(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100451
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】フィルム型電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20220629BHJP
H01M 50/572 20210101ALI20220629BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220629BHJP
H01M 50/183 20210101ALI20220629BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220629BHJP
【FI】
H01M2/12 101
H01M2/34 B
H01M2/30 B
H01M2/08 K
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214426
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 悟史
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011FF04
5H011GG09
5H011HH02
5H011JJ04
5H012AA03
5H012BB11
5H012CC01
5H012DD05
5H012DD17
5H012EE01
5H012FF01
5H012GG01
5H012JJ10
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM03
5H029BJ04
5H029DJ03
5H029DJ14
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA04
5H043BA19
5H043CA08
5H043DA02
5H043DA15
5H043DA16
5H043GA28
5H043HA11D
5H043HA23D
5H043JA04D
5H043JA09D
5H043JA13D
5H043JA15D
5H043JA21D
5H043JA22D
5H043KA07D
5H043KA08D
5H043LA21D
5H043LA22D
(57)【要約】
【課題】フィルム外装体の内圧が所定値まで上昇したときに、安定的にフィルム外装体を開裂させて内圧を開放することができるフィルム型電池を提供する。
【解決手段】 本発明により、フィルム外装体10と、フィルム外装体10の内部に収容された電極体20と、一端がフィルム外装体10の外部に延出された板状の端子32と、フィルム外装体10の少なくとも端子32が延出された側の縁部に設けられたシール部18と、端子32に一体化され、シール部18においてフィルム外装体10に溶着されたシーラントフィルム40と、を備えたフィルム型電池100が提供される。シーラントフィルム40は、シール部18の端子32が延出された方向の幅が他の部分よりも狭くなるように形成された切欠部42を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム外装体と、
前記フィルム外装体の内部に収容され、電極を有する電極体と、
一端が前記電極に電気的に接続され、他端が前記フィルム外装体の外部に延出された板状の端子と、
前記フィルム外装体の少なくとも前記端子が延出された側の縁部に設けられたシール部と、
前記端子の前記フィルム外装体と対向する側の面に一体化され、前記シール部において前記フィルム外装体に溶着されたシーラントフィルムと、
を備え、
前記シーラントフィルムは、前記シール部の前記端子が延出された方向の幅が他の部分よりも狭くなるように形成された切欠部を有する、
フィルム型電池。
【請求項2】
前記電極は、電極集電体を有し、
前記端子は、前記電極集電体と同種の第1の金属と、前記第1の金属とは異なる第2の金属と、が接合されたクラッド材で構成され、
前記シーラントフィルムは、前記第1の金属と前記第2の金属との接合部を覆うように配置されている、
請求項1に記載のフィルム型電池。
【請求項3】
前記端子は、銅または銅合金と、前記銅または前記銅合金とは異なる金属と、が接合されたクラッド材で構成され、
前記銅または前記銅合金の部分の表面にニッケルメッキ層が設けられている、
請求項1または2に記載のフィルム型電池。
【請求項4】
前記切欠部は、前記シール部の内縁から外縁に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている、
