(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100255
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】日射計
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20220628BHJP
G01W 1/12 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
G01J1/02 U
G01W1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021199044
(22)【出願日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】20216772.2
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521537427
【氏名又は名称】オーテーテー ハイドロメット ベスローテン ヴェンノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】OTT HydroMet B.V.
【住所又は居所原語表記】Delftechpark 36, 2628 XH Delft, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨープ メス
(72)【発明者】
【氏名】マルク アルベルト ニジュス コレバール
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル ババル
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA15
2G065AB02
2G065AB04
2G065AB05
2G065BA11
2G065BA37
2G065BB05
2G065BB27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】日射計の測定精度を向上させること。
【解決手段】日射計100は、ドームと、受光面22を含む、サーモパイルを用いたセンサー2と、日射計の外部からドームを通過する放射をサーモパイルを用いたセンサーの受光面に向けて拡散させるように構成された拡散板3と、サーモパイルを用いたセンサーによって測定される放射のスペクトル成分を変更するために、サーモパイルを用いたセンサーの受光面の前で放射の光路上に配置された少なくとも1つの光学フィルター4と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
日射計(100)であって、
ドーム(1)と、
受光面(22)を含む、サーモパイルを用いたセンサー(2)と、
前記日射計(100)の外部から前記ドーム(1)を通過する放射を、サーモパイルを用いたセンサー(2)の前記受光面(22)に向けて拡散させるように構成された拡散板(3)と、
前記サーモパイルを用いたセンサー(2)によって測定される前記放射のスペクトル成分を変更するために、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)の前記受光面(22)の前で前記放射の光路上に配置された少なくとも1つの光学フィルター(4)と、
を備える、ことを特徴とする日射計。
【請求項2】
請求項1に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)、および/または前記拡散板(3)、および/または前記ドーム(1)のスペクトル選択性を少なくとも部分的に補う、ことを特徴とする日射計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)、および/または前記拡散板(3)、および/または前記ドーム(1)の分光吸収率および分光透過率に基づくスペクトル選択性であって、約350nmから約1500nmまでの放射スペクトルの波長範囲において、平均値から約±3%の最大パーセント偏差を有するスペクトル選択性、が得られるように、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)によって測定される前記放射のスペクトル成分を変更する、ことを特徴とする日射計。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、約400nmよりも短いスペクトル波長に対する前記少なくとも1つの光学フィルター(4)の透過率が、約700nmよりも長いスペクトル波長に対する前記少なくとも1つの光学フィルター(4)の透過率よりも大きくなるように構成される、ことを特徴とする日射計。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、それぞれが所定の放射波長値または波長範囲に対して異なる屈折、透過、吸収、および/または反射の特性を有するように構成された1つ以上の層を含む、ことを特徴とする日射計。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記拡散板(3)と前記サーモパイルを用いたセンサー(2)の前記受光面(22)との間の前記光路上に配置される、ことを特徴とする日射計。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)の前記受光面(22)に実質的に面するように配置され、特に、前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)のアクティブブラックコーティングの表面に実質的に面するように配置され、および/または、前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)の前記アクティブブラックコーティングの材料に埋め込まれる、ことを特徴とする日射計。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記サーモパイルを用いたセンサー(2)は、ハウジング(23)内に配置され、前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記ハウジング(23)の窓(22a)を実質的に覆うように配置される、ことを特徴とする日射計。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、前記拡散板(3)の外面を少なくとも部分的に覆うように配置され、および/または、前記少なくとも1つの太陽光学フィルター(4)は、前記拡散板(3)の内側部分に配置される、ことを特徴とする日射計。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、特に前記ドーム(1)の前記内側表面(12)および/または前記外側表面(11)を少なくとも部分的に覆うように、前記ドーム(1)に配置される、ことを特徴とする日射計。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、1つまたは複数の真空蒸着誘電体金属層からなる、ことを特徴とする日射計。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、透過干渉フィルターである、ことを特徴とする日射計。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、反射フィルターであるか、または、前記少なくとも1つの光学フィルター(4)は、吸収フィルターである、ことを特徴とする日射計。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記サーモパイルを用いたセンサー(2)の前記受光面(22)に入射する前記放射をコリメートするように構成された少なくとも1つのコリメーターをさらに備える、ことを特徴とする日射計。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の日射計(100)であって、
