(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100303
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】化学発光による警告表示具
(51)【国際特許分類】
F21K 2/06 20060101AFI20220628BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220628BHJP
G09F 13/20 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
F21K2/06
F21S2/00 661
G09F13/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215547
(22)【出願日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020220056
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515020223
【氏名又は名称】株式会社プラン・ドゥ
(71)【出願人】
【識別番号】000173429
【氏名又は名称】細谷火工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩見 眞人
(72)【発明者】
【氏名】細谷 穰志
【テーマコード(参考)】
5C096
【Fターム(参考)】
5C096AA21
5C096BA04
5C096BB07
5C096BB18
5C096BB22
5C096CA03
5C096CC15
5C096EA05
5C096EA10
5C096FA03
5C096FA11
(57)【要約】
【課題】 着火された発炎筒が路面に接地した後に、風圧などによって不本意にも易々と転がってしまい、信号筒としての役割が低下したり、火炎で路面を損傷したり、火炎が路肩の植物に移ったりする、と言うような重大な問題を生じていた。
【解決手段】 く字形状の平板なガラス製の内ケース2にシュウ酸ジフェニル溶液20(蛍光色素等々を含む)を密封し、この内ケース2を過酸化水素溶液11と共に、く字形状の平板なポリエチレン製の外ケース1に収めて密封し、この外ケース1を重錘としての台座3に固定して成る。台座3は中空の容器であって注水口30から水31を充填して重錘と為す。台座3から路面に置くことによって立ち姿勢のまま火炎を出さずに発光させることが出来る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つ折り状の平板なケミカルライトの少なくとも一側縁に、このケミカルライトを立てるための重錘を有する、化学発光による警告表示具。
【請求項2】
ケミカルライトが蛍光液を納めた容器とその内側の酸化液を納めた容器とから成るものであり、蛍光液と酸化液とが混ざり合って化学発光を起こすように、蛍光液を納めた容器の外側を押すことで酸化液を納めた容器が押されて破れるように構成されている、請求項1に記載の化学発光による警告表示具。
【請求項3】
少なくとも二つ折りが可能な平板状の発光面を有するケミカルライトの少なくとも一側縁に、このケミカルライトを立てるための重錘を有する、化学発光による警告表示具。
【請求項4】
ケミカルライトが蛍光液を納めた容器と酸化液を納めた容器とから成るものであり、二つ折りとする部位がこれ等の2つの容器に掛かっており、二つ折りにすることで酸化液を納めた容器が破れて蛍光液と酸化液とが混ざり合い、化学発光を起こすように構成されている、請求項3に記載の化学発光による警告表示具。
【請求項5】
二つ折りとする部位が垂直方向を向くようにして前記重錘が設けられている、請求項1または請求項3に記載の化学発光による警告表示具。
【請求項6】
二つ折りとする部位が水平方向を向くようにして前記重錘が設けられている、請求項1または請求項3に記載の化学発光による警告表示具。
【請求項7】
前記重錘に水が入った容器を用いる、請求項1または請求項3に記載の化学発光による警告表示具。
【請求項8】
前記重錘に砂が入った容器を用いる、請求項1または請求項3に記載の化学発光による警告表示具。
【請求項9】
少なくとも二つ折りが可能なケミカルライトを、このケミカルライトを立てるための重錘となる透明液体が入った柔軟な透明容器に納めて成る、化学発光による警告表示具。
【請求項10】
前記透明容器が二つ折りの状態を保持するための枠体を備えている、請求項9に記載の化学発光による警告表示具。
【請求項11】
ケミカルライトが蛍光液を納めた柔軟な透明容器とその内側の酸化液を納めた容器とから成るものであり、蛍光液と酸化液とが混ざり合って化学発光を起こすように、蛍光液を納めた透明容器を折ることで酸化液を納めた容器が折れて破れるように構成されていると共に、蛍光液とこれを納めた容器とがこのケミカルライトを立てるための重錘となるように構成されている、化学発光による警告表示具。
【請求項12】