請求項1から3のいずれか1つに記載のフィルム型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム状の外装部材(以下、フィルム外装体という。)に電極体を収容したフィルム型電池が知られている。フィルム型電池に関連する従来技術文献として、特許文献1~3が挙げられる。このようなフィルム型電池を構築する際には、例えば、一対の樹脂フィルムの間に電極体を挟み込んだ状態で、対向する樹脂フィルムの周縁をシールし、フィルム外装体を袋状とする。
【0003】
特許文献1には、樹脂フィルムの周縁に形成されたシール部に、その他の部分よりもシ-ル幅が狭くなるように切欠状の部分を設けることが開示されている。特許文献1のフィルム型電池では、内部短絡等でフィルム型電池の内圧が上昇した場合に、切欠状の部分に内圧が集中し、当該部分のシールが剥離する。これにより、フィルム外装体が開裂して内圧が開放され、破裂が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-93483号公報
【特許文献2】特開2016-4731号公報
【特許文献3】特開2015-103291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、フィルム外装体の開裂する内圧が、樹脂フィルムのシール幅で制御される。しかしながら、本発明者の検討によれば、例えば加熱された状態のヒートバーを用いて樹脂フィルムをシールする場合、押圧面の周囲も加熱されて一緒にシールされやすい。このため、切欠状の部分を狙いのシール幅に制御することが難しい。したがって、切欠状の部分のシール幅が安定せずに、フィルム外装体の開裂する内圧がバラツキを大きく含んでしまうことがあった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム外装体の内圧が所定値まで上昇したときに、安定的にフィルム外装体を開裂させて内圧を開放することができるフィルム型電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、フィルム外装体と、上記フィルム外装体の内部に収容され、電極を有する電極体と、一端が上記電極に電気的に接続され、他端が上記フィルム外装体の外部に延出された板状の端子と、上記フィルム外装体の少なくとも上記端子が延出された側の縁部に設けられたシール部と、上記端子の上記フィルム外装体と対向する側の面に一体化され、上記シール部において上記フィルム外装体に溶着されたシーラントフィルムと、を備えたフィルム型電池が提供される。上記シーラントフィルムは、上記シール部の上記端子が延出された方向の幅が他の部分よりも狭くなるように形成された切欠部を有する。
【0008】
シーラントフィルムに切欠部を設けることで、例えば特許文献1のように樹脂フィルム同士のシール部に切欠状の部分を設ける場合に比べて、切欠部のシール幅が安定する。したがって、フィルム外装体の内圧が所定値まで上昇したときに、切欠部を起点として、安定的にフィルム外装体を開裂させて内圧を開放することができる。
【0009】
ここに開示されるフィルム型電池の好適な一態様では、上記電極は、電極集電体を有し、上記端子は、上記電極集電体と同種の第1の金属と、上記第1の金属とは異なる第2の金属と、が接合されたクラッド材で構成され、上記シーラントフィルムは、上記第1の金属と上記第2の金属との接合部を覆うように配置されている。クラッド材では、第1の金属と第2の金属とが接合され、原子間結合されている。このようなクラッド材を用いることにより、抵抗を低減して、電池性能を向上することができる。また、シーラントフィルムで接合部を覆うことにより、接合部(接合界面)が外気や電解液に曝されることを好適に防止することができる。したがって、端子が腐食(例えば電解腐食)されにくくなり、耐久性を向上することができる。
【0010】
ここに開示されるフィルム型電池の好適な一態様では、上記端子は、銅または銅合金と、上記銅または上記銅合金とは異なる金属と、が接合されたクラッド材で構成され、上記銅または上記銅合金の部分の表面にニッケルメッキ層が設けられている。これにより、銅の溶出を抑えことができる。また、シーラントフィルムとの接着性が高まり、シーラントフィルムが端子の表面から剥離しにくくなる。したがって、密閉性や耐久性を向上することができる。
【0011】
ここに開示されるフィルム型電池の好適な一態様では、上記切欠部は、上記シール部の内縁から外縁に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。これにより、フィルム外装体の内圧が所定値まで上昇したときに、緩やかにフィルム外装体を開裂させて内圧を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係るフィルム型電池を模式的に示す一部破断の平面図である。
【
図3】変形例に係るフィルム型電池を模式的に示す