前記拡散板(3)と前記サーモパイルを用いたセンサー(2)との間の光路の距離は、前記サーモパイルを用いたセンサー(2)の前記受光面(22)上で前記拡散板(3)によって拡散される前記放射が実質的に円錐形状を有するように、設定される、ことを特徴とする日射計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射量、例えば、太陽放射量を測定するための日射計に関する。
【背景技術】
【0002】
日射計は、表面に入射する日射量、例えば、太陽放射量を検出する測定器である。
日射計は、日射量測定の動作原理により、サーモパイル(熱電堆)を用いたセンサー日射計とシリコン半導体を用いた日射計との2つの異なるグループに分類できる。
【0003】
サーモパイル(熱電堆)を用いたセンサー日射計では、サーモパイルを用いたセンサーによって日射量が測定され、約180度の視野角から、実質的に広い帯域で放射束密度を測定するように設計がされる。サーモパイルを用いたセンサーは、透明なドーム、特にガラス製のドームの下方に配置され、ガラス製のドームは、約180度の視野を実質的に維持しながら、約190~約4000ナノメートル、特に約300~約2800ナノメートルのスペクトル応答を制限する。ガラスドームは、それと同時に、サーモパイルを用いたセンサーを外部環境から保護する機能を有している。
【0004】
日射計は、他のシステム、特に、ソーラーシミュレーター、太陽光発電システム、気象観測所と組み合わせて使用することができる。これらのシステムでは、日射計で測定された日射量は、システムの他のパラメータ及び/又は性能、例えば太陽光発電モジュールの有効電力などを決定するために使用される。したがって、日射計の測定精度は、この測定器の最も重要な要素の1つである。特に、何年にもわたって数パーセントの変化が記録されるような気候関連のアプリケーションでは、日射計の測定精度はさらに最重要な要素となる。
【0005】
日射計は、スペクトル感度(スペクトル応答)の程度、すなわち、日射計が放射スペクトルの特定の範囲内の放射を感知する能力によって特徴付けられる。日射計で測定される放射スペクトルは、多くの要因、特に、放射(例えば、太陽放射)の入射角(太陽角)や大気の状態、すなわち雲やエアロゾルの存在によって影響を受ける(そのために変化することがある)。
【0006】
高い測定精度を実現するために、日射計のスペクトル応答(光感度)は、放射スペクトル(光スペクトル)の異なる範囲に対して可能な限り一定となることが好ましい。異なる光スペクトルに対する日射計のスペクトル応答の分類は、規格ISO9060:2018によって具体的に規定されている。
特に、実質的に一定の日射計のスペクトル応答を実現するために、既知のサーモパイルを用いた日射計は、ブラックコーティングされたサーモパイルセンサーとガラスドームを備えている。ブラックコーティングされたサーモパイルセンサーは、すべての放射(例えば、太陽放射)を実質的に吸収することができ、したがって、約300~約50,000nmの範囲の実質的にフラット(平坦)なスペクトルを得ることができる。ガラスドームは、180度の視野を実質的に維持しながら、約300~約2800nmのスペクトル応答を制限し、約2800nm以上の部分をカットする。
【0007】
しかし、マイクロサーモパイルを用いたセンサーを拡散板と組み合わせて配置した日射計では、実質的に一定の日射計のスペクトル応答を実現できない。
マイクロサーモパイルを用いたセンサーは、応答時間がより短く、熱挙動がより安定しているのが特徴である。しかし、必要な視野を確保するためには、マイクロサーモパイルを用いたセンサーに光拡散板を組み合わせる必要がある。拡散板は、そこに入射した光を放射センサーの受信面に向けて拡散および透過するように構成された光学素子(光拡散板)である。光拡散板は、マイクロサーモパイルを用いたセンサーの受光面に実質的に対向するように、マイクロサーモパイルを用いたセンサーの上方に配置される。これにより,日射計の外部から光拡散板に入射した光を,マイクロサーモパイルを用いたセンサーの受光面で拡散させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、マイクロサーモパイルを用いたセンサーを光拡散板と組み合わせると、波長によるスペクトル応答のかなりの変動が発生する。言い換えると、組み合わされたスペクトル応答(サーモパイルを用いたセンサーのスペクトル応答と拡散板のスペクトル応答との組み合わせ)は、関連するスペクトルの波長によって大幅に変化する。
その結果、光拡散板を備えた日射計の測定精度に悪影響を及ぼすことになる。
従って、光拡散板を備えた日射計の測定精度の向上が求められている。
本発明の目的は、日射計の測定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、独立請求項の特徴によって解決され、特定の実施形態が従属請求項の対象となる。
本発明の一態様によれば、日射計であって、ドームと、受光面を有するサーモパイルを用いたセンサーと、日射計の外部からドームを通過する放射をサーモパイルを用いたセンサーの受光面に向けて拡散させるように構成された拡散板と、サーモパイルを用いたセンサーによって測定される放射のスペクトル成分を変更するために、サーモパイルを用いたセンサーの受光面の前で放射の光路に配置された少なくとも1つの光学フィルターとを備える日射計が提供される。
具体的には、放射の光路上、特にサーモパイルを用いたセンサーの受光面の前に配置された光学フィルターにより、ドームおよび/または拡散板を通過し、サーモパイルを用いたセンサーで測定される放射のスペクトル成分を変更することができる。特に、ドームおよび/または拡散板に入射する放射は、太陽放射であってもよい。その結果、実質的にスペクトルのフラットな応答を得ることができる。言い換えれば、日射計は、実質的に不変のスペクトル応答を有する。特に、日射計のスペクトル応答は、光路に光拡散板が含まれていることによって生じる変動、および/または、サーモパイルを用いたセンサーのスペクトル選択性によって生じる変動、による影響を受けない。さらに特に、光学フィルターは、ドームのフレネル反射損失を(少なくとも部分的に)補う。
【0010】
さらに、光学フィルターが上記のようには配置されていない場合、日射計の測定出力は、照射のレベルに加えて、太陽天頂角(太陽の角度)の変化や、雲の存在などの大気条件に起因する照射スペクトルの変化にも依存する。具体的には、上記による光学フィルターは、異なる特別なスペクトル条件、特に風、温度、雨等の大気条件等の下で、日射計の応答を実質的に不変にすることができる。言い換えれば、本開示は、不変のスペクトル応答を有するサーモパイルを用いた日射計を提供する。特に、スペクトル応答は、太陽放射のスペクトルに影響を与える、異なる太陽条件および/または大気条件(1日の時間、太陽の角度、晴天または曇天、日射計のドームの汚れの程度など)の下で不変であってもよい。より具体的には,日射計の測定精度が向上する。
【0011】
