(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100228
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】シート供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/14 20060101AFI20220628BHJP
B65H 3/12 20060101ALI20220628BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20220628BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
B65H1/14 322A
B65H3/12 310B
B65H3/12 310C
B65H3/48 320Z
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173239
(22)【出願日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2020213402
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 譲
(72)【発明者】
【氏名】宮地 亮介
【テーマコード(参考)】
3F048
3F343
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA13
3F048BB02
3F048BB05
3F048BC03
3F048BD07
3F048CB13
3F048DA01
3F048DB16
3F048DC14
3F048EB06
3F048EB13
3F048EB16
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA17
3F343HA33
3F343HD16
3F343JB05
3F343JD28
3F343JD34
3F343KB03
3F343KB04
3F343KB05
3F343KB20
3F343LA04
3F343LB08
3F343LC02
3F343LC08
3F343LC19
3F343LD07
3F343LD10
3F343MA03
3F343MA09
3F343MA32
3F343MA33
3F343MB04
3F343MB12
3F343MB13
3F343MC05
3F343MC13
3F343MC19
3F343MC21
3F343MC23
3F343MC26
(57)【要約】
【課題】シートの供給エラーを低減できるシート供給装置を提供する。
【解決手段】制御部13は、用紙Pを給紙先へ搬送するよう浮上部6および搬送部8を制御するとともに、搬送部8により搬送される用紙1枚ごとに、浮上部6により浮上させられた用紙Pの浮上中の受光部32の受光量を取得し、取得したセンサ値が追従閾値未満の場合に給紙台2を上昇させる追従制御を行う。また、制御部13は、搬送部8による用紙Pの空送が発生すると、給紙リトライを行うよう浮上部6および搬送部8を制御する。また、制御部13は、追従制御における用紙束PTの上面の高さ位置の目標位置が、搬送部8による用紙Pの重送よりも空送が発生しやすい位置となるように追従閾値を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを供給先へ搬送する搬送部と、
前記シート束の側方に入力して得られる出力信号を検出する検出部と、
シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の検出値を取得し、取得した検出値が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、
前記追従制御における前記シート束の上面の高さ位置の目標位置が、前記搬送部によるシートの重送よりも空送が発生しやすい位置となるよう前記閾値を設定することを特徴とするシート供給装置。
【請求項2】
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを供給先へ搬送する搬送部と、
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部と、
シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、
前記追従制御における前記シート束の上面の高さ位置の目標位置が、前記搬送部によるシートの重送よりも空送が発生しやすい位置となるよう前記閾値を設定することを特徴とするシート供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、
少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定して前記追従制御を開始するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、空送の発生時にサンプリングした受光量を、前記閾値を決定するための受光量としては採用しないことを特徴とする請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項4】
前記制御部は、
少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定して前記追従制御を開始するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、前記供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させることを特徴とする請求項2に記載のシート供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記追従制御の実施中において、前記搬送部による断続的なシートの空送の発生回数が所定の断続回数に達した場合、前記閾値を所定量だけ大きくすることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項6】
前記搬送部は、シートを吸着して搬送するものであり、
前記制御部は、前記追従制御の実施中において、前記搬送部による断続的なシートの空送の発生回数が所定の断続回数に達した場合、前記閾値を所定量だけ大きくする処理、および前記搬送部によるシートの吸着力を所定量だけ大きくする処理の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項7】
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを吸着して供給先へ搬送する搬送部と、
シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記積載台上のシートの減少に応じて前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、
前記搬送部によるシートの吸着力が、前記シート束の上面の高さ位置が前記追従制御における目標位置にある場合にシートの重送よりも空送が発生しやすい吸着力となるよう前記搬送部を制御することを特徴とするシート供給装置。
【請求項8】
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記追従制御として、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる制御を行い、
前記追従制御を開始する前に、少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、空送の発生時にサンプリングした受光量を、前記閾値を決定するための受光量としては採用しないことを特徴とする請求項7に記載のシート供給装置。
【請求項9】
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記追従制御として、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる制御を行い、
前記追従制御を開始する前に、少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、前記供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させることを特徴とする請求項7に記載のシート供給装置。
【請求項10】
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記追従制御として、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる制御を行い、
