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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100444
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】塗膜積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/022 20190101AFI20220629BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/16 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214406
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】中島耕平
(72)【発明者】
【氏名】橋本岳人
(72)【発明者】
【氏名】青山雅之
(72)【発明者】
【氏名】新保光祐
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK22A
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100CA12B
4F100CA30B
4F100EH46B
4F100EJ05B
4F100EJ08B
4F100EJ54B
4F100GB15
4F100JB14B
4F100JK08A
4F100JK14A
4F100JL11
(57)【要約】
【課題】
フィルム基材と塗膜とが十分な密着強度を有し、塗膜剥がれが生じ難い塗膜積層フィルムを提供すること。
【解決手段】
塗膜積層フィルムであって、(A)ストレッチフィルムの少なくとも一方の面の上に(B)塗膜を有し;上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とは直接積層されており;上記(B)塗膜は(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成され;上記(B)塗膜の厚みは11μm以下であり;上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき次式(1)を満たし:b≦3a+5.5 (1):ここで上記算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601:2013に準拠し、カットオフ値λcが0.80mm、評価長さLが4.0mmの条件で測定される値である、上記塗膜積層フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜積層フィルムであって、
(A)ストレッチフィルムの少なくとも一方の面の上に(B)塗膜を有し;
上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とは直接積層されており;
上記(B)塗膜は(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む(b)塗料を用いて形成され;
上記(B)塗膜の厚みは16μm以下であり;
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき下記式(1)を満たし:
b≦3a+5.5 ・・・(1)
ここで上記算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601:2013に準拠し、カットオフ値λcが0.80mm、評価長さLが4.0mmの条件で測定される値である、
上記塗膜積層フィルム。
【請求項2】
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む請求項1に記載の塗膜積層フィルム。
【請求項3】
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がエチレン系樹脂を含む請求項1又は2に記載の塗膜積層フィルム。
【請求項4】
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む請求項1~3の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
【請求項5】
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上である請求項1~4の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
【請求項6】
上記(B)塗膜の厚みが0.5~9.5μmであり;
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき下記式(2)を満たす:
b≦3a+4 ・・・(2)
請求項1~5の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
【請求項7】
上記(b)塗料が、上記(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部、(b2)光重合開始剤 0.1~20質量部、及び、抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物 1~100質量部を含む請求項1~6の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
【請求項8】
物品の表面の保護用である請求項1~7の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の塗膜積層フィルムを物品の表面の保護に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜積層フィルムに関する。更に詳しくは、ストレッチ性を有する塗膜積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品を生産、輸送する際、あるいは物品を使用する際に物品の表面を擦傷、傷付き、及び汚染物質の付着などから保護するため、物品の表面には、保護フィルムがしばしば貼合されている。保護フィルムには、物品の表面に貼合する際の作業性の観点から、ストレッチ性あるいは柔軟性がしばしば求められる。また物品を使用する際に、その表面に貼合されている保護フィルムには、耐擦傷性のみならず、撥水性、抗菌性、抗ウィルス性、反射防止性、及び赤外線遮蔽性などの何らかの機能を求められることが多い。これらの機能を付与しようとする場合、撥水剤、抗菌剤、抗ウィルス性剤、低屈折率微粒子、及び熱線遮蔽性微粒子などの機能化剤を含む塗膜を、ストレッチ性あるいは柔軟性を有するフィルム基材の面の上に形成するのが便宜である。そして、該塗膜のバインダーとしては、耐擦傷性が良好であり、硬化の所要時間が短く、生産性が高いことから、活性エネルギー線硬化性樹脂を使用したい。またストレッチ性あるいは柔軟性を有するフィルム基材としてはポリオレフィン系樹脂フィルムが一般的に使用されており、これを使用したい。しかし、ポリオレフィン系樹脂フィルムと活性エネルギー線硬化性樹脂をバインダーとする塗料を用いて形成される塗膜とは密着強度が低いため、塗膜が剥がれ易いという不都合がある。
【0003】
また物品の表面は、しばしば三次元形状/立体的形状を有していることから、保護フィルムには、物品の表面形状に追随できることがしばしば求められる。しかし、活性エネルギー線硬化性樹脂をバインダーとする塗料を用いて形成される塗膜は、保護フィルムを物品の表面形状に追随させてストレッチすると、容易に割れてしまうものが多いという不都合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-113415号公報
【特許文献2】特開2013-181087号公報
【特許文献3】特開平11-129382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、塗膜積層フィルムであって、フィルム基材の塗膜形成面がポリオレフィン系樹脂を含むものであっても、フィルム基材と塗膜と十分な密着強度を有し、塗膜剥がれが生じ難い塗膜積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の塗膜積層フィルムにより、上記課題を達成できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明の諸態様は以下の通りである。
[1].
塗膜積層フィルムであって、(A)ストレッチフィルムの少なくとも一方の面の上に(B)塗膜を有し;
上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とは直接積層されており;
上記(B)塗膜は(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む(b)塗料を用いて形成され;
上記(B)塗膜の厚みは16μm以下であり;
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき下記式(1)を満たし:
b≦3a+5.5 ・・・(1)
ここで上記算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601:2013に準拠し、カットオフ値λcが0.80mm、評価長さLが4.0mmの条件で測定される値である、
上記塗膜積層フィルム。
[2].
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む[1]項に記載の塗膜積層フィルム。
[3].
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がエチレン系樹脂を含む[1]項又は[2]項に記載の塗膜積層フィルム。
[4].
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む[1]~[3]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[5].
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上である[1]~[4]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[6].
上記(B)塗膜の厚みが0.5~9.5μmであり;
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき下記式(2)を満たす:
b≦3a+4 ・・・(2)
[1]~[5]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[7].
上記(b)塗料が、上記(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部、(b2)光重合開始剤 0.1~20質量部、及び、抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物 1~100質量部を含む[1]~[6]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[8].
物品の表面の保護用である[1]~[7]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[9].
[1]~[8]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルムを物品の表面の保護に使用する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗膜積層フィルムは、フィルム基材の塗膜形成面がポリオレフィン系樹脂を含むものであっても、フィルム基材と塗膜とが十分な密着強度を有し、塗膜剥がれが生じ難い。本発明の好ましい塗膜積層フィルムは、フィルム基材の塗膜形成面がポリオレフィン系樹脂を含むものであっても、フィルム基材と塗膜とが十分な密着強度を有し、塗膜剥がれが生じ難く、物品の表面形状に追随させてストレッチしても塗膜の割れが生じ難い。そのため本発明の塗膜積層フィルムは、三次元形状/立体的形状の表面を有する物品の表面保護に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0010】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。また数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。更に、数値範囲の上限と下限とは、任意に組み合わせることができるものとし、任意に組み合わせた実施形態が読み取れるものとする。例えば、ある特性の数値範囲に係る「通常10%以上、好ましくは20%以上である。一方、通常40%以下、好ましくは30%以下である。」や「通常10~40%、好ましくは20~30%である。」という記載から、そのある特性の数値範囲は、一実施形態において10~40%、20~30%、10~30%、又は20~40%であることが読み取れるものとする。
