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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100421
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】押し引き装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/30 20060101AFI20220629BHJP
   B23B 31/20 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B23B31/30
B23B31/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019085318
(22)【出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】598142014
【氏名又は名称】長野オートメーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】服部 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】山浦 研弥
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032JJ01
3C032JJ14
3C032JJ18
3C032KK11
(57)【要約】
【課題】ドローバーを介してチャックの開閉を制御する開閉装置を提供する。
【解決手段】主軸12とともに回転するドローバー15を、主軸の中心軸9の方向に前後に動かして主軸の前側に設けられたワーク支持機構71の開放および支持を制御する開閉装置20を提供する。この装置20は、ドローバーに対し、前後両方向の力を伝達するピストン35が中心軸方向に前後に移動するアクチュエータ30と、ドローバーに対し、ピストンを回転可能に接続するベアリングアッセンブリ50とを有し、ベアリングアッセンブリは、ピストンの前側に配置されたスラスト型の第1のべアリングユニット51であって、少なくとも3列組み合わせのアンギュラベアリングを含む第1のベアリングユニットと、ピストンの後側に配置されたラジアル型の第2のベアリングユニット52とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸とともに回転するドローバーを、前記主軸の中心軸方向に前後に動かして前記主軸の前側に設けられたワーク支持機構の開放および支持を制御する押し引き装置であって、
前記ドローバーに対し、前後両方向の力を伝達するピストンが前記中心軸方向に前後に移動するアクチュエータと、
前記ドローバーに対し、前記ピストンを回転可能に接続するベアリングアッセンブリとを有し、
前記ベアリングアッセンブリは、前記ピストンの前側に配置されたスラスト型の第1のべアリングユニットであって、少なくとも3列組み合わせのアンギュラベアリングを含む第1のベアリングユニットと、前記ピストンの後側に配置されたラジアル型の第2のベアリングユニットとを含む、押し引き装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のベアリングユニットは、前側のアキシャル荷重を受ける第1のアンギュラベアリングと、前記ワーク支持機構の支持方向のアキシャル荷重を受ける第2のアンギュラベアリングと、後側のアキシャル荷重を受ける第3のアンギュラベアリングとを含む、押し引き装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1のベアリングユニットの最も後側のアンギュラベアリングは前記ピストンのほぼ中央に配置されている、押し引き装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記アクチュエータに対し前記ピストンを駆動する空気を供給する空気供給ユニットを有し、
前記空気供給ユニットは、それぞれの当該押し引き装置に付随する停電対策用のエアータンクを含む、押し引き装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の押し引き装置と、
前記押し引き装置が一方の端側に接続されたドローバーと、
前記ドローバーにより制御されるワーク支持機構と、
