(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100465
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 5/00 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
A46B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214446
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】木本 雄也
(72)【発明者】
【氏名】高井 良輔
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃大
(72)【発明者】
【氏名】李 佳薇
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB15
3B202BA10
3B202DB02
3B202EG17
(57)【要約】
【課題】ネック部が幅方向に曲がったり、長軸方向を中心とする周方向に捻れることを抑制できるワイドヘッド型の歯ブラシを提供する。
【解決手段】幅方向のヘッド部の最大長さは、12mm以上、18mm以下であり、厚さ方向のヘッド部の最大長さは、2mm以上、4mm以下であり、ネック部の幅方向の最小長さおよび厚さ方向の最小長さは、3mm以上、5mm以下であり、ネック部において、第2位置から、ネック部の長さに対して65%となる第3位置までの領域をCとし、第3位置から、ネック部の長さに対して35%となるネック部と把持部との境界の第4位置までの領域をDとすると、(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.0の関係を満足し、第4位置において、幅方向の最大長さは、厚さ方向の最大長さよりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸方向の先端側に位置し植毛面を有するヘッド部と、
前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、
前記ヘッド部と前記把持部との間に配置されたネック部と、を有し、
前記植毛面と平行で前記長軸方向と直交する幅方向の前記ヘッド部の最大長さは、12mm以上、18mm以下であり、
前記植毛面と直交する厚さ方向の前記ヘッド部の最大長さは、2mm以上、4mm以下であり、
前記ネック部の前記幅方向の最小長さおよび前記厚さ方向の最小長さは、3mm以上、5mm以下であり、
前記ヘッド部において、前記長軸方向で先端から前記幅方向の長さが最大となる最も後端側の第1位置までの領域をAとし、前記第1位置から前記ヘッド部と前記ネック部との境界の第2位置までの領域をBとし、
前記ネック部において、前記第2位置から、前記ネック部の前記長軸方向の長さに対して65%となる第3位置までの領域をCとし、前記第3位置から、前記ネック部の前記長軸方向の長さに対して35%となる前記ネック部と前記把持部との境界の第4位置までの領域をDとすると、(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.0の関係を満足し、
前記第4位置において、前記幅方向の最大長さは、前記厚さ方向の最大長さよりも大きいことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
(前記領域Aの体積)/(前記領域Dの体積)≦0.60の関係を満足する、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記領域Dの体積は、1000mm3以上である、
請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
(前記領域Aの体積と前記領域Cの体積との総和)/(前記領域Aの体積と前記領域Bの体積と前記領域Cの体積と前記領域Dの体積の総和)≦0.70の関係を満足する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記第4位置における前記幅方向の最大長さは、11mm以上であり、且つ、
(前記第4位置における前記幅方向の最大長さ)-(前記第4位置における前記厚さ方向の最大長さ)≧2mmの関係を満足する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
1.5mm≦(前記領域Aの前記幅方向の最大長さ)-(前記第4位置における前記幅方向の最大長さ)≦7mmの関係を満足する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
(前記第4位置における前記厚さ方向の最大長さ)-(前記第3位置における前記厚さ方向の最大長さ)≧3mm
の関係を満足する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
(前記第3位置における前記厚さ方向の最大長さ)-(前記長軸方向に亘る前記領域Aの前記厚さ方向の長さの平均値)≦2mm
の関係を満足する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
前記領域Cは、前記長軸方向に亘り、前記厚さ方向の最大長さが4.5mm以下であり、
