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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100471
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ポリ乳酸樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20220629BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20220629BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20220629BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220629BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20220629BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20220629BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20220629BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20220629BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20220629BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220629BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220629BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20220629BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220629BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220629BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08K5/103
C08K5/20
C08L101/00
C08L101/14
C08K3/34
C08K5/13
B29B9/06
B29B7/48
B33Y80/00
B33Y70/00
B29C64/106
B33Y10/00
C08J5/18 CES
C08J5/18 CET
C08J5/18 CEX
C08J5/18 CEY
C08J5/18 CFD
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214460
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515000812
【氏名又は名称】セツナン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 朗
(72)【発明者】
【氏名】木谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】松本 理沙
【テーマコード(参考)】
4F071
4F201
4F213
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA20
4F071AA22
4F071AA29
4F071AA33
4F071AA43
4F071AA89
4F071AB26
4F071AC10
4F071AE18
4F071AF20Y
4F071AF23
4F071AF45Y
4F071AH05
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB04
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC03
4F201AA24
4F201AB07
4F201AB11
4F201AB16
4F201AB27
4F201BA01
4F201BA02
4F201BD04
4F201BD05
4F201BD07
4F201BD10
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK40
4F201BL08
4F201BL12
4F213AA04
4F213AA10
4F213AA11
4F213AA13
4F213AA21
4F213AA24
4F213AB11
4F213AB16
4J002AB002
4J002BB022
4J002BB032
4J002BB112
4J002BB122
4J002BC032
4J002BE022
4J002BG042
4J002BG052
4J002CF181
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EH047
4J002EJ067
4J002EP007
4J002FD016
4J002FD202
4J002FD207
4J002GG02
4J200AA04
4J200BA14
4J200CA01
4J200EA04
4J200EA05
4J200EA07
(57)【要約】
【課題】フィラー起因の特性に優れた樹脂組成物であって、成形時の生産性に優れた樹脂組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂と、フィラーとを含む、ポリ乳酸系樹脂であって、該ポリ乳酸系樹脂が、フィラー分散剤および/またはフィラー分散用ポリマーをさらに含み、該ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラーの含有割合が30重量%~70重量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂と、フィラーとを含む、ポリ乳酸樹脂組成物であって、
該ポリ乳酸樹脂組成物が、フィラー分散剤および/またはフィラー分散用ポリマーをさらに含み、
該ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラーの含有割合が30重量%~70重量%である、
ポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
前記フィラー分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
前記フィラー分散用ポリマーが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、水溶性多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】
前記フィラー分散用ポリマーが、ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1または2に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記フィラー分散剤および前記フィラー分散用ポリマーの合計含有割合が、0.1重量%~10重量%である、請求項1から4のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項6】