前記追従制御の実施中において、前記搬送部による断続的なシートの空送の発生回数が所定の断続回数に達した場合、前記閾値を所定量だけ大きくする処理、および前記搬送部によるシートの吸着力を所定量だけ大きくする処理の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記追従制御の実施中に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合において前記積載台を所定上昇量だけ強制的に上昇させることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記追従制御の実施中における前記搬送部によるシートの空送が所定の複数回数繰り返されるまでは、前記積載台の強制的な上昇を行わないことを特徴とする請求項11に記載のシート供給装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記搬送部による連続したシートの空送の発生回数が所定回数に達した場合、それ以降は前記供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させることを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1項に記載のシート供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを供給するシート供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを供給するシート供給装置として、給紙台に積載された用紙束に空気を吹き付けて用紙を浮上させ、浮上した用紙のうちの最上位(一番上)の用紙を吸着搬送手段により吸着搬送して印刷装置に給紙する給紙装置が知られている。
【0003】
この種の給紙装置では、給紙台の用紙残量の減少に応じて給紙台を上昇させ、給紙台上の用紙束の上面の高さ位置を目標位置に維持する追従制御が行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した給紙装置において、用紙の重送および空送が発生することがある。重送は、複数の用紙が重なって吸着搬送手段に吸着されて搬送されることである。空送は、用紙が吸着搬送手段に吸着されず、用紙が搬送されないことである。
【0006】
給紙台上の用紙束の上面の高さ位置が高いほど重送が発生しやすく、用紙束の上面の高さ位置が低いほど空送が発生しやすい。上述した追従制御における用紙束の上面の目標位置は、重送も空送も同程度に起こりにくい位置に設定される。
【0007】
ところで、空送が発生した場合、給紙リトライ(給紙のやり直し)により、1枚分の給紙にかかるわずかな時間を消費するだけで、一連の給紙動作および給紙先の印刷装置における印刷動作を継続することが可能である。すなわち、空送は、給紙リトライによって救済できる。
【0008】
一方、重送が発生した場合、給紙リトライにより一連の給紙動作および給紙先の印刷装置における印刷動作を継続するには、例えば、重送した用紙を給紙台に戻して給紙をやり直す必要があり、これは複雑な機構、制御がなければ実現できない。このため、現実的には、重送を給紙リトライによって救済することはできない。
【0009】
上述のように、追従制御における用紙束の上面の目標位置は、重送も空送も同程度に起こりにくい位置に設定されているため、重送が空送と同程度の頻度で発生する。重送が発生すると、給紙リトライによって救済できないため、給紙エラーとなって一連の給紙動作が停止する。給紙エラーとなると、エラー解除のためのユーザの作業が発生する。また、給紙エラーとなると、給紙先の印刷装置における印刷動作が停止するため、印刷生産性が低下する。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、シートの供給エラーを低減できるシート供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、シート束が積載された昇降可能な積載台と、前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを供給先へ搬送する搬送部と、前記シート束の側方に入力して得られる出力信号を検出する検出部と、シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の検出値を取得し、取得した検出値が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、前記追従制御における前記シート束の上面の高さ位置の目標位置が、前記搬送部によるシートの重送よりも空送が発生しやすい位置となるよう前記閾値を設定することを特徴とするシート供給装置が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、シート束が積載された昇降可能な積載台と、前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを供給先へ搬送する搬送部と、前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部と、シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、前記追従制御における前記シート束の上面の高さ位置の目標位置が、前記搬送部によるシートの重送よりも空送が発生しやすい位置となるよう前記閾値を設定することを特徴とするシート供給装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、シート束が積載された昇降可能な積載台と、前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを吸着して供給先へ搬送する搬送部と、シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記積載台上のシートの減少に応じて前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、前記搬送部によるシートの吸着力が、前記シート束の上面の高さ位置が前記追従制御における目標位置にある場合にシートの重送よりも空送が発生しやすい吸着力となるよう前記搬送部を制御することを特徴とするシート供給装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシート供給装置によれば、シートの供給エラーを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る給紙装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。
【
図4】浮上した用紙のうちの上から2枚目以下の用紙が落下する様子を示す図である。
【
図5】給紙される用紙1枚ごとに用紙の浮上中に取得されるセンサ値の推移の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態における空送が発生した際の給紙装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】第1実施形態における空送が発生した際の給紙装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】第2実施形態における空送が発生した際の給紙装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】第3実施形態における空送が発生した際の給紙装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0017】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る給紙装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す給紙装置の制御ブロック図である。以下の説明において、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
【0019】
図1、
図2に示すように、第1実施形態に係る給紙装置(シート供給装置に相当)1は、給紙台(積載台に相当)2と、エンドフェンス3と、昇降モータ4と、エンコーダ5と、浮上部6と、分離部7と、搬送部8と、上限センサ(検出部に相当)9と、一対の給紙ローラ10と、給紙モータ11と、給紙入口センサ12と、制御部13とを備える。
【0020】
給紙装置1は、給紙先(供給先に相当)である印刷装置100に対して用紙(シートに相当)Pを給紙(供給)する装置である。
図1において左から右に向かう方向が、給紙動作(シート供給動作に相当)時の搬送部8による用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送部8による用紙Pの搬送方向における上流、下流を意味する。
【0021】
給紙台2は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。給紙台2は、昇降可能に構成されている。
【0022】
エンドフェンス3は、給紙台2上の用紙Pの上流端(左端)の位置を規制する部材である。
