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特開2022-100270ジイソアルケニルアレンをベースとしたポリマー、及びそれらの用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100270
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ジイソアルケニルアレンをベースとしたポリマー、及びそれらの用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
C08G61/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021204849
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】63/130,130
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519261770
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルイドン・ディン
(72)【発明者】
【氏名】チャド・ライター
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA04
4J032CB01
4J032CB04
4J032CB05
4J032CC01
4J032CC07
4J032CD01
4J032CE03
4J032CE22
4J032CG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非極性溶媒に対する溶解性及び良好な加工性、並びに十分な熱的特性及び電子特性などの特性の望ましい組み合せを有するポリマーを提供すること。
【解決手段】本開示は、1,3-ジイソアルケニルアレン(I)、1,4-ジイソアルケニルアレン(II)又はそれらの混合物を含むモノマーをブレンステッド酸又はルイス酸触媒の存在下で重合することによって得られるポリマーに関する。それらのポリマーは、非極性溶媒に対して良好な溶解性を示し、実質的にゲルを含まない溶液を形成する。それらのポリマーは、良好な物性を有する架橋材料の製造に有用である。それらの架橋材料は、銅張り積層板などのさらなる下流用途に有益である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位(A)、(B)、(C)及び(D)
【化1】
(式中、Rは、H又はC1~C8アルキル基である。)の少なくとも1つを含むポリマーであって、
前記ポリマーは、25℃における炭化水素溶媒に対する溶解度が少なくとも10重量%であり、
前記ポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCを用いて測定されたTが50℃~300℃であり、
前記ポリマーは、炭化水素溶媒において実質的にゲルを含まない溶液を形成する、
ポリマー。
【請求項2】
が、メチル、エチル、イソプロピル又はn-ブチルである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーが、構造(E)、(F)、(G)及び(H)
【化2】
(式中、Rは、H又はC1~C8アルキル基である。)から選択される少なくとも1つの末端基を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
25℃におけるシクロヘキサン中50重量%溶液に対して測定された粘度が3,000~15,000cPであること、
25℃におけるトルエン中50重量%溶液に対して測定された粘度が50~1200cPであること、
25℃におけるトルエン中15重量%溶液に対して測定された粘度が5~100cPであること、
ASTM D341に従ってDSCを用いて測定されたTgが50~300℃であること、
ASTM D570に従って25℃で測定された吸湿率が0.05未満であること、
ASTM D2520による誘電率(Dk)が2~2.5であること、及び
ASTM D2520による誘電正接(Df)が0.0001~0.002であること
のうちの1つ以上を満たす、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
(i)シクロジエン又はその二量体、
(ii)式(I)及び式(II)のジイソアルケニルアレン若しくはそれらの組み合せ以外のジビニルアレン、
(iii)シクロジエン及び非環式ジエンの付加物、
(iv)2つ以上のアリル基を有するアリル化合物、
(v)2つ以上のビニル基を有する、ジビニルアレン(ii)以外のビニル化合物、及び
それらの任意の組み合せ
から選択されるコモノマーに由来する構造単位をさらに含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーが、1,3-ジイソアルケニルアレン(I)、1,4-ジイソアルケニルアレン(II)
【化3】
(式中、Rは、H又はC1~C8アルキル基である。)及びそれらの混合物のいずれかを含むモノマーをブレンステッド酸触媒又はルイス酸触媒の存在下で求電子的に重合することによって得られる、請求項1~5のいずれかに記載のポリマー。
【請求項7】
前記シクロジエンが1,3-シクロヘキサジエンである、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記重合が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びそれらの組み合せから選択される炭化水素溶媒中で実施される、請求項6に記載のポリマー。
【請求項9】
前記重合が、-100℃~120℃の反応温度において前記モノマーを前記炭化水素溶媒中の前記ブレンステッド酸触媒又はルイス酸触媒の溶液に添加することを含み、
前記ブレンステッド酸触媒又はルイス酸触媒を、少なくとも1つの電子供与性添加剤と1:10~10:1のモル比で混合して複合体を形成し、
前記電子供与性添加剤が、有機エーテル、水及びアルコール、並びにそれらの混合物のいずれかである、
請求項6に記載のポリマー。
【請求項10】
前記電子供与性有機添加剤が、エタン-1,2-ジオール(エチレングリコール)、プロパン-1,2-ジオール(プロピレングリコール)、1,2-ジエトキシプロピレン、2-(エトキシメチル)テトラヒドロフラン、2,2’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(テトラヒドロフラン)、(メチルスルフィニル)メタン(ジメチルスルホキシド、DMSO)、2-アミノエタンスルホン酸(タウリン)、水、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコールブチルエーテル(EGBE)、ジエチレングリコールブチルエーテル(DEGBE)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、酢酸エチル、及びそれらの混合物から選択される、請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
請求項1~5のいずれかに記載のポリマーと、1つ以上のゴム状ポリマーと、1つ以上の架橋剤と、任意選択的に1つ以上の硬化開始剤とを含む硬化性組成物であって、
前記硬化性組成物から得られる硬化組成物が、
銅に対する180°剥離強度が0.1~1.0N/mであること、
ASTM D2520による誘電正接(Df)が0.0005~0.005であること、
ASTM D2520による誘電率(Dk)が2.2~2.8であること、
UL94難燃性がV0又はV1であること、
-50℃~300℃の温度範囲にわたってDMAにより測定された熱膨張率(CTE)が、XY面で5~25ppm/℃であり、Z方向で30~100ppm/℃であること、及び
ASTM D570に従って測定された吸湿が0.02%~0.2%であること
のうちの1つ以上を満たす硬化性組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化組成物を含むプレプレグ。
【請求項13】
1,3-ジイソアルケニルアレン(I)、1,4-ジイソアルケニルアレン(II)
【化4】
