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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010042
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K31/04 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180504
(22)【出願日】2021-11-04
(62)【分割の表示】P 2018091528の分割
【原出願日】2018-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】591136838
【氏名又は名称】株式会社カワデン
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金高 浩春
(72)【発明者】
【氏名】田中 丈二
(72)【発明者】
【氏名】松永 均
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA03
3H062AA12
3H062BB10
3H062CC01
3H062CC27
3H062DD11
3H062EE07
(57)【要約】
【課題】安価な構成で、停電の有無に拘わらず、外部信号に応答するバネ式緊急作動を実現できる電動弁を提供する。
【解決手段】電動弁100は、弁体1に結合された出力軸2と、外部電源により駆動される電動モータMと、電動モータMの駆動力を出力軸2に伝達する伝達機構3と、伝達機構3を介して出力軸2をバネ作動方向(閉方向または開方向)に付勢するバネ4と、無励磁作動型電磁ブレーキBと、これに供給すべきブレーキ励磁電力を蓄電する蓄電ユニットECと、蓄電ユニットECと無励磁作動型電磁ブレーキBとの間の回路を開閉する制動解除スイッチと、弁作動指令信号に応答して、制動解除スイッチを導通させて、電磁ブレーキBを非制動状態とする制御回路K1とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を開閉する弁体と、
前記弁体に結合され、前記弁体により前記流路を閉じる閉方向、および前記弁体により流路を開く開方向に作動可能な出力軸と、
外部電源により駆動される電動モータと、
前記電動モータの駆動力を前記出力軸に伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に結合され、前記電動モータの回転によって巻き上げられ、巻き上げられた状態で、前記伝達機構を介して前記出力軸を前記閉方向および前記開方向のうちのいずれか一方であるバネ作動方向に付勢するバネと、
無励磁状態において前記バネの付勢力による前記出力軸の作動を禁止する制動状態となり、励磁状態において制動状態を解除した非制動状態となる無励磁作動型電磁ブレーキと、
前記無励磁作動型電磁ブレーキに供給すべきブレーキ励磁電力を蓄電する蓄電ユニットと、
前記蓄電ユニットと前記無励磁作動型電磁ブレーキとの間の回路を開閉する制動解除スイッチと、
弁作動指令信号に応答して、前記制動解除スイッチを導通させることにより、前記蓄電ユニットから前記無励磁作動型電磁ブレーキに励磁電流を供給させる制御回路と、
前記無励磁作動型電磁ブレーキおよび前記制御回路を収納するハウジングと、
を含む、電動弁。
【請求項2】
前記外部電源から供給される電力によって前記蓄電ユニットを充電する充電回路をさらに含む、請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記制御回路の動作電力が、前記蓄電ユニットから供給される、請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記伝達機構は、前記バネが巻き上げられ、前記無励磁作動型電磁ブレーキが無励磁状態のときに、前記電動モータの回転を前記出力軸に伝達可能に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記蓄電ユニットが、電気二重層キャパシタを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項6】
前記蓄電ユニットが、前記ハウジングに収納されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バネ力によって緊急作動を行わせることができる電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バネリターン式の電動緊急遮断弁を開示している。電動緊急遮断弁は、弁体を結合した出力軸と、電動モータと、複数のギヤを組み合わせた伝達機構と、ゼンマイバネと、電磁クラッチブレーキとを含む。電動モータおよびゼンマイバネは、伝達機構に結合されている。
【0003】
電動モータに通電すると、電動モータの回転は、伝達機構を介して出力軸に伝達され、それによって、弁体が流路を開く。それと同時に、電動モータの回転は、伝達機構を介してゼンマイバネに伝達され、このゼンマイバネを巻き締める。これにより、ゼンマイバネは、伝達機構に対して、弁体を閉方向に付勢する力を与える。弁体が全開に達すると、電動モータへの通電を停止するとともに、電磁クラッチブレーキに通電して制動状態とし、電動モータ軸を固定する。それにより、ゼンマイバネの付勢力に抗して、弁体が開状態に保持される。
【0004】
停電時には、電磁クラッチブレーキへの駆動電流が消失するので、電磁クラッチブレーキが解放状態となり、電動モータ軸が解放される。すると、ゼンマイバネの付勢力が伝達機構を介して弁体へと伝達され、ゼンマイバネの伸長に伴って、弁体が閉方向に駆動される。それにより、流路が緊急遮断される。ゼンマイバネの伸長による閉弁動作は、電動モータの回転による閉弁動作よりも速いので、流路の緊急遮断に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-219895公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バネリターン式の緊急遮断弁は、停電するとバネ力によって緊急遮断するので、信号に応答して緊急遮断すべき緊急遮断弁には適さない場合がある。たとえば、所定震度以上の地震を感知する感震器の検出信号に応答して流路を遮断すべき用途においては、停電時であっても流路を開いておくべき場合もある。そのため、停電に応答して緊急遮断してしまい、その後は感震器の検出信号に応答しなくなるバネリターン式の緊急遮断弁は必ずしも適切ではない。
【0007】
感震器は、たとえば、地震発生時に錘によって作動するマイクロスイッチを備えている。このマイクロスイッチを電磁クラッチブレーキの給電ラインに直列に介装すれば、感震器による地震検知に応答して、電磁クラッチブレーキへの給電を停止し、ゼンマイバネの付勢力による緊急遮断を行える。しかし、停電時には、感震器の作動とは無関係に緊急遮断動作が開始される。
【0008】
この問題は、停電時にも電力を発生する無停電電源装置を電磁クラッチブレーキに接続し、無停電電源装置から電磁クラッチブレーキへの給電線に、感震器のマイクロスイッチを直列に介装する構成によって解決できる。しかし、電動弁本体に無停電電源装置を備えるスペースを確保することは不可能であるから、無停電電源装置を別途準備し、電動弁本体から離れて配置される操作盤等に備える必要がある。むろん、無停電電源装置を備えることにより、大幅なコストの上昇は避けられない。
【0009】