図1対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しつつ、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄(例えば、電池モジュールの一般的な構成や構築プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0014】
なお、本明細書において「フィルム型電池」とは、フィルム(シート)状の外装部材の内部に電極体を収容した構成の電池全般をいう。また、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0015】
<フィルム型電池100>
図1は、フィルム型電池100を模式的に示す一部破断の平面図である。
図2は、
図1のII-II線断面図である。フィルム型電池100は、フィルム外装体10と、電極体20と、正極端子32と、負極端子34と、電解液(図示せず)と、を備える。フィルム型電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。正極端子32および負極端子34は、端子の一例である。なお、以下の説明において、図面中の符号X、Y、Zは、フィルム型電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、厚み方向を、それぞれ表すものとする。長辺方向は、正極端子32および負極端子34が延出された方向の一例である。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、フィルム型電池100の配置形態を何ら限定するものではない。
【0016】
フィルム外装体10は、電極体20と電解液とを収容する容器である。フィルム外装体10は、絶縁性と使用する電解液に対する耐性とを有する。フィルム外装体10は、ここでは熱溶着を可能にするために、少なくとも内側の面(電極体20と対向する側の面)が樹脂層で構成されている。フィルム外装体10は、1層の樹脂層からなる単層構造であってもよいし、2層以上の樹脂層を有する多層構造であってもよい。樹脂層は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されている。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)や、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸ポリエステル等の酸変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が挙げられる。また、樹脂層の間には、2つの樹脂層を相互に接着するための接着層を備えていてもよい。
【0017】
フィルム外装体10は、ここでは、所謂、ラミネートフィルムである。ラミネートフィルムは、例えば従来公知のラミネート型電池に用いられるようなものと同様でよく、特に限定されない。
図2に示すように、フィルム外装体10は、電極体20に近い側から、第1の樹脂層12と、金属層14と、第2の樹脂層16と、がこの順に積層されて構成されている。
【0018】
第1の樹脂層12は、熱溶着を可能にするための層(シーラント層)である。第1の樹脂層12は、例えば、上記したような熱可塑性樹脂で構成されている。第1の樹脂層12は、PP層であることが好ましい。金属層14は、気密性を高めるための層である。金属層14は、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料で構成されている。金属層14は、アルミニウム層であることが好ましい。第2の樹脂層16は、耐久性および耐衝撃性を高めるための層(保護層)である。第2の樹脂層16は、例えば、上記したような熱可塑性樹脂で構成されている。第2の樹脂層16は、PET層であることが好ましい。第2の樹脂層16は、表層(ラミネートフィルムの最外層)を構成していてもよい。第1の樹脂層12またはと金属層14との間には、2つの層を相互に接着するための接着層を備えていてもよい。また、第2の樹脂層16の上には、さらに他の層を備えていてもよい。
【0019】
フィルム外装体10は、ここでは2枚の矩形状のフィルムを重ね合わせ、周縁をシールすることにより、袋状に形成されている。
図1に二点鎖線で示すように、フィルム外装体10の周縁には、シール部18が形成されている。シール部18により、電極体20と電解液とがフィルム外装体10の内部に液密に封止されている。
【0020】