前記蛍光液を納めた透明容器が、折った状態を保持するための枠体を備えている、請求項11に記載の化学発光による警告表示具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路交通に於ける安全を確保するための、化学発光を利用した警告表示具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より高速道路上での事故や工事作業のために車線規制が行われている。この車線規制には、警告表示具としての、着火した発炎筒を一定間隔で置いて行くと言うことが先ず行われる。この作業には低速走行の作業車から、作業員の手で発炎筒を落とすようにして置くようにしている。このようにして、特に後続車に事故の発生を知らせて安全を図っている。
【0003】
この発炎筒一例として特開平11-296753の信号炎管を上げる。このものは紙筒頂部より順次、発火薬、伝火薬、固形状発炎剤及び粉状発炎剤からなる信号炎管である。信号炎管の着火から路面に接地するまでの間は機械的強度に優れた固形状伝火薬が燃焼しており、衝撃により燃焼中断することなく、また路面に接地後は発煙量の少ない粉状発炎剤が燃焼するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような発炎筒が使用されるような状況は緊急事態下であるために、発炎筒は路上に置かれると言うよりは投げられることも多く、筒状であるために路上を転がる問題が指摘されている。特に高速道路上では、火の付いた発炎筒が車両による跳ね上げによって本線外へと飛び出し、路側の植物に炎が燃え移るような重大な問題を生じているのが現状である。また一方で、火炎による高速路面の損傷と言う問題もある。
【0006】
そこでこの発明では、火炎によって周辺に火災を発生させることがないような、火炎による路面の損傷がなくなるような、そうした警告表示具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決に先立ち当発明者は、火薬によって火炎を発生させるのではなく、化学発光を用いて火炎に代わる光を発するようにすれば良いのではないかと思考した。言わば化学発光による警告表示具とするのである。
【0008】
すなわち上記課題は、少なくとも二つ折り状の平板なケミカルライトの少なくとも一側縁に、このケミカルライトを立てるための重錘を設けて成るものとすることにより達成される。または上記課題は、少なくとも二つ折りが可能な平板状のケミカルライトの少なくとも一側縁に、このケミカルライトを立てるための重錘を設けて成るものとすることにより達成される。当初コンサート等で使用されているスティック状のケミカルライトに重錘を設ければ良いと考えたのであるが、作業車から落とすようにして置かれた時に転倒させてしまうと、スティック状であるが故に光が見えにくくなると言う問題が起こった。そこで二つ折りの平板状のケミカルライトとすれば良いと言う解決策を得たのである。これは言わば線発光から面発光への転換である。しかも平板を二つ折りしたものは転倒したとしても立体となる部位を生じるために、後続車からより良く見えることが分かった。線発光よりも面発光である方が優れていたのである。
【0009】
サイリューム(登録商標)として良く知られているケミカルライトは、蛍光液を満たした透明容器の中に酸化液のガラス容器が納められているもので、中のガラス容器を割ることで酸化液が蛍光液に触れて化学発光反応が起こり、火炎のように発熱することがなく、発光する。このものあるいはこれに類するケミカルライトを警告表示具として使用するのである。なお本発明に於いて蛍光液や酸化液に何を用いるかは任意設計事項である。
【0010】
少なくとも二つ折りの平板状のケミカルライトとは、屏風で言えば二曲、三曲、四曲等に折れるようにしてあっても、初めから折れているものであっても良いことを言う。重錘を設ける少なくとも一側縁とは、外側縁として現れる二側縁の一側あるいは両側や、底縁として現れる少なくとも二縁の一側あるいは両側と言うことになる。重錘は容器内に水や砂等々を詰めたものである。何を詰めても良いのであるが、道路上で使用するものとしては容器の破損と言うことも有り得るため水や砂あるいは粘土が好適である。中でも水や砂は容器に詰め易いと言う特長もある。
【0011】
平板状の蛍光液を満たした透明容器の中の酸化液のガラス容器について、1個であっても複数個であっても良く、平板状であっても平板状ではないものであっても良い。例えば薬のアンプルに倣いガラス製のアンプルに酸化液を満たしたものが使用可能である。このアンプルを平板状の透明容器の外から、押したり曲げたりして潰すようにするのである。
【0012】
このことに関連して、請求項1の発明を、ケミカルライトが蛍光液を納めた容器とその内側の酸化液を納めた容器とから成るものであり、蛍光液と酸化液とが混ざり合って化学発光を起こすように、蛍光液を納めた容器の外側を押すことで酸化液を納めた容器が押されて破れるように構成することが可能である。このケミカルライトは初めから折れて形成されている。そこで蛍光液を納めた容器の外側から押圧力を加えることで内側の酸化液を納めた容器を破るようにするのである。また請求項3の発明を、ケミカルライトが蛍光液を納めた容器と酸化液を納めた容器とから成るものであり、二つ折りとする部位がこれ等の2つの容器に掛かっており、二つ折りにすることで酸化液を納めた容器が破れて蛍光液と酸化液とが混ざり合い、化学発光を起こすように構成することが可能である。このケミカルライトは当初平板状であるも、二つ折りにすることにより内側の酸化液を納めた容器を破って2液を混合させ、かつ平板状を上記二曲等の立体に変化させるのである。