(前記第3位置における前記幅方向の最大長さ)-(前記第3位置における前記厚さ方向の最大長さ)>1mmの関係を満足する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシのヘッド部のサイズは、使用者の嗜好及び目的に合わせて様々なタイプのものがある。口腔衛生の点では、「一歯ずつ、丁寧に磨ける」コンパクトヘッドが一般的に適しているが、磨き方のテクニックが不足している人、短時間で効率よく磨けることを重視している人にとっては、歯頸部、歯間及び歯面を同時に磨くことのできる、ヘッド部が幅広とされた「ワイドヘッド型」の歯ブラシが提供されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この「ワイドヘッド型」の歯ブラシの課題は、複数の清掃部位を同時に刷掃できるため清掃効率性は高いが、各々の部位の「清掃の精度」、特に、歯間および歯頸部などの隙間部分の清掃については、劣りやすい点にある。これは、磨きたい場所以外の周辺部位にも歯ブラシの毛先が当たってしまい、物理的干渉が起きやすいためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
口腔内の操作性を考慮して細いネック部を「ワイドヘッド型」の歯ブラシに採用した場合、刷掃時に重心が不安定になるため、ネック部が幅方向に曲がったり、長軸方向を中心とする周方向に捻れるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ネック部が幅方向に曲がったり、長軸方向を中心とする周方向に捻れることを抑制できる「ワイドヘッド型」の歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、長軸方向の先端側に位置し植毛面を有するヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置された把持部と、前記ヘッド部と前記把持部との間に配置されたネック部と、を有し、前記植毛面と平行で前記長軸方向と直交する幅方向の前記ヘッド部の最大長さは、12mm以上、18mm以下であり、前記植毛面と直交する厚さ方向の前記ヘッド部の最大長さは、2mm以上、4mm以下であり、前記ネック部の前記幅方向の最小長さおよび前記厚さ方向の最小長さは、3mm以上、5mm以下であり、前記ヘッド部において、前記長軸方向で先端から前記幅方向の長さが最大となる最も後端側の第1位置までの領域をAとし、前記第1位置から前記ヘッド部と前記ネック部との境界の第2位置までの領域をBとし、前記ネック部において、前記第2位置から、前記ネック部の前記長軸方向の長さに対して65%となる第3位置までの領域をCとし、前記第3位置から、前記ネック部の前記長軸方向の長さに対して35%となる前記ネック部と前記把持部との境界の第4位置までの領域をDとすると、(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.0の関係を満足し、前記第4位置において、前記幅方向の最大長さは、前記厚さ方向の最大長さよりも大きいことを特徴とする歯ブラシが提供される。
【0008】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、(前記領域Aの体積)/(前記領域Dの体積)≦0.60の関係を満足することを特徴とする。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記領域Dの体積は、1000mm3以上であることを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、(前記領域Aの体積と前記領域Cの体積との総和)/(前記領域Aの体積と前記領域Bの体積と前記領域Cの体積と前記領域Dの体積の総和)≦0.70の関係を満足することを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第4位置における前記幅方向の最大長さは、11mm以上であり、且つ、(前記第4位置における前記幅方向の最大長さ)-(前記第4位置における前記厚さ方向の最大長さ)≧2mmの関係を満足することを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、1.5mm≦(領域Aの前記幅方向の最大長さ)-(前記第4位置における前記幅方向の最大長さ)≦7mmの関係を満足することを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、(前記第4位置における前記厚さ方向の最大長さ)-(前記第3位置における前記厚さ方向の最大長さ)≧3mmの関係を満足することを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、(前記第3位置における前記厚さ方向の最大長さ)-(長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの平均値)≦2mmの関係を満足することを特徴とする。長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの平均値は、(長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの最大値+長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの最小値)/2で表される値で定義される。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記領域Cは、長軸方向に亘り、前記厚さ方向の最大長さが4.5mm以下であり、(前記第3位置における前記幅方向の最大長さ)-(前記第3位置における前記厚さ方向の最大長さ)>1mmの関係を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ネック部が幅方向に曲がったり、長軸方向を中心とする周方向に捻れることを抑制できるワイドヘッド型の歯ブラシを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、歯ブラシ1を植毛面3a側から見た正面図である。