【0011】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0012】
1.塗膜積層フィルム:
本発明の塗膜積層フィルムは、(A)ストレッチフィルムの少なくとも一方の面の上に、通常は一方の面の上に(B)塗膜を有する。本発明の塗膜積層フィルムは、実施形態の1つにおいて、表層側から順に上記(B)塗膜、上記(A)ストレッチフィルム、及び(C)粘着剤層を有するものであってよい。上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とは直接積層されている。上記(B)塗膜は(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成される。上記(B)塗膜の厚みは16μm以下である。本発明の塗膜積層フィルムは、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき下記式(1)を満たす。
b≦3a+5.5 ・・・(1)
【0013】
ここで上記算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601:2013に準拠し、カットオフ値λcが0.80mm、評価長さLが4.0mmの条件で測定される値である。以下、各層について説明する。
【0014】
上記(B)塗膜の厚みを設計厚みに制御する方法としては、以下の方法が好ましい。先ず、事前に予備実験、典型的には表面の平滑なフィルム基材、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの面の上に上記(B)塗膜の形成用塗料を用いて塗膜を形成して該塗料の塗工条件と該塗膜の厚み(硬化後の厚み)との関係式を求める。次に、本発明の塗膜積層フィルムを生産する際、該関係式に基づいて上記(B)塗膜の厚みを設計厚みに制御する。
【0015】
1‐1.(A)ストレッチフィルム:
上記(A)ストレッチフィルムは、その面の上に上記(B)塗膜を直接形成するためのフィルム基材である。上記(A)ストレッチフィルムは、本発明の塗膜積層フィルムに機械的な強度を付与する働きをする。ここでストレッチフィルムとは、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性を有するフィルムであることを意味する。典型的には、上記(A)ストレッチフィルムの5%ひずみ引張応力は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性の観点から、通常12MPa以下、好ましくは9MPa以下、より好ましくは6MPa以下、更に好ましくは1~4MPaであってよい。
【0016】
上記(A)ストレッチフィルムの10%ひずみ引張応力は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性の観点から、通常18MPa以下、好ましくは14MPa以下、より好ましくは9MPa以下、更に好ましくは1.5~6MPaであってよい。
【0017】
上記(A)ストレッチフィルムの25%ひずみ引張応力は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性の観点から、通常25MPa以下、好ましくは18MPa以下、より好ましくは12MPa以下、更に好ましくは2~8MPaであってよい。
【0018】
上記(A)ストレッチフィルムの引張破壊応力は、機械的強度の観点から、通常5MPa以上、好ましくは8MPa以上、より好ましくは10MPa以上であってよい。上記(A)ストレッチフィルムの引張破壊ひずみは、機械的強度の観点から、通常100%以上、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上であってよい。
【0019】
ここでストレッチフィルムの5%ひずみ引張応力、10%ひずみ引張応力、25%ひずみ引張応力、引張破壊応力、及び引張破壊ひずみは、ストレッチフィルムのマシン方向が引張方向となるように採取した幅15mm、長さ150mmの短冊形の試験片を用いること以外はJIS K7161‐2:2014に従い、温度23±2℃、相対湿度50±10%の環境下において、標線間距離50mm、チャック間距離50mm、及び引張速度200mm/分の条件で引張試験を行い測定する。
【0020】
上記(A)ストレッチフィルムは単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。上記(A)ストレッチフィルムが単層フィルムである場合、上記(A)ストレッチフィルムを形成する樹脂(言い換えると、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂である)は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性を付与する観点から、適宜選択すればよい。上記(A)ストレッチフィルムが単層フィルムである場合、上記(A)ストレッチフィルムを形成する樹脂は、好ましくはポリオレフィン系樹脂を含むものであってよく、より好ましくはポリオレフィン系樹脂を主として含むものであってよい。
【0021】
上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合、該多層フィルムの各層を形成する樹脂は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性を付与する観点、及び保護フィルムが物品の表面形状に追随させてストレッチされる際に上記多層フィルムの各層間で剥離が生じないようにする観点から、適宜選択する。上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合、該多層フィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂(該多層フィルムの上記(B)塗膜が形成される側の表層を形成する樹脂)は、好ましくはポリオレフィン系樹脂を含むものであってよく、より好ましくはポリオレフィン系樹脂を主として含むものであってよい。
【0022】
ここでポリオレフィン系樹脂を主として含むとは、上記(A)ストレッチフィルムを形成する樹脂又は上記多層フィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂の総和を100質量%として、ポリオレフィン系樹脂を通常60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、典型的には90~100質量%含むことを意味する。
【0023】
上記ポリオレフィン系樹脂はα‐オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、及び4‐メチル‐1‐ペンテンなど)を主として含む樹脂である。上記ポリオレフィン系樹脂中のα‐オレフィンに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の総和を100質量%として、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、典型的には70~100質量%であってよい。上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、1‐ブテン系樹脂、及び4‐メチル‐1‐ペンテン系樹脂などをあげることができる。
【0024】
上記エチレン系樹脂はエチレンに由来する構成単位を主として含む樹脂である。上記エチレン系樹脂中のエチレンに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の総和を100質量%として、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、典型的には70~100質量%であってよい。
【0025】
上記エチレン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、並びにエチレン・1‐ブテン共重合体、エチレン・1‐ヘキセン共重合体、及びエチレン・1‐オクテン共重合体等のエチレン・α‐オレフィン共重合体などのポリエチレン;エチレン・アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン・メタクリル酸メチル共重合体などのエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体;エチレン・アクリル酸共重合体、及びエチレン・メタクリル酸共重合体などのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体;該エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂;並びに、エチレン・酢酸ビニル共重合体などをあげることができる。
【0026】
上記アイオノマー樹脂に用いられる上記金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、及びマンガンイオンなどをあげることができる。
【0027】
上記プロピレン系樹脂はプロピレンに由来する構成単位を主として含む樹脂である。上記プロピレン系樹脂中のプロピレンに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の総和を100質量%として、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、典型的には70~100質量%であってよい。
【0028】
上記プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、及びプロピレンとα‐オレフィン(例えば、エチレン、1‐ブテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、及び4‐メチル‐1‐ペンテンなど)の1種又は2種以上との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む)などのポリプロピレンをあげることができる。
【0029】
上記1‐ブテン系樹脂は1‐ブテンに由来する構成単位を主として含む樹脂である。上記1‐ブテン系樹脂中の1‐ブテンに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の総和を100質量%として、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、典型的には70~100質量%であってよい。
【0030】
上記1‐ブテン系樹脂としては、例えば、1‐ブテン単独重合体、及び1‐ブテンとα‐オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、及び4‐メチル‐1‐ペンテンなど)の1種又は2種以上との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む)などのポリ1‐ブテンをあげることができる。
【0031】
上記4‐メチル‐1‐ペンテン系樹脂は4‐メチル‐1‐ペンテンに由来する構成単位を主として含む樹脂である。上記4‐メチル‐1‐ペンテン系樹脂中の4‐メチル‐1‐ペンテンに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の総和を100質量%として、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、典型的には70~100質量%であってよい。
【0032】
上記4‐メチル‐1‐ペンテン樹脂としては、例えば、4‐メチル‐1‐ペンテン単独重合体、及び4‐メチル‐1‐ペンテンとα‐オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ヘキセン、及び1‐オクテンなど)の1種又は2種以上との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む)などのポリ4‐メチル‐1‐ペンテンをあげることができる。
【0033】
上記ポリオレフィン系樹脂のJIS K7210‐1:2014に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトマスフローレートは、製膜性の観点から、好ましくは0.1~20g/10分、より好ましくは0.5~10g/10分、更に好ましくは1~6g/10分であってよい。