(式中、Rは、H又はC1~C8アルキル基である。)又はそれらの混合物を含むモノマーをブレンステッド酸又はルイス酸触媒の存在下で求電子的に重合することによって得られるポリマー組成物であって、
前記ポリマーは、25℃における炭化水素溶媒に対する溶解度が少なくとも10重量%であり、該炭化水素溶媒中で実質的にゲルを含まない溶液を形成し、
前記ポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCを用いて測定されたTが50℃~300℃である、
ポリマー組成物。
【請求項14】
繰り返し単位(A)、(B)、(C)及び(D)
【化5】
(式中、Rは、H又はC1~C8アルキル基である。)の少なくとも1つを含むポリマーを含む、請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
構造(E)、(F)、(G)及び(H)
【化6】
(式中、Rは、H又はC1~C8アルキル基である。)から選択される少なくとも1つの末端基を含む、請求項13又は14に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジイソアルケニルアレンをベースとしたポリマー、及びそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
電気特性、熱的特性、化学特性及び機械特性を有する低誘電性材料が精力的に研究されてきた。多くの用途において、これらの特性を有する低誘電性材料の選択は、デバイスの性能及び寿命に影響を及ぼす。マイクロエレクトロニクス産業の急速な発展は、当該用途に応じた材料に対する需要も生み出した。電子部品の小型化の傾向は、最適な電気的性能及び機能的性能を有する材料、例えば電気特性、熱的特性、化学特性、接着性及び機械特性の望ましい組み合せを有する材料の必要性も高めてきた。
【0003】
様々なポリマー、例えばポリ(シクロヘキサジエン)ホモポリマー(PCHD)が、電子用途に使用されてきた。該材料は、従来、シクロヘキサジエンのアニオン重合によって作製されてきた。しかし、該ポリマーは、概して、分子量分布が狭く、すなわち分子量分散度が1.2未満であり、非極性溶媒、例えば脂肪族又は芳香族炭化水素溶媒に対する溶解性が劣る。溶解性が劣るために、いくつかの下流の用途での該ポリマーの使用が限定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非極性溶媒に対する溶解性及び良好な加工性、並びに十分な熱的特性及び電子特性などの特性の望ましい組み合せを有するポリマーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、繰り返し単位(A)、(B)、(C)及び(D)
【0006】
【化1】
(式中、RはH又はC1~C8アルキル基である。)の少なくとも1つを有するポリマーが開示される。該ポリマーは、25℃における炭化水素溶媒に対する溶解度が少なくとも10重量%であり、炭化水素溶媒中で実質的にゲルを含まない溶液を形成する。該ポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCを用いて測定されたTが50℃~300℃である。
【0007】
別の実施形態において、1,3-ジイソアルケニルアレン(I)、1,4-ジイソアルケニルアレン(II)
【0008】
【化2】
(式中、RはH又はC1~C8アルキル基である。)又はそれらの混合物を含むモノマーを求電子的に重合することによって作製されたポリマーが開示される。ブレンステッド酸触媒又はルイス酸触媒が重合に使用される。該ポリマーは、25℃における炭化水素溶媒に対する溶解度が少なくとも10重量%であり、炭化水素溶媒中で実質的にゲルを含まない溶液を形成する。該ポリマーは、ASTM D3418に従ってDSCを用いて測定されたTが50℃~300℃である。
【0009】
別の態様において、該ポリマーは、ブレンステッド酸触媒又はルイス酸触媒の存在下でDIAEAから生成された求電子種と反応することが可能な任意の化合物であり得るコモノマーに由来する構造単位をさらに含む。例としては、(i)オレフィン基を有する芳香族化合物、(ii)シクロジエン若しくはその二量体、(iii)式(I)若しくは(II)のジイソアルケニルアレン以外のジビニルアレン、(iv)1,3-シクロジエン及び非環式ジエンの付加物、又はコモノマー(i)~(iv)の任意の組み合せが挙げられる。タイプ(i)のコモノマーの例としては、スチレン、α-メチルスチレン及びp-メチルスチレン等が挙げられる。
【0010】
さらに別の態様において、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下でモノマー(I)、(II)又はそれらの組み合せを重合することによって得られるポリマー組成物が開示される。該ポリマーは、25℃における炭化水素溶媒に対する溶解度が少なくとも10重量%であり、ASTM D3418に従ってDSCを用いて測定されたTが50℃~300℃である。
【0011】
別の態様において、硬化性組成物が開示される。該硬化性組成物は、繰り返し単位(A)及び(B)、(C)及び(D)又はそれらの組み合せを有するポリマー、1つ以上のゴム状ポリマーと、1つ以上の架橋剤と、1つ以上の硬化開始剤と、任意選択的に1つ以上の反応促進剤とを含む。
【0012】
さらに別の態様において、該硬化性組成物から形成された硬化組成物が提供される。該硬化物は、銅に対する十分な剥離強度、十分に低い散逸率(Df)、十分に低い誘電率(Dk)及び良好な難燃性の1つ以上の良好な組み合せを有する。
【0013】
該硬化性組成物及び硬化組成物は、プレプレグ、銅張り積層板、電気器具筐体、電気ケーブル、電気コネクタ、電子スイッチ及び印刷配線基板などのさらなる下流の用途に有益である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の用語は、明細書全体を通じて使用され、別段の指示がない限り以下の意味を有する。
【0015】
「[A、B及びCなどの群]の少なくとも1つ」若しくは「[A、B及びCなどの群]のいずれか」、又は「[A、B及びC]並びにそれらの組み合せから選択された」は、群の単一の構成員、群の1つを超える構成員、又は群の構成員の組み合せを意味する。例えば、A、B及びCの少なくとも1つは、例えば、Aのみ、Bのみ、若しくはCのみ、並びにA及びB、A及びC、B及びC、若しくはA、B及びC、又はA、B及びCの他のすべての組み合せを含む。別の例において、A及びBの少なくとも1つは、Aのみ、Bのみ、並びにA及びBを意味する。
【0016】
「A、B又はC」として提示された実施形態のリストは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B又はC」の実施形態を含むものとして解釈されるべきである。
【0017】
は、g/mol単位の数平均分子量(MW)を指す。それは、既知の数平均分子量を有するポリブタジエン較正基準を使用してGPCにより測定できる。Mは、以下の式に従って算出される。
【0018】
【数1】
(式中、Nは、分子量Mの分子の数である。)。Mは、ASTM D5296(2005)におけるゲルパーミエーション/サイズ排除クロマトグラフィー(GPC-SEC)法を用いて算出できる。
【0019】
は、以下の式
【0020】
【数2】
(式中、Nは、分子量Mの分子の数である。)に従って算出された重量平均分子量である。Mは、ASTM D5296(2005)に記載のGPC-SECを用いて算出できる。
【0021】
「分子量分散度」すなわちPDIは、MW分布範囲を測定するM/Mである。
【0022】
「実質的にゲルを含まない」は、炭化水素溶媒、例えばトルエン、シクロヘキサン又はメチルエチルケトン(MEK)等に不溶の固形物を15重量%未満又は10重量%未満又は5重量%未満含有するポリマーを表すものと理解される。
【0023】
「DIAEA」は、1,3-ジイソアルケニルアレン、1,4-ジイソアルケニルアレン、又は1,3-異性体及び1,4-異性体の組み合せを指す。
【0024】
「DIPEB」は、ジイソプロペニルベンゼンを指す。例えば、1,3-DIPEBは、1,3-ジイソプロペニルベンゼンを指す。
【0025】
以下の表記
【0026】
【化3】
は、DIAEAのアレン環を示し、置換及び非置換のジイソアルケニルアレンを含む。
【0027】