シール部18は、ここではフィルム外装体10の短辺方向Xの両端部および長辺方向Yの両端部に、それぞれ帯状に形成されている。図示は省略するが、短辺方向Xの両端部では、対向するフィルム外装体10同士が溶着(例えば熱溶着)されている。ただし、例えば1枚のフィルムを2つ折りにして使用したり、円筒形状のフィルムを使用したりする場合等には、短辺方向Xの一方あるいは両方の端部にシール部18が形成されていなくてもよい。長辺方向Yの両端部では、フィルム外装体10と後述するシーラントフィルム40とが溶着(例えば熱溶着)されている。
【0021】
電極体20の構成は従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。電極体20は、シート状の正極(正極シート)およびシート状の負極(負極シート)を備えている。
図1に示すように、電極体20は、ここでは、方形状(典型的には矩形状)の正極シートと、方形状(典型的には矩形状)の負極シートとが、絶縁された状態で積層されてなる積層電極体である。ただし、電極体20は、例えば、帯状の正極シートと帯状の負極シートとが絶縁された状態で積層され、長手方向に捲回されてなる捲回電極体であってもよい。正極および負極は、電極の一例である。
【0022】
正極は、典型的には、正極集電体と、正極集電体の上に固着され、正極活物質を含む正極活物質層(図示せず)と、を有する。正極活物質は、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物である。正極集電体は、導電性金属で構成されている。正極集電体は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。正極集電体は、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。正極集電体は、電極集電体の一例である。
図1に示すように、電極体20は、長辺方向Yの一方の端部(
図1の右端部)に、正極活物質層が形成されていない部分(正極集電体露出部)22を有する。正極集電体露出部22には、正極端子32が接合されている。
【0023】
負極は、典型的には、負極集電体と、負極集電体の上に固着され、負極活物質を含む負極活物質層(図示せず)と、を有する。負極活物質は、例えば、黒鉛等の炭素材料である。負極集電体は、典型的には正極集電体とは異なる導電性金属で構成されている。負極集電体は、例えば、銅、銅合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。負極集電体は、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。負極集電体は、電極集電体の一例である。
図1に示すように、電極体20は、長辺方向Yの他方の端部(
図1の左端部)に、負極活物質層が形成されていない部分(負極集電体露出部)24を有する。長辺方向Yにおいて、負極集電体露出部24は、ここでは正極集電体露出部22の反対側に配置されている。負極集電体露出部24には、負極端子34が接合されている。
【0024】
電解液は、従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、カーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体20と一体化されていてもよい。
【0025】
正極端子32は、長辺方向Yの一方の端部(
図1の右端部)に配置されている。正極端子32の一端は、フィルム外装体10の内部で、正極集電体露出部22に電気的に接続されている。正極端子32は、長辺方向Yに沿って延びている。正極端子32の他端は、フィルム外装体10の外部へと延出されている。
図1に示すように、正極端子32は板状の金属部材である。正極端子32は、ここでは平面視において矩形状である。
【0026】
正極端子32は、従来公知のフィルム型電池に用いられるようなものと同様でよく、特に限定されない。正極端子32は、1種類の金属で構成されていてもよいし、2種類以上の金属で構成されていてもよい。正極端子32は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であってもよい。正極端子32は、少なくとも正極集電体露出部22に接続される側の端部が、正極集電体と同種の金属からなることが好ましい。
【0027】
図2に示すように、正極端子32は、ここでは第1の金属32Aと、第1の金属32Aとは種類が異なる第2の金属32Bと、が接合され、原子間結合されたクラッド材で構成されている。クラッド材を用いることにより、抵抗を低減して、電池性能を向上することができる。正極端子32は、例えば、正極集電体露出部22に接続される側の端部(第1の金属32A)がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、フィルム外装体10の外部へと延出される側の端部(第2の金属32B)が異種の金属、例えば、銅または銅合金、あるいは、ニッケルまたはニッケル合金からなることが好ましい。
