IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ズルツァー ミクスパック アーゲーの特許一覧

特開2022-100359プライミング特徴を有する注射装置及び注射装置のプライミング手順を実行する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100359
(43)【公開日】2022-07-05
(54)【発明の名称】プライミング特徴を有する注射装置及び注射装置のプライミング手順を実行する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20220628BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068723
(22)【出願日】2022-04-19
(62)【分割の表示】P 2020501134の分割
【原出願日】2017-09-25
(31)【優先権主張番号】15/649,287
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510199605
【氏名又は名称】ズルツァー ミクスパック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Sulzer Mixpac AG
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム カイテル
(57)【要約】
【課題】固定用量が必ずしもそれぞれの固定用量の等倍ではない多数の所定の固定用量を送達できる用量設定機構を含む注射装置をユーザに提供する。
【解決手段】用量設定機構を組み込んだ注射装置を提供する。用量設定機構は、所定の固定用量の有限のセットに対応する1又は複数の用量停止部を有する用量セレクタを含む。有限の所定の固定用量のセットは最低固定用量と1又は複数の高めの固定用量を含み、当該1又は複数の高めの固定用量の少なくとも1つは、最低固定用量に当該最低固定用量の端数を加えたものに等しい。用量設定機構はさらに、スナップ要素と回転可能に係合する結合アセンブリを含んでもよく、スナップ要素は用量設定中と用量送達中の両方で結合アセンブリに対して回転できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合アセンブリ、
用量ノブ(31)、
用量セレクタ(35)、及び
スナップ要素(33)を有する、用量設定機構であって、
前記結合アセンブリが、複数のスナップ結合要素(44)の固定セットを有する前記スナップ要素(33)と回転可能に係合し、
前記結合アセンブリが、用量設定中及び用量送達中に前記用量セレクタ(35)における複数の用量セレクタ結合要素の対応するセットと係合し、
前記結合アセンブリが、用量送達中に前記用量ノブ(31)における複数のノブ結合要素と係合するが、用量設定中には係合しない、用量設定機構。
【請求項2】
前記結合アセンブリが前記スナップ要素(33)に対して軸方向に固定されている、請求項1に記載の用量設定機構。
【請求項3】
前記スナップ要素(33)が、用量設定中及び用量送達中に前記結合アセンブリと前記用量セレクタ(35)の両方に対して回転する、請求項1又は2に記載の用量設定機構。
【請求項4】
前記スナップ要素(33)が、前記用量セレクタ(35)の内面(35b)に位置する多数の停止部(55,55a,55c,55d)と係合する突起部(45)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項5】
前記多数の停止部(55,55a,55c,55d)は、有限の所定の固定用量のセットを定めるために互いから離れた複数の用量停止部(55)を有し、それにより前記突起部(45)の用量停止部(55)との係合が送達用の薬剤の単一の固定用量を設定し、有限の所定の固定用量のセットは最低固定用量と1又は複数の高めの固定用量を含む、請求項4に記載の用量設定機構。
【請求項6】
前記1又は複数の高めの固定用量が前記最低固定用量の偶数倍に等しくないように、複数の用量停止部(55)の間の距離が選択される、請求項5に記載の用量設定機構。
【請求項7】
前記1又は複数の高めの固定用量の少なくとも1つが前記最低固定用量の端数を加算した前記最低固定用量に等しいように、複数の用量停止部(55)の間の距離が選択される、請求項5又は6に記載の用量設定機構。
【請求項8】
前記用量セレクタ(35)を、用量停止部(55)の異なる配置を有する第2用量セレクタと交換することで、有限の所定の固定用量の異なるセットを有する用量設定機構がもたらされるように、前記有限の所定の固定用量が複数の用量停止部(55)の数及びこれらの間の相対的間隔のみによって定められる、請求項7に記載の用量設定機構。
【請求項9】
前記スナップ要素(33)と前記用量セレクタ(35)の第1固定相対位置があり、また前記スナップ要素(33)と前記用量セレクタ(35)の第2固定相対位置があり、前記突起部(45)は前記第1固定相対位置において前記用量停止部(55)と係合できるが、前記第2固定相対位置において前記用量停止部(55)と係合できず、前記第1固定相対位置は用量設定中に実現され、前記第2固定相対位置は用量送達中に実現される、請求項4~8のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項10】
前記結合アセンブリが、互いから等しく離れた、多数の半径方向に突出する長手方向スプライン(52)を有し、前記用量停止部(55)のそれぞれの間の空間は、前記半径方向に突出する長手方向スプライン(52)のそれぞれの間の空間の倍数である、請求項4~9のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項11】
前記用量ノブ(31)における前記ノブ結合要素は、用量設定中に前記スナップ要素(33)の複数のスナップ結合要素の固定セットと係合し、噛み合う、請求項1~10のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項12】
用量設定中の前記用量ノブ(31)の回転が、前記スナップ要素(33)の回転及び軸方向移動を生じさせ、また前記用量セレクタ(35)の軸方向移動のみを生じさせる、請求項1~11のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項13】
前記結合アセンブリが、前記スナップ要素(33)の外面の周りに周方向に位置している、請求項1~12のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項14】
結合アセンブリ、
用量ノブ(31)、
所定の固定用量設定の有限のセットに対応する複数の用量停止部(55)を有する用量セレクタ(35)、
スナップ要素(33)、及び
所定の固定用量設定の前記有限のセットの1つとは異なる用量の設定を防止する安全装置構成部品、
を有する用量設定機構。
【請求項15】
前記安全装置構成部品が付勢部材を有する、請求項14に記載の用量設定機構。
【請求項16】
前記付勢部材は、前記スナップ要素(33)に作動式に接続した第1端部とハウジングに対して回転可能に固定された第2端部とを有するねじりばね(90)であり、用量設定中の前記スナップ要素(33)の回転は、前記第1端部を前記第2端部に対して回転させる、請求項15に記載の用量設定機構。
【請求項17】
前記ねじりばね(90)は用量設定機構(30)の組み立て中に所定のトルクに付勢される、請求項16に記載の用量設定機構。
【請求項18】
前記ねじりばね(90)のトルクは用量設定中に増加する、請求項17に記載の用量設定機構。
【請求項19】
トルクは前記スナップ要素(33)を逆回転させるのに十分であり、それで突起部(45)が先の用量停止部より高い固定用量に対応する次の用量停止部(55)に係合するほど十分には前記スナップ要素(33)が回転されない場合に、前記スナップ要素(33)の外側にある突起部(45)が先の用量停止部(55)に係合するように戻る、請求項13~18のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項20】
設定用量の送達が、前記用量ノブ(31)に近位方向に適用される軸方向駆動力を必要とする、請求項14~18のいずれか一項に記載の用量設定機構。
【請求項21】
ハウジング(3)、
前記ハウジング(3)に作動式に接続したカートリッジホルダ(2)、及び
ハウジング(3)内に位置した用量設定機構(30)を有する、注射装置であって、
前記用量設定機構は、結合アセンブリ、用量ノブ(31)、用量セレクタ(35)及びスナップ要素(33)を有し、
前記結合アセンブリが、複数のスナップ結合要素(44)の固定セットを有する前記スナップ要素(33)と回転可能に係合し、
前記結合アセンブリが、用量設定中及び用量送達中に前記用量セレクタ(35)における複数の用量セレクタ結合要素(54)の対応するセットと係合し、
前記結合アセンブリが、用量送達中に前記用量ノブ(31)における複数のノブ結合要素(31a)と係合するが、用量設定中には係合しない、注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注射装置に関し、特に注射装置の用量設定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動的に、準自動的に又は手動で薬剤の用量を送達することができる多数の薬剤送達装置が市場にある。送達装置の公知のタイプとして、「ペン型」注射器が人気を得ており、再利用可能及び使い捨て可能な設計の両方で利用できる。このような装置は、用量を設定する及び設定した用量を送達するなどの所望の機能を得るために種々の相互作用する構成部品を含む用量設定機構により構成される。大抵の場合、これら薬剤送達装置はたった1つの又は2つの単一の固定用量設定又はそれぞれの可能な設定用量が最低の可能な設定用量の倍数でなければならない可変用量設定を有する。言い換えれば、これら既存の可変用量注射装置は、最低の可能な用量の端数(一部)である用量を設定することができない。
【0003】
ペン型注射器設計の複数のタイプが、装置の遠位端に位置する用量設定機構と、近位端に位置するカートリッジなどの薬剤容器を有する。公知の注射器設計は一般的に、多様な(可変)用量装置であり、それはユーザが0と最大許容設定可能用量の間の用量を選択(ダイヤル設定)できることを意味する。用量ダイヤルスリーブが、それぞれの可能な増分用量設定に一般的に対応する可能な用量設定の範囲と共に印刷される。例えば、注射器が80国際単位(IU)の最大用量設定によって設計され、製造される場合、それぞれの増分設定可能用量は1IUだけ異なる。異なって述べると、60IUの用量を設定するために、ユーザは、60IUを示すまで用量ダイヤルスリーブがそれぞれの増分用量を示すことを見ながら60の可能な用量設定を介して用量設定ノブを回転させる。もちろん、特にユーザが身体的に損なわれている場合、例えば減少した視力や深刻な関節炎の場合に、ユーザが59IUの過小量投与や61IUの過剰量投与を誤って設定することを防止するものは何もない。
【0004】
述べたように、いくつかの注射装置は、用量ダイヤルスリーブが1つのみ又は2つの用量を表す印刷を含むいわゆる固定用量デザインとして製造、設計される。これら装置の後ろにある設計アイデアは、固定用量設定の1つが一般的に注射器ハウジングの窓で観測されるまでユーザが用量設定ノブを回転させるということである。しかしながら、このような注射器設計では、固定用量設定の印が窓で観測されるまで、ユーザは個々の等しい増分用量設定を介してステップすることを要求される。用量設定機構はユーザにそれぞれの増分用量設定を介して物理的にステップすることを要求するので、ユーザが固定用量設定よりも少ない又は多い用量で停止することを防止するものは何もない。加えて、用量設定機構がそれぞれの増分用量を介してダイヤル設定され、最終用量設定に達すると、ユーザは聞こえる及び/又は触感のある通知を得る。
【0005】