【
図3】ヘッド部3およびネック部4の一部を部分的に拡大した正面図である。
【
図4】ヘッド部3およびネック部4の一部を部分的に拡大した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態を、
図1ないし
図4を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0019】
また、以下の説明では、後述するヘッド部3の植毛面3aが設けられた側(植毛面と対向する側)を歯ブラシ1の正面側とし、ヘッド部3の植毛面3aが臨む側とは逆側を歯ブラシ1の背面側とする。加えて、ハンドル体2が延びる方向を長軸方向とし、植毛面3aと平行、且つ、長軸方向に直交する方向を歯ブラシ1の幅方向とし、植毛面3aに直交する方向を歯ブラシ1の厚さ方向として説明する。また、長軸方向でヘッド部3が設けられる側(ヘッド部3側)を先端側とし、把持部5が設けられる側(把持部5側)を後端側として適宜説明する。
【0020】
図1は、歯ブラシ1を植毛面3a側から見た正面図である。
図2は、歯ブラシ1の構成を示す側面図である。なお、
図1においては、ブラシ40の図示を省略している。
【0021】
図1および
図2に示すように、本実施形態の歯ブラシ1は、全体として長尺状に形成された樹脂成形体からなるハンドル体2とブラシ40とを備えている。歯ブラシ1の全長としては、一例として、150mm以上、200mm以下である。
【0022】
ハンドル体2は硬質樹脂で形成されている。ハンドル体2は、先端側に位置し植毛面3aを有するヘッド部3と、ヘッド部3より後端側に配置された把持部5と、ヘッド部3と把持部5との間に配置されたネック部4と有している。歯ブラシ1は、ヘッド部3の植毛面3aに植設された複数の毛束(図示せず)を有するブラシ40により口腔内を清掃することが可能となっている。
【0023】
ハンドル体2を形成する硬質樹脂としては、一例として、曲げ弾性率(JIS7171)が1000MPa以上、2800MPa以下である樹脂が挙げられ、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などを強度面を考慮して用いることが好ましい。
【0024】
(ハンドル体の幅方向両側の外形輪郭線形状)
図1に示すように、本実施形態の歯ブラシ1は、ハンドル体2を正面視したときに、幅方向の中心に位置し長軸方向に延びる中心線に対してハンドル体2の幅方向両側の外形輪郭線が線対称に形成されている。そのため、以下の説明では、幅方向の一方側(
図1中、下側)の外形輪郭線について説明し、他方側(
図1中、上側)の外形輪郭線についての説明を省略する。また、円弧状に延びる曲線領域の曲率中心の位置については、外形輪郭線に対して幅方向の中心側の場合を内側とし、幅方向の中心と逆側の場合を外側と称する。
【0025】
本実施形態の歯ブラシ1は、ハンドル体2を正面視したときに、ハンドル体2の幅方向の外形輪郭線において、ヘッド部3の先端から後端側にヘッド部3の幅方向の長さが円弧状に広がる第1曲線領域E1と、第1曲線領域E1の後端からヘッド部3の幅方向の長さが一定で第1位置P1まで後端側に延びる第1直線領域L1と、第1位置P1からヘッド部3とネック部4との境界となる第2位置P2までヘッド部3の幅方向の長さが小さくなる第2直線領域L2と、第2位置P2からネック部4の幅方向の長さが一定で後端側に延びる第3直線領域L3と、外側に曲率中心を有し第3直線領域L3の後端から後端側に円弧状に延びる第2曲線領域E2と、内側に曲率中心を有し第2曲線領域E2の後端から後端側に円弧状に延びる第3曲線領域E3と、第3曲線領域E3の後端から把持部5の幅方向の長さが一定で後端側に延びる第4直線領域L4とを有している。
【0026】
(ハンドル体の正面側の外形輪郭線形状)
図2に示すように、本実施形態の歯ブラシ1は、ハンドル体2を側面視したときに、ハンドル体2の正面側の外形輪郭線において、ヘッド部3の後端側から把持部5側に向けて、ヘッド部3の植毛面3aから連続して後端側に直線状に延びる第5直線領域L5と、正面側に曲率中心を有し第5直線領域L5の後端から、凸形状の頂点51が設けられネック部4と把持部5との境界である第4位置P4まで後端側に円弧状に延びる第4曲線領域E4と、正面側に曲率中心を有し第4位置P4の頂点51から後端側に円弧状に延びる第5曲線領域E5と、第5曲線領域E5の後端から後端側に直線状に延びる第6直線領域L6とを有している。
【0027】
(ハンドル体の背面側の外形輪郭線形状)
本実施形態の歯ブラシ1は、ハンドル体2を側面視したときに、ハンドル体2の背面側の外形輪郭線において、ヘッド部3の先端から後端側に直線状に延びる第7直線領域L7と、正面側に曲率中心を有し第7直線領域L7の後端から後端側に円弧状に延びる第6曲線領域E6と、第6曲線領域E6の後端から後端側に直線状に延びる第8直線領域L8とを有している。