前記フィラーが、タルクおよびマイカから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項7】
ポリ乳酸系樹脂とフィラー造粒物とを溶融混練することを含み、
該フィラー造粒物が、前記フィラーと前記フィラー分散剤および/または前記フィラー分散用ポリマーとを含み、
該フィラー造粒物中、該フィラーの含有割合が、フィラー造粒物100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である、
請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物から形成された成形体であって、
23℃における曲げ弾性率が10GPa以上である、成形体。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物から形成された成形体であって、
荷重0.45MPa条件の荷重たわみ温度が120℃以上である、成形体。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物から形成された、射出成形体。
【請求項11】
請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物から形成された、押出成形体。
【請求項12】
請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物から形成された、シート状賦形物。
【請求項13】
請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物から形成された、3Dプリンター造形物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、植物由来の樹脂であり、生分解性樹脂として知られている。ポリ乳酸は、耐熱性向上のために結晶化して用いられることがあるが、当該ポリ乳酸は、結晶化速度が遅く、成形時の生産性が低いという問題、例えば、射出成形における成形サイクルが長いという問題がある。
【0003】
また、一般に、樹脂組成物に各種のフィラーを配合して、特性向上した成形体を得る試みがなされている。フィラーを高濃度で配合することは、生産上の問題(例えば、混練機にフィラーを投入する際のフィードネック)、フィラー分散性の問題等により、非常に困難である。例えば、特許文献1においては、ポリ乳酸とフィラーとを混合して樹脂組成物を得ることが開示されているが、当該文献においても、実質的には、フィラーの配合量は30重量%程度が限界である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-352844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、フィラーを高濃度で含有することが困難な従来の樹脂組成物においては、フィラー起因の特性(例えば、剛性、耐熱性、形状安定性)が十分に発揮されないという課題を有する。本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、フィラー起因の特性に優れた樹脂組成物であって、成形時の生産性に優れた樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂と、フィラーとを含む、ポリ乳酸樹脂組成物であって、該ポリ乳酸樹脂組成物が、フィラー分散剤および/またはフィラー分散用ポリマーをさらに含み、該ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラーの含有割合が30重量%~70重量%である。
1つの実施形態においては、上記フィラー分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記フィラー分散用ポリマーが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、水溶性多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記フィラー分散用ポリマーが、ポリビニルアルコール系樹脂である。
1つの実施形態においては、上記ポリ乳酸樹脂組成物中の前記フィラー分散剤および前記フィラー分散用ポリマーの合計含有割合が、0.1重量%~10重量%である。
1つの実施形態においては、上記フィラーが、タルクおよびマイカから選ばれる少なくとも1種である。
本発明の別の局面によれば、上記ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法が提供される。このポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、ポリ乳酸系樹脂とフィラー造粒物とを溶融混練することを含み、該フィラー造粒物が、前記フィラーと前記フィラー分散剤および/または前記フィラー分散用ポリマーとを含み、該フィラー造粒物中、該フィラーの含有割合が、フィラー造粒物100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である。
本発明の別の局面によれば、上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成された成形体が提供される。1つの実施形態においては、この成形体の23℃における曲げ弾性率は10GPa以上である。
1つの実施形態においては、上記成形体の荷重0.45MPa条件の荷重たわみ温度は120℃以上である。
本発明の別の局面によれば、上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成された射出成形体が提供される。
本発明の別の局面によれば、上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成された押出成形体が提供される。
本発明の別の局面によれば、上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成されたシート状賦形物が提供される。
本発明の別の局面によれば、上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成された3Dプリンター造形物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィラー起因の特性に優れた樹脂組成物であって、成形時の生産性に優れた樹脂組成物およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.ポリ乳酸樹脂組成物
A-1.ポリ乳酸樹脂組成物の概要
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂と、フィラーとを含む。上記ポリ乳酸樹脂組成物は、フィラー分散剤および/またはフィラー分散用ポリマーをさらに含む。上記ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー含有割合は、30重量%~70重量%である。なお、「ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー含有割合」は、ポリ乳酸樹脂組成物中の全固形分を基準とした重量割合である。