既存の注射器設計の別な欠点は、単一の増分値の倍数ではない固定用量を有し得ないことである。言い換えれば、注射器が80IUの最大設定可能用量で設計される場合、一般に、それぞれの増分用量は1IUである。そのため、2.3IUの用量を設定することは可能でない。ユーザは2又は3IUの用量だけ設定できる。別な風に述べれば、端数用量はこのような用量設定機構によっては設定できない。複数の端数用量を設定する能力は、特に新たに開発された薬剤のために及び/又は初めて既存の薬剤を使用する新たな患者のために最適な用量を決定しようとする研究において重要である。
【0006】
特許文献1は、電子的に補助された薬送達装置を示す。当該装置は、投与アセンブリと、用量を設定するために回転できるよう設計された用量セレクタを有する。
【0007】
特許文献2は、クラッチチューブ、用量ダイヤルチューブ及びラチェットキャップを有する流体送達ペンを示す。ラチェットキャップの一方向ラチェット歯はクラッチチューブの一方向ラチェットと噛み合う。用量ダイヤルチューブのドグ歯はクラッチチューブのドグ歯と噛み合う。
【0008】
特許文献3は、ねじ巻き式ペン用のダイヤルダウン機構を示す。ねじりばねが用量を設定するときに力を受け、反対方向に用量設定ボタンを回転させると力が解除される。ねじりばねをその力を受ける位置に固定するため、一方向ラチェット機構が設置される。
【0009】
特許文献4は、回転可能な用量設定部材及び軸方向に圧縮可能なねじりばねを有する薬送達装置を示す。
【0010】
特許文献5は、ダイヤルダウン機構を備えた注射装置を示す。
【0011】
患者使用のために利用可能な多数の薬送達装置が存在するが、少なくとも1つの所定の固定用量が第2の所定の固定用量の端数である1又は複数の所定の固定用量を送達できる注射器を入手可能にする必要が明らかにある。ユーザが多数の所定の固定用量のうちの1つでない用量を設定及び/又は送達できないペン型注射器の有用性も重要な目的である。そして、所定の固定用量を変える又は変更するために用量設定機構の単一の機械的構成部品だけが再設計され、製造される必要がある注射器設計を得ることが非常に望ましい。これは、患者が特定のユーザに特別に作られた薬剤の1又は複数の有効用量の注入(注射)を可能になるように容易にカスタマイズされる注射装置のコスト効率の良い製造を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2010/052275A1
【特許文献2】WO2015/145294A1
【特許文献3】WO2013/178372A1
【特許文献4】WO2016/142501A1
【特許文献5】WO2006/045526A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
まとめると、解決すべき問題は、固定用量が必ずしもそれぞれの固定用量の等倍ではない多数の所定の固定用量を送達できる用量設定機構を含む注射装置をユーザに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題は、付属のセットの請求項に従う用量設定機構を有する注射装置を提供することで解決される。
【0015】
本開示は、注射装置を1又は複数の端数の所定の固定用量設定で設定できる多数の用量設定機構設計を与える。本設計はまた、意図しない用量、すなわち所定の固定用量設定の1つ以外の用量の設定を防止できる。1又は複数の異なる所定の固定用量を有する完成注射装置を提供するために単一の構成部品だけが再設計され、製造されればよいので、用量設定機構は注射装置を製造するコスト効率の良い方法を与える。
【0016】
少なくとも請求項1によれば、用量設定機構は、結合アセンブリ、用量ノブ、用量セレクタ及びスナップ要素を有する。結合アセンブリは、スナップ結合要素の固定セットを有するスナップ要素と回転可能に係合している。結合アセンブリは、用量設定中及び用量送達中に複数の用量セレクタ結合要素の対応するセットと係合する。結合アセンブリは有利には、フローティングスプラインアセンブリ(浮遊スプラインアセンブリ)である。フローティングスプラインアセンブリは有利には、用量送達中に用量ノブ上のスプラインと係合するが用量設定中にそのように係合しない多数の長手方向に延びるスプラインを有してもよい。フローティングスプラインアセンブリはまた、スナップ要素に対して軸方向に固定されてもよい。回転可能な係合を与えることができる結合アセンブリの他の形状も有利である。
【0017】
有利な実施形態では、スナップ要素は用量設定中と用量送達中の両方で結合アセンブリと用量セレクタに対して回転する。これは特に、用量セレクタの内面における対応する結合要素、好ましくはスプラインを介して用量セレクタに回転可能に固定された結合アセンブリのためである。有利には、用量セレクタはスプライン接続を介してハウジングに回転可能に固定される。用量セレクタはスプライン接続を介してハウジングに回転可能に固定されるので、結合アセンブリと用量セレクタの内面におけるスプラインとの係合及び噛み合いが、用量設定中及び用量送達中の本体に対するフローティングスプラインアセンブリの回転を防止する。スナップ要素は有利には、用量セレクタの内面に位置する多数の用量停止部と係合する突起部を有する。特にスナップ要素は、用量セレクタの内面に位置する多数の用量停止部と係合するために、好ましくは外側に突出した半径方向に延びる突起部を有する柔軟アームを備えて構成される。
【0018】
有利には、これら用量停止部は、それらが有限の所定の固定用量のセットを定めるように好ましくは成形工程によって互いから半径方向に間隔をあけて設計、製造される。所定用量のうちの1つの設定の間、スナップ要素は有利には用量セレクタに対して回転され、スナップ要素上の突起部が用量停止部の1つと係合してその上を進む。一旦、突起部が用量停止部の上を進み、回転が停止されると、スナップ要素のこの位置は送達用の薬剤の単一の固定用量を定める。有限の所定の固定用量のセットは、最低固定用量と1又は複数の高めの固定用量を有する。
【0019】
1又は複数の高めの固定用量が最低固定用量の偶数倍に等しくないように、用量セレクタの内面における用量停止部間の距離は設計、製造されてもよい。これは、最低固定用量の端数を含む固定用量設定をもたらす。異なって述べると、少なくとも1つの1又は複数の高めの固定用量が最低固定用量の端数を加えた最低固定用量と等しいように、用量停止部間の距離は製造、すなわち予め定められてもよい。これは現在公知の用量設定機構によっては可能でない。
【0020】
有利には、有限の所定固定用量が用量停止部間の数及び相対間隔によってのみ定められ、それら用量停止部が用量設定機構の単一の構成部品、すなわち用量セレクタ上に独自に位置するので、これは、用量設定機構の他の任意の構成部品を製造せずに有限の所定の固定用量のセットを変えるための効率的かつコスト効率の良い方法を与える。言い換えれば、注射装置の組立中に元の用量セレクタを交換できる第2用量セレクタの製造をもたらすために、用量セレクタの設計だけが変えられる必要がある。用量設定機構の他の構成部品は交換を必要としない。幾つかのケースでは、用量スリーブ上に現れる印刷が変えられてもよいが、用量スリーブの設計及び製造は同じままである。元の用量セレクタを、異なる配置の用量停止部を有する第2用量セレクタと交換することで、有限の所定の固定用量の異なるセットを有する用量設定機構が得られる。
【0021】
用量セレクタとスナップ要素の間の空間的関係は有利には、用量設定及び用量送達の間に変わる。特に、用量設定中に生じる、スナップ要素と用量セレクタの間に第1固定相対軸方向位置があり、用量送達中に生じる第2固定相対軸方向位置がある。第1固定位置では、突起部は用量停止部と係合できる。しかしながら、第2固定位置では、突起部は用量停止部と係合できず、第1固定相対位置は用量設定中に実現され、第2固定相対位置は用量送達中に実現される。用量送達の完了時に、突起部は注入バンプの端部と係合しその上を進んでもよく、送達が完了したという聞こえる及び/又は触感のある通知をユーザに与える。
【0022】
述べたように、本開示の用量設定機構は、ユーザが所定の固定用量の1つとは異なる用量、すなわちいわゆる意図しない用量を設定するのを防止する機能的かつ構造的特徴を有してもよい。本開示のこの安全装置特徴は、用量設定手順中に逆回転力をスナップ要素に加える付勢部材を使用することで所定の固定用量の有限のセットの1つとは異なる用量の設定を防止する。付勢部材は、用量スリーブとの接続を介してスナップ要素と作動式に接続したねじりばねであってもよい。ねじりばねが用量設定機構に組み込まれるとき、それは組立中に所定のトルクに付勢される。用量設定中に用量ノブをダイヤル設定する又は回転するユーザによって、スナップ要素がユーザによって加えられる回転力に抵抗するよう促されるように、トルクは力をスナップ要素に加える。この逆回転トルクは用量ノブの回転中にユーザにより容易に負かされるが、ユーザが何かの理由で用量ノブを解放すると、トルクはノブ及びスナップ要素を反対方向に回転させる。この事象において、トルクは好ましくはスナップ要素を逆回転させるために十分であり、それで突起部は前の用量停止部と係合するように戻る。幾つかの例では、突起部がゼロ用量ハードストップまで戻るようにスナップ要素を逆回転させる付勢部材を使用すると望ましい。突起部が前の用量停止部より高い固定用量に対応する次の用量停止部に係合しその上を進むようにユーザが用量ノブ及びスナップ要素を十分に回転させなかった場合に、安全装置特徴は作動するだけである。用量ノブが用量設定中に回転され、スナップ要素が連続的な用量停止部に係合すると、ねじりばねにより加えられるトルクは増加する。
【0023】
幾つかの例では、スナップ要素を次の最低の用量停止部に逆回転させるのに十分なトルクだけを加える付勢部材を選択することが望ましい。このような場合、付勢部材は、用量送達中にユーザに機械的援助を与えない。用量送達中に逆回転力による機械的援助が実現され、それでユーザが本質的に少なめのトルクを備えた付勢部材を使用することで必要とされるよりも少ない軸方向力を加える必要があるように、用量設定中に十分なトルクを発生させる付勢部材を選択し使用することが望ましい状況があってもよい。
【0024】
用量ノブは、用量ノブの内面に位置する一組のノブ結合要素、有利にはノブスプラインを介してスナップ要素に作動式に連結される。これらノブ結合要素は、用量設定中にスナップ要素の外面にある固定セットのスナップ結合要素、特にスナップ要素スプラインと係合し、噛み合う。好ましい実施形態では、用量ノブは用量設定中に回転される。用量設定中の用量ノブの回転は有利には、スナップ要素の回転及び軸方向移動と用量セレクタの軸方向遠位移動のみを生じさせる。スナップ要素は、ハウジングの内面にねじ連結した用量スリーブに回転可能に固定されているので、スナップ要素は遠位方向にハウジングに対して軸方向に並進する。用量セレクタはハウジングに対して回転しない、というのもそれはハウジングに対して軸方向にのみ移動できるようにハウジングにスプライン接続されているからである。用量ノブは用量セレクタに軸方向に固定されているが、用量ノブ、用量セレクタ、用量スリーブ及びスナップ要素の全てが用量設定中及び用量送達中の両方でハウジングに対して軸方向に移動するように、用量セレクタに対して回転できる。
【0025】
スナップ要素は有利には、スナップ要素の外面に取り付けられた第2組の結合要素、有利にはスプラインを有する。この第2組のスプライン又はフローティングスプラインアセンブリは用量設定機構の別個の構成部品であり、スナップ要素の一体部品ではない、すなわちそれらはスナップ要素に回転可能に固定されていない。結合アセンブリは有利にはフローティングスプラインアセンブリである。結合アセンブリは好ましくは、フリーホイールのようにスナップ要素の外面の周りに周方向に位置しており、それにより結合アセンブリがハウジングに対して回転可能に固定されると、スナップ要素は結合アセンブリ、有利にはフローティングスプライン内で又はそれに対して回転する。結合アセンブリ、特にフローティングスプラインアセンブリは、有利には互いから等間隔で離れた多数の半径方向に突出する長手方向結合要素、特にスプラインによって構成される。これは、用量停止部間の空間が等しい必要のない用量セレクタの内面の用量停止部と対照的である。しかしながら、用量停止部の各々の間の空間は、結合アセンブリ構成部品の半径方向に突出する長手方向結合要素の各々の間の空間の倍数である。
【0026】
