(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100204
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】温度制御型及び温度補償型発振装置並びにその方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
H03B5/32 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111671
(22)【出願日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】17/132,739
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506413591
【氏名又は名称】台灣晶技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝 萬霖
(72)【発明者】
【氏名】高 笙翔
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079CA12
5J079CB01
5J079DA13
5J079FB01
(57)【要約】
【課題】本発明は温度制御型及び温度補償型の発振装置並びにその温度制御及び温度補償の方法を提供する。
【解決手段】周囲温度の変動から生じる周波数源の周波数変動は、周囲温度が第1温度とこの第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、ある電圧を周波数源に適用することにより低減される。周波数源の動作温度は、周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、ヒーターを周囲温度まで駆動することにより調節される。第1温度は第3温度より高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある周囲温度を有する環境に配置される発振装置であって、
ヒーターと、
前記周囲温度に温度依存する周波数を有する周波数源と、
前記周波数源に結合される電圧制御発振回路であって、前記周囲温度が第1温度と前記第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、前記周波数源を駆動することにより、前記周囲温度の変動から生じる前記周波数源の周波数変動を低減する電圧制御発振回路と、
前記ヒーター及び前記電圧制御発振回路に結合される温度制御回路であって、前記周囲温度が第3温度と前記第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、前記ヒーターを目標温度まで駆動することにより、前記周波数源の動作温度を調節する温度制御回路と、を含み、
前記第1温度は前記第3温度より高い、発振装置。
【請求項2】
前記電圧制御発振回路に結合される第1温度センサーをさらに含み、前記第1温度センサーは前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度を感知して、第1検出電圧を生成するように構成され、
前記温度制御回路は前記周囲温度が第1範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づき第1制御電圧を生成し、前記電圧制御発振回路は前記第1制御電圧及び前記第1検出電圧を受けるとともに前記第1制御電圧及び前記第1検出電圧に基づいて前記周波数源を駆動する、請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記温度制御回路は、
前記周囲温度を感知するように構成される第2温度センサーであって、前記周囲温度が前記第2範囲にある時に前記周囲温度に基づいて第2検出電圧を生成する第2温度センサーと、
前記周囲温度を感知するように構成される目標温度設定回路であって、前記周囲温度が前記第2範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づいて第2制御電圧を生成し、前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づいて前記第1制御電圧を生成する目標温度設定回路と、
前記ヒーター、前記第2温度センサー及び前記目標温度設定回路に結合され、かつ前記第2検出電圧及び前記第2制御電圧を受けるとともに、前記第2検出電圧及び前記第2制御電圧に基づいて前記ヒーターを前記目標温度まで駆動するように構成されるヒーティングコンパレーターと、
を含む、請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記電圧制御発振回路は
前記第1温度センサー及び前記目標温度設定回路に結合されるドライビングコンパレーターであって、前記第1制御電圧及び前記第1検出電圧を受けて駆動電圧を生成するドライビングコンパレーターと、
前記ドライビングコンパレーターに結合され、かつ前記駆動電圧を受けるとともに、その駆動電圧に基づいて少なくとも1つの動作電圧を生成するように構成される電圧発生器と、
前記周波数源及び前記電圧発生器に結合され、かつ前記少なくとも1つの動作電圧を受けて静電容量を調整するように構成され、これにより前記周波数源の前記周波数変動を低減する少なくとも1つの可変容量ダイオードと、
を含む、請求項3に記載の発振装置。
【請求項5】