さらにまた、電磁クラッチブレーキを制動状態に保持するための電力を流し続ける必要があるので、時間経過とともに、消費電力量が大きくなる問題もある。
【0010】
そこで、この発明の一つの目的は、安価な構成で、停電の有無に拘わらず、外部信号に応答するバネ式緊急作動を実現できる電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の一実施形態は、流路を開閉する弁体と、前記弁体に結合され、前記弁体により前記流路を閉じる閉方向、および前記弁体により流路を開く開方向に作動可能な出力軸と、外部電源により駆動される電動モータと、前記電動モータの駆動力を前記出力軸に伝達する伝達機構と、前記伝達機構に結合され、前記電動モータの回転によって巻き上げられ、巻き上げられた状態で、前記伝達機構を介して前記出力軸を前記閉方向および前記開方向のうちのいずれか一方であるバネ作動方向に付勢するバネと、無励磁状態において前記バネの付勢力による前記出力軸の作動を禁止する制動状態となり、励磁状態において制動状態を解除した非制動状態となる無励磁作動型電磁ブレーキと、前記無励磁作動型電磁ブレーキに供給すべきブレーキ励磁電力を蓄電する蓄電ユニットと、前記蓄電ユニットと前記無励磁作動型電磁ブレーキとの間の回路を開閉する第1制動解除スイッチと、弁作動指令信号に応答して、前記第1制動解除スイッチを導通させることにより、前記蓄電ユニットから前記無励磁作動型電磁ブレーキに励磁電流を供給させる制御回路と、を含む、電動弁を提供する。
【0012】
この構成によれば、電動モータの回転によってバネが巻き上げられた後、無励磁作動型電磁ブレーキを制動状態とすれば、電動モータに通電することなく、バネの巻き上げ状態を保持できる。しかも、無励磁作動型電磁ブレーキは、励磁電流を供給していない無励磁状態で制動状態となるので、制動状態を保持するための電力も要しない。無励磁作動型電磁ブレーキに励磁電流を供給すると、制動状態が解除されることにより、バネに蓄積されたエネルギーが解放される。解放されたエネルギーは、伝達機構を介して出力軸へと伝達され、出力軸をバネ作動方向に作動させる。それにより、バネの付勢力によって、弁体をバネ作動方向(開方向または閉方向)に作動させることができる。したがって、バネ力を利用した緊急作動(緊急遮断または緊急開放)を実現できる。
【0013】
一方、この発明の電動弁には、蓄電ユニットが備えられている。すなわち、電動弁に蓄電ユニットが内蔵されている。弁作動指令信号が入力されると、制御回路が第1制動解除スイッチを導通させ、それによって、蓄電ユニットから無励磁作動型電磁ブレーキに励磁電流が供給される。その結果、無励磁作動型電磁ブレーキは、励磁状態、すなわち、非制動状態となるので、バネに蓄積されたエネルギーを解放して、弁体を緊急作動させることができる。
【0014】
無励磁作動型電磁ブレーキは、電力供給を要することなく制動状態を保持できるので、蓄電ユニットは、バネのエネルギーによって弁を緊急作動させる時間だけ無励磁作動型電磁ブレーキを作動させるのに充分なブレーキ励磁電力を蓄えることができればよい。したがって、大容量の蓄電ユニットを必要としないから、電動弁に備えることができる小型の蓄電ユニットを用いることができ、そのうえ、コストが高くつくこともない。
【0015】
このようにして、安価な構成で、停電(外部電源供給の遮断)の有無に拘わらず、外部信号(弁作動指令信号)に応答してバネ式緊急作動を実現できる電動弁が提供される。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記電動弁は、前記外部電源から供給される電力によって前記蓄電ユニットを充電する充電回路をさらに含む。
【0017】
この構成により、電動モータを駆動するための外部電源によって蓄電ユニットを充電できるので、充電型の蓄電ユニットを用いることができる。したがって、小容量で小型の蓄電ユニットを適用できるから、一層容易に蓄電ユニットを電動弁に組み込むことができる
。さらに、充電型の蓄電ユニットを用いることにより、蓄電ユニットの交換等のメンテナンスの手間を軽減できる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記電動弁は、前記外部電源と前記無励磁作動型電磁ブレーキとを接続する回路を開閉する第2制動解除スイッチをさらに含む。また、前記制御回路は、前記外部電源からの電力が供給されているときには、前記弁作動指令信号に応答して、前記第2制動解除スイッチを導通させることにより、前記外部電源から前記無励磁作動型電磁ブレーキに励磁電流を供給させ、前記外部電源からの電力が供給されていないときには、前記弁作動指令信号に応答して、前記第1制動解除スイッチを導通させることにより、前記蓄電ユニットから前記無励磁作動型電磁ブレーキに励磁電流を供給させる。
【0019】
この構成によれば、外部電源が供給されているとき、すなわち、停電が生じていないときには、外部電源からの電力により無励磁作動型電磁ブレーキの制動状態を解除して、バネ力を利用した緊急作動を行わせることができる。その一方で、停電が生じているときには、蓄電ユニットに蓄えられている電力により、無励磁作動型電磁ブレーキの制動状態を解除して、バネ力を利用した緊急作動を行わせることができる。こうして、停電が生じていないときには、蓄電ユニットの蓄電電力を減らすことなく、バネ式の緊急作動を行わせることができる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記制御回路は、前記蓄電ユニットの蓄電残量を検出し、前記蓄電残量が残量閾値または当該残量閾値未満に低下すると、前記弁作動指令信号が入力されなくても、前記第1制動解除スイッチを導通させて、前記蓄電ユニットから前記無励磁作動型電磁ブレーキに励磁電流を供給させる。
【0021】
この構成によれば、蓄電ユニットの蓄電残量が残量閾値または残量閾値未満に低下すると、弁作動指令信号の有無によらずに、蓄電ユニットからの電力供給によって無励磁作動型電磁ブレーキが非制動状態となり、バネ力を利用した緊急作動が行われる。これにより、蓄電ユニットの蓄電残量不足に起因して緊急作動ができなくなることがなくなる。
【0022】
たとえば、停電時間の経過に伴って蓄電ユニットの蓄電残量が低下する場合でも、蓄電残量が残量閾値または残量閾値未満に低下する以前には、弁作動指令信号に応答したバネ式緊急作動が保証される。したがって、蓄電ユニットの容量および前記残量閾値を適切に定めることによって、必要とされる保証時間に亘って、停電時であっても弁作動指令信号に応答する緊急作動を保証できる。
【0023】
蓄電ユニットの蓄電残量の検出は、蓄電ユニットの発生電圧の検出により行ってもよい。また、蓄電ユニットの蓄電残量の検出は、蓄電ユニットに出入りする電流を検出することによっても行える。さらに、停電時間の経過に伴って蓄電ユニットの残量が低下する場合には、停電継続時間を計測することによって、蓄電ユニットの蓄電残量を間接的に計測してもよい。換言すれば、蓄電残量の直接的な検出に代えて、停電継続時間を計測し、停電継続時間が所定の閾値(たとえば停電時動作保証時間)に達すると、制御回路が、第1制動解除スイッチを導通させることにより、無励磁作動型電磁ブレーキを励磁して制動状態を解除してもよい。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記制御回路の動作電力が、前記蓄電ユニットから供給される。この構成により、停電時であっても、制御回路を適切に動作させることができるので、弁作動指令信号の入力に応答して、無励磁作動型電磁ブレーキを非制動状態に制御して、バネ力による緊急作動を行わせることができる。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記伝達機構は、前記バネが巻き上げられ、前記無励磁作動型電磁ブレーキが無励磁状態(制動状態)のときに、前記電動モータの回転を前記出力軸に伝達可能に構成されている。この構成によれば、バネが巻き上げられた状態で、電動