設定用量を送達するために、ユーザは、ハウジングに対して近位方向に軸方向力を用量ノブに加える。この軸方向力が停止されると、停止した用量送達状況が生じる。本開示の用量設定機構は有利には、停止した用量送達状況に関連するあり得る問題を防止するための第2安全装置特徴を含む。以下でより詳細に説明するように、好ましい実施形態では、用量送達手順の開始は先ず、用量ノブと用量ノブに軸方向に固定された用量セレクタの軸方向移動を含む。用量ノブの軸方向移動はまた、用量ノブ上のスプラインをスナップ要素上の固定スプラインから外させる。この取り外しは、用量設定手順の間に存在する用量ノブとスナップ要素の間の回転可能に固定された関係を取り除く。用量送達手順の開始の間に生じる用量ノブと用量セレクタの近位軸方向移動はハウジングに対するものであり、少なくとも初めはスナップ要素に対するものである。用量セレクタの軸方向近位移動は、用量停止部をスナップ要素上の突起部との半径方向の整列から脱出させる。用量ノブと用量セレクタは、好ましくは圧縮ばねである第2付勢部材によってスナップ要素に対して遠位方向に付勢される。用量設定中、この第2付勢部材は、用量ノブ上の結合要素、特にスプラインがスナップ要素上の固定結合要素、特に固定スプラインと係合することを保証する。しかしながら、用量送達中、第2付勢部材により加えられる遠位に指向した付勢力は、用量ノブへのユーザの近位に指向した軸方向力により負かされ、したがって結合要素の取り外しを可能にする。
【0027】
述べたように、用量送達中、ユーザは有利には、用量ノブ及び用量セレクタをスナップ要素に対して軸方向に移動させるために逆の軸方向力を近位方向に加える。注入が停止され、近位方向の軸方向力が除去され又は十分に減少した場合、第2付勢部材は用量セレクタを遠位方向に戻すように促し、突起部及び用量停止部を整列させ、また用量ノブ上の結合要素、有利にはスプラインをスナップ要素上の固定結合要素、有利には固定スプラインに再係合させる。スナップ要素は第1付勢部材から逆回転力を受けるので、これは、設定用量を意図しない、恐らく未知の低めの量に減少させる方向にスナップ要素と用量ノブの両方を回転させる傾向がある。異なって述べると、スナップ要素の逆回転は、突起部を回転させ、次の低めの所定の用量停止部に係合させる。以下でより詳細に説明するように、スナップ要素の回転はまた有利には、ピストンロッドに対するナットの位置が送達すべき薬剤の量に正比例する、ピストンロッドと係合したナットの回転を生じさせる。停止した注入状況においてスナップ要素の逆回転を可能にすることは、意図した前の設定用量をユーザにより決定されないかもしれない量だけ減少するよう作用し、したがって投薬状況下において潜在的な危険を生じさせる。
【0028】
本開示の用量設定機構の第2安全装置特徴は有利には、スナップ要素上の第2突起部と係合する半径方向に突出する周方向リブの使用によって実現され、それで用量セレクタは近位方向に押されて移動できるだけであり、第2突起部が半径方向突出リブのカットアウトと整列した時に用量送達が開始される。用量送達の開始時の用量セレクタのこの軸方向近位移動は、半径方向突出リブを、第2突起部がリブの近位対向側に位置する第1位置から第2位置へ移動させる。第2位置に動くとき、カットアウトが第2突起部を過ぎて動くようにリブは第2突起部に対して動き、それでそれはリブの遠位対向側に位置決めされる。好ましくは、半径方向突出リブは複数の用量停止部のそれぞれに対応する多数のカットアウトを有する。一旦第2位置に来ると、ユーザが用量ノブへの近位指向力を解放した場合に用量送達が進行するようにスナップ要素は逆回転し始めるので、リブは、用量セレクタの遠位軸方向移動を阻止できる。第2付勢部材が用量セレクタを遠位方向に促し、従って第2突起部をリブの遠位対向面に当接させるので、軸方向阻止特徴は生じる。この当接は、用量セレクタの更なる移動と、固定スプラインと用量ノブの内側のスプラインとの再係合を防止する。
【0029】
ゆえに、第2安全装置特徴は、用量セレクタを、第2突起部が半径方向突出リブのカットアウトと整列する用量送達中に遠位方向にのみ移動させることができる。リブのカットアウトが用量停止部の位置に一致し又は整列したときに注入が停止した場合、用量セレクタの遠位軸方向移動が生じるが、この移動は第1突起部を対応する用量停止部に再整列させ、固定スプラインを用量ノブに再係合させる。第1突起部は用量停止部に再係合されるので、ハウジングに対するスナップ要素と用量ノブの逆回転は起こり得ず、従ってピストンに対するナットの回転は起こらない。その結果、設定用量の減少は無い。この第2安全装置特徴の別な利点は、スナップ要素上の突起部が用量セレクタの用量停止部のうちの1つと係合したときに用量ノブがスナップ要素に対して軸方向にのみ移動できることである。これは、ユーザが用量ノブを回転させながら同時に軸方向駆動力を近位方向に加えた場合に、意図しない用量送達を防止する。
【0030】
スナップ要素はまた、用量送達中に用量セレクタの内面における、半径方向に突出する長手方向結合要素、有利にはスプラインと係合するクリッカーアームを含んでもよく、それでクリッカーアームが半径方向に突出する長手方向スプラインの上に進んだときにスナップ要素の回転が聞こえるフィードバックを創出する。用量設定中、スナップ要素の柔軟アーム上の第1突起部と用量停止部の係合は第1の数の聞こえる及び/又は触感のある通知を生成する。用量送達中、第2の数の聞こえる及び/又は触感のある通知が生成され、ここで通知の第2の数は第1の数より大きい。幾つかの例では、通知の第2の数は、所定の固定用量に対応する結合要素、有利にはスプラインの全数に等しい。触感のある通知の程度及び/又は聞こえる通知のレベルは、結合要素又はクリッカーアームを製作するために使用される構成部品材料の形状及び/又は種類を変更することで変えられる。同様に、異なる聞こえる及び/又は触感のある通知を生成するために、柔軟アーム上の第1突起部と用量停止部は構造の様々な形状又は材料によって構成でき、それによりユーザは用量設定/用量キャンセルと用量送達の差異を直ぐに認識する。
【0031】
本開示の用量設定機構はまた、クラッチの遠位端にて用量ノブに作動式に接続したクラッチを含んでもよい。1つの実施形態では、クラッチの近位端はナットに回転可能に固定され、ナットに対して軸方向に摺動可能である。ナットは、近位方向に軸方向にのみ移動するように構成されたピストンロッドとねじ係合してもよく、それで用量送達中、ピストンロッドは薬剤容器内のプランジャーを近位に移動させて薬剤を加圧する軸方向力を加え、それにより薬剤は薬剤容器における近位開口を介して放出される。ピストンロッドの好ましい形状は、非円形断面を有し、外側面にねじ山を有する形状を有する。これらねじ山のピッチは、薬剤のそれぞれの所定の固定用量に正比例する。非円形中央開口を有するピストンガイドが用量設定機構に含まれてもよく、ここでピストンガイドはピストンロッドの非円形断面を受容し、それでピストンガイドは用量設定中と用量送達中の両方でピストンロッドが回転するのを防止する。
【0032】
好ましい実施形態では、用量設定ノブ及びクラッチは、それらが互いに回転可能に固定され、それにより用量設定中に用量ノブが、ナットを回転させるクラッチを回転させるように作動式に接続している。ナットの回転は有利には、ナットを、用量設定中にピストンロッドの外面に位置するねじ山に沿って遠位方向に軸方向に移動させ、また用量キャンセル中に近位方向に移動させる。用量送達中、用量ノブは有利には、ハウジングに回転可能に固定された結合アセンブリとの係合のために回転を防止される。クラッチは用量ノブに回転可能に軸方向に固定されるので、クラッチも同様に回転せず、用量送達中に近位方向に軸方向に移動できるだけである。このため、ナットもまた用量送達中に回転せず、近位方向に或る距離だけピストンロッドと共に軸方向に移動するだけである。この距離は設定用量に正比例する。ナットのこの軸方向の移動だけが必ず、ナットとのねじ係合のためにピストンロッドの軸方向移動を生じさせる。前述したように、用量設定中有利には、遠位方向におけるナットの軸方向並進移動は、ピストンロッドがピストンロッドに対するナットの回転無しに近位に移動した場合に送達される薬剤の量に正比例する。
【0033】
用量設定ノブはまた、ユーザが装置を天板などの平坦な表面においてほったらかしたときに注射装置が回転するのを防止するアンチロール(回転防止)特徴を有してもよい。装置が転がって装置が損傷しうる表面に落ちるのを防止するため、用量ノブは半径方向突出リブを含んでもよい。このリブは、注射装置が平坦な表面に置かれたときに180°よりも大きく転がるのを防止する。半径方向突出リブは、装置の本体上の対応する指示部に向かず又は整列しない。言い換えれば、用量ノブが用量を設定するために回されるときのリブの相対的な周方向位置は所定の固定用量の有限のセットのいずれとも関連しない。用量を設定するために、ノブは常に1つの方向に、例えば時計回りに回される。ノブは注射の間回転しない。ゆえに、それぞれの注射によって、ノブと、従って半径方向突出リブは、さらに時計回りに回転する。したがって、リブの半径方向位置はペン本体のどの部分とも関連し得ず、特に所定の用量と関連しない。
【0034】
本開示は、注射装置に関し、特に、ユーザが用量設定機構の単一の構成部品の設計及び製造の直接的結果として1又は複数の所定の固定用量設定を選択できる注射装置の用量設定機構に関する。用量設定機構の単一の構成部品の設計を変更することで、特定の投薬計画用にカスタムメイドできる及び/又は用量変動評価で使用できる注射装置の効率的な製造が可能になる。
【0035】
本開示は完成注射装置にも関する。このような注射装置の1つの可能な実施形態は、一連の設定用量で患者に送達すべき薬剤を含有する容器、好ましくはカートリッジ用のホルダと連結するよう構成された近位端のアタッチメント機構を備えた本体を含む。上で述べた用量設定機構がこの注射装置で使用でき、そこでは用量セレクタが有限の所定の固定用量のセットだけを装置のユーザにより設定されるように構成され、有限の所定の固定用量のセットは最低の固定用量と1又は複数の高めの固定用量を含み、1又は複数の高めの固定用量のうちの少なくとも1つは、最低固定用量と最低固定用量の端数とを加えたものに等しい。用量停止部は用量セレクタの内面に周方向に位置決めされ、それぞれの用量停止部とゼロ用量ハードストップの間の周方向距離はそれぞれの固定用量に正比例する。
【0036】
本開示の注射装置の別な実施形態では、装置は、或る量の薬剤を含むカートリッジを保持するカートリッジホルダに接続するよう構成された近位端にてアタッチメント機構を備えた本体を有し、そこで当該量の薬剤がその量を測定される。本装置はさらに、本体に回転可能に固定された用量セレクタを有する用量設定機構を有し、用量セレクタは、用量設定機構を用いて設定できる所定の固定用量の有限のセットだけを可能にするよう構成された複数の用量停止部を含む。用量セレクタに対して回転可能であるスナップ要素もある。スナップ要素は、外面に一体化しており当該外面の周りに周方向に配置されたスナップ結合要素、有利にはスナップ要素スプラインの固定セットを有する。用量設定機構はさらに、注射装置のユーザが所定の固定単位用量の有限のセットの1つとは異なる用量を設定するのを防止するように構成された安全装置構成部品を含む。スナップ要素に軸方向に固定された結合アセンブリによって、スナップ要素は用量設定中と用量送達中の両方で結合アセンブリに対して回転する回転できる。用量設定中に第1位置を有し、用量送達中に第2位置を有する用量ノブによって、ユーザは所定の固定用量のうちの1つを選択できる。第1位置では、用量ノブは結合要素の固定セット、有利にはスプラインの固定セットにスプライン接続されるが、結合アセンブリにはスプライン接続されず、第2位置では、用量ノブは結合アセンブリにスプライン接続されるが、結合要素の固定セットにはスプライン接続されない。
【0037】
