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特開2022-100249近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100249
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/06 20060101AFI20220628BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C7/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195206
(22)【出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2020213185
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄二
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BA03
(57)【要約】
【課題】近視を屈折矯正した見え方として見やすく、同時に、近視の進行を抑制することができる近視の進行を抑制するための眼鏡レンズを提供すること。
【解決手段】レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりもプラスの屈折力を有する第2の領域と、第1の領域と第2の領域の間には屈折力が累進的に変化する累進帯領域が設けられ、第1の領域から第2の領域にかけて加入度数が徐々に付加されていくように加入勾配が設定されている累進屈折面がレンズの裏面に設けられ、外方に凸状に隆起する多数のスポット3を有した近視進行抑制領域2がレンズの裏面に設けられ、近視進行抑制領域2は累進帯領域と第2の領域を挟んだ左右位置に配置されている近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、同第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも相対的にプラスとなる屈折力を有する第2の領域とを備え、
前記第1の領域と前記第2の領域の周囲を取り囲むように近視進行抑制領域が配置されることを特徴とする近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記近視進行抑制領域は前記レンズ表面の曲率より大きな曲率の多数の凸レンズが相互に間隔を空けて二次元方向に拡がるように配置された凸レンズの群によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項3】
レンズの中心側寄りに配置された前記凸レンズの群は、レンズの外周寄りに配置された前記凸レンズの群よりも前記凸レンズの曲率が小さいことを特徴とする請求項2に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記凸レンズの群はトロイダル面形状の凸レンズであって、前記レンズの非点収差が相殺される角度となるように配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記近視進行抑制領域は、前記レンズ表面で光を散乱させる粗面領域であり、前記第1の領域と前記第2の領域の周囲を取り囲むように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記近視進行抑制領域は、2つ以上の独立した島状の粗面領域を含むように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記近視進行抑制領域は前記第1の領域と前記第2の領域を周囲からリング状のドーナツ形状に包囲する領域であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項8】
前記近視進行抑制領域は前記第1の領域と前記第2の領域を挟んだ左右位置に配置されることを特徴とする 請求項1~6のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項9】
前記近視進行抑制領域に分布する前記凸レンズの群の分布密度は上方側よりも下方側の方が低くなるように配置されていることを特徴とする請求項2~4、7、8のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項10】
前記粗面領域を構成する多数のスポットの分布密度は上方側よりも下方側の方が低くなるように配置されていることを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項11】
レンズの中心側寄りに配置された前記凸レンズの群の分布密度はレンズの外周寄りよりも低い分布密度で配置されていることを特徴とする請求項2~4、7、8のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項12】
レンズの中心側寄りに配置された前記粗面領域の分布密度はレンズの外周寄りよりも低い分布密度で配置されていることを特徴とする請求項5~8のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項13】