「CHD」は、シクロヘキサジエンモノマーを指し、これは、いくつかの実施形態において1,3-シクロヘキサジエン異性体と1,4-シクロヘキサジエン異性体との有益な混合物からなる。
【0028】
「DVB」は、ジビニルベンゼンを指す。
【0029】
Dfは、「散逸率」又は「誘電正接」(Df)を示し、散逸系における電気エネルギーの損失率の測度である。Dkは、誘電率(dielectric constant or permittivity)を示す。
【0030】
「分解発生温度」は、DIAEAをベースとしたポリマーの10%が分解する温度を意味する。
【0031】
本開示は、カチオン重合によって形成された、1,3-ジイソアルケニルアレン及び1,4-ジイソアルケニルアレンをベースとしたポリマーに関する。硬化後のポリマーは、電子用途に有用である。
【0032】
1,3-ジイソアルケニルアレン及び1,4-ジイソアルケニルアレンをベースとしたポリマー:該ポリマーは、ルイス酸触媒又はブレンステッド酸触媒の存在下でDIAEAをカチオン重合することによって形成される。いくつかの実施形態において、該ポリマーは、その構造が以下に示される繰り返し単位(A)、(B)、(C)及び(D)(式中、R1はH又はC1~C8アルキル基である。)の少なくとも1つを含む。それらのポリマーは、例えば、CCCC、ABAB、BBDD、AABBAAAAB、AABABB、CCDDCCCDD、CCDDCBB、AAAABCCDD及びCCAACCAAなどの任意の配列の繰り返し単位(A)~(D)を有することができる。
【0033】
【化4】
【0034】
いくつかの実施形態において、該ポリマーは、以下に示される構造を有する(E)、(F)、(G)及び(H)から選択される少なくとも1つの末端基を含む。
【0035】
【化5】
【0036】
重合は、例えば(J)(Rはメチルである。)などの中間構造を伴うステップ成長過程と、波状の結合がポリマー鎖のさらなる伸展を表す(K)などの構造を伴う連鎖成長過程との組み合せを通じて、求電子反応種を介して進行することが可能である。それら2つの過程は、反応温度、溶媒、モノマー添加率、及び重合時の反応混合物における未反応モノマーの濃度などの様々な要因に左右され得る。
【0037】
【化6】
【0038】
それらのポリマーを製造するためのDIAEAの非限定的な例としては、構造(I)1,3-ジイソアルケニルアレン、構造(II)1,4-ジイソアルケニルアレン又はそれらの混合物(式中、Rは、メチル、エチル、イソプロピル又はn-ブチルである。)を有する化合物が挙げられる。ジイソプロペニルベンゼン(DIPEB)及びそれらの置換異形も使用できる。DIPEBの例としては、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,2-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、3,4-ジシクロヘキシル-1,2-ジイソプロペニル-ベンゼン、5-(3-メチル-シクロペンチル)-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、3-シクロペンチル-メチル-6-n-プロピル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、4-(2-シクロ-ブチル-1-エチル)-1,2-ジイソプロペニルベンゼン、3-(2-n-プロピルシクロプロピル)-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-メチル-5-n-ヘキシル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、4-メチル-1,2-ジイソプロペニル-ベンゼン、5-エチル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン及び3-メチル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられるが、それらに限定されない。1,3-ジイソプロペニルベンゼンが好ましい。
【0039】
DIAEAをベースとしたポリマーは、別の重合性コモノマー由来の繰り返し単位をさらに含むことができる。連鎖成長過程及びステップ成長過程の双方を補助することが可能な任意の重合性コポリマーが使用できる。いくつかの実施形態において、該コモノマーは、限定することなく、(i)シクロジエン若しくはその二量体、(ii)式(I)及び式(II)のジイソアルケニルアレン若しくはそれらの組み合せ以外のジビニルアレン、(iii)シクロジエン及び非環式ジエンの付加物、(iv)2つ以上のアリル基を有するアリル化合物、(v)2つ以上のビニル基を有する、ジビニルアレン(ii)以外のビニル化合物、又はそれらの任意の組み合せ若しくは部分的組み合せを含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、シクロジエンは、様々な量のシクロヘキサジエン異性体を含むことができるシクロヘキサジエン(CHD)である。CHDの好適な例としては1,3-CHD、及び小量の1,4-CHDを含む1,3-CHDが挙げられる。
【0041】
1,3-CHDがカチオン重合される場合は、生成物は、CHD由来の1,2-付加単位(式III)及び1,4-付加単位(式IV)(「Pol」はポリマー鎖を表す)の双方を含むことができる。概して、1,2-付加より1,4-付加が好まれる。
【0042】
【化7】
【0043】
1,4-と1,2-の相対比率は、触媒及び反応条件を変えることによって変更可能である。いくつかの実施形態において、PCHDは、90:10~20:80の相対モル比で、CHDの1,4-付加単位及び1,2-付加単位を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、該コポリマーは、1,3-ジイソプロペニルベンゼン(1,3-DIPEB)を含むが、それに限定されないDIPEB、及び1,3-CHD由来の繰り返し単位を有する。シクロジエンの非限定的な例としては、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン又はそれらの混合物などのシクロヘキサジエン、及び1,3-シクロペンタジエン、アルキルシクロペンタジエン又はそれらの混合物などのシクロペンタジエンが挙げられる。DIAEA以外のジビニルアレンの好適な例としては、ジビニルベンゼンが挙げられる。
【0045】
例えば2分子のシクロジエン、例えばジシクロペンタジエンから形成されたディールス-アルダー付加物などの1,3-シクロジエンの二量体もコモノマーとして使用できる。あるいは、コモノマーは、1,3-シクロジエン及び非環式ジエンの付加物、例えば、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、又はシクロペンタジエン及びイソプレンのディールス-アルダー付加物であり得る。
【0046】
2つ以上のアリル基を有するアリル化合物の例としては、例えば、ペンタエリスリトールのジアリルエーテル、ペンタエリスリトールのトリアリルエーテル及びペンタエリスリトールのテトラアリルエーテルなどのアリルエーテル、オルトケイ酸テトラアリル、並びに2つ以上のアリルオキシ置換基を有する芳香族化合物が挙げられる。
【0047】
2つ以上のビニル基を有する、ジビニルアレン以外のビニル化合物の例としては、ビニルトリイソプロペノキシシラン、メトキシトリビニルシラン、テトラビニルシラン、ジエトキシジビニルシラン、2,4,6,8-テトラビニル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニルシクロペンタシロキサンなどのビニルシランが挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態において、(E)及び(F)若しくは(G)及び(H)又はそれらの組み合せから選択される少なくとも1つの末端基を有する単離ポリマーが、例えばアルキルリチウム開始剤を使用するアニオン条件下での1つ以上の重合性モノマーとの共重合のためのマクロモノマーとして使用される。コモノマーの例としては、ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン及びジビニルベンゼン等、又は非環式ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレン及びピペリレン等が挙げられる。さらに、カチオン(ルイス酸)条件下で、DIAEA系ポリマーと、テルペン、ジエン及びジビニルアレンなどの他の重合性モノマーとの共重合も実施できる。