本開示はまた、用量変動評価の実施に基づいて注射装置を設計、製造する方法に関する。これは、注射装置が所定の固定用量の新たな有限のセット又は単一の所定の有効固定量だけを有するように、単一の構成部品、すなわち用量セレクタだけが異なる用量セレクタと交換される必要がある用量設定機構の特有の設計のために、可能である。1つのこのような方法は、上述したように、フローティングスプライン、用量ノブ、用量セレクタ及びスナップ要素を含む第1用量設定機構を有する第1注射装置を提供することを含む。フローティングスプラインアセンブリは、用量設定中と用量送達中に用量セレクタ上のスプラインの固定セットと係合する。さらには、フローティングスプラインアセンブリは用量送達中に用量ノブ上のスプラインと係合するが、用量設定中は係合しない。この第1注射装置はしたがって、薬剤を含有する多数の第1注射装置が多数の試験患者に分配される用量変動評価試験(トライアル)で使用される。
【0038】
試験患者は所定用量の薬剤の注射を実施するために第1注射装置を使用するよう指示される。収集した生理学的データを分析して薬剤の有効単一用量を決定するために、生理学的データが試験患者から収集されてもよい。それに代えて、試験患者は単に所定用量の注射の効果を報告してもよい。分析結果又は報告結果に基づき、第2用量設定機構を備えて製造された第2注射装置が提供でき、その製造方法は、第2注射装置が所定用量の新たな有限のセットに又は単一の有効固定用量に設定されるように用量セレクタを再設計することを含む。第2用量設定機構におけるフローティングスプライン、用量ノブ及びスナップ要素は第1用量設定機構にて使用されたものから設計を変えられない。言い換えれば、用量セレクタだけは再設計され、新たに製造されなければならない。第2用量設定機構を組み立てるために使用される他の全ての構成部品は、第1用量設定機構にて使用されるものと同じままである。幾つかのケースでは、用量スリーブの外面に印刷された印は、再設計され新たに製造された用量セレクタの新たな所定の用量設定を反映するために変えられてもよい。しかしながら、用量スリーブの設計、製造及び機能は変わらないままである。
【0039】
有限の所定用量設定の新たなセットに作用するために単一の構成部品だけが変えられる必要があるという事実に関連する本開示の用量設定機構の別な利点は、完成注射装置の組み立て用に用いられる装置と組み立てのための方法論が同じままであるということである。同じ組み立て装置及び方法論を維持することは、新たな注射装置に到達するために用量セレクタ内部の用量停止部の数及び位置だけが変えられれば良いという事実に直接関連する。
【0040】
上述した利点は、最低設定用量の端数用量を含む、ゼロ用量と最大用量の間のいずれかの可能な数の所定の固定用量設定を実現するために、用量セレクタの設計の固有の柔軟性・可撓性に直接関連する。これは、新たな薬剤を評価したい又はどのようにして既存の薬剤が異なる病気状態に影響を及ぼすか評価したい製薬会社にとって重要である。特に有益なのは、最低固定用量の倍数である各固定用量を有することに代えて端数の所定の固定用量を有することを含む、所定の用量の異なる有限のセットをそれぞれ有する異なる用量セレクタを簡単かつ効率的に設計できる能力である。
【0041】
本開示に開示されたタイプの注射装置では、それら装置の製造は、薬送達装置の単一の構成部品、特に用量設定機構の構成部品間の不可避の許容差と機能的間隙をもたらしてもよい。結局、ピストンが脚部の遠位端と接触しないように薬送達装置が組み立てられた後でも、ピストンロッド脚部と摺動ピストンの間などの、それら構成部品間の隙間などの間隙が生じてもよい。ゆえに、用量設定機構が有限の所定の設定用量の1つの最初の設定前に予圧状態にあるように、どんなこのような隙間又は製造公差偏差をも排除することが重要である。これが実現されなければ、ダイヤル設定された所定の設定用量が装置から正確に正しく投薬されないことが起こり得る。最初の製造間隙は用量の設定を既に歪めるかもしれない。薬送達装置を使用のために調節するため、プライミング動作(準備動作)が行われ、駆動機構が正しく調節されていること、すなわちピストンロッドと付属の脚部が摺動ピストンに接触しており、それで正しい量の薬剤が装置から放出されることを保証される。これらの調節動作は、装置の製造工程/組み立て工程において又は装置の最初の使用の直前に組み立てられた装置のユーザによって実現されてもよい。後者のシナリオでは、ユーザは少量の薬剤を投与する必要があり、それは薬送達装置がいつでも使用できるという視覚的表示を与えるが、薬剤の消費をも生じさせる。本開示は両方の可能性をカバーするプライミング手順を記載している。
【0042】
本開示の有する利点及びこれらの及び他の側面は本開示の以下の詳細な記載及び付属の図面から明らかになろう。
【0043】
本開示の複数の例の以下の詳細な説明では、付属の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本開示の構造的構成部品を含む1つの可能な完成薬剤送達装置の斜視図である。
図2図1の装置の斜視図であって、キャップが取り外されており、ペンニードルのカートリッジホルダへの取り付けが可能である。
図3図1の装置の分解図である。
図4】そこに接続された回転可能な結合アセンブリを有する及び有しないスナップ要素の斜視図である。
図5】組み立て状態と事前組み立て状態の両方における結合アセンブリの斜視図である。
図6】遠位端と近位端の両方からの用量セレクタの斜視図である。
図7】ピストンガイドの斜視図である。
図8】ピストンロッドの斜視図である。
図9】ドライバの斜視図である。
図10】ナット及びクラッチの分解斜視図である。
図11】用量設定機構のハウジングの斜視図である。
図12】用量ノブの斜視図である。
図13】用量設定機構の可能な強制プライミング特徴を示す図である。
図14A-E】用量セレクタに対するスナップ要素の様々な位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本出願において、用語「遠位部分/遠位端」は、装置の部分/端部、又はその構成部品又は部材の部分/端部を指し、その装置の使用に応じて患者の送達部位/注射部位から最も遠くに位置する。それに対応して、用語「近位部分/近位端」は、装置の部分/端部、又はその部材の部分/端部を指し、その装置の使用に応じて患者の送達部位/注射部位に最も近くに位置する。
【0046】
本開示の用量設定機構30(図3参照)は、様々に設計された多くの完成注射装置に使用できる。完成注射装置10のそのような実施形態の1つが図1に示されている。これは、ハウジング3の窓3aを介してゼロ(0)を示す印40によって示されるゼロ用量状態を示している。
【0047】
図2は、キャップ1を取り外して、カートリッジホルダ2及び近位ニードルコネクタ7を露出させた図1の装置を示している。ペンニードル4は、ハブ5とのスナップフィット、スレッド、ルアーロック又はその他の固定アタッチメントを介してニードルコネクタ7に取り付けられており、両頭針カニューレ6がカートリッジ8に含まれる薬剤との流体連通を実現できる。カートリッジ8は、セプタム8aにより近位端が密封され、反対側の遠位端に摺動ピストン9を備えている。
【0048】
上記で説明したように、本開示の用量設定機構30は、用量設定機構30の単一の構成部品、すなわち用量セレクタ35のみが、最大許容用量範囲内の所定の固定用量の有限のセットを決定することに主に関与するという点で、他の既知のペン型注射装置と比較して独特である。さらに、この所定の固定用量の有限のセットは、端数用量(分割用量)を含むことができる。つまり、各固定用量は他の固定用量の等倍である必要がない。例えば、1つの固定用量設定は、低めの固定用量の等倍と、その等倍の端数を加えたものと等しくてもよい。
【0049】
用量セレクタ35は、近位端視と遠位端視の両方から図6に示されている。用量セレクタ35の外面は多数の長手方向溝35aを有し、それらはハウジング3の内面3dに位置する複数の長手方向スプライン3bと常に係合する(図11参照)。この係合により、用量セレクタ35とハウジング3との間の相対回転は防止されるが、用量セレクタ35がハウジング3に対して軸方向に移動することは可能である。また、用量セレクタ35とハウジング3との間の相対回転を防止するが、用量セレクタ35がハウジング3に対して軸方向に動くことを可能にする他の手段も有利である。用量セレクタ35の外面はまた、用量ノブ31のスナップフィット31c(図12参照)と恒久的に係合及びロックする接続カットアウト59を有し、用量ノブが用量セレクタ35に対し軸方向に固定されるこれらの恒久スナップフィット31cにより、用量設定及び用量キャンセルの両方の間で、用量ノブ31が用量セレクタ35に対して回転することが可能になる。用量セレクタ35の内面35bの遠位端には、固定用量セレクタ結合要素のセットがある。この例では、用量セレクタスプライン54が示されている。また、他の用量セレクタ結合要素も有利である。用量ノブ31は、複数のノブ結合要素を備える。この例では、ノブ結合要素は、複数のノブスプライン31aである。他のノブ結合要素が有利な場合がある。固定用量セレクタスプライン54のセットの数及び相対間隔は、用量ノブ31の内側近位端面に位置する固定ノブスプライン31aの数及び相対的間隔に等しい。この等値(等量)の理由は、以下でより完全に説明するように、用量ノブがスプライン44の1つのセットとの係合を外し、スプライン52の別のセットと係合するとき、用量設定手順と用量送達手順の開始との間のスムーズな移行を確実にするためである。各々の用量停止部55a、55の間にある隙間は、フローティングスプラインアセンブリ34上の半径方向に突出する各々の長手方向スプライン52の間にある隙間の倍数である。フローティングスプラインアセンブリ34は、用量設定機構30の部品間で回転の固定された接続を確立するための結合アセンブリである。また、スプライン以外の他の結合要素を備える他の結合アセンブリも有利である。
【0050】
フローティングスプラインアセンブリ34は、長手方向スプライン52を含む。長手方向スプライン52は結合要素である。また、他の結合要素も結合アセンブリに有利である。本開示の用量設定機構30の一実施形態では、ノブ31とスナップ要素33との間の80の半径方向位置を可能にするように、等間隔の半径方向に突出する長手方向スプライン52の数が選択される。しかし、人間工学的及びその他の理由により、ゼロ用量ハードストップ55d及び選択された最大用量ハードストップ55cは、用量設定ノブの使用可能な相対回転を270°に制限する。そのため、この制限された回転は、有効な半径方向位置が60(六十)のみであることを意味する(80スプライン×270°/360°)。一例として、顧客は最大用量が0.60mlの注射装置のみが必要になるだろう。これは、60の半径位置が0.01mlのラスター(又は増分)になることを意味する。ユーザは、例えば0.20ml又は0.21mlの固定用量を選択できるが、0.205mlの用量は選択できない。ほとんどのアプリケーションでは、0.01mlのラスターで実際の使用のために十分である。
【0051】
別の可能な実施形態では、80本の等間隔で半径方向に突出する長手方向スプライン52を使用して最大用量が0.30mlになるように選択された場合、これは0.005mlのラスターになる。このラスターは一般に必要以上に細かく、この選択された最大用量の代替アプローチは、80本の代わりに40本の等間隔で半径方向に突出する長手方向スプライン52を有することである。ラスターが細かくなるほど、用量ノブ31のノブスプライン31aがフローティングスプラインアセンブリ34及びスナップ要素33の固定スナップ要素スプライン44のスプラインと係合する際に、バインディング/ブロッキングの問題が発生する可能性が高くなる。80本の半径方向に突出する長手方向スプライン52を使用する場合、好ましい許容可能な半径方向のミスマッチは4.5°未満であるべきである。固定スナップ要素スプライン44は、スナップ結合要素である。固定スナップ要素スプライン44の代わりに、スナップ要素33のための結合要素の別形態も有利である。有利には結合アセンブリの結合要素、スナップ結合要素、ノブ結合要素、及び用量セレクタ結合要素の形態は、上述のように様々な結合要素間の係合を可能にするように互いに適合される。
【0052】