【0009】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、高含有量でフィラーを含むため、ポリ乳酸系樹脂を主成分としながらも、機械的特性(例えば、剛性、寸法安定性(低成形収縮率、低線膨張係数、低そり))に優れた成形体を形成することが可能である。また、上記ポリ乳酸樹脂組成物においては、耐熱性(耐熱変形温度性)、外観、着色性(明彩色への着色が可能)、フィラー分散性、組成均一性の観点からも有利に用いられ得る。また、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、溶融混練にて製造される際の生産速度にも優れる。さらには、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、自然物由来、または生分解性材料で構成することができる点でも有利である。本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、剛性、耐熱性に優れる上、成形品の外観にも優れるため、高剛性/高耐熱部品(例えば、ファン部品、エアコン吹き出し口)、高耐熱/高剛性トレー(例えば、レンジ対応賦形容器)、高剛性/高耐熱の3D造形用フィラメント、等の工業的製品用原料として広く用いることができる。
【0010】
また、上記ポリ乳酸樹脂組成物においては、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度が速く、射出成形時の成型性に優れ、成形サイクルを短縮させることができる。ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化の度合いは示差走査型熱量計(DSC)測定により評価することができる。ここで示差走査熱量測定とは、試料5~10mgを常温から200℃に一定の昇温速度で加熱し、200℃で5分間保持した後、一定の降温速度条件度で常温まで冷却する一連の操作過程におけるポリ乳酸結晶の融解の吸熱量、および再結晶化の発熱量を測定するものである。ここで、降温過程における再結晶化の発熱ピークが速い降温速度で発生するほど、あるいは、高温領域で発生するほど、成形加工時に結晶化が可能となり、成形速度(成形サイクル)を高めることができるようになる。上記ポリ乳酸樹脂組成物では、この結晶化由来の発熱ピークは、ポリ乳酸換算で10J/g以上であることが好ましく、20J/g以上がより好ましく、25J/g以上であることが更に好ましい。この結晶化由来の発熱ピークが、ポリ乳酸換算で10J/g以上であると結晶化の進行により優れた耐熱性を発揮させることができる。なお、ここで言うポリ乳酸換算とは、発熱ピークの発熱量を樹脂組成物試料に含まれるポリ乳酸の含有量で除した値である。
【0011】
上記のように優れた特性を有する本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、例えば、上記フィラーとフィラー分散剤および/またはフィラー分散用ポリマーとを含むフィラー造粒物を形成し、その後、当該フィラー造粒物とポリ乳酸系樹脂とを混合すること(例えば、溶融混練により混合すること)により、得ることができる。このような製造方法を採用することにより、フィラー添加の作業性、およびフィラー分散性が著しく向上し、高含有量でフィラーを含有させることが可能となる。
【0012】
1つの実施形態においては、上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成された成形体が提供される。当該成形体の23℃における曲げ弾性率は、好ましくは10GPa以上であり、より好ましくは12GPa以上であり、さらに好ましくは15GPa以上である。曲げ弾性率は、ISO178に準拠して測定される。成形体は、例えば、後述のように、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを用いて、射出成形して得られ得る。
【0013】
上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成された成形体の荷重0.45MPa条件の荷重たわみ温度は、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、さらに好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。荷重たわみ温度は、ダンベル型試験片(1A型多目的試験片)を用い、ISO75に準拠して測定される。
【0014】
上記ポリ乳酸樹脂組成物から形成された成形体の23℃における引張強度は、好ましくは35MPa以上であり、より好ましくは40MPa以上であり、さらに好ましくは50MPa以上である。引張強度および後述の判断伸びは、ダンベル型試験片(1A型多目的試験片)を用い、ISO527に準拠して、引っ張り速度5mm/min条件で、測定される。
【0015】
上記ポリ乳酸樹脂組成物では、降温過程における再結晶化の発熱ピークが高温領域で発生するほど、成形加工において、成形サイクルを短縮化できるので好ましく、前述のDSC測定により、200℃の温度から10℃/minの降温条件において、上記の再結晶化の発熱ピークが、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上である。
【0016】
A-2.ポリ乳酸系樹脂
上記ポリ乳酸系樹脂としては、任意の適切なポリ乳酸系樹脂を用いることができる。ポリ乳酸系樹脂は、通常の使用環境下では合成樹脂と同等の特性を有し得、使用状態も合成樹脂と同等であり得、特定の廃棄環境下において分解性を示す。
【0017】
上記ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸(ホモポリマー)の他、乳酸由来の構成単位を含むコポリマーであってもよい。1つの実施形態においては、ポリ乳酸系樹脂は、乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーであり得る。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂としては、L-乳酸率が高いポリ乳酸系樹脂が、融点が高いので、好ましく使用される。ポリ乳酸系樹脂のL-乳酸率は、好ましくは96%以上であり、より好ましくは98%以上であり、さらに好ましくは98.6%以上である。
【0018】
ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸系樹脂の含有割合は、好ましくは31重量%~69重量%であり、より好ましくは35重量%~65重量%であり、さらに好ましくは40重量%~60重量%である。なお、「ポリ乳酸樹脂組成物中のポリ乳酸系樹脂の含有割合」は、ポリ乳酸樹脂組成物中の全固形分を基準とした重量割合である。
【0019】
A-3.フィラー
上記フィラーとしては、所望の特性に応じて、任意の適切なフィラーを用いることができる。
【0020】
上記フィラーによって付与できる特性・効果としては、例えば、増量化または軽量化、補強(高剛性化、高弾性率化、高強度化)、寸法安定性、成形サイクル(結晶化速度)、結晶化度、熱伝導性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、断熱性、電磁波吸収性、光反射性、光散乱性、熱線輻射性、難燃性、放射線防護、紫外線防護、脱湿、脱水、脱臭、ガス吸収、ガスバリア、アンチブロッキング、吸油、抗菌性、生分解促進性、バイオ度向上(天然物由来成分量の比率向上)等が挙げられる。
【0021】
