゲを用いて、皮膚老化予防することや、皮膚の色素沈着を効果的に抑制及び改善すること、皮膚の美白に効果があること等が記載されている。
【0004】
特許文献4には、「近年、柑橘類に含まれる成分の研究成果が多く報告され、中でもフラボノイド類であるナリルチン(Narirutin)には、抗酸化作用や抗アレルギー作用をはじめ、多くの生理活性作用があることが報告されている。・・・また、ヒト花粉症のアレルギー性諸症状の改善に有効であるとの報告もある・・・」(段落「0005」、「0006」参照。)とあるように、花粉症に対し、「ナリルチン」が有効であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6092107号公報
【特許文献2】特許第4800049号公報
【特許文献3】特開2006-290749号公報
【特許文献4】特許第5909795号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NTS薬用植物辞典編集委員会編,「薬用植物辞典」,初版第一刷,株式会社エヌ・ティー・エス,2016年12月8日,p.288-p.289
【非特許文献2】木下武司著,「歴代日本薬局方収載 生薬大事典」,株式会社ガイブックス,2015年4月10日,p.88-p.89,p.607-p.611
【非特許文献3】日本医科大学耳鼻咽喉科助教授 大久保 公裕 監修,コメディカルが知っておきたい 花粉症の正しい知識と治療・セルフケア,初版,厚生労働科学研究,平成19年1月,p.5-p.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2、3に記載されているように、キササゲには、皮膚の老化予防や、皮膚の美白化に効果がある一方、上記特許文献1に記載されているように、キササゲの樹木花粉は花粉症のアレルゲンとなっている。
【0008】
本願発明では、花粉症に対して高い抗アレルギー性を有するキササゲ葉由来の抗アレルギー用組成物と、この抗アレルギー用組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、キササゲ葉の抽出物を有効成分とする抗アレルギー用組成物であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の請求項1記載の抗アレルギー用組成物であって、前記有効成分としてナリルチンを含有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、抗アレルギー用組成物の製造方法であって、キササゲ葉を乾燥する工程と、乾燥したキササゲ葉を細断する工程と、細断されたキササゲ葉大さじ1杯分に対し水1リットルの割合で混合して混合液を作成し、この混合液を煮出して、有効成分としてナリルチンを含有する抽出物を生成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の抗アレルギー用組成物であって、前記アレルギーが、少なくとも花粉症であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の抗アレルギー用組成物の製造方法であって、前記アレルギーが、少なくとも花粉症であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抗アレルギー用組成物及び抗アレルギー用組成物の製造方法によれば、花粉症の症状低減に対して有効であるという顕著な効果を奏することができる。
【0015】
また、本発明の抗アレルギー用組成物及び抗アレルギー用組成物の製造方法によれば、体臭、特に、加齢臭の抑制に有効であるという顕著な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の抗アレルギー組成物の製造工程を示す工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
まず、本発明の実施形態に用いるキササゲについて一般的に知られていることを簡単に説明する。例えば、上記の非特許文献1、非特許文献2を参照されたい。キササゲ(学名:Catalpa ovata G.Don)は、原産地を中国とするノウゼンカズラ科の落葉高木である。キササゲ果実(キササゲの実,「梓実」ともいう。)には、利尿効果があるイリドイド配糖体が有効成分として含まれており、民間療法では、キササゲ果実(キササゲの実)を乾燥させたもの利尿薬(生薬)として用いている。また、キササゲは、日本各地の公園や植物園などに植栽されている。
(製造方法)
【0019】
本願出願人は、鋭意研究の結果、このキササゲ果実ではなく、キササゲ葉を用いて、利尿効果とは全く異質の抗アレルギーに顕著な効果を示す抗アレルギー組成物及びその製造方法を発明したのである。以下、本願発明の抗アレルギー組成物及びその製造方法について、
図1の工程フロー図を参照しながら説明する。
【0020】
[乾燥工程](ステップS01)
まず、キササゲの葉を収穫するのであるが、上述したように、キササゲは落葉樹であるので、葉の収穫可能時期は限られている。11月上旬を過ぎると、落葉し初め、落葉は衛生的に不適である。また、本願出願人の研究から、10月初旬以前(特に5月、6月)の若い葉は、抗アレルギーの効果が小さくなるので、好適には、10月中旬~11月上旬の期間に限ってキササゲ葉を収穫するとよい。