モータを駆動することにより、弁体を開閉作動させることができる。したがって、弁体を開閉したり、その開度を全開と全閉との間の任意の開度に調整したりすることができる。
【0026】
この発明の一実施形態では、前記蓄電ユニットが、電気二重層キャパシタを含む。この構成では、電気二重層キャパシタを用いることにより、無励磁作動型電磁ブレーキを確実に作動させて緊急作動を実行でき、かつメンテナンスの労力を軽減できる。電気二重層キャパシタは、化学反応を伴わずに充放電する仕組みを有しているため、一般的な蓄電池と比較して遥かに長寿命であり、充放電による劣化や寿命短縮がほとんどないので、実質的にメンテナンスフリーである。しかも、急速充電が可能であるため、無励磁作動型電磁ブレーキを作動させるのに必要な電力を速やかに蓄積できる。また、電気二重層キャパシタを用いることにより、小型で軽量な構成とすることができる。
【0027】
この発明の一実施形態では、前記蓄電ユニットが、前記無励磁作動型電磁ブレーキとともにハウジングに収納されている。この構成により、無励磁作動型電磁ブレーキとともにハウジング内に蓄電ユニットを収納することで、小型の電動弁を構成できる。ハウジング内には、さらに前記制御回路が収容されてもよい。ハウジング内には、さらに電動モータが収容されてもよい。また、ハウジング内には、さらに、伝達機構が収容されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の第1の実施形態に係る電動弁の構造を説明するための斜視図である。
図2】前記電動弁の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図3】前記電動弁に備えられた制御回路の動作を説明するためのフローチャートであり、準備動作を示している。
図4】準備動作の後の前記制御回路の動作を説明するためのフローチャートであり、信号接点の状態に応答する信号監視動作を示す。
図5】この発明の第2の実施形態に係る電動弁の構成を説明するための断面図である。
図6A-6C】前記第2の実施形態に係る電動弁の動作を説明するための要部斜視図である。
図7】前記第2の実施形態に係る電動弁の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図8】前記第2の実施形態に係る電動弁に備えられた制御回路の動作を説明するためのフローチャートであり、準備動作を示している。
図9】前記第2の実施形態の電動弁において、準備動作の後に前記制御回路が実行する動作を説明するためのフローチャートであり、信号接点の状態に応答する信号監視動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1は、この発明の一実施形態に係る電動弁の構造を説明するための斜視図である。電動弁100は、弁体1と、弁体1が先端に結合された出力軸2(弁棒)と、電動モータMと、電動モータMの回転を出力軸2に伝達する伝達機構3と、伝達機構3に結合されたバネ4と、無励磁作動型の電磁ブレーキBとを含む。
【0031】
弁体1は、流路5を開閉するように構成されている。たとえば、弁体1は、弁箱内の流路5内で90度の範囲で回動して流路5を開閉するボールバルブまたはバタフライバルブであってもよい。出力軸2には、ストッパ板6が固定されている。このストッパ板6に対向するように一対のストッパボルト7が配置されている。一対のストッパボルト7は、出力軸2の全開位置および全閉位置においてそれぞれストッパ板6に当接して、出力軸2の回転を規制するように配置されている。全開位置とは、弁体1が全開状態となる位置であり、全閉位置とは、弁体1が全閉状態となる位置である。
【0032】
電動モータMの駆動力はギヤヘッド8(減速ギヤ)を介してピニオン9から出力される。出力軸2の途中部には平歯車10が固定されている。伝達機構3は、ピニオン9の回転を減速し、トルク増幅して平歯車10に伝達する複数の伝達ギヤ11を含む。伝達機構3を構成する一つの伝達ギヤ11(この実施形態では、出力軸2の平歯車10と噛合する伝達ギヤ11)のギヤ軸12にバネ4が結合されている。バネ4は、この実施形態では、ゼンマイバネであるが、ほかにも捩りバネを適用することもできる。バネ4は、たとえば、弁体1が閉じる方向である閉方向(バネ作動方向の一例)に出力軸2を付勢するように取り付けられている。
【0033】
出力軸2には、さらに、2つのカム13が固定されている。これらのカム13に全開検出リミットスイッチLS1,LS2がそれぞれ係合している。全開検出リミットスイッチLS1,LS2は、弁体1が全開位置のときの出力軸2の回転位相でカム13に押されて全開を検出するように配置されている。
【0034】
電磁ブレーキBは、この実施形態では、電動モータMに結合されており、電動モータMの回転軸を制動するように構成されている。電磁ブレーキBは、無励磁作動型の電磁クラッチブレーキで構成されている。すなわち、励磁電流を通電していない無励磁状態において、電動モータMの回転軸を制動し、当該回転軸を非回転状態に固定する制動状態となる。一方、励磁電流を通電した励磁状態では、電磁ブレーキBは、非制動状態となり、電動モータMの回転軸を解放して、当該回転軸の回転を許容する。
【0035】
電磁ブレーキBは、具体的には、電動モータMの回転軸に結合されるディスクアセンブリと、ディスクアセンブリに対して接離するアーマチュアと、励磁コイルを内蔵したフィールドと、アーマチュアをディスクアセンブリに圧着するコイルバネとを含む。励磁コイルに通電していない無励磁状態では、コイルバネのバネ力によってアーマチュアがディスクアセンブリに圧着し、ブレーキがかかった制動状態となる。励磁コイルに通電すると、コイルバネのバネ力に抗してアーマチュアがフィールドに吸引されてディスクアセンブリへの圧着が解かれ、それにより制動が解除されて、ディスクアセンブリが回転可能になる。
【0036】
電動モータM、電磁ブレーキB、伝達機構3などは、二点鎖線で示すように、ハウジング14内に収納されている。ハウジング14内には、制御回路K1等を構成する回路部品が実装された配線基板15が収容されている。配線基板15上には、蓄電ユニットの一例である電気二重層キャパシタECが実装されている。
【0037】
図2は、電動弁100の電気的構成を説明するためのブロック図である。電動弁100は、電源回路U1と、充電回路K2と、電気二重層キャパシタECと、制御回路K1と、第1~第3スイッチSW1~SW3とを含む。第1~第3スイッチSW1~SW3は、電界効果型トランジスタ等の半導体スイッチであってもよい。電動モータMは、たとえば交流モータ(誘導モータ)である。たとえば、電動モータMは、主巻線および補助巻線を備えており、それらの一端は共通接続されており、それらの他端の間には進相用コンデンサCが接続されている。
【0038】
電動モータMに接続された2本の電力線21,22は、電源接続端子T1,T2にそれぞれ接続されている。一方の電力線21に全開検出リミットスイッチLS1が介装されている。他方の電力線22に第1スイッチSW1が介装されている。一対の電力線21,22に電源回路U1が接続されている。電源回路U1は、たとえばAC/DC(交流/直流)コンバータを含む直流電源回路であってもよい。