例えば、増量の目的では、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレーが好適である。補強の目的では、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、繊維状マグネシウム化合物(MOS)、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー等が好適である。抗菌付与の目的では、カテキン、銀イオン担持ゼオライト、銅フタロシアニン、等が好適である。ガスバリア性付与の目的では、合成マイカ系、クレー・合成マイカのナノフィラー、等が好適である。軽量化の目的では、シリカバルーン、ガラスバルーン、セノスフィア、パーライト、シラスバルーン、等のバルーン系が好適である。導電性付与の目的では、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔、が好適である。磁性付与の目的では、各種磁性材料、各種フェライト系、磁性酸化鉄、サマコバ(Sm-Co)、Nd-Fe-B、等が好適である。熱伝導性付与の目的では、アルミナ、AlN、BN、BeO、等が好適である。圧電性付与の目的では、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、等が好適である。制振性付与の目的では、マイカ、黒鉛、チタン酸カリウム、ゾノトライト、炭素繊維、フェライト、等が好適である。遮音性付与の目的では、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。摺動性付与の目的では、黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、テフロン(登録商標)粉、タルク、高分子量ポリエチレン、等が好適である。電磁波吸収付与の目的では、電磁波吸収フェライト、黒鉛、木炭粉、カーボンマイクロコイル(CMC)、カーボンナノチューブ(CNT)、PZT、等が好適である。光反射、光散乱付与の目的では、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ、等が好適である。熱線輻射付与の目的では、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、MOS、アルミナ、木炭粉末、等が好適である。難燃化の目的では、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、赤燐、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、等が好適である。放射線防護の目的では、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。「紫外線防護」の目的では、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、等が好適である。脱湿、脱水の目的では、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。脱臭、ガス吸収の目的では、ゼオライト、活性白土、等が好適である。アンチブロッキング(フィルムの圧着防止)の目的では、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、球状微粒子(シリコーンやアクリルビーズ)、等が好適である。吸油(印刷インク吸収、速乾性等)の目的では、毬藻状炭酸カルシウム、毬藻状ゾノトライト、等が好適である。吸水の目的では、吸水用の高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。バイオ度向上の目的には、セルロース系材料(木粉、木繊維、おがくず、木屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、麦わら、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツの殻、大豆の外皮、等)、でんぷん、天然ゴム、等が好適である。
【0022】
上記フィラーのサイズは、任意の適切なサイズとすることができる。フィラーの粒子径は、例えば、10nm~100μmである。フィラーのサイズはレーザー回折法により求めることができる。
【0023】
1つの実施形態においては、上記フィラーとして、珪酸塩化合物が用いられる。珪酸塩化合物としては、例えば、タルク、マイカ、ワラストナイトが好ましく用いられ得る。1つの実施形態においては、上記フィラーは、タルクおよびマイカから選ばれる少なくとも1種である。特に好ましくはタルクである。上記珪酸塩化合物は、ポリ乳酸樹脂組成物の強化材としての作用効果のみならず、ポリ乳酸の結晶核剤としての作用効果を有し、当該珪酸塩化合物を用いれば、ポリ乳酸の到達結晶化度を高め、同時に結晶化速度を早くする効果が得られる。この結果、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性を高めることができ、また固化時間を短縮化できるので、成形加工性を向上させることが可能となる。
【0024】
上記のとおり、ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー含有割合は、30重量%~70重量%である。ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー含有割合は、好ましくは35重量%~65重量%であり、さらに好ましくは40重量%~60重量%である。
【0025】
A-4.フィラー分散剤
1つの実施形態において、上記フィラー分散剤は、疎水基と親水基とから構成される化合物である。親水性/疎水性バランスは、フィラー分散剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度を調整することにより、制御することができる。親水性/疎水性バランスは、上記フィラーの種類、粒状フィラー組成物に組み合わされる樹脂の種類等に応じて、任意の適切なバランスとされ得る。
【0026】
ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー分散剤の含有割合は、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、より好ましくは1重量%~8重量%であり、さらに好ましくは1重量%~5重量%である。このような範囲であれば、フィラー起因の特性に優れた樹脂組成物とすることができ、生産性およびフィラーの分散性に優れるポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。なお、「ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー分散剤の含有割合」は、ポリ乳酸樹脂組成物中の全固形分を基準とした重量割合である。
【0027】
ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー分散剤およびフィラー分散用ポリマーの合計含有割合は、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、より好ましくは1重量%~8重量%であり、さらに好ましくは1重量%~5重量%である。このような範囲であれば、フィラー起因の特性に優れた樹脂組成物とすることができ、生産性およびフィラーの分散性に優れるポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。なお、「フィラー分散剤およびフィラー分散用ポリマーの合計含有割合」とは、ポリ乳酸樹脂組成物がフィラー分散剤を含まない場合は、フィラー分散用ポリマーの含有割合を意味し、ポリ乳酸樹脂組成物がフィラー分散用ポリマーを含まない場合は、フィラー分散剤の含有割合を意味する。