【0049】
他の実施形態において、少なくとも反応性末端基(E)及び(F)若しくは(G)及び(H)、又はそれらの組み合せを有するポリマーは、当該技術分野で公知の方法を使用して、イソシアネート、環状無水物、カルボン酸、カルボン酸エステル又はエポキシ基などの多種多様な官能基で好適に官能化できる。
【0050】
ポリマーの作製:ポリマーは、触媒の存在下で好適な溶媒中カチオン条件でDIAEAを重合することによって作製できる。DIAEAの例としては、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン又はそれらの混合物などのジイソプロペニルベンゼン(DIPEB)が挙げられる。
【0051】
2つのモノマーを一緒に添加して共重合を実施することができ、又はそれらのモノマーを順次添加してコポリマーを形成できる。
【0052】
好適な溶媒としては、触媒、及び重合時に生成されるカチオン性の中間体に対して概ね不活性であることから炭化水素溶媒が挙げられる。例としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、又はそれらの組み合せが挙げられる。いくつかの具体的な例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ワニス-塗料用ナフサ(VM&Pナフサ)、メチルエチルケトン(MEK)、石油エーテル、トルエン、キシレン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
触媒:触媒は、ブレンステッド酸型若しくはルイス酸型、又はブレンステッド酸型触媒活性及びルイス酸型触媒活性の双方を有する触媒であり得る。いくつかの実施形態において、触媒は、担持型ブレンステッド酸、非担持型ブレンステッド酸、ルイス酸、その前駆体、又はそれらの組み合せを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの電子供与性添加剤、例えば有機エーテル、水及び/又はアルコールが、添加剤濃度範囲を触媒に対する添加剤のモル比で0.1~10若しくは0.1~5若しくは0.5~4、又は7.5未満、又は少なくとも1の範囲として添加されて触媒との複合体が形成される。
【0055】
いくつかの実施形態において、電子供与性有機添加剤は、エタン-1,2-ジオール(エチレングリコール)、プロパン-1,2-ジオール(プロピレングリコール)、1,2-ジエトキシプロパン、2-(エトキシメチル)テトラヒドロフラン、2,2’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(テトラヒドロフラン)、(メチルスルフィニル)メタン(ジメチルスルホキシド、DMSO)、2-アミノエタンスルホン酸(タウリン)、水、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコールブチルエーテル(EGBE)、ジエチレングリコールブチルエーテル(DEGBE)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(DEGDBE)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)及び酢酸エチル、並びにそれらの混合物から選択される。
【0056】
非限定的な触媒類としては、有機酸、有機スルホン酸、有機無機酸、酸性ゼオライト、元素周期律表第3~8族及び第12~15族の金属をベースとした任意のルイス酸、及びそれらの混合物が挙げられる。ルイス酸触媒を使用すると、ポリマー鎖が形成されるとともに、ポリマー鎖の不均化が促進されて、ポリマーの溶解性を向上できる。
【0057】
ブレンステッド酸の非限定的な例としては、有機スルホン酸、硫酸、リン酸、次リン酸、ポリリン酸、リンタングステン酸及びタングストケイ酸などのヘテロポリ酸、2,2,3-トリクロロ酪酸、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフリン酸、ベンゼンスルホン酸、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸、ベータ-ナフトール-3,6,8-トリスルホン酸、スルホサリチル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フッ素化有機スルホン酸及びp-トルイジン-m-スルホン酸が挙げられる。スルホン化された固体酸の誘導体、例えばスルホン化スチレン-ジビニルベンゼン、スルホン化シリカ、スルホン化フルオロポリマー及びポリスチレン担持型スルホン酸も使用できる。
【0058】
シリコン、シリカ、アルミニウム及びアルミナをベースとした固体無機酸触媒、例えば(i)200℃~1000℃の温度でか焼された、0.1%~99.9%のシリカ含有量、及び/又は0.1ml/g~5ml/gの細孔サイズ、及び/又は100~1000m/gの表面積(BET)を有する非晶質シリカ-アルミナ、並びに(ii)(a)カオリン群、例えばカオリナイト、ハロイサイト若しくはディッカイト、(b)スメクタイト群、例えばモンモリロナイト、ノントロナイト、ヘクトライト若しくはサポナイト、(c)セライト/マイカ群、例えば海縁石、白雲母若しくはパラゴナイト、又は(d)緑泥石群、例えばシャモス石、クーク石若しくはニマイトの天然又は合成粘土などのフィロケイ酸塩も使用できる。固体無機酸触媒は、200℃~1000℃の温度でか焼し、鉱酸で処理、洗浄及び活性化させる、又は鉱酸(例えば硫酸又は塩酸)と併用することが可能である。あるいは、固体無機酸触媒は、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩又は鉄塩を使用して、処理又はイオン交換することにより水系媒体中で変性させることが可能である。
【0059】
固体無機酸触媒の他の例としては、天然又は合成の微孔性アルミノケイ酸などのプロトン化形態又はカチオン形態の変性粘土又は柱状粘土が挙げられる。例としては、200℃~1000℃の温度でか焼され、0.1~99.9%のシリカ含有量、0.1~5ml/gの細孔サイズ、及び100~1000m/gの表面積(BET)を有するUSY、L、モルデナイト、苦土沸石、ZSM-5又はZSM-ベータなどのゼオライト群の材料が挙げられる。
【0060】
プロトン化形態又はカチオン形態のメソ多孔性材料も使用できる。例としては、200℃~1000℃の温度でか焼され、0.1%~99.9%のシリカ含有量、0.1ml/g~5ml/gの細孔サイズ、及び100~1000m/gの表面積(BET)の1つ以上を有する、(a)SAPO-11若しくはSAPO-34などのシリコアルミノリン酸塩、(b)MCM-41若しくはMCM-48などのアルミノケイ酸塩、又は(c)SBA-15若しくはSBA-16などのケイ酸塩が挙げられる。
【0061】
Ni、Pt、Au、Fe又はCoなどの金属を有する固体酸担持型金属系も使用できる。これらの材料は、変性粘土又は柱状粘土を硫酸又は塩酸などの鉱酸で処理することによって得られる。
【0062】
亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、錫、バナジウム、ヒ素、アンチモン及びビスマスのいずれかをベースとしたルイス酸も触媒として使用できる。例としては、AlCl、(アルキル)AlCl、(CAlCl及び(CAlCl、BF、B(C、SnCl、TiCl、ZnCl、SnCl、CuCl及び組み合せが挙げられる。前述のルイス酸とルイス塩基との複合体も使用できる。任意選択的にメチルアルモキサンなどの活性化剤と組み合わせたジルコノセンジクロリド、チタノセンジクロリド又はハフノセンジクロリドなどのメタロセンハライドも使用できる。メチルアルモキサン自体も触媒として使用できる。いくつかの実施形態において、ルイス酸は、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化錫、ハロゲン化チタン及びそれらの組み合せから選択される。
【0063】
