(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100446
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】Sn又はSn合金によるめっき後の処理方法
(51)【国際特許分類】
C25D 5/48 20060101AFI20220629BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20220629BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20220629BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20220629BHJP
C23G 1/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C25D5/48
C25D17/00 L
C25D17/06 J
C25D17/08 Z
C25D17/06 C
C23G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214408
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】幡部 賢
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 章央
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴大
【テーマコード(参考)】
4K024
4K053
【Fターム(参考)】
4K024AA07
4K024AB01
4K024BB11
4K024CA01
4K024CA03
4K024CA04
4K024CA06
4K024DB09
4K024DB10
4K024GA16
4K053PA01
4K053QA07
4K053RA07
4K053RA45
4K053RA55
4K053RA62
4K053RA64
4K053RA66
4K053SA04
4K053SA06
4K053TA16
4K053TA18
4K053TA19
4K053ZA10
(57)【要約】
【課題】Sn又はSn合金めっき後に、基板、搬送治具等に析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを防止するための処理方法を提供すること。
【解決手段】Sn又はSn合金によるめっき後の処理方法で、該めっきの直後に、酸及び/又はその塩を含有するpHが5以下の酸性溶液で、一連のめっき処理に用いられる部材の少なくとも1つを洗浄することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn又はSn合金によるめっき後の処理方法であって、
前記めっきの直後に、酸及び/又はその塩を含有するpHが5以下の酸性溶液で、一連のめっき処理に用いられる部材の少なくとも1つを洗浄することを特徴とする、処理方法。
【請求項2】
前記部材が、基板及びその搬送治具であり、
前記搬送治具に前記基板が固定されたままの状態で、前記酸性溶液での洗浄を行う、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記酸及び/又はその塩が、1種以上の有機酸及び/又はその塩である、請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記酸性溶液における前記酸及び/又はその塩の含有量が、8g/L~700g/Lである、請求項1~3のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項5】
前記酸性溶液が、錯化剤及び/又はキレート剤を1種以上含有している、請求項1~4のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項6】
前記酸性溶液が、非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤を1種以上含有している、請求項1~5のいずれか1つに記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sn又はSn合金によるめっき後の処理方法に関する。特に本発明は、Sn又はSn合金めっき後に、例えばウェハ等の基板やプリント基板、これら基板の搬送治具等の一連のめっき処理に用いられる部材に析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを防止するための、該部材に対する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板への各種金属めっき及び合金めっき後には、水又は温水を用いて基板上に付着しためっき液及び汚染物の洗浄を行う。
【0003】
しかしながら、Sn及びSn合金めっき後には、前記のごとき一般的な洗浄では除去できないSn及びSn合金の化合物汚れが蓄積し、めっき装置及び搬送治具へのめっき伸びが発生したり、基板上の化合物汚れ自体が問題となる。したがって、めっき処理に用いられる部材を頻繁に交換したり、特殊な洗浄方法によって汚れを除去することが必要となるため、作業効率が低下し、コスト面でも大きな負担となる。
【0004】
そこで、従来より、改良しためっき装置を用い、めっき後の汚れを洗浄して除去する方法が各種提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ロードステージ、向き合わせステージ、めっきステージ、回収ステージ、及び洗浄ステージを備えた自動ウェハめっき装置が記載されており、該めっき装置を用い、ロードステージから洗浄ステージへと順に搬送され、搬送途中のめっきステージでめっきが施されたウェハを、最終ステージである洗浄ステージにて洗浄する方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、底面に開口部が設けられためっき槽と、被処理基板の裏面を支持し、該開口部を該被処理基板で塞ぐように移動自在である基板ホルダーとを有するフェイスアップ方式のめっき装置が記載されており、該めっき装置にて表面がめっき処理された被処理基板の裏面を支持するホルダーから、該被処理基板を移動させる過程で、該被処理基板の裏面に洗浄液を噴射する洗浄方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3583883号公報