前記第2の領域の左右方向に配置される前記凸レンズは、前記第2の領域の左右方向に配置されていない前記凸レンズよりも発揮するプラス度数が小さいことを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項14】
前記第1の領域と前記第2の領域の間には屈折力が累進的に変化する累進帯領域が設けられ、前記第1の領域から前記第2の領域にかけて加入度数が徐々に付加されていくように加入勾配が設定されていることを特徴とする請求項2~12のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項15】
前記近視進行抑制領域は前記累進帯領域及び前記第2の領域を挟んだ左右位置に配置されることを特徴とする請求項14に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項16】
前記近視進行抑制領域は、前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記累進帯領域が設けられたレンズの表裏いずれかの面とは異なる側の面に形成されていることを特徴とする請求項14又は15に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項17】
前記近視進行抑制領域の占めるトータルの面積を前記近視進行抑制領域以外の部分の占めるトータルの面積で除すことで得られる面積比について、前記第1の領域付近に配置される前記面積比は、前記第2の領域付近に配置される前記面積比よりも小さいことを特徴とする請求項15又は16に記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ。
【請求項18】
前記近視進行抑制領域は前記凸レンズの群で構成され、前記累進帯領域及び前記第2の領域付近に配置される前記凸レンズは前記第1の領域付近に配置される前記近視進行抑制領域の前記凸レンズの屈折力よりもプラス寄りに設定されていることを特徴とする請求項14~17のいずれかに記載の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視を屈折矯正すると同時に、近視の進行を抑制することができる近視の進行を抑制するための眼鏡レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近視を進行させる要因の1つとして、近くを見るときの調節ラグ(近くの対象物にピントを合わせるのに必要な水晶体調節力に対する、水晶体調節の不足、サボり)が作る、網膜中心部の遠視性のボケ(網膜より後ろに鮮明な像を結ぶ)が挙げられる。つまり、網膜中心部の焦点が網膜よりも後ろにあることでそれに合わせるように眼軸が伸長し、眼が前後方向に長くなることから、結果として近視が進行するというプロセスである。そのため、近くを見るときに眼鏡によって調節力を補助するような度数を付与し、網膜より後ろに鮮明な像を結ばせないようにすることが近視を進行させないことにつながる。
近視の進行を抑制するには、単に網膜の中心だけではなく、網膜の周辺部の結像状態が重要である、という考え方がある。これは、網膜周辺部も遠視性のボケにより眼軸が伸長するため、網膜周辺部も近視を進行させる要因となっており、そのため、眼鏡によって矯正して網膜周辺部の焦点を網膜よりも後ろに結像させないようにすることで近視の進行を抑制することができるという理論である。
上記のような網膜周辺部で網膜より後方に結像することを抑制する眼鏡として特許文献1を挙げる。特許文献1は、例えばその図1(FIG.1)に示すように、近視を矯正する第1の屈折異常矯正領域1の周囲に凸レンズ状のそれぞれ独立した複数の島状領域2をリング状に形成して第2の屈折領域とした近視の進行を抑制するための眼鏡レンズである。このような眼鏡レンズであれば複数の島状領域2によって網膜周辺部への焦点が、網膜よりも前に結像するようになるため、近視の進行を抑制することができることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10268050号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の眼鏡レンズは、近視の進行を抑制するための眼鏡レンズとして有効であるが、近くを見ようと、視線が下向きになった時に、第2の屈折領域(つまり島状領域2)がリング状であるため、視線が第2の屈折領域にかかる可能性があり、下向きでの見え具合がよくないことがある。また、近くを見るときには理論上調節ラグが発生するため、近くを見る機会が多いユーザにおいては、近視の進行抑制効果が低下する可能性がある。
本発明は、そのような点を改良して、近視を屈折矯正した見え方として見やすく、同時に、近視の進行を抑制することができる近視の進行を抑制するための眼鏡レンズを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために手段1では、レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、同第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも相対的にプラスとなる屈折力を有する第2の領域とを備え、前記第1の領域と前記第2の領域の周囲を取り囲むように近視進行抑制領域が配置されるようにした。