いくつかの実施形態において、環状ジエン及び/又はコモノマーの酸化又は酸化分解を防止する、又は最小限にすることができる非酸化性ブレンステッド酸が使用される。例としては、CFSOH、CSOH及びCSOHなどのパーフルオロアルカンスルホン酸、CFCOHなどのパーフルオロアルカン酸、及びCHSOH、CSOH並びにCSOHなどのアルカンスルホン酸が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、触媒は、AlCl、TiCl、SnCl、B(C、BF及びルイス塩基とそれらの複合体、メチルアルモキサン、メタロセンハライド及びメチルアルモキサンとその組み合せ、並びにそれらの組み合せから選択されるルイス酸触媒である。
【0065】
触媒の濃度は、重合の過程を左右し得る。いくつかの実施形態において、触媒量は、モノマーの重量に対して0.05~0.5重量%、又は0.1~0.4重量%、又は0.2~0.3重量%、又は0.5重量%未満、又は0.7重量%未満の範囲である。
【0066】
反応条件:モノマーの添加は、-100℃~+120℃、若しくは0℃~120℃、若しくは30℃~100℃の温度、又は雰囲気温度~100℃若しくは50℃若しくは80℃で、5分~数時間の時間にわたって実施できる。反応温度はモノマーの反応性によって異なり得る。反応温度が低いと反応時間を長くする必要があると考えられる。すべてのモノマーを添加した後で、必要であれば、すべてのモノマーが実質的に消失するまで、あるいは反応混合物の分析によって、十分な分子量のポリマーが形成されたことが示されるまで、5分~数時間、又は5時間未満又は3時間未満のさらなる時間にわたって、得られた反応混合物を攪拌することができる。いくつかの実施形態において、反応温度は、30℃~120℃、又は45℃を超える、又は65℃を超える。反応は、5分~30分にわたって自然に継続し得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、反応は、DIAEAモノマー又はモノマー混合物(コモノマーも含まれる場合)を触媒と溶媒の混合物に添加することによって実施できる。そのような添加の順序により、望ましくないゲルの形成を防止する、又は最小限にすることができる。反応混合物における未反応モノマーの濃度をモノマーの総重量に対して5重量%以下の比較的低濃度に維持するようにモノマー添加率を調整することによって重合を制御することも可能である。
【0068】
反応溶媒、温度及び触媒などの要因により、ポリマーの全体構造、分子量、及び前述の繰り返し単位の相対的割合が異なり得る。製造されたポリマーは、溶媒に完全に可溶のまま、溶媒に部分的に可溶のまま、又は溶媒に大部分が可溶のままであり得る。溶媒の例としては、脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒、及び芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。具体例としては、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、リモネン、テルペンチン又はそれらの組み合せが挙げられる。ポリマーが溶媒に可溶のままであることが好ましい。
【0069】
反応の終了時に、ポリマーは、反応混合物を水で急冷した後、有機溶媒層を分離し、溶媒をストリッピングすることによって単離できる。微量の有機物は、高真空下で生成物から除去できる。
【0070】
ポリマーの分子量は、モノオレフィンなどの分子量制御剤を含めることによって制御できる。モノオレフィンの例としては、スチレン、α-メチルスチレン及びそれらの組み合せが挙げられる。
【0071】
ポリマーの特性:DIAEAをベースとしたポリマーは、概して樹脂状材料である。それらは、分子量範囲と、相対的に広い分子量分布(分子量分散度)との良好な組み合せを有するため、一部に非極性溶媒に対するそれらの溶解性が高まることにより、それらの加工性が向上する。
【0072】
いくつかの実施形態において、それらのポリマーは、数平均分子量Mnが1,000~20,000ダルトン、若しくは1,200~5,000ダルトン、又は5,000ダルトン未満、又は2,000~4,000ダルトン、又は10,000ダルトン未満、又は2,000ダルトンを超える、重量平均分子量Mwが3,000~70,000ダルトンであり、分子量分散度が3.0~15.0、若しくは5~40、若しくは7~50、又は10.0未満、又は5.0を超える。いくつかの実施形態において、それらのポリマーは、Mnが2,000~8,000ダルトン、又は4,000~6,000ダルトンであり、Mwが8,000~48,000ダルトン、又は16,000~36,000ダルトンであり、分子量分散度が5.0~10.0である。
【0073】
いくつかの実施形態において、それらのポリマーは、炭化水素溶媒に対する溶解度が、溶媒の重量に対して25~75重量%、若しくは35~65重量%、若しくは40~50重量%である、又は10重量%を超える。典型的な溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ワニス-塗料用ナフサ(VM&Pナフサ)、石油エーテル、トルエン、キシレン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
いくつかの実施形態において、固体ポリマーは、炭化水素溶媒に溶解すると、固体の15重量%未満、又は10重量%未満、又は5重量%未満がトルエン(すなわちシクロヘキサン)に不溶のままである実質的にゲルを含まない溶液を形成する。別の実施形態において、ポリマー溶液は、ポリマーの重量に対して5重量%未満、又は1~3重量%未満、又は0.05~2重量%未満、又は1重量%未満の低ゲル含有量を有する。DiPEB及びDiPEB-DVB(逐次重合)による実施形態において、ゲル含有量は、1重量%未満、又は0.05重量%未満、又は0.01重量%未満である。DiPEB/DVBの組み合せの共重合による実施形態において、ゲルの量は、3重量%未満、又は2重量%未満である。
【0075】
いくつかの実施形態において、該ポリマーは、分解発生温度が200~450℃、又は600℃未満である、又は300℃を超える、又は500℃未満であり、該ポリマーは、20重量%未満の不揮発性残留物を有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、それらのポリマーは、25℃における炭化水素溶媒に対する溶解度が少なくとも10重量%であり、ASTM D3418に準拠するDSC、又はDMA(動的機械分析器)を使用して測定されたガラス転移温度(Tg)が50℃~300℃、又は50℃~200℃、又は60℃~175℃、又は70℃~150℃、又は250℃未満、又は200℃未満である。
【0077】
それらのポリマーは、良好な電気特性も有し、ASTM D2520に従って1GHz及び20GHzにて測定された誘電率(Dk)が2.5未満、又は1.5~2.5、若しくは1.2~2である。それらのポリマーは、また、ASTM D2520に従って1GHz及び20GHzにて測定された誘電正接(Df)が0.0010未満、若しくは0.0008未満である、又は0.0001を超える、又は0.0002~0.0007、若しくは0.0003~0.0009である。
【0078】
いくつかの実施形態において、該ポリマーは、25℃におけるシクロヘキサン中50重量%溶液に対して測定された粘度が3,000~15,000cPであること、25℃におけるトルエン中50重量%溶液に対して測定された粘度が100~1,200cPであること、ASTM D570に従って25℃で測定された吸湿率が0.05未満であること、及びASTM D2520に従って1GHz及び20GHzにて測定された誘電率(Dk)が2.5未満、又は1.5~2.5、若しくは1.2~2であり、ASTM D2520に従って1GHz及び20GHzにて測定された誘電正接(Df)が0.0010未満若しくは0.0008未満である、又は0.0001を超える、又は0.0002~0.0007、若しくは0.0003~0.0009であることのうちの1つ以上の特性を有する。
【0079】
いくつかの実施形態において、それらのポリマーは、密度が0.9g/cc未満、又は1.0g/cc未満、又は1.0~1.20g/cc、又は1.0~1.10g/ccである。総合密度は、ポリマー作製工程時に生じるステップ成長過程及び連鎖成長過程の相対的割合を反映する。
【0080】