【0028】
1つの実施形態において、上記フィラー分散剤は、エステル系化合物である。1つの実施形態においては、上記フィラー分散剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。なかでも、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が、フィラーの分散機能に優れるのみならず、ポリ乳酸樹脂組成物中の結晶化を促進する作用を有する場合があり、特に好ましく使用される。
【0029】
上記多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。上記多価アルコール脂肪酸エステルは、上記多価アルコールと脂肪酸をエステル化反応させることで得られ得る。
【0030】
上記多価アルコールは、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリンなどのアルカンポリオール;該アルカンポリオールの重合体であるポリアルカンポリオール;ショ糖などの糖類;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコールに代表される糖誘導体等が挙げられる。これらのアルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記脂肪酸としては、任意の適切な脂肪酸が用いられ得る。1つの実施形態においては、炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸が用いられる。脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ガドレイ酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、べヘン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12-ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられる。なかでも好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸である。脂肪酸は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記脂肪酸アマイドとは、脂肪酸とアンモニアあるいは 1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つ化合物である。上記脂肪酸アマイドは、特に限定されないが、具体的には、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸モノアミド類、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド類、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド等の不飽和脂肪族ビスアミド類、m-キシリレンビスステアリン酸アミド等の芳香族系ビスアミド類等を挙げることができる。これら脂肪酸アミドは、単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。これらの中でも、融解温度が約70℃~120℃の範囲であるものが特に好ましい。
【0032】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。
【0033】
上記ポリグリセリンとしては、任意の適切なポリグリセリンが用いられ得る。上記ポリグリセリンの具体例としては、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、エイコサグリセリン、テトラコンタグリセリン等が挙げられる。なかでも好ましくは、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタグリセリンまたはデカグリセリンである。ポリグリセリンは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記脂肪酸としては、任意の適切な脂肪酸が用いられ得る。1つの実施形態においては、炭素数が8以上(好ましくは8~24、より好ましくは10~22)の脂肪酸が用いられる。脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ガドレイ酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、べヘン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12-ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられる。なかでも好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸である。脂肪酸は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは50%~70%である。このような範囲であれば、製造安定性に優れるフィラー造粒物を得ることができる。また、当該フィラー造粒物は、樹脂(特に、熱可塑性樹脂)に対する分散性に優れる。エステル化率(%)は、エステル化率(%)=(構成脂肪酸のmol数/ポリグリセリンの水酸基の数)×100の式で表される。
【0037】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、任意の適切な方法により得ることができる。例えば、ポリグリセリンと脂肪酸とを、触媒(例えば、リン酸、p-トルエンスルホン酸、苛性ソーダ)の存在下または無触媒で、100℃~300℃(好ましくは120℃~260℃)で、生成水を系外除去しながら、反応させることにより得ることができる。上記反応は不活性ガスの存在下で行うのが好ましい。また、トルエン、キシレン等の共沸溶剤中で行っても良い。
【0038】
上記縮合ヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシ脂肪酸を脱水縮合して得ることができる。縮合ヒドロキシ脂肪酸は、例えば、ヒドロキシ脂肪酸に苛性ソーダ等のアルカリ触媒を添加し、加熱下で反応水を除去することにより脱水縮合して、得ることができる。
【0039】
上記縮合ヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシ脂肪酸の縮合体であり、その縮合度は、好ましくは2以上であり、より好ましくは4以上である。縮合ヒドロキシ脂肪酸の縮合度の上限は、例えば、20である。なお、縮合度とは、原料ヒドロキシ脂肪酸の酸価と縮合反応後の酸価とから計算して求めることができる。
【0040】
