(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100440
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】積層吸音材
(51)【国際特許分類】
B32B 7/02 20190101AFI20220629BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220629BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20220629BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B32B7/02
B32B5/18
G10K11/168
E04B1/86 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214402
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波田野 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】山下 洵史
(72)【発明者】
【氏名】山岸 卓正
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001GA12
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4F100AA01A
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(57)【要約】
【課題】低~中周波数領域での吸音性が高く、成形性にも優れた吸音材を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂層と、吸音材層と、表面材層とが順に積層されてなる積層吸音材であって、熱可塑性樹脂層は、アスカーC硬度が40~95であり、かつ連続気泡率が3~30%であり、表面材層は、厚みが20~500μmであり、積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値(Y
max)が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%である値(Y
85)以上である周波数領域の範囲(X
range)が240Hz以上であることを特徴とする積層吸音材。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層と、吸音材層と、表面材層とが順に積層されてなる積層吸音材であって、
前記熱可塑性樹脂層は、アスカーC硬度が40~95であり、かつ連続気泡率が3~30%であり、
前記表面材層は、厚みが20~500μmであり、
前記積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が240Hz以上であることを特徴とする積層吸音材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層は、発泡体からなることを特徴とする請求項1に記載の積層吸音材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項4】
前記吸音材層は、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【請求項5】
前記表面材層は、熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【請求項6】
前記積層吸音材の厚みが30mm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる成形品。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる車両用部材。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる建築部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音材が、建築物、車両、鉄道車両、航空機、船舶、家電、モバイル機器などに幅広く利用されており、吸音材として、従来の金属材料や樹脂材料に代わって樹脂発泡材がますます使用されるようになっている。発泡吸音材は断熱性や緩衝性に優れるが、厚みが薄い場合には、低周波数領域から中周波数領域までの吸音特性を改善することが課題となっており、例えば特許文献1には、難燃性軟質ウレタンフォームにポリエステルフィルム又はポリエチレンフィルムを積層した吸音材であって、防音性及び吸音性に優れ、低~中周波数領域の吸音性に優れた積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウレタンフォームに樹脂フィルムを積層した積層体では形状保持性が悪い。また、吸音材は広い周波数範囲にて高い吸音性を有することが望ましい。しかしながら、軟質ポリウレタンフォームに樹脂フィルムを積層しただけでは、高い吸音性を有する周波数範囲が狭い。
他方、吸音特性を改善しようとすると、吸音材を分厚くしなければならず、吸音材の成形性に劣るという問題がある。
【0005】
本発明が解決すべき課題は、低~中周波数領域における吸音性に優れ、かつ広い周波数範囲にて高い吸音性を有し、かつ成形性にも優れた吸音材、及びこれを用いてなる成形品、車両用部材並びに建築部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題解決のため鋭意検討した結果、吸音材の一方の表面にアスカーC硬度が高く、かつ連続気泡率3~30%である熱可塑性樹脂層を積層させ、吸音材の他方の表面に厚みが20~500μmの薄い表面材層を積層させることにより、積層吸音材が低~中周波数領域での吸音性に優れ、かつ成形性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