【0034】
上記ポリオレフィン系樹脂のJIS K7210‐1:2014に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトマスフローレートは、製膜性の観点から、好ましくは0.1~30g/10分、より好ましくは0.5~15g/10分、更に好ましくは1~10g/10分であってよい。
【0035】
上記(A)ストレッチフィルムが単層フィルムである場合、上記(A)ストレッチフィルムの形成に用いる上記ポリオレフィン系樹脂は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性を付与する観点から、適宜選択すればよい。上記(A)ストレッチフィルムが単層フィルムである場合、上記(A)ストレッチフィルムの形成に用いる上記ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはエチレン系樹脂を含むものであってよく、より好ましくはエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むものであってよい。
【0036】
上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合、該多層フィルムの上記(B)塗膜が形成される側の表層の形成に用いる上記ポリオレフィン系樹脂は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性を付与する観点、及び保護フィルムが物品の表面形状に追随させてストレッチされる際に上記多層フィルムの各層間で剥離が生じないようにする観点から、適宜選択する。上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合、該多層フィルムの上記(B)塗膜が形成される側の表層の形成に用いる上記ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはエチレン系樹脂を主として含むものであってよく、より好ましくはエチレン・酢酸ビニル共重合体を主として含むものであってよい。上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合、該多層フィルムの上記(B)塗膜が形成される側の表層以外の層を形成する樹脂は、物品の表面形状に追随できるストレッチ性あるいは柔軟性を付与する観点、及び保護フィルムが物品の表面形状に追随させてストレッチされる際に上記多層フィルムの各層間で剥離が生じないようにする観点から、適宜選択する。上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合、該多層フィルムの上記(B)塗膜が形成される側の表層以外の層を形成する樹脂は、好ましくはポリオレフィン系樹脂を含むものであってよい。該ポリオレフィン系樹脂は好ましくはエチレン系樹脂を含むものであってよく、更に好ましくはエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むものであってよい。
【0037】
上記(A)ストレッチフィルムが単層フィルムである場合であって、上記(A)ストレッチフィルムの形成にエチレン系樹脂を含むものを用いる場合、あるいは上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合であって、該多層フィルムの上記(B)塗膜が形成される側の表層の形成にエチレン系樹脂を含むものを用いる場合、上記エチレン系樹脂を含むもの(エチレン系樹脂を含む樹脂混合物)中のエチレンに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の総和を100質量%として、上記(A)ストレッチフィルムのストレッチ性あるいは柔軟性の観点から、通常100質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、更に好ましくは94質量%以上であってよい。一方、上記(A)ストレッチフィルムの耐ブロッキング性の観点から、通常70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であってよい。
【0038】
上記エチレン系樹脂を含むもの(エチレン系樹脂を含む樹脂混合物)の融点は、保護フィルムの耐熱性の観点から、通常80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上であってよい。
【0039】
ここで融点は、JIS K7121:2012に従い、示差走査熱量計を使用し、190℃で5分間保持し、10℃/分で-10℃まで冷却し、-10℃で5分間保持し、10℃/分で190℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)に現れるピークの中で、最も高い温度側に現れるピークのピークトップ温度である。上記示差走査熱量計としては、例えば、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用することができる。
【0040】
上記(A)ストレッチフィルムが単層フィルムである場合であって、上記(A)ストレッチフィルムの形成にエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むものを用いる場合、あるいは上記(A)ストレッチフィルムが多層フィルムである場合であって、該多層フィルムの上記(B)塗膜が形成される側の表層の形成にエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むものを用いる場合、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むもの(エチレン・酢酸ビニル共重合体を含む樹脂混合物)中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量は、全構成単位の総和を100質量%として、上記(A)ストレッチフィルムのストレッチ性あるいは柔軟性の観点、及び上記(B)塗膜のストレッチ性の観点から、通常2質量%以上、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上であってよい。一方、上記(A)ストレッチフィルムの耐ブロッキング性の観点から、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であってよい。
【0041】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0042】
上記ポリオレフィン系樹脂を含むもの(ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂混合物)に含み得る、上記ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体、該ランダム共重合体の水素添加物、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、及びポリ酢酸ビニル系樹脂などをあげることができる。
【0043】
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体としては、例えば、スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)などをあげることができる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物としては、例えば、スチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物(HSBR)などをあげることができる。
【0044】
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体としては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、及びスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)などをあげることができる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、スチレン・エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレン共重合体(スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体の部分水素添加物:SBBS)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体の部分水素添加物、及びスチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレン共重合体の部分水素添加物などをあげることができる。
【0045】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの塩化ビニル系共重合体;後塩素化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニルや塩化ビニル系共重合体を改質(塩素化等)したものなどをあげることができる。
【0046】
ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル(酢酸ビニル単独重合体)、酢酸ビニル・エチレン共重合体(酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が、全構成単位の総和を100質量%として、50質量%以上の共重合体)、及び酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体などをあげることができる。
【0047】
上記(A)ストレッチフィルムの形成に用いる樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0048】
上記(A)ストレッチフィルムの形成に用いる樹脂は、本発明の目的に反しない限度において、任意成分を更に含むものであってよい。上記任意成分としては、例えば、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、スリップ剤、耐ブロッキング剤、無機粒子、有機粒子、顔料、及び染料などをあげることができる。上記任意成分の配合量は、通常10質量部程度以下、5質量部程度以下、0.01~10質量部程度、又は0.1~5質量部程度であってよい。
【0049】
上記(A)ストレッチフィルムを製膜する方法は、特に制限されず、公知のフィルム製膜方法を使用することができる。上記フィルム製膜方法としては、例えば、カレンダーロール圧延加工機、及び引巻取装置を備えるカレンダーロール圧延製膜装置を使用して製膜する方法;押出機、Tダイ、及び引巻取装置を備えるTダイ製膜装置を使用して製膜する方法;並びに、押出機、サーキュラーダイ、インフレーション装置、及びニップ機構を有する引巻取装置を備えるインフレーション製膜装置を使用して製膜する方法などをあげることができる。
【0050】
上記カレンダーロール圧延加工機としては、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、及びZ型ロールなどをあげることができる。上記押出機としては、例えば、一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機などをあげることができる。上記Tダイとしては、例えば、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイなどをあげることができる
【0051】
上記(A)ストレッチフィルムを製膜する方法としては、押出機、Tダイ、及びTダイから押出された溶融フィルムを冷却ロールと受けロールとでニップする機構を有する引巻取装置を備えるTダイ製膜装置を使用して製膜する方法が好ましい。上記冷却ロールとして、その表面が適切な粗さにシボ加工されたロール、典型的には梨地加工された金属ロール(梨地金属ロール)を使用することにより、上記(A)ストレッチフィルムの上記冷却ロールで押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)を制御することができる。上記受けロールとして、その表面が適切な粗さにシボ加工されたロール、典型的には梨地加工されたゴムロール(梨地ゴムロール)を使用することにより、上記(A)ストレッチフィルムの上記受けロールで押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)を制御することができる。
【0052】
