(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100274
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ステントデリバリデバイスおよびステントデリバリシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20220628BHJP
【FI】
A61F2/966
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206118
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】63/129,996
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】大西 泰平
(72)【発明者】
【氏名】山縣 敏博
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博文
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA54
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB12
4C267BB40
4C267CC20
4C267CC22
4C267CC23
4C267CC24
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】ステントを留置しやすく、かつ、再度収容(リキャプチャ)しやすいステントデリバリデバイスおよびステントデリバリシステムを提供する。
【解決手段】ステントデリバリデバイスは、ステントを搬送するステントデリバリデバイスであって、インナーシースと、前記インナーシースが挿通するアウターシースと、を備え、前記インナーシースは、長手方向における先端部の外周において径方向外側に突出して前記ステントと係合する突起を有し、前記突起は、近位側端面と遠位側端面とを有し、前記近位側端面は、先端側に向かって凹んだ凹部を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントを搬送するステントデリバリデバイスであって、
インナーシースと、
前記インナーシースが挿通するアウターシースと、
を備え、
前記インナーシースは、長手方向における先端部の外周において径方向外側に突出して前記ステントと係合する突起を有し、
前記突起は、近位側端面と遠位側端面とを有し、
前記近位側端面は、先端側に向かって凹んだ凹部を有する、
ステントデリバリデバイス。
【請求項2】
前記突起の遠位側端面は、前記外周から前記径方向外側に向かって狭くなる略台形状に形成されている、
請求項1に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項3】
前記突起は、前記径方向外側を向く面であって前記遠位側端面と前記近位側端面とに接する上面を有し、
前記上面は、前記遠位側端面から前記近位側端面に向かって狭くなる略台形状に形成されている、
請求項1または請求項2に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項4】
前記突起は、前記外周から前記上面に向かって互いの距離が短くなるように傾斜する2つの側面を有する、
請求項3に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項5】
前記突起は、前記遠位側端面から前記近位側端面に向かって互いの距離が短くなるように傾斜する2つの側面を有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項6】
前記近位側端面の前記凹部は、前記遠位側端面に向かって延びる傾斜である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項7】
前記傾斜は、第一傾斜面と、前記径方向に対して前記第一傾斜面と異なる角度で傾斜する第二傾斜面とを有する、
請求項6に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項8】
前記近位側端面の前記凹部は、前記遠位側端面に向かって湾曲する弧面である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項9】
前記突起を複数備え、
前記複数の突起は、前記インナーシースの前記先端部の外周において、周方向に略均等の設けられている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項10】
前記近位側端面の前記径方向における高さは、前記ステントを形成するワイヤの半径よりも大きい、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項11】