項1.熱可塑性樹脂層と、吸音材層と、表面材層とが順に積層されてなる積層吸音材であって、
前記熱可塑性樹脂層は、アスカーC硬度が40~95であり、かつ連続気泡率が3~30%であり、
前記表面材層は、厚みが20~500μmであり、
前記積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が240Hz以上であることを特徴とする積層吸音材。
【0008】
項2.前記熱可塑性樹脂層は、発泡体からなることを特徴とする項1に記載の積層吸音材。
項3.前記熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする項1又は2に記載の積層吸音材。
項4.前記吸音材層は、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする項1~3のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0009】
項5.前記表面材層は、熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする項1~4のいずれか1項に記載の積層吸音材。
項6.前記積層吸音材の厚みが30mm以下であることを特徴とする項1~5のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0010】
項7.項1~6のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる成形品。
項8.項1~6のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる車両用部材。
項9.項1~6のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる建築部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低~中周波数領域における吸音性に優れ、かつ広い周波数範囲にて高い吸音性を有し、かつ成形性にも優れた吸音材を提供することができる。そのような積層吸音材を用いてなる成形品、車両用部材並びに建築部材も、低~中周波数領域における吸音性及び成形性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の積層吸音材の略斜視図。
【
図2】吸音率の最大値(Y
max)、吸音率の最大値をとる周波数(X
max)、吸音率の最大値の85%(Y
85)、及び周波数領域の範囲(X
range)の関係を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の積層吸音材は、熱可塑性樹脂層と、吸音材層と、表面材層とが順に積層されてなり、熱可塑性樹脂層は、アスカーC硬度が40~95であり、かつ連続気泡率が3~30%であり、表面材層は、厚みが20~500μmであり、積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が240Hz以上であることを特徴とする。
【0014】
本明細書において、熱可塑性樹脂層のアスカーC硬度は、JIS K 7312に準拠してアスカーゴム硬度計C型を用いて測定される。
本明細書において、積層吸音材の吸音率は、JIS-A1405-2:2007に準拠した垂直入射の測定方法により測定される。
【0015】
吸音材層は、吸音性に優れた樹脂組成物から形成され、樹脂組成物は、樹脂、熱可塑性エラストマー、又はそれらの組み合わせからなるマトリックスを含有する。
【0016】
吸音材層に使用される樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、例えばウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を初めとするポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フェノール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、メタクリルイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン樹脂、及びこれらの共重合体樹脂等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。積層吸音材の吸音性、成形性、及び軽量性の点から、吸音材層は、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂を含むことが好ましい。
【0017】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0018】
吸音材層が発泡体である場合には、例えばマトリックス100質量部に対して発泡剤を0.5~20質量部を添加して発泡させることが好ましく、0.8~5.5質量部が好ましい。なお、上記範囲は、マトリックス100質量部に対する代わりに、重合反応前のマトリックスを構成するモノマー成分の合計100質量部に対する範囲としてもよい。発泡剤は有機系発泡剤及び無機系発泡剤のいずれであることもでき、そのような発泡剤は樹脂の種類に応じて当業者が適宜選択し得る。発泡剤の含有量は、発泡剤の種類や比重等を勘案して適宜決定される。
【0019】
吸音材層を構成する樹脂組成物は、界面活性剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、活剤、展着剤、着色剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤をさらに含有することもできる。
【0020】
吸音材層を構成する樹脂組成物は、市販品でもよいし、公知の製造方法に従って製造することもできる。
【0021】