【0039】
電源回路U1には、第1直流電源線31を介して、電磁ブレーキBが接続されている。第1直流電源線31には、第2スイッチSW2が介装されている。第2スイッチSW2と電源回路U1との間において、第1直流電源線31に逆流防止のための第1ダイオードD1が介装されている。第1ダイオードD1と第2スイッチSW2との間において、第1直流電源線31に充電回路K2が接続されている。充電回路K2は、たとえば定電流回路を構成している。充電回路K2は、汎用電源ICを用いた定電流回路であってもよいし、スイッチング電源を用いて充電効率を高めた構成を有していてもよい。
【0040】
充電回路K2は、第2直流電源線32を介して、電磁ブレーキBに接続されている。第2直流電源線32は、第2スイッチSW2を迂回して電磁ブレーキBに接続されている。第2直流電源線32に第3スイッチSW3が介装されている。すなわち、第2および第3スイッチSW2,SW3は、電磁ブレーキBに対して並列に接続されている。
【0041】
充電回路K2と第3スイッチSW3との間において、第2直流電源線32に、電気二重層キャパシタECが接続されている。したがって、電気二重層キャパシタECは、充電回路K2からの電流によって充電される。また、第3スイッチSW3が導通状態であれば、電気二重層キャパシタECは、電磁ブレーキBに励磁電流を供給する。
【0042】
第3スイッチSW3は、この発明の一実施形態における第1制動解除スイッチの一例である。また、第2スイッチSW2は、この発明の一実施形態における第2制動解除スイッチの一例である。
【0043】
一方、電源回路U1と第1ダイオードD1との間において、第1直流電源線31に第3直流電源線33が接続されている。第3直流電源線33は、第1直流電源線31からの電力を制御回路K1に供給する。第3直流電源線33には、逆流防止のための第2ダイオードD2が介装されている。制御回路K1には、さらに、第4直流電源線34が接続されている。第4直流電源線34は、電気二重層キャパシタECから制御回路K1に動作電力を供給する。第4直流電源線34には、逆流防止のための第3ダイオードD3が接続されている。
【0044】
第2ダイオードD2および第3ダイオードD3のカソード側が第5直流電源線35に共通接続されてダイオードOR回路を形成しており、第5直流電源線35が制御回路K1に接続されている。したがって、制御回路K1には、電源回路U1または電気二重層キャパシタECからの電力が供給される。
【0045】
停電時には、電源回路U1が直流電圧を発生しない。このとき、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2は、電気二重層キャパシタECから電源回路U1に向かう電流を阻止し、電気二重層キャパシタECの放電を抑制する。
【0046】
制御回路K1は、第1電圧検出線41を介して第3直流電源線33の電圧、すなわち、電源回路U1の出力電圧を監視する。また、制御回路K1は、第2電圧検出線42を介して第4直流電源線34の電圧、すなわち、電気二重層キャパシタECの出力電圧を検出し、それによって、電気二重層キャパシタECの蓄電残量を検出する。制御回路K1には、全開検出リミットスイッチLS2が接続されており、それによって、制御回路K1は、弁体1が全開位置にあることを検出する。
【0047】
制御回路K1は、第1、第2および第3スイッチSW1,SW2,SW3を開閉制御する。制御回路K1は、信号入力端子TS1,TS2に接続されている。制御回路K1は、たとえば、マイクロコンピュータを含み、予め導入されたプログラムに従って制御動作を実行する。具体的には、信号入力端子TS1,TS2の状態に応じて、第2および第3スイッチSW2,SW3を開閉制御して、電磁ブレーキBを作動させる。
【0048】
電動弁100は、電力ケーブル25および信号ケーブル26を介して、電動弁100とは別の場所に配置された操作盤50に接続されて用いられる。電力ケーブル25は、交流電源51に接続される。交流電源51と電力ケーブル25との間には、操作スイッチCS1が介装されている。信号ケーブル26は、信号接点ESに接続される。信号接点ESは、たとえば、感震器に備えられたマイクロスイッチの常開接点であってもよい。
【0049】
感震器は、たとえば、所定以上の震度に応答してマイクロスイッチの常開接点(信号接点ES)を導通させるように構成されている。より具体的には、感震器は、鋼球と、鋼球を支持するボール受けと、ボール受けを取り囲むように上下動可能に設けられた受け皿と、受け皿の下降によって断接操作されるマイクロスイッチとを含む。地震動によって鋼球がボール受けから落下して受け皿に受けられると、受け皿が下降してマイクロスイッチを操作する。それにより、信号接点ESが導通して、地震が検知される。
【0050】
図3は、制御回路K1の動作を説明するためのフローチャートであり、準備動作を示している。電源未投入の初期状態では、弁体1は初期位置(全開位置または全閉位置。ここでは全閉位置とする。)にある。全開検出リミットスイッチLS1,LS2は、いずれも導通状態であり、これは全開を検出していない非検出状態に相当する。また、信号接点ESは、遮断状態(未検出状態)であるものとする。第1~第3スイッチSW1~SW3は、いずれも遮断状態である。電磁ブレーキBは、励磁電流が供給されていないので、制動状態である。
【0051】
操作スイッチCS1が操作されて電源投入されると、交流電源51からの電力が電力ケーブル25から電動弁100に供給され、電力線21,22に導出される。それにより、電源回路U1が作動して、制御回路K1に直流動作電圧(たとえば、24V)を供給するので、制御回路K1が動作開始する。一方、充電回路K2は電気二重層キャパシタECへの充電を開始する。電気二重層キャパシタECは、速やかに(たとえば数秒で)充電される。
【0052】
制御回路K1は、全開検出リミットスイッチLS2の状態を調べる(ステップS1)。全開検出リミットスイッチLS2が全開未検出であれば(ステップS1:NO)、制御回路K1は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を導通させる(ステップS2,S3)。それにより、電動モータMが回転し、かつ電磁ブレーキBが励磁されてブレーキ解放する。電磁ブレーキBには、電源回路U1から、第1ダイオードD1および第2スイッチSW2を通って、電流が供給される。
【0053】
電動モータMの回転は、伝達機構3によって出力軸2に伝達されるので、弁体1は全開に向かって回動する。同時に、伝達ギヤ11の回転によって、バネ4が巻き締められていく。弁体1が全開位置まで回動すると、全開検出リミットスイッチLS1が開いて電動モータMへの電力供給を遮断する。一方、出力軸2が全開位置に達したことが全開検出リミットスイッチLS2によって検出されるので(ステップS1:YES)、これに応答して、制御回路K1は、第1スイッチSW1を遮断し、モータ駆動回路を切断する(ステップS4)。それとともに、制御回路K1は、第2スイッチSW2を遮断して、電磁ブレーキBを消磁する(ステップS5)。それにより、電磁ブレーキBは、制動状態(無励磁状態)となり、出力軸2を非回転状態にロックする。こうして、電動弁100が全開状態で保持される。
【0054】
図4は、準備動作の後の制御回路K1の動作を説明するためのフローチャートであり、信号接点ESの状態に応答する信号監視動作を示す。準備動作が完了すると、制御回路K1は、電源回路U1の出力電圧が電源電圧閾値を超えているかどうかを監視することにより、停電状態か否かを判断する(ステップS11)。
【0055】