主軸を回転駆動するモーターとを有するワーク支持装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記ワーク支持機構はコレットチャックである、ワーク支持装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のワーク支持装置と、
前記ワーク支持機構に支持されたワークを加工する加工ユニットとを有する加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持するコレットチャックなどを、主軸を介して開閉する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作機械におけるチャック装置において、モータの消費電力を抑制するために、ベアリング(連係手段)によってピストン(駆動部)を主軸に対して回転可能に支持して、ピストンによって生じる慣性力をモータの負荷としないようにし、モータの負荷を軽減し、工作機械の消費電力を抑制することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、オルタネータのロータ等の先端に振れのある回転軸外周面を、回転軸の芯矯正等を行なうことなく高精度に加工する装置が開示されている。この装置では、ポールコアにロータシャフトが圧入固定されたロータにおいて、ロータシャフトの基端部を駆動側回転部のコレットチャックで把持し、同期回転する従動側回転部に設けた支持部先端の支持ピンを、予め設定した基準軸に対する先端部の振れ量分変位させる。この状態で両回転部を回転させて、基準軸に対して支持ピンを公転させ、ロータシャフト先端部のスリップリング外周面を加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-141720号公報
【特許文献2】特開2014-87923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャックは、ドローバーが押されたとき(先端側、前側、前方に動いたとき)に閉となりワークを把持する装置と、ドローバーが引かれたとき(後側、後方に動いたとき)に閉となりワークを把持する装置とがあるが、いずれの場合も、押し引き装置は、チャックに対し、ワークを確実に把持する力を伝達する必要があり、さらに、回転による摩擦力の発生を低く抑えることが望ましい。軸方向(アキシャル方向)の荷重を受けるためにスラスト型のベアリングを配置することが望ましいが、ベアリングの段数を過剰に配置することはコストアップになるとともに、軸の回転に対する抵抗が大きくなる要因となりえる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明の一態様は、主軸とともに回転するドローバーを、主軸の中心軸方向に前後に動かして主軸の前側(先端)に設けられたワーク支持機構の開放および支持(開閉、開放および把持)を制御する押し引き装置(開閉装置)である。押し引き装置は、ドローバーに対し、前後両方向の力を伝達するピストンが中心軸方向に前後に移動するアクチュエータと、ドローバーに対し、ピストンを回転可能に接続するベアリングアッセンブリとを有する。ベアリングアッセンブリは、ピストンの前側に配置されたスラスト型の第1のべアリングユニットであって、少なくとも3列組み合わせのアンギュラベアリングを含む第1のベアリングユニットと、ピストンの後側に配置されたラジアル型の第2のベアリングユニットとを含む。
【0007】
この押し引き装置は、ピストンのワーク支持機構に近い前側にスラスト型の第1のベアリングユニットを配置し、反対側にラジアル型の第2のベアリングユニットを配置した、ピストンの前後で非対称なベアリング配置を含む。多くの装置においては、モーターあるいはピストンなどのアクチュエータの前後でベアリングは対称的に配置され、軸の前後方向のアキシャル方向の荷重をほぼ均等に負担できるようにしている。これに対し、この押し引き装置は、非対称に配置された第1のベアリングユニットおよび第2のベアリングユニットを有し、アキシャル荷重は、荷重が発生するピストンの前側に配置された少なくとも3列組み合わせのアンギュラベアリングからなるスラスト型の第1のベアリングユニットによりカバーする。これにより、後方に配置された第2のベアリングユニットをラジアル型の簡易な構成とすることを可能とする。さらに、ピストンの前後にベアリングユニットを配置することによりピストンに対する主軸の耐モーメント荷重が十分に確保される。したがって、低コストで、ワーク支持機構の開放および支持、例えば、開閉、開放および把持を行うピストンと主軸との間のアキシャル荷重およびモーメント荷重を適切に支持できるベアリングアッセンブリを備えた押し引き装置を提供できる。