【0021】
次に、収穫したキササゲ葉を自然乾燥させる。乾燥場所は、屋内でも屋外でも可能である。乾燥装置についても、特に限定されず、当業者であれば、周知又は公知の技術を用いて適宜構成することができる。また、温風供給,加熱等により強制的に乾燥させてもよい。
【0022】
[細断工程](ステップS02)
乾燥したキササゲ葉を、約5~6mmの大きさに細断する。細断は、手動で行ってもよいし、細断装置により機械的に細断処理しても構わない。
【0023】
[抽出工程](ステップS03)
上記の細断されたキササゲ葉(以下、「細断キササゲ葉」という。)大さじ1杯分に対し、水1リットルの割合で混合して混合液を作成し、この混合液の煮出しを行う。一度に処理する量は、混合するキササゲ葉と水の割合を上記と同じ条件にした上で、必要に応じて適宜設定すればよいが、ここでは、透明耐熱容器に水1リットルと大さじ1杯分の細断キササゲ葉を入れ、加熱手段で加熱して煮出しを行うものとする。なお、細断キササゲ葉は、そのまま、透明耐熱容器に入れてもよいが、回収を容易にするため、目の細かい網具や袋に封入して入れてもよい。
【0024】
加熱当初は、混合液(上述の細断キササゲ葉と水の混合液。)は無色透明であるが、加熱を続けていき煮出が進んでいくと、やがて、混合液が黄金色となる。このまま加熱を続けると、混合液が沸騰することになるが、本願発明では、混合液を沸騰させると、抗アレルギーの作用効果が低減する(キササゲ葉から抽出されるナリルチンの成分が減少するものと推量される。)ので、混合液が沸騰する直前で、加熱手段を停止させる。また、混合液から、抽出が完了したキササゲ葉(又は、収納容器等)を取り出し廃棄する。残った混合液、つまり、抽出液を専用の容器に移して保管する。この抽出液が、本願発明のキササゲ葉の抽出物を有効成分とする抗アレルギー用組成物である。この有効成分は、前述したように花粉症対策に顕著な効果を奏するナリルチンであることを確認した。
なお、キササゲ果実は、厚生労働省により出された通知には「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」と記載されているが、キササゲの果実以外の部位については、そのような記載はない。
【実施例0025】
(花粉症患者に対する諸症状の改善効果の評価)
宮崎県児湯郡都農町で収穫したキササゲ葉を上記したように、自然乾燥させ、約5~6mmに細断し、この細断キササゲ葉大さじ一杯分を封入した袋を、水1リットルが入った透明耐熱ガラス製の容器に投入して混合して混合液を作成し、この容器を加熱手段で加熱して混合液の煮出を行い、混合液が黄金色に変わり混合液が沸騰する直前で加熱を停止し、抽出が完了した細断キササゲ葉を袋毎取り出して廃棄し、残った混合(つまり、「抽出液」。)を保温容器で保管した。この保温容器に保管された抽出液(キササゲ葉の抽出物が含まれた液)を一日分として、花粉症(アレルギー性鼻炎)の重症度が重症以上の罹患者に所定期間飲用してもらい、その飲用後の症状の改善効果を、以下に示す。なお、保管した抽出液の消費期限は、常温で12hr、保温容器で保管した場合24hrである。
【0026】
表1は、アレルギー性鼻炎症状の重症度分類を示している。このアレルギー性鼻炎症状の重症度分類については、一般に広く知られており、例えば、非特許文献3に示されている。表1においては、重症度は、「くしゃみ発作または鼻漏」が「+++」以上、あるいは、「鼻閉」が「+++」以上のときに「重症」以上と定義されているものと思われる。また、「+++」は、「くしゃみ発作(1日の平均発作回数)」が11回以上、「鼻汁(1日の平均こう鼻回数)」が11回以上等と示されている。
【0027】
表2~表4は、表1の重症度分類の「重症」又は「最重症」に相当する花粉症の19歳~78歳の男女18人に、上記のキササゲ葉の抽出液を所定期間飲用して貰い、飲用後の花粉症の諸症状の改善効果の評価結果である。キササゲ葉抽出液の飲用量は、1人当たり1リットル/日である。飲用期間については、花粉の飛散量の多い2月後半から4月後半にかけて、おおむね、60日前後である。表2~表4に示すように、本願発明のキササゲ葉抽出液を飲用した被験者(花粉症罹患者)に対して、目のかゆみについては18人中17人に対して症状の改善効果が確認され、鼻詰まりについては、18人中5人に対して症状の改善効果が確認され、くしゃみ回数については、18人中18人に対して症状の改善効果が確認された。また、被験者全てが、総合的に85%以上の花粉症の症状改善効果を確認しており、また、18人中17人が終日マスク不用となり、18人中1人が睡眠時マスク不用の改善効果を確認した。なお、鼻詰まりの評価で、効果なし(「×」評価)の13人については、全て、症状は現状維持であり、鼻詰まりの症状が悪化した被験者はいなかった。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
以上のように、本願発明のキササゲ葉抽出物には、ヒト花粉症のアレルギー性諸症状の改善に有効なナルリチンが含まれていることが定量的に測定され、ヒト試験結果でも、花粉症の諸症状の改善が確認された。