なお、上述した歯ブラシ1における外形輪郭線形状の直線および曲線は一態様であり、例えば、第2直線領域L2および第3直線領域L3等が曲線である構成や曲線と直線とを組み合わせた構成であってもよく、外形輪郭線形状としては上記の記載に限定されない。
【0028】
(ヘッド部)
ヘッド部3は、複数の毛束により口腔内を刷掃する部分であり、
図1に示すように、正面視で円弧形状を有する略矩形状を為すと共に、角部が丸みを帯びた形状を有している。本実施形態において、ヘッド部3とネック部4との境界は、ヘッド部3の正面視形状における、ネック部4側の隅切を形成する曲線の終点、すなわち、隅切を形成する曲線の曲がり方向が変化する第2位置P2である。
【0029】
ヘッド部3は、正面側に植毛面3aを有している。植毛面3aには、植毛穴6が複数並んで配置されている。植毛穴6の形状、穴径は特に限定されず、
図1では一例として、正面視円形で同一径の植毛穴6が示されている。植毛穴6は、ヘッド部3の幅方向の長さに応じた幅方向に間隔をあけて複数個(
図2では、3~7個)配列された列が長軸方向に間隔をあけて複数列(
図2では10列)設けられている。植毛穴6には、ブラシ40を構成する毛束がそれぞれ植毛されている。
【0030】
毛束は、複数本の刷毛(フィラメント)を束ねて二つ折りにし、その間に平線と呼ばれる金属製の抜止め具(図示せず)を挟んで植毛穴6に打ち込むことによって、各植毛穴6に植設されている。ヘッド部3は、その形状について特に限定されるものではなく、例えば、正面側の植毛面3aと背面側の面とが互いに平坦で平行な面を形成している。
【0031】
ヘッド部3の幅方向の最大長さは、例えば、12mm以上、18mm以下が好ましい。本実施形態のヘッド部3は、所謂ワイドヘッド型である。ワイドヘッド型のヘッド部3を有することにより、歯の各部位への接触面積を稼ぐことができ、且つ、複数の歯を磨けるので、効率的に歯を磨くことができる。
【0032】
ヘッド部3の厚さ方向の最大長さは、例えば、2mm以上、4mm以下が好ましく、2.5mm以上、3.5mm以下がより好ましい。本実施形態のヘッド部3は、所謂薄型ヘッドである。薄型のヘッド部3を有することにより、ワイドヘッド型のヘッド部3であっても奥歯の操作性を高め、奥歯の清掃力を向上させることができる。
【0033】
本実施形態においては、ヘッド部3において、長軸方向で先端から幅方向の長さが最大となる最も後端側の第1位置P1までの領域をAとし、第1位置P1からヘッド部3とネック部4との境界の第2位置P2までの領域をBとする。
【0034】
なお、ヘッド部3の正面視の外形輪郭が楕円等であり、幅方向の長さが最大となる最も後端側の位置が、ヘッド部3の長軸方向の中央よりも後端側にない場合は、幅方向に並ぶ植毛穴6の数が最も多い列のうち、最も後端側の列における植毛穴6の後端側縁部の長軸方向の位置することができる。
【0035】
ヘッド部3において、植毛穴6の全容積(全穴体積)と、最も外周側に位置する植毛穴6の外側縁部を結んだ植毛領域の樹脂体積との比としては、1:2.5以上であることが好ましい。
植毛穴6の全容積と植毛領域の樹脂体積との比を1:2.5以上とすることにより、
植毛穴6に対して植毛領域の樹脂量が大きくなり、ヘッド部3が剛直となるため、ワイドヘッド型、且つ、薄型ヘッド型ながらもヘッド部3の反りや使用時のたわみの発生を抑えることができる。
【0036】
ヘッド部3の長軸方向の最大長さとしては、25mm以上であることが好ましい。ヘッド部3の長軸方向の最大長さを25mm以上とすることにより、薄い領域が長くなり奥歯の奥まで磨きやすくなる。また、ネック部4の長さが過度に長くなることを抑制し、ネック部4が過度に撓むことなく磨くことができる。
【0037】
(ネック部)
ネック部4は、把持部5とヘッド部3との間に配置され把持部5とヘッド部3とを連結する部分である。ネック部4と把持部5との境界は、側面視における第4曲線領域E4と第5曲線領域E5とが交わる第4位置P4である。すなわち、外側に曲率中心を有する第4曲線領域E4と第5曲線領域E5へ繋がり凸形状の頂点51が形成される位置である。
凸形状の頂点が無い場合、もしくは視認できない場合のネック部4と把持部5との境界は、側面視における厚さ方向において、曲率中心が切り替わる位置とし、この位置を特定できない場合は、例えば、硬質樹脂からエラストマー等の軟質樹脂など、異なる樹脂に切り替わる位置とし、この位置を特定できない場合は、ヘッド部3の先端から後端側に75mmの位置とする。
【0038】
ネック部4は、ヘッド部3との境界である第2位置P2から把持部5に向けて、
図1に示す正面視で外形輪郭線が第3直線領域L3で形成される領域が一定で最小幅となる。ネック部4は、第3直線領域L3の後端から外形輪郭線が第2曲線領域E2を介して繋がる第3曲線領域E3の後端となる第4位置P4までの領域で最小幅から幅が漸次広くなる。
【0039】
ネック部4の幅方向の最小長さとしては、3mm以上、5mm以下であることが好ましく、3.5mm以上、4.5mm以下であることがより好ましい。ネック部4の厚さ方向の最小長さとしては、3mm以上、5mm以下であることが好ましい。本実施形態のネック部4は、所謂スリムネック型である。ネック部4の幅方向の最小長さおよび厚さ方向の最小長さを3mm以上、5mm以下とすることにより、ワイドヘッド型のヘッド部3であっても奥歯の操作性を高め、奥歯の清掃力を向上させることができる。
【0040】
ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も後端側の第1位置P1から、ネック部4の幅方向の長さが最小となる最も先端側の第2位置P2までの長さは、9.0mm以下であることが好ましい。
第1位置P1から第2位置P2までの長さを9.0mm以下とすることにより、ヘッド部3の後端側の幅が急峻に収束することになり、ネック部4が最細部となるまでの長さを小さくでき操作性を高めることができる。
【0041】
(把持部)
把持部5は、使用者が把持する部分であり、長尺柱状に形成されている。
把持部5は、
図1に示す側面視において、ネック部4との境界の第4位置P4から後端側に向けて幅方向の長さが一定である。
【0042】
把持部5は、
図2に示す側面視において、ネック部4との境界の第4位置P4から後端側に向けて、正面側の外形輪郭線における第5曲線領域E5が第4位置P4で極大値となり把持部5が最小厚さとなる第5曲線領域E5の後端側端部まで厚さが漸次小さくなる。把持部5は、第5曲線領域E5の後端側端部よりも後端側が、厚さ方向の長さが一定である。
【0043】
把持部5は、正面側に、一例として、親指が当接する指当て部50を有している。側面視において指当て部50は、頂点51から後端側に向かうに従って背面側に向かう凹形状の湾曲面となる第5曲線領域E5の後端側端部に形成されている。指当て部50に凹形状の湾曲面が設けられることにより、指当て部50を背面側に加圧した際にフィット性が得られる。
【0044】
指当て部50が凸状の頂点51と扁平形状とを有することにより、厚さ方向に過度に撓ませないように調整し、かつネック部4から把持部5への撓みの伝播を抑止することができる。
また、凸状の頂点51を設けることで、把持部5の正面側の肉厚を多く確保でき、厚さ方向に過度に撓まず、且つ、適度な柔軟性を把持部5側に伝えることでネック部4から把持部5への撓みの伝播を抑止することができる。
【0045】
ヘッド部3の先端から指当て部50の先端側端部(第4位置P4)までの長軸方向の長さとしては、77mm以上、90mm以下であることが好ましい。
ヘッド部3の先端から指当て部50の先端側端部までの長軸方向の長さを77mm以上、90mm以下とすることにより、指当て部50の先端側端部よりも先端側が十分に長くなり、奥歯の奥まで届きやすくなる。
【0046】
ネック部4の最細部(第2位置P2)から指当て部50の先端側端部(第4位置P4)までの長軸方向の長さとしては、52mm以上、70mm以下であることが好ましい。
ネック部4の最細部から指当て部50の先端側端部までの長軸方向の長さを52mm以上、70mm以下とすることにより、ネック部4が十分に長くなり、奥歯の奥まで届きやすくなる。
【0047】
ネック部4から把持部5の後端にかけて、厚さ方向の背面側または正面側のどちらか一方がヘッド部3の背面と把持部5の背面間の厚さ方向の距離、あるいはヘッド部3の正面(植毛面3a)と把持部5の正面の厚さ方向の距離が2.5mm以下で、且つ、長軸方向と直交する断面形状が幅広の扁平であり、厚さ方向の背面側または正面側のどちらか他方がネック部4から指当て部50までの厚さが漸次増加することが好ましい。
これにより、ネック部4から指当て部50までの厚さが一つの向きに増加するため、ロング型のネック部4であっても撓りにくくしっかりした磨き心地が得られる。また、ネック部4と把持部5の厚さ方向位置の差が小さいため、口腔内の狙った位置を磨きやすくなる。また、第3直線領域L3の後端側端部の位置は、後述する第3位置P3から長軸方向で±15mm以内にあることが好ましい。
【0048】
この構成を採る場合には、ネック部4の幅方向の長さが最小となる最も後端側の位置から指当て部50の先端側端部までの領域で、例えば、5~10mmで急激に厚さが増加することが好ましい。また、ヘッド部3の背面と把持部5の背面、あるいはヘッド部3の正面と把持部5の正面とは平行であることが好ましい。これにより、把持部5からヘッド部3に伝達した力が同ベクトルで歯に加わりしっかりした磨き心地を得ることができ操作性を高めることができる。
【0049】
把持部5は、厚さ方向の長さが9.0mm以上であり、幅方向の長さが10mm以上であり、且つ、厚さと幅が一定の領域を80mm以上有し、且つ、硬質樹脂のみで形成されることが好ましく、厚さと幅が一定の領域を90mm以上、120mm以下で有することがより好ましい。
把持部5の厚さと幅が一定の領域が80mm未満の場合には、手のひら全体で握ることができず安定しない。把持部5の厚さと幅が一定の領域が120mmを超えた場合には、握る箇所が定まらず、後端側で把持した場合に重心が安定しない。把持部5の厚さおよび幅を上記の範囲で、且つ、硬質樹脂のみで形成することにより、撓みにくく、且つ、しっかりと握ることができ、しっかりとした磨き心地を得ることができる。
【0050】
指当て部50の先端から把持部5の後端までの把持部5の長軸方向の長さは、80mm以上、120mm以下であり、ハンドル体2の全長としては、上述したように、150mm以上、200mm以下であることが好ましい。
把持部5およびハンドル体2を上記の範囲の長さとすることにより、しっかりと握ることができ、しっかりした磨き心地が得られるとともに、全長が十分に確保されていることで、握りやすさと口腔内の届きやすさを確保できる。
【0051】
(領域A~領域D)