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)は、上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜との密着性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であってよい。上記(B)塗膜にストレッチ性を発現させる観点から、更に好ましくは0.8μm以上、より更に好ましくは1μm以上、更に更に好ましくは2μm以上、最も好ましくは3μm以上であってよい。一方、上記(B)塗膜の面を平滑にする観点から、通常10μm以下、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下であってよい。
【0053】
ここで上記算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601:2013に準拠し、カットオフ値λcが0.80mm、評価長さLが4.0mmの条件で測定される値である。
【0054】
上記(A)ストレッチフィルムの厚みは、特に制限されず、保護フィルムの用途を勘案して適宜選択する。上記(A)ストレッチフィルムの厚みは、保護フィルムの取扱性の観点から、通常20μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であってよい。一方、保護フィルムを物品の表面形状に追随させてストレッチして貼合する際の作業性の観点から、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下であってよい。
【0055】
1‐2.(B)塗膜:
上記(B)塗膜は、上記(A)ストレッチフィルムの少なくとも一方の面の上に、通常は一方の面の上に形成される。上記(B)塗膜は、上記成分(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成される。そのため本発明の塗膜積層フィルムは製造する際の生産性が高い。上記(B)塗膜は、本発明の塗膜積層フィルムに耐擦傷性、撥水性、抗菌性、抗ウィルス性、反射防止性、及び赤外線遮蔽性などの機能を発現させる働きをする。
【0056】
上記(B)塗膜は、実施形態の1つにおいて、上記成分(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂;及び、(b2)光重合開始剤を含む塗料を用いて形成されるものであってよい。上記(B)塗膜は、好ましい実施形態の1つにおいて、上記成分(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂;上記成分(b2)光重合開始剤;及び、(b3)機能化剤を含む塗料を用いて形成されるものであってよい。以下、各成分について説明する。
【0057】
(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂:
上記成分(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、塗膜(硬化塗膜)を形成する働きをする。
【0058】
上記成分(a1)としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N-ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0059】
上記成分(b1)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0060】
(b2)光重合開始剤:
上記成分(b2)光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりラジカルなどの活性種を発生する化合物である。上記成分(b2)はラジカルなどの活性種を発生することにより、上記成分(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂を重合・硬化させ、塗膜を完全に硬化させる働きをする。
【0061】
上記成分(b2)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル‐o‐ベンゾイルベンゾエート、4‐メチルベンゾフェノン、4、4’‐ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o‐ベンゾイル安息香酸メチル、4‐フェニルベンゾフェノン、4‐ベンゾイル‐4’‐メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’‐テトラ(tert‐ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、及び2,4,6‐トリメチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びベンジルメチルケタールなどのベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及び2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オン等のアセトフェノン系化合物、α‐ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、並びにアセトフェノンジメチルアセタールなどのアルキルフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、及び2‐アミルアントラキノンなどのアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4‐ジエチルチオキサントン、及び2、4‐ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;ビイミダゾール化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;トリアジン系化合物;並びに、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。
【0062】
上記成分(b2)としては、塗膜を確実に完全硬化させる観点から、活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物が好ましい。
【0063】
上記成分(b2)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0064】
上記成分(b2)の配合量は、塗料のポットライフ、塗膜(硬化塗膜)の着色を抑制する観点、及び塗膜を確実に完全硬化させる観点から、適宜選択する。上記成分(b2)の配合量は、上記成分(b1)100質量部に対して、塗膜を確実に完全硬化させる観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であってよい。一方、塗料のポットライフ、塗膜(硬化塗膜)の着色を抑制する観点から、通常20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは6質量部以下であってよい。
【0065】
(a3)機能化剤:
上記(B)塗膜の形成用塗料は、更に上記成分(b3)機能化剤を含むものであってよい。上記成分(b3)機能化剤は、上記(B)塗膜に機能を付与する働きをする。
【0066】
上記成分(b3)機能化剤としては、例えば、(b3‐1)塗膜表面に存在することにより機能を発現させる有機化合物の機能化剤、(b3‐2)抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物の微粒子、(b3‐3)低屈折率微粒子、(b3‐4)高屈折率微粒子、及び(b3‐5)熱線遮蔽性微粒子などをあげることができる。
【0067】
上記成分(b3‐1)塗膜表面に存在することにより機能を発現させる有機化合物の機能化剤としては、例えば、撥水剤、撥油剤、帯電防止剤、汚染防止剤、防曇剤、防カビ剤、及び防虫剤などをあげることができる。
【0068】
上記成分(b3‐2)抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物の微粒子としては、例えば、銅化合物、銀化合物、錫化合物、モリブデン化合物、及び亜鉛化合物などの微粒子をあげることができる。上記銅化合物としては、例えば、塩化第一銅(CuCl)、臭化第一銅(CuBr)、及びヨウ化第一銅(CuI)等のハロゲン化第一銅、及びチオシアン酸第一銅(CuSCN)などの第一銅化合物;炭酸第二銅(CuCO)、酸化第二銅(CuO)、及び塩化第二銅(CuCl)などの第二銅化合物をあげることができる。上記銀化合物としては、例えば、ヨウ化第一銀(AgI)などハロゲン化銀化合物などをあげることができる。上記錫化合物としては、例えば、四ヨウ化錫(SnI)などのハロゲン化錫化合物などをあげることができる。上記モリブデン化合物としては、例えば、酸化モリブデン(MoO)、モリブデン・銀複合酸化物、モリブデン・亜鉛複合酸化物、及びモリブデン・銅複合酸化物などの酸化モリブデン化合物などをあげることができる。上記亜鉛化合物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)などの酸化亜鉛化合物などをあげることができる。
【0069】
上記成分(b3‐2)抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物の微粒子としてはその他に、例えば、硫酸アルミニウムカリウム、銀・ナトリウム・水素・リン酸ジルコニウム、銀・マグネシウム・アルミニウム・リン酸ガラス(アメリカ食品医薬品局のFCN登録番号433)、銀・マグネシウム・カルシウム・リン酸・硼酸ガラス(アメリカ食品医薬品局のFCN登録番号432)、銀・亜鉛・マグネシウム・アルミニウム・カルシウム・ナトリウム・硼酸・リン酸ガラス(アメリカ食品医薬品局のFCN登録番号476)、銀・マグネシウム・ナトリウム・リン酸ガラス(アメリカ食品医薬品局のFCN登録番号434)、銀・マグネシウム・亜鉛・アルミニウム・カルシウム・ナトリウム・硼酸・リン酸ガラス(アメリカ食品医薬品局のFCN登録番号1981)、銀ゼオライト(CAS番号0130328‐18‐6)、銀銅ゼオライト(CAS番号0130328‐19‐7)、銀亜鉛ゼオライト(CAS番号0130328‐20‐0)、及び銅錫合金などの微粒子をあげることができる。
【0070】
上記成分(b3‐2)抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物の微粒子の平均粒子径は、上記(B)塗膜を形成する際の生産性の観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下であってよい。上記成分(b3‐2)の平均粒子径は、上記(A)塗膜にすっきりとした透明感を付与したい場合には、通常300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下であってよい。一方、上記成分(a3‐2)の平均粒子径の下限は特にないが、上記抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物の微粒子を製造する際の生産性の観点から、通常1nm以上であってよい。
【0071】
本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計を使用して、レーザー回折・散乱法により測定される粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。上記レーザー回折・散乱式粒度分析計としては、例えば、日機装株式会社の「MT3200II(商品名)」などを使用することができる。
【0072】
上記成分(b3‐3)低屈折率微粒子としては、例えば、シリカ、フッ化マグネシウム、弗素樹脂、及びシリコーン樹脂などの低屈折率材料の微粒子(中実微粒子)、並びに中空微粒子などをあげることができる。
【0073】
上記成分(b3‐3)低屈折率微粒子の平均粒子径は、低屈折率層の厚み、及び低屈折率微粒子を製造する際の生産性を勘案して適宜決定する。上記成分(b3‐3)の平均粒子径は、通常1~150nm、好ましくは5~100nm、より好ましくは10~80nm、更に好ましくは15~60nmであってよい。平均粒子径の定義、及び測定法については上述した。
【0074】
上記成分(b3‐4)高屈折率微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、及び酸化アルミニウムなどの金属酸化物;及び、これらの金属酸化物にアンチモン、及び錫などの異種元素をドープした複合酸化物などの微粒子をあげることができる。
【0075】