用途:DIAEA系ポリマーは、TVの背面照明に、交通信号灯及び自動車ライトに使用される高輝度LEDなどの照明用途、並びに一般的な照明用途におけるレンズなどの用途に応じた透明ポリマー化合物を作製するのに使用できる非晶質(非結晶性)材料である。それらのポリマーは、Tgが高いために、高出力LEDの用途における高動作温度に耐えることができる。
【0081】
DIAEA系ポリマーは、さらなる取り扱いに有益な二重結合を有するものとして特徴づけられる。例えば、二重結合は、架橋剤に対して反応性を有することで、電子用途を含む様々な最終用途のための架橋ポリマー、硬化性組成物及び硬化組成物の作製を可能にする。
【0082】
DIAEA系ポリマーをベースとした硬化性組成物及び硬化組成物:DIAEA系ポリマーは、DIAEA系ポリマーに加えて、ゴム状ポリマー、少なくとも1つの架橋剤、硬化開始剤、及び任意選択的に反応促進剤をさらに含む硬化性組成物に使用できる。硬化性組成物は、1つ以上のフィラー、例えばセラミック粉末を含むこともできる。靱性の程度及び柔軟性の程度が様々な架橋組成物が、硬化性組成物から製造できる。
【0083】
いくつかの実施形態において、DIAEA系ポリマーの量は、硬化性組成物の総重量に対して40~90重量%の範囲、又は50重量%を超える範囲、又は55重量%を超える範囲、又は80重量%未満の範囲である。硬化性組成物は、典型的には、該組成物の総重量に対して25~50重量%、又は30重量%を超えるゴム状ポリマーを含む。架橋剤は、典型的には、2~20重量%の量、3~15重量%の量、又は5重量%を超える量で使用される。他の成分、例えば硬化開始剤及び反応促進剤等は、典型的には、0.5~10重量%の量、1~5重量%の量、又は2重量%を超える量で存在する。
【0084】
架橋剤の例としては、硫黄系架橋剤、ポリスルフィドポリマー及びジイソシアネートが挙げられる。硫黄系架橋剤としては、チオール、メルカプト(SH)基を有する化合物、イオウ元素、及び架橋条件下でイオウを遊離させるイオウ供与体化合物が挙げられる。
【0085】
反応促進剤の例としては、ジベンゾチアゾール、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、チオカルバミルスルフェンアミド、2-(4-モルホリノチオ)-ベンゾチアゾール(MBS)、2-2‘-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、4,4’-ジチオジモルホリン(DTDM)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、チオ尿素、キサントゲン酸塩及びチオリン酸塩が挙げられる。
【0086】
架橋剤の例としては、トリチオシアヌル酸(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリチオン-TTCA)、4,4’-チオジベンゼンチオール(TDT)、トリス[2(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TMPEIC)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメチルメタクリレート(TMPTMA)、1,3-ビス(スクシンイミジル)ベンゼン(PCM)、トリアリルイソシアヌレート(TAICROS)、トリメタリルイソシアヌレート(TAICROS M)、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン(TAI)、ジビニルベンゼン(DVB)、ジイソプロペニルベンゼン(DIPEB)、及びそれらの組み合せが挙げられる。
【0087】
好適な開始剤としては、チオール、又は過酸化物系開始剤、例えば無機又は有機過酸化物、例えばヒドロペルオキシド及び液体ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ジペルオキシケタール、モノペルオキシカーボネート、環状ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、オルガノスルホニルペルオキシド及びペルオキシエステルが挙げられる。
【0088】
ゴム状ポリマーには、天然ゴムとその様々な未加工形態及び再生形態の両方、並びに様々な合成ゴムが含まれる。いくつかの実施形態において、ゴム成分は、不飽和、部分水素化及び完全水素化スチレンブロックコポリマー、ポリブタジエンから選択される不飽和ジエンエラストマー、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、EPDMゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などのスチレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、臭素化ブチルゴム、ポリブチレンHR(高反応性)、無水物で官能化されたジエンゴム、並びにそれらの組み合せのいずれかを含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、ゴム状ポリマーは、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、及びEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)、並びにそれらの混合物から選択される。別の実施形態において、ゴム成分は、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、合成ポリイソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、ポリブタジエンゴム、例えば高シスポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、イソブチレン-芳香族ビニル又はジエンモノマーコポリマー、臭素化NR、塩素化NR、臭素化イソブチレンp-メチルスチレンコポリマー、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンホモポリマーゴム、ピクロロヒドリン-エチレンオキシド又はアリルグリシジルエーテルコポリマーゴム、エピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテルターポリマーゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム、ポリスルフィドゴム、フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、フッ素化シリコンゴム、フッ素化ホスファゲンゴム、スチレンエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー及びポリアミドエラストマーから選択される。
【0090】
スチレンエラストマーの例としては、水素化、部分水素化及び非水素化スチレンブロックコポリマー(SBC)、例えばジブロックSBC及びトリブロックSBCが挙げられる。
【0091】
SBRの例としては、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(非変性E-SBR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(非変性S-SBR)、及び末端を変性することにより得られる変性SBR(変性E-SBR及びS-SBR)が挙げられる。ゴム成分は、単独で使用される、又は併用されるSBR及びBR以外の成分、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)を含むことができる。
【0092】
ゴム成分は、星型分岐、分岐、及び/又はカップリング剤及び/又は星型分岐若しくは官能化剤による官能化のいずれかであり得る。例としては、分岐(「星型分岐」)ブチルゴム、ハロゲン化星型分岐ブチルゴム、ポリ(イソブチレン-p-メチルスチレン)、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星型分岐ポリイソブチレンゴム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0093】