図1に示すように、ネック部4において、第2位置P2から、ネック部4の長軸方向の長さに対して65%となる第3位置P3までの領域をCとし、第3位置P3から、ネック部4の長軸方向の長さに対して35%となる、ネック部4と把持部5との境界の第4位置P4までの領域をDとすると、(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.0の関係を満足することが好ましく、(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.5の関係を満足することがより好ましい。
【0052】
(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.0、すなわち、ネック部4において後端側に位置する領域Dの体積を、ネック部4において先端側に位置する領域Cの体積以上とすることにより、ネック部4の先端側における口腔内操作性の利点を確保しつつ、ネック部4の把持部5側の根本を強固にして撓りと捻れを抑制することができる。
【0053】
領域A~領域Dの各体積としては、各領域A~Dの正面視における面積×側面視における面積/長軸方向の長さにより算出した。
【0054】
領域Cの後端側端部の第3位置P3における幅方向の長さとしては、6.7mm以下であることが好ましい。
第3位置P3における幅方向の長さを6.7mm以下とすることにより、ネック部4がヘッド部3との境界の第2位置P2から第3位置P3まで細い領域が続くことになり、操作性を確保できる。
【0055】
領域Cの長軸方向の全体に亘り、(領域Cの幅方向の最大長さ)/(領域Cの厚さ方向の最大長さ)で表される値は、1.0以上、1.8以下であることが好ましい。
(領域Cの幅方向の最大長さ)/(領域Cの厚さ方向の最大長さ)で表される値を、領域Cの長軸方向の全体に亘り、1.0以上、1.8以下とすることにより、ワイドヘッド型の歯ブラシ1におけるネック部4として幅広とすることで捻れにくくなる。
【0056】
領域Cの始点となる第2位置P2に対し、幅方向の長さが1mm大きくなる位置は、領域Cの始点を基準とし、ネック部4の長軸方向の長さの40%となる位置よりも指当て部50側に存在することが好ましく、ネック部4の長軸方向の長さの50%となる位置よりも指当て部50側に存在することがより好ましい。
幅方向の長さが1mm大きくなる位置が、ネック部4の長軸方向の長さの40%となる位置よりも指当て部50側に存在することにより、幅方向の長さが小さく細い領域が長く存在するため操作性を高めることができる。
【0057】
領域Dの後端側端部である第4位置P4において、幅方向の最大長さは、厚さ方向の最大長さよりも大きいことが好ましい。
第4位置P4において、幅方向の最大長さが厚さ方向の最大長さよりも大きいことで、幅方向に扁平する形状とすることができる。
【0058】
領域Dの体積としては、1000mm3以上であることが好ましく、1300mm3以上であることがより好ましい。
領域Dの体積を1000mm3以上とすることにより、ネック部4の根本の体積が十分に大きくなり、撓りと捩れを抑制することができる。
【0059】
領域Dの後端側端部である第4位置P4における幅方向の最大長さは、11mm以上であり、且つ、(第4位置P4における幅方向の最大長さ)-(第4位置P4における厚さ方向の最大長さ)≧2mmの関係を満足することが好ましい。
領域Dの後端側端部である第4位置P4における幅方向の最大長さを11mm以上にするとともに、(第4位置P4における幅方向の最大長さ)-(第4位置P4における厚さ方向の最大長さ)≧2mmの関係を満足することにより、ネック部4の根本が幅広であるため、ネック部4が幅方向に曲がることと捩れを抑制することができる。
【0060】
また、1.5mm≦(領域Aの幅方向の最大長さ)-(第4位置P4における幅方向の最大長さ)≦7mmの関係を満足することが好ましい。
(領域Aの幅方向の最大長さ)-(第4位置P4における幅方向の最大長さ)が1.5mm未満の場合、ワイドヘッド型のヘッド部3として適用されない、あるいはネック部4の根元が異常に幅広となり使用感を損なうことになる。(領域Aの幅方向の最大長さ)-(第4位置P4における幅方向の最大長さ)が7mmを超えた場合、捻れ抑止効果が低下してしまう。
【0061】
また、(第4位置P4における厚さ方向の最大長さ)-(第3位置P3における厚さ方向の最大長さ)≧3mmの関係を満足することが好ましい。
(第4位置P4における厚さ方向の最大長さ)-(第3位置P3における厚さ方向の最大長さ)≧3mmの関係を満足することにより、ネック部4の領域D内で厚さの差を大きくできる。そのため、厚さ方向の撓みを把持部5に伝播させることを抑制できる。従って、短い領域D内でネック部4の厚さが急激に増加することで、操作性の利点を確保しつつ捩れを抑制することができる。
【0062】
ヘッド部3における領域Aと、ネック部4の領域Dについては、(領域Aの体積)/(領域Dの体積)≦0.60の関係を満足することが好ましく、(領域Aの体積)/(領域Dの体積)≦0.40の関係を満足することがより好ましい。領域Aの体積については、植毛穴6の容積(全穴体積)を除いている。
(領域Aの体積)/(領域Dの体積)≦0.60とすることにより、ネック部4の後端側の体積に対して、ヘッド部3の体積を小さくできる。そのため、(領域Aの体積)/(領域Dの体積)≦0.60とすることで、薄型ワイドヘッドによる効率的な刷掃と操作性の利点を確保しつつ、ネック部4の後端側を強固にして撓りと捻れを抑制することができる。
【0063】
ヘッド部3における領域Aおよび領域Bと、ネック部4の領域Cについては、0.7≦(領域Aの体積)/[(領域Bの体積)+(領域Cの体積)]≦1.0の関係を満足することが好ましい。領域Bの体積については、植毛穴6の容積(全穴体積)を除いている。