【特許文献2】特開2006-009051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の方法では、最終ステージである洗浄ステージにおいて、一般的な洗浄液、すなわち水又は温水が使用されていることが予想され、このような洗浄ステージをSn又はSn合金めっき処理に適用した場合、1次洗浄のみでは不充分であり、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積して、将来的にはめっき装置、搬送治具等へのめっき伸びが発生する恐れがある。したがって、このような恐れをなくすには、搬送治具等を頻繁に交換したり、特殊な洗浄方法を採用しなければならない。
【0009】
特許文献2に記載の洗浄方法では、ウェハ等の被処理基板自体は洗浄され得るものの、該被処理基板の搬送冶具等の洗浄は不充分となり、将来的には搬送治具等へのめっき伸びが発生する恐れがある。したがって、このような恐れをなくすには、やはり、搬送治具等を頻繁に交換したり、特殊な洗浄方法を採用しなければならない。
【0010】
本発明は、前記のごとき従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、Sn又はSn合金めっき後に、特にウェハ等の基板、搬送治具等に析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを、容易にかつ効果的に防止するための処理方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、Sn又はSn合金によるめっきの直後に、基板、搬送治具等を特定の酸性溶液で洗浄することにより、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを容易にかつ効果的に防止することが可能であることを見出して、本発明を完成した。
【0012】
具体的に、本発明のSn又はSn合金によるめっき後の処理方法は、該めっきの直後に、酸及び/又はその塩を含有するpHが5以下の酸性溶液で、一連のめっき処理に用いられる部材の少なくとも1つを洗浄することを特徴とする。
【0013】
本発明の処理方法では、Sn又はSn合金によるめっきの直後に、該Sn又はSn合金の化合物汚れが析出している部材を、酸及び/又はその塩を含有しており、pHが5以下の特定範囲である酸性溶液で洗浄する。後述するとおり、本発明の処理方法においては、前記めっき後に、通常の水又は温水での洗浄や乾燥を行うことができるが、該水又は温水での洗浄や乾燥を行う場合であっても、前記酸性溶液での洗浄は、該水又は温水での洗浄や乾燥を行う前、すなわち、前記めっきの直後に行う。このように、本発明の処理方法では、めっき、次いで酸性溶液での洗浄、及び、必要に応じて水又は温水での洗浄や乾燥を順に行うので、従来の水又は温水といった一般洗浄液を用いただけの洗浄方法や、特定の被めっき処理部材のみを対象とした洗浄方法とは異なり、一連のめっき処理に用いられる各種部材に対して、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを容易にかつ効果的に防止することができる。
【0014】
本発明の処理方法において、前記部材が基板及びその搬送治具である場合、該搬送治具に該基板が固定されたままの状態で、前記酸性溶液での洗浄を行うことが好ましい。このように、搬送治具に基板が固定されたままの状態で酸性溶液での洗浄を行うことにより、従来は煩雑及び/又は不充分であった搬送治具の洗浄を、容易かつ充分に行うことができる。
【0015】
本発明の処理方法において、前記酸性溶液に含有される酸及び/又はその塩は、1種以上の有機酸及び/又はその塩であることが好ましい。有機酸及び/又はその塩を含有する酸性溶液で前記部材の洗浄を行うことにより、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのをより効果的に防止することができる。
【0016】
本発明の処理方法において、前記酸性溶液における酸及び/又はその塩の含有量は、8g/L~700g/Lであることが好ましい。酸及び/又はその塩の含有量を該範囲に調整した酸性溶液で前記部材の洗浄を行うことにより、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのをより効果的に防止することができる。
【0017】
本発明の処理方法において、前記酸性溶液は、錯化剤及び/又はキレート剤を1種類以上含有していることが好ましい。錯化剤及び/又はキレート剤をさらに含有する酸性溶液で前記部材の洗浄を行うことにより、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのをより効果的に防止することができる。
【0018】
本発明の処理方法において、前記酸性溶液は、非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤を1種類以上含有していることが好ましい。非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤をさらに含有する酸性溶液で前記部材の洗浄を行うことにより、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのをより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の処理方法によれば、Sn又はSn合金めっき後に、例えばウェハ等の基板やプリント基板、これら基板の搬送治具等の一連のめっき処理に用いられる部材に析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを、容易にかつ効果的に防止することができる。したがって、本発明の処理方法によれば、従来のように、めっき処理に用いられる部材を頻繁に交換したり、特殊な洗浄方法によって汚れを除去する必要がなく、作業効率の低下やコスト面での負担増大を充分に阻止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法、又はその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
