(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100461
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】遠心力載荷試験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20220629BHJP
【FI】
G01M99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214440
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 隆太
(72)【発明者】
【氏名】小山田 武
(72)【発明者】
【氏名】森田 辰也
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA11
2G024CA13
(57)【要約】
【課題】遠心力載荷試験装置で同時試験可能な供試体数を増加させる。
【解決手段】遠心力載荷試験装置は、鉛直方向に沿う回転軸SFTと、回転軸SFTに固定された回転腕ARMと、回転腕ARMに揺動可能に取り付けられた3つ以上のバスケットと、回転軸SFTを回転させる駆動機構とを備えている。遠心力載荷試験装置は、回転軸SFTを介して互いに向かい合う一対のバスケットが複数設けられた複数組のバスケットを備えることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿う回転軸と、
前記回転軸に固定された回転腕と、
前記回転腕に揺動可能に取り付けられた3つ以上のバスケットと、
前記回転軸を回転させる駆動機構とを備えた遠心力載荷試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記回転軸を介して互いに向かい合う一対のバスケットが複数設けられた複数組のバスケットを備えることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項3】
請求項2に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記複数組のバスケットのうちの一組のバスケットは、前記回転腕の回転の際、前記回転腕内に格納されるバスケットであり、
前記複数組のバスケットのうちの他の組のバスケットは、前記回転腕の外側面に取り付けられたバスケットであることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記回転腕に格納されるバスケットは、動的試験用バスケットを含むことを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記動的試験用バスケットは、偏心機構に接続された揺動軸に吊るされており、
前記偏心機構はシリンダを有し、当該シリンダは前記回転腕の先端側に設置されていることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項6】
請求項3に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記回転腕の外側面に取り付けられたバスケットは、静的試験用バスケットであることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項7】
請求項3に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記回転腕は、ウェイトが回転腕長手方向に移動する長手セカンドバランスウェイトと、ウェイトが回転腕短手方向に移動する短手セカンドバランスウェイトとを備えていることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項8】
請求項3に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記回転腕の外側面の複数個所にアキュムレータが配置されていることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項9】
請求項8に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記アキュムレータは、前記回転腕内に格納されるバスケットを挟む位置に配置されていることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【請求項10】