特に、少なくとも1つの光学フィルターは、サーモパイルを用いたセンサーおよび/または拡散板および/またはドーム(すなわち、サーモパイルを用いたセンサー、拡散板、またはドーム、または、サーモパイルを用いたセンサーと拡散板を組み合わせたもの、および/またはドーム)のスペクトル選択性を少なくとも部分的に補う。
つまり、サーモパイルセンサーおよび/または拡散板のスペクトル選択性を少なくとも部分的に補う光学フィルターを用いることで,日射計を、入射放射のスペクトル成分の変化,特に、入射太陽放射のスペクトル成分の変化をもたらす大気条件の変化に対して実質的に不変とすることができる。これにより、日射計の測定精度が向上する。
【0012】
特に、少なくとも1つの光学フィルターは、サーモパイルを用いたセンサーによって測定される放射(太陽放射)のスペクトル成分を、放射(太陽放射)スペクトルの波長範囲が約350nmから約1500nmの間で、サーモパイルを用いたセンサー、および/または拡散板、および/またはドーム、の分光吸収率および分光透過率に基づくスペクトル選択性が平均値から約±3%の最大パーセント偏差を持つように変更する。
つまり、上記構成の光学フィルターを用いることで、日射計の応答がスペクトルのフラットなものとなり、特に平均値から最大パーセント偏差の範囲内に収まるようになる。これにより、日射計の測定精度が向上する。
【0013】
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、約400nmよりも短いスペクトル波長に対応する少なくとも1つの光学フィルターの透過率が、約700nmよりも長いスペクトル波長に対応する少なくとも1つの光学フィルターの透過率よりも大きくなるように構成されていてもよい。
具体的には、上記の構成を有する光学フィルターは、特に、拡散板および/またはサーモパイルを用いたセンサーのスペクトル特性を少なくとも補うことにより、日射計の応答を実質的にスペクトルのフラット(または少なくともフラット)なものとする。これにより、日射計の測定精度が向上する。
【0014】
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、1つ以上の層からなり、各層は、放射(太陽放射)の所定の波長値または波長範囲に対して、異なる屈折、透過、吸収、および/または反射特性を有するように構成されている。
具体的には、上記構成の光学フィルターを用いることで、特に拡散板および/またはサーモパイルを用いたセンサーのスペクトル特性を補うことにより、日射計の応答を実質的にスペクトルのフラットなものとすることができる。これにより、日射計の測定精度が向上する。
【0015】
特に、少なくとも1つの光学フィルターは、拡散板とサーモパイルを用いたセンサーの受光面との間の光路上に配置されてもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、サーモパイルを用いたセンサーの受信面に実質的に面するように配置されてもよく、特に、少なくとも1つの光学フィルターは、サーモパイルを用いたセンサーのアクティブブラックコーティングの表面に実質的に面するように配置されてもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、サーモパイルを用いたセンサーのアクティブブラックコーティングの材料に埋め込まれる。
さらに特に、サーモパイルを用いたセンサーは、少なくとも部分的にハウジング内に置かれてもよく、少なくとも1つの光学フィルターは、ハウジングの窓を実質的に覆うように配置されてもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、拡散板の外面を少なくとも部分的に覆うように配置されてもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、拡散板の内側部分に配置されてもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、ドームの内側表面および/または外側表面を少なくとも部分的に覆うように配置されてもよい。
【0016】
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、1つ以上の真空蒸着された誘電体金属層を含んでもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、透過型干渉フィルターであってもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、反射フィルターであってもよい。
さらに特に、少なくとも1つの光学フィルターは、吸収フィルターであってもよい。
さらに特に、日射計は、サーモパイルを用いたセンサーの受光面に入射する放射(太陽放射)をコリメートする(平行にする)ように構成された少なくとも1つのコリメーターをさらに備えてもよい。
具体的には,サーモパイルを用いたセンサーの受光面に入射する放射(太陽放射)をコリメートするように構成されたコリメーターにより,日射計内で放射(太陽放射)がたどる光路を変更することができる。つまり、放射(太陽放射)の透過を最適化することができる。
【0017】
さらに特に、拡散板とサーモパイルを用いたセンサーとの間の光路の距離を、拡散板によってサーモパイルを用いたセンサーの受光面に拡散される放射(太陽放射)が実質的に円錐形となるように設定してもよい。
【0018】
本発明のこれらおよびその他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を通して、より明らかになるであろう。実施形態が別々に記載されていても、その単一の特徴は追加の実施形態に組み合わせることができることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一態様による日射計の軸測図である。
【
図2】
図1に示した日射計の一部を示す軸測分解図である。
【
図5】本発明による光学フィルターの異なる配置を示す断面側面図である。
【
図6】本発明による光学フィルターの異なる配置を示す断面側面図である。
【
図7】本発明による光学フィルターの異なる配置を示す断面側面図である。
【
図8】本発明による光学フィルターの異なる配置を示す断面側面図である。
【
図9】光拡散板のスペクトル選択性を示す図である。
【
図10】フィルターのスペクトル選択性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記の図を参照すると、本発明による日射計は、その全体が参照番号100で示される。
図1および
図5~8を参照して、本開示による日射計は、その全体が参照番号100で示される。日射計100は、ドーム1を備えている。ドーム1は、日射計100の外側のドームであってもよい。言い換えれば、日射計100に取り付けられたとき、ドーム1は日射計100の最外周のドーム1を形成してもよい。ドーム1が日射計100の外側の透明なドーム1である場合、ドーム1の外側表面11は、実質的に日射計100の外部の環境13に面している。これに対し、ドーム1の内側表面12は、実質的に空洞10を取り囲んでいる。特に、空洞10は、ドーム1の下方にある空気の空洞である。したがって、ドーム1の内側表面12は、実質的に空洞10に面している。空洞10は、空洞10を取り囲む空間に実質的に対応している。好ましくは、空洞10は、実質的に半球状の形状を有してもよく、実質的に円形の形状を有する底部開口14を含む。
【0021】