前記近位側端面の前記凹部の前記長手方向における深さは、前記ステントを形成するワイヤの半径以下である、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項12】
前記インナーシースに対して前記アウターシースを操作する操作ハンドルと、
をさらに備える、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイス。
【請求項13】
ステントと、
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のステントデリバリデバイスと、を備え、
前記ステントは、前記インナーシースの前記突起に係合し、前記アウターシースと前記インナーシースの間に介在するように配置される、
ステントデリバリシステム。
【請求項14】
拡張した前記ステントの内半径は、前記インナーシースの中心軸から前記近位側端面の前記径方向における上端までに距離よりも大きい、
請求項13に記載のステントデリバリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2020年12月23日に出願された米国仮出願第63/129,996号の利益を主張し、その全文が参照により本明細書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、ステントデリバリデバイスおよびステントデリバリシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
消化管等に生じた狭窄や閉塞に対して、ステントを留置して拡張する手技が知られている。ステントを狭窄等に留置するためにステントデリバリデバイスが用いられている。ステントデリバリデバイスは、内視鏡の処置具チャンネルを挿通してステントを狭窄等まで搬送する。
【0004】
特許文献1に記載されたステントデリバリデバイスは、ステントの軸方向の相対移動を防止するフィンを備える。特許文献1に記載されたステントデリバリデバイスは、フィンが傾斜する面を有しているため、ステントをリリースするときフィンによってステントが捕捉されにくく、ステントをリリースしやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
術者は、ステントを完全にリリースするまでにステントの留置位置を再設定する場合、ステントをステントデリバリデバイスに再度収容(リキャプチャ)する。しかしながら、特許文献1に記載されたステントデリバリデバイスは、フィンに形成された傾斜によりステントがフィンから外れやすいため、ステントを再度収容(リキャプチャ)しにくい。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、ステントを留置しやすく、かつ、再度収容(リキャプチャ)しやすいステントデリバリデバイスおよびステントデリバリシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係るステントデリバリデバイスは、ステントを搬送するステントデリバリデバイスであって、インナーシースと、前記インナーシースが挿通するアウターシースと、を備え、前記インナーシースは、長手方向における先端部の外周において径方向外側に突出して前記ステントと係合する突起を有し、前記突起は、近位側端面と遠位側端面とを有し、前記近位側端面は、先端側に向かって凹んだ凹部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のステントデリバリデバイスおよびステントデリバリシステムは、ステントを留置しやすく、かつ、再度収容(リキャプチャ)しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るステントデリバリシステムの全体構成を示す図である。
【
図1B】同ステントデリバリシステムのインナーシースおよびステントを示す図である。
【
図2A】同インナーシースのステント収容部を示す図である。
【
図2B】同ステントが収容された同ステント収容部を示す図である。
【
図3】同ステントを展開するステントデリバリデバイスを示す図である。
【
図6】同ステントストッパの径方向における断面図である。
【
図7A】同ステントストッパの突起の上面図である。
【
図7B】同ステントストッパの突起の上面図である。
【
図8】同ステントと同突起の上面との関係を説明する図である。
【
図9A】近位側端面の凹部の異なる形状を示す図である。
【
図9B】近位側端面の凹部の異なる形状を示す図である。
【
図9C】近位側端面の凹部の異なる形状を示す図である。
【
図10A】同ステントと同近位側端面との関係を説明する図である。
【
図10B】同ステントと同近位側端面との関係を説明する図である。
【
図10C】同ステントと同近位側端面との関係を説明する図である。
【
図12】同ステントと同ステントストッパとの関係を説明する図である。
【