前記温度制御回路は前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度を感知して第1検出電圧を生成するように構成され、前記温度制御回路は前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づいて第1制御電圧を生成し、前記電圧制御発振回路は前記第1制御電圧及び前記第1検出電圧を受けるとともに、前記第1制御電圧及び前記第1検出電圧に基づいて前記周波数源を駆動する、請求項1に記載の発振装置。
【請求項6】
前記温度制御回路は、
前記周囲温度を感知するように構成される温度センサーであって、前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度に基づいて前記第1検出電圧を生成し、かつ前記周囲温度が前記第2範囲にある時に前記周囲温度に基づいて第2検出電圧を生成する温度センサーと、
前記周囲温度を感知するように構成される目標温度設定回路であって、前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づいて前記第1制御電圧を生成し、かつ前記周囲温度が前記第2範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づいて第2制御電圧を生成する目標温度設定回路と、
前記ヒーター、前記温度センサー及び前記目標温度設定回路に結合され、かつ前記第2検出電圧及び前記第2制御電圧を受けるとともに、前記第2検出電圧及び前記第2制御電圧に基づいて前記ヒーターを前記目標温度まで駆動するように構成されるヒーティングコンパレーターと、
を含む、請求項5に記載の発振装置。
【請求項7】
前記電圧制御発振回路は、
前記温度センサー及び前記目標温度設定回路に結合され、かつ前記第1制御電圧及び前記第1検出電圧を受けて駆動電圧を生成するように構成されるドライビングコンパレーターと、
前記ドライビングコンパレーターに結合され、かつ前記駆動電圧を受けるとともに、その駆動電圧に基づいて少なくとも1つの動作電圧を生成するように構成される電圧発生器と、
前記周波数源及び前記電圧発生器に結合され、かつ前記少なくとも1つの動作電圧を受けて静電容量を調整するように構成され、これにより前記周波数源の前記周波数変動を低減する少なくとも1つの可変容量ダイオードと、
を含む、請求項6に記載の発振装置。
【請求項8】
前記温度制御回路は前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度を感知して第1検出電圧を生成するように構成され、前記電圧制御発振回路は前記第1検出電圧を受けるとともに、その第1検出電圧に基づいて前記周波数源を駆動する、請求項1に記載の発振装置。
【請求項9】
前記温度制御回路は、
前記周囲温度を感知するように構成される温度センサーであって、前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度に基づいて前記第1検出電圧を生成し、かつ前記周囲温度が前記第2範囲にある時に前記周囲温度に基づいて第2検出電圧を生成する温度センサーと、
前記周囲温度を感知するように構成される目標温度設定回路であって、前記周囲温度が前記第2範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づいて制御電圧を生成する目標温度設定回路と、
前記ヒーター、前記温度センサー及び前記目標温度設定回路に結合され、かつ前記第2検出電圧及び前記制御電圧を受けるとともに、前記第2検出電圧及び前記制御電圧に基づいて前記ヒーターを前記目標温度まで駆動するように構成されるコンパレーターと、
を含む、請求項8に記載の発振装置。
【請求項10】
前記電圧制御発振回路は、
前記温度センサーに結合され、かつ前記第1検出電圧を受けるとともに、その第1検出電圧に基づいて少なくとも1つの動作電圧を生成するように構成される電圧発生器と、
前記周波数源及び前記電圧発生器に結合され、かつ前記少なくとも1つの動作電圧を受けて静電容量を調整するように構成され、これにより前記周波数源の前記周波数変動を低減する少なくとも1つの可変容量ダイオードと、
を含む、請求項9に記載の発振装置。
【請求項11】
前記目標温度は前記周囲温度に対して、一次多項式、高次多項式又は一次多項式と高次多項式の組み合わせの相関関係を有する、請求項1に記載の発振装置。
【請求項12】
ある周囲温度を有する環境に配置される発振装置であって
ヒーターと、
前記ヒーターに結合される温度制御回路と、
前記周囲温度に温度依存する周波数を有する周波数源であって、前記周囲温度が第1温度と前記第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、前記温度制御回路が前記ヒーターを目標温度まで駆動することにより、前記周波数源の動作温度を調節する周波数源と、
前記周囲温度を感知するように構成される第1温度センサーであって、前記周囲温度が第3温度と前記第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時に前記周囲温度に基づいて第1検出電圧を生成する第1温度センサーと、
前記周波数源及び前記第1温度センサーに結合される電圧制御発振回路であって、前記第1検出電圧を受けて前記周波数源を駆動するとともに、前記周囲温度の変動から生じる前記周波数源の周波数変動を低減する電圧制御発振回路と、を含み
前記第3温度は前記第1温度より高い、発振装置。
【請求項13】
前記温度制御回路は、