好ましくは、吸音材層は発泡性樹脂組成物から形成される。発泡性樹脂組成物は上述の樹脂組成物を発泡させたものである。発泡性樹脂組成物は市販品でもよいし、公知の製造方法に従って製造することもできる。発泡性樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば特許第6746644号、特開2018-197278などが挙げられる。発泡性樹脂組成物の製造では、通常、樹脂ポリマーを構成する主原料(通常、モノマー化合物)の重合反応と、物理的又は化学的発泡による樹脂ポリマーの発泡とが同時に行われる。主原料以外の添加剤は、未反応の主原料に配合されてもよいし、主原料をプリポリマー化したものに配合してもよい。例えば、発泡性ウレタン樹脂塑性物の場合、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によるウレタンポリマーの生成が基本であり、かかる反応に付随して物理的又は化学的発泡が同時に行われる。ウレタン成形品は、主原料であるポリオールとポリイソシアネートに種々の添加剤を配合した未反応の成形原料(ワンショット法)あるいは主原料をプリポリマー化してから添加剤を配合した成形原料(プリポリマー法)から製造されることが多い。即ち、重合反応と成形及び必要により発泡が同時に行われる。
【0022】
吸音材層の厚みは特に限定されないが、30mm以下であることが好ましく、0.5mm~29.89mmであることがより好ましく、1mm~29mmであることがより好ましく、2mm~25mmであることがさらに好ましい。このように全体の厚みが薄い吸音材により、低~中周波数領域における優れた吸音性と成形性とを兼ね備えることができる。
【0023】
熱可塑性樹脂層は、低~中周波数領域における吸音性と成形性を増大させるために、吸音材層に加えて設けられる。熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー又はそれらの組み合わせからなるマトリックスを含む樹脂組成物から形成される。
【0024】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を含むポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、及びAS樹脂等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。成形性の点から、樹脂はポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリアミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0026】
熱可塑性樹脂層は、界面活性剤、気泡調整剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、活剤、展着剤、着色剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤をさらに含有することもできる。
熱可塑性樹脂層は上記樹脂組成物から形成された発泡体であってもよいし、上記樹脂組成物から形成された非発泡体であってもよいが、積層吸音材の成形性の点から、好ましくは発泡体である。また、熱可塑性樹脂層は、積層吸音材の吸音性と成形性の点から、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物からなる発泡体であることが好ましい。
【0027】
熱可塑性樹脂層を構成する樹脂組成物は市販品でもよいし、公知の製造方法に従って製造することもできる。例えば、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂組成物を構成する成分を溶融混合し、プレス成形、押出成形等の公知の成形方法で成形することにより製造することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂層のアスカーC硬度は、積層吸音材の吸音性及び成形性の点から、40~95である。アスカーC硬度が40未満であると、熱可塑性樹脂層が柔らかすぎて、成形体の容器強度が十分でなく、形状保持が困難であり、成形性及び形状安定性が損なわれる。アスカーC硬度が95を超えても、成形時に軟化するまでに加熱時間がかかるため成形サイクルが長くなり、場合によっては吸音材や表面材が劣化する。熱可塑性樹脂層のアスカーC硬度は、積層吸音材の成形性及び形状安定性の点から、50~95であることが好ましく、60~95であることがより好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂層の連続気泡率は、積層吸音材の吸音性及び成形性の点から、3~30%である。連続気泡率が3%未満であると、成形時に軟化するまでに加熱時間がかかるため成形サイクルが長くなり、場合によっては吸音材や表面材が劣化する。連続気泡率が30%を超えると、成形時にかかる延伸により成形体強度が弱くなるため、成形性及び形状安定性が損なわれる。熱可塑性樹脂層の連続気泡率は、積層吸音材の成形性及び形状安定性の点から、3~25%であることが好ましく、3~20%であることがより好ましい。
【0030】
熱可塑性樹脂層の厚みは特に限定されないが、積層吸音材の成形性の点から、吸音材層の厚みよりも小さいことが好ましい。熱可塑性樹脂層の厚みは、0.1mm~14mmであることが好ましく、0.3mm~12mmであることがより好ましく、0.5mm~10mmであることがさらに好ましい。
【0031】
表面材層は、低~中周波数領域における吸音性と成形性を増大させるために、吸音材層に加えて設けられる。表面材層は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物又は不織布から形成されることが好ましい。
【0032】
表面材層に使用される熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を含むポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、及びAS樹脂等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。成形性の点から、熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0033】