請求項5に記載の遠心力載荷試験装置において、
前記偏心機構を挟み込む位置にアキュムレータが配置されていることを特徴とする遠心力載荷試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤その他の縮尺模型に対して試験を行う遠心力載荷試験装置に関し、試験効率を高めた遠心力載荷試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤のような縮尺模型を作成して実験を行う際に、通常の重力場において実験を行うと自重による応力を再現することは困難であるため、遠心力載荷試験装置が使用されている。
【0003】
このような遠心力載荷試験装置の一例が特許文献1に記載されている。
この遠心力載荷試験装置は、鉛直方向に沿う回転軸と、回転軸に固定された回転腕と、回転腕の両端付近に揺動可能に取り付けられたバスケットと、回転軸を回転させる駆動機構とを具備している。
【0004】
遠心力載荷試験装置の使用に当たっては、バスケットに供試体である地盤等の縮尺模型を取り付けるが、供試体を取り付けないバスケットにバランスウエイトを取り付けることで、回転腕の安定的な回転を可能としている。
【0005】
この安定的な回転により、供試体である実寸法の1/Nの縮尺模型に対してN倍の重力加速度を加えることが可能になるため、浸透現象を対象とした場合、実物換算時間の1/N2に短縮されて再現されることになる。例えばN=50として1ヶ月間の実験を行えば約208.3年相当の挙動を評価できることになる。このため、実物換算時間で数十年~数千年にわたる長期挙動評価試験にも、この遠心力載荷試験装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の遠心力載荷試験装置で長期挙動評価試験を行う場合、試験時間が1/N2に短縮されてもなお一ヶ月から数ヶ月もの長い時間が実際の試験に必要となる。
従来は遠心力載荷試験装置に対して、より多くの個数の供試体を同時に試験できることがニーズとしてあったものの、従来の遠心力載荷試験装置は、2体の供試体の試験しかできなかった。
本発明の目的は、遠心力載荷試験装置で同時試験可能な供試体数を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する複数の手段を備えている。代表的なものは以下のとおりである。
鉛直方向に沿う回転軸と、前記回転軸に固定された回転腕と、前記回転腕に揺動可能に取り付けられた3つ以上のバスケットと、前記回転軸を回転させる駆動機構とを備えた遠心力載荷試験装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遠心力載荷試験装置で同時試験可能な供試体数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
遠心力載荷試験装置は、バスケットに1/Nの縮尺模型(土槽等)を配置し、g(重力加速度)×N倍の遠心力を掛けることで、再現または加速試験を行うものである。
図1は本発明の一実施形態に係る遠心力載荷試験装置の上面図、
図2は
図1のA-A’断面図である。
【0013】
この遠心力載荷試験装置は、安全面や作業性の点から地下室に設置される。
図1、
図2に示すように、遠心力載荷試験装置本体は、設置面GNDを掘り込んだ階下室の階下面UNDに設置され、同じ階下面UNDに設置された駆動機構に接続されている。
【0014】
駆動機構は、電動機DRV1とベベルギアボックスDRV2とを有し、ベベルギアボックスDRV2は、互いにかみ合う一組のベベルギアを備えている。ベベルギアボックスDRV2は、一方のベベルギアが継手を介して同じく階下面UNDに設置された電動機DRV1の出力軸に接続され、他方のベベルギアが回転軸SFTに接続されている。回転軸SFTは、鉛直方向に沿って配置されている。
【0015】
遠心力載荷試験装置の回転軸SFTは、階下面UNDの階下基台UBS、設置面GNDの設置面基台GBSで支持されている。
回転軸SFTは、その中央に回転腕ARMが嵌合・固定されており、回転腕ARMは、回転軸SFTとともに回転するようになっている。
【0016】
回転腕ARMは、型材、板材などを溶接組立したもので、長い構造をしている。回転腕ARMには、供試体またはバランスウエイトが載荷可能な、かご状の台であるバスケットが4つ揺動可能(揺動して水平に振りあがることが可能)に吊るされている。
【0017】