図6に示されるように、用量セレクタ35の内面35bに位置する非連続的な半径方向に突出する周方向リブ56があり、これは、用量停止部55及びプライミング停止部55aに対応する周方向位置にある幾つかのカットアウト56aによって選択的に中断されている。プライミング停止部55aは、用語は本開示で使用されている用語である用量停止部とは見なされない。なぜなら、プライミング停止部55aに対応する、注射装置から放出される薬剤は、患者又は注射装置のユーザに注射される用量ではないからである。このリブ56及びカットアウト56aの機能は、以下により詳細に説明される。用量停止部55は、場合によっては所定の固定プライミング用量を含む、用量設定機構が設定できる有限個の所定の固定用量に直接対応する。1つ又は複数の用量停止部55を、用量セレクタ35の内面に含めることができる。好ましくは、用量停止部55は、単一の成形部品として製造できる用量セレクタ35の内面35bと一体の部品として形成される。単一の成形された用量セレクタは、本開示の用量設定機構30の重要な特性、すなわち、注射装置10の単一の構成部品を変更して有限の所定用量の異なるセットを得る能力を促進する。これは、用量セレクタ35の内側にある用量停止部55の数及び/又は相対的な周方向の間隔を変更することにより達成される。
【0053】
内面35bはまた、ゼロ用量ハードストップ55dを有する。各用量停止部55とゼロ用量ハードストップ55dとの間の周方向間隔は、所定の固定用量の有限のセットの1つに正比例する。前述のように、場合によっては、固定のプライミング用量に対応するプライミング停止部55aを含めることが望ましく、プライミング停止部によって最初の注射を試みる前に、ユーザは最初にピストンロッド42の脚部42aをピストン9の遠位端面に当接して配置できる。このプライミングステップは、最初の注射が、所定の固定用量設定の1つに対応する薬剤の用量を正確に投与することを保証する。以下により詳細に説明されるように、用量停止部55及びプライミング停止部55aは、用量設定及び用量キャンセルを容易にする形状で構成される。図6は、傾斜面55e及び55fを有する用量停止部を示す。これは、ハードストップとして構成されたゼロ用量ハードストップ55dとは対照的である。
【0054】
また、図6に示されているように、用量セレクタ35の内面には、注入バンプ55bのオプションの端部がある。用量送達手順の間、突起部45が用量セレクタ35に対してスナップ要素33(図4)とともに回転するとき、スナップ要素33がゼロ用量設定に戻ると、突起部45は最終的に注入バンプ55bの端部に到達する。突起部45がそのバンプ55bの上に乗り上げると、注射装置10が初期ゼロ用量開始状態に戻ったというユーザへの通知信号が生成される。この通知は、必ずしも設定された用量の薬剤が放出されたことを示すものではないが、用量の完全な送達を確実にするために、針挿入の推奨される10秒間の保持時間を開始するようにユーザに合図する。
【0055】
所定の固定用量の1つ以上の設定は、スナップ要素33と用量セレクタ35との相互作用により達成される。図4は、スナップ要素33の外面33aに回転可能に接続されたフローティングスプラインアセンブリ34を備えるスナップ要素33、及び備えないスナップ要素33を示す。スナップ要素33は、内部スプライン48及びスナップ要素48aを介して用量スリーブ38に回転可能に及び軸方向に接続できる。突起部45は、柔軟アーム45a上に配置され、ここで、突起部45は、用量設定及び用量キャンセル中に用量停止部55及びプライミング停止部55aと係合するだけである。言い換えれば、以下に説明する理由により、用量送達中にスナップ要素が用量セレクタに対して逆回転方向に回転するため、突起部45は用量送達中に用量停止部と係合しない。第2又は阻止突起部46がスナップ要素33の近位端にて外面33dに位置している。この阻止突起部の位置は、用量送達が中断された場合にそれが半径方向突出リブ56の遠位対向面に当接するように選択される。以下で説明するように、用量設定機構が2つの所定の固定の用量設定の間にあるときに用量送達中にユーザが近位に指向する軸方向力を用量ノブ31に加えるのを停止した場合に、この当接によって用量ノブが遠位方向に軸方向に移動することが防止される。
【0056】
図14A~14Eは、阻止突起部46、突起部45、突出リブ56、ゼロ用量ハードストップ55d及び最大用量ハードストップ55cの相対位置を示す。図14Aは、用量ノブ31に適用される軸方向力が無い初期ゼロ設定用量位置、すなわちいわゆる解放状態における用量設定機構30を示す。ここで、阻止突起部46が、ゼロ未満の用量の測量(ダイヤル回し)、すなわちスナップ要素33を時計方向に回すことを防止するゼロ用量ハードストップ55dに当接している。突起部45はプライミング停止部55aの裏面にある。図14Bは、用量ノブ31が用量送達手順を開始するために押される前に設定された有限の所定の設定用量のうちの1つ(0.1ml)を設定された用量設定機構30を示す。
ている。突起部45は用量停止部55の前側に位置決めされ、阻止突起部46は突出リブ56の近位側に位置決めされているが、カットアウト56aと軸方向に整列している。
【0057】
図14Cは、スナップ要素33の回転の開始前の、図14Bのセット0.10ml用量の用量送達の開始を示す。ここで、用量セレクタ35はスナップ要素33に対して近位に移動しており、それにより阻止突起部46が突出リブ56の遠位側に位置決めされる。阻止突起部46と整列したカットアウト56aのために、この相対位置変化だけが可能である。用量停止部55は突起部45との半径方向の整列(アライメント)から脱しており、それにより、用量送達手順が続くときスナップ要素33は用量セレクタ35に対して反時計回りに逆回転する。
【0058】
図14Dは、ユーザが用量送達手順中に用量ノブ31への近位に指向する軸方向力を解放(除去)した状態における阻止突起部46及び突出リブ56の相対位置を示す。突出リブ56は阻止突起部46に当接し、それにより用量セレクタ35の遠位軸方向移動が防止される。これはまた、用量ノブ31におけるノブスプライン31aがスナップ要素33における固定スナップ要素スプライン44と再係合するのを防止する。図14Eは、ユーザが最大所定固定用量設定を超えてダイヤルを回した場合の、最大用量ハードストップ55cの阻止突起部46との相互作用を示す。図示のように、突起部45は最大所定固定用量停止部55の上に移動しており、阻止突起部46は、スナップ要素33の更なる回転を防止する最大用量ハードストップ55cに当接している。
【0059】
スナップ要素33はまた、一組の固定スナップ要素スプライン44を有し、これらスプラインは好ましくは、スナップ要素33の製造中、例えば成形工程中にスナップ要素33と一体に形成される。これら固定スナップ要素スプライン44は、スナップ要素33に対して軸方向に移動せず回転もしない。これら固定スナップ要素スプライン44の数及び間隔は、用量セレクタ35の内面35bにおける用量セレクタスプライン54及び用量ノブ31の内側のノブスプライン31aの数及び間隔に等しい。固定スナップ要素スプライン44の機能を以下で説明する。スナップ要素33はまた、図4に示すように半径方向に指向したニブを備えた柔軟アームとしてクリッカー47を有してもよい。クリッカーは、用量送達中にのみ用量ノブにおけるノブスプライン31aと係合するように構成されており、それでクリッカーニブが用量ノブ31のノブスプライン31aの上に移動するとスナップ要素33の回転が聞こえる及び/又は触感のあるフィードバックを創出する。用量設定の間、突起部45と用量停止部55及びプライミングストップ55aとの係合も聞こえる及び/又は触感のある通知を創出するが、各々の所定の用量設定に達したときのみである。用量設定中の通知の数は、用量送達中にクリッカー47で生成される通知の数より少ない。これは、クリッカー47が用量ノブ31の内面上の等間隔ノブスプライン31aの各々に係合するからである。
【0060】
スナップ要素33はまた、フローティングスプラインアセンブリ34を受容し軸方向に含む外面33aを有する。フローティングスプラインアセンブリ34は、スナップ要素33に対するフローティングスプラインアセンブリ34の軸方向移動を制限するように軸方向に含まれる。図4に示されるように、遠位に及び近位に移動を防止するためのフローティングスプラインアセンブリ34の軸方向の含有は、外面33aを規定する半径方向リブ33b,33cにより実現される。フローティングスプラインアセンブリ34は、好ましい構成が組み立て後に面33a上で互いに接続できる2つの半体34a,34bである図5に示されている。2つの半体34a,34bの接続は、それぞれデテント50a,50bに係合するアーム49,51の組み合わせとして示されたスナップフィットにより可能である。接続タイプにかかわらず、フローティングスプラインアセンブリ及びスナップ要素が互いに対して回転できるようにスナップ要素33との係合がなされることが重要である。フローティングスプラインアセンブリ34上のノブスプライン52の数及び間隔は、固定スナップ要素スプライン44の数及び間隔と等しく、用量セレクタ35の内面35bの用量セレクタスプライン54、及び用量ノブ31の内面のノブスプライン31aと等しい。これは、以下でより詳細に説明するように、用量ノブ31が用量セレクタ35に対して回転するのを防止される用量送達中に、フローティングスプラインアセンブリ34がコネクタとして機能するからである。用量設定機構が組み立てられると、用量セレクタ35の内面における用量セレクタスプライン54は半径方向に突出する長手方向スプライン52と完全に係合する又は噛み合う。半径方向に突出する長手方向スプライン52と用量セレクタスプライン54のこの噛み合いは、フローティングスプラインアセンブリ34を用量セレクタ35に回転可能に固定する。用量セレクタ35は回転を防止するためにハウジング3にスプライン接続されるので、これが、やはりハウジング3に回転可能に固定されたフローティングスプラインアセンブリ34をもたらす。
【0061】
図5に示されるように、それぞれのスプライン52の末端近位端52a及び末端遠位端52bは、用量送達の開始の間用量ノブ3上のノブスプライン31aと滑らかに噛み合うことを補助するために面取りされている。用量設定機構30が組み立てられると、用量ノブ31は、用量ノブ31のノブスプライン31aと固定スナップ要素スプライン44のみの噛み合わせによってスナップ要素33にスプライン接続される。固定スナップ要素スプライン44はスナップ要素33に回転可能に固定されるので、用量ノブ31の回転は必ずスナップ要素33の回転を生じさせ、それで面33aはフローティングスプラインアセンブリ34の回転可能に固定された内面53に対して回転する。この用量ノブ31とスナップ要素33の回転は用量設定中に生じ、ハウジング3に対するものである。用量送達手順の開始の間、用量ノブ31は近位方向に押され、それはスナップ要素33に対して軸方向に移動する。この初期移動は、ノブスプライン31aを固定スナップ要素スプライン44から連結解除し、ノブスプライン31aを次にフローティングスプラインアセンブリ34に係合させる。よって、ノブスプライン31aとフローティングスプラインアセンブリ34のこの新たな係合は、用量ノブが用量送達中にハウジング3に対して回転することを防止する。
【0062】
用量ノブ31の詳細が図12に示されている。用量設定機構の組み立ての間、用量ノブ31は、対応するカットアウト59(図6参照)と係合するスナップ要素31cを介して用量セレクタ35に軸方向に固定、取り付けできる。この接続により、用量ノブ31は用量セレクタ35に対して回転することができる。用量ノブ31はまた、外面に把持面31dを有し、ユーザが用量を設定し又は取り消すのを補助するためのアンチロール(回転防止)特徴及びてこ特徴として機能する半径方向突出リブ31bを含む。
【0063】
図10は、スプライン接続部によって用量設定機構30の組み立て中に互いに永続的にスプライン接続されたナット36及びクラッチ32を示す。スプライン接続はナット36の複数の接続要素37とクラッチ32の複数の接続要素71によって確立される。このスプライン接続は、クラッチ32とナット32が用量設定中と用量送達中の両方で互いに常に回転可能に固定されることを保証する。このスプライン接続はまた、クラッチとナットが互いに対して軸方向に移動することも可能にする。摺動接続は、ピストンロッド42上のねじ山60(図8参照)、用量スリーブ38上の外ねじ39(図3参照)及びドライバ(駆動体)41上のねじ山67(図9参照)の間のピッチ差を補償するために必要である。摺動接続は、ナットとピストンロッドの外面の間のねじのピッチと、用量スリーブと本体の間のねじのピッチの違いを補償するために必要である。ドライバとピストンガイドの間のねじは基本的に、ピストンロッドとナットの間のねじと同じピッチを有する。