ドーム1は、縁部15を含んでもよい。縁部15は、ドーム1のリムを実質的に形成する周囲の縁部であってもよい。縁部15は、好ましくは実質的に環状の形状の表面を有してもよい。特に、外側表面11の半径である外部半径と、内側表面12の半径である内部半径との差は、ドーム1の厚さに実質的に対応する。
【0022】
ドーム1は、放射(例えば、太陽光)に対して少なくとも部分的に透明である。
特に、放射は、太陽放射であってもよい。特に、ドーム1は、特に180度の視野を実質的に維持しながら、スペクトル応答を約190~約4000ナノメートル(nm)、好ましくは約300~約2800ナノメートル(nm)に制限するように構成される。ドーム1の透明度は、特に、関連するスペクトル範囲の入射放射(例えば、太陽放射または太陽光)の少なくとも約60%、厳密には少なくとも約70%がそこを通過するようなものであってもよい。言い換えれば、ドーム1は、放射スペクトルの少なくとも一部が、外部環境13から、外側表面11を通り、ドーム1を形成する材料を通り、内側表面12を通って、空洞10に向かって透過するように構成される。空洞10では、以下で詳細に説明するように、放射を測定することができる。
【0023】
ドーム1は、放射(特に、太陽放射または太陽光)の透過を可能にする任意の適切な少なくとも部分的に透明な材料で作られてもよい。特に、ドーム1は、日射計100の測定面を物理的に保護すると同時に、(ほとんどの)光に対して透明である(日射計100が検出することを意図する放射(例えば、太陽放射)のスペクトルに対して少なくとも部分的に透明である)ような物理的/化学的特性を有する任意の材料で作られてもよい。例えば、ドーム1は、ガラス、石英、またはサファイアで作られてもよい。あるいは、ドーム1は、透明な熱可塑性ポリマー材料、すなわち、アクリル、アクリルガラス、プレキシガラスとしても知られるポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)で作られてもよい。
【0024】
図1~
図8を参照すると、日射計100は、日射計ハウジング6を備えている。日射計ハウジング6は、日射計100の構成要素、例えば、サーモパイルを用いたセンサー2、拡散板3、光学フィルター4、および/または、制御ユニット5を収容するように構成された容器であってもよいし、あるいは、これらで構成されてもよい。以下、これらの構成要素とその機能について、より詳細に説明する。日射計ハウジング6は、日射計ハウジング6を支持面S上で支持するための1つ以上のレベリングフィート(水平調整脚)61を備えてもよい。レベリングフィート61は、日射計ハウジング6を支持面S上で水平にすることもできる。
【0025】
図1~
図4に示すように、日射計ハウジング6は、第1(外側)部分62と、第2(内側)部分63とを含んでもよい。第1部分62は、第2部分63を覆うように、ひいては第2部分63を日射計100の外部の環境13から保護するように配置された外側カバー部分であってもよい。特に、第1部分62は、少なくとも部分的に、第2部分63を囲むように構成されてもよい。第1部分62は、第2部分63に、1つまたは複数のクリップによって取り外し可能に接続された日覆いであってもよい。
【0026】
図2に示すように、第2部分63は、サーモパイルを用いたセンサー2、拡散板3、および/または、光学フィルター4を支持するように構成されてもよい。特に、第2部分63は、サーモパイルを用いたセンサー2を支持するように構成された支持板64を含んでもよい。
サーモパイルを用いたセンサー2は、支持板64に直接、または間接的に接続されてもよい。次に、支持板64は、サーモパイルを用いたセンサー2をその間に囲むように、第2部分63に直接、または間接的に着脱可能に結合されてもよい。具体的には、サーモパイルを用いたセンサー2は、ハウジング6の第2部分63と支持板64とによって囲まれた空洞に置かれてもよい。
また、第1部分62の上面は、
図1および
図5~
図8に示すように、ドーム1がハウジング6に接続できるように、ドーム1の縁部15に直接または間接的に取り外し可能に結合されてもよい。
【0027】
図2、
図4、
図5~
図8に示すように、日射計100は、サーモパイルを用いたセンサー2を備える。サーモパイルを用いたセンサー2は、日射計100に入射する放射を測定するように構成された測定センサーである。特に、日射計100に入射する放射は、太陽放射であってもよい。サーモパイルを用いたセンサー2は、とりわけ、実質的に180度の視野角から放射束密度の広い帯域を測定するのに特に適したサーモパイルを基にしたものであってよい。サーモパイルは、特に、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する電子デバイスであり、直列または並列に接続された複数の熱電対からなるものである。サーモパイルは、異種金属や熱電対が温度差にさらされると電圧が発生するという熱電効果の原理を利用している。熱電対は、それらの接合点から熱電対の出力電圧が測定される点までの温度差を測定することで動作する。閉回路が複数の金属で構成されていて、接合部の間、および、ある金属から別の金属への移行のポイント間に温度差があると、温度の異なる接合部の間の電位差によって生じるかのように電流が発生する。つまり、本開示の日射計100は、特にサーモパイル型日射計(熱電式日射計とも呼ばれる)である。
【0028】
具体的には、サーモパイル型日射計100は、特に約300~約2800nmの光を、ほぼフラットなスペクトル感度で検出する。具体的には、サーモパイルを用いたセンサー2は、そこに入射する放射(例えば、太陽放射、またはドーム1および/または拡散板3などのその前に配された光学要素によってそのスペクトル成分が変更された修正太陽放射など)を(特にすべて)吸収するブラックコーティングを含む。熱電対のアクティブ(ホット)ジャンクションは、ブラックコーティングの表面の下方に(またはそれに対応して、またはそれに隣接して)配されており、ブラックコーティングから吸収された放射によって加熱される。熱電対のパッシブ(コールド)ジャンクションは、放射から(特に完全に)保護されており、特にヒートシンクとして機能する日射計ハウジング6と熱的に接触している。特に、熱電対のパッシブ(コールド)ジャンクションは、日射計ハウジング6に熱的に接触可能なサーモパイルハウジング23と接触しており、日射計ハウジング6に対して、または日射計ハウジング6を介して、熱を実質的に放散させるようになっている。これにより、日陰で温度を測定する際の黄変や減衰による変動を特に低減または防止し、日射計100による太陽放射の測定に支障をきたさないようにすることができる。
【0029】
特に、サーモパイルを用いたセンサー2は、マイクロサーモパイルを用いたセンサーであってもよい。特に、サーモパイルは、約1mm~約20mmの範囲内、または約10mmよりも小さい直径を有するTO(トランジスタアウトライン)ハウジング内に配置されてもよい。特に、サーモパイルを用いたセンサー2のTOハウジングおよび/またはアクティブコンポーネントは、マイクロ機械加工されてもよい。
【0030】
図2および
図7に示すように、サーモパイルを用いたセンサー2は、受光面22と、第2対向面(底面)21とを備える。サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22は、ブラックコーティング面を含んでもよいし、それに相当するものであってもよい。第2面21は、実質的に支持板64に面している。特に、第2面21は、サーモパイルを用いたセンサー2が支持板64に直接、または間接的に支持されるように、支持板64に直接、または間接的に接してもよい。