4つのバスケットのうち、後バスケットBBKT及び前バスケットFBKTは、従来技術と同様、回転腕ARMの端付近に回転腕ARM内に格納可能に設けられている。以下、後バスケットBBKT及び前バスケットFBKTを「回転腕格納バスケット」と称する。
【0018】
さらに、本実施形態の回転腕ARMは、従来技術とは異なり、左バスケットLBKT、右バスケットRBKTの2つのバスケットが、回転腕ARMの中央両外側面に増設されている。以下、左バスケットLBKT及び右バスケットRBKTを「追加バスケット」と称する。つまり、遠心力載荷試験装置は、回転軸SFTを介して互いに向かい合う一対のバスケットを2組備えている。
【0019】
このように、本実施形態では、回転腕ARMの中央両外側面に追加バスケットを設けているので、遠心力載荷試験中のバランスも極めて取りやすく、また、既設装置への増設工事も非常に簡単である。新設する場合には、十字状の回転腕を採用し、例えば4つのバスケットを回転腕格納バスケットとしてもよい。
【0020】
以下、2つの追加バスケットを含む4つのバスケットを備えた回転腕ARMについて、バスケットレイアウト、バスケット種別、揺動軸、セカンドバランスウェイト、アキュムレータの各構造を詳述する。
【0021】
[バスケットレイアウト]
回転腕格納バスケットの基本的な配置は、従来技術と同じである。すなわち、回転腕長手方向(回転腕ARMの径方向)に向かってバスケットが揺動されるように、前揺動軸FRAX、後揺動軸BRAXが設けられている。そして、その前揺動軸FRAX、後揺動軸BRAXに対して、回転軸SFTの回転により発生する遠心力で揺動されるようにバスケットが回転腕ARM内に吊るされている。回転腕ARMは、揺動したバスケットが収まる空間があり、揺動空間の外側へ伸びている。なお、
図1では、後バスケットBBKTは回転軸SFTの左側、前バスケットFBKTは回転軸SFTの右側に配置した。
【0022】
従来構造に対して増設した追加バスケットのうち、左バスケットLBKTは
図1中で回転軸SFTの上側の回転腕ARMの外側面、右バスケットRBKTは
図1中で回転軸SFTの下側の回転腕外側面に配置した。
なお、
図1及び
図2の各部品に付した「前」「後」「左」「右」「F」「B」「L」「R」は、回転腕ARMを
図1の状態で仮固定した際の、位置を表現しただけである。
【0023】
各バスケット(FBKT,BBKT,LBKT,RBKT)は、各揺動軸(FRAX,BRAX,LRAX,RRAX)にそれぞれ連結されているが、回転軸SFTから各揺動軸までの距離は次のように設定されている。
dF≒dB<dL≒dR
dF:回転軸SFTと前バスケットFBKT用の揺動軸との距離
dB:回転軸SFTと後バスケットBBKT用の揺動軸との距離
dL:回転軸SFTと左バスケットLBKT用の揺動軸との距離
dR:回転軸SFTと右バスケットRBKT用の揺動軸との距離
【0024】
つまり、追加バスケット(左バスケットLBKT、右バスケットRBKT)用の揺動軸を、回転腕格納バスケット(前バスケットFBKT、後バスケットBBKT)用の揺動軸よりも、回転軸SFTから離すレイアウトとした。
【0025】
供試体やウェイトにかかる条件を、回転腕格納バスケットと追加バスケットとで厳密に同じくするには、回転軸SFTから揺動軸までの距離を同一にすることが好ましい。ただし、回転軸SFTから供試体やウェイトまでの距離を同一にすることを必要な条件とすることができる。
【0026】
製造コストの低減や保守容易性の向上から全て同じバスケットを搭載する場合には、載置面に置く架台の高さ調整など試験条件を調整することで、上記条件を許容できる。あるいは、追加バスケット自体を変更して載置台と揺動軸とを結ぶ揺動腕を短くするなどの調整を行うことで、上記条件を許容できる。
【0027】
その結果、既存の一本の回転腕ARMの外側面へ左揺動軸LRAX、右揺動軸RRAXを簡単に取り付けることが可能となり、バスケット増設(新設の場合は、製造)が極めて容易となっている。
【0028】
[バスケット種別]
本実施形態では、4つのバスケットのうち、後バスケットBBKTは動的試験用とし、他の前バスケットFBKT、左バスケットLBKT、右バスケットRBKTは加振装置VIBがない静的試験用バスケットとした。後バスケットBBKTは後述するアキュムレータからの油圧で駆動する加振装置VIBを備えている。いうまでもないが、加振装置VIBを駆動しなければ静的試験も可能である。また、前バスケットFBKTは加振装置VIBのウェイトがない分軽く、載荷面も低くなるため、加振装置VIBのウェイト分と高さを補完するために、前架台FTを配置して試験を行う。
【0029】