【0023】
昇降モータ4は、給紙台2を昇降させる。
【0024】
エンコーダ5は、昇降モータ4の回転軸の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0025】
浮上部6は、給紙台2上に重ねて積載された複数の用紙Pからなる用紙束(シート束に相当)PTに対して下流側の側方から空気を吹きつけ、用紙束PTの上端部の複数の用紙Pを浮上させる。浮上部6は、浮上ファン16と、シャッタ17とを備える。
【0026】
浮上ファン16は、給紙台2上の用紙束PTの用紙Pを浮上させるための浮上気流A1(
図3参照)を発生させる。
【0027】
シャッタ17は、用紙束PTへの浮上気流A1の吹き付けのオンオフを切り替える。
【0028】
なお、用紙Pの搬送方向に直交する幅方向において給紙台2上の用紙束PTを挟んで互いに対向する2つの浮上部6がさらに設けられていてもよい。
【0029】
分離部7は、浮上部6により浮上させられて搬送部8に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させる。分離部7は、分離ファン18を備える。
【0030】
分離ファン18は、搬送部8に吸着した最上位の用紙Pと上から2枚目の用紙Pとの間に空気を流し込んで最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとを分離させるための分離気流A2(
図3参照)を発生させる。
【0031】
なお、用紙Pの幅方向において給紙台2上の用紙束PTを挟んで互いに対向する2つの分離部7がさらに設けられていてもよい。
【0032】
搬送部8は、浮上部6により浮上させられた複数の用紙Pのうちの最上位の用紙Pをエア吸引により吸着して搬送する。搬送部8は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23と、搬送モータ24と、吸引機構部25とを備える。
【0033】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22と従動ローラ23とに掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト21には、複数のベルト穴(図示せず)が全周に渡って形成されている。搬送ベルト21は、吸引機構部25の駆動によりベルト穴に発生する吸着力により用紙Pを吸着保持する。用紙Pを吸着保持した状態で駆動ローラ22の駆動により搬送ベルト21が回転(無端移動)することで、用紙Pが搬送される。
【0034】
駆動ローラ22は、搬送ベルト21を回転(無端移動)させる。
【0035】
従動ローラ23は、駆動ローラ22とともに搬送ベルト21を支持する。従動ローラ23は、回転する搬送ベルト21に従動回転する。
【0036】
搬送モータ24は、駆動ローラ22を回転させる。
【0037】
吸引機構部25は、搬送ベルト21のベルト穴を介して空気を吸引することで、用紙Pを搬送ベルト21に吸着させる。吸引機構部25は、ベルト穴を介して空気を吸引するファン(図示せず)を備える。
【0038】
上限センサ9は、給紙台2上に積載された用紙Pの下流側(右側)の端面を監視するものである。上限センサ9は、給紙台2より下流側において、浮上領域F(
図3参照)内の浮上している用紙Pを検出可能な高さ位置に配置されている。浮上領域Fは、上下方向における浮上部6が用紙Pを浮上させる領域である。上限センサ9は、反射型フォトセンサからなり、発光部31と、受光部32とを備える。
【0039】
発光部31は、給紙台2上の用紙束PTの右側の側方から左側(用紙束PT側)へ光を出射する。
【0040】
受光部32は、左側(用紙束PT側)からの光を受光する。
【0041】
一対の給紙ローラ10は、搬送部8により搬送されてきた用紙Pをニップしつつ、給紙装置1の下流側に配置された印刷装置100へ向けて搬送する。
【0042】
給紙モータ11は、給紙ローラ10を駆動させる。
【0043】
給紙入口センサ12は、給紙ローラ10の下流側近傍において、搬送される用紙Pを検出する。
【0044】
制御部13は、給紙装置1全体の動作を制御する。制御部13は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0045】
制御部13は、給紙台2上の用紙束PTの上端部の用紙Pを浮上させて最上位の用紙Pを搬送ベルト21に吸着させ、最上位の用紙Pを印刷装置100へ搬送するよう浮上部6および搬送部8を制御する。
【0046】
制御部13は、搬送部8による用紙Pの空送が発生すると、連続した空送の発生回数が後述する所定の上限連続回数(所定回数に相当)Rに達するまでは、給紙リトライ(供給リトライに相当)を行うよう浮上部6および搬送部8を制御する。給紙リトライは、印刷装置100への用紙Pの搬送をやり直す処理である。
【0047】
また、制御部13は、給紙動作中において、搬送部8により搬送される用紙1枚ごとに、浮上部6により浮上させられた用紙Pの浮上中の受光部32の受光量(センサ値)を取得し、取得したセンサ値が追従閾値(閾値に相当)未満の場合に給紙台2を上昇させる追従制御を行う。追従制御は、給紙による給紙台2上の用紙Pの残量の減少に応じて給紙台2を上昇させて、給紙台2上の用紙束PTの上面の高さ位置を目標位置に維持するためのものである。
【0048】
制御部13は、給紙動作中の追従制御における用紙束PTの上面の高さ位置の目標位置が、搬送部8による用紙Pの重送よりも空送が発生しやすい位置となるように追従閾値を設定する。
【0049】
ここで、浮上部6により浮上させられた用紙Pの浮上中におけるセンサ値は、上限センサ9の検出範囲内にある、浮上している用紙Pの端面からの反射光の受光量である。このため、用紙Pの浮上中におけるセンサ値は、上限センサ9の検出範囲内の浮上している用紙Pの枚数が多いほど、大きくなる。
【0050】
また、浮上部6による空気の吹き付けにより浮上可能な用紙Pの枚数は、浮上領域F内にある用紙Pの枚数である。したがって、給紙台2上の用紙Pが浮上していない状態における給紙台2上の最上位の用紙P(用紙束PTの上面)の高さ位置が低いほど、浮上部6による空気の吹き付けにより浮上する用紙Pの枚数が少ない。
【0051】
このことから、用紙Pの浮上中におけるセンサ値を、擬似的に、給紙台2上の用紙Pが浮上していないとした場合の給紙台2上の用紙束PTの上面の高さ位置を示す情報として用いることができる。給紙台2の高さ位置が変わらなければ、給紙が進むにつれて浮上する用紙Pが減少し、センサ値は低下傾向になる。
【0052】
そこで、給紙装置1では、上述のように、用紙Pの浮上中のセンサ値を用いて、給紙動作中の追従制御を行う。
【0053】
次に、給紙装置1における追従閾値を決定する処理および追従制御について説明する。
【0054】
追従閾値の決定は、一連の給紙動作の開始後に行われる。ここでは、搬送部8による用紙Pの空送および重送は発生しないものとして説明する。
【0055】
給紙開始が指示されると、制御部13は、給紙台2上の用紙束PTの上面が上限センサ9の検出範囲の下限よりも下方にある状態から給紙台2の上昇を開始させる。
【0056】
給紙台2の上昇開始後、給紙台2上の用紙束PTの上端部が上限センサ9の検出範囲内に入ると、用紙束PTの上端部の右側の側面による反射光が上限センサ9で受光され始める。その後、給紙台2の上昇に伴って、給紙台2上の用紙束PTにおける上限センサ9の検出範囲内に入っている範囲が広がるので、上限センサ9のセンサ値が大きくなる。
【0057】
制御部13は、センサ値が所定の非浮上閾値に到達したと判断すると、給紙台2の上昇を停止させる。ここで、非浮上閾値は、用紙束PTの上面の高さ位置が、上限センサ9の検出範囲内の所定のセンサ位置にあるときのセンサ値として設定されたものである。このため、上述のようにセンサ値が非浮上閾値に到達すると給紙台2の上昇を停止させることで、用紙束PTの上面が上述のセンサ位置にある高さ位置で給紙台2が停止する。
【0058】
次いで、制御部13は、給紙台2の上昇または下降を開始させ、用紙束PTの上面が所定の給紙開始位置に到達すると、給紙台2を停止させる。これにより、用紙束PTの上面の高さ位置が給紙開始位置に設定される。ここで、制御部13は、給紙台2の上昇または下降を開始させた時点からのエンコーダ5の出力パルス数に基づき、用紙束PTの上面が給紙開始位置に到達したか否かを判断する。
【0059】
給紙開始位置は、追従制御における目標位置より高い位置にある。具体的には、給紙開始位置は、後述のサンプリング除外枚数と、後述のサンプリング枚数の半分の枚数との合計枚数分の用紙Pの厚さ分だけ、目標位置より高い位置にある。
【0060】
ここで、給紙装置1では、前述のように、制御部13は、目標位置を、搬送部8による用紙Pの重送よりも空送が発生しやすい位置に設定している。具体的には、制御部13は、目標位置を、重送も空送も同程度に起こりにくい位置である適正位置から所定のオフセット量だけ下方の位置に設定している。オフセット量は、実験等に基づき、目標位置が、空送の増加を抑えつつ重送の発生を抑えることができる位置になるように設定される。適正位置およびオフセット量は、用紙種類(用紙の厚さ)に応じたものとなる。このため、目標位置は、用紙種類(用紙の厚さ)ごとに設定される。