このような、近視の進行を抑制するための眼鏡レンズであれば、第1の領域と第2の領域の周囲の近視進行抑制領域によって網膜周辺部の焦点が、網膜よりも前に配置されるようになるため、近視を進行させない効果がある。また、近くを見るときに、第1の領域よりもプラスの屈折力を有する第2の領域を使用することができるため調節ラグが発生しにくく、近視の進行抑制効果が低下しにくくなる。
【0006】
「レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域」と「第1の領域よりもプラスの屈折力を有する第2の領域」は、例えば累進屈折力レンズのように第1の領域と第2の領域の間に不連続な部分のない累進的にレンズ度数を付加したレンズでもよく、例えば小玉の附属したBF(バイフォーカル)レンズや、上下に2分割されたフランクリンレンズのように第1の領域と第2の領域の間に不連続な部分を有するレンズであってもよい。
第1の領域、第2の領域と近視進行抑制領域との間は明確な境界があってもよいが、特に累進屈折力レンズのように不連続な部分のない累進的にレンズ度数を付加したレンズでは近視進行抑制領域の形状によっては第1の領域、第2の領域の一部(外側)と交錯する部分を有することがある。
近視進行抑制領域は光学的効果によって網膜周辺部へ向かう入射光を網膜よりも後ろに結像させない領域であり、眼鏡レンズを通した景色が明視できない領域である。例えば、後述する凸レンズや粗面等のように光は通すが当該装用者が目視する際に網膜付近に焦点が結べない領域である。
【0007】
また、手段2では、前記近視進行抑制領域は前記レンズ表面の曲率より大きな曲率の多数の凸レンズが相互に間隔を空けて二次元方向に拡がるように配置された凸レンズの群によって構成されているようにした。
凸レンズがレンズ表面の曲率より大きな曲率の凸レンズであれば、入射光が網膜周辺部へ焦点を結ぶ際に網膜よりも後ろに結像しないため近視を進行させない効果がある。また、近くを見るときに、第1の領域よりもプラスの屈折力を有する第2の領域を使用することができるため調節ラグが発生しにくく、近視の進行抑制効果が低下しにくくなる。また、凸レンズのない眼鏡レンズ部分については視線が透過するためそれだけ明視領域が広くなる。
凸レンズの大きさは0.1~3mm程度の径であることがよい。すべてが同じ大きさの凸レンズでもよくそうではなくてもよい。装用者の瞳孔径はおおよそ3mm程度であるが、これよりも凸レンズが十分に大きくなってしまうと、視線が凸レンズ部分を通過するときに凸レンズのみに依存した見え方になってしまい、視界が妨げられてしまう。多数とは複数というだけではなく光学的な効果が発現できる程度に必要である。
凸レンズの群は瞳孔を通過する光線において凸レンズを通過しない光線と凸レンズを通過する光線が、一定の比率で混合している状態にすることで、近視進行抑制領域における視界の妨害を、ある程度抑えることが可能である。
隣接する凸レンズ同士の間隔も凸レンズの径と同等であることがよい。もっとも、必ずしも径と同じ隣接間隔でなくともよい。凸レンズは必ずしもすべてが同形状である必要はなく、間隔も整然と配置してもランダムに配置してもよい。
凸レンズは特に視野にかかる部分(垂直方向におけるレンズ中央寄り部分)、特に近用視部分の密度を視野から遠い部分の密度よりも低くして(まばらにして)配置するようにすることがよい。
例えば、累進屈折力レンズの近用部分側方のように、下地レンズの収差が大きく、その部分を通して物体をみることを想定しない領域においては、凸レンズの間隔を狭く、もしくは間隔をなくしてしまってもよい。
一方、遠用部の側方のように、下地レンズの収差が少なく、その部分を通して物体を見ることが想定される領域においては、凸レンズの間隔を十分に開けて配置することが望しい。
また、累進屈折力レンズの場合においては、眼鏡が下にずり落ちてしまうと、下向き視線が、プラス度数の加入した近用部を通らなくなり、近くを見るときの調節ラグを抑制する効果がなくなってしまう。そして、累進的にプラス度数が付加されているために、装用者はそのことに気がつかない。
このような事態を防ぐため、遠用部の上方に、凸レンズを高密度に、隣接間隔を小さくして、もしくは隣接間隔を無しにして、配置することで、眼鏡のずり落ちを気づかせる効果も兼ねることができる。
多数の凸レンズからなる近視進行抑制領域は第1の領域と第2の領域の周囲にリング状の領域として配置してもよく、中央を上下に第1の領域と第2の領域の主要部が残るように左右に配置してもよい。また、左右に配置する場合には中央よりも下の領域に配置することがよい。中央よりも上の領域は視野を確保したいが、中央よりも下の領域は視野が上の領域より狭いためこのようにすることがよい。
このような凸レンズを有する眼鏡レンズは例えばレンズ型を使用して熱硬化モノマーを硬化させて作製することがよい。
【0008】