上記成分(b3‐4)高屈折率微粒子の平均粒子径は、透明性を保持する観点、及び高屈折率微粒子を製造する際の生産性を勘案して適宜決定する。上記成分(b3‐4)の平均粒子径は、通常1~300nm、好ましくは5~200nm、より好ましくは10~150nm、更に好ましくは15~100nmであってよい。平均粒子径の定義、及び測定法については上述した。
【0076】
上記成分(b3‐5)熱線遮蔽性微粒子としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、セシウムドープ酸化タングステン、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、及びニオブドープ酸化チタンなどの微粒子をあげることができる。
【0077】
上記成分(b3‐5)熱線遮蔽性微粒子の平均粒子径は、透明性を保持する観点、及び熱線遮蔽性微粒子を製造する際の生産性を勘案して適宜決定する。上記成分(b3‐5)の平均粒子径は、通常1~300nm、好ましくは5~200nm、より好ましくは10~150nm、更に好ましくは15~100nmであってよい。平均粒子径の定義、及び測定法については上述した。
【0078】
上記成分(b3)機能化剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0079】
上記成分(b3)の配合量は、機能化剤の種類を勘案し、機能を確実に発現させる観点、及び機能化剤の配合量が過剰なことに起因するトラブルを抑制する観点から適宜選択する。
【0080】
上記成分(b3)機能化剤として上記成分(b3‐1)塗膜表面に存在することにより機能を発現させる有機化合物の機能化剤を用いる場合、上記成分(b3‐1)の配合量は、上記成分(b1)100質量部に対して、機能を確実に発現させる観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であってよい。一方、上記成分(b3‐1)の配合量は、ブリードアウトを抑制する観点から、通常10質量部以下、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下であってよい。
【0081】
上記成分(b3)機能化剤として上記成分(b3‐2)抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物の微粒子を用いる場合、上記成分(b3‐2)の配合量は、上記成分(b1)100質量部に対して、抗菌性又は抗ウィルス性を確実に発現させる観点から、通常1質量部以上、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であってよい。一方、上記成分(b3‐2)の配合量は、塗料の塗工性、及び塗膜の透明性を保持する観点から、通常100質量部以下、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下であってよい。
【0082】
上記成分(b3)機能化剤として上記成分(b3‐3)低屈折率微粒子を用い、上記(B)塗膜を低屈折率層として機能させようとする場合、上記成分(b3‐3)の配合量は、上記成分(b1)100質量部に対して、通常10~200質量部、好ましくは20~100質量部、より好ましくは30~80質量部であってよい。ここで上記低屈折率層の屈折率は通常1.2~1.5、好ましくは1.25~1.45、より好ましくは1.28~1.4であってよい。
【0083】
本明細書において、上記(B)塗膜の屈折率は、JIS K7142:2008のA法に従い、アッベ屈折率計を使用し、ナトリウムD線(波長589.3nm)、接触液は1‐ブロモナフタレン、サンプルのサンプル作成時に二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム側であった面がプリズムに接する表面、サンプルのバーコーター操作方向が試験片の長さ方向となる条件で測定される値である。サンプルには、上記(B)塗膜の形成に用いる塗料を、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの面の上に、硬化後厚みが2μmとなるように、バーコーターを使用して塗布し、乾燥・硬化して得た塗膜を、該二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムから剥離して用いる。
【0084】
上記成分(b3)機能化剤として上記成分(b3‐4)高屈折率微粒子を用い、上記(B)塗膜を高屈折率層として機能させようとする場合、上記成分(b3‐4)の配合量は、上記成分(b1)100質量部に対して、通常10~300質量部、好ましくは30~200質量部、より好ましくは45~150質量部、更に好ましくは60~120質量部であってよい。ここで上記高屈折率層の屈折率は通常1.55~2.0、好ましくは1.6~1.9、より好ましくは1.65~1.8であってよい。屈折率の定義、及び測定法については上述した。
【0085】
上記成分(b3)機能化剤として上記成分(b3‐5)熱線遮蔽性微粒子を用い、上記(B)塗膜を熱線遮蔽層として機能させようとする場合、上記成分(b3‐5)の配合量は、上記成分(b1)100質量部に対して、通常10~300質量部、好ましくは30~200質量部、より好ましくは45~150質量部、更に好ましくは60~120質量部であってよい。ここで上記熱線遮蔽層を有する塗膜積層フィルムの遮蔽係数は、通常0.9以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下であってよい。
【0086】
本明細書において、上記(B)塗膜の遮蔽係数は、JIS A5759:2016の6.5遮蔽係数及び日射熱取得率の算出に従い、試験片(上記JIS規格に従い、規定のガラス板と塗膜積層フィルムとを積層したもの)の上記熱線遮蔽層側の面を光源に向ける条件で日射透過率、日射反射率を測定し、試験片のガラス面を室内側表面、試験片の上記熱線遮蔽層側の面を室外側表面として、垂直放射率を測定し、修正放射率を算出した後、上記JIS規格の式(4)により算出する。
【0087】
上記(B)塗膜の形成用塗料は、本発明の目的に反しない限度において、上記成分(b1)~(b3)以外の任意成分を更に含むものであってよい。上記任意成分としては、例えば、シランカップリング剤、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、チクソ性付与剤、印刷性改良剤、分散剤(例えば、ポリアミン構造を有する高分子量共重合体のリン酸エステル塩などのアミン系分散剤)、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、無機粒子、有機粒子、顔料、及び染料などをあげることができる。上記任意成分としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記任意成分の配合量は、上記成分(a1)100質量部に対して、通常10質量部以下、5質量部以下、0.01~5質量部、又は0.01~10質量部程度であってよい。
【0088】
上記(B)塗膜の形成用塗料は、ウェット塗膜を形成する際の生産性の観点から、更に、溶剤を含むものであってよい。上記溶剤としては、上記成分(b1)~(b3)、及び上記任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、1‐エトキシ‐2‐プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0089】
上記(B)塗膜の形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0090】
上記(B)塗膜は、上記(A)ストレッチフィルムの少なくとも一方の面の上に、通常は片面の上に、上記(B)塗膜の形成用塗料を直接塗布してウェット塗膜を形成し、予備乾燥した後、活性エネルギー線を照射して硬化することにより形成される。即ち、上記(B)塗膜は上記(A)ストレッチフィルムの面の上に直接形成されている。
【0091】
ここで「上記(B)塗膜は上記(A)ストレッチフィルムの面の上に直接形成されている」とは、上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜との間にアンカーコートなどの別の層が介在していないことを意味するものであって、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面をコロナ放電処理やプラズマ処理することを排除する意図はない。
【0092】
上記(A)ストレッチフィルムの面の上に、上記(B)塗膜の形成用塗料を直接塗布してウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知の塗布方法を使用することができる。上記塗布方法としては、ロール・トゥ・ロールの方法で生産性良く塗料を塗布する観点から、例えば、ロッドコート、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、キスリバースコート、及びダイコートなどの方法が好ましい。
【0093】
上記予備乾燥の方法は、特に制限されず、公知の乾燥方法を使用することができる。上記予備乾燥の方法としては、例えば、ウェブを通常は温度23~150℃程度、好ましくは温度40~100℃、より好ましくは50~80℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5~10分程度、好ましくは1~5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
【0094】
活性エネルギー線の照射量は、塗膜を完全硬化させるのに必要十分な照射量とする観点から、塗料の特性を勘案して適宜決定する。上記活性エネルギー線の照射量は、通常10~10000mJ/cm程度、好ましくは200~2000mJ/cm、より好ましくは300~700mJ/cmであってよい。
【0095】
上記(B)塗膜の厚みは、上記(A)ストレッチフィルムとの密着性の観点、及び耐擦傷性の観点から適宜決定する。上記(B)塗膜の厚みは、上記(A)ストレッチフィルムとの密着性の観点から、通常16μm以下である。上記(B)塗膜の厚みは、上記(A)ストレッチフィルムとの密着性の観点から、好ましくは12μm以下、より好ましくは9.5μm以下、更に好ましくは7μm以下であってよい。上記(B)塗膜の厚みは、上記(B)塗膜にストレッチ性を発現させる観点から、より更に好ましくは5.5μm以下、最も好ましくは4μm以下であってよい。一方、上記(B)塗膜の厚みは、耐擦傷性の観点から、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上であってよい。
【0096】
上記(B)塗膜の厚みを設計厚みに制御する方法としては、上述した通り、以下の方法が好ましい。先ず、事前に予備実験、典型的には表面の平滑なフィルム基材、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの面の上に上記(B)塗膜の形成用塗料を用いて塗膜を形成して該塗料の塗工条件と該塗膜の厚み(硬化後の厚み)との関係式を求める。次に、本発明の塗膜積層フィルムを生産する際、該関係式に基づいて上記(B)塗膜の厚みを設計厚みに制御する。
【0097】
本発明の塗膜積層フィルムは、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき通常下記式(1)を満たす。好ましくは下記式(1‐2)を満たすもの、より好ましくは下記式(1‐3)を満たすもの、更に好ましくは下記式(2)を満たすものであってよい。
b≦3a+5.5 ・・・(1)
b≦3a+5 ・・・(1‐2)
b≦3a+4.5 ・・・(1‐3)
b≦3a+4 ・・・(2)
【0098】
ここで上記算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601:2013に準拠し、カットオフ値λcが0.80mm、評価長さLが4.0mmの条件で測定される値である。
【0099】
本発明の塗膜積層フィルムは、上記(B)塗膜が上記(A)ストレッチフィルムの面の上に直接形成されているにも係らず、更には上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面がポリオレフィン系樹脂で形成されていても、上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とが良好な密着性を発現するものであるが、このような塗膜積層フィルムは、通常、上記(B)塗膜の厚みが16μm以下であり、かつ上記式(1)を満たしている。
【0100】