【0061】
次いで、制御部13は、給紙動作を開始させる。具体的には、制御部13は、シャッタ17を開放し、吸引機構部25、浮上ファン16、および分離ファン18を駆動開始させる。また、制御部13は、給紙モータ11を制御して給紙ローラ10の駆動を開始させる。
【0062】
吸引機構部25、浮上ファン16、および分離ファン18の駆動開始後、
図3に示すように、浮上気流A1により浮上領域F内の複数の用紙Pが浮上し、最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着される。
【0063】
次いで、制御部13は、シャッタ17を閉鎖する。これにより、浮上気流A1が停止される。この結果、
図4に示すように、分離気流A2により最上位の用紙Pと上から2枚目以下の用紙Pとが分離され、上から2枚目以下の用紙Pが落下する。
【0064】
次いで、印刷装置100からの給紙信号を受信すると、制御部13は、搬送モータ24の駆動を開始させ、搬送部8が用紙Pを搬送するよう制御する。これにより、用紙Pが搬送部8および給紙ローラ10により印刷装置100へ搬送される。制御部13は、搬送モータ24の駆動を開始させてから所定の駆動時間後に搬送モータ24を停止させる。
【0065】
ここで、給紙信号は、印刷装置100が搬送部8による用紙Pの搬送開始を給紙装置1に指示する信号である。給紙信号は、給紙装置1が給紙する用紙1枚ごとに、印刷装置100から給紙装置1へ送信される。
【0066】
次いで、制御部13は、次の用紙Pの給紙のために、シャッタ17を開放して用紙Pを浮上させる。
【0067】
上記の動作を繰り返すことにより、用紙Pが給紙装置1から印刷装置100へ順次給紙される。
【0068】
給紙動作の開始後、給紙枚数がサンプリング除外枚数に到達すると、制御部13は、追従閾値を決定するためのセンサ値のサンプリングを開始する。
【0069】
ここで、サンプリング除外枚数は、給紙動作の開始直後において、追従閾値を決定するためのセンサ値のサンプリングを行わない給紙枚数として予め設定されたものである。後述するように、給紙動作の開始直後においては、用紙Pが浮上させられた際の用紙Pの挙動が不安定であるため、サンプリング除外枚数を設定して、その枚数が給紙されるまでセンサ値のサンプリングを行わないようにしている。浮上時の用紙Pの挙動は、用紙種類(用紙の厚さ)によって異なるため、サンプリング除外枚数は、用紙種類(用紙の厚さ)に応じて設定されている。サンプリング除外枚数は、1枚でもよいし、複数枚でもよい。
【0070】
上述のサンプリングを開始すると、制御部13は、サンプリング除外枚数分の最後の用紙Pの次の用紙Pの給紙のために浮上させられた用紙Pの浮上中に、上限センサ9のセンサ値を取得する。この後、制御部13は、搬送部8により搬送(給紙)される用紙1枚ごとに、浮上させられた用紙Pの浮上中にセンサ値を取得する。用紙Pの浮上中のセンサ値として、制御部13は、例えば、シャッタ17の開放時点から所定時間後のセンサ値を取得する。
【0071】
サンプリング枚数分のセンサ値を取得すると、制御部13は、追従閾値を決定して追従制御を開始する。具体的には、制御部13は、取得したサンプリング枚数分のセンサ値の平均値を算出し、算出した平均値を、追従閾値に決定する。
【0072】
ここで、サンプリング枚数は、追従閾値を決定するためのセンサ値のサンプリングを行う給紙枚数として予め設定された枚数である。サンプリング枚数は、用紙種類等に関わらず共通の値とすることもできるし、用紙種類(用紙の厚さ)に応じて値を変えることもできる。
【0073】
また、サンプリング枚数分のセンサ値を取得する期間であるサンプリング期間は、用紙束PTの上面の高さ位置が目標位置となる時点の前後それぞれで同じ枚数の給紙が行われるように設定されている。
【0074】
追従閾値を決定すると、制御部13は、決定した追従閾値を用いた追従制御を開始させる。追従制御が開始するまでは、給紙台2の高さ位置は、給紙動作の開始時点に設定された位置で固定されている。
【0075】
追従制御を開始させると、制御部13は、給紙される用紙1枚ごとに、取得したセンサ値が追従閾値未満の場合、給紙台2を上昇させる。
【0076】
具体的には、制御部13は、取得したセンサ値が追従閾値未満の場合、所定の駆動時間だけ昇降モータ4を駆動させて給紙台2を上昇させる。この際、制御部13は、取得したセンサ値と追従閾値との差に応じて、昇降モータ4の駆動電圧を制御する。
【0077】
具体的には、制御部13は、センサ値と追従閾値との差が大きいほど、昇降モータ4の駆動電圧を大きくして、給紙台2の上昇量が大きくなるよう制御する。センサ値と追従閾値との差が大きいほど、浮上領域F内の用紙Pが少なく、給紙台2上の用紙Pが浮上していないときの給紙台2上の用紙束PTの上面の高さ位置が低くなっている。このため、制御部13は、センサ値と追従閾値との差が大きいほど、給紙台2の上昇量が大きくなるよう制御する。センサ値と追従閾値との差と、昇降モータ4の駆動電圧との関係は、給紙台2の上昇により用紙束PTの上面の高さ位置が目標位置に到達するように、用紙種類(用紙の厚さ)ごとに、実験等に基づき予め設定されている。
【0078】
ここで、給紙動作において給紙される用紙1枚ごとに用紙Pの浮上中に取得されるセンサ値の推移の一例を
図5に示す。
【0079】
給紙台2の高さ位置が固定されている状態では、給紙が進むほど用紙束PTの上面の高さ位置が低くなり、浮上領域F内にある用紙Pが減少する。このため、給紙動作の開始からの給紙枚数が増加するほど、浮上部6により浮上させられる用紙Pが減少する。したがって、給紙動作の開始からの給紙枚数が増加するほど、給紙される用紙1枚ごとに用紙Pの浮上中に取得されるセンサ値は小さくなる。
【0080】
しかし、給紙動作の開始直後においては、用紙Pが浮上させられた際の用紙Pの挙動が不安定になりやすい。例えば、用紙間に空気がうまく入り込まず、複数枚の用紙Pが互いに密着したまま浮上していることがある。このような場合、浮上中の各用紙Pがそれぞれ離間している場合よりも、センサ値が小さくなってしまう。このようなことから、
図5のように、給紙動作の開始直後においては、センサ値が予想される値よりも小さくなる等、不安定になりやすい。特に1枚目の給紙時にはセンサ値が不安定になりやすい。
【0081】
そこで、前述のように、給紙装置1では、給紙動作の開始直後においてはセンサ値のサンプリングを行わないように、前述のサンプリング除外枚数を設定している。
【0082】
そして、給紙装置1では、
図5のように、用紙束PTの上面の高さ位置が目標位置となる時点を含むサンプリング期間が設定されている。また、前述のように、サンプリング期間は、用紙束PTの上面の高さ位置が目標位置となる時点の前後それぞれで同じ枚数の給紙が行われるように設定されている。
【0083】
図5に示す適正閾値は、本実施形態とは異なり、用紙束PTの上面の高さ位置を前述の適正位置に維持する追従制御を行う場合における追従閾値である。すなわち、適正閾値は、搬送部8による用紙Pの重送も空送も同程度に起こりにくい値である。追従閾値が適正閾値より大きい場合、空送よりも重送が発生しやすく、追従閾値が適正閾値より小さい場合、重送よりも空送が発生しやすい。前述のように、本実施形態では、目標位置を適正位置より低い位置に設定しており、追従閾値は適正閾値より小さくなり、重送よりも空送が発生しやすい値になる。
【0084】
次に、空送が発生した際の給紙装置1の動作について、
図6、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0085】
図6、
図7のフローチャートの処理は、給紙動作が開始されることより、開始となる。
【0086】
図6のステップS1において、制御部13は、印刷装置100からの給紙終了指示を受信したか否かを判断する。給紙終了指示は、印刷装置100が給紙装置1に給紙の終了を指示するために送信するものである。給紙終了指示は、一連の給紙動作における給紙枚数分の給紙が終了したとき、および、給紙装置1からのエラー通知を受信したときに印刷装置100が給紙装置1に送信するものである。
【0087】
給紙終了指示を受信したと判断した場合(ステップS1:YES)、制御部13は、一連の給紙動作を終了させる。
【0088】
給紙終了指示を受信していないと判断した場合(ステップS1:NO)、ステップS2において、制御部13は、前述したサンプリング枚数分のセンサ値を取得したか否かを判断する。
【0089】
サンプリング枚数分のセンサ値を取得していないと判断した場合(ステップS2:NO)、ステップS3において、制御部13は、印刷装置100からの給紙信号を受信したか否かを判断する。給紙信号を受信していないと判断した場合(ステップS3:NO)、制御部13は、ステップS3を繰り返す。
【0090】