前記周囲温度を感知するように構成される第2温度センサーであって、前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度に基づいて第2検出電圧を生成する第2温度センサーと、
前記周囲温度を感知するように構成される目標温度設定回路であって、前記周囲温度が前記第1範囲にある時に前記周囲温度及び前記目標温度に基づいて制御電圧を生成する目標温度設定回路と、
前記ヒーター、前記第2温度センサー及び前記目標温度設定回路に結合され、かつ前記第2検出電圧及び前記制御電圧を受けるとともに、前記第2検出電圧及び前記制御電圧に基づいて前記ヒーターを前記目標温度まで駆動するように構成されるコンパレーターと、
を含む、請求項12に記載の発振装置。
【請求項14】
前記電圧制御発振回路は、
前記第1温度センサーに結合され、かつ前記第1検出電圧を受けるとともに、その第1検出電圧に基づいて少なくとも1つの動作電圧を生成するように構成される電圧発生器と、
前記周波数源及び前記電圧発生器に結合され、かつ前記少なくとも1つの動作電圧を受けて静電容量を調整するように構成され、これにより前記周波数源の前記周波数変動を低減する少なくとも1つの可変容量ダイオードと、
を含む、請求項12に記載の発振装置。
【請求項15】
前記目標温度は前記周囲温度に対して、一次多項式、高次多項式又は一次多項式と高次多項式の組み合わせの相関関係を有する、請求項12に記載の発振装置。
【請求項16】
ある周囲温度に温度依存する周波数を有する周波数源に用いられる温度制御及び温度補償の方法であって、
周囲温度が第1温度と前記第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、ヒーターを目標温度まで駆動することにより前記周波数源の動作温度を調節することと、
前記周囲温度が第3温度と前記第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、ある電圧を前記周波数源に適用することにより前記周囲温度の変動から生じる前記周波数源の周波数変動を低減することと、を含み、
前記第3温度は前記第1温度より高い、方法。
【請求項17】
前記目標温度は前記周囲温度に対して、一次多項式、高次多項式又は一次多項式と高次多項式の組み合わせの相関関係を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度制御型及び温度補償型発振装置並びにその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶発振器(crystal oscillator)に用いられる水晶振動子(quartz resonator)は発振周波数特性が温度に応じて大きく変動するという性質を有している。そのような変動を補償して精度が高く安定した周波数特性を確保するために、様々な技術が提案されてきた。その中の一つが従来既知の恒温槽型水晶発振器である。
【0003】
恒温槽型水晶発振器のようなタイプは、温度センサーで測定される外部空気温度に関係した実際の温度を設定温度と比較し、実際の温度と設定温度の差が縮まるように熱源を制御することにより、ケーシングとしての恒温槽に収容された水晶発振器の温度を所定の目標温度で維持するように構成されている。詳しくは、恒温槽型水晶発振器は、温度センサーと、所定の目標温度が設定されている温度設定ユニットと、コンパレーター又はトランジスターのような制御手段と、熱源としてのヒーターと、水晶発振器を駆動する発振回路を備えた構造などを統合してモジュール化することにより、また、こうして得られたモジュールを水晶発振器と共に恒温槽に収容することにより構成されたものである。温度センサー、温度設定ユニット、コンパレーター及びヒーターは集積回路(IC)に統合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際の温度が低い時は、設定温度の方が高い。しかし、設定温度が高過ぎると、ICの性能が低下するおそれがある。上述した従来技術の問題を解決するために、本発明は温度制御型及び温度補償型発振装置並びに温度制御及び温度補償の方法を提供する。
【0005】
本発明は、高過ぎる目標温度によりICの性能が低下しないようにする、温度制御型及び温度補償型発振装置並びに温度制御及び温度補償の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態において、発振装置はある周囲温度を有する環境に配置される。発振装置はヒーター、周波数源、電圧制御発振回路及び温度制御回路を含む。周波数源の周波数は周囲温度に温度依存する。電圧制御発振回路は周波数源に結合される。周囲温度が第1温度と第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、電圧制御発振回路は周波数源を駆動することにより、周囲温度の変動から生じる周波数源の周波数変動を低減する。温度制御回路はヒーター及び電圧制御発振回路に結合される。周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、温度制御回路はヒーターを目標温度まで駆動することにより、周波数源の動作温度を調節する。第1温度は第3温度より高い。
【0007】