本発明のSn又はSn合金によるめっき後の処理方法では、該めっきの直後に、特定の酸性溶液で、一連のめっき処理に用いられる部材の少なくとも1つを洗浄する。
【0022】
本発明の処理方法に用いる特定の酸性溶液は、酸及び/又はその塩を含有するpHが5以下のものである。このような特定の酸性溶液を用い、めっきの直後に洗浄を行うことにより、従来の水又は温水での洗浄では不可能であった、析出したSn又はSn合金の化合物汚れの蓄積に対する容易かつ効果的な防止が実現され得る。
【0023】
前記酸性溶液が含有する前記酸としては、特に限定がないが、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-プロパノールスルホン酸、スルホコハク酸、p-フェノールスルホン酸等の有機スルホン酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、グリオキシル酸等のカルボン酸といった有機酸;硫酸、塩酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、スルファミン酸、硝酸等の無機酸;及びこれらの塩が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を同時に用いることができる。これらの中でも、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのをより効果的に防止することができるという点から、前記酸性溶液に含有される酸及び/又はその塩は、1種以上の有機酸及び/又はその塩であることが好ましい。
【0024】
前記酸性溶液のpHは5以下、好ましくは2以下であり、該酸性溶液は、pHが1以下の強酸の溶液であることがより好ましい。該酸性溶液のpHが前記上限値を上回ると、水又は温水との差異がなく、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを効果的に防止することができない。
【0025】
前記酸性溶液における酸及び/又はその塩の含有量は、好ましくは8g/L~700g/L、さらに好ましくは10g/L~650g/Lである。該酸及び/又はその塩の含有量が前記下限値を下回ると、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを効果的に防止することができない恐れがある。該酸及び/又はその塩の含有量が前記上限値を上回ると、溶解度を超えて再結晶が発生し、新たな汚れとして堆積する可能性や、酸濃度が高くなり過ぎてめっき被膜にダメージを与える恐れがある。
【0026】
前記酸性溶液は、錯化剤及び/又はキレート剤を1種以上含有していることが好ましい。前記酸及び/又はその塩と共に、錯化剤及び/又はキレート剤を含有する酸性溶液で前記部材の洗浄を行うことにより、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのをより効果的に防止することができる。
【0027】
前記錯化剤としては、例えば、グルコン酸、グリシン、クエン酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、コハク酸、マロン酸、酒石酸、シュウ酸、エリソルビン酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、ピロリン酸、及びこれらの塩が挙げられる。
【0028】
前記キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸(PDTA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸(DPTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(DHEG)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)、及びこれらの塩が挙げられる。
【0029】
前記酸性溶液における錯化剤及び/又はキレート剤の含有量は、好ましくは1g/L~30g/L、さらに好ましくは2g/L~25g/Lである。該錯化剤及び/又はキレート剤の含有量が前記下限値を下回ると、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを防止する効果を充分に向上させることができない恐れがある。該錯化剤及び/又はキレート剤の含有量が前記上限値を上回ると、溶解度を超えて再結晶が発生し、新たな汚れとして堆積する恐れがある。
【0030】
前記酸性溶液は、非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤を1種以上含有していることが好ましい。前記酸及び/又はその塩と共に、非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤を含有する酸性溶液で前記部材の洗浄を行うことにより、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのをより効果的に防止することができる。
【0031】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、C1~C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1~C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1~C25アルキルナフトール、C1~C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1~C22脂肪族アミド等にエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させたもの等が挙げられる。
【0032】