【0028】
正極端子32のフィルム外装体10と対向する側の面の一部には、シーラントフィルム40が一体化されている。シーラントフィルム40は、典型的には正極端子32のフィルム外装体10と対向する側の面に溶着されている。ただし、シーラントフィルム40は、接着剤等を用いて正極端子32に貼り付けられていてもよい。
【0029】
シーラントフィルム40は、正極集電体露出部22とフィルム外装体10とが直接接触しないように、正極端子32を覆っている。シーラントフィルム40は、対向するフィルム外装体10と溶着(例えば熱溶着)されている。これにより、
図1に示すように、フィルム外装体10の正極端子32が延出された側(長辺方向Yの右側)の縁部では、正極端子32とフィルム外装体10との間にシーラントフィルム40が介在して、シール部18が形成されている。
【0030】
シーラントフィルム40は、典型的には樹脂材料からなる。シーラントフィルム40は、使用する電解液に対する耐性を有し、かつ、フィルム外装体10の樹脂層(例えば第1の樹脂層12)と同程度の温度で溶融する樹脂材料からなるとよい。シーラントフィルム40は、フィルム外装体10と正極端子32の両方に対して好適な接着性を発揮するものあるとよい。シーラントフィルム40を構成する樹脂材料としては、例えば、フィルム外装体10の樹脂層を構成し得るものとして例示した熱可塑性樹脂が挙げられる。シーラントフィルム40は、1層の樹脂層からなる単層構造であってもよいし、2層以上の樹脂層を有する多層構造であってもよい。シーラントフィルム40は、ポリオレフィンフィルムであってもよい。
【0031】
図1に示すように、シーラントフィルム40は、ここでは平面視において矩形状である。シーラントフィルム40は、フィルム外装体10の正極端子32が延出された側(
図1の右側)の縁部に沿って設けられている。シーラントフィルム40は、短辺方向Xに延びている。短辺方向Xにおいて、シーラントフィルム40の長さは、正極端子32よりも長い。長辺方向Yにおいて、シーラントフィルム40の幅は、シール部18と同じかそれよりも長い。シーラントフィルム40の一方の端部(
図1の右端部)は、フィルム外装体10からはみ出している。
【0032】
図2に示すように、厚み方向Zにおいて、シーラントフィルム40は、正極端子32とフィルム外装体10との間に介在している。シーラントフィルム40は、正極端子32の両側の面(
図2の上下の面)を挟むように設けられている。シーラントフィルム40の厚み(厚み方向Zの長さ)は、正極端子32の金属部分の板厚よりも薄くてもよい。シーラントフィルム40の厚みは、正極集電体(金属箔)と同じかそれよりも厚くてもよい。シーラントフィルム40は、ここでは第1の金属32Aと第2の金属32Bとの接合部32Mを覆うように設けられている。接合部32Mは外気や電解液に曝されていない。これにより、接合部32Mの腐食を防ぐことができ、耐久性を向上することができる。
【0033】
正極端子32の一方の面(
図2の上面)に一体化されたシーラントフィルム40には、切欠部42が形成されている。切欠部42は、フィルム外装体10の内圧が所定値まで上昇したときに、フィルム外装体10を開裂させる起点となる部位である。
図1に示すように、切欠部42は、平面視においてシール部18と重なる位置に設けられている。切欠部42は、シール部18の長辺方向Yの幅が他の部分よりも狭くなるように設けられている。シーラントフィルム40に切欠部42を設けることで、フィルム外装体10の内圧が所定値まで上昇したときに、安定的にフィルム外装体10を開裂させて内圧を開放することができる。長辺方向Yにおいて、切欠部42の最も狭い部分の幅Y1は、シール部18の他の部分の幅Y2の1/4~3/4であってもよい。これにより、通常使用時の耐久性と内圧上昇時の開裂性とをバランスよく向上することができる。
【0034】
なお、切欠部42の数や形状、サイズ等は、例えばフィルム外装体10を開裂させたい内圧等を考慮して、適宜調整することができる。切欠部42は、1つであってもよいし複数であってもよい。切欠部42は、ここではシール部18の内縁から外縁に向けて、言い換えれば電極体20から遠ざかるにつれて、長辺方向Yの幅が漸次狭くなるように形成されている。切欠部42は、シール部18の内縁から外縁に向けて長辺方向Yの幅が漸次狭くなるように形成されている。切欠部42は、ここでは平面視において三角形状である。ただし、切欠部42の形状は特に限定されず、例えば方形状や半円状等であってもよい。
図2に示すように、切欠部42の設けられた部分では、正極端子32とフィルム外装体10とが離れている。言い換えれば、正極端子32からフィルム外装体10が浮いている。
【0035】
負極端子34は、長辺方向Yの他方の端部(