受光面22は、日射計100に入射する放射を実質的に受けるように構成されている。特に、日射計100に入射する放射は、太陽放射であってもよい。特に、日射計100に入射する太陽放射は、少なくとも部分的にドーム1を透過し、拡散板3によって、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22上で拡散される。したがって、拡散板3は、特に、ドーム1を通過した放射を、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22上で拡散させるように配置される。特に、サーモパイルを用いたセンサー2と拡散板3とは、互いの上に積み重ねられてもよい。
【0031】
図2に示すように、サーモパイルを用いたセンサー2は、窓22aを備えたハウジング23内に配置されてもよい。ハウジング23は、サーモパイルを用いたセンサー2を少なくとも部分的に一体的に収容するように構成された空洞を有するか、または画定してもよい。ハウジング23の窓22aは、底面側で、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22と実質的に向き合うように配置されてもよい。特に、センサーの性能を低下させ得る熱漏れを特に防止するために、受光面22と窓22aとの間に隙間が存在してもよい。ハウジング23の窓22aは、上面側で、拡散板3の第2(底)面32と実質的に向き合うように配置されてもよい。特に、拡散板3の第2(底)面32と窓22aとの間には、隙間が存在してもよい。言い換えれば、ハウジング23の窓22aは、拡散板3の第2(底)面32と、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22との間に、接触しないように、実質的に配置されてもよい。ハウジング23の窓22aは、放射(光)に対して少なくとも部分的に透明である。特に、ハウジング23の窓22aは、関連するスペクトル範囲の入射放射(光)の少なくとも約60%、より厳密には少なくとも約70%がその中を通過するような透過性を有してもよい。したがって、ハウジング23の窓22aは、以下で詳細に説明する放射の光路の一部でもあってよい。
【0032】
図1~
図8に示すように、日射計100は、拡散板3を備える。拡散板3は、日射計100の外部からであって、ドーム1を通過した放射(例えば、太陽放射や太陽光)をサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に向けて拡散させるように構成される。したがって、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射した放射は、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定することができる。
拡散板3は、特に拡散板3が日射計100に搭載されたときに、その有する入射第1面/上面31がドーム1の空洞10に実質的に対向する光学素子である。言い換えれば、拡散板3は、入射面31が空洞10内のドーム1の内側表面12に実質的に面するように配置される。特に、拡散板3は、拡散板3の入射面31が実質的にドーム1の内側表面12を向くように、日射計ハウジング6の第2部分63に設けられた貫通開口部65内に配置されてもよい。拡散板3は、入射第1面/上面31の実質的に反対側にある第2(底)面32と、少なくとも1つの側面33とを備える。第2面32は、拡散板3が日射計100に取り付けられたときに、入射面31に対して実質的に反対側にあり、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22と実質的に向き合う。言い換えれば、拡散板3は、第2底面32がサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22と実質的に向き合うように配置される。なお、入射面31は、平坦な円弧状の面、円錐状の面、凸面、凹面、逆円錐状の面のいずれであってもよい。特に、拡散板3は、軸対称、すなわち、拡散板3の長手方向の軸X3を中心に対称であってもよい。言い換えれば、拡散板3は、長手方向の軸線X3を有する回転対称体であってもよい。例えば、拡散板3は、実質的に円筒状の形状の側面33を有し、かつ/または、円錐状の形状の入射第1面/上面31を有してもよい。
【0033】
図2、
図4~
図8に示すように、拡散板3は、第2面32が実質的にサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22の方を向くように、一方、入射面31が実質的にドーム1の内側表面12の方を向くように配置してもよい。
したがって、ドーム1外部の放射または光(または太陽放射)は、ドーム1を通って空洞10に入る。空洞10では、放射または光は、拡散板3の入射面31に入射し、
図4に示すように、サーモパイルを用いたセンサー2、特にサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に向かって、拡散板3を少なくともその一部が透過する。サーモパイルを用いたセンサー2に到達する放射または光(例えば、太陽放射)は、このようにして、後者によって測定することができる。
拡散板3は、その上に入射した光を拡散して透過させることができる任意の材料を含むか、又はそれから作られてもよい。例えば、拡散板3は、気泡石英(bubble quartz)などの少なくとも部分的に多孔質の材料を含むか、又はそれから作られてもよい。
【0034】
図4に示すように、日射計100は、少なくとも1つの制御ユニット5を備えてもよい。制御ユニット5は、サーモパイルを用いたセンサー2に動作可能に接続されてもよい。制御ユニット5は、コントローラ、好ましくはマイクロコントローラであってもよい。制御ユニット5は、日射計ハウジング6内に配置されてもよい。
特に、制御ユニット5は、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定された放射出力(太陽放射出力)を、補正係数に基づいて補正するように構成されてもよい。言い換えれば、制御ユニット5は、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定された放射の後処理補正を行うように構成されてもよい。具体的には、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定された放射出力を、補正係数に基づいて補正することで、後処理補正を行うことができる。したがって、より正確な日射測定を実現することができる。
【0035】
図2、
図4、
図5~
図8を参照すると、日射計100は、少なくとも1つの光学フィルター4をさらに備える。特に、光学フィルター4は、太陽放射光学フィルターであってもよい。
光学フィルター4は、放射の光路上、特にサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22の前方に配置される。ここで、光路とは、放射(太陽放射)が日射計の各構成要素を通過する際に、そしてサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する前にたどる経路のことである。その結果、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射は、光学フィルター4によって成分変更をされ得る。具体的には、サーモパイルを用いたセンサー2に入射する、またはサーモパイルを用いたセンサー2によって測定される、放射のスペクトル成分が光学フィルター4によって変更されることとなる。
【0036】