【0008】
第1のベアリングユニットは、前側のアキシャル荷重を受ける第1のアンギュラベアリングと、ワーク支持機構の支持方向、例えばコレットチャックの閉方向のアキシャル荷重を受ける第2のアンギュラベアリングと、後側のアキシャル荷重を受ける第3のアンギュラベアリングとを含んでもよい。第1および第3のアンギュラベアリングによりワーク支持機構の開放および支持方向のアキシャル荷重を受け、さらに、それらの間の第2のアンギュラベアリングで支持方向の荷重を受ける。これにより、チャックなどの支持機構でワークを把持した状態で、押し引き装置をより安定して回転させることができる。第1のベアリングユニットの最も後側のアンギュラベアリングはピストンのほぼ中央に配置されていてもよい。少なくとも3列組み合わせを持つ第1のベアリングユニットをコンパクトに収納できるとともに、第1および第2のベアリングユニットの間の距離を確保できる。
【0009】
押し引き装置は、圧縮空気により作動させる装置であってもよい。すなわち、押し引き装置は、アクチュエータに対しピストンを駆動する空気を供給する空気供給ユニットを有してもよい。さらに、空気供給ユニットは、それぞれの当該押し引き装置に付随する停電対策用のエアータンクを含んでもよい。油圧作動の押し引き装置に対して、空気作動の押し引き装置は、シールなどの点で構造を簡易にできる反面、停電や圧縮空気喪失(エアロス)の際にワークを継続して保持する力を得にくい。ここの押し引き装置にエアータンクを付随させておくことにより、停電により押し引き装置および/または押し引き装置を備えた加工装置の回転数が低下するまでの一定の時間だけワークを保持する力を継続して確保しやすい。
【0010】
本発明の他の態様の1つは、上記の押し引き装置と、押し引き装置が一方の端側に接続されたドローバーと、主軸の先端に設けられ、ドローバーに制御されるワーク支持機構、例えばコレットチャックと、主軸を回転駆動するモーターとを有する装置(支持装置、保持装置)である。この装置は、ワーク支持機構に支持されたワークを加工する加工ユニットを有する加工装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】加工装置の一例を示す図。
図2】開閉装置の一例を示す図。
図3】開閉装置の異なる例を示す図。
図4】支持装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、チャックでワークを把持して加工する装置の一例である旋盤(加工装置)の概略構成を示している。この加工装置1は、主軸12のヘッド70に収納されたワーク支持機構、本例においてはコレットチャック71でワーク(ワークピース、被加工部材、被加工棒材)5を把持して旋回する支持装置(ワーク支持装置、保持装置、旋回ユニット)10と、ワーク5を加工するツール81を備えた加工ユニット80とを含む。
【0013】
支持装置10は、主軸台11に回転自在に支持される主軸12と、主軸12の一方(前方)9aの端に設けられ、主軸12とともに中心軸9の周りを回転するヘッド70と、ヘッド70に収納されたチャック(コレットチャック)71と、主軸12を中心軸9に沿って貫通しコレットチャック71を操作するドローバー(シャフト)15と、ドローバー15によりチャック71を開閉するユニット(開閉装置、押し引き装置)20と、主軸12を回転駆動するモーター13と、開閉装置20を操作するための空気を供給する空気供給システム(空気供給ユニット)100とを含む。
【0014】
ドローバー15は主軸12とともに回転し、さらに、中心軸9の方向に前後に動いて、ワーク5の支持機構であるコレットチャック71を開閉し、ワーク5を開放し、また支持(把持)する。ドローバー15はホロータイプ(中空タイプ)のシャフトで貫通孔16を含む。ドローバー15は主軸12および開閉装置20を貫通している。このため、ドローバー15の貫通孔16を、チャック71に主軸12の後方9bから未加工のワーク5を供給する経路(供給路)および/または加工済みのワーク5を排出する経路(排出路)として使用できる。チャック71に対し前方からワーク5を供給および排出してもよい。