前記イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、及び、モノ~トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤が挙げられる。
【0033】
前記酸性溶液における非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは1g/L~30g/L、さらに好ましくは2g/L~25g/Lである。該非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤の含有量が前記下限値を下回ると、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを防止する効果を充分に向上させることができない恐れがある。該非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤の含有量が前記上限値を上回ると、多量の非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤が、後の洗浄工程後も部材上に堆積した状態になってしまい、その後の工程に悪影響を与える恐れがある。
【0034】
本発明の処理方法に用いる特定の酸性溶液は、前記酸及び/又はその塩、並びに、前記錯化剤及び/又はキレート剤や前記非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤の他にも、必要に応じて、例えば、平滑剤、防腐剤、消泡剤、防カビ剤等のその他の各種添加剤等を含有していてもよい。
【0035】
前記酸性溶液の調製方法には特に限定がなく、例えば、前記酸及び/又はその塩、並びに、必要に応じて前記錯化剤及び/又はキレート剤、前記非イオン性界面活性剤又はイオン性界面活性剤、その他の各種添加剤等を適宜選択し、酸性溶液のpHが前記範囲となるように、酸性溶液における各々の含有量を例えば前記範囲内に調整して、蒸留水等に溶解させればよい。
【0036】
本発明の処理方法において、前記酸性溶液での洗浄の対象となる前記部材は、Sn又はSn合金による一連のめっき処理に用いられる部材であればよく、特に限定がないが、例えばウェハ等の基板やプリント基板、これら基板の搬送治具、これら基板の接点部や接点部を保護するための非導電性の部材等の、Sn又はSn合金の化合物汚れが析出し、蓄積する恐れのある部材である。特に、搬送治具は、析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積し易く、従来の方法では該蓄積を防止することができなかったが、本発明の処理方法によれば、容易にかつ効果的に防止することができる。
【0037】
本発明の処理方法において、前記部材が、例えばウェハ等の基板やプリント基板及びこれら基板の搬送治具である場合、搬送治具に基板が固定されたままの状態で、前記酸性溶液での洗浄を行うことが好ましい。このように搬送治具に基板が固定されたままの状態で洗浄を行うことにより、搬送治具及び基板の双方に析出したSn又はSn合金の化合物汚れを、同時にかつ容易に除去することができ、特に析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積し易い搬送治具においても、該蓄積の効果的な防止が可能となる。
【0038】
前記部材を前記酸性溶液で洗浄する方法には特に限定がなく、例えば、部材を20℃~60℃程度の酸性溶液に0.5分間~3分間程度浸漬させる方法や、スプレー方式で前記酸性溶液を部材に噴霧する方法、シャワー方式で前記酸性溶液に部材を接触させる方法等を採用することができる。
【0039】
本発明の処理方法においては、Sn又はSn合金によるめっきの直後に、酸性溶液で部材を洗浄するが、前記のとおり、該酸性溶液での洗浄の後に、水又は温水での洗浄や乾燥を行ってもよい。
【0040】
前記水又は温水での洗浄の条件及び方法には特に限定がなく、例えば、部材を20℃~35℃程度の水又は35℃~60℃程度の温水に、0.5分間~3分間程度浸漬する方法や、前記酸性溶液での洗浄と同様に、スプレー方式で噴霧する方法やシャワー方式で接触させる方法を採用することができる。
【0041】
前記乾燥の条件及び方法には特に限定がなく、例えば、冷風や温風、圧縮空気等を用い、部材を20℃~150℃程度で乾燥する方法を採用することができる。
【0042】
本発明において、Sn又はSn合金による一連のめっき処理の工程には特に限定がなく、通常のめっき処理の工程を採用することができる。めっきに用いるSnめっき浴は、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-プロパノールスルホン酸、スルホコハク酸、p-フェノールスルホン酸等の有機スルホン酸のスズ塩といった可溶性スズ塩と、酸やその塩、及び、例えば酸化防止剤、安定剤、錯化剤、界面活性剤、光沢剤、平滑剤、pH調整剤、導電性塩、防腐剤等の各種添加剤とを必要に応じて含有したものであればよい。めっきに用いるSn合金めっき浴は、前記Snめっき浴に、さらに、可溶性銀塩、可溶性銅塩、可溶性ビスマス塩、可溶性インジウム塩等の可溶性金属塩を含有させたものであればよい。また、めっきは、電気めっきで行っても、無電解めっきで行ってもよく、各々のめっき条件にも特に限定がない。
【実施例0043】
以下に、本発明のSn又はSn合金によるめっき後の処理方法を詳細に説明するための実施例と、比較例とを示す。
【0044】
<参考例>
(1)参考例1:Snめっき
下記組成で電気Snめっき浴を建浴した。また、めっき条件も併せて示す。
[めっき浴組成]
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として):60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):150g/L
1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール:2g/L
3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオール:2g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO13モル):10g/L
カテコール:5g/L
[めっき条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:1.0A/dm2