放射(太陽放射)がたどる光路は、(日射計100の外部の環境13から出発して)ドーム1の外側表面11、ドーム1の内側材料、ドーム1の内側表面12、空洞10、拡散板3の入射面31、拡散板3の内側材料、拡散板3の第2底面32、ハウジング23の窓22aおよび/またはサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22を含んでもよい。言い換えれば、日射計100外部の放射、特に太陽放射であって、日射計100に入射する放射は、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に到達する前に、上述の要素および/または表面を通過してもよい。
特に、放射の「スペクトル成分」とは、太陽電磁放射(太陽光)の周波数の範囲(または波長の範囲)における太陽放射のエネルギー成分を意味する。特に、放射のスペクトル成分を変更することは、太陽放射がサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する前に、太陽放射の周波数範囲(または波長範囲)における太陽放射束密度を変更することを意味する。
【0037】
光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2、および/または拡散板3、および/またはドーム1のスペクトル選択性を少なくとも部分的に補うように構成されてもよい。言い換えれば、サーモパイルを用いたセンサー2および/または拡散板3は、拡散板3に関して
図9に示すように、(太陽)放射スペクトルの波長に応じて変化するスペクトル選択性またはスペクトル透過特性を有していてもよい。例えば、サーモパイルを用いたセンサー2および/または拡散板3は、太陽放射スペクトルのある波長範囲内の太陽放射に対してより大きな透過特性(全透過率)を示し、太陽放射スペクトルの異なる波長範囲内の太陽放射に対して異なる、特に低い透過特性(全透過率)を示してもよい。言い換えれば、サーモパイルを用いたセンサー2の透過特性、拡散板3の透過特性、および/またはドーム1の透過特性、および/またはこれらの組み合わせ(拡散板3、サーモパイルを用いたセンサー2、および/またはドーム1の複合したスペクトル選択性またはスペクトル透過特性)は、太陽放射スペクトルの関連する波長範囲内では実質的に一定ではないということである。したがって、フラットなスペクトル応答または実質的にフラットなスペクトル応答を実現するために、光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2および/または拡散板3のスペクトル選択性を少なくとも部分的に補うように構成されてもよい。言い換えれば、光学フィルター4は、特に所定の(予め定められた、または予め定めることが可能な)波長範囲内で、サーモパイルを用いたセンサー2および/または拡散板3のスペクトル選択性またはスペクトル透過特性と実質的に反対または相補的なスペクトル選択性またはスペクトル透過特性を有するように構成されてもよい。さらに言うと、スペクトル選択性またはスペクトル透過特性は、約350nmから約1500nmの範囲の太陽放射スペクトルの波長範囲内にあってもよい。具体的には、光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2と拡散板3との両方の組み合わせのスペクトル選択性を少なくとも部分的に補う。
【0038】
特に、光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2および/または拡散板3の分光吸収率および/または分光透過率に基づくスペクトル選択性が、特にISO 9060:2018で要求されているように、約350nmから約1500nmまでの放射スペクトルの波長範囲において平均値から約±3%の最大パーセント偏差を有するように、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定された放射(例えば、太陽放射)のスペクトル成分を修正(補正)するように構成されてもよい。
さらに言うと、特にスペクトル選択性(またはスペクトル透過特性)は、サーモパイルを用いたセンサー2および/または拡散板3および/またはドーム1の、具体的にはサーモパイルを用いたセンサー2と拡散板3との両方の組み合わせの分光吸収率と分光透過率の積に比例する。すなわち、サーモパイルを用いたセンサー2と拡散板3との組み合わせのスペクトル選択性または特性は、放射スペクトル(太陽放射スペクトル)の波長範囲である約350nm~約1500nmの平均値から約±3%を超えないようにすべきである。
したがって、放射(太陽放射)の光路上に光学フィルター4を配置し、サーモパイルを用いたセンサー2、拡散板3、またはサーモパイルを用いたセンサー2と拡散板3の組み合わせ、のスペクトル選択性を少なくとも部分的に補うように、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定された放射のスペクトル成分を変更するように構成することで、約350nmから約1500nmの放射スペクトルの波長範囲において、平均値から約±3%の上述の最大パーセント偏差を達成することが可能である。
【0039】
さらに具体的には、放射(例えば、太陽放射)の光路上に光学フィルター4を配置し、これにより、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定された放射のスペクトル成分を変更するように構成されることによって、特に約280nmから約3500nmの間の全範囲にわたって制約をもたらすスペクトルエラーを標準的なスペクトルに対して0.5%未満とすることが可能である。
【0040】
特に、
図10に示すように、光学フィルター4は、約400nmよりも短いスペクトル波長に対する光学フィルター4の(全)透過率が、約700nmよりも長いスペクトル波長に対する光学フィルター4の(全)透過率よりも大きくなるように構成されてもよい。言い換えると、光学フィルター4は、
図10に示すように、約400nm(紫外光)よりも短いスペクトル波長を有する放射(例えば、太陽放射)を多く透過させる一方で、約700nm(赤外光)よりも長いスペクトル波長を有する放射をわずかに透過させるように構成されてもよい。
具体的には、
図10に示すように、光学フィルター4は、赤外域内の放射の透過をほぼ抑制、あるいは少なくとも低減する一方で、紫外域内の放射の透過を高めるように構成される。
少なくとも1つの光学フィルター4は、1つまたは複数の層を有してもよく、各層は、所定の放射(太陽放射)の波長値または波長範囲に対して、実質的に異なる透過特性および/または反射特性を有するように構成される。特に、1つまたは複数の層は、金属材料および/または非金属材料の1つ以上の層を含んでもよく、各層は、所定の放射波長値または放射範囲に対して異なる透過特性および/または反射特性を有する。さらに特に、1つまたは複数の層は、少なくとも1つの光学フィルター4の所望のスペクトル選択性またはスペクトル透過特性が達成されるように選択されてもよい。特に、サーモパイルを用いたセンサー2、および/または拡散板3、および/またはドーム1、および/またはそれらの組み合わせ、のスペクトル選択性を補うように、1つまたは複数の層を選択してもよい。
【0041】
特に、少なくとも1つの光学フィルター4は、透過干渉フィルターであってもよい。透過干渉フィルターは、ある周波数(波長)の範囲で入射放射の一定量を透過させるように構成された1つ以上の薄い誘電体層を含む。特に、透過干渉フィルターは、対象となるすべての波長に対して吸収係数をほぼゼロに維持しながら、1つ以上のスペクトルバンドまたはラインを透過させる光学フィルターであってよい。特に、透過フィルターは、異なる透過率特性を有する誘電体(金属)材料の複数の薄い層を含んでもよい。特に、透過フィルターは、波長選択型でもよい。