【0064】
ナット36の近位端は、ピストンロッド42のねじ山60に合う雌ねじ70を有する。クラッチ32の遠位端は用量ボタン72として構成され、スナップロック、接着剤及び/又は音波溶着を含んでもよいコネクタ73の係合によって用量ノブ31の遠位端に永続的に取り付けられる。この接続により、クラッチ32が用量設定中と用量送達中の両方で用量ノブに回転可能であって軸方向に固定されることの両方が保証される。
【0065】
図8に示されるように、ピストンロッド42の外面のねじ山60に加えて、ピストンロッド42に非円形断面を与える2つの長手方向平坦部61も含まれている。末端近位端には、スナップフィットとして示される、ディスク又は脚部42a(図3参照)と接続するコネクタ62がある。ピストンロッド42の遠位端には、拡大部分63として示された、用量設定機構の最終用量特徴部がある。この拡大部分63は、カートリッジ8内に残った薬剤の量が次の最高の所定用量設定よりも少ないときにねじ山60の回りのナット36の回転を妨げるように設計されている。言い換えれば、ユーザがカートリッジ8内に残った薬剤の量を超える所定用量設定のうちの1つを設定しようと試みた場合に、ユーザが所望の所定の固定用量設定に達しようと試みたときに、拡大部分63が、ナットがねじ山60に沿ってさらに回転するのを防止するハードストップとして作用する。
【0066】
ピストンロッド42は用量設定中と用量送達中の両方でハウジング3に対して回転不能状態で保持されており、というのもそれがピストンロッドガイド43(図7参照)の中央の穴64を通る非円形通路内に配置されるからである。ピストンロッドガイド43は、回転可能であってハウジング3に対して軸方向に固定されている。この固定は、ピストンロッドガイド43が複数の図面に示されるようにハウジング3からの別個の構成部品であるとき又はピストンロッドガイド43がハウジング3と一体に作られるときに実現される。ピストンロッドガイド43はまた、ねじりばね90(その機能は以下で説明する)として図3に示される回転付勢部材の近位端に係合するように構成されたコネクタ65を有する。回転付勢部材のピストンロッドガイド43へのこの接続は、一方の端部をハウジング3に対する回転可能な固定位置に留める。
【0067】
回転付勢部材、例えばねじりばね90の遠位端は、ドライバ41(図9参照)のコネクタ66に接続される。ドライバ41は、ドライバ41の遠位外面にあるドライバスプライン69を介して用量スリーブ38の内面に接続され、回転可能に固定される。外面にあるドライバ41の近位端には、ピストンロッドガイド43の遠位内面上の複数の適合ねじに係合するねじ山67がある。ドライバとピストンガイドの間のねじは、用量スリーブとハウジングの間のねじとは著しく異なるピッチを有する。ナット36とドライバ41は用量設定中と用量キャンセル中の両方で一緒に回転し、それによりそれらは本質的に同じ軸方向移動を実行する。しかしながら、この移動は互いから独立しており、すなわちナット36はクラッチ32により回転され、ピストンロッド42のねじ山60とのねじ接続のために軸方向移動を実行するのに対し、ドライバ41は用量スリーブ38により回転され、ねじ山67を介するピストンロッドガイド43とのねじ接続のために軸方向移動を実行する。ドライバ41は注射の間も回転しており、そのためそれは注射の間近位方向に活発に移動する。しかし、ナット36は注射の間回転せず、そのため活発な軸方向移動を実行しない。ナット36は、ドライバ41によって軸方向に押されているので、注射の間近位方向に移動しているだけである。回転していないナット36を押す回転するドライバ41は注射をもたらす、というのもピストンロッド42がナットとのねじ係合のために前方に押されるからである。
【0068】
例えば、ナット36のねじ山70がドライバ41のねじ山67より高いピッチを有するなら、ナット36は、ゆっくり移動するドライバ41によって妨げられるため用量設定中に遠位方向に自由に移動できない。このようにして、これは薬を用量設定中に押し出すだろう。それに代えて、ナット36のねじ山がドライバ41のねじ山67より著しく低いピッチを有するなら、ドライバは用量設定中にナットから離れて移動し、ドライバは注射の初めにナットを押さず、隙間が閉じた後でのみそうするだろう。従って、ドライバ41のねじ山67のピッチがナット36のねじ山70のピッチと等しいかそれよりもわずかに高いことが好ましい。そして、用量スリーブ38とハウジング3の間のねじ39は、ナットとピストンロッドのねじよりも高いピッチを有する。これは、それが用量送達工程をユーザにとってより容易にする機械的利点を生み出すので望ましい。例えば、ノブ31を15mmの距離だけ押すと、ピストンロッド42は4.1mmだけ移動する。これは、約3.6:1のギヤ比をもたらす。低めのギヤ比は、ユーザが注射を完了させるのに必要な力を増加させるだろう。
【0069】
以下でより詳細に説明するように、ねじりばね90はドライバ41に取り付けられ、ドライバは用量スリーブ38に回転可能に固定されているので、用量設定中の第1方向への用量スリーブ38の回転はねじりばね90を巻き、それでそれは逆の第2方向に用量スリーブ38に逆回転力を加える。この逆回転力は、用量キャンセル方向に回転するように用量スリーブ38を付勢し、先に述べた第1安全装置特徴のために必要な力を与える。
【0070】
本開示に従う完成注射装置10及び用量設定機構30の機能を今記載する。注射装置10は、カートリッジホルダ2内に位置決めされた薬剤のカートリッジ8を有する又は有しないユーザに与えられる。注射装置10が再利用可能な装置として構成される場合、カートリッジホルダ2が、解放可能で再利用可能な方法で用量設定機構30のハウジング3に接続される。これにより、全ての薬剤がカートリッジ8から押し出され又は注射されたときにユーザはカートリッジを新たな満タンのカートリッジ8と交換することができる。注射装置が使い捨ての注射装置として構成される場合、カートリッジホルダ2とハウジング3の間の接続が永続的であるため、薬剤のカートリッジは交換できない。この接続の破壊又は変形を介してのみ、カートリッジ8は注射装置10から取り外される。このような使い捨ての装置は、一旦薬剤がカートリッジ8から押し出されたら捨てられるように設計されている。
【0071】
ユーザは先ず装置からキャップ1を取り外し、適当なペンニードル4をコネクタ7を使用してカートリッジホルダ2に取り付ける。注射装置10が装置組み立て中に予めプライミング(予め準備)されない場合、又は上で議論したような自動的又は強制プライミング特徴を有しない場合、ユーザは以下のようにして装置を手動でプライミング(準備)する必要がある。突起部45が、所定の小固定用量の薬剤に対応するプライミング停止部55aなどの第1用量停止部に係合するように、用量ノブ31を回転させる。用量ノブ31の回転は用量セレクタ35に対してスナップ要素33上の突起部45を回転させる、というのも固定スナップ要素スプライン44が用量ノブ31のノブスプライン31aと噛み合っているからである。用量設定中に、スナップ要素33と用量ノブ31の間に位置する圧縮ばね91として図3に示される軸方向付勢部材が、遠位方向に用量ノブに軸方向力を加え、固定スナップ要素スプライン44とノブスプライン31aが用量設定中に係合し、係合したままになることが保証される。
【0072】
本開示の注射装置10はまた、いわゆる強制又は自動的プライミング特徴を有してもよく、その1つの実施形態が図13に示されており、そこではクラッチ32が用量ノブ31に最初に回転可能に固定されていない。スライドロック80がクラッチ32の遠位端と用量ノブ31の内側面の間に配置されている。用量設定機構30を使用する前に、すなわちユーザが所定の固定用量設定のうちの1つにダイヤルを回す前に、スライドロック80は、用量ノブに対して遠位に移動するように近位方向に必ず押される必要がある。この軸方向移動は、スナップフィンガー81をクラッチの近位対向面32dと係合させ、用量ノブとクラッチの遠位端の間の不可逆なロック関係を形成する。このロック関係はまた、用量ノブとクラッチが互いに回転可能に固定されるように、クラッチ32の歯32cとスライドロック80の対応する歯82を噛み合わせ、インターロック(連結)させる。スライドロック80がクラッチと係合する前に、クラッチは回転してもよく、それはまたナットの回転を生じさせ、ピストンロッド42をハウジングに対して軸方向に移動させる。視覚的な観察及び/又は感触のある通知が、ピストンロッド42上に位置する脚部42aが摺動ピストン9の遠位対向面にしっかり当接したことを示すまで、クラッチは回転する。脚部と摺動ピストン9とのこの当接は、正確に測量された(ダイヤルを回された)用量が針カニューレ6の外に送達されることを保証する。このクラッチの回転は好ましくは注射装置の組み立て中に実行され、同様に脚部42aの摺動ピストン9との当接の保証後に、製造工程によりスライドロック80は最終ロック位置まで押される。クラッチ32の回転を実現する1つの可能な手段は、クラッチ32を回すための真空カップを備えたグリッパを使用することである。それに代えて、クラッチ32と係合し回転させるために、スロット又は他のコネクタが、適合工具と協働するクラッチの遠位面に設計されてもよい。このオプションのコネクタは図13にスリット32fとして示されている。
【0073】
突起部45の回転とプライミング停止部55aの一方の側との後での接触、又はその事なら用量セレクタ35上の所定の用量停止部のいずれかとの接触は、柔軟アーム45aを半径方向内側に屈曲させ、突起部45をプライミング停止部55a又は用量停止部55の逆側に乗り上げさせる。突起部45のこの移動及び接触は、用量設定手順中に用量停止に達したという聞こえる及び/又は感触のある通知を生成する。通知の種類又はレベルは、突起部45、柔軟アーム45aの設計及び/又はプライミング停止部55a又は用量停止部55の構成を変更することで変えられる。幾つかのケースでは、所定用量設定のそれぞれのために異なる通知を有することが望ましい。同様に、用量設定中の通知を、用量送達中にクリッカー47で生成される通知と異ならせることも望ましい。
【0074】
プライミング手順に戻って、一旦プライミング停止部55aに達すると、ユーザはプライミング手順を取り消す必要があってもよく、用量キャンセル手順を使用することでそれを行うことができる。このキャンセル手順はまた、所定用量設定のうちのいずれにも当てはまる。用量キャンセルは、突起部45がプライミング停止部55a又は用量停止部55に対して反対方向に逆回転するように用量ノブを逆方向に回すことで達成される。これは再び、用量設定通知及び/又は用量送達通知と同じ又は異なる通知を生成する。スナップ要素33は用量スリーブ38に対して回転可能に固定されており、用量スリーブはハウジング3の内面3dにねじ係合しているので、用量設定及び用量キャンセル中の用量ノブ31の回転は、用量スリーブ38とハウジング3の間の相対回転を生じさせる。用量スリーブ38とハウジング3の間のねじ接続は、用量ノブ31が回転したときに、用量スリーブ38、スナップ要素33、クラッチ32及び用量ノブ31を軸方向に移動(並進)させる。用量キャンセル中は、これらの構成部品は回転し、反対方向又は近位方向に軸方向に移動(並進)する。
【0075】
用量ノブ31の回転はまた、ピストンロッド42の外面上のねじ山60周りのナット36の回転を生じさせる。それは、前述したようにねじ部分における相対的なピッチ差のために回転せず、ハウジング3に対して軸方向に固定されたままである。摺動ピストンとの接触により支持された固定ピストンロッド42に対するナット36の回転により、ナットは遠位方向にピストンロッドに乗り上げ又は移動(並進)する。用量キャンセル中の逆回転は、ナット36をピストンロッド42に対して逆方向に移動(並進)させる。所望の用量設定を達成するためにナットが進む距離は、用量送達手順が開始されて完了した場合に押し出される薬剤の量に正比例する。用量スリーブ38とハウジング3の間のねじ接続のピッチがナットのねじ山60のピッチより大きいので、用量スリーブ38、スナップ要素33、クラッチ32及び用量ノブ31は、ナットがピストンロッドに乗り上げる又は降りるときにナット36より大きい軸方向距離だけ進む。軸方向移動の差異は通常は用量設定機構30を拘束するが、そうせず、と言うのもピッチ差がナット36とクラッチ32の間の滑りスプライン接続によって補償され、したがってクラッチ32はナット36より長手方向に大きい距離だけ軸方向に進むからである。注射の間、クラッチ32はスナップ要素33を押し、用量スリーブ38を押す。この軸方向力は用量スリーブ38をねじ39のためにハウジング3に対して回転させる。ねじ39のピッチが十分高い場合に、用量スリーブ38はそれが押されると回転し始める。ピッチが低すぎる場合、押しても回転は生じない、と言うのも低いピッチねじはいわゆる「戻り止めねじ」になるからである。