本発明の好ましい塗膜積層フィルムは、上記(B)塗膜が活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成されるにも係らず、上記(B)塗膜がストレッチ性を発現するものになる。ここで塗膜がストレッチ性を有するとは、塗膜積層フィルムから、そのマシン方向が引張方向となるように採取した幅10mm、長さ150mmの短冊形の試験片を用いること以外はJIS K7161‐2:2014に従い、温度23±2℃、相対湿度50±10%の環境下において、標線間距離50mm、チャック間距離50mm、及び引張速度50mm/分の条件で塗膜積層フィルムの引張試験をしたとき、塗膜表面の艶/光沢が部分的に又は全体的に変化する(技術的に塗膜割れが生じたと推測される)ときの引張ひずみが通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であることを意味する。
【0101】
理論に拘束される意図はないが、上記(B)塗膜が、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成されるにも係らず、ストレッチ性を発現する理由を以下のように考察している。活性エネルギー線の照射により、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を構成する樹脂中に二重結合が生成する。例えば、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を構成する樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合体である場合には、酢酸ビニルに由来する構成単位から酢酸が脱離し、二重結合が生成する。そして、該二重結合は、活性エネルギー線硬化性樹脂の有する重合サイト(アクリロイル基、メタクリロイル基など)と架橋する。その結果、上記(B)塗膜は、上記(A)ストレッチフィルムと多数の化学結合により架橋され、補強されることになる。更に、本発明の塗膜積層フィルムは、元々上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とが良好な密着性を発現している。そのため、上記(B)塗膜は、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料を用いて形成される塗膜であるにも係らず、ストレッチ性を発現するようになる。
【0102】
また上記(B)塗膜と上記(A)ストレッチフィルムとの間に多数の架橋点が形成されることから、上記(A)ストレッチフィルムの面の上に上記(B)塗膜を形成する際に、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を易接着処理する必要がない。
【0103】
1‐3.(C)粘着剤層:
本発明の塗膜積層保護フィルムは、実施形態の1つにおいて、上記(B)塗膜、上記(A)ストレッチフィルム、及び上記(C)粘着剤層をこの順に有するものであってよい。上記(C)粘着剤層を設けることにより、物品の表面(保護フィルム貼合面)の材質や表面状態(表面の平滑性など)によらず、貼合することができるようになる。
【0104】
上記(C)粘着剤層の形成に用いる粘着剤は、特に制限されず、保護フィルムを貼合する物品の表面の材質、保護フィルムを貼合する目的を勘案して適宜決定する。上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤などをあげることができる。上記粘着剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0105】
上記粘着剤には、本発明の目的に反しない限度において、粘着剤の樹脂成分以外の任意成分を、所望に応じて、更に含ませることができる。上記任意成分としては、例えば、光重合開始剤、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、顔料、染料、無機粒子、及び有機粒子などの添加剤をあげることができる。上記任意成分の配合量は、粘着剤の樹脂成分を100質量部として、通常100質量部以下、50質量部以下、0.01~100質量部、又は0.01~50質量部程度であってよい。
【0106】
上記(C)粘着剤層の形成に用いる粘着剤は、ウェット塗膜を形成する際の生産性の観点から、更に、溶剤を含むものであってよい。上記溶剤としては、粘着剤の樹脂成分、及び上記任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1‐メトキシ‐2‐プロパノール、1‐エトキシ‐2‐プロパノール、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0107】
上記(C)粘着剤層の形成に用いる粘着剤は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
【0108】
上記(C)粘着剤層は、上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面とは反対側の面の上に、直接又はアンカーことを介して、上記(C)粘着剤層の形成に用いる粘着剤を塗布してウェット塗膜を形成し、乾燥することにより形成される。あるいは任意のフィルム基材の面の上に、上記(C)粘着剤層の形成に用いる粘着剤を塗布してウェット塗膜を形成し、乾燥することにより粘着剤層を形成した後、これを上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面とは反対側の面の上に転写してもよい。
【0109】
上記(C)粘着剤層の形成に用いる粘着剤のウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知の塗布方法を使用することができる。上記塗布方法としては、ロール・トゥ・ロールの方法で生産性良く粘着剤を塗布する観点から、例えば、ロッドコート、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、キスリバースコート、及びダイコートなどの方法が好ましい。
【0110】
上記乾燥の方法は、特に制限されず、公知の乾燥方法を使用することができる。上記乾燥の方法としては、例えば、ウェブを通常は温度23~150℃程度、好ましくは温度40~100℃、より好ましくは50~80℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5~10分程度、好ましくは1~5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
【0111】
上記(C)粘着剤層の厚みは、特に制限されず、保護フィルムを貼合する物品の材質及び表面状態(表面の平滑性など)、並びに保護フィルムを貼合する目的を勘案して適宜選択する。上記(C)粘着剤層の厚みは、粘着強度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上であってよい。一方、上記(C)粘着剤層を形成する際の生産性の観点から、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下であってよい。
【0112】
図1は本発明の塗膜積層フィルムの一例を示す断面の概念図である。(B)塗膜1、(A)ストレッチフィルムの(B)塗膜1形成面を形成する層2、(A)ストレッチフィルムの中間層3、(A)ストレッチフィルムの(C)粘着剤層5形成面を形成する層4、及び(C)粘着剤層5を有している。(A)ストレッチフィルムの(B)塗膜1形成面を形成する層2と(A)ストレッチフィルムの(C)粘着剤層5形成面を形成する層4はエチレン・酢酸ビニル共重合体のバージン材を用いて形成され、(A)ストレッチフィルムの中間層3はエチレン・酢酸ビニル共重合体のバージン材とフィルムの耳(製膜時に発生する幅方向両端部の厚さが設定範囲外の部分)などのリサイクル材との混合物を用いて形成されている。
【実施例0113】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0114】
測定方法
(イ)碁盤目試験1(塗膜密着性):
JIS K5600‐5‐6:1999に従い、塗膜積層フィルムの塗膜面側から碁盤目の切れ込みを25マス(1マス=2mm×2mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。本発明の塗膜積層フィルムの塗膜密着性は、好ましくは分類2、分類1、又は分類0であってよく、より好ましくは分類1又は分類0であってよく、更に好ましくは分類0であってよい。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
【0115】
(ロ)碁盤目試験2(湿熱処理後の塗膜密着性):
塗膜積層フィルムを温度60℃、相対湿度90%の環境下で50時間処理した後、上記試験(イ)碁盤目試験1と同様に試験した。
【0116】
(ハ)塗膜伸び:
塗膜積層フィルムから、そのマシン方向が引張方向となるように採取した幅10mm、長さ150mmの短冊形の試験片を用いたこと以外はJIS K7161‐2:2014に従い、温度23±2℃、相対湿度50±10%の環境下において、標線間距離50mm、チャック間距離50mm、及び引張速度50mm/分の条件で塗膜積層フィルムの引張試験をしたとき、塗膜表面の艶/光沢が部分的に又は全体的に変化する(技術的に塗膜割れが生じたと推測される)ときの引張ひずみ(単位:%)を塗膜伸びとして測定した。なお引張ひずみ50%までに塗膜表面の艶/光沢が変化しなかったときは、塗膜伸び50%超と判定し、表には「>50」と記載した。また引張ひずみ2%未満で塗膜表面の艶/光沢が変化したときは「<2」と記載した。
【0117】
(ニ)耐薬品性1:
アセトン20mlに対し、株式会社パイロットの赤色インキ「パイロットインキレッド(商品名)」を10滴の割合で混合し試験液とした。塗膜積層フィルムから50mm×50mmの大きさの試験片を採取し、該試験片の塗膜面の上に、スポイトを使用して、上記試験液5滴を滴下し、時計皿を被せた。温度23±2℃、相対湿度50±10%の環境下で24時間静置した後、上記試験片を、水を染み込ませた紙ワイパーで水拭きし、更に乾いた紙ワイパーで乾拭きし、上記試験片の表面に付着した上記試験液を取除いた。
その後、上記試験片の上記試験液滴下箇所、及びその周辺を矯正視力1.0の者が肉眼で又はルーペ(10倍)を使用して目視観察し、以下の基準で評価した。
A:ルーペを使用しても、クラック、変形は認められなかった。上記塗膜積層フィルムの上記試験液に接触した箇所と接触していない箇所とで、色調に差は認められなかった。
B:ルーペを使用しても、クラック、変形は認められなかった。しかし、上記塗膜積層フィルムの上記試験液に接触した箇所と接触していない箇所とで、色調に差があった(接触箇所は、非接触箇所と比較して赤みがあった。)。
C:肉眼ではクラック、変形は認められなかった。しかし、ルーペを使用すると、クラック、変形が認められた。
D:肉眼でもクラック、変形が認められた。
【0118】
(ホ)耐薬品性2:
アセトンの替わりに2‐プロパノールを用いたこと以外は、上記試験(ニ)耐薬品性1と同様に試験し、評価した。
【0119】
(へ)水接触角(撥水性):
KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の容量を8μLとしたこと以外はJIS R3257:1999の6.静滴法(水滴の幅と高さとから算出する方法)に従い、保護フィルムの塗膜面の水接触角(単位:度)を測定した。
【0120】
使用した原材料
(a)ストレッチフィルムの原材料:
(a‐1)三井・ダウポリケミカル株式会社のエチレン酢酸ビニル共重合体「エバフレックスV5711(商品名)」、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量10質量%、メルトフローレート(190℃、21.18N)3g/10分、融点95℃。
(a‐2)日本ポリエチレン株式会社のエチレン・α‐オレフィン共重合体「カーネル KF283(商品名)」、密度921Kg/m、メルトマスフローレート(190℃、21.18N)2.5g/10分、融点124℃(ピークトップ温度107℃、118℃、及び124℃の3本のピークを有する)。
(a‐3)三井・ダウポリケミカル株式会社のエチレン・メタクリル酸共重合体「ニュクレルN0903HC(商品名)」、メルトマスフローレート(190℃、21.18N)3g/10分、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量9質量%(エチレンに由来する構成単位の含有量91質量%)、融点98℃。
(a‐4)日本ポリエチレン株式会社のエチレン・アクリル酸エチル共重合体「レクスパール A3100(商品名)」、メルトマスフローレート(190℃、21.18N)3g/10分、アクリル酸エチルに由来する構成単位の含有量10質量%(エチレンに由来する構成単位の含有量90質量%)、融点100℃。