特に、少なくとも1つの光学フィルター4は、反射フィルターであってもよい。さらに言えば、反射フィルターは、対象となるすべての波長に対して吸収係数をほぼゼロに維持しながら、1つ以上のスペクトルバンドまたはラインを反射し、他を透過する光学フィルターであってよい。特に、反射フィルターは、異なる屈折率を有する誘電体(金属)材料の複数の薄い層を含んでもよい。特に、薄膜の境界での入射波と反射波の間に起こる干渉効果から、フィルターは波長選択型でもよい。
特に、反射フィルターは、容易に製造することができ、かつ良好なフィルター性能を提供できる。
特に、少なくとも1つの光学フィルター4は、吸収フィルターであってもよい。特に、吸収フィルターは、1つ以上のスペクトルバンドまたはラインを吸収する一方で、対象となるすべての波長を透過および/または反射させる光学フィルターであってよい。特に、吸収フィルターは、異なる吸収特性を有する複数の誘電体(金属)材料の薄い層を含んでもよい。特に、吸収フィルターは波長選択型でもよい。
なお、光学フィルター4は、透過フィルター、反射フィルター、および/または吸収フィルターから選ばれる1つまたは複数のフィルターを含んでもよいことを理解すべきである。
【0042】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つの光学フィルター4は、1つ以上の真空蒸着された誘電体金属層を含んでよい。言い換えれば、少なくとも1つの光学フィルター4は、日射計100の1つまたは複数の構成要素、例えば、拡散板3、サーモパイルを用いたセンサー2のハウジング23の窓22a、ドーム1の内側表面12、および/またはサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22、の上に、層として、または複数の層として真空蒸着されてもよい。
図5~
図8に示すように、光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射(太陽放射)のスペクトル成分を変更するように、光路の異なる位置に配置されてもよい。光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2によって測定される放射のスペクトル成分の所望の変更(特に、少なくとも部分的に補うこと)を達成するために、光路の異なる位置に同時に配置されてもよいことを理解すべきである。
【0043】
特に、
図2および
図4に示すように、少なくとも1つの光学フィルター4は、光路上、具体的には、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22との間に配置されてもよい。言い換えれば、光学フィルター4は、光路のうち、拡散板3、特に拡散板3の第2底面とサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22との間の位置に配置されてもよい。
さらに言えば、光学フィルター4は、一方の側では拡散板3の第2面32と実質的に向き合い、反対側ではサーモパイルを用いたセンサー2のハウジング23と実質的に向き合うように配置されてもよい。具体的には、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間に少なくとも1つの光学フィルター4を配置することで、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射(太陽放射)のスペクトル成分を光学フィルター4によって変更することができる。
【0044】
図2に示すように、日射計100は、フィルター支持要素7を含んでもよい。フィルター支持要素7は、サーモパイルを用いたセンサー2を、実質的に、少なくとも部分的に、取り囲むように構成されてもよい。
サーモパイルを用いたセンサー2がハウジング25を含む場合、フィルター支持要素7は、サーモパイルを用いたセンサー2のハウジング25を、実質的に、少なくとも部分的に、取り囲むように構成されてもよい。
具体的には、フィルター支持要素7は、サーモパイルを用いたセンサー2の(またはサーモパイルを用いたセンサー2のハウジング25の)外部形状と実質的に相補的な形状を有する貫通開口部70を含んでもよい。例えば、貫通開口部70は、円形の形状に形成されていてもよい。
フィルター支持要素7は、ベース部71を含んでもよい。特に、ベース部71は、フランジのような形状であってもよい。具体的には、ベース部71は、少なくとも1つの光学フィルター4を日射計ハウジング6内に安定して支持するように、支持板64に直接、または間接的に接触するように構成されてもよい。
特に、光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2に対し、フィルター支持要素7によって配置されても、および/または固定的に支持されてもよい。
フィルター支持要素7は、サーモパイルを用いたセンサー2、光学フィルター4および/または日射計ハウジング6の第2部分63(特に拡散板3の取り付け)を互いに適切に配置するように構成されてもよい。
フィルター支持要素7は、支持板64および/またはサーモパイルを用いたセンサー2に取り外し可能に結合されてもよい。サーモパイルを用いたセンサー2は、フィルター支持要素7の貫通開口部70内に密に嵌合し得る。
フィルター支持要素7は、溝72を含んでもよい。溝72は、光学フィルター4を取り外し可能に支持するように構成されてもよい。特に、溝72は、光学フィルター4の外周縁に対応する形状を有してもよい。
【0045】
図2に示すように、溝72は、貫通開口部70の周縁に配置してもよい。したがって、フィルター支持要素7は、光学フィルター4を取り外し可能に支持しながら、光学フィルター4がサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に対して実質的に中央に置かれるように、サーモパイルを用いたセンサー2に結合されてもよい。
特に、フィルター支持要素7は、光学フィルター4を、拡散板3の第2底面と、サーモパイルを用いたセンサー2との間に支持するように構成されてもよい。
【0046】
また、
図5に示すように、光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2のハウジング23の窓22aを実質的に覆うように配置されてもよい。言い換えれば、サーモパイルを用いたセンサー2がハウジング23内に配置されている場合、光学フィルター4はハウジング23の窓22aを実質的に覆うように配置されてもよい。具体的には、少なくとも1つの光学フィルター4をハウジング23の窓22aを覆うように配置することで、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射(例えば、太陽放射)のスペクトル成分を光学フィルター4によって変更することができる。
【0047】
図6に示すように、光学フィルター4は、拡散板3の外面を少なくとも部分的に覆うように配置されてもよい。特に、光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射のスペクトル成分を光学フィルター4によって変更できるように、拡散板3の入射面31、第2底面32および/または側面33を少なくとも部分的に覆うように配置されてもよい。