電源回路U1の出力電圧が電源電圧閾値を超えており(ステップS11:YES)、したがって、停電が生じていないときには、信号接点ESが導通状態(検出状態)となると(ステップS12:YES)、制御回路K1は、第2スイッチSW2を導通させ、電磁ブレーキBを励磁する(ステップS13)。それにより、電磁ブレーキBは、非制動状態となるので、伝達機構3のロック状態が解除される。そのため、バネ4の付勢力によって伝達ギヤ11が回転し、その回転が平歯車10を介して出力軸2に伝わり、弁体1を閉方向に回動させる。それにより、緊急遮断動作(緊急作動)が達成される。制御回路K1は、弁体1が全閉状態となるのに充分な時間以上に定めた作動時間だけ第2スイッチSW2を導通させた後(ステップS14:YES)、この第2スイッチSW2を遮断して、電磁ブレーキBへの電力供給を遮断する(ステップS15)。
【0056】
電源回路U1の出力電圧が電源電圧閾値以下であり、停電状態と判断されるときには(ステップS11:NO)、制御回路K1は、電気二重層キャパシタECの出力電圧が所定のキャパシタ電圧閾値を超えているかどうかを判断する(ステップS16)。この判断は、電気二重層キャパシタECの蓄電残量が所定の残量閾値を超えているかどうかの判断である。
【0057】
電気二重層キャパシタECの出力電圧がキャパシタ電圧閾値を超えているときに(ステップS16:YES)、信号接点ESが導通状態(検出状態)となると(ステップS17:YES)、制御回路K1は、第3スイッチSW3を導通させる(ステップS18)。それにより、電気二重層キャパシタECに蓄えられた電力が電磁ブレーキBに供給される。それにより、電磁ブレーキBは、非制動状態となるので、伝達機構3のロック状態が解除される。そのため、バネ4の付勢力によって伝達ギヤ11が回転し、その回転がギヤを介して出力軸2に伝わり、弁体1を閉方向に回動させる。それにより、緊急遮断動作(緊急作動)が達成される。制御回路K1は、弁体1が全閉状態となるのに充分な時間以上に設定された作動時間だけ第3スイッチSW3を導通させた後(ステップS19:YES)、この第3スイッチSW3を遮断して、電磁ブレーキBへの電力供給を遮断する(ステップS20)。
【0058】
電気二重層キャパシタECの出力電圧がキャパシタ電圧閾値以下であるときは(ステップS16:NO)、制御回路K1は、信号接点ESの状態によらずに、第3スイッチSW3を導通させる(ステップS18)。それにより、前述の場合と同様にして、電気二重層キャパシタECからの電力供給によって、電磁ブレーキBが励磁されて非制動状態となり、バネ4の付勢力による緊急遮断動作が行われる(ステップS18~S20)。このように、電気二重層キャパシタECの蓄電残量が低下すると、自動的に緊急遮断動作が行われ、安全が確保される。
【0059】
前記キャパシタ電圧閾値は、電気二重層キャパシタECからの電力供給によって、電磁ブレーキBを励磁し、その励磁状態(非制動状態)を弁体1が全閉位置まで回動するまで維持できるだけの残容量が電気二重層キャパシタECに残されているように定められる。また、電気二重層キャパシタECの満充電容量および前記キャパシタ電圧閾値は、充電回路K2からの充電が停止してから、所定の停電時動作保証時間(たとえば24時間)だけ、電気二重層キャパシタECの出力電圧が前記キャパシタ電圧閾値以上に保持されるように定められる。
【0060】
停電時には、制御回路K1は、電気二重層キャパシタECから供給される電力によって作動し、かつ半導体スイッチからなる第1~第3スイッチSW1~SW2においても若干の電力が消費される。それにより、停電時間が長くなるに従って、電気二重層キャパシタECに蓄えられた電力が消費され、その蓄電残量が低下していく。このような状況のときに、停電時動作保証時間が経過した時点において、電気二重層キャパシタECは、電磁ブレーキBを励磁して緊急遮断動作を行わせるのに充分な蓄電残量を有している。
【0061】
以上のように、この実施形態によれば、電動モータMの回転によってバネ4が巻き上げられた後、電動モータMへの通電が停止され、かつ無励磁作動型の電磁ブレーキBへの通電が停止される。それにより、電動モータMおよび電磁ブレーキBのいずれにも通電することなく、バネ4の巻き上げ状態を保持できる。
【0062】
信号接点ESが導通すると、制御回路K1は、これを弁作動指令信号の入力と解釈して、第2スイッチSW2または第3スイッチSW3を導通させる。それにより、電源回路U1または電気二重層キャパシタECから、電磁ブレーキBに励磁電流が供給される。それにより、電磁ブレーキBの制動状態が解除され、バネ4に蓄積されたエネルギーが解放される。バネ4が発生する回転力は、伝達機構3を介して出力軸2へと伝達され、出力軸2が閉方向(バネ作動方向)に作動する。こうして、信号接点ESからの入力(弁作動指令信号の入力)に応答して、バネ4の付勢力を利用した緊急遮断動作(緊急作動)を実現できる。
【0063】
電動弁100には、停電時に電磁ブレーキBに供給すべきブレーキ励磁電力を蓄積する蓄電ユニットとしての電気二重層キャパシタECが内蔵されている。無励磁作動型の電磁ブレーキBは、電力供給を要することなく制動状態を保持できるので、電気二重層キャパシタECは、バネ4のエネルギーによって電動弁100を緊急作動させる時間だけ電磁ブレーキBを励磁するのに充分な電力を蓄えることができればよい。したがって、大容量の蓄電池を用いる必要はなく、電気二重層キャパシタECで充分に必要な電力を蓄えることができる。しかも、大容量の電気二重キャパシタを備える必要もないので、電動弁100に内蔵することができる小型のもので足りるうえに、コストが高くつくこともない。
【0064】
このようにして、安価な構成で、停電の有無に拘わらず、信号接点ESに応答してバネ式緊急作動(この実施形態では緊急遮断)を実現できる電動弁100が提供される。
【0065】
また、電気二重層キャパシタECは、化学反応を伴わずに充放電する仕組みを有しているため、一般的な蓄電池と比較して遥かに長寿命であり、充放電による劣化や寿命短縮がほとんどないので、実質的にメンテナンスフリーである。しかも、急速充電が可能であるため、電磁ブレーキBを作動させるのに必要な電力を速やかに蓄積できる。また、電気二重層キャパシタECは、電動弁100が備えるハウジング14内のスペースに容易に収容することができるので、小型の電動弁100を構成できる。
【0066】
また、この実施形態では、停電が生じていないときには、信号接点ESからの入力に応答して第2スイッチSW2を導通させることにより、外部の交流電源51からの電力により電磁ブレーキBの制動状態を解除して、バネ力を利用した緊急作動を行わせている。したがって、停電が生じていないときには、電気二重層キャパシタECに蓄積した電力を減らすことなく、バネ式の緊急作動を行わせることができる。
【0067】
また、この実施形態では、電気二重層キャパシタECの出力電圧を検出することにより、電気二重層キャパシタECの蓄電残量が監視される。そして、蓄電残量が低下して、電気二重層キャパシタECの出力電圧がキャパシタ電圧閾値以下になると、第3スイッチSW3が導通して、電気二重層キャパシタECから電磁ブレーキBに励磁電流が供給される。それにより、バネ力を利用した緊急遮断(緊急作動)が実行される。これにより、電気二重層キャパシタECの蓄電残量不足に起因して緊急作動ができなくなることを回避できる。その一方で、停電後であっても、電気二重層キャパシタECの蓄電残量が充分である期間には、信号接点ESからの入力に応答した緊急遮断(緊急作動)を保証できる。
【0068】