0.7≦(領域Aの体積)/[(領域Bの体積)+(領域Cの体積)]≦1.0の関係を満足することにより、領域Aの体積が領域Bの体積と領域Cの体積の総和に対して小さくなるため、操作性を確保できる。
【0064】
(第3位置P3における厚さ方向の最大長さ)-(長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの平均値)≦2mmの関係を満足することが好ましい。長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの平均値は、(長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの最大値+長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの最小値)/2で表される値で定義される。
(第3位置P3における厚さ方向の最大長さ)-(長軸方向に亘る領域Aの厚さ方向の長さの平均値)≦2mmの関係を満足することにより、ヘッド部3からネック部4における先端側(ヘッド部3側)の65%の厚さが大きく変化しないため、操作性を向上させることができる。
【0065】
領域Cは、長軸方向に亘り、厚さ方向の最大長さが4.5mm以下であり、(第3位置P3における幅方向の最大長さ)-(第3位置P3における厚さ方向の最大長さ)>1mmの関係を満足することが好ましい。
領域Cが、長軸方向に亘り、厚さ方向の最大長さが4.5mm以下であり、(第3位置P3における幅方向の最大長さ)-(第3位置P3における厚さ方向の最大長さ)>1mmの関係を満足することにより、ネック部4の根元に至るまでの部分で操作性の利点を確保しつつ、ネック部4が幅広であり、ネック部4が幅方向に撓ることと捩れとを抑制することができる。
【0066】
(領域Aの体積と領域Cの体積との総和)/(領域Aの体積と領域Bの体積と領域Cの体積と領域Dの体積の総和)≦0.70の関係を満足することが好ましく、0.20≦(領域Aの体積と領域Cの体積との総和)/(領域Aの体積と領域Bの体積と領域Cの体積と領域Dの体積の総和)≦0.50の関係を満足することがより好ましい。
(領域Aの体積と領域Cの体積との総和)/(領域Aの体積と領域Bの体積と領域Cの体積と領域Dの体積の総和)≦0.70の関係を満足することにより、ハンドル体2の全体に対し、捩れを誘引する領域の割合を小さくでき、捩れにくくすることができる。
【0067】
図3は、ヘッド部3およびネック部4の一部を部分的に拡大した正面図である。
図3に示すように、正面視において、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も後端側に位置するヘッド部3の一方の側縁の点P11と、ネック部4の幅方向の長さが最小となる最も先端側に位置する点P12とを結ぶ線分S1と、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も後端側に位置するヘッド部3の両側縁の点同士を結ぶ線分S2とが交差する角度のうち、小さい側の角度αは、40°以上、60°以下であることが好ましい。
線分S1と線分S2とが交差する角度αを40°以上、60°以下とすることにより、ヘッド部3の後端側の幅が急峻に収束することになり、ネック部4が最細部となるまでの長さを小さくでき操作性を高めることができる。
【0068】
図3に示すように、正面視において、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も後端側に位置するヘッド部3の一方の側縁の点P11と、ネック部4の幅方向の長さが最小となる最も後端側に位置する点P13とを結ぶ線分S3と、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も後端側に位置するヘッド部3の両側縁の点同士を結ぶ線分S2とが交差する角度のうち、小さい側の角度βは、75°以上、85°以下であることが好ましい。
線分S3と線分S2とが交差する角度βを75°以上、85°以下とすることにより、ネック部4が最細部となる長さを確保でき操作性を高めることができる。
【0069】
図4は、ヘッド部3およびネック部4の一部を部分的に拡大した正面図である。
図4に示すように、正面視において、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も先端側に位置するヘッド部3の一方の側縁の点P14と、ネック部4の幅方向の長さが最小となる最も先端側に位置する点P12とを結ぶ線分S4と、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も先端側に位置するヘッド部3の両側縁の点同士を結ぶ線分S5とが交差する角度のうち、小さい側の角度γは、70°以上、80°以下であることが好ましい。
線分S4と線分S5とが交差する角度γを70°以上、80°以下とすることにより、厚さが薄い領域が長いヘッド部3となるため、奥歯の奥を磨きやすくなる。
【0070】
図4に示すように、正面視において、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も先端側に位置するヘッド部3の一方の側縁の点P14と、ネック部4の幅方向の長さが最小となる最も後端側に位置する点P13とを結ぶ線分S6と、ヘッド部3の幅方向の長さが最大となる最も先端側に位置するヘッド部3の両側縁の点同士を結ぶ線分S5とが交差する角度のうち、小さい側の角度Δは、80°以上、85°以下であることが好ましい。