不織布は繊維を織らずに絡み合わせたシート状のものを指し、不織布を構成する当該繊維としてはアラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、エチレン酢酸ビニル繊維、ポリアミド繊維、ゴム繊維、他の上記熱可塑性樹脂を繊維状にしたものが挙げられる。
【0034】
表面材層は、界面活性剤、架橋剤、充填剤、難燃剤、活剤、展着剤、着色剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤をさらに含有することもできる。
【0035】
表面材層は、ポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂を含む樹脂組成物であることが好ましい。表面材層を構成する樹脂組成物は、市販品でもよいし、公知の製造方法に従って製造することもできる。例えば、表面材層を構成する成分を溶融混合し、プレス成形、押出成形等の公知の成形方法で成形することにより製造することができる。
【0036】
表面材層の坪量は特に限定されないが、積層吸音材の低~中周波数領域における成形性と吸音性の点から、20g/m2~600g/m2 であることが好ましく、22g/m2~590g/m2であることがより好ましく、22g/m2~500g/m2であることがより好ましい。
【0037】
表面材層の厚みは、積層吸音材の低~中周波数領域における成形性と吸音性の点から、20~500μmである。表面層の厚みは、積層吸音材の成形性と吸音性の点から、吸音材層の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0038】
本実施形態の積層吸音材は、別々に作製した熱可塑性樹脂層、吸音材層、表面材層を積層して一体化することにより得られる。
図1に、熱可塑性樹脂層2、吸音材層3、表面材層4が積層された積層吸音材1を示す。熱可塑性樹脂層2は、アスカーC硬度が40~95であり、かつ連続気泡率が3~30%であり、表面材層4は、厚みが20~500μmであり、積層吸音材1の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が240Hz以上である。
【0039】
熱可塑性樹脂層と吸音材層、及び吸音材層と表面材層は、樹脂バインダーなどの接着剤、両面接着テープなどの粘着シート、熱溶着(熱接着とも言う)等の公知の接着手段により接着することができる。一つの好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂層、吸音材層、表面材層はいずれも予め成形された成形体シートであり、これらを公知の接着手段により接着することで積層吸音材を簡便に製造することができる。
【0040】
また、熱可塑性樹脂層と吸音材層の間、及び/又は吸音材層と表面材層の間に、熱可塑性樹脂層、吸音材層、表面材層とは異なる追加層が配置されてもよい。
本実施形態の積層吸音材は、
図2に例示するように、積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値Y
maxが0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値Y
maxの85%である値Y
85以上である周波数領域の範囲X
rangeが240Hz以上である。積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値Y
maxが0.5未満であると、積層吸音材の吸音率が基本的に低いため望ましくない。積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であっても、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%である値Y
85以上である周波数領域の範囲が240Hz未満であると、低~中周波数領域の一定の範囲で十分に吸音性を発揮していないと考えられる。
【0041】
より特定すると、積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%である値Y85以上である周波数領域の範囲が240Hz以上の連続的な範囲にわたる。このため、本実施形態の積層吸音材は、周波数200~3200Hzという低~中周波数領域の一定の範囲において優れた吸音性を示す。
【0042】
一つの好ましい実施形態において、積層吸音材は、積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、かつ吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が300Hz以上、350Hz、又は400Hz以上である。別の好ましい実施形態において、積層吸音材は、積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.6以上、0.7以上、又は0.8以上であり、かつ吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が240Hz以上である。別の好ましい実施形態において、積層吸音材は、積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.6以上、0.7以上、又は0.8以上であり、かつ吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が240Hz以上の連続的な範囲にわたる。
【0043】
本実施形態の積層吸音材の厚みは特に限定されないが、成形性の点から、好ましくは5mm~30mmであり、より好ましくは10mm~25mmである。
【0044】
本実施形態の積層吸音材は、建築物、車両、鉄道車両、航空機、船舶、家電、モバイル機器に好適に用いることができる。建築物には、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建材が含まれる。例えば、本実施形態の積層吸音材をアンダーカバー、インナーフェンダー、ダッシュサイレンサー等の車両用部材の表面又は内部に適用して使用したり、建築物の壁、床、天井、建具、屋根、配管、配線等の建築部材の表面又は内部に適用して使用することもできる。