本実施形態では、追加バスケットを静的試験用としたので加振装置VIBが不要で、油圧シリンダOCL及び油圧シリンダOCLへのオイル供給が不要となるので、バスケット増設(製造)が簡単に行えた。
【0030】
前述のように、追加バスケット(左バスケットLBKT、右バスケットRBKT)の揺動軸は、回転腕格納バスケット(前バスケットFBKT、後バスケットBBKT)の揺動軸よりも回転軸SFTから離す。このため、各追加バスケット(左バスケットLBKT、右バスケットRBKT)には、前架台FTよりも高さのある左架台LT、右架台RTを配置して用いる。
【0031】
なお、本実施形態では、調整が容易である架台の高さで試験条件を調整した。ただし、追加バスケット用の左揺動軸LRAX、右揺動軸RRAXから追加バスケットの載置面までの距離(追加バスケットの揺動腕の長さ)を短くしてもよい。
【0032】
[揺動軸]
本実施形態の揺動軸は、前述のように、回転腕格納バスケット用の揺動軸として、後バスケットBBKT用の後揺動軸BRAX、前バスケットFBKT用の前揺動軸FRAX、追加バスケット用の揺動軸として、左バスケットLBKT用の左揺動軸LRAX、右バスケットRBKT用の右揺動軸RRAXからなる。
【0033】
回転腕格納バスケット用の揺動軸(後揺動軸BRAX、前揺動軸FRAX)は、回転腕ARMの内部に設置されている。追加バスケット用の揺動軸(左揺動軸LRAX、右揺動軸RRAX)は、
図1中で回転軸SFTに固定される回転腕ARMの外側面に設けられた突起部に配置されている。
【0034】
後バスケットBBKTは動的試験用とされている。後バスケットBBKTは、偏心機構に接続された後揺動軸BRAXに吊るされている。偏心機構は、回転腕ARMに設置された油圧シリンダOCLを有している。偏心機構は、油圧シリンダOCLにより、後バスケットBBKTを回転腕ARMの長手方向に移動させて、回転腕ARMの先端側に圧着(着底)させる。
【0035】
油圧シリンダOCLは、従来は後揺動軸BRAXに対して回転軸SFT側に配置していたが、本実施形態では後揺動軸BRAXに対して回転腕ARMの先端側に配置している。
【0036】
従来のように、後揺動軸BRAXに対して回転軸SFT側に油圧シリンダOCLがあると、追加バスケットの位置を回転腕ARMから離す必要があり、前述の追加バスケット用の揺動軸を回転腕ARMから離す必要がある。その結果、追加バスケット用の揺動軸を設ける突起部を大きくする必要が生じ、架台調整量増大、大型化、強度低下などが生じる。本実施形態では、油圧シリンダOCLを回転軸SFTから離した位置にしているので、追加バスケットやその揺動軸を回転腕ARMの近くに配置できるようになる。これにより、架台調整量低減、小型化や強度向上などのメリットがある。
【0037】
[アキュムレータ]
アキュムレータは、各油圧機器(加振装置VIB等)に対して瞬間的に多量の油を供給する機器である。
【0038】
従来のアキュムレータは、回転腕ARMの外側面であって、回転軸SFTを挟み込む2か所に配置していた。
しかし、本実施形態では、アキュムレータの配置をさらに分け、4か所(第1アキュムレータACM1、第2アキュムレータACM2、第3アキュムレータACM3、第4アキュムレータACM4の4つアキュムレータ)とした。アキュムレータは、回転腕ARMの外側面の複数個所(ここでは4か所)に配置されている。具体的には、回転軸SFTを挟み込む位置から、回転腕ARMに格納されるバスケット(前バスケットFBKT、後バスケットBBKT)を挟み込む位置に、回転軸SFTから同じ距離だけずらした。その結果、各バスケット(BBKT,FBKT、LBKT,RBKT)の間にアキュムレータが位置することになるので、さらにバランスが取れる構造となり、回転が安定しやすい。
【0039】
また、
図1は1本の回転腕ARMに追加バスケットを増設した例であるため、全てのアキュムレータを1本の回転腕ARMに固定した。ただし、十字状の2本の回転腕ARMを採用する場合には、双方の腕にアキュムレータを固定する構造としてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、第1アキュムレータACM1、第2アキュムレータACM2、第3アキュムレータACM3及び第4アキュムレータACM4の各アキュムレータの基本構成は同じとしたが、それに限るものではない。
【0041】
第1アキュムレータACM1と第2アキュムレータACM2は、第3アキュムレータACM3と第4アキュムレータACM4よりも回転腕ARMから離して配置されている。また、第1アキュムレータACM1及び第2アキュムレータACM2は、後バスケットBBKTとの間で、油圧シリンダOCLを挟み込む位置に配置されている。この構成にすることで、アキュムレータは、追加バスケット(左バスケットLBKT、右バスケットRBKT)のレイアウトを確保しつつ、遠心力の影響の少ない回転腕ARMに近い配置を実現している。