また、手段3では、レンズの中心側寄りに配置された前記凸レンズの群はレンズの外周寄りに配置された前記凸レンズの群よりも前記凸レンズの曲率が小さくなるようにした。
レンズの中心側寄りはユーザーの視野に入る可能性が大きいため、レンズの外周寄りよりも相対的に曲率を小さくすることで使用した際の違和感を低減することができる。
また、手段4では、前記凸レンズの群はトロイダル面形状の凸レンズであって、前記レンズの非点収差が相殺される角度となるように配置されるようにした。
トロイダル面は、ドーナツの表面のように円環状の形状の表面において直交方向で曲率が異なる面である。非点収差はレンズ面が直交方向において屈折力が異なることによって生じる収差であるため、凸レンズがトロイダル面形状の凸レンズである場合には凸レンズが配置される角度をレンズ面の非点収差を相殺する角度で配置することで非点収差が軽減されることになるからである。
【0009】
また、手段5では、前記近視進行抑制領域は、前記レンズ表面で光を散乱させる粗面領域であり、前記第1の領域と前記第2の領域の周囲を取り囲むように構成されているようにした。
これによって、網膜周辺部に向かう入射光が網膜よりも後ろに結像しないため近視を進行させない効果がある。
粗面領域は、光を散乱させることで明視できないが、光を目視できる領域である。粗面領域は、粗面領域内すべてが光を散乱させるような面で構成されてもよく、光を散乱させる領域が多数のスポットとして相互に間隔を空けて平面視において二次元方向に拡がるように多数配置させるように構成されていてもよい。光を散乱させるために例えば図15(a)~(c)に示すように角度の異なる多数の面を有する微細な多数の突起を有して形成されることがよい。これによって光を散乱させる曇りガラスとなる。
粗面領域は、例えば眼鏡レンズに直接サンドブラスト加工をして粗面としてもよく、レンズ型にサンドブラスト加工をして粗面を形成し、これを型として粗面領域を有する眼鏡レンズを作製してもよい。
また、手段6では、前記近視進行抑制領域は、2つ以上の独立した島状の粗面領域を含むように構成されているようにした。
これによって、入射光が網膜周辺部へ焦点を結ぶ際に網膜よりも後ろに結像しないため近視を進行させない効果があるとともに、また、島状の粗面領域のない眼鏡レンズ部分については視線が透過するためそれだけ明視領域が広くなる。粗面領域は独立した島状のスポットを多数含むように構成されることがよい。
島状の粗面領域はレンズの表面を基準面として、図15(a)のように基準面と同高さ位置に形成されても、あるいは図15(b)のようにその粗面領域が上方に突出した位置に形成されていても、逆に図15(c)のように凹となるように窪んだ位置に形成されていてもよい。
また、手段7では、前記近視進行抑制領域は前記第1の領域と前記第2の領域を周囲からリング状のドーナツ形状に包囲する領域であるようにした。
近視進行抑制領域が形成される位置の具体例をクレームしたものである。このように近視進行抑制領域がリング状のドーナツ形状に包囲する領域であると、網膜周辺部の全域をカバーすることになり、近視進行の抑制効果が大きくなる。
また、手段8では前記近視進行抑制領域は前記第1の領域と前記第2の領域を挟んだ左右位置に配置されるようにした。
近視進行抑制領域が形成される位置の具体例をクレームしたものである。このように近視進行抑制領域が第1の領域と第2の領域の両側にあると、遠用から近用にかけて視野が確保されることとなり、通常の眼鏡としての使用のストレスが少ない。
また、手段9では、前記近視進行抑制領域に分布する前記凸レンズの群もしくは前記粗面領域のスポットの分布密度は上方側よりも下方側の方が低くなるように配置されているようにした。粗面領域は独立した島状のスポットから構成されることがよい。
これによって下方視した際の装用者において視線方向に凸レンズがあることの見えにくさが軽減されることとなる。分布密度の変化は不連続的でも連続的に徐々に変化していってもよい。
また、手段10では、レンズの中心側寄りに配置された前記凸レンズの群もしくは前記粗面領域の分布密度はレンズの外周寄りよりも低い分布密度で配置されているようにした。
このようにすれば通常の眼鏡としての使用のストレスが少ない。
また、手段11では、前記第2の領域の左右方向に配置される前記凸レンズは、前記第2の領域の左右方向に配置されていない前記凸レンズよりも発揮するプラス度数が小さくなるようにした。
これによって、装用者が下方視した際に凸レンズが第2の領域の度数と重なってプラス度数が過剰になってしまうことを抑制することができる。
【0010】
また、手段12では、前記第1の領域と前記第2の領域の間には屈折力が累進的に変化する累進帯領域が設けられ、前記第1の領域から前記第2の領域にかけて加入度数が徐々に付加されていくように加入勾配が設定されているようにした。
つまり、累進屈折力レンズとしての累進屈折面を有しているということである。近視の進行を抑制するための眼鏡レンズとして、このような累進屈折力レンズである第1の領域と第2の領域を使用すると、遠用と近用との間での境界線上で像の不連続(プリズムジャンプ)が生じることなくスムーズに視線を移動させることができ、近くを見るときに第2の領域を使用することができるため調節ラグが発生しにくい。
また、手段13では、前記近視進行抑制領域は前記累進帯領域及び前記第2の領域を挟んだ左右位置に配置されるようにした。