また、この実施形態では、停電時には、制御回路K1の動作電力が、電気二重層キャパシタECから供給される。したがって、停電時であっても、制御回路K1を適切に動作させることができるので、信号接点ESからの入力に応答して、電磁ブレーキBを非制動状態に制御して、バネ力による緊急遮断(緊急作動)を行わせることができる。
【0069】
図5は、この発明の第2の実施形態に係る電動弁200の構成を説明するための断面図
であり、図6A図6Cは動作を説明するための要部斜視図である。この実施形態を説明する図面において、前述の第1の実施形態の電動弁100に関して説明した各部の相当部分は同一参照符号で示し、重複した説明を省く。
【0070】
この電動弁200は、弁体1と、先端に弁体1が結合された出力軸2と、電動モータMと、電動モータMの回転を出力軸2に伝達する伝達機構60と、伝達機構60に結合されたバネ4と、電磁ブレーキBとを含む。伝達機構60は、この実施形態では、遊星歯車機構61を備えている。弁体1は、たとえば、出力軸2(弁棒)を90度回動することによって流路5(図6A等参照)を開閉する。弁体1は、ボールバルブであってもよいし、バタフライバルブであってもよい。
【0071】
出力軸2には、ストッパ板6が固定されている。このストッパ板6に対向するように一対のストッパボルト7が配置されている。一対のストッパボルト7は、出力軸2の全開位置および全閉位置においてそれぞれストッパ板6に当接して、出力軸2の回転を規制するように配置されている。全開位置とは、弁体1が全開状態となる位置であり、全閉位置とは、弁体1が全閉状態となる位置である。
【0072】
遊星歯車機構61は、内周歯および外周歯を備えたインターナルギヤ62と、インターナルギヤ62の内周歯と噛み合うように配置された複数の遊星ギヤ63と、これらの複数の遊星ギヤ63をそれぞれ回転可能に支持するキャリヤ64と、複数の遊星ギヤ63と噛み合う太陽ギヤ65とを含む。キャリヤ64は出力軸2に固定されており、出力軸2とともに一体的に回転する。インターナルギヤ62は、軸受66を介して出力軸2に対して相対回転自在に結合されている。インターナルギヤ62の外周歯に、減速ギヤ67が噛合しており、この減速ギヤ67にギヤヘッド8のピニオン9が噛合している。太陽ギヤ65は、出力軸2を貫通させたスリーブ68の外周に固定されている。スリーブ68は、軸受69を介して出力軸2に対して相対回転自在に結合されている。したがって、太陽ギヤ65は、出力軸2に対して相対回転自在である。
【0073】
スリーブ68には、太陽ギヤ65とともに中継ギヤ70が固定されている。すなわち、太陽ギヤ65はスリーブ68を介して中継ギヤ70に連結されており、中継ギヤ70とともに一体的に回転する。太陽ギヤ65および中継ギヤ70は一体的に形成されていてもよい。
【0074】
中継ギヤ70は、バネ駆動ギヤ71に噛合している。バネ駆動ギヤ71は、バネ4(この実施形態ではゼンマイバネ)の中心軸72に固定されている。バネ中心軸72(バネ駆動軸)には、ギヤ73が設けられている。このギヤ73は、カム軸74に固定された別のギヤ75が噛合している。カム軸74にはカム76が固定されており、このカム76に巻き上げ検出リミットスイッチLS13が係合している。巻き上げ検出リミットスイッチLS13は、バネ4の巻き上げが完了すると、カム76に押されて、バネ4の巻き上げ完了を検出する。
【0075】
バネ駆動ギヤ71には、さらに、減速ギヤ77が噛合しており、この減速ギヤ77には、電磁ブレーキBの駆動軸に固定したギヤ78が噛合している。電磁ブレーキBは、前述の第1の実施形態の場合と同様、無励磁作動型である。
【0076】
出力軸2には、複数のカム79が結合されている。さらに、複数のカム79にそれぞれ対応する複数のリミットスイッチが設けられている。複数のリミットスイッチは、出力軸2の全開位置で作動して遮断される全開検出リミットスイッチLS11、出力軸2の全閉位置で作動して遮断される全閉検出リミットスイッチLS12などを含む。
【0077】
電動モータM、電磁ブレーキB、伝達機構60などは、二点鎖線で示すように、ハウジング14内に収納されている。ハウジング14内には、制御回路K1等を構成する回路部品が実装された配線基板15が収容されている。配線基板15上には、蓄電ユニットの一例である電気二重層キャパシタECが実装されている。
【0078】
この電動弁200の動作の概要は、図6A図6Cに示されており、以下に概説するとおりである。なお、理解を容易にするために、複数の状態をそれぞれ示す図6A図6Bにおいて、回転が規制されている部材には、斜線が付されている。
【0079】
電動弁200の使用に際して、図6Aに示すギヤ巻き上げ動作が行われる。電源未投入の初期状態では、弁体1は初期位置にある。初期位置は、全閉位置または全開位置である。以下では、全閉位置を初期位置として説明する。初期状態において、ストッパ板6にストッパボルト7が当接しており、それにより、出力軸2の閉方向回転(図6Aの右回り回転)が規制されている。この状態で、電磁ブレーキBに通電して非制動状態とし、電動モータMが巻き上げ方向に駆動される。それにより、ピニオン9が回転し、その回転が減速ギヤ67を介してインターナルギヤ62に伝達される。すると、インターナルギヤ62は、閉方向(図6Aの右回り方向)に回転する。この回転が遊星ギヤ63に伝達される。遊星ギヤ63の公転、すなわち出力軸2に固定されたキャリヤ64の回転は、ストッパボルト7によって規制されているので、遊星ギヤ63は公転することなく自転することになる。遊星ギヤ63の自転によって、太陽ギヤ65の巻き上げ方向(図6Aの左回り方向)の回転が引き起こされる。太陽ギヤ65の回転は、中継ギヤ70を介してバネ駆動ギヤ71に伝達され、バネ中心軸72の回転を引き起こす。それにより、バネ4が巻き上げられる。
【0080】
バネ4の巻き上げが完了すると、電磁ブレーキBへの通電を遮断することにより、電磁ブレーキBは制動状態となる。その制動力は、減速ギヤ77およびバネ駆動ギヤ71を介してバネ中心軸72に伝達されるので、バネ4は巻き上げられた状態で保持される。また、その制動力は、バネ駆動ギヤ71から、さらに中継ギヤ70に伝達されるので、中継ギヤ70と連結されている太陽ギヤ65の回転を規制する。
【0081】
この状態で、電動モータMを開方向に駆動すると、図6Bに示すように、インターナルギヤ62が開方向(図6Bの左回り方向)に回転する。すると、太陽ギヤ65の回転が規制されているため、インターナルギヤ62の回転によって、遊星ギヤ63が太陽ギヤ65まわりに公転し、キャリヤ64の回転を引き起こす。それにより、キャリヤ64に固定されている出力軸2が、開方向(図6Bの左まわり方向)に回転し、弁体1が開いていく。電動モータMへの通電を停止すれば、任意の中間開度で弁体1を停止させることができる。この状態から、電動モータMを閉方向に駆動すれば、インターナルギヤ62が閉方向(図6Bの右回り方向)回転する。太陽ギヤ65の回転が規制されているので、遊星ギヤ63が公転し、キャリヤ64およびそれに固定されている出力軸2が閉方向(図6Bの右回り方向)に回転する。それにより、弁体1が閉方向に回動する。こうして、電動モータMを閉方向および開方向に駆動することによって、出力軸2を閉方向および開方向にそれぞれ回転させることができ、弁体1を開閉したり、その開度を全開と全閉との間の任意の開度に調整したりすることができる。
【0082】