ポリマー鎖の架橋は、大気温~300℃の範囲の温度で架橋剤と反応させて架橋ポリマーを得ることによって達成できる。架橋密度は、架橋剤の量、温度及び使用される他の物理的条件などのいくつかの要因に左右される。架橋は、光開始剤を使用して光化学的にも達成できる。
【0094】
DIAEAをベースとしたポリマーを、不飽和中心を有する他の反応性ポリマーと反応的に混合して多種多様な新規の材料を得ることもできる。反応性ポリマーを選択して、物性と性能特性の所望の組み合せを達成することが可能である。反応押出を用いて、個々のブロックが顕著に異なる特性を有するブロックコポリマーを作製できる。例えば、ポリブタジエン又はポリイソプレンなどのジエンポリマーの軟質ブロックをDIAEAポリマーブロックに結合させて、剛性ブロックと軟質ブロックの双方の組み合せを有するブロックコポリマーを得ることができる。当該手法は、イソシアネート、環状無水物、カルボン酸、カルボン酸エステル又はエポキシ基などの官能基をポリマーの末端に導入するために使用することもできる。
【0095】
硬化組成物の特性:架橋ポリマーは、良好な化学的安定性及び酸化安定性を有するものとして特徴づけられる。架橋は、得られる架橋ポリマーのTgの上昇をももたらす。硬化組成物は、難燃性が高められ、電子用途に有用である。硫黄系架橋剤による架橋ポリマー及び硬化組成物は、架橋前のポリマーより良好な難燃性を示す。難燃性は、UL、又は他の方法、例えば試料の発火が開始してから試料が完全に炭化物になるのに要する時間を測定することによって測定できる。架橋は、靱性が高められた材料の製造を可能にするだけでなく、靱性と柔軟性の所望のバランスを有する材料をもたらす。
【0096】
硬化組成物は、アルミニウム及び銅などの金属に対する接着性が良好である。いくつかの実施形態において、硬化組成物は、180°剥離強度が0.1~1.0N/m又は0.3~0.7N/mである。該組成物は、銅に対する接着性が良好であるため、電子分野において有益である。
【0097】
硬化組成物は、電気絶縁材料として有益である。いくつかの実施形態において、硬化組成物は、銅に対する180°剥離強度が0.1~1.0N/mであること、IPC TM-650 2.5.5.13に従って測定されたDfが0.0010である、又は0.0008未満である、又は0.0001を超える、又は0.0002~0.0007、若しくは0.0003~0.0009であること、IPC TM-650 2.5.5.13に従って測定されたDkが2.5若しくは1.5~2.5、又は1.2~2であること、UL94難燃性がV0又はV1であること、-50℃~300℃の温度範囲にわたってDMAを使用して測定された熱膨張率(CTE)がXY面で5~25ppm/℃であり、Z方向で30~100ppm/℃であること、及びASTM D570に従って測定された吸湿が0.02%~0.2%であることのうちの少なくとも1つを満たす。
【0098】
硬化組成物の使用:硬化ポリマー組成物は、メタルクラッド積層板、例えば銅張り積層板(CCL)、電気器具筐体、電気ケーブル、電気コネクタ、電子スイッチ、並びに印刷回路板(PCB)、印刷配線板及びフレキシブルプリント回路(FPC)などの電子部品としての使用に有益である。
【0099】
PCBの作製に使用されるプレプレグは、架橋ポリマーをゴム成分、及び任意選択的にガラス繊維、ガラスビーズ、セラミック粉末、シリカ、又はそれらの組み合せから選択される添加剤と併用することによって作製できる。いくつかの実施形態において、繊維ガラスが、Si-H結合を有する有機シロキサン、例えばポリアルキルシロキサン又はポリアリールシロキサンで処理されて、繊維ガラスとDIAEA系ポリマーとの接着性が高められる。
【0100】
セラミック粉末を含めることにより、曲げ強度を高め、低吸水量を維持しながらDfをさらに低減することができる。その量を調整して、硬化ポリマーマトリックスの架橋密度に悪影響を及ぼすことなく曲げ強度の向上を達成することができる。いくつかの実施形態において、ポリマーに対するセラミック粉末の重量比は、0.5以下である。例としては、チタン酸リチウム、例えばLiTiO-MgO-LiF、ジルコン酸リチウム、チタン酸-ジルコン酸リチウム、タングステン酸リチウム、チタン酸バリウム、又はそれらの組み合せを含有する材料が挙げられる。
【0101】
架橋ポリマー又は硬化組成物を銅基板上に貼り付けることによって、圧力鍋試験に供した後の膨れ又は剥離が低度から無視できる程度であること、無鉛はんだ時の分解が低度から無視できる程度であること、酸、アルカリ及び酸化性物質に対する耐薬品性を有すること、吸水性が低度から無視できる程度であること、内部積層板の電子移動に対する耐性、すなわちCAF(導電性陽極フィラメント)欠陥に対する耐性が良好であること、熱膨張率(CTE)が低いこと、使用条件下での安定な性能のためのガラス転移温度が十分に高いこと、電気特性Df及びDkが低いこと、使用条件下での金属に対する接着性が安定的で高いこと、プレス過程のプレプレグのポリマー樹脂流に対する影響が低度から無視できる程度であること、及び光学的品質が十分であること、例えば、積層板材料の塊が生じないことなどの特性を有する銅張り積層板(CCL)が形成される。
【0102】
いくつかの実施形態において、CCLは、硬化組成物から作製された絶縁層の片側又は両側に配置された金属箔を含むことができる。さらに、CCLは、絶縁層に接触する面側に配置されたバリア層を含むことができる。バリア層は、伝送損失を低減することが可能なコバルトなどの金属を含有することができる。バリア層は、めっき法、例えばスパッタリング、電気めっき又は無電解めっきによって形成できる。個々の積層板を積層させ、それらを、例えば110℃~220℃の範囲の温度及び例えば0.5MPa~20MPa又は1.5MPa~5MPaの圧力で10分~5時間の時間にわたって加熱することによって、所望の厚みの積層体を製造できる。
【0103】
[実施例1] トルエン中AlCl による1,3-DIPEBの重合
攪拌棒及び攪拌翼を備えた1リットルフラスコに350gの乾燥トルエンを加え、窒素流下300RPMで攪拌しながら10分間にわたって45℃に加熱した。容器を50gのトルエンで洗浄して攪拌しながら10gの無水AlClを加えた。45℃で10分経過後、反応物を45±2℃に維持しながら30分間にわたって250gの1,3-DIPEBを加えた。攪拌速度を450RPMに上昇させたところ、最終反応混合物が非常に濃くなってゲル化した。反応混合物を45℃で1時間保持した後、4グラムの85%HSOを含有する150mLの脱イオンHOで急冷し、次いで15分間にわたって80℃まで加熱した。継続的な攪拌下80℃で20分経過後、反応混合物を15分間にわたって相分離させた。底部水層をピペットで除去した。残留する上部層の攪拌を300RPMで再開し、4グラムの85重量%のHSOを有する150mLのHOを加え、混合物を80℃に加熱し、20分間にわたって300RPMで攪拌した。相を底部水層とともに分離させ、ピペットを使用してそれを除去した。上述のように4グラムの85重量%のHSOを有する150mLのHOを使用して、上部層の3回目の洗浄を実施した。水層を除去した後、0.8gのNaCOを含有する150mLのHOで有機層を急冷し、次いで攪拌しながら20分間にわたって80℃に加熱し、それらの層を10分間にわたって沈降させ、底部水層を除去した。得られる有機層を上記と同じ過程を用いて水性NaCOで急冷した。有機層を攪拌下で3リットルの低温アセトンに注いで、ポリマー生成物を析出させた。それらの固体を、定量用ろ紙を使用して110nmのブフナー漏斗でろ過した。171.48gの湿塊を回収し、0.1mmHg及び180℃の定真空炉で乾燥させて、133.2g(収率53.3%)のポリマーを得た。
【0104】
ヨウ素価(ポリマーに存在するオレフィン不飽和の程度)、Tg、ゲル含有量、及びTHF可溶物質の分子量(GPCを使用)について、生成物を分析した。結果は、ヨウ素価が3.3cg l/gであり、THF可溶物質のMnが3,087でMwが44,926であり、PDIが14.6gであり、Tgが185.2℃であり、ゲル含有量が60重量%であることを示す。
【0105】
[実施例2] トルエン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥トルエンの量を1,068gとし、1,3-DIPEBの量を125gとし、1.35gのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。反応による最終乾燥質量は、39.08gで、収率は33.75%であった。最終生成物は、ヨウ素価が2.4cg l/gであり、THF可溶物質のMnが6,114でMwが56,633であり、PDIが9.26であり、Tgが222.7℃であり、ゲル含有量が7.4重量%であった。