給紙信号を受信したと判断した場合(ステップS3:YES)、ステップS4において、制御部13は、搬送部8が用紙Pを搬送するよう制御する。ここで、給紙装置1が給紙信号を受信する時点では、前述のように、浮上部6により浮上させられた複数の用紙Pのうちの最上位の用紙Pが搬送ベルト21に吸着された状態になっている。
【0091】
次いで、ステップS5において、制御部13は、搬送部8による用紙Pの空送が発生したか否かを判断する。ここで、制御部13は、ステップS4における搬送部8による用紙Pの搬送を開始してから所定時間以内に、給紙入口センサ12が搬送部8から搬送されてくる用紙Pを検出しない場合、空送が発生したと判断する。
【0092】
空送が発生したと判断した場合(ステップS5:YES)、ステップS6において、制御部13は、連続空送カウント値Caに「1」を加算する。連続空送カウント値Caは、搬送部8による連続した用紙Pの空送の発生回数を示すものである。ここで、一連の給紙動作の開始時には、連続空送カウント値Ca=0に設定されている。
【0093】
次いで、ステップS7において、制御部13は、連続空送カウント値Caが上限連続回数Rに達した(Ca=R)か否かを判断する。上限連続回数Rは、給紙リトライの繰り返しを終了して空送によるエラー通知を行うか否かを判断するための、連続した空送の発生回数の基準として設定されたものである。上限連続回数Rは、1回でも複数回数でもよい。上限連続回数Rは、実験等に基づき予め設定されている。
【0094】
連続空送カウント値Caが上限連続回数Rに達していないと判断した場合(ステップS7:NO)、制御部13は、ステップS1に戻る。
【0095】
ここで、給紙装置1では、制御部13は、一連の給紙動作の開始後、追従閾値を決定するまでの間に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合、空送の発生時にサンプリングしたセンサ値を、追従閾値を決定するためのセンサ値としては採用しない。すなわち、制御部13は、空送の発生時にサンプリングしたセンサ値は、サンプリング枚数分のセンサ値に含めない。
【0096】
このため、ステップS7で「NO」と判断してステップS1に戻った場合において、給紙終了指示を受信しない場合(ステップS1:NO)、ステップS2では、制御部13は、サンプリング枚数分のセンサ値を取得していない(ステップS2:NO)と判断することになる。そして、給紙信号を受信すると(ステップS3:YES)、制御部13は、搬送部8により用紙Pを搬送させる(ステップS4)。この際、制御部13は、シャッタ17を開放することで浮上部6により用紙束PTの複数の用紙Pを浮上させて最上位の用紙Pを搬送ベルト21に吸着させ、その用紙Pを搬送部8により搬送させる。このようにして、給紙リトライが行われる。
【0097】
ステップS7において、連続空送カウント値Caが上限連続回数Rに達したと判断した場合(ステップS7:YES)、ステップS8において、制御部13は、空送によるエラー通知を印刷装置100へ送信する。この後、制御部13は、ステップS1に戻る。
【0098】
ここで、エラー通知を受信した印刷装置100は、給紙装置1に給紙終了指示を送信する。このため、ステップS8からステップS1に戻った場合、制御部13は、給紙終了指示を受信したと判断し(ステップS1:YES)、給紙エラーとして一連の給紙動作を終了させる。
【0099】
ステップS5において、空送が発生していないと判断した場合(ステップS5:NO)、ステップS9において、制御部13は、連続空送カウント値Caをクリアする(Ca=0とする)。この後、制御部13は、ステップS1に戻る。
【0100】
ステップS2において、サンプリング枚数分のセンサ値を取得したと判断した場合(ステップS2:YES)、ステップS10において、制御部13は、前述のように追従閾値を決定し、追従制御を開始させる。この後、制御部13は、
図7のステップS11に進む。
【0101】
ここで、前述のように、給紙装置1では、空送の発生時にサンプリングしたセンサ値はサンプリング枚数分のセンサ値に含めない。このため、サンプリング枚数分のセンサ値の取得が終了した場合、サンプリング枚数分の最後の用紙Pは、空送されることなく搬送されている。したがって、ステップS10において追従閾値を決定して追従制御を開始させる際には、連続空送カウント値Ca=0となっている。
【0102】
図7のステップS11~S17の処理は、前述した
図6のステップS1,S3~S8の処理と同様である。
【0103】
ステップS16において、連続空送カウント値Caが上限連続回数Rに達していないと判断した場合(ステップS16:NO)、ステップS18において、制御部13は、連続空送カウント値Ca=1であるか否かを判断する。
【0104】
連続空送カウント値Ca=1であると判断した場合(ステップS18:YES)、ステップS19において、制御部13は、断続空送カウント値Cbに「1」を加算する。この後、制御部13は、ステップS20に進む。
【0105】
断続空送カウント値Cbは、搬送部8による断続的な用紙Pの空送の発生回数を示すものである。一連の給紙動作の開始時には、断続空送カウント値Cb=0に設定されている。
【0106】
ステップS18において、連続空送カウント値Ca=1ではないと判断した場合(ステップS18:NO)、制御部13は、ステップS19を省略してステップS20に進む。
【0107】
ステップS20では、制御部13は、給紙台2を所定上昇量だけ強制的に上昇させる。ここで、制御部13は、エンコーダ5の出力パルス数に基づき、給紙台2の上昇量を判断できる。
【0108】
ステップS20における給紙台2の強制的な上昇は、追従制御による給紙台2の上昇とは別に行われるものである。この給紙台2の強制的な上昇は、空送が連続して発生することを抑制するために行われる。給紙台2の強制的な上昇における上述の所定上昇量は、空送が連続して発生することを抑制できる値として、実験等に基づき予め設定されている。
【0109】
ステップS20において給紙台2の強制的な上昇を行うことは、追従制御の実施中に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合において給紙台2を所定上昇量だけ強制的に上昇させることを意味する。
【0110】
次いで、ステップS21において、制御部13は、断続空送カウント値Cbが所定の上限断続回数(断続回数に相当)Dに達した(Cb=D)か否かを判断する。上限断続回数Dは、空送の発生を抑えるために追従閾値を大きくするか否かを判断するための、断続的な空送の発生回数の基準として設定されたものである。上限断続回数Dは、複数回数に設定されている。上限断続回数Dは、実験等に基づき予め設定されている。
【0111】
断続空送カウント値Cbが上限断続回数Dに達していないと判断した場合(ステップS21:NO)、制御部13は、ステップS11に戻る。
【0112】
ステップS21で「NO」と判断してステップS11に戻った場合において、給紙終了指示を受信しない場合(ステップS11:NO)、給紙信号を受信すると(ステップS12:YES)、制御部13は、搬送部8により用紙Pを搬送させる(ステップS13)。この際、制御部13は、シャッタ17を開放することで浮上部6により用紙束PTの複数の用紙Pを浮上させて最上位の用紙Pを搬送ベルト21に吸着させ、その用紙Pを搬送部8により搬送させる。このようにして、給紙リトライが行われる。
【0113】
ステップS21において、断続空送カウント値Cbが上限断続回数Dに達したと判断した場合(ステップS21:YES)、ステップS22において、制御部13は、追従閾値を所定量だけ大きくする。これにより、この後の空送を低減できる。追従閾値をどれだけ大きくするか(上述の所定量)は、空送を低減できる値として、実験等に基づき予め設定されている。
【0114】
次いで、ステップS23において、制御部13は、断続空送カウント値Cbをクリアする(Cb=0とする)。この後、制御部13は、ステップS11に戻る。
【0115】
ステップS14において、空送が発生していないと判断した場合(ステップS14:NO)、ステップS24において、制御部13は、連続空送カウント値Caをクリアする(Ca=0とする)。この後、制御部13は、ステップS11に戻る。
【0116】
なお、給紙動作中に搬送部8による用紙Pの重送が発生した場合には、制御部13は、重送によるエラー通知を印刷装置100へ送信する。この後、制御部13は、印刷装置100からの給紙終了指示を受信し、給紙エラーとして一連の給紙動作を終了させる。
【0117】
ここで、搬送部8による用紙Pの重送は、例えば、給紙ローラ10の近傍に設けられた重送センサ(図示せず)により検出される。給紙入口センサ12を重送センサとして機能させる構成としてもよい。
【0118】
以上説明したように、給紙装置1では、制御部13は、追従制御における用紙束PTの上面の高さ位置の目標位置が、搬送部8による用紙Pの重送よりも空送が発生しやすい位置となるように追従閾値を設定する。これにより、給紙リトライによって救済できずに給紙エラーとなる重送を低減できる。一方、空送が発生しやすくなるが、制御部13は、空送が発生すると、連続した空送の発生回数が上限連続回数Rに達するまでは、給紙リトライを行う。これにより、空送を給紙リトライにより救済することで、空送が発生しても給紙エラーとなることが抑えられる。この結果、給紙装置1によれば、給紙エラーを低減できる。