図13A】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図13B】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図13C】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図13D】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図14】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図15A】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図15B】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図16A】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【
図16B】他の態様のステントストッパの径方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るステントデリバリシステム100について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1Aは、ステントデリバリシステム100の全体構成を示す図である。
ステントデリバリシステム100は、全体として細長に形成され、内視鏡の処置具チャンネルを挿通してステント30を狭窄等まで搬送する。ステントデリバリシステム100は、ステント30と、ステントデリバリデバイス1と、を備える。ステントデリバリデバイス1は、インナーシース10と、アウターシース20と、先端チップ52と、操作ハンドル70と、を備える。以降の説明において、ステントデリバリシステム100の長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側(遠位側)A1」、操作ハンドル70側を「基端側(近位側)A2」という。
【0013】
図1Bは、インナーシース10およびステント30を示す図である。
インナーシース10は、アウターシース20の内部空間(ルーメン)を挿通可能な長尺の筒状部材である。インナーシース10は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。インナーシース10は、ガイドワイヤGWが挿通するルーメン(ガイドワイヤルーメン)を有する。
【0014】
アウターシース20は、内視鏡の処置具チャンネルを挿通可能な長尺の筒状部材である。アウターシース20は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。アウターシース20は、インナーシース10をスライド可能に収容する内部空間(ルーメン)を有する。内部空間(ルーメン)は、アウターシース20の長手方向Aに沿って形成されている。アウターシース20は、ガイドワイヤGWを外部に排出するガイドワイヤポート22を有する。
【0015】
ステント30は、筒状の自己拡張型ステントであり、ワイヤを編み込んで形成されている。ステント30は、少なくとも近位端31において略菱形の網目形状を有する。ステント30は、胆管、食道、十二指腸、小腸、大腸等の消化器系体内管腔等に留置され、主として管腔を拡張・保持する目的で使用される。本実施形態のステント30は、その外周面側を樹脂フィルム等で被覆したいわゆるカバードステントではなく、フィルム等で被覆されないアンカバードステントである。ただし、ステント30は、樹脂フィルム等で被覆してカバードステントとして用いることもできる。
【0016】
先端チップ52は、インナーシース10の先端に設けられている。先端チップ52は、略円錐状の形状を有し、長手方向Aに延びる貫通孔53を有する。貫通孔53は、インナーシース10のルーメン(ガイドワイヤルーメン)と連通しているため、先端チップ52の貫通孔53にガイドワイヤを挿入すると、ガイドワイヤGWをインナーシース10のガイドワイヤルーメン内に進入させることができる。
【0017】
操作ハンドル70は、基端ハンドル40と、先端ハンドル50と、を有する。基端ハンドル40は、インナーシース10の基端部16と接続されている。先端ハンドル50は、アウターシース20の基端部26と接続されている。
図1Aに示すように、先端ハンドル50が基端ハンドル40に対して前進することにより、アウターシース20はインナーシース10に対して前進してステント30を覆う。
図1Bに示すように、先端ハンドル50が基端ハンドル40に対して後退することにより、アウターシース20はインナーシース10に対して後退してステント30を露出させる。
【0018】
ステント30は、内部にインナーシース10が通されて縮径した状態で、インナーシース10とアウターシース20との間の隙間に収容される。インナーシース10の外周部においてステント30が収容される部分を「ステント収容部11」という。ステント収容部11は、インナーシース10の先端部18の外周に設けられている。
【0019】