さらに言うと、光学フィルター4は、拡散板3の内側の部分にも配置されてよく、つまり、光学フィルター4は、拡散板3の内側の層として構成されてもよい。具体的には、少なくとも1つの光学フィルター4を、拡散板3を少なくとも部分的に覆うように配置することで、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射のスペクトル成分を光学フィルター4によって変更することができる。
また、
図7に示すように、光学フィルター4は、特にサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に直接接触することなく、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に実質的に(少なくとも部分的に)面するように配置されてもよい。さらに特に、光学フィルター4は、特にサーモパイルを用いたセンサー2のアクティブブラックコーティングに直接接触することなく、サーモパイルを用いたセンサー2のアクティブブラックコーティングの表面に実質的に面するように配置されてもよい。特に、少なくとも1つの光学フィルター4は、サーモパイルを用いたセンサー2のアクティブブラックコーティングの材料に埋め込まれてもよい。具体的には、少なくとも1つの光学フィルター4は、アクティブブラックコーティングを形成する材料の1つまたは複数の層として、アクティブブラックコーティングに埋め込まれてもよい。
【0048】
一態様(図示せず)によれば、少なくとも1つの光学フィルター4は、ドーム1上またはドーム1内に、具体的にはドーム1の内側表面12および/または外側表面11を少なくとも部分的に覆うように配置されてもよい。特に、光学フィルター4は、ドーム1の内側表面12および/または外側表面11上に真空蒸着された1つ以上の誘電体金属層を含んでもよい。
特に、日射計100は、少なくとも1つのコリメーター(図示せず)をさらに含んでもよい。特に、コリメーターは、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射(太陽放射)をコリメートするように構成されてもよい。さらに特に、コリメーターは、例えば拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の、放射(太陽放射)の光路上に配置されてもよく、代替的に、コリメーターは、サーモパイルハウジング23の窓22aの下方および/またはサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22の上方に配置されてもよい。さらに代替的に、コリメーターは、窓22aの間および/または光学フィルター4の下方に配置されてもよく、および/または、コリメーターは、光学フィルター4と拡散板3との間に配置されてもよい。あるいは、コリメーターは、少なくとも1つの光学フィルター4に入射する放射(太陽放射)をコリメートするように構成されてもよい。具体的には、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面に入射する放射(例えば、太陽放射)をコリメートするように構成されたコリメーターにより、放射の光路を変更することができる。具体的には、放射、特に太陽放射をコリメートすることによって、放射の透過率を最適化することができる。
【0049】
一態様によれば、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の光路の距離(拡散板3の第2底面32とサーモパイルを用いたセンサー2の受光面22との間の距離)は、放射(例えば、太陽放射または光)の角度分布を調整するように設定されてもよい。特に、拡散板3と光学フィルター4との間の最小距離は、少なくとも約1mmとなるように設定してもよい。特に、光学フィルター4とサーモパイルを用いたセンサー2との間の最小距離は、少なくとも約1mmとなるように設定されてもよい。言い換えれば、拡散板3および/または光学フィルター4、および/またはサーモパイルを用いたセンサー2の間の機械的な接触が特に回避される。さらに言うと、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の最小距離は、少なくとも約3mmとなるように設定されてもよい。さらに言うと、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の最小距離は、少なくとも約3mmから約10mmの間に設定されてもよい。特に、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の光路の距離は、拡散板3によって拡散され、サーモパイルを用いたセンサー2の受光面22に入射する放射(例えば、太陽放射)が実質的に円錐形状を有するように、すなわち、放射が発散ビームとして構成されるように設定されてもよい。特に、放射は、放射ビームの中央の長手方向軸に対して、約10度よりも大きい半値角(ビーム幅)で発散してもよい。言い換えれば、放射ビームは、約20度よりも実質的に大きい発散角(ビーム拡がり角)を有してもよい。
【0050】
具体的には、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の光路(距離)を変更することで、サーモパイルを用いたセンサー2に入射する光やサーモパイルを用いたセンサー2で検出される光の角度分布を調整することが可能となる。したがって、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の距離を所定の(予め定められた、または予め定めることが可能な)距離に設定することで、光学フィルター4の性能を向上させることができる。特に、サーモパイルを用いたセンサーに入射する放射(光)が実質的にビーム形状になる(実質的に円錐形状になる)ように、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2との間の距離を設定することで、波長の変化に伴ってスペクトル応答がわずかにシフトするという効果がある。特に、(誘電体)フィルターでは、通常、波長に対して比較的高い周波数(または短い周期)の振動が発生する。角度が異なるとわずかにシフトするため、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2とを所定の距離に設定することで、これらの振動をかなり平滑化または低減することができる。つまり、拡散板3とサーモパイルを用いたセンサー2とを特に所定の距離に設定して角度分布を調整することで、フィルターの性能を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 ドーム
2 サーモパイルを用いたセンサー
3 拡散板
4 光学フィルター
5 制御ユニット
6 日射計ハウジング
7 フィルター支持要素
10 空洞
11 ドームの外側表面
12 ドームの内側表面
13 日射計の外部の環境
14 ドームの底部開口
15 ドームの縁部
21 サーモパイルを用いたセンサーの第2対向面(底面)
22 サーモパイルを用いたセンサーの受光面
22a ハウジングの窓
23 サーモパイルのハウジング
31 拡散板の第1入射面または上面
32 拡散板の第2(底)面
33 拡散板の側面
61 日射計ハウジングのレベリングフィート(水平調整脚)
62 日射計ハウジングの第1(外側)部分
63 日射計ハウジングの第2(内側)部分
64 支持板
65 日射計ハウジングの第2部分の貫通開口部
70 フィルター支持要素の貫通開口部
71 ベース部
72 溝
100 日射計
S 支持面
X3 拡散板の長手方向の軸
【外国語明細書】