図1の左端部)に配置されている。長辺方向Yにおいて、負極端子34は、正極端子32の反対側に配置されている。負極端子34の一端は、フィルム外装体10の内部で、負極集電体露出部24に電気的に接続されている。負極端子34は、長辺方向Yに沿って延びている。負極端子34の他端は、フィルム外装体10の外部へと延出されている。
図1に示すように、負極端子34は板状の金属部材である。負極端子34は、ここでは平面視において矩形状である。
【0036】
負極端子34は、従来公知のフィルム型電池に用いられるようなものと同様でよく、特に限定されない。負極端子34は、1種類の金属で構成されていてもよいし、2種類以上の金属で構成されていてもよい。負極端子34は、例えば、銅または銅合金であってもよい。また、銅または銅合金で形成された部分の表面には、ニッケル等の金属が被覆されたメッキ層(例えばニッケルメッキ層)が形成されていてもよい。これにより、銅の溶出を抑えことができる。また、シーラントフィルム40との接着性が高まり、シーラントフィルム40が負極端子34の表面から剥離しにくくなる。したがって、密閉性や耐久性を向上することができる。負極端子34は、少なくとも負極集電体露出部24に接続される側の端部が、負極集電体と同種の金属からなることが好ましい。
【0037】
負極端子34は、クラッド材で構成されていてもよい。例えば、負極集電体露出部24に接続される側の端部が銅または銅合金からなり、外部へと延出される側の端部が異種の金属、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、あるいは、ニッケルまたはニッケル合金からなることが好ましい。
【0038】
負極端子34のフィルム外装体10と対向する側の面の一部には、正極端子32と同様に、シーラントフィルム40が一体化されている。シーラントフィルム40は、対向するフィルム外装体10と溶着(例えば熱溶着)されている。これにより、
図1に示すように、フィルム外装体10の負極端子34が延出された側(長辺方向Yの左側)の縁部では、負極端子34とフィルム外装体10との間にシーラントフィルム40が介在して、シール部18が形成されている。ここでは、負極端子34のシーラントフィルム40には、切欠部42が形成されていない。ただし、負極端子34のシーラントフィルム40には、正極端子32と同様に、切欠部42が形成されていてもよい。
【0039】
フィルム型電池100は、各種用途に利用可能である。例えば、車両に搭載されるモータ用の高出力動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、典型的には自動車、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0041】
例えば上記した実施形態では、
図1に示すように、正極端子32がフィルム外装体10の長辺方向Yの一方の端部から延出し、負極端子34が長辺方向Yの他方の端部から延出していた。しかしこれには限定されない。正極端子32および負極端子34は、フィルム外装体10の同じ方向の端部、例えば長辺方向Yの一方の端部から共に延出していてもよい。その場合、平面視において、1枚のシーラントフィルム40が正極端子32と負極端子34とを覆うように設けられていてもよい。
【0042】
例えば上記した実施形態では、
図1に示すように、正極端子32および負極端子34に、それぞれシーラントフィルム40が一体化されていた。しかしこれには限定されない。正極端子32または負極端子34には、シーラントフィルム40が一体化されていなくてもよい。また、切欠部42は、正極端子32または負極端子34のシーラントフィルム40のみに形成されていてもよいし、
図3に示すように、正極端子32および負極端子34のシーラントフィルム40にそれぞれ形成されていてもよい。その場合、切欠部42の形状、サイズ等は、正極端子32のシーラントフィルム40と負極端子34のシーラントフィルム40とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
例えば上記した実施形態では、
図2に示すように、厚み方向Zの一方の面(
図2の上面)のシーラントフィルム40にのみ、切欠部42が設けられていた。しかしこれには限定されない。切欠部42は、厚み方向Zの両側の面(
図2の上下の面)のシーラントフィルム40にそれぞれ形成されていてもよい。その場合、切欠部42の形状、サイズ等は、両側の面で同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 フィルム外装体
18 シール部
20 電極体
22 正極集電体露出部
24 負極集電体露出部
32 正極端子(端子)
32A 第1の金属
32B 第2の金属
32M 接合部
34 負極端子(端子)
40 シーラントフィルム
42 切欠部
100 フィルム型電池