めっき時間:約1800秒
【0045】
(2)参考例2:Sn-Ag合金めっき
下記組成で電気Sn-Ag合金めっき浴を建浴した。また、めっき条件も併せて示す。
[めっき浴組成]
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として):60g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として):0.8g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):150g/L
1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール:2g/L
3,6-ジチアオクタン-1,8-ジオール:2g/L
ビスフェノールAポリエトキシレート(EO13モル):10g/L
カテコール:5g/L
[めっき条件]
浴温:30℃
陰極電流密度:1.0A/dm2
めっき時間:約1800秒
【0046】
<実施例及び比較例>
(1)実施例1
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(25℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0047】
(2)実施例2
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
グルコン酸:5g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0048】
(3)実施例3
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
グリシン:10g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0049】
(4)実施例4
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
クエン酸:20g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0050】
(5)実施例5
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
EDTA:8g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0051】
(6)実施例6
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:250g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0052】
(7)実施例7
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:500g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0053】
(8)実施例8
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
グルコン酸ナトリウム:10g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0054】
(9)実施例9
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
リンゴ酸ナトリウム:10g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0055】
(10)実施例10
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
NTA:10g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0056】
(11)実施例11
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例2)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0057】
(12)実施例12
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:600g/L
ポリビニルピロリドン:20g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例2)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0058】
(13)実施例13
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:10g/L
ポリエチレングリコール(平均分子量1000):20g/L
EDTA:20g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例2)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0059】
(14)実施例14
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
硫酸:100g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0060】
(15)実施例15
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
硫酸:100g/L
EDTA:20g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0061】
(16)実施例16
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
アルキルジメチルアミノプロピルアミド:10g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0062】
(17)実施例17
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