本発明の一実施形態において、発振装置はある周囲温度を有する環境に配置される。発振装置はヒーター、温度制御回路、周波数源、第1温度センサー及び電圧制御発振回路を含む。温度制御回路はヒーター及び電圧制御発振回路に結合される。周波数源の周波数は周囲温度に温度依存する。周囲温度が第1温度と第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、温度制御回路は前記ヒーターを目標温度まで駆動して周波数源の動作温度を調節する。第1温度センサーは周囲温度を感知するように構成される。第1温度センサーは、周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時に周囲温度に基づいて第1検出電圧を生成する。電圧制御発振回路は周波数源及び第1温度センサーに結合される。電圧制御発振回路は、第1検出電圧を受けて周波数源を駆動するとともに、周囲温度の変動から生じる周波数源の周波数変動を低減する。第3温度は第1温度より高い。
【0008】
本発明の一実施形態において、温度制御及び温度補償の方法は周囲温度に温度依存する周波数の周波数源に用いられる。当該方法は、周囲温度が第1温度と前記第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、ヒーターを目標温度まで駆動することにより周波数源の動作温度を調節することと、周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、ある電圧を周波数源に適用することにより周囲温度の変動から生じる周波数源の周波数変動を低減することと、を含み、第3温度は第1温度より高い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、発振装置は、高過ぎる目標温度のためにICの性能が低下するという事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態における発振装置を示す図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態における発振装置を示す図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態における発振装置を示す図である。
【
図4a】本発明の第1、第2及び第3の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【
図4b】本発明の第1、第2及び第3の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【
図4c】本発明の第1、第2及び第3の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【
図4d】本発明の第1、第2及び第3の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態における発振装置を示す図である。
【
図6a】本発明の第4の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【
図6b】本発明の第4の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【
図6c】本発明の第4の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【
図6d】本発明の第4の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、関連する図を合わせて以下にさらなる説明を加える。図面及び明細書においては、可能な限り、同じ符号で同一又は同様の部材を示す。図面においては、簡潔性及び利便性のため、形状及び厚さが拡大表示されることがある。本説明は、特に、本発明による方法及び装置の一部を形成する要素、又は本発明による方法及び装置とより直接的に協働する要素に関する。特に図中で表示されていない、或いは明細書に記載されていない素子は、当業者が知る形態であると解釈できる。当業者は本発明の内容に基づいて様々な変更や修正を行うことができる。
【0012】
特に説明がない限り、いくつかの条件句或いは助詞、例えば「できる(can)」、「可能性がある(could)」、「かもしれない(might)」、或いは「~してよい(may)」等は、通常は本発明の実施形態を表現するが、不要な可能性もある特徴、部材或いは工程と解釈してもよい。その他の実施形態において、これらの特徴、部材、或いは工程は不要な場合もある。
【0013】
文中における「一つの実施形態」又は「一実施形態」という記述は少なくとも1つの実施形態内において関連する特定の素子、構造又は特徴のことを指す。したがって、以下の文中において多くの箇所にある「一つの実施形態」又は「一実施形態」といった複数の記述は必ずしも同一実施形態に対するものではない。
【0014】
明細書及び特許請求の範囲において特定の構成要素を指すために特定の用語が使用されるが、構成要素を異なる名称により称している場合があることを当業者は理解されよう。本開示は、名称が異なるが機能は異ならない構成要素を区別することは、意図していない。本明細書及び特許請求の範囲における「含む、備える(comprising)の用語は、オープンエンド形式(open-ended)で用いられるものであり、つまり、挙げられたものに限定されないことを意図している。また、「結合される」、「結合する」及び「結合している」等の語句は、いかなる直接的及び間接的な接続も含まれる。したがって、本開示中に第1装置が第2装置に結合されるという記載がある場合、当該第1装置は、電気的接続、ワイヤレス通信、光学的通信又はその他の信号的接続を介して、その他の媒介装置又は接続手段を伴い/伴わず、当該第2装置に、直接的又は間接的に接続できることを示す。