【0013】
この立体化に付いて、二つ折りとする部位が垂直方向を向くようにして重錘が設けられているものとすることが出来る。恰も屏風のように立つものとなる。あるいは二つ折りとする部位が水平方向を向くようにして重錘が設けられているものとすることが出来る。この場合は切妻屋根のように立つものとなる。何れにしても面発光が立体化する点が特長である。
【0014】
さて上記課題は、二つ折りが可能なケミカルライトを、このケミカルライトを立てるための重錘となる透明液体が入った柔軟な透明容器に納めて成るものとすることにより達成される。透明容器は柔軟なものであるため、二つ折りにすることが出来るが、この際に内部でケミカルライトの容器が破れて蛍光液と酸化液とが混ざり合い、化学発光を起こす。透明容器には透明液体が入っているため、二つ折りにされた状態で立たせることが可能である。透明液体はその質量で透明容器を安定させる。透明液体には何を用いても良いが水が好適である。透明容器も透明液体もケミカルライトの発光を透過するものでなくてはならない。柔軟な透明容器はシンプルなものでは、各辺をヒートシールしたり、折り返す辺を含めたりすることでピロー形の袋としたものが用いられる。食品包装容器などに良く見られる底部の断面形状がW字である所のいわゆる自立スタンド袋を用いれば、底部を以て自立させられるため便利である。なお自立スタンド袋は転倒した場合でも底部が立体形状を残す可能性がり、後続車からの視認性に良い効果を及ぼし得る。
【0015】
また上記課題は、ケミカルライトが蛍光液を納めた柔軟な透明容器とその内側の酸化液を納めた容器とから成るものであり、蛍光液と酸化液とが混ざり合って化学発光を起こすように、蛍光液を納めた透明容器を二つに折ることで酸化液を納めた容器が折れて破れるように構成されていると共に、蛍光液とこれを納めた容器とがこのケミカルライトを立てるための重錘となるように構成されているものとすることによって達成される。透明容器は二つ折りにされた状態で立たせることが可能であり、二つ折りにされた状態で蛍光液の質量によって立たせることが可能である。
【0016】
このことに関連して、請求項9の警告表示具も請求項11の警告表示具も、透明な容器が二つ折りの状態を保持するための枠体を備えていると良いことは上述した通りである。枠体は透明容器の外側に透明容器に添わせて設けることも、透明容器の内部に設けることも可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、火薬によって火炎を発生させるのではなく、化学発光を用いて火炎に代わる光を発するようにしているため、周辺に火災を発生させることがない。また火炎による路面の損傷がなくなると言う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】 実施例1の化学発光による警告表示具を斜面視した説明図である。
【
図2】 この警告表示具のX-X断面視による説明図である。
【
図3】 実施例2の化学発光による警告表示具を側面視した説明図である。
【
図4】 この警告表示具の使用状態を表す説明図である。
【
図5】 実施例3の化学発光による警告表示具を正面視した説明図である。
【
図6】 実施例4の化学発光による警告表示具を正面視した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0019】
図1及び
図2を用いてこの実施例を説明する。このケミカルライトは初めからく字形状に折れ曲がって形成されている点が特徴である。く字形状の平板なガラス製の内ケース2にシュウ酸ジフェニル溶液20(蛍光色素等々を含む)が密封されており、この内ケース2が過酸化水素溶液11と共に、く字形状の平板なポリエチレン製の外ケース1に収められて密封されている。く字形状の外ケース1の左右の中央部には指で押して内ケース2を割るための押圧部10のマークが付されている。
【0020】
恰も2曲の屏風のような形状の外ケース1は、その底縁の全体が台座3の上面に固定されている。台座3は中空の容器であって注水口30から水31を充填することが出来るようになっている。水31が充填されて注水口30を密閉された台座3は重錘の役目を担っている。すなわち重錘としての水31入りの台座3が路面に置かれると、その上のく字形状のケミカルライトが立ち姿勢を保つことになる。
【0021】
この実施例の使用法であるが、予め台座3に水31を充填しておく。次にポリエチレン製の柔軟な外ケース1を押圧部10の辺りで強く押してやると、ガラス製の内ケース2が破れて中のシュウ酸ジフェニル溶液20が漏れ出し、外ケース1の過酸化水素溶液11と混合される。するとシュウ酸ジフェニル溶液20と過酸化水素溶液11とが反応してエネルギーを放出し、これによって蛍光色素が励起されて蛍光を発するようになる。そこでこれを路面に置けば重錘としての台座3によって発光面が立った状態を保つので、後続車からも良く見える。
またこの時に重錘5がこの山形の底部となるので、これを路面に置けば重錘5を下にして、折り目41が水平方向を向いて、左右のケミカルライト4,40が切妻屋根のように立つことになる。この姿勢は安定したものであって、その信頼性は十分に高いということが出来る。