電動モータMに通電していない状態では、図6Cに示すように、インターナルギヤ62の回転が電動モータMによって規制される。その状態で、電磁ブレーキBを励磁して非制動状態としてバネ4を解放すると、バネ4の弾性復元力によって、バネ中心軸72が回転される。この回転が、減速ギヤ77および中継ギヤ70を介して太陽ギヤ65の回転を引き起こす。インターナルギヤ62の回転が規制されているので、太陽ギヤ65の回転によって、遊星ギヤ63が公転し、それによって、キャリヤ64とともに出力軸2が閉方向(図6Cの右回り方向)に回転する。出力軸2の閉方向の回転は、ストッパ板6がストッパボルト7に当接すると停止する。こうして、バネ4の復元力によって、速やかに弁体1を全閉位置に導く緊急遮断動作(緊急作動)を達成できる。
【0083】
図7は、前記第2の実施形態に係る電動弁200の電気的構成を説明するためのブロック図である。電動弁200は、電源回路U1と、電気二重層キャパシタECと、制御回路K1と、第1~第5スイッチSW1~SW5とを含む。第1~第5スイッチSW1~SW5は、電界効果型トランジスタ等の半導体スイッチであってもよい。
【0084】
4本の電力線81~84が設けられている。第1電力線81は、電動モータMの開駆動端子91と開指令端子T11とを接続している。開駆動端子91は、電動モータMを開方向に駆動するときに電力を供給すべき端子である。開指令端子T11は、操作盤50に設けられる操作スイッチCS2の開指令接点101に電力ケーブル95を介して接続される。第2電力線82は、電動モータMの閉駆動端子92と閉指令端子T12とを接続している。閉駆動端子92は、電動モータMを閉方向に駆動するときに電力を供給すべき端子である。閉指令端子T12は、操作盤50に設けられる操作スイッチCS2の閉指令接点102に電力ケーブル95を介して接続される。操作スイッチCS2の共通接点103は、交流電源51の一方の端子に接続されている。第3電力線83は、電動モータMのコモン駆動端子93とコモン端子T13とを接続している。コモン端子T13は、電力ケーブル95を介して、交流電源51の他方の端子に接続される。電源回路U1は、第3電力線83および第4電力線84に接続されている。第4電力線84は、交流電源51の操作スイッチCS2の共通接点103に電力ケーブル95を介して接続される共通接点端子T14に接続されている。
【0085】
第1電力線81には、全開検出リミットスイッチLS11と第5スイッチSW5とが直列に介装されている。第2電力線82には、全閉検出リミットスイッチLS12が介装されている。また、第2電力線82には、全閉検出リミットスイッチLS12よりも電動モータM側において、中継電力線85が接続されている。中継電力線85は、第2電力線82と第4電力線84とを中継しており、全閉検出リミットスイッチLS12を迂回して、第4電力線84を電動モータMの閉駆動端子92に接続する。中継電力線85の途中部には、第4スイッチSW4が介装されている。
【0086】
制御回路K1は、第1~第3スイッチSW1~SW3に加えて、第4および第5スイッチSW4,SW5を開閉制御する。また、制御回路K1には、バネ4の巻き上げ完了を検出する巻き上げ検出リミットスイッチLS13が接続されている。
【0087】
その他の構成については、前述の第1の実施形態の場合と同様である。
【0088】
図8は、制御回路K1の動作を説明するためのフローチャートであり、準備動作を示している。電源が供給されていない初期状態では、弁体1は初期位置(全開位置または全閉位置。ここでは全閉位置とする。)にある。無励磁作動型の電磁ブレーキBは、無励磁状態、すなわち作動状態であり、バネ中心軸72および太陽ギヤ65の回転を制動している。
【0089】
操作盤50から電源が供給されると、電源回路U1が直流電圧(たとえば24V)を生成し、それにより、制御回路K1は処理を開始する。一方、充電回路K2は、電気二重層キャパシタECの充電を開始する。電気二重層キャパシタECは、速やかに(たとえば数秒で)充電される。
【0090】
制御回路K1は、まず、バネ4を巻き上げるための動作を実行する。制御回路K1は、巻き上げ検出リミットスイッチLS13の状態を調べる(ステップS31)。巻き上げ検出リミットスイッチLS13が巻き上げ完了を検出していなければ(ステップS31:NO)、制御回路K1は、第5スイッチSW5を遮断状態に制御し、第1スイッチSW1を導通状態に制御する(ステップS32)。それにより、電動モータMに通電するための準備を行う。第5スイッチSW5を遮断状態とすることにより、操作スイッチCS2の開指令操作が無効になる。
【0091】
その後、制御回路K1は、第3スイッチSW3は遮断状態のままで、第2スイッチSW2を導通させて、電磁ブレーキBを励磁し、非制動状態とする(ステップS33)。それにより、バネ中心軸72および太陽ギヤ65の制動が解除され、それらが回転可能になる。そして、制御回路K1は、第4スイッチSW4を導通させる(ステップS34)。それにより、交流電源51から、第4電力線84および中継電力線85を介して電動モータMを通り、さらに第3電力線83を通って交流電源51に戻る閉回路が形成され、電動モータMが閉方向に駆動される。
【0092】
電動モータMの閉方向への駆動によって、インターナルギヤ62が回転し、その回転が遊星ギヤ63を介して太陽ギヤ65に伝達される。それにより、バネ中心軸72が回転して、バネ4が巻き上げられる(図6A参照)。
【0093】
巻き上げ検出リミットスイッチLS13がバネ4の巻き上げ完了を検出すると(ステップS31:YES)、制御回路K1は、第4スイッチSW4を遮断して電動モータMへの通電を停止する(ステップS35)。さらに、制御回路K1は、第2スイッチSW2を遮断して、電磁ブレーキBへの通電を停止させる(ステップS36)。これにより、電磁ブレーキBは無励磁状態となって、バネ中心軸72および太陽ギヤ65の回転を規制する制動状態となる。
【0094】
さらに、制御回路K1は、第1スイッチSW1を導通状態に保持し、かつ第5スイッチSW5を導通状態に制御する(ステップS37)。これにより、電動弁200の使用準備動作が完了し、操作スイッチCS2の操作によって、電動モータMに通電して弁体1の開度調整を行える状態となる。
【0095】
操作スイッチCS2が開指令接点101側に操作されると、第1電力線81から電動モータMの開駆動端子91に電力が供給されるので、電動モータMが開方向に駆動する。また、操作スイッチCS2が閉指令接点102側に操作されると、第2電力線82から電動モータMの閉駆動端子92に電力が供給されるので、電動モータMが閉方向に駆動する。電動モータMが駆動されることで、太陽ギヤ65の回転が規制された状態でインターナルギヤ62が回転するので、遊星ギヤ63の公転によってキャリヤ64とともに出力軸2が回転する。それにより、弁体1の開度調整が達成される(図6B参照)。
【0096】
出力軸2が全開位置に達すると全開検出リミットスイッチLS11が遮断されて、電動モータMが停止する。出力軸2が全開位置から閉方向に回動すると、全開検出リミットスイッチLS11は導通状態に復帰する。同様に、出力軸2が全閉位置に達すると全閉検出リミットスイッチLS12が遮断されて、電動モータMが停止する。出力軸2が全閉位置から開方向に回動すると、全閉検出リミットスイッチLS12は導通状態に復帰する。
【0097】
図9は、準備動作の後の制御回路K1の動作を説明するためのフローチャートであり、信号接点ESの状態に応答する信号監視動作を示す。準備動作が完了すると、制御回路K1は、電源回路U1の出力電圧が電源電圧閾値を超えているかどうかを監視することにより、停電状態か否かを判断する(ステップS41)。
【0098】