【0015】
空気供給システム100は、適当な圧縮空気源、例えば外部のコンプレッサ111から供給される圧縮空気を開閉装置20に供給する空気配管103と、開閉装置20に対する空気の吸排気を制御するバルブ、たとえば、ソレノイドバルブ(制御バルブ)106および107と、チェック弁(逆止弁)109を介して一時的に圧縮空気を保持する停電対策用のエアータンク108と、オイラー(ルブリケータ)105とを含む。
【0016】
加工装置1は、さらに、加工装置1の全体の動作を制御する制御ユニット90を含む。制御ユニット90は、CPUおよびメモリを含むハードウェア資源を含み、プログラム(プログラム製品)に規定されたアルゴリズムにしたがって加工装置1を制御する。制御ユニット90は、制御バルブ106および107をオンオフ制御するバルブ制御ユニット91と、モーター13のオンオフを制御するモーター制御ユニット92と、加工ユニット80のアクチュエータを介してツール81の位置を制御する加工制御ユニット93とを含む。
【0017】
図2に、開閉装置(押し引き装置)20およびヘッド70の概略構成を断面図により示している。開閉装置20は、ドローバー15に対し、前後方向Xの両方向の力を伝達するピストン35が中心軸9の方向に前後Xに移動するアクチュエータ30と、ドローバー15に対し、ピストン35を回転可能に接続するベアリングアッセンブリ50とを有する。ベアリングアッセンブリ50は、ピストン35の前側9aに配置されたスラスト型の第1のべアリングユニット51と、ピストン35の後側9bに配置されたラジアル型の第2のベアリングユニット52とを含む。第1のベアリングユニット51は、少なくとも3列組み合わせのベアリングセット(アンギュラベアリング)55を含む。アクチュエータ30がピストン35およびベアリングアッセンブリ50を介してドローバー15を後方(開方向、開放側)P1に動かすとチャック71が開いてワークが開放され、アクチュエータ30がピストン35およびベアリングアッセンブリ50を介してドローバー15を前方(閉方向、支持方向、把持方向)P2に動かすとチャック71が閉じてワークが把持される。
【0018】
本例のアクチュエータ30はピストン35が内部で軸方向9に前後Xに動くシリンダータイプである。ピストン35は、空気圧を受けるように軸9に対して半径方向に広がったディスク部(ピストン本体)35aと、ディスク部35aの中心側でドローバー15に沿って軸方向に延びたベース部(ピストンロッド)35bとを含む。ベース部35bは中空で、その内部をドローバー15が貫通しており、ドローバー15とピストンロッド65とは前後両方向の力を伝達するベアリングアッセンブリ50により回転可能に接続されている。したがって、ピストン35は、ドローバー15と前後両方向(P2およびP1の両方向)に同期して移動し、ドローバー15を前後に押し引きしてワーク支持機構であるチャック71を操作(制御)する。
【0019】
ベアリングアッセンブリ50は、ピストン35の前側9aに配置されたスラスト型の第1のべアリングユニット51と、後側9bに配置されたラジアル型の第2のベアリングユニット52とを含む。第1のベアリングユニット51は、前側9aより、前側9aのアキシャル荷重を受ける第1のアンギュラベアリング56と、ワーク支持機構の支持方向、本例ではチャック71がワーク5を把持する閉方向である前側9aのアキシャル荷重を受ける第2のアンギュラベアリング57と、後側9bのアキシャル荷重を受ける第3のアンギュラベアリング58とからなる3列組み合わせのベアリングセット55を含む。第2のベアリングユニット52は、単列のラジアルベアリング59を含む。ラジアルベアリングは、両方向のアキシャル荷重を負荷することができる深溝玉軸受けであってもよい。
【0020】
アンギュラベアリング(アンギュラ玉軸受け)56、57および58は、ラジアル荷重と一方向のアキシャル荷重を負荷することができる玉軸受けであり、玉と内輪・外輪とは接触角を持っている。接触角が大きいほどアキシャル荷重の負荷能力が向上し、接触角が小さいほど、高速回転に有利となる。第1のベアリングユニット51は、前側9aおよび後側9bのアキシャル荷重をそれぞれ受ける第1および第3のアンギュラベアリング56および58に加えて、それらの間に、チャック71がワーク5を把持する閉方向である前側9aのアキシャル荷重を受ける第2のアンギュラベアリング57を配置している。このため、この開閉装置20において、荷重が大きくなると、前側9aのアキシャル荷重を2つのアンギュラベアリング56および57で負荷することができ、高速回転に適した接触角の比較的小さなアンギュラベアリング56および57で、スラスト荷重を受けるベアリングセット55を構成できる。