【0076】
用量ノブ31の回転はまた、用量スリーブ38との回転可能に固定されたスプライン接続のためにドライバ41の回転を生じさせる。ねじりばね90は、一方の端部でドライバ41に、他方の端部でハウジング3に回転可能に軸方向に固定されたピストンロッドガイド43に固定されているので、ねじりばね90は用量設定中に巻かれ、張力が増加する。記載したように、引張ばねのトルクは逆回転力を用量スリーブ38に加える。好ましくは、用量設定機構の組み立ての際、ねじりばね90は予張力を与えられ、それによりゼロ用量状態においてもねじりばねは逆回転力を用量スリーブ38に加える。逆回転力は、用量設定機構の第1安全装置特徴をもたらす。この第1安全装置機構は、ユーザが所定用量設定のうちの有限セットの1つではない用量を設定することを防止する。言い換えれば、ユーザが用量ノブ31を回転させていて、突起部45が2つの用量停止部の間、又はゼロ用量ハードストップと第1用量停止部55又はプライミング停止部55aの間にあり、ユーザが用量ノブを放した場合、ねじりばね90の逆回転力が、突起部45を最後に係合した用量停止部に又は突起部46をゼロ用量ハードストップ55dに戻す。さらに、用量キャンセル手順の間、逆回転力は、ユーザが用量ノブ31を次の低めの固定用量設定の下に戻して回転させ又は場合によってはゼロ用量設定までずっと戻して回転させるのを補助する。
【0077】
用量設定中は、用量ノブ31はハウジング3の遠位端の外側に離れて移動(並進)する。用量スリーブ38が回転し、移動(並進)すると、用量スリーブ38上のプリント印40が開口窓3aを通過するので、用量設定(又は用量キャンセル)の進行がハウジング3の窓3aで観測される。所望の所定用量設定に達すると、その用量に対する印が窓3aに現れる。用量停止部55又はプライミング停止部55aが突起部45に係合するので、ねじりばねは、設定用量を次の低めの固定用量設定に逆回転させるための十分な力を有しない。この時点で、注射装置10は既にプライミング手順のために準備ができており、又は既にプライミング(準備)されている場合、注射位置への薬剤の送達の準備ができている。どちらの場合でも、ゼロ用量ハードストップ55dに達してゼロ用量印が窓3aで観測されるまで、ユーザは近位方向に用量ノブ31を押す。プライミングステップの間、ユーザは、薬剤がペンニードル4のカニューレ6から押し出されたかどうか観測する。薬剤が押し出されない場合、これは、ピストン脚部42aが摺動ピストン9の遠位面に当接しないことを意味する。ゆえに、薬剤がカニューレ6を出るのを観測するまでプライミングステップは繰り返される。
【0078】
本開示の用量設定機構はまた、ユーザが最高の所定用量設定より大きい容量を設定するのを防止する最大用量ハードストップを有してもよい。これは、ユーザが最高の所定用量設定に対応する用量停止部55を通過してダイヤルを回し、すなわち用量ノブ31を回転させた場合に第2突起部46と係合する最大用量ハードストップ55cの使用によって、達成される(図4及び6参照)。第2突起部の最大用量ハードストップ55cとの係合は、スナップ要素の更なる回転を防止する。最大用量ハードストップ55cは、第2突起部46が用量設定機構の1又は複数の構成部品を変形させず又は破損させずにハードストップを超えて回転できないような形状で構成されている。ユーザが最終用量停止部55を超えてダイヤルを回し、最大用量ハードストップ55cを第2突起部46に係合させた場合、用量ノブ31の解放により、ねじりばね90が、用量スリーブ38、スナップ要素33及び用量ノブ31を最終用量停止部55まで逆回転させる。
【0079】
用量設定機構30はまた、最大用量ハードストップに全体的に対応するアンチ偽造又はアンチ分解特徴を有してもよい。このアンチ偽造特徴は、ナット36の外面に位置するハードストップ又はフック36bと、クラッチ32のカットアウト32aの遠位対向端壁32bの間に形成される(図10参照)。前述したように、ピストンロッド42のねじ山60と用量スリーブ38の外ねじ39の間のピッチ差は、クラッチが用量設定中にピストンロッド42に乗り上げるのでナット36よりさらに遠位に移動(並進)することを必要とする。ピストンロッド42に対するクラッチ32の軸方向並進が、第2突起部46の最大用量ハードストップ55cとの係合に全体的に対応する所定位置で停止されるように、カットアウト32a及び/又はハードストップ36bは位置決めされる。ハードストップ36bと遠位対向端壁32bの相互作用は、ナット36に対するクラッチ32の更なる遠位移動を防止し、ゆえに用量設定機構の分解を防止できる。一般的に、注射装置を分解する試みは、注射装置10を模造新装置として販売し再利用するために、薬剤の押し出されたカートリッジを偽物カートリッジと交換する目的である。アンチ偽造特徴は、人が、クラッチ32を押す、また今度はスナップ要素33及び用量スリーブ38を押す用量ノブ31を押す場合に分解を阻止する。ハウジング3の内部への用量スリーブ38のねじ接続部39が第一分解特徴として機能するが、装置が最大用量設定にダイヤル設定されたとき、この第一分解特徴は分解を防止するために十分ではないかもしれない。上述したようなハードストップ36bが対向壁32bに係合する第二分解特徴がこの不十分を補償できる。
【0080】
一旦、用量設定機構30がプライミングされると、ユーザは、適当な用量停止部が突起部45と係合して所望の用量値が窓3aに現れるまで用量ノブ31がプライミング停止部55aを超えて回転することを除いてプライミングに使用される同じ複数のステップを繰り返すことで所望の固定用量を選択し、設定する。幾つかのケースでは、複数の所定用量設定の間でダイヤルを回しても印を窓3aに示させないことが好ましいのに対して、他のケースでは複数の固定用量設定の間の設定不能な用量位置を表示する印を窓3aに示すことが望ましい。
【0081】
一旦、複数の所定用量設定のうちの1つが用量設定機構にてダイヤル設定されると、ユーザは、用量送達手順を開始させるために軸方向力を近位方向に加える。ユーザにより加えられる軸方向力は、第2付勢部材91により加えられる遠位指向力に勝り、用量ノブ31、クラッチ32及び用量セレクタ35をスナップ要素33及びハウジング3に対して近位方向に軸方向に移動させる。この初期移動はノブスプライン31aを固定スナップ要素スプライン44から解除し、ノブスプライン31aをフローティングスプラインアセンブリ34に係合させ、従ってフローティングスプラインアセンブリ34と用量セレクタスプライン54の間のスプライン接続によってクラッチ32と用量ノブ31をハウジングに回転可能に固定する。用量セレクタ35は用量ノブ31と共にフローティングスプラインアセンブリ34に対して軸方向に移動するが、用量セレクタスプライン54とフローティングスプラインアセンブリ34は、用量設定中と用量送達中は係合したままである。
【0082】
スナップ要素33に対する用量セレクタ35の初期軸方向移動は、用量停止部55を突起部45との半径方向の整列から脱出させ、それにより用量セレクタ35に対するスナップ要素33の回転は突起部45を用量停止部55又はプライミング停止部55aのいずれとも係合させず(もちろん注射バンプ55bの端部を除く)、装置の機械的な用量送達手順が完了したという聞こえる及び/又は触感のある通知、すなわちいわゆる注射終了通知をユーザに与える。前述したように、この通知はまた、ユーザに推奨時間(一般的に10秒)の間カニューレを注射位置に維持するよう知らせる。同様に、スナップ要素33に対する用量セレクタの初期軸方向移動はまた、半径方向突出リブ56を第2突起部46に対して近位に移動させ、それにより用量セレクタ35に対するスナップ要素33の回転が残りの用量送達手順中に生じたときに、突起部46は突出リブ56の遠位側に面する。突出リブは、それぞれの用量停止部55,55aに一致する複数の位置で突出リブ56内にある複数のカットアウト56aのために第2突起部46を過ぎて軸方向に移動することができる。注射の最後に、スナップ要素33の更なる回転が第2突起部をゼロ用量ハードストップ55dに当接させ、これによりスナップ要素33の更なる回転が防止される。
【0083】
上で述べた注射終了特徴に加えて、別な注射終了通知がドライバ41の一部として組み込まれてもよい。この代わりの又は付加的な注射終了特徴もまた、機械的な用量送達手順が完了したときにユーザに聞こえる及び/又は触感のある通知を与える。この注射終了特徴の1つの構成が柔軟アーム68a,68bの組み合わせとして図9に示されている。柔軟アーム68bは用量設定中、用量スリーブ38の内側の幾何学形状によって負荷を加えられる。柔軟アーム68bが右に内側に曲げられ(図9参照)、柔軟アーム68aにより適所に保持されるので、これがアーム68bを用量スリーブ38の内側に保持する。用量送達後にゼロに達すると、柔軟アーム68aは用量スリーブの幾何学形状によって曲げられ、柔軟アーム68bを解放する。これは、ドライバ41が用量スリーブ38により回され、それで2つのそれぞれのねじ39及び67のピッチ差のために両方の構成部品が互いに対して純粋に直線運動を行うため、可能である。
【0084】
ユーザが用量送達手順の継続中に用量ノブ31及び用量ボタン72の両方に軸方向力を維持すると、クラッチ32はスナップ要素の遠位端に当接し、それを近位方向に軸方向に移動させる。クラッチ32はスナップ要素33を押す。スナップ要素は用量スリーブに固定され、よってクラッチは用量スリーブ38を押す。用量スリーブ38は本体に対して十分高いピッチを備えたねじを有するので、用量スリーブ38への軸方向力は用量スリーブ及びスナップ要素33をハウジング3に対して回転させ、ハウジング3に対する回転によりそれは近位方向に移動する。用量セレクタ35はハウジング内にスライドするが、ハウジングスプライン3bと溝35aの間のスプライン係合のためにハウジング3に対して回転しない。用量スリーブ38の回転はまた、ピストンロッドガイド43とのねじ接続への、ドライバ41の回転を生じさせる。それはピストンロッドを近位に駆動し、ねじりばね90の張力除去をもたらす。ドライバ41はピストンロッド42を直接駆動しない。ドライバ41が回転すると、ドライバは近位方向に移動し、ナット36を前方に押す。ナット36は回転しないので、ドライバ41はナット及びピストンロッド42を前方に押す。
【0085】
用量ノブ31、フローティングスプラインアセンブリ34及びハウジング3の回転可能に固定された関係によってハウジングに回転可能に固定されたクラッチ32との回転可能に固定された関係のために、ナット36は用量送達中に回転しない。ゆえに、ナット36は軸方向に移動できるだけであり、それによりピストンロッド42を運ぶ、というのもピストンロッドはピストンロッド42上の平坦部61と係合する非円形開口64によって回転を防止されるからである。ピストンロッドは、ナットが用量設定中にピストンロッドに対して元来移動したのと同じ距離だけ軸方向に移動される。この回転しない軸方向移動は、ナット36のフランジ36aに当接するドライバ41の近位端の回転可能な軸方向移動によって引き起こされる。ピストンロッド42の軸方向移動は、摺動ピストン9を固定カートリッジ8の内壁に対して軸方向に移動させ、用量設定手順中に設定された所定の固定用量に等しい量の薬剤をニードルカニューレ6から押し出す。
【0086】