図1Bに示すように、インナーシース10は、ステント収容部11よりも先端側A1にマーカ51を有する。マーカ51は、放射線不透過性を含む材料で形成されており、術者はX線透視下でマーカ51の位置を確認して、収容されたステント30の位置を把握できる。
【0020】
図2Aおよび
図2Bは、インナーシース10のステント収容部11を示す図である。
インナーシース10は、ステント収容部11の基端部15においてステントストッパ60を有する。
【0021】
図3は、ステント30を展開するステントデリバリデバイス1を示す図である。
術者は、ステントデリバリデバイス1を管腔80内に配置した後、先端ハンドル50を基端ハンドル40に対して後退させることにより、アウターシース20の先端部28をインナーシース10の先端部18に対して後退させる。アウターシース20が矢印Pの方向に後退して、ステント30の先端部32が露出して管腔80の壁に対して拡張する。
【0022】
アウターシース20の先端部28がステントストッパ60が配置されたステント収容部11の基端部15を越えて後退すると、ステント30はステントデリバリデバイス1から完全に展開される。展開されたステント30は管腔80内に留置される。
【0023】
図4は、ステントストッパ60を示す図である。
ステントストッパ60は、ステント収容部11の基端部15に設けられている。ステントストッパ60は、樹脂等で形成されており、ストッパ本体62と、ストッパ本体62から径方向R外側に突出する少なくとも一つの突起66と、を有する。
図4に例示するステントストッパ60は、一つの突起66を有する。
【0024】
ストッパ本体62は、円筒状に形成されており、インナーシース10の外周部に固定されている(
図6参照)。なお、ストッパ本体62の形状は、円筒形状に限定されず、突起66をインナーシース10の外周部に対して固定可能な形状あればよい。
【0025】
突起66は、ステントデリバリデバイス1によりステント30を搬送するとき、収容されたステント30をリリース可能に係止または固定する。突起66は、略四角錐形状に形成されており、遠位側端面66aと、上面66bと、近位側端面66cと、2つの側面66dと、底面66eと、を含む。いずれの面も平面であってもよく曲面であってもよい。
【0026】
遠位側端面66aは、先端側A1を向く面であり、長手方向Aの先端側A1から見て、ストッパ本体62の外周から径方向R外側に向かって狭くなる略台形状に形成されている。そのため、遠位側端面66aは、ステント30がステントストッパ60から径方向R外側に拡張して離脱する動作を妨げない。
【0027】
上面66bは、径方向R外側を向く面であり、遠位側端面66aと近位側端面66cとに接している。上面66bは、径方向R外側から見て、遠位側端面66aから近位側端面66cに向かって狭くなる略台形状に形成されている。そのため、上面66bは、略菱形の網目形状を有するステント30の近位端31に干渉しにくく、ステント30がステントストッパ60から拡張して離脱する動作を妨げない。
【0028】
図5は、ステントストッパ60の側面図である。
近位側端面66cは、基端側A2を向く面であり、ステント30のワイヤを係止または固定する面である。近位側端面66cは、先端側A1に向かって凹んだ凹部68を有する。
図5に例示する近位側端面66cの凹部68は、第一傾斜面665aと第二傾斜面665bにより形成されている。第一傾斜面665aは、第二傾斜面665bよりも径方向R外側に設けられ、第二傾斜面665bよりも径方向Rに対して傾斜している。
【0029】
図6は、ステントストッパ60の径方向Rにおける断面図である。
二つ側面66dは、長手方向Aに延びる突起66の中心線を挟んで両側に設けられた面である。二つ側面66dは、遠位側端面66a、上面66b、近位側端面66cおよび底面66e(またはストッパ本体62)に接続されている。二つの側面66dは、長手方向Aにおいて、遠位側端面66aから近位側端面66cに向かって二つの側面66dの間の距離が短くなるように概ね傾斜している。また、
図6に示すように、二つの側面66dは、径方向Rにおいて、底面66eから上面66bに向かって二つの側面66dの間の距離が短くなるように概ね傾斜している。そのため、二つの側面66dは、ステント30がステントストッパ60から拡張して離脱する動作を妨げない。なお、二つの側面66dは、ステント30のワイヤが動作するスペースを確保するために、それぞれ互いに向かって凹んでもよい。
【0030】
底面66eは、
図4に示すように、ストッパ本体62に取り付けされて固定される面である。なお、ストッパ本体62と突起66とは、一体に形成されたものであってもよい。
【0031】
図7Aは、突起66の上面図である。
突起66の上面66bは、
図7Aに示すように、近位側端面66cに向かって狭くなる略台形形状660に形成されている。ステント30がステントストッパ60に拘束されると、略菱形の網目形状を有するステント30の近位端31とステントストッパ60の側面66dとの間の接触面積が増加する。その結果、ストッパ本体62またはインナーシース10の長手方向Aにおける強力で安定した拘束力が得られ、ステントストッパ60によるステント30のより安定した拘束が可能になる。