【0021】
さらに、第1のベアリングユニット51は、前側9aから、前側9aのアキシャル荷重を受けるように接触角が軸9に向かって前側9aに広がる第1のアンギュラベアリング56、同様に接触角が軸9に向かって前側9aに広がる第2のアンギュラベアリング57、後側9bのアキシャル荷重を受けるように接触角が軸9に向かって後側9bに広がる第3のアンギュラベアリング58のセット55を備えている。したがって、第1のベアリング56と第3のベアリング58とは第2のベアリング57を挟んで背面組み合わせのベアリングセットとなり、モーメント過重負荷能力が大きく剛性の高いベアリングセット55を構成できる。また、第1のベアリング56と第2のベアリング57とは並列組み合わせとなり、前側9a、すなわち、チャック71の閉方向のスラスト(アキシャル荷重)の負荷能力を向上できる。第2のベアリング57と第3のベアリング58とは背面組み合わせとなり、このセットでもモーメント荷重の負荷能力を向上できる。
【0022】
このように、本例の開閉装置20のベアリングアッセンブリ50においては、ピストン35のワークを支持するチャック71に近い前側9aにスラスト荷重を主に受けるように3列組み合わせの第1のベアリングユニット51を配置し、反対の後側9bにはラジアル型の簡易な構成の第2のベアリングユニット52を配置した、ピストン35の前後で非対称なベアリング配置を備えている。このベアリングアッセンブリ50は、ピストン35を前後に動かすことにより発生し、特に、ワーク5を把持(支持)することにより発生するアキシャル荷重は、荷重が発生するピストン35の前側に配置された少なくとも3列組み合わせのアンギュラベアリングからなるスラスト型の第1のベアリングユニット51により負荷させる。これより、後方に配置される第2のベアリングユニット52をラジアル型のベアリング59の単列構造とし、きわめて簡易な構成とすることで、高速回転に対する対応能力を向上している。一方、ピストン35の前後にベアリングユニット51および52を配置する構成としているので、ベアリングユニット51および52の間の距離は十分に確保することが可能であり、ピストン35のディスク部35aを前後方向に動かすことによるモーメント荷重に対して十分な負荷能力を備えたベアリングアッセンブリ50となっている。したがって、低コストで、ワーク支持機構であるチャック71の開放および支持に伴うピストン35とドローバー15との間のアキシャル荷重およびモーメント荷重を適切に支持できるベアリングアッセンブリ50を備えた開閉装置20を提供できる。
【0023】
ベアリングアッセンブリ50において、第1のベアリングユニット51の最も後側9bのアンギュラベアリング58は、ピストン35のほぼ中央(軸方向の中央)近傍に配置されている。3列組み合わせを持つ第1のベアリングユニット51を、短いベース部35bに配置でき、開閉装置20の全体をコンパクトに構成できる。また、質量の最も大きいディスク部35aの中央にベアリングを配置することによりベース部35bの剛性を確保でき、安定して高速回転が可能な開閉装置20を提供できる。
【0024】
アクチュエータ30のシリンダー部36は、前後の側方板37aおよび37bと、これらに挟まれたリング部材37cと、これらを固定する複数のボルト37dとを含み、内部にピストン35が動く空間が形成されている。シリンダー部36は、側方板37bから延びたアーム38により主軸台11に固定され、回転しないようになっている。
【0025】
シリンダー部36の内部に収納される円盤状のピストン35は、シリンダー部36の内部でOリング39により密閉性を保ちながら軸方向(前後方向)Xにスライドする。ピストン35はベアリングアッセンブリ50を介してドローバー15に接続されているので、ドローバー15が回転してもピストン35は回転せず、固定されたシリンダー部36に対して軸方向(前後方向)Xにのみスライドする。したがって、Oリング39を用いた簡易な構成で密閉性を長期間にわたり保つことができる。シール方法はOリングに限らず、ガスケットやフィンなどの公知の方法を採用できる。また、空気システム100に用意されたオイラー105により潤滑材(潤滑油)を、ピストン35を作動する空気とともに供給することにより、ピストン35とOリング39などとの摩擦を低減でき、スムーズにピストン35が動く開閉装置20を提供できる。