つまり、広い視野を持つ第1の領域に近視進行抑制領域を配置せず、近用視で比較的視野が狭くなることから下部領域の累進帯領域と第2の領域の両側に近視進行抑制領域を配置することで、視野を確保しつつ近視の進行を抑制することができる。
近視進行抑制領域は、例えば第一の領域を第一の領域の中心より3mm以上上方から包囲する領域であることがよい。
また、手段14では、前記近視進行抑制領は、前記第1の領域、前記第2の領域、及び前記累進帯領域が設けられたレンズの表裏いずれかの面とは異なる側の面に形成されているようにした。
これによって、凸レンズを形成する側のレンズ面は、単純な形状のベース面に形成することができるため、凸レンズの設計が容易になり、均等な形状の近視進行抑制領域を形成しやすくなる。近視進行抑制領域側が物体側の面となることがよい。
また、手段15では、前記近視進行抑制領域の占めるトータルの面積を前記近視進行抑制領域以外の部分の占めるトータルの面積で除すことで得られる面積比について、前記第1の領域付近に配置される前記面積比は、前記第2の領域付近に配置される前記面積比よりも小さくなるようにした。
このようにすることで、累進屈折力レンズにおいて、第2領域付近、とくに左右の領域は、非点収差や歪曲収差が集中しているため、その部分を通して物体を見る頻度が少ないからである。しかしながら、この領域は近くを見る場合においては、網膜の周辺に遠視性のボケをつくりやすい領域でもある。本手段はそのため、この部分に相対的に例えば凸レンズをより高い密度で配置することで、比較的視野を損なわずに、効率よく近視進行抑制効果を発揮させるものである。
また、手段16では、前記近視進行抑制領域は前記凸レンズの群で構成され、前記累進帯領域及び前記第2の領域付近に配置される前記凸レンズは前記第1の領域付近に配置される前記近視進行抑制領域の前記凸レンズの屈折力よりもプラス寄りに設定されるようにした。
前記凸レンズ体の屈折力は、プラス寄りであるほど、近視進行抑制効果が高いことが想定されるが、一方で、凸レンズ以外の部分との屈折力の差が大きくなるため、近視進行抑制領域での視認性は低下する。
しかるに、前記第2の領域を挟む領域は、累進屈折力レンズの非点収差や歪曲収差が集中しているため、その部分を通して物体を見る頻度が少ない。しかしながら、近くを見る場合においては、網膜の周辺に遠視性のボケをつくりやすい領域でもある。本手段はそのため、この部分にプラス寄りの凸レンズを配置することで、比較的視野を損なわずに、効率よく近視進行抑制効果を発揮させることができる。
【0011】
上述の各手段に示した発明は、任意に組み合わせることができる。例えば、手段1に示した発明の全てまたは一部の構成に手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、手段1に示した発明に、手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、手段1から手段16に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の近視の進行を抑制するための眼鏡レンズを装用すれば、第1の領域と第2の領域の周囲の近視進行抑制領域によって網膜周辺部の焦点が、網膜よりも前に配置されるようになるため、装用者の近視を進行させない効果がある。また、このレンズで近くを見るときに、第1の領域よりもプラスの屈折力を有する第2の領域を使用することができるため調節ラグが発生しにくく、近視の進行抑制効果が低下しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1の近視抑制レンズのレンズ特性を表す図であって(a)は透過光条件での平均度数分布図、(b)は同じく非点収差分布図。
図2】実施の形態1の近視抑制レンズの表面に形成される近視進行抑制領域のスポットの分布状態を説明する説明図。
図3図2のA-A線での断面図。
図4】実施の形態2の近視抑制レンズの表面に形成される近視進行抑制領域のスポットの分布状態を説明する説明図。
図5図4のB-B線での断面図。
図6】実施の形態3の近視抑制レンズの表面に形成される近視進行抑制領域のスポットの分布状態を説明する説明図。
図7】実施の形態4の近視抑制レンズの表面に形成される近視進行抑制領域のスポットの分布状態を説明する説明図。
図8】実施の形態4において下地レンズの非点収差をトロイダル面を備えたスポットによってキャンセルする際の度数変化を説明する説明図。
図9】実施の形態4においてトロイダル面を備えたスポットのトロイダル面の中心を通る直線の形状を説明するための説明図。
図10】実施の形態5の近視抑制レンズの表面に形成される近視進行抑制領域のスポットの分布状態を説明する説明図。
図11】実施の形態7の近視抑制レンズの表面に形成される近視進行抑制領域のスポットの分布状態を説明する説明図。
図12】その他の実施の形態で近視抑制レンズの表面に形成される近視進行抑制領域のスポットの分布状態を説明する説明図。
図13】実施の形態10において島状の粗面領域を説明するための説明図。
図14】他の実施の形態の粗面領域を有する近視抑制レンズの平面図。