【0015】
温度制御型及び温度補償型発振装置並びに温度制御及び温度補償の方法について以下に説明する。発振装置において電圧制御発振回路は、周囲温度が高過ぎる時に、高過ぎる目標温度がICの性能を低下させないように、周波数源を駆動して周囲温度の変動から生じる周波数源の周波数変動を低減する。以下に提供される発振装置はその他の回路構成に適用することもできる。
【0016】
図1は本発明の第1の実施形態における発振装置を示す図である。
図1を参照すると、発振装置1はある周囲温度を有する環境に配置される。発振装置1はヒーター10、周波数源11、電圧制御発振回路12及び温度制御回路13を含む。電圧制御発振回路12及び温度制御回路13はそれぞれICであってよい。周波数源11の周波数は周囲温度に温度依存する。電圧制御発振回路12は周波数源11に結合される。周囲温度が第1温度と第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、電圧制御発振回路12は周波数源11を駆動することにより、周囲温度の変動から生じる周波数源11の周波数変動を低減する。温度制御回路13はヒーター10及び電圧制御発振回路12に結合される。周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、温度制御回路13はヒーター10を目標温度まで駆動することにより、周波数源11の動作温度を調節する。温度制御回路13は温度情報を電圧制御発振回路12に送信できる。第1温度は前記第3温度より高い。目標温度は周囲温度に対して、一次多項式、高次多項式又は一次多項式と高次多項式の組み合わせの相関関係を有する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、発振装置1は、電圧制御発振回路12に結合される第1温度センサー14をさらに含む。第1温度センサー14は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度を感知して、第1検出電圧D1を生成するように構成される。温度制御回路13は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づき第1制御電圧C1を生成する。電圧制御発振回路12は第1制御電圧C1及び第1検出電圧D1を受けるとともに第1制御電圧C1及び第1検出電圧D1に基づいて周波数源11を駆動する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、温度制御回路13は第2温度センサー131、目標温度設定回路132及びヒーティングコンパレーター133を含むことができる。第2温度センサー131は周囲温度を感知するように構成される。第2温度センサー131は周囲温度が第2範囲にある時に周囲温度に基づいて第2検出電圧D2を生成する。目標温度設定回路132は周囲温度を感知するように構成される。目標温度設定回路132は周囲温度が第2範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づいて第2制御電圧C2を生成する。また、目標温度設定回路132は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づいて第1制御電圧C1を生成する。ヒーティングコンパレーター133はヒーター10、第2温度センサー131及び目標温度設定回路132に結合され、かつ第2検出電圧D2及び第2制御電圧C2を受けるとともに、第2検出電圧D2及び第2制御電圧C2に基づいてヒーター10を目標温度まで駆動するように構成される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態において、電圧制御発振回路12はドライビングコンパレーター121、電圧発生器122及び少なくとも1つの可変容量ダイオード123を含むことができる。ドライビングコンパレーター121は第1温度センサー14及び目標温度設定回路132に結合される。ドライビングコンパレーター121は第1制御電圧C1及び第1検出電圧D1を受けて駆動電圧DVを生成する。電圧発生器122はドライビングコンパレーター121に結合され、かつ駆動電圧DVを受けるとともに、その駆動電圧DVに基づいて少なくとも1つの動作電圧OVを生成するように構成される。可変容量ダイオード123は周波数源11及び電圧発生器122に結合され、かつ動作電圧OVを受けて静電容量を調整するように構成され、これにより周波数源11の周波数変動を低減する。
【0020】
図2は本発明の第2の実施形態における発振装置を示す図である。
図2を参照すると、発振装置2はある周囲温度を有する環境に配置される。発振装置2はヒーター20、周波数源21、電圧制御発振回路22及び温度制御回路23を含む。電圧制御発振回路22及び温度制御回路23はそれぞれICであってよい。周波数源21の周波数は周囲温度に温度依存する。電圧制御発振回路22は周波数源21に結合される。周囲温度が第1温度と第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、電圧制御発振回路22は周波数源21を駆動することにより、周囲温度の変動から生じる周波数源21の周波数変動を低減する。温度制御回路23はヒーター20及び電圧制御発振回路22に結合される。周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、温度制御回路23はヒーター20を目標温度まで駆動することにより、周波数源21の動作温度を調節する。