塩化ベンザルコニウム:5g/L
グルコン酸:10g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0063】
(18)実施例18
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程7を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸ナトリウム:100g/L
メタンスルホン酸:5g/L
グルコン酸:10g/L
pH:3.5
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程5:温水での洗浄(50℃、0.5分間浸漬)
工程6:乾燥(60℃、0.5分間)
工程7:搬送治具からのウェハの取り外し
【0064】
(19)比較例1
下記工程1~工程6を30回繰り返した。
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:水での洗浄(25℃、1分間浸漬)
工程5:乾燥(60℃、1分間)
工程6:搬送治具からのウェハの取り外し
【0065】
(20)比較例2
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程8を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:水での洗浄(25℃、0.5分間浸漬)
工程5:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程6:水での洗浄(25℃、0.5分間浸漬)
工程7:乾燥(60℃、0.5分間)
工程8:搬送治具からのウェハの取り外し
【0066】
(21)比較例3
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程9を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例1)
工程4:水での洗浄(25℃、0.5分間浸漬)
工程5:乾燥(60℃、0.5分間)
工程6:搬送治具からのウェハの取り外し
工程7:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程8:水での洗浄(25℃、0.5分間浸漬)
工程9:乾燥(60℃、0.5分間)
【0067】
(22)比較例4
下記組成で酸性溶液を調製した。次いで、下記工程1~工程8を30回繰り返した。
[酸性溶液組成]
メタンスルホン酸:100g/L
pH:1以下
[工程]
工程1:搬送治具上へのウェハの固定
工程2:水での洗浄(室温20~30℃、0.5分間浸漬)
工程3:めっき(参考例2)
工程4:水での洗浄(25℃、0.5分間浸漬)
工程5:酸性溶液での洗浄(50℃、1分間浸漬)
工程6:水での洗浄(25℃、0.5分間浸漬)
工程7:乾燥(60℃、0.5分間)
工程8:搬送治具からのウェハの取り外し
【0068】
<試験例>
実施例1~18及び比較例1~4において各工程を終えた搬送治具について、その表面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、50K倍、S-4800、(株)日立ハイテク製)にて観察し、観察面積を4×5マスに分割したのち、Sn又はSn合金の化合物汚れによる搬送治具表面の被覆度を[(汚れ粒子付着マス数/全マス数)×100(%)]として求め、該化合物汚れの蓄積の防止について評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
表1に示すとおり、実施例1~18では、本発明の処理方法に従って、Sn又はSn合金によるめっきの直後に、酸を含有する酸性溶液でウェハ及び搬送治具を洗浄しており、該めっき及び酸性溶液での洗浄を30回繰り返した後であっても、Sn又はSn合金の化合物汚れによる搬送治具表面の被覆度は、0%~30%と低く、該化合物汚れの蓄積は充分に防止されていた。
【0071】
一方、比較例1~4では、酸性溶液での洗浄を行っていなかったり(比較例1)、酸性溶液での洗浄を、Sn又はSn合金によるめっきの直後ではなく、水での洗浄の直後(比較例2、4)や、水での洗浄及び乾燥の後(比較例3)に行っており、搬送治具表面の全面にSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積していた。
【0072】
有機酸のみを含有する酸性溶液での洗浄を行った実施例1と同様に、有機酸に加えて錯化剤及び/又はキレート剤を含有する酸性溶液での洗浄を行った実施例2~5、8~10、及び18でも、Snの化合物汚れによる搬送治具表面の被覆度は、0%~30%と低く、該化合物汚れの蓄積は充分に防止されていた。
【0073】
有機酸のみを含有する酸性溶液での洗浄を行った実施例1と比較して、有機酸に加えて界面活性剤を含有する酸性溶液での洗浄を行った実施例16、並びに有機酸に加えて錯化剤及び界面活性剤を含有する酸性溶液での洗浄を行った実施例17では、Snの化合物汚れによる搬送治具表面の被覆度は0%であり、該化合物汚れの蓄積は完全に防止されていた。
【0074】
実施例11~13のように、Sn-Ag合金によるめっきを行った場合であっても、該めっきの直後の、有機酸のみを含有する酸性溶液(実施例11)、有機酸に加えて界面活性剤を含有する酸性溶液(実施例12)、又は有機酸に加えて錯化剤及び界面活性剤を含有する酸性溶液(実施例13)での洗浄により、Sn-Ag合金の化合物汚れによる搬送治具表面の被覆度は、5%~30%と低く、該化合物汚れの蓄積は充分に防止されていた。
【0075】
実施例14~15のように、めっきの直後に、無機酸のみを含有する酸性溶液(実施例14)又は無機酸に加えて錯化剤を含有する酸性溶液(実施例15)での洗浄を行った場合であっても、Snの化合物汚れによる搬送治具表面の被覆度は、5%~30%と低く、該化合物汚れの蓄積は充分に防止されていた。
本発明のSn又はSn合金によるめっき後の処理方法によれば、基板、搬送治具等に析出したSn又はSn合金の化合物汚れが蓄積するのを、容易にかつ効果的に防止することができる。したがって、本発明の処理方法は、Sn又はSn合金による一連のめっき処理の工程において好適に用いられ得る。