【0119】
また、給紙装置1では、制御部13は、搬送部8による連続した用紙Pの空送の発生回数(連続空送カウント値Ca)が上限連続回数Rに達した場合、それ以降は給紙リトライを行わずに一連の給紙動作を終了させる。これにより、目標位置が重送よりも空送が発生しやすい位置となるように追従閾値が設定されていることによる空送および給紙リトライが無駄に繰り返されることを抑えることができる。また、それ以外の何らかの原因(用紙Pが装置内の部材等に引っかかる等)により、空送および給紙リトライが無駄に繰り返されることも抑えることができる。一連の給紙動作の開始から追従閾値を決定して追従制御を開始するまでの間においても、空送および給紙リトライが無駄に繰り返されることを抑えることができる。
【0120】
また、給紙装置1では、制御部13は、一連の給紙動作の開始から追従閾値を決定するまでの間に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合、空送の発生時にサンプリングしたセンサ値を、追従閾値を決定するためのセンサ値としては採用しない。これにより、追従閾値を決定するまでの間に空送が発生しても、追従閾値の精度の低下を抑えることができる。
【0121】
また、給紙装置1では、制御部13は、追従制御の実施中に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合において給紙台2を所定上昇量だけ強制的に上昇させる。これにより、空送が連続して発生することを抑制できる。
【0122】
また、給紙装置1では、制御部13は、追従制御の実施中において、搬送部8による断続的な用紙Pの空送の発生回数(断続空送カウント値Cb)が上限断続回数Dに達した場合、追従閾値を所定量だけ大きくする。これにより、追従閾値が小さすぎる値に設定されていたために空送が発生しやすい状況になっていた場合に、その状況を改善できる。
【0123】
なお、断続空送カウント値Cbが上限断続回数Dに達したと判断した場合に、後述する第4実施形態のように、搬送部8による用紙Pの吸着力を所定量だけ大きくするようにしてもよい。また、断続空送カウント値Cbが上限断続回数Dに達したと判断した場合に、追従閾値を所定量だけ大きくする処理と、搬送部8による用紙Pの吸着力を所定量だけ大きくする処理とを組み合わせてもよい。追従閾値を大きくする処理と搬送部8による用紙Pの吸着力を大きくする処理とを組み合わせる場合において、追従閾値および搬送部8による用紙Pの吸着力のそれぞれをどれだけ大きくするかは、空送を低減できるように、例えば、実験等に基づき決定すればよい。
【0124】
[第2実施形態]
次に、上述した第1実施形態における空送が発生した際の給紙装置1の動作の一部を変更した第2実施形態について説明する。
【0125】
図8は、第2実施形態における空送が発生した際の給紙装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0126】
図8のステップS31~S35の処理は、前述した
図6のステップS1~S5の処理と同様である。
【0127】
ステップS35において、空送が発生していないと判断した場合(ステップS35:NO)、制御部13は、ステップS31に戻る。
【0128】
ここで、ステップS35で「NO」と判断してステップS31に戻った場合において、給紙終了指示を受信せず(ステップS31:NO)、サンプリング枚数分のセンサ値をまだ取得していない場合(ステップS32:NO)、給紙信号を受信すると(ステップS33:YES)、制御部13は、搬送部8により用紙Pを搬送させる(ステップS34)。この際、制御部13は、シャッタ17を開放することで浮上部6により用紙束PTの複数の用紙Pを浮上させて最上位の用紙Pを搬送ベルト21に吸着させ、その用紙Pを搬送部8により搬送させる。このようにして、給紙リトライが行われる。
【0129】
空送が発生したと判断した場合(ステップS35:YES)、ステップS36において、制御部13は、空送によるエラー通知を印刷装置100へ送信する。この後、制御部13は、ステップS31に戻る。
【0130】
ここで、エラー通知を受信した印刷装置100は、給紙装置1に給紙終了指示を送信する。このため、ステップS36からステップS31に戻った場合、制御部13は、給紙終了指示を受信したと判断し(ステップS31:YES)、給紙エラーとして一連の給紙動作を終了させる。これにより、制御部13は、一連の給紙動作の開始から追従閾値を決定するまでの間に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合、供給リトライを行わずに、給紙エラーとして一連のシート供給動作を終了させる。
【0131】
ステップS32において、サンプリング枚数分のセンサ値を取得したと判断した場合(ステップS32:YES)、ステップS37において、制御部13は、前述した
図6のステップS10と同様に、追従閾値を決定し、追従制御を開始させる。この後、制御部13は、前述した
図7のステップS11に進み、以降の処理を実行する。
【0132】
以上説明したように、第2実施形態では、制御部13は、追従閾値を決定するまでの間に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合、供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させる。これにより、空送が発生しやすい何らかの原因が内在している状態で追従閾値を決定することを回避できる。このため、給紙動作が進行してから空送および給紙リトライを繰り返したり、連続空送カウント値Caが上限連続回数Rに達して給紙エラーとなったりすることを回避できる。すなわち、給紙動作の開始後の早い段階で給紙エラーとすることで、早期にユーザが対処を行うことができる。
【0133】
[第3実施形態]
次に、上述した第1実施形態における空送が発生した際の給紙装置1の動作の一部を変更した第3実施形態について説明する。
【0134】
図9は、第3実施形態における空送が発生した際の給紙装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0135】
第3実施形態において、給紙動作が開始されると、第1実施形態と同様に、前述した
図6のステップS1~S10の処理が行われる。第3実施形態では、
図6のステップS10の後、
図9のステップS41に処理が進む。第2実施形態で説明した
図8のステップS31~S37の処理が行われ、
図8のステップS37の後、
図9のステップS41に処理が進むようにしてもよい。
【0136】
図9のステップS41~S49の処理は、前述した
図7のステップS11~S19の処理と同様である。
【0137】
図9のステップS50では、制御部13は、連続空送カウント値Caが所定の規定連続回数Kに達した(Ca=K)か否かを判断する。規定連続回数Kは、空送の発生を抑制するために給紙台2を強制的に上昇させるか否かを判断するための、連続した空送の発生回数の基準として設定されたものである。規定連続回数Kは、複数回数に設定されている。規定連続回数Kは、給紙台2を過剰に上昇させることを回避しつつ、空送の発生を抑制できる値として、実験等に基づき予め設定されている。なお、第3実施形態では、上限連続回数Rが規定連続回数Kより大きい値となるように設定されている。
【0138】
連続空送カウント値Caが規定連続回数Kに達したと判断した場合(ステップS50:YES)、ステップS51において、制御部13は、前述した
図7のステップS20と同様に、給紙台2を所定上昇量だけ強制的に上昇させる。この後、制御部13は、ステップS52に進む。
【0139】
連続空送カウント値Caが規定連続回数Kに達していないと判断した場合(ステップS50:NO)、制御部13は、ステップS51を省略してステップS52に進む。これにより、制御部13は、追従制御の実施中における搬送部8による用紙Pの空送が規定連続回数Kまで繰り返されるまでは、給紙台2の強制的な上昇を行わない。
【0140】
ステップS52~S55の処理は、前述した
図7のステップS21~S24の処理と同様である。
【0141】
以上説明したように、第3実施形態では、制御部13は、追従制御の実施中における搬送部8による用紙Pの空送が規定連続回数Kまで繰り返されるまでは、給紙台2の強制的な上昇を行わない。これにより、給紙台2を過剰に上昇させてしまうことで重送が発生するリスクが増大することを抑えつつ、空送の発生を抑制できる。
【0142】
[第4実施形態]
次に、上述した第1実施形態の一部を変更した第4実施形態について説明する。
【0143】
第4実施形態では、制御部13は、搬送部8による用紙Pの吸着力が、用紙束PTの上面の高さ位置が追従制御における目標位置にある場合に用紙Pの重送よりも空送が発生しやすい吸着力となるよう搬送部8を制御する。具体的には、制御部13は、給紙動作の際の搬送部8の吸引機構部25の吸引風量を、適正風量より小さい風量に設定する。適正風量は、用紙束PTの上面の高さ位置が追従制御における目標位置にある場合に重送も空送も同程度に起こりにくい吸引風量である。