【0032】
図7Bは、突起66の上面図である。
突起66の上面66bは、
図7Bに示すように、基端側A2に向かってより狭い弧を有する略半楕円形(略半菱形)形状661を有してもよい。ステント30がステントストッパ60に拘束されると、略菱形の網目形状を有するステント30の近位端31とステントストッパ60の側面66dとの間の接触面積がより増加する。その結果、ストッパ本体62またはインナーシース10の長手方向Aにおける強力で安定した拘束力が得られ、ステントストッパ60によるステント30のより安定した拘束が可能になる。
【0033】
図8は、ステント30と突起66の上面66bとの関係を説明する図である。
図8(A)に示すように、長手方向Aにおいて交差する上面66bの2つの側線666と側線667とがなす角度を「角度α(>0°)」と定義する。上面66bの近位端の幅(上面66bの近位端における2つの側線666と側線667との間の距離)を「長さW1」と定義する。
【0034】
図8(B)に示すように、縮径状態のステント30の近位端31の2つの湾曲したワイヤ301およびワイヤ302との間の長さW2が長さW1と等しくなるワイヤ301およびワイヤ302上の点を「点P1および点2」と定義する。また、ワイヤ301の点P1における接線を「接線L1」、ワイヤ302の点P2における接線を「接線L2」と定義する。また、長手方向Aにおいて交差する接線L1と接線L2とがなす角度を「角度β(>0°)」と定義する。
【0035】
略菱形の網目形状を有するステント30の近位端31とステントストッパ60の側面66dとの間の接触面積が増加させるため、角度αは角度βと等しいことが望ましく(角度α=角度β)、角度α<角度βであってもよい。
【0036】
図9Aから
図9Cは、近位側端面66cの凹部68の異なる形状を示す図である。
図9Aに例示する近位側端面66cは、遠位側端面66aに向かって傾斜し、遠位側端面66aに向かって延びる傾斜663を有する。傾斜663は、先端側A1に向かって凹んだ凹部68を形成する。
【0037】
図9Bに例示する近位側端面66cは、近位側端面66cに向かって湾曲する弧面664を有する。弧面664は、先端側A1に向かって凹んだ凹部68を形成する。
【0038】
図9Cに例示する近位側端面66cは、第一傾斜面665aおよび第二傾斜面665bを含む複数の傾斜により構成された遠位側端面66aに向かって延びる窪みを有する。第一傾斜面665aおよび第二傾斜面665bは、径方向Rに対して異なる角度で傾斜した多段階テーパ形状である。第一傾斜面665aおよび第二傾斜面665bは、先端側A1に向かって凹んだ凹部68を形成する。
【0039】
図10Aから
図10Cは、ステント30と近位側端面66cとの関係を説明する図である。近位側端面66cは、先端側A1に向かって凹んだ凹部68を有しており、ステント30のワイヤを拘束する「ワイヤ受け部」として機能する。近位側端面66cの高さであって、径方向Rにおける底面66eから上面66bまでの距離を「高さh」と定義する。
【0040】
図10Aに例示するステント30と近位側端面66cにおいて、近位側端面66cの高さhは、ステント30のワイヤの直径Dよりも小さく、ワイヤの半径r(直径Dの半分)よりも小さい。この場合、ステント30が長手方向Aに荷重を受けた場合、ステントストッパ60の近位側端面66cはステント30のワイヤを拘束することができない。
【0041】
図10Bに例示するステント30と近位側端面66cにおいて、近位側端面66cの高さhは、ステント30のワイヤの直径Dより大きい。この場合、近位側端面66cは、ステント30がステントストッパ60から径方向R外側に拡張して離脱する動作を阻害する。
【0042】
図10Cに例示するステント30と近位側端面66cにおいて、近位側端面66cの高さhは、ステント30のワイヤの半径よりも大きい(h>r)。この場合、遠位側端面66aは、ステント30がステントストッパ60から径方向R外側に拡張して離脱する動作を妨げない。よって、
図10Aから
図10Cにおいて例示するステント30と近位側端面66cとの関係のうち、
図10Cに例示するステント30と近位側端面66cとの関係(h>r)が望ましい。
【0043】
図11Aおよび
図11Bは、近位側端面66cの凹部68を示す図である。
近位側端面66cの凹部68における長手方向Aの長さLは、凹部68の長手方向Aにおける深さとして定義される。
図11Aに例示する近位側端面66cの長さLは、近位側端面66cの弧面形状の深さである。
図11Bに例示する近位側端面66cの長さLは、上面66bの近位端と底面66eの近位端との間の長手方向Aの長さである。
【0044】
図11Aおよび
図11Bに例示する凹部68の長さ(深さ)Lは、ステント30のワイヤの半径r以下であることが望ましい(L≦r)。凹部68の長さ(深さ)Lがステント30のワイヤの半径r以下である場合、ステント30がステントストッパ60から径方向R外側に拡張して離脱する動作を妨げない。凹部68の長さ(深さ)Lがステント30のワイヤの半径rよりも大きい場合、ステント30はステントストッパ60から径方向R外側にスムーズに離脱しにくい。