線分S6と線分S5とが交差する角度Δを80°以上、85°以下とすることにより、厚さが薄い領域が長いヘッド部3となるため、奥歯の奥を磨きやすくなる。また、ネック部4の長さが過度に長くなることを抑制し、ネック部4が過度に撓むことなく磨くことができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の歯ブラシ1においては、ネック部4が幅方向に曲がったり、長軸方向を中心とする周方向に捻れることを抑制できるワイドヘッド型の歯ブラシを提供できる。
【0072】
[実施例]
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0073】
(実施例1~9、比較例1~2)
本実施例では、下記[表1]に示す仕様に従って、実施例1~9、比較例1~2の歯ブラシのサンプルを作製した。
各例の歯ブラシの各部位は表1に示す寸法とした。ハンドル体の硬質樹脂は、ポリプロピレン(PP)樹脂を用いた。
【0074】
実施例1~9、比較例1~2のサンプルは、いずれもヘッド部の幅方向の最大長さを15.0mmとし、ヘッド部の厚さ方向の長さを一定の3.0mmとし、ネック部の幅方向の最大長さを4.0mmとし、ネック部の厚さ方向の最大長さを4.0mmとした。
【0075】
[評価方法]
10人の専門化パネルが、各例の歯ブラシのサンプルで口腔内を清掃し、その際の「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」を下記の評価基準で評価した。10人の専門化パネルの平均点に基づき下記の評価とした。専門化パネル10人の平均点が5.5点以上を「◎(Very Good)」、平均点4.0点以上、5.5点未満を「○(Good)」、平均点3.0点以上4.0点未満を「△(Not Bad)」、平均点3.0点未満を「×(Bad)」とした。
【0076】
(1)幅方向への撓りにくさ
[評価基準]
7点:非常に撓みにくい。
6点:かなり撓みにくい。
5点:やや撓みにくい。
4点:どちらともいえない。
3点:やや撓みやすいが許容できる。
2点:かなり撓みやすい。
1点:非常に撓みやすい。
【0077】
(2)捩れずにしっかり磨ける感じ
7点:全く捩れずにしっかり磨ける。
6点:ほとんど捩れずにしっかり磨ける。
5点:あまり捩れずにしっかり磨ける。
4点:どちらともいえない。
3点:やや捩れてしっかり磨けないが許容できる。
2点:かなり捩れてしっかり磨けない。
1点:非常に捩れてしっかり磨けない。
【0078】
【0079】
[表1]に示されるように、幅方向のヘッド部の最大長さが、12mm以上、18mm以下であり、厚さ方向のヘッド部の最大長さが、2mm以上、4mm以下であり、ネック部の幅方向の最小長さおよび厚さ方向の最小長さが、3mm以上、5mm以下であり、(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.0の関係を満足し、領域Dの後端側端部の位置である第4位置における幅方向の最大長さが厚さ方向の最大長さよりも大きい実施例1~9の歯ブラシのサンプルでは、「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」の両方で良好な評価が得られた。
【0080】
また、(領域Aの体積)/(領域Dの体積)≦0.60の関係を満足する実施例3~4、9の歯ブラシのサンプルでは、「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」の両方で良好な評価が得られた。
【0081】
また、領域Dの体積が、1000mm3以上である実施例5~6、9の歯ブラシのサンプルでは、「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」の両方で良好な評価が得られた。
【0082】
また、(領域Aの体積と領域Cの体積との総和)/(領域Aの体積と領域Bの体積と領域Cの体積と領域Dの体積の総和)≦0.70の関係を満足する実施例2~7、9の歯ブラシのサンプルでは、「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」の両方で良好な評価が得られた。
【0083】
また、第4位置における幅方向の最大長さが、11mm以上であり、且つ、(第4位置における幅方向の最大長さ)-(第4位置における厚さ方向の最大長さ)≧2mmの関係を満足する実施例8~9の歯ブラシのサンプルでは、「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」の両方で良好な評価が得られた。
【0084】
上記の結果から、実施例9の歯ブラシのサンプルが「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」の両方で特に良好な評価が得られ、次いで、実施例2、6の歯ブラシのサンプルでより良好な評価が得られた。
【0085】
一方、(領域Dの体積)/(領域Cの体積)≧1.0の関係を満足しない比較例1、および領域Dの後端側端部の位置である第4位置における幅方向の最大長さが厚さ方向の最大長さよりも小さい比較例2では、「幅方向への撓みにくさ」と「捩れずにしっかり磨ける感じ」の両方で良好な評価が得られなかった。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…歯ブラシ、 3…ヘッド部、 3a…植毛面、 4…ネック部、 5…把持部、 6…植毛穴