(a‐5)東ソー株式会社のエチレン・酢酸ビニル共重合体「ウルトラセン515(商品名)」、メルトマスフローレート2.5g/10分、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量6質量%(エチレンに由来する構成単位の含有量94質量%)、融点100℃。
【0121】
(A)ストレッチフィルム:
(A‐1)上記樹脂(a‐1)を用い、図2に概念図を示す製膜装置(押出機6、Tダイ7、及び冷却ロール9と受けロール10とでニップする機構を有する引巻取り装置を備える製膜装置)を使用し、上記樹脂を溶融フィルム8として、Tダイ7から連続的に押出した。このとき冷却ロール9としては、ロール表面の算術平均粗さ(Ra)が3.8μmの梨地金属ロールを使用し、受けロール10としては、ロール表面の算術平均粗さ(Ra)が1.4μmのシボゴムロールを使用した。ロール表面の算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601:2013に準拠し、カットオフ値λcが0.80mm、評価長さLが4.0mmの条件で測定した値である。次に、押し出された溶融フィルム8を、回転する冷却ロール9と、回転する受けロール10との間に、供給投入し、冷却ロール9と受けロール10とで押圧した。続いて、押圧された溶融フィルム8を、冷却ロール9に抱かせて、次の回転ロール11へと送り出し、厚み120μmのフィルム12(ストレッチフィルム(A‐1))を製膜した。このときTダイ出口樹脂温度210℃、冷却ロール9の表面温度25℃、受けロール10に流した冷却水の温度16℃、及び引巻取り速度15m/分であった。得られたストレッチフィルム(A‐1)の冷却ロール9で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は3.52μm、受けロール10で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は1.23μmであった。
【0122】
(A‐2)製膜装置の冷却ロール9として、ロール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.55μmの梨地金属ロールを使用したこと以外は上記ストレッチフィルム(A‐1)と同様にして厚み120μmのストレッチフィルム(A‐2)を製膜した。得られたストレッチフィルム(A‐2)の冷却ロール9で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は0.45μm、受けロール10で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は1.24μmであった。
【0123】
(A‐3)製膜装置の冷却ロール9として、ロール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.55μmの梨地金属ロールを使用したこと、及び上記樹脂(a‐1)の替わりに上記樹脂(a‐2)を用いたこと以外は、上記ストレッチフィルム(A‐1)と同様にして厚み120μmのストレッチフィルム(A‐3)を製膜した。得られたストレッチフィルム(A‐3)の冷却ロール9で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は0.28μm、受けロール10で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は1.03μmであった。
【0124】
(A‐4)製膜装置の冷却ロール9として、ロール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.55μmの梨地金属ロールを使用したこと、及び上記樹脂(a‐1)の替わりに上記樹脂(a‐3)を用いたこと以外は、上記ストレッチフィルム(A‐1)と同様にして厚み120μmのストレッチフィルム(A‐4)を製膜した。得られたストレッチフィルム(A‐4)の冷却ロール9で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は0.52μm、受けロール10で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は1.33μmであった。
【0125】
(A‐5)製膜装置の冷却ロール9として、ロール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.55μmの梨地金属ロールを使用したこと、及び上記樹脂(a‐1)の替わりに上記樹脂(a‐4)を用いたこと以外は、上記ストレッチフィルム(A‐1)と同様にして厚み120μmのストレッチフィルム(A‐5)を製膜した。得られたストレッチフィルム(A‐5)の冷却ロール9で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は0.41μm、受けロール10で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は1.22μmであった。
【0126】
(A‐6)製膜装置の冷却ロール9として、ロール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.55μmの梨地金属ロールを使用したこと、及び上記樹脂(a‐1)の替わりに上記樹脂(a‐5)を用いたこと以外は、上記ストレッチフィルム(A‐1)と同様にして厚み120μmのストレッチフィルム(A‐6)を製膜した。得られたストレッチフィルム(A‐6)の冷却ロール9で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は0.39μm、受けロール10で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)は1.21μmであった。
【0127】
上記ストレッチフィルム(A‐1)~(A‐6)について、ストレッチフィルムのマシン方向が引張方向となるように採取した幅15mm、長さ150mmの短冊形の試験片を用いること以外はJIS K7161‐2:2014に従い、温度23±2℃、相対湿度50±10%の環境下において、標線間距離50mm、チャック間距離50mm、及び引張速度200mm/分の条件で引張試験を行い、5%ひずみ引張応力、10%ひずみ引張応力、25%ひずみ引張応力、引張破壊応力、及び引張破壊ひずみを測定した。結果を表1に示す。表1中「冷却ロール側(Ra)」は、ストレッチフィルムの冷却ロール9で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)を意味する。「受けロール側(Ra)」は、ストレッチフィルムの受けロール10で押圧された側の面の算術平均粗さ(Ra)を意味する。
【0128】
【表1】
【0129】
(b)塗膜形成用塗料に用いた原材料:
(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂:
(b1‐1)荒川化学工業株式会社のエポキシアクリレート系多官能(メタ)アクリレートの溶剤希釈液「ビームセット371(商品名)」、1分子中の(メタ)アクリロイル基の数6個、酸価0.32KOHmg/g、エポキシ当量65Kg/eq、固形分(上記エポキシアクリレート系多官能(メタ)アクリレートの含有量)65質量%。
(b1‐2)日本化薬株式会社のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
(b1‐3)大阪有機化学工業株式会社の「SIRIUS‐501(商品名)」、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと4官能チオールとの所謂デンドリマー構造を有する共重合体の溶剤希釈液、硫黄含有量2.2質量%、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、テトラヒドロフランを移動相として測定した微分分子量分布曲線から求めたポリスチレン換算の数平均分子量940、質量平均分子量12000、Z平均分子量73000、固形分(上記共重合体の含有量)50質量%。
(b1‐4)根上工業株式会社の多官能ウレタン(メタ)アクリレートの溶剤希釈液「アートレジンUN‐953(商品名)」、官能基数20、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、テトラヒドロフランを移動相として測定した微分分子量分布曲線から求めたポリスチレン換算の数平均分子量2000、質量平均分子量26000、Z平均分子量110000、固形分(上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量)40質量%。
【0130】
(b2)光重合開始剤:
(b2‐1)IGM Resins社のアセトフェノン系光重合開始剤(1‐ヒドロキシシクロヘキシル‐フェニルケトン)「Omnirad 184(商品名)」。
(b2‐2)IGM Resins社のアセトフェノン系光重合開始剤(2‐ヒロドキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐プロピオニル)‐ベンジル]フェニル}‐2‐メチル‐プロパン‐1‐オン)「Omnirad 127(商品名)」。
【0131】
(b3)機能化剤:
(b3‐1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤の溶剤希釈液「KY‐1203(商品名)」、固形分(上記撥水剤の含有量)20質量%。
(a3‐2)株式会社NBCメッシュテックの抗ウィルス剤(ヨウ化第一銅微粒子のエタノール懸濁液)、ヨウ化第一銅微粒子の平均粒子径(レーザー回折・散乱法により測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径)120nm、固形分(上記ヨウ化第一銅微粒子の含有量)11質量%。
【0132】
(b4)その他:
(b4‐1)ビッグケミー・ジャパン株式会社のアミン系分散剤「DISPER BYK‐145(商品名)」。
【0133】
(b5)溶剤:
(b5‐1)メチルイソブチルケトン。
(b5‐2)2‐メトキシエタノール。
(b5‐3)1‐メトキシ‐2‐プロパノール。
(b5‐4)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
(b5‐5)酢酸エチル。
【0134】
(B)塗膜形成用塗料
(B‐1)上記成分(b1‐1)154質量部(固形分換算100質量部)、上記成分(b2‐1)3質量部、上記成分(b2‐2)1質量部、上記成分(b3‐1)1質量部(固形分換算0.2質量部)、上記成分(b5‐1)180質量部、及び上記成分(b5‐2)80質量部を混合攪拌し、塗膜形成用塗料(B‐1)を得た。
【0135】
(B‐2)~(B‐5):
表2に示すように配合を変更したこと以外は、上記塗料(B‐1)と同様にして塗料(B‐2)~(B‐5)を得た。
【0136】
なお溶剤(上記成分(b5‐1)~(b5‐5))以外の成分は、表2に固形分換算の値を記載した。
【0137】
【表2】
【0138】
例1
上記ストレッチフィルム(A‐1)の冷却ロール9で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は3.52μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表3に示す。
【0139】
例2~15
上記(B)塗膜の形成用塗料として、適宜上記塗料(B‐1)の替わりに表3に示す塗料を用いたこと、及び硬化後の塗膜厚みが表3に示す厚みとなるように適宜塗布量を変更したこと以外は、例1と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表3に示す。
【0140】
例16
上記ストレッチフィルム(A‐2)の受けロール10で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は1.24μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表3に示す。
【0141】
例17~29
上記(B)塗膜の形成用塗料として、適宜上記塗料(B‐1)の替わりに表3又は表4に示す塗料を用いたこと、及び硬化後の塗膜厚みが表3又は表4に示す厚みとなるように適宜塗布量を変更したこと以外は、例16と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表3又は表4に示す。
【0142】
例30
上記ストレッチフィルム(A‐2)の冷却ロール9で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は0.45μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表4に示す
【0143】
例31~43