図15】(a)~(c)は粗面の形成位置のパターンを説明するための粗面のイメージの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ(以下、近視抑制レンズ)の具体的な実施の形態について説明をする。
<実施の形態1>
実施の形態1として、レンズ裏面に図1(a)(b)の累進特性となる近視抑制レンズ1を作製した。図1(a)(b)おいてX方向は眼鏡レンズ使用時の水平方向、Y方向は同垂直方向である。この近視抑制レンズ1の設計基本条件は以下の通りである。
左右レンズともにS-1.00D、ADD 1.50D、インセット理論値 2.1mm、累進帯長 13mmとした。つまり、図1(a)のように平均度数(レンズ度数)は遠用領域でS-1.00Dであるが近用領域では0.50Dとされている。
また、図1(b)からわかるように中央から上の遠用領域は広い領域で非点収差がなく、この領域は下方側ほど狭まっていき狭い累進帯領域となり、再び近用領域で拡がる。近用領域の非点収差がない領域は遠用領域より狭いが、近用視するには支障がない広さとなっている。非点収差は累進帯領域の左右側方に集中することとなる。
また、近視抑制レンズ1は屈折率1.60素材の非球面レンズで、
表面: 2.0カーブ(1.523換算)
裏面: 所定の近視矯正、調節補助度数を有するよう決定される累進形状
中心厚: 1.0mm
レンズ径: 75mm
とした。
【0015】
図2及び図3に示すように、近視抑制レンズ1のレンズ表面には近視進行抑制領域2が形成されている。図2おいてX方向は眼鏡レンズ使用時の水平方向、Y方向は同垂直方向である。近視進行抑制領域2は多数のドーム形状の小さなスポット3の群から構成されている。近視進行抑制領域2においてすべてのスポット3とそれらスポット3以外の部分との占める面積比は実施の形態1では1:1とされている。
近視進行抑制領域2はレンズ縦方向中央の累進帯域を避けた左右両側位置であって、かつ遠用部領域にかからないようにレンズの下部領域に配置されている。その配置位置は、概ね図1(b)の非点収差分布図の非点収差の集中する領域と重なる領域となる。つまり、遠用領域、累進帯領域、近用領域の視野を阻害しない領域に近視進行抑制領域2は配置されることとなり、この部分は入射した光が網膜周辺部へ焦点を結ぶ領域でもある。
図3に示すように、実施の形態1のスポット3は近視抑制レンズ1と一体化して成形された径2mmのドーム形状の凸レンズである。スポット3はスポット3の頂点方向からの目視において真円形状の外形を有する。本実施の形態1では近視進行抑制領域2は左右に分かれて配置された直列に配置された複数のスポット3からなる内側に向かって凸となる非点収差の方向に略沿った6つのカーブ列の群からなる。列方向ではスポット3は2mmの間隔で配列され、列同士は列中心線間が4mmとなるように整然と連続的に配列されている。スポット3のカーブは1.523換算で5.0カーブとされている。
実施の形態1のような近視抑制レンズ1であれば、装用者の近視を進行させない効果があるとともに、このレンズで近くを見るときに近用領域を使用できるため、調節ラグが発生しにくく、この点でも近視の進行が抑制されることとなる。また、非点収差の集中する領域に近視進行抑制領域2が配置されるため、通常の目視の妨げになることがない。
【0016】
<実施の形態2>
実施の形態2は実施の形態1のバリエーションである。実施の形態2の近視抑制レンズ5は実施の形態1の近視抑制レンズ1の図1(a)(b)の累進特性と同様の特性とされ、設計基本条件も近視抑制レンズ1と同じに設計されている。実施の形態2の近視抑制レンズ5では近視進行抑制領域6の形状が図4に示すようにレンズ中心に配置された明視領域8を包囲するようにリング状に配置されている。近視抑制レンズ5の個々のスポット7の形状は実施の形態1のスポット3と同じ凸レンズであるが、配置パターンが異なる。近視進行抑制領域6は多数のスポット7が同心に配置された6つの円環状のカーブ列の群からなる。多数のスポット7は列方向では2~3mmの間隔で配列され、列同士は列中心線間が4mmとなるように整然と連続的に配列されている。
実施の形態2のような近視抑制レンズ5であれば、網膜周辺の遠視性のボケを抑制することによる近視進行抑制効果が期待されるのに加え、調節ラグを抑制することによる近視進行抑制効果がさらにプラスされることになる。
また、単に、調節ラグを抑制し、近視の進行を抑制するとして手段としてもしばしば使用される累進屈折力レンズとの比較においても、レンズの使用部位をスポットが取り囲むことで、眼鏡が下にずり落ちたりするなど、装用者の目の位置とレンズのアライメントの不良による効果の半減を抑制することができる。
遠用部、近用部を非スポット部とするため、垂直に長い楕円状に非スポット部を設けることも考えられる。
【0017】
<実施の形態3>
実施の形態3も実施の形態1のバリエーションである。実施の形態3の近視抑制レンズ10は実施の形態1の近視抑制レンズ1の図1(a)(b)の累進特性と同様の特性とされ、設計基本条件も近視抑制レンズ1と同じに設計されている。図6に示すように、実施の形態3の近視進行抑制領域11はレンズ縦方向中央の特に視線が上下する領域(左右方向のレンズ径長さに対して20~30%程度の幅)を避けた左右両側位置に配置されている。近視抑制レンズ11の個々のスポット12の形状は実施の形態1のスポット3と同じ凸レンズであるが、配置パターンが異なる。近視進行抑制領域11は左右に分かれて配置された7つの直線列の群からなる。多数のスポット12は列方向では3mmの間隔で配列され、列同士は列中心線間が4mmとなるように整然と連続的に配列されている。