温度制御回路23は温度情報を電圧制御発振回路22に送信できる。第1温度は第3温度より高い。温度制御回路23は、周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度を感知して第1検出電圧D1を生成するように構成される。温度制御回路23は、周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づいて第1制御電圧C1を生成することができる。電圧制御発振回路22は第1制御電圧C1及び第1検出電圧D1を受けるとともに、第1制御電圧C1及び第1検出電圧D1に基づいて周波数源21を駆動することができる。目標温度は周囲温度に対して、一次多項式、高次多項式又は一次多項式と高次多項式の組み合わせの相関関係を有する。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、温度制御回路23は温度センサー231、目標温度設定回路232及びヒーティングコンパレーター233を含むことができる。温度センサー231は周囲温度を感知するように構成される。温度センサー231は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度に基づいて第1検出電圧D1を生成する。また、温度センサー231は周囲温度が第2範囲にある時に周囲温度に基づいて第2検出電圧D2を生成する。目標温度設定回路232は周囲温度を感知するように構成される。目標温度設定回路232は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づいて第1制御電圧C1を生成する。目標温度設定回路232は周囲温度が第2範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づいて第2制御電圧C2を生成する。ヒーティングコンパレーター233はヒーター20、温度センサー231及び目標温度設定回路232に結合され、かつ第2検出電圧D2及び第2制御電圧C2を受けるとともに、第2検出電圧D2及び第2制御電圧C2に基づいてヒーター20を目標温度まで駆動するように構成される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、電圧制御発振回路22はドライビングコンパレーター221、電圧発生器222及び少なくとも1つの可変容量ダイオード223を含むことができる。ドライビングコンパレーター221は温度センサー231及び目標温度設定回路232に結合され、かつ第1制御電圧C1及び第1検出電圧D1を受けて駆動電圧DVを生成するように構成される。電圧発生器222はドライビングコンパレーター221に結合され、かつ駆動電圧DVを受けるとともに、その駆動電圧DVに基づいて少なくとも1つの動作電圧OVを生成するように構成される。可変容量ダイオード223は周波数源21及び電圧発生器222に結合され、かつ動作電圧OVを受けて静電容量を調整するように構成され、これにより周波数源21の周波数変動を低減する。
【0023】
図3は本発明の第3の実施形態における発振装置を示す図である。
図3を参照すると、発振装置3はある周囲温度を有する環境に配置される。発振装置3はヒーター30、周波数源31、電圧制御発振回路32及び温度制御回路33を含む。電圧制御発振回路32及び温度制御回路33はそれぞれICであってよい。周波数源31の周波数は周囲温度に温度依存する。電圧制御発振回路32は周波数源31に結合される。周囲温度が第1温度と第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、電圧制御発振回路32は周波数源31を駆動することにより、周囲温度の変動から生じる周波数源31の周波数変動を低減する。温度制御回路33はヒーター30及び電圧制御発振回路32に結合される。周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、温度制御回路33はヒーター30を目標温度まで駆動することにより、周波数源31の動作温度を調節する。温度制御回路33は温度情報を電圧制御発振回路32に送信できる。第1温度は第3温度より高い。目標温度は周囲温度に対して、一次多項式、高次多項式又は一次多項式と高次多項式の組み合わせの相関関係を有する。温度制御回路33は、周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度を感知して第1検出電圧D1を生成するように構成される。電圧制御発振回路32は第1検出電圧D1を受けるとともに、その第1検出電圧D1に基づいて周波数源31を駆動する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、温度制御回路33は温度センサー331、目標温度設定回路332及びコンパレーター333を含むことができる。温度センサー331は周囲温度を感知するように構成される。温度センサー331は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度に基づいて第1検出電圧D1を生成する。また、温度センサー331は周囲温度が第2範囲にある時に周囲温度に基づいて第2検出電圧D2を生成する。目標温度設定回路332は周囲温度を感知するように構成される。目標温度設定回路332は周囲温度が第2範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づいて制御電圧Cを生成する。