【0144】
ここで、搬送部8では、用紙束PTの上面の高さ位置が同じであれば、吸引機構部25の吸引風量が小さいほど、搬送ベルト21に対する用紙Pの吸着力が小さくなり、搬送ベルト21と用紙Pとの間の摩擦力が小さくなるので、用紙Pの空送が発生しやすくなる。
【0145】
第4実施形態でも、追従閾値を決定する処理および追従制御は、上述した第1実施形態と同様に行われる。
【0146】
すなわち、給紙開始が指示されると、制御部13は、給紙台2の高さ位置を調整して、用紙束PTの上面を、サンプリング除外枚数とサンプリング枚数の半分の枚数との合計枚数分の用紙Pの厚さ分だけ目標位置より高い位置にある給紙開始位置に設定する。
【0147】
次いで、制御部13は、給紙動作を開始させる。この際、制御部13は、吸引機構部25の吸引風量を、上述の適正風量より小さい風量に設定して、吸引機構部25を駆動開始させる。吸引機構部25の吸引風量は、用紙種類および用紙サイズに応じて、追従制御の実施中において空送の増加を抑えつつ重送の発生を抑えることができる吸引風量に設定される。用紙種類および用紙サイズに応じた吸引機構部25の吸引風量は、例えば、予め実験的に求められる。
【0148】
給紙動作の開始後、給紙枚数がサンプリング除外枚数に到達すると、制御部13は、追従閾値を決定するためのセンサ値のサンプリングを開始する。サンプリング枚数分のセンサ値を取得すると、制御部13は、追従閾値を決定して追従制御を開始する。
【0149】
追従閾値を決定すると、制御部13は、決定した追従閾値を用いた追従制御を開始させる。追従制御を開始させると、制御部13は、給紙される用紙1枚ごとに、取得したセンサ値が追従閾値未満の場合、給紙台2を上昇させる。
【0150】
上述のように吸引機構部25の吸引風量が適正風量より小さい風量に設定されているので、重送よりも空送が発生しやすい状況で給紙動作が行われる。
【0151】
次に、第4実施形態における空送が発生した際の給紙装置1の動作について説明する。
【0152】
第4実施形態における空送が発生した際の給紙装置1の動作は、
図7のステップS22の処理以外は、上述した第1実施形態で
図6、
図7のフローチャートを用いて説明した動作と同様である。
【0153】
第4実施形態では、
図7のステップS22の追従閾値を所定量だけ大きくする処理が、搬送部8による用紙Pの吸着力を所定量だけ大きくする処理に置き換えられる。すなわち、断続空送カウント値Cbが上限断続回数Dに達したと判断した場合(ステップS21:YES)、制御部13は、搬送部8による用紙Pの吸着力を所定量だけ大きくする。
【0154】
具体的には、制御部13は、吸引機構部25の吸引風量を所定風量だけ大きくする。これにより、この後の空送を低減できる。搬送部8による用紙Pの吸着力をどれだけ大きくするか、すなわち吸引機構部25の吸引風量をどれだけ大きくするか(上述の所定風量)は、空送を低減できる値として、実験等に基づき予め設定されている。
【0155】
以上説明したように、第4実施形態では、制御部13は、搬送部8による用紙Pの吸着力が、追従制御の実施中において用紙Pの重送よりも空送が発生しやすい吸着力となるよう搬送部8を制御する。これにより、第1実施形態と同様に、給紙リトライによって救済できずに給紙エラーとなる重送を低減できる。一方、空送が発生しやすくなるが、制御部13は、空送が発生すると、連続した空送の発生回数が上限連続回数Rに達するまでは、給紙リトライを行う。これにより、空送を給紙リトライにより救済することで、空送が発生しても給紙エラーとなることが抑えられる。この結果、給紙エラーを低減できる。
【0156】
また、第4実施形態でも第1実施形態と同様に、制御部13は、搬送部8による連続した用紙Pの空送の発生回数(連続空送カウント値Ca)が上限連続回数Rに達した場合、それ以降は給紙リトライを行わずに一連の給紙動作を終了させる。これにより、空送および給紙リトライが無駄に繰り返されることを抑えることができる。
【0157】
また、第4実施形態でも第1実施形態と同様に、制御部13は、一連の給紙動作の開始から追従閾値を決定するまでの間に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合、空送の発生時にサンプリングしたセンサ値を、追従閾値を決定するためのセンサ値としては採用しない。これにより、追従閾値を決定するまでの間に空送が発生しても、追従閾値の精度の低下を抑えることができる。
【0158】
また、第4実施形態でも第1実施形態と同様に、制御部13は、追従制御の実施中に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合において給紙台2を所定上昇量だけ強制的に上昇させる。これにより、空送が連続して発生することを抑制できる。
【0159】
また、第4実施形態では、制御部13は、追従制御の実施中において、搬送部8による断続的な用紙Pの空送の発生回数(断続空送カウント値Cb)が上限断続回数Dに達した場合、搬送部8による用紙Pの吸着力を所定量だけ大きくする。これにより、搬送部8による用紙Pの吸着力が小さすぎたために空送が発生しやすい状況になっていた場合に、その状況を改善できる。
【0160】
なお、第4実施形態においても、第2実施形態のように、制御部13は、追従閾値を決定するまでの間に搬送部8による用紙Pの空送が発生した場合、供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させるようにしてもよい。これにより、給紙動作の開始後の早い段階で給紙エラーとすることで、早期にユーザが対処を行うことができる。
【0161】
また、第4実施形態においても、第3実施形態のように、制御部13は、追従制御の実施中における搬送部8による用紙Pの空送が規定連続回数Kまで繰り返されるまでは、給紙台2の強制的な上昇を行わないようにしてもよい。これにより、給紙台2を過剰に上昇させてしまうことで重送が発生するリスクが増大することを抑えつつ、空送の発生を抑制できる。
【0162】
また、断続空送カウント値Cbが上限断続回数Dに達したと判断した場合に、第1実施形態のように、追従閾値を所定量だけ大きくするようにしてもよい。また、断続空送カウント値Cbが上限断続回数Dに達したと判断した場合に、追従閾値を所定量だけ大きくする処理と、搬送部8による用紙Pの吸着力を所定量だけ大きくする処理とを組み合わせてもよい。追従閾値を大きくする処理と搬送部8による用紙Pの吸着力を大きくする処理とを組み合わせる場合において、追従閾値および搬送部8による用紙Pの吸着力のそれぞれをどれだけ大きくするかは、空送を低減できるように、例えば、実験等に基づき決定すればよい。
【0163】
[その他の実施形態]
上述のように、本発明は第1乃至第4実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0164】
上述した第1乃至第4実施形態では、追従閾値を決定する処理におけるサンプリング期間を、用紙束PTの上面の高さ位置が目標位置となる時点の前後で互いに同じ枚数の給紙が行われるように設定し、サンプリングした複数のセンサ値の平均値を追従閾値に決定した。しかし、サンプリング期間における、用紙束PTの上面の高さ位置が目標位置となる時点の前後の給紙枚数が互いに異なっていてもよい。この場合、例えば、サンプリング期間における、用紙束PTの上面の高さ位置が目標位置となる時点の前後の給紙枚数に応じて、サンプリングしたサンプリング枚数分のセンサ値の平均値を調整して追従閾値を決定することができる。
【0165】
また、給紙動作の開始直後でも、浮上させられた用紙Pの挙動が安定している場合には、給紙動作の開始直後のサンプリング除外枚数を設定することを省略し、給紙動作の開始とともにサンプリング期間を開始するようにすることが可能である。例えば、給紙動作の開始前に、用紙束PTの用紙P間に空気を送り込むことで、複数枚の用紙Pが密着したまま浮上することを防止して用紙Pの挙動を安定させることができる構成において、給紙動作の開始とともにサンプリング期間を開始するようにしてもよい。
【0166】
また、上述のように、給紙動作の開始直後でも、浮上させられた用紙Pの挙動が安定している場合には、給紙動作における1枚目の用紙Pの搬送時にサンプリングしたセンサ値を追従閾値に決定するようにしてもよい。この場合、給紙動作を開始する際の給紙台2の高さ位置を、用紙束PTの上面の高さ位置が給紙動作中の目標位置となるように設定する。そして、給紙動作における1枚目の用紙Pを搬送するために浮上させられた用紙Pの浮上中のセンサ値をサンプリングし、そのセンサ値を追従閾値に決定して追従制御を開始する。追従閾値を決定する処理は、給紙動作の開始後に少なくとも1枚の用紙Pの搬送時において、浮上部6により浮上させられた用紙Pの浮上中におけるセンサ値をサンプリングし、サンプリングしたセンサ値を用いて追従閾値を決定するものであればよい。
【0167】