実施の形態3のような近視抑制レンズ10であれば、遠用領域、近用領域にスポット12が存在しないことにより、眼鏡レンズとしての使用感を向上させつつ、近視抑制領域が側方部で視野を囲むことにより、近視進行抑制効果を発揮する。実施の形態1と比較して、遠用部側方にもスポットが配置されるため、網膜周辺の遠視性のボケに由来する近視の進行を抑制する効果が相対的に大きなものになることが考えられる。
【0018】
<実施の形態4>
実施の形態4も実施の形態1のバリエーションである。実施の形態3の近視抑制レンズ10は実施の形態1の近視抑制レンズ1の図1(a)(b)の累進特性と同様の特性とされ、設計基本条件も近視抑制レンズ1と同じに設計されている。
実施の形態4ではレンズ表面に配置される近視進行抑制領域15のスポット16の形状と配置角度が異なる例である。実施の形態4ではスポット16の形状と配置角度に特化して説明する。図7及び図8に示すように、実施の形態4の多数のスポット16は縦横の直交する方向において長さと曲率が最大と最小になるようなトロイダル面で構成されている。図9に示すように、X方向の曲率をC1とし、Y方向の曲率をC2としてこのスポット16のサグ量Z(トロイダル面の中心を通る直線の形状)を定義すると、
Z=(C1×X+C2×Y)/(1+sqrt(1-C1×X+C2×Y)
と表すことができる。
今、図8のように下地となる近視抑制レンズ10の局所度数がS-0.25D C-0.50D X方向を基準とした乱視軸方向(AX)100であったとする。一方、スポット16のトロイダル面を度数で示した場合にS+3.25D C+0.50DでありX方向を基準に100度(AX100)回転させて位相を変化させた状態で近視抑制レンズ10に重ねるとC度数同士がちょうどキャンセルされてなくなる。C度数は非点収差に他ならないため、この位置での非点収差をスポット16をちょうどよい角度(位相)で配置することでなくすことができる。ちょうどよい角度とは近視抑制レンズ10の局所度数の最大度数方向とスポット16のトロイダル面の最大度数方向が直交する方向となることである。ただし、多少の角度のずれは許容されるため、概ねそのような方向に配置することで近視進行抑制領域15の非点収差をキャンセルでき、装用者の眼に与える負荷を軽減することができる。
図7に示すように、スポット16は累進特性を付与した結果、非点収差が発生している近視抑制レンズ10の周辺領域について、非点収差を打ち消すように配置されている。非点収差の等高線上に配置されたスポット16のトロイダル面の最大度数方向はその非点収差と略直交して配置されている。等高線上にないスポット16も非点収差を考慮して位相が決定されている。図7で示すより多く(また、大きさも様々に)スポット16を非点収差の方向に応じて配置することが可能である。
このようにすることで、スポット領域を通過する光線を網膜手前で結像させるとき、下地レンズの非点収差により、光線の焦点深度が延長してしまうことを防ぎ、網膜手前に安定して結像させることができる。
【0019】
<実施の形態5>
実施の形態5は実施の形態2のバリエーションである。図10に示すように、実施の形態5の近視抑制レンズ18では近視進行抑制領域19の形状が実施の形態2のリング状の近視進行抑制領域6と同様に明視領域20の周囲に形成されている。実施の形態5では実施の形態2と異なり、近視進行抑制領域19を構成するスポット21が下方側ほどまばら、つまり密度が低くなるように配置されている。
このような近視抑制レンズ18であれば、特に近用領域の目視がしやすくなる。
【0020】
<実施の形態6>
実施の形態1~5においてはスポット3、7、12、16の凸レンズ形状のカーブは同じ曲率で構成されており、よってスポット3、7、12、16によって付加されるプラス度数もそれぞれ近視進行抑制領域6、11、15、19で同じであった。
しかし、いずれのレンズも近用領域のレンズ度数(S度数)がプラスとなっているためスポット3、7、12、16のプラス度数が付加されると近用領域の加入されている領域と交錯する部分については過剰な矯正となってしまう。そのため、近用領域以下に配置されるスポット3、7、12、16のプラス度数をそれより上のスポット3、7、12、16よりもプラス度数を小さくする(曲率を小さくする)ことがよい。
例えば、近視抑制領域に、相対的にプラス3Dの度数を加えるとするならば、
下地レンズの平均度数が遠用度数に対して、平均0.5Dである領域には、2.5Dのスポット
下地レンズの平均度数が遠用度数に対して、平均1.0Dである領域には、2.0Dのスポット
下地レンズの平均度数が遠用度数に対して、平均1.5Dである領域には、1.5Dのスポット
を配置すればよい。
【0021】
<実施の形態7>