電源回路U1の出力電圧が電源電圧閾値を超えており(ステップS41:YES)、したがって、停電が生じていないときには、信号接点ESが導通状態(検出状態)となると(ステップS42:YES)、制御回路K1は、第1スイッチSW1を遮断して、電動モータMの回路を遮断して、電動モータMへの通電を禁止する(ステップS43)。その後、制御回路K1は、第3スイッチSW3は遮断状態のままで、第2スイッチSW2を導通させ、電磁ブレーキBを励磁する(ステップS44)。それにより、電磁ブレーキBは、非制動状態となるので、バネ中心軸72および太陽ギヤ65の制動状態(ロック状態)が解除される。そのため、バネ4の付勢力によって太陽ギヤ65が回転する。インターナルギヤ62の回転は電動モータMによって規制されているので、太陽ギヤ65の回転によって、遊星ギヤ63が公転し、それによって、キャリヤ64とともに出力軸2が閉方向に回転する(図6C参照)。それにより、バネ4の付勢力によって弁体1を全閉状態とすることができ、緊急遮断動作(緊急作動)を達成できる。
【0099】
制御回路K1は、弁体1が全閉状態となるのに充分な時間以上に定めた作動時間だけ第2スイッチSW2を導通させた後(ステップS45:YES)、この第2スイッチSW2を遮断して、電磁ブレーキBへの電力供給を遮断する(ステップS46)。
【0100】
電源回路U1の出力電圧が電源電圧閾値以下であり、停電状態と判断されるときには(ステップS41:NO)、制御回路K1は、電気二重層キャパシタECの出力電圧が所定のキャパシタ電圧閾値を超えているかどうかを判断する(ステップS47)。この判断は、第1の実施形態の場合と同じく、電気二重層キャパシタECの蓄電残量が所定の残量閾値を超えているかどうかの判断に相当する。
【0101】
電気二重層キャパシタECの出力電圧がキャパシタ電圧閾値を超えているときに(ステップS47:YES)、信号接点ESが導通状態(検出状態)となると(ステップS48:YES)、制御回路K1は、第1スイッチSW1を遮断して電動モータMへの通電を禁止し(ステップS49)、さらに、第2スイッチSW2は遮断状態のままで、第3スイッチSW3を導通させる(ステップS50)。それにより、電気二重層キャパシタECに蓄えられた電力が電磁ブレーキBに供給される。それにより、電磁ブレーキBは非制動状態となるので、バネ中心軸72および太陽ギヤ65のロック状態が解除される。そのため、バネ4の付勢力によってバネ中心軸72が回転し、それにより太陽ギヤ65が回転する。インターナルギヤ62の回転は電動モータMによって規制されているので、太陽ギヤ65の回転によって、遊星ギヤ63が公転し、それによって、キャリヤ64とともに出力軸2が閉方向に回転する(図6C参照)。こうして、バネ4の付勢力によって弁体1を全閉状態とすることができ、緊急遮断動作(緊急作動)を達成できる。
【0102】
制御回路K1は、弁体1が全閉状態となるのに充分な時間以上に設定された作動時間だけ第3スイッチSW3を導通させた後(ステップS51:YES)、この第3スイッチSW3を遮断して、電磁ブレーキBへの電力供給を遮断する(ステップS52)。
【0103】
電気二重層キャパシタECの出力電圧がキャパシタ電圧閾値以下であるときは(ステップS47:NO)、制御回路K1は、信号接点ESの状態によらずに、第1スイッチSW1を遮断し(ステップS49)、第3スイッチSW3を導通させる(ステップS50)。それにより、前述の場合と同様にして、電気二重層キャパシタECからの電力供給によって、電磁ブレーキBが励磁されて非制動状態となり、バネ4の付勢力による緊急遮断動作が行われる。制御回路K1は、弁体1が全閉状態となるのに充分な時間以上に設定された作動時間だけ第3スイッチSW3を導通させた後(ステップS51:YES)、第3スイッチSW3を遮断して、電磁ブレーキBへの電力供給を遮断する(ステップS52)。
【0104】
キャパシタ電圧閾値および電気二重層キャパシタECの容量に関しては、前述の第1の実施形態の場合と同様に定めることが好ましい。
【0105】
このように、この実施形態では、電磁ブレーキBを制動状態(無励磁状態)に保持しながら、操作スイッチCS2の操作によって電動モータMを開方向または閉方向に駆動して、弁体1を開閉したり、その開度を全閉と全開との間で調整したりすることができる。その一方で、信号接点ESからの入力に応答して、バネ力を利用した緊急遮断(緊急作動)を行わせることができる。
【0106】
その他、第1の実施形態に関して説明したのと同様の作用効果を実現できる。
【0107】
以上、この発明の2つの実施形態について詳細に説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することができる。たとえば、前述の実施形態では、信号接点ESの入力に応答して流路を緊急遮断する構成について主として説明したが、電動弁100,200の用途によっては、信号接点ES等の入力に応答して流路を緊急開放すべき場合もある。
たとえば、消火用散水のためのスプリンクラーの給水路に電動弁100,200が配置されるときには、緊急信号に応答して電動弁の緊急開放(緊急作動)が要求される場合もある。このような場合には、巻き上げ状態のバネ4が弁体1を開方向に付勢するようにしておけばよい。
【0108】
また、前述の実施形態では、蓄電ユニットとして、電気二重層キャパシタECを例示したが、一次電池または二次電池を蓄電ユニットとして適用してもよい。ただし、メンテナンスを軽減する観点から、蓄電ユニットは、充電可能であることが好ましい。
【0109】
また、前述の実施形態では、停電が生じていないときには、信号接点ESからの入力に応答して第2スイッチSW2を導通させて、電源回路U1から電磁ブレーキBに励磁電流が供給されている。しかし、電源回路U1と電磁ブレーキBの直接接続は必ずしも必要ではなく、停電が生じていないときであっても、電気二重層キャパシタECから電磁ブレーキBに励磁電流を供給してもよい。つまり、第1直流電源線31を電磁ブレーキBに直接接続する回路およびこのような回路に介装される第2スイッチSW2を省いてもよい。
【0110】
また、前述の実施形態では、電源回路U1から第2ダイオードD2を介して制御回路K1に動作電力が供給されているが、制御回路K1への電源供給は専ら電気二重層キャパシタECから行われるように構成してもよい。すなわち、第3直流電源線33を省いてもよい。ただし、この場合には、電気二重層キャパシタECの出力電圧が立ち上がるまで制御回路K1が起動しないので、準備動作開始までに若干の遅れが生じる。
【0111】
また、前述の実施形態では、第1~第5スイッチSW1~SW5に半導体スイッチを適用しているが、これらは、リレー等の他の開閉ユニットで置き換えてもよい。
【0112】
また、前述の実施形態では、電気二重層キャパシタECの蓄電残量の指標として、電気二重層キャパシタECの出力電圧を検出している。これに代えて、またはこれに加えて、停電検出時からの経過時間(停電継続時間)を計測して、この計測時間に基づいて電気二重層キャパシタECの蓄電残量を求めるか、または当該計測時間を蓄電残量の代替指標として用いてもよい。
【0113】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0114】
100,200 電動弁
1 弁体
2 出力軸
3 伝達機構
4 バネ
5 流路
14 ハウジング
15 配線基板
41,42 電圧検出線
50 操作盤
51 交流電源
60 伝達機構
61 遊星歯車機構
71 バネ駆動ギヤ
72 バネ中心軸
B 電磁ブレーキ
CS1,CS2 操作スイッチ
EC 電気二重層キャパシタ
ES 信号接点
M 電動モータ
K1 制御回路
K2 充電回路
U1 電源回路
SW1~SW5 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6C】
図7
図8
図9