上述した第1乃至第4実施形態では、給紙動作の開始後に用紙Pの浮上中におけるセンサ値をサンプリングして追従閾値を決定したが、予め設定した追従閾値を用いて追従制御を行うものであってもよい。
【0168】
上述した第1乃至第4実施形態では、上限センサ9を光学式センサで構成したが、これに限らず、上限センサ9は、電磁波、赤外線等を用いて用紙Pを検出するセンサであってもよい。上限センサ9は、用紙束PTの側方に入力して得られる出力信号を検出するものであればよい。また、追従制御は、給紙動作中において、搬送部8により搬送される用紙1枚ごとに、浮上部6により浮上させられた用紙Pの浮上中の上限センサ9の検出値を取得し、取得した検出値が閾値未満の場合に給紙台2を上昇させるものであればよい。
【0169】
上述した第1乃至第4実施形態では、搬送部8がエア吸引による吸着力で用紙Pを吸着して搬送する構成を示したが、これに限らず、静電力や磁力による吸着力で用紙Pを吸着して搬送する構成でもよい。
【0170】
上述した第1乃至第4実施形態では、用紙を給紙する給紙装置について説明したが、用紙以外のシートを供給する装置にも本発明は適用可能である。
【0171】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0172】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0173】
(付記1)
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを供給先へ搬送する搬送部と、
前記シート束の側方に入力して得られる出力信号を検出する検出部と、
シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の検出値を取得し、取得した検出値が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、
前記追従制御における前記シート束の上面の高さ位置の目標位置が、前記搬送部によるシートの重送よりも空送が発生しやすい位置となるよう前記閾値を設定することを特徴とするシート供給装置。
【0174】
(付記2)
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを供給先へ搬送する搬送部と、
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部と、
シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、
前記追従制御における前記シート束の上面の高さ位置の目標位置が、前記搬送部によるシートの重送よりも空送が発生しやすい位置となるよう前記閾値を設定することを特徴とするシート供給装置。
【0175】
(付記3)
前記制御部は、
少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定して前記追従制御を開始するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、空送の発生時にサンプリングした受光量を、前記閾値を決定するための受光量としては採用しないことを特徴とする付記2に記載のシート供給装置。
【0176】
(付記4)
前記制御部は、
少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定して前記追従制御を開始するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、前記供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させることを特徴とする付記2に記載のシート供給装置。
【0177】
(付記5)
前記制御部は、前記追従制御の実施中において、前記搬送部による断続的なシートの空送の発生回数が所定の断続回数に達した場合、前記閾値を所定量だけ大きくすることを特徴とする付記2乃至4のいずれかに記載のシート供給装置。
【0178】
(付記6)
前記搬送部は、シートを吸着して搬送するものであり、
前記制御部は、前記追従制御の実施中において、前記搬送部による断続的なシートの空送の発生回数が所定の断続回数に達した場合、前記閾値を所定量だけ大きくする処理、および前記搬送部によるシートの吸着力を所定量だけ大きくする処理の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする付記2乃至4のいずれかに記載のシート供給装置。
【0179】
(付記7)
シート束が積載された昇降可能な積載台と、
前記シート束に空気を吹き付けて前記シート束のシートを浮上させる浮上部と、
前記浮上部により浮上させられたシートのうちの最上位のシートを吸着して供給先へ搬送する搬送部と、
シートを前記供給先へ搬送するよう前記浮上部および前記搬送部を制御するとともに、前記積載台上のシートの減少に応じて前記積載台を上昇させる追従制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、
前記搬送部によるシートの空送が発生すると、前記供給先へのシートの搬送をやり直す供給リトライを行うよう前記浮上部および前記搬送部を制御し、
前記搬送部によるシートの吸着力が、前記シート束の上面の高さ位置が前記追従制御における目標位置にある場合にシートの重送よりも空送が発生しやすい吸着力となるよう前記搬送部を制御することを特徴とするシート供給装置。
【0180】
(付記8)
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記追従制御として、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる制御を行い、
前記追従制御を開始する前に、少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、空送の発生時にサンプリングした受光量を、前記閾値を決定するための受光量としては採用しないことを特徴とする付記7に記載のシート供給装置。
【0181】
(付記9)
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記追従制御として、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる制御を行い、
前記追従制御を開始する前に、少なくとも1枚のシートの搬送時において、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量をサンプリングし、サンプリングした受光量を用いて前記閾値を決定するものであり、
前記閾値を決定するまでの間に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合、前記供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させることを特徴とする付記7に記載のシート供給装置。
【0182】
(付記10)
前記シート束の側方から前記シート束側へ光を出射し、前記シート束側からの光を受光する検出部をさらに備え、
前記制御部は、
前記追従制御として、前記搬送部が搬送するシート1枚ごとに、前記浮上部により浮上させられたシートの浮上中における前記検出部の受光量を取得し、取得した受光量が閾値未満の場合に前記積載台を上昇させる制御を行い、
前記追従制御の実施中において、前記搬送部による断続的なシートの空送の発生回数が所定の断続回数に達した場合、前記閾値を所定量だけ大きくする処理、および前記搬送部によるシートの吸着力を所定量だけ大きくする処理の少なくともいずれか一方を行うことを特徴とする付記7乃至9のいずれかに記載のシート供給装置。
【0183】
(付記11)
前記制御部は、前記追従制御の実施中に前記搬送部によるシートの空送が発生した場合において前記積載台を所定上昇量だけ強制的に上昇させることを特徴とする付記2乃至10のいずれかに記載のシート供給装置。
【0184】
(付記12)
前記制御部は、前記追従制御の実施中における前記搬送部によるシートの空送が所定の複数回数繰り返されるまでは、前記積載台の強制的な上昇を行わないことを特徴とする付記11に記載のシート供給装置。
【0185】
(付記13)
前記制御部は、前記搬送部による連続したシートの空送の発生回数が所定回数に達した場合、それ以降は前記供給リトライを行わずに一連のシート供給動作を終了させることを特徴とする付記2乃至12のいずれかに記載のシート供給装置。
【符号の説明】
【0186】
1 給紙装置
2 給紙台
3 エンドフェンス
4 昇降モータ
5 エンコーダ
6 浮上部
7 分離部
8 搬送部
9 上限センサ
10 給紙ローラ
11 給紙モータ
12 給紙入口センサ
13 制御部
16 浮上ファン
17 シャッタ
18 分離ファン
21 搬送ベルト
22 駆動ローラ
23 従動ローラ
24 搬送モータ
25 吸引機構部
31 発光部
32 受光部
100 印刷装置
P 用紙
PT 用紙束