【0045】
また、本発明は以下の構成を採用することもできる。
[1]熱可塑性樹脂層と、吸音材層と、表面材層とが順に積層されてなる積層吸音材であって、
前記熱可塑性樹脂層は、アスカーC硬度が40~95であり、かつ連続気泡率が3~30%であり、
前記表面材層は、厚みが20~500μmであり、
前記積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲が240Hz以上である積層吸音材。
【0046】
[2]前記熱可塑性樹脂層は、発泡体からなる[1]に記載の積層吸音材。
[3]前記熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む[1]又は[2]に記載の積層吸音材。
【0047】
[4]熱可塑性樹脂層のアスカーC硬度が60~95である[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[5]前記熱可塑製樹脂層の厚みは0.1mm~14mmである[1]~[4]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0048】
[6]前記吸音材層は、発泡性樹脂組成物から形成される[1]~[5]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[7]前記吸音材層は、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0049】
[8]前記吸音材層の厚みは0.5mm~29.89mmである[1]~[7]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[9]前記吸音材層の厚みは1mm~29mmである[1]~[7]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[10]前記吸音材層の厚みは2mm~25mmである[1]~[7]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0050】
[11]前記表面材層は、熱可塑性樹脂を含む[1]~[10]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[12]前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂を含む[11]に記載の積層吸音材。
[13]前記表面材層の坪量は、20g/m2~600g/m2 である[1]~[12]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0051】
[14]積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.5以上であり、吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%である値Y85以上である周波数領域の範囲Xrangeが240Hz以上の連続的な範囲にわたる[1]~[13]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[15]吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%である値以上である周波数領域の範囲が300Hz以上である[1]~[14]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0052】
[16]吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%である値以上である周波数領域の範囲が350Hz以上である[1]~[14]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[17]吸音率が該周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値の85%である値以上である周波数領域の範囲が400Hz以上である[1]~[14]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0053】
[18]積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.6以上である[1]~[17]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[19]積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.7以上である[1]~[17]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[20]積層吸音材の垂直入射測定法による周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値が0.8以上である[1]~[17]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【0054】
[21] 積層吸音材の厚みが5mm~30mmである[1]~[20]のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[22][1]~[21]のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる成形品。
[23][1]~[21]のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる車両用部材。
[24]アンダーカバー、インナーフェンダー、又はダッシュサイレンサーで有る[22]に記載の車両用部材。
【0055】