【0045】
図12は、ステント30とステントストッパ60との関係を説明する図である。
拡張したステント30は、ステントストッパ60から離脱可能となる。完全に拡張したステント30の内半径r3は、ストッパ本体62の外半径と近位側端面66cの高さhとの合計Sよりも大きい(r3>S)。合計Sは、インナーシース10の中心軸から近位側端面66cの径方向Rにおける上端までに距離とも定義できる。
【0046】
図13Aから
図13Dは、他の態様のステントストッパの径方向Rの断面図である。
図13Aに例示するステントストッパ60Aは、ストッパ本体62上に形成された1つの突起66のみを有する。
【0047】
図13Bに例示するステントストッパ60Bは、ストッパ本体62上に形成された2つの突起66を有する。2つの突起66は、ストッパ本体62の周方向Cに沿って略均等に配置されており、径方向Rにおいて対向する位置に配置されている。
【0048】
図13Cに例示するステントストッパ60Cは、ストッパ本体62上に形成された3つの突起66を有する。3つの突起66は、ストッパ本体62の周方向Cに沿って略均等に配置されている。
【0049】
図13Dに例示するステントストッパ60Dは、ストッパ本体62上に形成された4つの突起66を有する。4つの突起66は、ストッパ本体62の周方向Cに沿って略均等に配置されている。
【0050】
ステントストッパ60B,60C,60Dは、周方向Cに沿って複数の突起66を略均等に配置することにより、ステントストッパ60B,60C,60Dによるステント30の拘束が均等に行われやすく、より安定的なりキャプチャ(再縮径・再収容)が可能となる。ステントストッパ60B,60C,60Dは、より多くの突起66を設けることにより、ステント30に対する拘束力を向上させることができる。
【0051】
図14は、他の態様のステントストッパ60の径方向Rの断面図である。
図14に例示するステントストッパ60-1は、径方向Rの断面が正三角形の頂点を面取りした六角形である。面取りされた部分が突起66Aとして機能する。ステントストッパ60-1の中心Oから最も遠い頂点までの距離r6は、アウターシース20の内半径r2よりも小さい(r6<r2)。そのため、ステントストッパ60-1は、ステント30をリリースおよびリキャプチャするとき、アウターシース20の動きを妨げない。
【0052】
図15Aおよび
図15Bは、他の態様のステントストッパの径方向Rの断面図である。
図15Aに例示するステントストッパ60-2は、ステントストッパ60-1と比較して、隣り合う突起66Aに接する面67(
図14参照)の中心付近が中心O側に凹んだ凹部68を有する。
図15Bに示すように、ステントストッパ60-2は、ステントストッパ60-1と比較して、アウターシース20との間の空間WS(ステント30のワイヤが動作するワイヤスペースWS)が広い。そのため、ステント30のワイヤとアウターシース20との間の摩擦が減り、ステント30をリリースおよびリキャプチャする動作を実施しやすい。
【0053】
図16Aおよび
図16Bは、他の態様のステントストッパの径方向Rの断面図である。
図16Aに例示するステントストッパ60-3は、ステントストッパ60-1と比較して、隣り合う突起66Aに接する面67(
図14参照)の両端付近に切り欠き部69を有する。切り欠き部69は、突起66Aに近い位置ほど中心Oに対して深くなるように切り欠かれている。
図16Bに示すように、ステントストッパ60-3は、ステントストッパ60-1と比較して、アウターシース20との間の空間WS(ステント30のワイヤが動作するワイヤスペースWS)がより広い。そのため、ステント30のワイヤとアウターシース20との間の摩擦がより削減される。
【0054】
本実施形態に係るステントデリバリデバイス1によれば、ステント30をリリースするとき、ステントストッパ60はステント30が径方向R外側に拡張して離脱する動作を妨げない。ステント30をリキャプチャするとき、ステントストッパ60の近位側端面66cはステント30を拘束しやすい。そのため、ステントデリバリデバイス1は、ステント30を留置しやすく、かつ、再度収容(リキャプチャ)しやすい。
【0055】
以上、本発明の実施形態および変形例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 ステントデリバリシステム
1 ステントデリバリデバイス
10 インナーシース
11 ステント収容部(先端部外周)
20 アウターシース
30 ステント
40 基端ハンドル
50 先端ハンドル
70 操作ハンドル(操作部)
60,60A,60B,60C,60D ステントストッパ
60-1,60-2,60-3 ステントストッパ
62 ストッパ本体
66,66A 突起
66a 遠位側端面
66b 上面
66c 近位側端面
66d 側面
66e 底面
68 凹部
A 長手方向
A1 先端側(遠位側)
A2 基端側(近位側)