【0042】
[セカンドバランスウェイト]
次に、本実施形態のバランスウェイトについて説明する。
通常、供試体を載せないバスケットには供試体相当のバランスウェイトを載せるが、バランスウェイトは遠心力による重心変化が起きないため、回転中にバランスが崩れる可能性がある。そのため、従来から、遠心力載荷試験装置では供試体のバランス変化に追随して、動的にウェイトを移動させるセカンドバランスウェイトが用いられている。具体的には、回転腕ARMの長手方向のみにウェイトを移動させる長手方式や、回転腕ARMの短手成分と長手成分を同時にバランス調整するため、ウェイトを回転腕ARMの長手方向に対して斜めに移動させる斜め方式が採用されてきた。
【0043】
しかし、本実施形態では、追加バスケット(左バスケットLBKT、右バスケットRBKT)を回転腕ARMの外側面に配置したため、ウェイト変化が複雑かつ大きくなる可能性がある。従来の長手方式では長手方向の調整のみであり、従来の斜め方式でも両成分決まった比率でバランス調整するため、極端な短手方向のバランス調整ができず、動不釣り合いを起こしてしまう可能性がある。
【0044】
そこで、本実施形態の回転腕ARMは、回転中のバランス調整を行うために、回転腕ARMの長手方向にウェイトが移動する従来の長手セカンドバランスウェイトSWXだけでなく、回転腕ARMの短手方向にウェイトが移動する短手セカンドバランスウェイトSWYをも設けた。具体的には、長手セカンドバランスウェイトSWXは、回転腕ARM上面、短手方向に回転腕格納バスケット(前バスケットFBKT、後バスケットBBKT)を挟む位置に一対づつ、計4個配置した。また、短手セカンドバランスウェイトSWYは、回転腕ARM上面、短手方向に回転軸SFTを挟む位置に一対、計2個配置した。
【0045】
このような配置により、回転腕ARMの長手方向(遠心方向)と短手方向(接線方向)の2方向それぞれの補正量を大きくすることできるとともに、短手方向に大きなバランスの動不釣り合いがあった場合のバランス調整力が大きくなっている。
【0046】
また、本実施形態の短手セカンドバランスウェイトSWYのウェイトは、長手セカンドバランスウェイトSWXのウェイトよりも重くしてある。これは、短手セカンドバランスウェイトSWYは、その大きさや移動量が回転腕ARMの形状上制約され、補正量が小さくなってしまうからである。
【0047】
以上、本実施形態を整理すると次のような特徴がある。
(1)バスケット数を従来よりも増加させたので、3つ以上の供試体の同時試験が可能になり、試験期間を大幅に縮めることが可能となっている。
(2)加振機構(動的試験用の油圧シリンダやアキュムレータ)を、回転軸SFT近傍から回転腕ARM先端側にずらした。これにより、追加バスケット(左バスケットLBKT、右バスケットRBKT)を回転軸SFT近傍に対向配置できるようになり、バスケット数を増加させても安定した回転が可能となっている。特に、アキュムレータを回転腕ARMの両側面で分散配置させていることも、さらなる安定化を可能としている。
(3)追加バスケット(左バスケットLBKT、右バスケットRBKT)を、アキュムレータからの油圧供給機構や回転腕ARMに着底させる油圧シリンダOCLが不必要な静的試験用とした。これにより、十字状の回転腕ARMなど長くて大きな回転腕ARMを採用せずに、バスケット数を増やすことが可能になっている。
【0048】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、前記した実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
SFT 回転軸
ARM 回転腕
BBKT 後バスケット
LBKT 左バスケット
FBKT 前バスケット
RBKT 右バスケット
BRAX 後揺動軸
LRAX 左揺動軸
FRAX 前揺動軸
RRAX 右揺動軸
VIB 加振装置
ACM1 第1アキュムレータ
ACM2 第2アキュムレータ
ACM3 第3アキュムレータ
ACM4 第4アキュムレータ
UND 階下面
UBS 階下基台
GND 設置面
GBS 設置面基台
DRV1 電動機(駆動機構)
DRV2 ベベルギアボックス(駆動機構)
OCL 油圧シリンダ(シリンダ、偏心機構)
SWX 長手セカンドバランスウェイト
SWY 短手セカンドバランスウェイト