【0026】
また、この開閉装置20は、ピストン35の前方側の空間31および後方側の空間32に、固定されたシリンダー部36を介して空気あるいは他の気体または流体を出し入れすることによりピストン35を駆動できる。このため、空気、油などの駆動媒体をアクチュエータ30に供給するための回転接手が不要であり、低コストで信頼性の高い開閉装置20を提供できる。アクチュエータ30は、さらに、前方の側方板37bに後方に延びた棒状のガイド37eが取り付けられ、ピストン35がガイド37eに沿って移動することにより、回転せずに前後にスライドする。
【0027】
開閉装置20は、アクチュエータ30の内部のピストン35の前後の空間31および32にそれぞれ圧縮空気を導入する導入口(ポート)21および22を含む。これらの導入口21および22は、側方板37bおよび37aを貫通するように設けられていてもよく、リング部材37cを貫通するように設けられていてもよい。前方の空間31に導入口21を介して圧縮空気を導入することによりピストン35を後方P1に動かすことができ、それに連動してドローバー15を後方P1に動かすことができる。また、後方の空間32に導入口22を介して圧縮空気を導入することによりピストン35を前方P2に動かすことができ、それに連動してドローバー15を前方P2に動かすことができる。
【0028】
ピストン35が前方P2に動く際は、ワーク5を把持するところでピストン35が停止し、ピストン35と前方の側方板52bとが干渉することは基本的にはない。一方、ピストン35が開方向に動く場合は、後方の側方板52aをストッパとして利用できる。この場合、空間32に、ピストン35との衝突の衝撃を緩和する緩衝材を配置してピストン35が側方板52aと接触したときの衝撃および騒音を低減してもよい。
【0029】
この開閉装置20においては、ピストン35を駆動する流体はオイル等の粘性の高い液体であってもよいが、アクチュエータ30が回転しないので流体を供給するための回転接手が不要であり、圧縮空気などの取り扱いが容易で、漏れもそれほど気にならず、安価に入手できる気体を作動流体として用いることができる。また、空気を作動流体として使用する場合は、個々の開閉装置20に付随させて小容量のエアータンク108を設けることにより、停電により圧縮空気源からの空気の供給が停止しても、加工装置1の主軸12の回転数が低下する程度までの時間、開閉装置20のアクチュエータ30の内部の空気圧を維持し、ワーク5を安全に保持できる。
【0030】
また、この開閉装置20においてはアクチュエータ30が回転しないため開閉装置20をハウジングで覆ったりする必要はなく安全である。さらに、ベアリングアッセンブリ50でドローバー15の後端を回転支持できる。このため、ドローバー15は中空であってもよく、その中空部分(貫通孔)16はワークを供給または排出する経路を兼ねていてもよい。開閉装置20は、さらに、ベアリングアッセンブリ50をセットするためのキャップ(ブッシュ)17などのベアリングアッセンブリ50を組み込むための部品を含む。
【0031】
支持装置10のヘッド70は、前方9aから、ヘッド70の前方に固定され、ワークを把持するチャック(コレットチャック)71と、チャック71を開閉するスリーブ75と、スリーブ75と連結部材74により連結されたシャフトリング73とを備えており、シャフトリング73にドローバー15が取り付けられている。チャック71は前方9aに向かって外周が拡大したテーパー部72を含み、スリーブ75はテーパー部72の形状に対応して広がった内周面75aを含む。したがって、開閉装置20によりドローバー15が後方の開方向P1に移動するとスリーブ75が後方9bに動いてチャック71が開き、チャック71からワークを解放できる。開閉装置20によりドローバー15が前方の閉方向P2に移動するとスリーブ75が前方9aに動いてチャック71が閉じ、チャック71によりワークを把持できる。
【0032】