上記(B)塗膜の形成用塗料として、適宜上記塗料(B‐1)の替わりに表4に示す塗料を用いたこと、及び硬化後の塗膜厚みが表4に示す厚みとなるように適宜塗布量を変更したこと以外は、例30と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表4に示す。
【0144】
例44
上記ストレッチフィルム(A‐3)の受けロール10で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は1.03μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表4に示す。
【0145】
例44~57
上記(B)塗膜の形成用塗料として、適宜上記塗料(B‐1)の替わりに表4又は表5に示す塗料を用いたこと、及び硬化後の塗膜厚みが表4又は表5に示す厚みとなるように適宜塗布量を変更したこと以外は、例44と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表4又は表5に示す。
【0146】
例58
上記ストレッチフィルム(A‐3)の冷却ロール9で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は0.28μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表5に示す。
【0147】
例59~71
上記(B)塗膜の形成用塗料として、適宜上記塗料(B‐1)の替わりに表5に示す塗料を用いたこと、及び硬化後の塗膜厚みが表5に示す厚みとなるように適宜塗布量を変更したこと以外は、例58と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表5に示す。
【0148】
例72
上記ストレッチフィルム(A‐4)の受けロール10で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は1.33μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表5に示す。
【0149】
例73~85
上記(B)塗膜の形成用塗料として、適宜上記塗料(B‐1)の替わりに表6に示す塗料を用いたこと、及び硬化後の塗膜厚みが表6に示す厚みとなるように適宜塗布量を変更したこと以外は、例72と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表6に示す。
【0150】
例86
上記ストレッチフィルム(A‐4)の冷却ロール9で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は0.52μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表6に示す。
【0151】
例87~99
上記(B)塗膜の形成用塗料として、適宜上記塗料(B‐1)の替わりに表6又は表7に示す塗料を用いたこと、及び硬化後の塗膜厚みが表6又は表7に示す厚みとなるように適宜塗布量を変更したこと以外は、例86と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表6又は表7に示す。
【0152】
例100
上記ストレッチフィルム(A‐5)の受けロール10で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は1.22μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0153】
例101
硬化後の塗膜厚み5μmとなるように塗布量を変更したこと以外は、例100と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0154】
例102
上記ストレッチフィルム(A‐5)の冷却ロール9で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は0.41μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0155】
例103
硬化後の塗膜厚み5μmとなるように塗布量を変更したこと以外は、例102と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0156】
例104
上記ストレッチフィルム(A‐6)の受けロール10で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は1.21μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0157】
例105
硬化後の塗膜厚み5μmとなるように塗布量を変更したこと以外は、例104と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0158】
例106
上記ストレッチフィルム(A‐6)の冷却ロール9で押圧された側の面(算術平均粗さ(Ra)は0.39μm)の上に、フィルムメイヤーバー方式の塗工装置(ロッドとしてメイヤーバーを使用するロッドコート)を使用し、上記塗料(B‐1)を、硬化後の塗膜厚みが2.5μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥した後、紫外線を照射して硬化塗膜を形成して塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0159】
例107
硬化後の塗膜厚み5μmとなるように塗布量を変更したこと以外は、例106と同様にして塗膜積層フィルムを得た。上記試験(イ)~(へ)を行った。結果を表7に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
本発明の塗膜積層フィルムは、フィルム基材としてのポリオレフィン系樹脂からなるストレッチフィルムの面の上に塗膜が直接形成されているにも係らず、塗膜とフィルム基材との密着性に優れることが分かった。従って、本発明の塗膜積層フィルムは、上記(B)塗膜が上記(A)ストレッチフィルムの面の上に直接形成されていても、更には上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面がポリオレフィン系樹脂で形成されていても、上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とが良好な密着性を発現すると考察した。また本発明の好ましい塗膜積層フィルムの塗膜はストレッチ性を発現することが分かった。従って、本発明の好ましい塗膜積層フィルムは、物品の表面形状に追随させてストレッチしても塗膜の割れは生じ難いと考察した。更に本発明の塗膜積層フィルムは、実施形態の1つにおいて、耐薬品性や撥水性を付与できることが分かった。
【0166】
(C)粘着剤:
(C‐1)トーヨーケム株式会社のアクリル系粘着剤「オリバインBPS5296(商品名)」270質量部(固形分換算100質量部)、トーヨーケム株式会社のイソシアネート系硬化剤「オリバインBXX4773(商品名)」2.7質量部(固形分換算1.0質量部)、シプロ化成株式会社のベンゾフェノン系紫外線吸収剤(2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン)「SEESOR B106(商品名)」1.5質量部、及び酢酸エチル80質量部を混合攪拌し、粘着剤層形成用塗料(C‐1)を得た。
【0167】
例108
例12で得た塗膜積層フィルムの上記ストレッチフィルム(A‐1)の上記(B)塗膜形成面とは反対側の面の上に、ロールコーターを使用し、上記粘着剤層形成用塗料(C‐1)を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥して粘着剤層を形成し、粘着剤層付きの塗膜積層フィルムを得た。次に、得られた粘着剤層付きの塗膜積層フィルムを、電車切符自動販売機の点字の上に粘着剤層を利用して貼合した。続いて、該電車切符自動販売機の点字を読み取れるか(触覚で判別できるか)を確認したところ、何ら問題なく点字を読み取ることができた。また目視で塗膜の艶/光沢の変化が生じていないこと、即ち、塗膜に割れは生じていないと推測されることを確認した。
【0168】
従って、本発明の好ましい塗膜積層フィルムは、三次元形状/立体的形状の表面を有する物品の表面保護にも好適に用いることができると考察した。
【0169】
本発明の塗膜積層フィルムは、フィルム基材としてのポリオレフィン系樹脂からなるストレッチフィルムの面の上に塗膜が直接形成されていても、特に直鎖状低密度ポリエチレンからなるストレッチフィルムの面の上に塗膜が直接形成されていても、塗膜とフィルム基材との密着性に優れるのであるから、ストレッチフィルムとして塗膜形成面を形成する樹脂がポリオレフィン系樹脂を含むもの以外のストレッチフィルムを用いたとしても、塗膜とフィルム基材との密着性に優れるものになることを、当業者は容易に理解するであろう。
【0170】
本発明の諸態様は、更に以下の通りのものであってよい。
[1].
塗膜積層フィルムであって、
(A)ストレッチフィルムの少なくとも一方の面の上に(B)塗膜を有し;
上記(A)ストレッチフィルムと上記(B)塗膜とは直接積層されており;
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂はポリオレフィン系樹脂を含み;
上記(B)塗膜は(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂を含む(b)塗料を用いて形成され;
碁盤目試験を、JIS K5600‐5‐6:1999に従い、塗膜積層フィルムの塗膜面側から碁盤目の切れ込みを25マス(1マス=2mm×2mm)入れて行ったとき、分類2、分類1、又は分類0である;
上記塗膜積層フィルム。
[2].
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がエチレン系樹脂を含む[1]項に記載の塗膜積層フィルム。
[3].
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面を形成する樹脂がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む[1]項又は[2]項に記載の塗膜積層フィルム。
[4].
上記(B)塗膜の厚みが16μm以下である[1]~[3]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[5].
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上である[1]~[4]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[6].
上記(B)塗膜の厚みが0.5~9.5μmであり;
上記(A)ストレッチフィルムの上記(B)塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)をa(単位はμm)、上記(B)塗膜の厚みをb(単位はμm)としたとき下記式(2)を満たす:
b≦3a+4 ・・・(2)
[1]~[5]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[7].
上記(b)塗料が、上記(b1)活性エネルギー線硬化性樹脂 100質量部、(b2)光重合開始剤 0.1~20質量部、及び、抗菌剤又は抗ウィルス剤として機能する無機化合物 1~100質量部を含む[1]~[6]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[8].
物品の表面の保護用である[1]~[7]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルム。
[9].
[1]~[8]項の何れか1項に記載の塗膜積層フィルムを物品の表面の保護に使用する方法。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1】本発明の塗膜積層フィルムの一例を示す断面の概念図である。
図2】実施例で使用した製膜装置の概念図である。
図3】上記(B)塗膜の形成に上記塗料(B‐5)を用いた場合における、上記(A)ストレッチフィルムの塗膜形成面の算術平均粗さ(Ra)、上記(B)塗膜厚みと両者の密着性との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0172】
1:(B)塗膜
2:(A)ストレッチフィルムの(B)塗膜1形成面を構成する層
3:(A)ストレッチフィルムの中間層
4:(A)ストレッチフィルムの(C)粘着剤層5形成面を構成する層
5:(C)粘着剤層
6:押出機
7:Tダイ
8:溶融フィルム
9:冷却ロール
10:受けロール
11:回転ロール
12:フィルム

図1
図2
図3