[25][1]~[21]のいずれか1項に記載の積層吸音材を用いてなる建築部材。
[26]壁、床、天井、建具、屋根、配管、又は配線である[24]に記載の建築部材。
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例0057】
1.積層吸音材の製造
実施例1~11の積層吸音材ならびに比較例1~8の積層吸音材を以下の通りに製造した。
【0058】
実施例1
<熱可塑性樹脂層の製造>
(発泡シートの製造)
ポリプロピレン系樹脂(Borealis社製、商品名「WB140HMS」)40質量部、ブロックポリプロピレン(日本ポリプロ社製、商品名「BC6C」)50質量部、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー(TPO)(サンアロマー社製、商品名「Q-100F」)10質量部を混合してポリマー成分を調製した。前記ポリマー成分100質量部に対する割合が0.2質量部となる重曹-クエン酸系発泡剤(大日精化社製マスターバッチ、商品名「ファインセルマスターPO410K」)を配合して混合物を得た。口径が90mmの第1押し出し機の先端に、口径115mmの第2押し出し機を接続したタンデム押し出し機を準備した。前記混合物を、第1押し出し機に供給し、約200~210℃にて溶融混練した。続いて、第1押し出し機内に発泡剤としてブタンをポリマー成分100質量部に対して1.0質量部となるように圧入してさらに溶融混練した。その後、約175℃まで冷却し、第2押し出し機の先端に接続されている環状ダイに供給して、150kg/時間の押出量で円筒状に押出発泡させた。
【0059】
得られた円筒状発泡体をその内面にエアーを吹き付けて冷却した。その後、冷却マンドレルプラグ上を沿わせて円筒状発泡体の内面を固化させるとともに、プラグ上で円筒状発泡体の外面にもエアーを吹き付けて冷却固化させた。続いて、円筒状発泡体をその押出方向に切断して切り開き、連続シートとしてロール状に巻き取り、厚み3.0mm、密度180kg/m3の発泡シートを得た。
【0060】
(積層発泡シートの製造)
ポリプロピレン系樹脂(サンアロマー社製、商品名「PL500A」)50質量部、及び無機フィラー70質量%を含有するタルペット70P(日東粉化工業社製)50質量部を混合した樹脂混合物を、第3押し出し機と第4押し出し機に供給した。第3押し出し機の先端に取り付けたTダイからシートを押出し、押し出した直後の溶融状態のシートを上記発泡シートの一方の面に積層し、融着させた。続いて、第4押し出し機の先端に取り付けたTダイからシートを押出し、押し出した直後の溶融状態のシートを上記発泡シートの他方の面に積層し、融着させた。これにより、両面に非発泡層(厚み各0.1mm)を有する積層発泡シート(厚み3.2mm)を得た。なお、第3押し出し機と第4押し出し機の押出条件は同一とした。
【0061】
<積層吸音材の製造>
熱可塑性樹脂層として上記に得られた積層発泡シート(厚み3.2mm)、吸音材層としてウレタン樹脂軟質フォーム(株式会社東洋クオリティワン、GTN、厚み10mm)、表面材層としてポリプロピレン樹脂(中本パックス株式会社、無延伸ポリプロピレンフィルム、厚み50μm)を用いてこの順に積層し、熱可塑性樹脂層と吸音材層はポリプロピレン系樹脂(サンアロマー株式会社、商品名「PL500A」)を用いて押出ラミネートにより接着し、吸音材層と表面材層は熱ラミネートにより接着し、実施例1の積層吸音材を製造した。
【0062】
実施例2
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層に実施例1で得られた単層の発泡シート(厚み3.0mm)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施例2の積層吸音材を製造した。
【0063】
実施例3
実施例1の単層の発泡シートの厚みを3.0mmから5.0mmに変更した発泡シートを熱可塑性樹脂層として用いた以外は、実施例1と同じ条件で実施例3の積層吸音材を製造した。
【0064】
実施例4
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層を発泡ポリエステルシート(積水化成品工業株式会社、セルペット、厚み2.0mm)とした以外は、実施例1と同じ条件で実施例4の積層吸音材を製造した。
【0065】
実施例5
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層を発泡ポリアミドシート(積水化成品工業株式会社、ナイロン6、厚み2.0mm)とした以外は、実施例1と同じ条件で実施例5の積層吸音材を製造した。
【0066】
実施例6
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層を発泡スチレンシート(積水化成品工業株式会社、エスレンシート、厚み2.0mm)とした以外は、実施例1と同じ条件で実施例6の積層吸音材を製造した。
【0067】
実施例7
実施例1に対し、吸音材層の厚みを20mmとした以外は、実施例1と同じ条件で実施例6の積層吸音材を製造した。
【0068】
実施例8
実施例1に対し、表面材層をポリプロピレン樹脂からポリエステル樹脂(アイリスオーヤマ株式会社、ラミネートフィルム、厚み50μm)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例8の積層吸音材を製造した。
【0069】
実施例9
実施例8に対し、表面材層の厚みを150μmに変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例9の積層吸音材を製造した。
【0070】
実施例10
実施例8に対し、表面材層の厚みを250μmに変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例10の積層吸音材を製造した。
【0071】
実施例11
実施例1に対し、吸音材層をメラミン樹脂軟質フォーム(BASF社、バソテクト、厚み10mm)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で実施例11の積層吸音材を製造した。