コンパレーター333はヒーター30、温度センサー331及び目標温度設定回路332に結合され、かつ第2検出電圧D2及び制御電圧Cを受けるとともに、第2検出電圧D2及び制御電圧Cに基づいてヒーター30を目標温度まで駆動するように構成される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、電圧制御発振回路32は電圧発生器322及び少なくとも1つの可変容量ダイオード323を含むことができる。電圧発生器322は温度センサー331に結合され、かつ第1検出電圧D1を受けるとともに、その第1検出電圧D1に基づいて少なくとも1つの動作電圧OVを生成するように構成される。可変容量ダイオード323は周波数源31及び電圧発生器322に結合され、かつ動作電圧OVを受けて静電容量を調整するように構成され、これにより周波数源31の周波数変動を低減する。
【0026】
図4aから
図4dは本発明の第1、第2及び第3の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
【0027】
図5は本発明の第4の実施形態における発振装置を示す図である。
図6aから
図6dは本発明の第4の実施形態における第1温度、第2温度、第3温度及び第4温度の分布を示す図である。
図5及び
図6aから
図6dを参照すると、発振装置4はある周囲温度を有する環境に配置され、ヒーター40、周波数源41、電圧制御発振回路42、温度制御回路43及び第1温度センサー44を含む。電圧制御発振回路42及び温度制御回路43はそれぞれICであってよい。温度制御回路43はヒーター40に結合される。周波数源41の周波数は周囲温度に温度依存する。周囲温度が第1温度と第1温度より高い第2温度の間である第1範囲にある時、温度制御回路43はヒーター40を目標温度まで駆動することにより、周波数源41の動作温度を調節する。第1温度センサー44は周囲温度を感知するように構成される。第1温度センサー44は、周囲温度が第3温度と第3温度より高い第4温度の間である第2範囲にある時、周囲温度に基づいて第1検出電圧D1を生成する。電圧制御発振回路42は周波数源41及び第1温度センサー44に結合される。電圧制御発振回路42は、第1検出電圧D1を受けて周波数源41を駆動するとともに、周囲温度の変動から生じる周波数源41の周波数変動を低減する。第3温度は第1温度より高い。目標温度は周囲温度に対して、一次多項式、高次多項式又は一次多項式と高次多項式の組み合わせの相関関係を有する。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、温度制御回路43は第2温度センサー431、目標温度設定回路432及びコンパレーター433を含むことができる。第2温度センサー431は周囲温度を感知するように構成される。第2温度センサー431は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度に基づいて第2検出電圧D2を生成する。目標温度設定回路432は周囲温度を感知するように構成される。目標温度設定回路432は周囲温度が第1範囲にある時に周囲温度及び目標温度に基づいて制御電圧Cを生成する。コンパレーター433はヒーター40、第2温度センサー431及び目標温度設定回路432に結合され、かつ第2検出電圧D2及び制御電圧Cを受けるとともに、第2検出電圧D2及び制御電圧Cに基づいてヒーター40を目標温度まで駆動するように構成される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、電圧制御発振回路42は電圧発生器422及び少なくとも1つの可変容量ダイオード423を含むことができる。電圧発生器422は第1温度センサー44に結合され、かつ第1検出電圧D1を受けるとともに、その第1検出電圧D1に基づいて少なくとも1つの動作電圧OVを生成するように構成される。可変容量ダイオード423は周波数源41及び電圧発生器422に結合され、かつ動作電圧OVを受けて静電容量を調整するように構成され、これにより周波数源41の周波数変動を低減する。
【0030】
上述の本発明の実施形態によれば、発振装置は、高過ぎる目標温度のためにICの性能が低下するという事態を回避する。
【符号の説明】
【0031】
1 発振装置
10 ヒーター
11 周波数源
12 電圧制御発振回路
121 ドライビングコンパレーター
122 電圧発生器
123 可変容量ダイオード
13 温度制御回路
131 第2温度センサー
132 目標温度設定回路
133 ヒーティングコンパレーター
14 第1温度センサー
2 発振装置
20 ヒーター
21 周波数源
22 電圧制御発振回路
221 ドライビングコンパレーター
222 電圧発生器
223 可変容量ダイオード
23 温度制御回路
231 温度センサー
232 目標温度設定回路
233 ヒーティングコンパレーター
3 発振装置
30 ヒーター
31 周波数源
32 電圧制御発振回路
322 電圧発生器
323 可変容量ダイオード
33 温度制御回路
331 温度センサー
332 目標温度設定回路
333 コンパレーター
4 発振装置
40 ヒーター
41 周波数源
42 電圧制御発振回路
422 電圧発生器
423 可変容量ダイオード
43 温度制御回路
431 第2温度センサー
432 目標温度設定回路
433 コンパレーター
44 第1温度センサー
C 制御電圧
C1 第1制御電圧
C2 第2制御電圧
D1 第1検出電圧
D2 第2検出電圧
DV 駆動電圧
ОV 動作電圧