図3に、異なる開閉装置(押し引き装置)20を示している。この開閉装置20は、開閉方向が逆の支持装置10に対応したものである。支持装置10のチャック(不図示)は、ドローバー15が後側9bに動いて引かれた状態になると閉じてワークを保持する。一方、ドローバー15が前側9aに動いて押された状態になるとワークを開放する。したがって、開閉装置20において、後側9bが閉方向P2であり、前側9aが開方向P1となる。この開閉装置20は、基本的な構成は図2に示した開閉装置と同じであり、第1のベアリングユニット51のベアリングセット55の並びが異なる。すなわち、第1のベアリングユニット51は、前側9aより、前側(押し側)9aのアキシャル荷重を受ける第1のアンギュラベアリング56と、ワーク支持機構の支持方向、本例ではチャックがワーク5を把持する閉方向である後側(引き側)9bのアキシャル荷重を受ける第2のアンギュラベアリング57と、後側(引き側)9bのアキシャル荷重を受ける第3のアンギュラベアリング58とからなる3列組み合わせのベアリングセット55を含む。このベアリングセット55は、ワークを保持する引き側(後側)9aのアキシャル荷重(スラスト荷重)を2つのベアリング57および58で負荷するので、ワーク5を引き側で保持した状態で、安定して高速回転させることができる。
【0033】
図4に、異なる支持装置10aを示している。この支持装置10aは、テールストックと称される支持装置であり、モーターのローターなどのワーク5を加工する装置において、加工側を支持するヘッドストック(不図示)との組み合わせで使用される。テールストック10aのヘッド70は、開閉することによりワーク5の軸5aを把持するコレットチャック71と、チャック71の中心軸9に沿って前後に出入りする支持ピン79とを含む。コレットチャック71は、中空のドローバー15により制御される。テールストック10aは、支持ピン79を制御するシャフト18であって、中空のドローバー15の内部に中心軸9に沿って同心円状に配置された加圧シャフト18と、ドローバー15に対して加圧シャフト18を前方9aの支持側に押して支持ピン79を突出させてワーク5の軸5aの中心を支持するためのバネ(コイルバネ)19とを含む。
【0034】
テールストック10aは、ヘッドストック(不図示)とともに、チャック71を開けた状態で、ワーク5の軸5aの回転軸を支持ピン79でいったん保持する。支持ピン79でワーク5を保持した状態でテールストック10aとヘッドストックとの距離を縮めて支持ピン79がチャック71の内部に収納されるとチャック71でワーク5の軸5aを外側から掴んでヘッド70で支持する。ヘッドストック側は、ワーク5の反対側の軸を把持してもよく、テールストック10aで把持しているのでヘッドストックは支持ピンのみでワーク5を支持してもよい。モーターのローターのように慣性モーメントが大きくなる構造のワーク5においては、ワーク5の回転軸を支持ピン79でいったん保持してからチャック71でワーク5を保持することにより、ワーク5を加工する際の振れを抑制できる。
【0035】
ドローバー15を介してチャック71を制御する開閉装置20の構成は、図2に示した開閉装置20と共通する。すなわち、開閉装置20は、ドローバー15に対し、前後方向Xの両方向の力を伝達するピストン35が中心軸9の方向に前後Xに移動するアクチュエータ30と、ドローバー15に対し、ピストン35を回転可能に接続するベアリングアッセンブリ50とを有する。ベアリングアッセンブリ50は、ピストン35の前側9aに配置されたスラスト型の第1のべアリングユニット51と、ピストン35の後側9bに配置されたラジアル型の第2のベアリングユニット52とを含む。第1のベアリングユニット51は、3列組み合わせのベアリングセット(アンギュラベアリング)55を含む。ベアリングセット55は、前側9aより、前側(押し側)9aのアキシャル荷重を受ける第1のアンギュラベアリング56と、チャック71がワーク5を把持する閉方向である前側(押し側)9aのアキシャル荷重を受ける第2のアンギュラベアリング57と、後側(引き側)9bのアキシャル荷重を受ける第3のアンギュラベアリング58とを含む。
【0036】
開閉装置20は、アクチュエータ30がピストン35およびベアリングアッセンブリ50を介してドローバー15を後方(開方向、開放側)9bに動かすとチャック71が開いてワークが開放され、アクチュエータ30がピストン35およびベアリングアッセンブリ50を介してドローバー15を前方(閉方向、支持方向、把持方向)9aに動かすとチャック71が閉じてワークが把持される。
【符号の説明】
【0037】
1 加工装置、 10 支持装置、 20 開閉装置(押し引き装置)
35 ピストン、 50 ベアリングアッセンブリ
図1
図2
図3
図4