実施の形態7は実施の形態2のバリエーションである。実施の形態7の近視抑制レンズ21では実施の形態2と同様にスポット3から構成される近視進行抑制領域6の形状がレンズ中心に配置された明視領域8を包囲するようにリング状に配置されている。しかし、実施の形態7では図11に示すようにレンズの中心側寄りに配置されたスポット3はレンズの外周寄りに配置されたスポット3よりも低い分布密度で配置されている。
このような近視抑制レンズ21であれば、視線は明視領域8を多く見ているため、通常の眼鏡としての使用におけるストレスが少なくなる。
<実施の形態8>
実施の形態8は実施の形態3のバリエーションである。平面視における近視進行抑制領域11でのスポット12の二次元方向の分布状態は実施の形態3と同じである。つまり、実施の形態3と同様に近視進行抑制領域11はレンズ縦方向中央の特に視線が上下する領域(左右方向のレンズ径長さに対して20~30%程度の幅)を避けた左右両側位置に配置されている。しかし、実施の形態8では図6におけるC線よりも下方の累進帯領域、近用領域におけるスポット12の屈折力は、C線よりも上方の遠用領域におけるスポット12の屈折力よりもプラスとなるように設計されている。この実施の形態8では1.00Dプラスである。
このように、累進屈折力レンズの非点収差や歪曲収差が集中し、あまり視線が通らない部分によりプラス寄りの凸レンズを配置することで、比較的視野を損なわずに、効率よく近視進行抑制効果を発揮することができる。
【0022】
<実施の形態9>
実施の形態9は実施の形態8のバリエーションである。
実施の形態8において、遠用領域の周囲に配置されたスポット3と近用領域の周囲(C線より下)に配置されたスポット3の屈折力を変えるようにしていたが、実施の形態8のようにある線で区切りをつけるのではなく、段階的に面積比を変更していくようにしてもよい。実施の形態9は、近視進行抑制領域のスポットの分布密度(面積比)を変えた実施の形態である。
図12に示すように、C線あたりよりも上では、スポット3とスポット3以外の部分の面積比を「粗」にし(例えば0.3:1程度)、C線あたりよりも下では、スポット3とスポット3以外の部分の面積比をC線より上に対して相対的に「密」(例えば0.8:1程度)とすることが考えられる。
【0023】
<実施の形態10>
実施の形態10は近視進行抑制領域の多数のスポットを凸レンズではなく、粗面とした例である。実施の形態10では図13のように平面視において透明なレンズ基材に対して曇りガラス状の島状のスポット30が形成される。実施の形態10では例えば図2図4図6図7図10図11図12のような平面視におけるスポット3、7、12、16の分布位置と同じ位置にスポット30を配置した近視抑制レンズを形成することができる。多数のスポット30を二次元方向に連続的に間隔を空けて配置した近視進行抑制領域を有する近視抑制レンズ31は上記実施の形態1~9の近視抑制レンズと同様の効果を得ることができる。
【0024】
上記実施の形態は本発明の原理及びその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記各実施の形態におけるスポット3、7、12、16の形状、や分布状態は一例であって、他の形状や分布状態で実施してもよい。
・実施の形態4のトロイダル面を有するスポット12を他の実施の形態に適用して非点収差を軽減するようにしてもよい。
・実施の形態5のように下方をまばらにして近用領域を見やすくする構成を他の実施の形態に適用してもよい。
・上記各実施の形態ではそれぞれ同じ形状のスポット3、7、12、16で近視進行抑制領域6、11、15、19を構成するようにしていたが、必ずしも同じ形状でなくともよい。
・実施の形態6では近用領域以下に配置されるスポット3、7、12、16のプラス度数をそれより上のスポット3、7、12、16よりもプラス度数を小さくするようにしていたが、近用領域のプラス度数を同じにしてもあるいは近用領域内で更に徐々にプラス度数を小さくするようにしてもよい。
・実施の形態10は実施の形態1~9の凸レンズを曇りガラス状の粗面に変更した例であり、かつ粗面領域を島状に構成した例である。しかし、近視進行抑制領域を粗面で構成する場合にはこのように島状にしなくとも近視進行抑制領域全域を粗面で構成するようにしてもよい。例えば図14のように近視抑制レンズ35を視線が上下する領域(左右方向のレンズ径長さに対して20~30%程度の幅)を避けた左右両側位置を近視進行抑制領域36とした場合に、その左右の近視進行抑制領域32全域を曇りガラス状の粗面にしてもよい。
・スポット3、7、12、16以外の他の外形形状で島状の粗面領域を構成してもよい。
【0025】
本願発明は上記の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素、又は発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材とてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1、5、10、18、31、35…近視の進行を抑制するための眼鏡レンズ、3、7、12、16…凸レンズとしてのスポット、30…島状の粗面領域であるスポット、6、11、15、19、36…近視進行抑制領域。
図1
図2
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