ユーザが用量ノブ31への軸方向力を除去することで用量送達手順を停止させる場合、第2安全装置機構が起動される。軸方向力の除去によって、圧縮ばね91が用量ノブ31を遠位方向に付勢する。ユーザが2つの所定の固定用量設定の間で用量送達を停止する場合、用量ノブと軸方向に固定された用量セレクタ35は共に、近位に移動することを防止される、と言うのも第2突起部46が突出リブ56の遠位対向側に当接するからである。これは、用量セレクタ35及び用量ノブ31の軸方向移動を停止させる。突起部46の突出リブ56とのこの当接が無ければ、用量セレクタは遠位に移動し、それでノブスプライン31aがスナップ要素上のスナップ要素スプライン44と再係合することになり、従って、用量ノブ31、クラッチ32及びナット36がスナップ要素33と回転可能に係合する。ドライバ41を介してスナップ要素33に加えられるトルクはナット36を逆回転させ、未知の量だけ設定用量を減少させる。この逆回転は、対応する用量停止部が逆回転を停止させる、次の最低の所定の固定用量設定に達するまで継続する。
【0087】
他方で用量送達が低めの所定の固定用量設定のうちの1つで停止された場合、突出リブ56におけるカットアウト56aは用量セレクタ35を遠位に移動させることができ、第2突起部46はリブ56の近位側に位置決めされる。これはまた、用量ノブ31のノブスプライン31aを、前述したように用量ノブ31、クラッチ32及びナット36をスナップ要素33と回転可能に係合させるスナップ要素スプライン44の固定セットに再係合させる。しかしながら、カットアウト56aは用量停止部55に対応する複数の周方向位置に位置しているだけなので、スナップ要素33の、従ってナット36の逆回転は無い、と言うのも用量停止部55及び第1突起部45が係合しているからである。ナット36の逆回転が無いので、用量設定の未知の減少は無い。ゆえに、停止された用量送達手順の回復が設定用量の未知の減少無しに継続し、元来設定された所定の容量が送達される。
【0088】
上述した、図面に示された実施形態は安全アセンブリの可能な設計の非限定的な例としてのみ考えられ、このような設計は特許請求の範囲内で多数の方法で変形されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 キャップ
2 カートリッジホルダ
3 ハウジング
3a 窓
3b 長手方向スプライン
3d 内面
4 ペンニードル
5 ハブ
6 両頭針カニューレ
7 ニードルコネクタ
8 カートリッジ
8a セプタム
9 ピストン
10 注射装置
30 用量設定機構
31 用量ノブ
31a ノブスプライン
31c スナップフィット
33 スナップ要素
33a 外面
34 フローティングスプラインアセンブリ
35 用量セレクタ
35a 長手方向溝
35b 内面
38 用量スリーブ
42 ピストンロッド
42a 脚部
44 スプライン
45 突起部
45a 柔軟アーム
48 内部スプライン
48a スナップ要素
52 長手方向スプライン
54 固定用量セレクタスプライン
55 用量停止部
55a プライミング停止部
55b 注入バンプ
55c 最大用量ハードストップ
55d ゼロ用量ハードストップ
55e 傾斜面
56 周方向リブ
56a カットアウト
59 接続カットアウト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
【手続補正書】
【提出日】2022-05-17
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本開示は、プライミング特徴を有する注射装置及び注射装置のプライミング手順を実行する方法に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
決すべき問題は、注射装置を使用のために調節するため、プライミング動作(準備動作)が行われ、駆動機構が正しく調節されていること、すなわちピストンロッドと付属の脚部が摺動プランジャーに接触しており、それで正しい量の薬剤が注射装置から放出されることを保証することである
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
この問題は、付属のセットの請求項に従う特徴を有する注射装置を提供することで解決される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
1つの実施形態によれば、用量設定機構は、結合アセンブリ、用量ノブ、用量セレクタ及びスナップ要素を有する。結合アセンブリは、スナップ結合要素の固定セットを有するスナップ要素と回転可能に係合している。結合アセンブリは、用量設定中及び用量送達中に複数の用量セレクタ結合要素の対応するセットと係合する。結合アセンブリは有利には、フローティングスプラインアセンブリ(浮遊スプラインアセンブリ)である。フローティングスプラインアセンブリは有利には、用量送達中に用量ノブ上のスプラインと係合するが用量設定中にそのように係合しない多数の長手方向に延びるスプラインを有してもよい。フローティングスプラインアセンブリはまた、スナップ要素に対して軸方向に固定されてもよい。回転可能な係合を与えることができる結合アセンブリの他の形状も有利である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
図14A~14Eは、阻止突起部46、突起部45、突出リブ56、ゼロ用量ハードストップ55d及び最大用量ハードストップ55cの相対位置を示す。図14Aは、用量ノブ31に適用される軸方向力が無い初期ゼロ設定用量位置、すなわちいわゆる解放状態における用量設定機構30を示す。ここで、阻止突起部46が、ゼロ未満の用量の測量(ダイヤル回し)、すなわちスナップ要素33を時計方向に回すことを防止するゼロ用量ハードストップ55dに当接している。突起部45はプライミング停止部55aの裏面にある。図14Bは、用量ノブ31が用量送達手順を開始するために押される前に設定された有限の所定の設定用量のうちの1つ(0.1ml)を設定された用量設定機構30を示す。突起部45は用量停止部55の前側に位置決めされ、阻止突起部46は突出リブ56の近位側に位置決めされているが、カットアウト56aと軸方向に整列している。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライミング特徴を有する注射装置(10)であって、
近位方向に軸方向に移動するように構成されたピストンロッド(42)であって、用量送達中、ピストンロッド(42)が薬剤容器(2)内のプランジャー(9)を近位に移動させて薬剤を加圧する軸方向力を加え、それにより薬剤を前記薬剤容器(2)における近位開口を介して放出するピストンロッド(42)、
前記ピストンロッド(42)とねじ係合しているナット(36)、及び
注射装置(10)の組み立て中に回転するように構成されたクラッチ(32)であって、前記ピストンロッド(42)を注射装置(10)のハウジング(3)に対して軸方向に移動させるための前記ナット(36)の回転を生じさせるクラッチ(32)、を有し、
前記クラッチ(32)は、前記ピストンロッド(42)上に位置する脚部(42a)が前記容器(2)の摺動プランジャー(9)の遠位対向面にしっかり当接するまで、回転するように構成されている、注射装置(10)。
【請求項2】
前記クラッチ(32)は、注射装置(10)の組み立て中に注射装置(10)の用量ノブ(31)に対して回転するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の注射装置(10)。
【請求項3】
注射装置(10)の組み立て後に、前記クラッチ(32)は、用量設定中と用量送達中の両方で注射装置(10)の前記用量ノブ(31)に回転可能に固定される、ことを特徴とする請求項2に記載の注射装置(10)。
【請求項4】
注射装置(10)はスライドロック(80)を有し、
前記クラッチ(32)は、前記スライドロック(80)が前記クラッチ(32)と係合する前に回転するように構成されており、
前記スライドロック(80)は、前記クラッチ(32)との係合後に注射装置(10)の用量ノブ(31)と前記クラッチ(32)の間の不可逆なロック関係を形成するように構成されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項5】
前記不可逆なロック関係は、前記用量ノブ(31)と前記クラッチ(32)が互いに回転可能に固定されるように、前記クラッチ(32)の歯(32c)と前記スライドロック(80)の対応する歯(82)を噛み合わせ、インターロック(連結)させ、及び/又は
前記スライドロック(80)は、前記クラッチ(32)の近位対向面(32d)と係合して前記不可逆なロック関係を形成するように構成されたスナップフィンガー(81)を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の注射装置(10)。
【請求項6】
前記クラッチ(32)は、前記ナット(36)に回転可能に固定され、前記ナット(36)に対して軸方向に摺動可能である、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項7】
前記ナット(36)は、用量設定中と用量キャンセル中の両方で前記クラッチ(32)により回転され、前記ピストンロッド(42)のねじ山(60)とのねじ接続のために軸方向移動を実行する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項8】
前記クラッチ(32)及び注射装置(10)の用量設定ノブ(31)は、それらが互いに回転可能に固定されて、それにより用量設定中に前記用量設定ノブ(31)の回転が、前記ナット(36)を回転させる前記クラッチ(32)を回転させるように、注射装置(10)の組み立て後に作動式に接続される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項9】
前記ナット(36)の回転は、前記ナット(36)を、用量設定中に前記ピストンロッド(42)上に位置するねじ山(60)に沿って遠位方向に軸方向に並進移動させ、また用量キャンセル中に近位方向に並進移動させる、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項10】
前記ナット(36)は用量送達中に回転せず、近位方向に或る距離だけ前記ピストンロッド(42)と共に軸方向に移動するだけであり、
前記距離は設定用量に正比例する、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項11】
前記ナット(36)は前記ピストンロッド(42)のねじ山(60)に合う雌ねじ(70)を有する、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項12】
前記ピストンロッド(42)は用量設定中と用量送達中の両方で前記ハウジング(3)に対して回転不能状態で保持される、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項13】
注射装置(10)は、用量設定中と用量送達中の両方で前記ピストンロッド(42)が回転するのを防止するピストンガイド(43)を有し、
前記ピストンガイド(43)は、前記ピストンロッド(42)の非円形断面を受容する非円形中央開口(64)を有する、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項14】
前記クラッチ(32)は、真空カップを備えたグリッパによって注射装置(10)の組み立て中に回転されるように構成され、及び/又は
前記クラッチ(32)は、前記クラッチ(32)の遠位面に設計されたコネクタ(32f)であって、前記クラッチ(32)と係合し回転させるために適合工具と協働するように構成されたコネクタ(32f)を有する、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の注射装置(10)。
【請求項15】
注射装置(10)のプライミング手順を実行する方法であって、
前記注射装置(10)は、
ピストンロッド(42)、
前記ピストンロッド(42)とねじ係合したナット(36)、
クラッチ(32)、及び
前記注射装置(10)により送達すべき薬剤を備えた容器(2)を有する、方法において、
-前記ピストンロッド(42)を前記注射装置(10)のハウジング(3)に対して軸方向に移動させるための前記ナット(36)の回転を生じさせるために、前記注射装置(10)の組み立て中に前記クラッチ(32)を回転させる、方法。