【0106】
[実施例3] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を389.3gとし、1,3-DIPEBの量を105gとし、0.7gのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。ロータリーエバポレータから回収した湿塊(157.87g)を0.1mmHg下で180℃の真空炉に仕込んだ。2時間20分間にわたって乾燥させた後、乾燥塊として103.56g(収率98.63%)のポリマーを得た。
【0107】
最終生成物は、ヨウ素価が1.5cg l/gであり、THF可溶物質のMnが2,433でMwが24,285であり、PDIが9.98であり、Tgが215.8℃であり、ゲル含有量が2.8重量%であった。
【0108】
[実施例4] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を928.4gとし、1,3-DIPEBの量を250gとし、0.25gのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。真空炉から重量が250.57g(100.2%)乾燥塊を回収した。
【0109】
最終生成物は、ヨウ素価が5.5cg l/gであり、THF可溶物質のMnが2,303でMwが29,524であり、PDIが6.00であり、Tgが199.8℃であり、ゲル含有量が0.01重量%未満であった。
【0110】
[実施例5] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を927gとし、1,3-DIPEBの量を250gとし、0.25gのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。回収した湿塊(322.97g)を0.1mmHg下で180℃の真空炉にて4時間乾燥させた。真空炉から重量が238.38g(95.4%)乾燥塊を回収した。
【0111】
最終生成物は、ヨウ素価が17.3cg l/gであり、THF可溶物質のMnが1,989でMwが26,099であり、PDIが13.10であり、Tgが200.4℃であり、ゲル含有量が0.01重量%未満であった。
【0112】
[実施例6] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を927gとし、1,3-DIPEBの量を250gとし、0.25gのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。残留する湿塊(245.7g)を0.1mmHg下で180℃に設定された真空炉にて4時間乾燥させた。得られた乾燥塊は、重量が249.6g(収率99.8%)であった。
【0113】
最終生成物は、ヨウ素価が9.5cg l/gであり、THF可溶物質のMnが1,660でMwが14,080であり、PDIが8.47であり、Tgが200.0℃であり、ゲル含有量が0.01重量%未満であった。
【0114】
[実施例7] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を927gとし、1,3-DIPEBの量を250gとし、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)触媒の量を0.125gとすることを除いては、実施例1を繰り返した。残留する湿塊(245.7g)を0.1mmHg下で180℃に設定された真空炉にて4時間乾燥させた。得られた乾燥塊は、重量が249.6g(収率99.8%)であった。
【0115】
最終生成物は、ヨウ素価が21.6cg l/gであり、THF可溶物質のMnが2,953でMwが80,167であり、PDIが27.15であり、Tgが195.9℃であり、ゲル含有量が0.01重量%未満であった。
【0116】
[実施例8] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を1179gとし、1,3-DIPEBの量を250gとし、0.125gのトリフリン酸を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。実施例8では、1,3-DIPEBとシクロヘキサンとの加熱混合物に触媒を添加した。残留する湿塊(245.7g)を、0.1mmHg下で180℃に設定された真空炉にて4時間乾燥させた。得られた乾燥塊は、重量が249.6g(収率99.8%)であった。
【0117】
最終生成物は、ヨウ素価が37.2cg l/gであり、THF可溶物質のMnが2,161でMwが58,088であり、PDIが26.89であり、Tgが67.3℃であり、ゲル含有量が0.01重量%未満であった。
【0118】
[実施例9] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を927gとし、1,3-DIPEBの量を250gとし、0.25gのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。残留する湿塊(245.7g)を、0.1mmHg下で180℃に設定された真空炉にて4時間乾燥させた。得られた乾燥塊は、重量が249.6g(収率99.8%)であった。
【0119】
最終生成物は、ヨウ素価が53.4cg l/gであり、THF可溶物質のMnが1,107でMwが4,792であり、PDIが4.33であり、Tgが66.02℃であり、ゲル含有量が0.01重量%未満であった。
【0120】
[実施例10] シクロヘキサン中トリフリン酸による1,3-DIPEBの重合
乾燥シクロヘキサンの量を198gとし、1,3-DIPEBの量を42gとし、0.25gのトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)を使用することを除いては、実施例1を繰り返した。残留する湿塊(245.7g)を、0.1mmHg下で180℃に設定された真空炉にて4時間乾燥させた。得られた乾燥塊は、重量が249.6g(収率99.8%)であった。
【0121】
最終生成物は、ヨウ素価が10.9cg l/gであり、THF可溶物質のMnが1,520でMwが5,024であり、PDIが3.31であり、Tgが173.3℃であり、ゲル含有量が0.01重量%未満であった。
【0122】
[実施例11~12] ポリ(1,3-DIPEB)を含むポリマー組成物の電気特性
実施例5のポリ(1,3-DIPEB)を80重量%含有する実施例11の組成物と、KRATON(商標)G1652を20重量%含有する実施例12の組成物との2種の組成物を作製した。KRATON(商標)G1652及びKRATON(商標)G1652MUは、Kraton Polymersから入手可能である、選択的に水素添加されたS-EB-Sブロックコポリマーである。
【0123】
[実施例A~F]
実施例11のポリマー組成物(実施例A~C)及び実施例12のポリマー組成物(実施例D~F)から熱圧縮によりプラークを作製した。誘電特性及び試料厚みにより変動する、単一周波数(共鳴ピーク)での誘電率Dk及びDfを測定する共鳴技術であるスプリットキャビティ技術を使用して室温でプラークを測定した。
【0124】
実施例A~Cのプラークは、平均厚み(mm)がそれぞれ0.620、0.686及び0.830である。実施例D~Fは、平均厚み(mm)がそれぞれ3.005、2.788及び2.895である。実施例A~Cのプラークは、18.98GHzの平均周波数で測定された平均Dkが2.20で平均Df(×10-4)が8.20である。実施例D~Fのプラークは、15.87GHzの平均周波数で測定された平均Dkが2.27で平均Df(×10-4)が3.60である。
【0125】
本明細書では「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語を用いて様々な態様を説明したが、本開示のより具体的な態様を示すために、「含む(comprising)」及び「含む(including)」に代えて「実質的に~からなる」及び「~からなる」という用語を使用することができ、それらも開示される。
【外国語明細書】