【0072】
比較例1
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層がない以外は、実施例1と同じ条件で比較例1の積層吸音材を製造した。
【0073】
比較例2
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層をメラミン樹脂軟質フォーム(BASF社、バソテクト、厚み3.0mm)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で比較例2の積層吸音材を製造した。
【0074】
比較例3
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層を非発泡ポリプロピレン樹脂板(アズワン社製、厚み3.0mm)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で比較例3の積層吸音材を製造した。
【0075】
比較例4
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層がなく、吸音材層の厚みを20mmに変更した以外は、実施例1と同じ条件で比較例4の積層吸音材を製造した。
【0076】
比較例5
実施例1に対し、熱可塑性樹脂層がなく、表面材層をポリプロピレン樹脂からポリエステル樹脂(アイリスオーヤマ株式会社、ラミネートフィルム、厚み50μm)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で比較例5の積層吸音材を製造した。
【0077】
比較例6
比較例5に対し、表面材層の厚みを150μmに変更した以外は、比較例5と同じ条件で比較例6の積層吸音材を製造した。
【0078】
比較例7
比較例5に対し、表面材層の厚みを250μmに変更した以外は、比較例5と同じ条件で比較例7の積層吸音材を製造した。
【0079】
比較例8
実施例1に対し、吸音材層をポリオレフィン樹脂含有シート(三井化学株式会社、タフネル、厚み4mm)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で比較例8の積層吸音材を製造した。
【0080】
2.積層吸音材の評価
上述のように製造した実施例1~11の積層吸音材ならびに比較例1~8の積層吸音材の周波数200~3200Hzにおける吸音率の最大値(Ymax)、吸音率の最大値の85%(Y85)、吸音率が最大値である時の周波数の値(Xmax)及び吸音率が吸音率の最大値の85%以上である周波数領域の範囲(Xrange)、熱可塑性樹脂の連続気泡率、アスカーC硬度、坪量、並びに表面材層の坪量を以下の通りに測定するとともに、成形性及び形状安定性を以下の通りに評価した。
【0081】
<吸音率>
吸音率は、JIS-A1405-2:2007に準拠して測定した。Bruel & Kjaer社製「垂直入射吸音率測定システム4206型」音響インピーダンス管及び松下テクノトレーディング(株)製「計測ソフトMS1021型」を用いて実施した。試験体のサイズは、各積層吸音材を直径Φ63.5mmの円形にカットし、厚さは積層吸音材の全厚みとした。試験体数はそれぞれ2~4個とした。試験体は温度23±5℃の環境下で0.5時間状態調節し、測定に用いた。測定は同環境下にて実施した。測定には、内径63.5mmのインピーダンス管(周波数領域200~3200Hz)を使用した。ワセリンを用いて、試験体の辺のまわりのすき間をふさいだ状態になるよう、管内に取り付けた。測定は、背面空気層0mmの状態で表面材面より入射させて実施した。測定後、得られたグラフを、計測ソフトを用いて複素平均を算出し、測定データを得た。
【0082】
<成形性>
積層吸音材の一面側と他面側とのそれぞれに対面するようヒーターがセットされた予備加熱装置に、積層吸音材を供給し、表面材と他面側とをそれぞれ加熱して軟化状態にし、表面材がトレーの内側となるように熱成型を実施し、成形体として、長辺170mm、短辺140mm、深さ20mmの角形トレーを得た。
得られた角形トレーの外観を目視及び指触で確認し、以下の評価基準に従って、成形性および形状安定性を評価した。
【0083】
(成形性評価基準)
○:角形トレー表面に穴あきや亀裂がなく、強度が十分で剥がれ等がない。
×:角形トレー表面に穴あきや亀裂、裂け等がある、もしくは賦形ができず、角形トレーの強度が不十分である。
【0084】
(形状安定性評価基準)
○:角形トレーが型崩れせず、指で触っても崩れず形状保持が良好である。
×:角形トレーがすでに型崩れしている、もしくは指で触るとすぐ型崩れする。
【0085】
<連続気泡率>
ASTM D-2856-87に準拠し、1-1/2-1気圧法にて、各熱可塑性樹脂層の連続気泡率を測定した。
【0086】
<硬度>
アスカーC硬度の測定はJIS K 7312の試験方法に準拠して測定した。具体的には温度23±2℃、湿度50±5%に調整された試験室内にて、100mm×100mm×厚み10mmに調整した各熱可塑性樹脂層の試料に対し、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器株式会社製)の計器を垂直に押し当て、1秒後の数値を計測する。その際、測定位置は試料外端より15mm以上内側とし、測定点どうしは10mmの間隔を確保し、一つの試料に対し5点計測し平均値を当該試料のアスカーC硬度とした。
【0087】
<坪量>
坪量は、熱可塑性樹脂層及び表面材層の各切片を切り出し、該切片の質量を測定し、1m2あたりの質量に換算して、単位m2あたりの質量を算出する方法により測定した。
【0088】
3.結果
表1に実施例1~11、表2に比較例1~8の実験結果を示す。
表1に示されるように、実施例1~11の積層吸音材は、低~中周波数領域の吸音特性に優れている。また、実施例1~11の積層吸音材は成形性及び形状安定性にも優れている。
他方、表2に示されるように、比較例1~8の積層吸音材は吸音性が劣るか、もしくは高い吸音性を有する周波数範囲が狭く、成形性及び形状安定性が劣っている。
【0089】