上記ヒドロキシ脂肪酸は、分子内に1個以上の水酸基を有する脂肪酸である。ヒドロキシ脂肪酸の具体例としては、例えば、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸、サビニン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2-ヒドロキシオクタデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸、9,10-ジヒドロキシオクタデカン酸、カムロレン酸、フェロン酸、セレブロン酸等が挙げられる。ヒドロキシ脂肪酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルは、上記縮合ヒドロキシ脂肪酸とアルコールとをエステル化反応させることで得られ得る。縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルは、例えば、上記縮合ヒドロキシ脂肪酸とアルコールとを混合し、得られた混合物に苛性ソーダ等のアルカリ触媒または燐酸等の酸触媒を添加し、加熱下で反応水を除去することにより、得ることができる。この反応中のエステル化の進行度は酸価、ケン化価、水酸基価等を測定することで確認することができる。ここで用いられる縮合ヒドロキシ脂肪酸においても、その縮合度は、上記のとおり、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。
【0042】
上記アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコールなどの二価アルコール等が挙げられる。また、上記アルコールとして、多価アルコールを用いてもよい。多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリンなどのアルカンポリオール;該アルカンポリオールの重合体であるポリアルカンポリオール;ショ糖などの糖類;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコールに代表される糖誘導体等が挙げられる。これらのアルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記縮合ヒドロキシ脂肪酸およびそのアルコールエステルの具体例としては、例えば、リシノレイン酸を脱水縮合した縮合リシノレイン酸、12ヒドロキシステアリン酸を脱水縮合した縮合12ヒドロキシステアリン酸、縮合リシノレイン酸とグリセリン6重合体のヘキサグリセリンのエステルである縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンエステル、縮合リシノレイン酸とグリセリン4重合体のテトラグリセリンのエステルである縮合リシノレイン酸テトラグリセリンエステル、縮合12ヒドロキシステアリン酸とプロピレングリコールのエステルである縮合12ヒドロキシステアリン酸プロピレングリコールエステル、縮合リシノレイン酸とプロピレングリコールとのエステルである縮合リノレイン酸プロピレングリコールエステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、太陽化学社製の「チラバゾールP-4」、「チラバゾールVR-01」、「チラバゾールVR-08」(ポリグリセリン脂肪酸エステル)、「チラバゾールH-818」(縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステル)、等が挙げられる。
【0045】
上記フィラー分散剤の重量平均分子量は、好ましくは800以上であり、より好ましくは800~4000である。このような範囲であれば、好ましくフィラー造粒物を形成して、フィラーの含有量が多いポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。より具体的には、造粒性、熱安定性および分散性に優れるフィラー造粒物を得ることができる。なお、重量平均分子量は、極限粘度法により測定することができる。
【0046】
A-5.フィラー分散用ポリマー
上記ポリ乳酸樹脂組成物は、フィラーの分散性を高める目的で、フィラー分散用ポリマーを含み得る。また、フィラー分散用ポリマーはフィラーとポリ乳酸系樹脂の界面密着性を向上させる作用効果を発揮する場合もある。
【0047】
フィラー分散用ポリマーは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂および水溶性多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり得る。これらの中で、ポリビニルアルコール系樹脂、水溶性多糖類は、ポリ乳酸系樹脂との相溶性に優れ、フィラーの分散機能に優れるのみならず、自身が生分解性の特徴を有するので、特に好ましく使用される。
【0048】
ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー分散用ポリマーの含有割合は、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、より好ましくは1重量%~8重量%であり、さらに好ましくは1重量%~5重量%である。なお、「ポリ乳酸樹脂組成物中のフィラー分散用ポリマーの含有割合」は、ポリ乳酸樹脂組成物中の全固形分を基準とした重量割合である。
【0049】
フィラー分散用ポリマーとしての上記ポリエチレン系樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン-ブテン、エチレン-オクテン等)、ポリオレフィン変性物(例えば、無水マレイン酸、アクリル酸、等の変性物)、ポリオレフィンベースのイオノマーを含む機能性ポリオレフィンコポリマー等が挙げられる。
【0050】
フィラー分散用ポリマーとしての上記ポリプロピレン系樹脂の具体例としては、ホモポリプロピレン(h-PP)、ブロックポリプロピレン(b-PP)、ランダムポリプロピレン(r-PP)、ポリプロピレンコポリマー、ポリプロピレン変性物(例えば、無水マレイン酸、アクリル酸、等の変性物)等が挙げられる。
【0051】
フィラー分散用ポリマーとしての上記ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH;クラレ社製のエバール(登録商標))、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH;三菱ケミカル社製のニチゴーGポリマー(登録商標))等が挙げられる。
【0052】
フィラー分散用ポリマーとしての上記ポリスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマー、アクリロニトリル・スチレンコポリマー、メタクリル酸・スチレンコポリマー、等)、スチレン系熱可塑性エラストマー(例えば、SIS、SEBS、SEPS、SBS等)等が挙げられる。
【0053】
フィラー分散用ポリマーとしての上記ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂の具体例としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリレート系共重合、メタクリレート系共重合体等が挙げられる。
【0054】
上記水溶性多糖類とは、グルコースやマンノース等の単糖が長くつながった構成された水溶性の化合物を意味する。1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類は、10個以上の単糖が結合することで構成されている水溶性の炭水化物である。
【0055】
1つの実施形態においては、上記水溶性多糖類は、天然由来の高分子物質であり得る。例えば、植物由来(種子や樹液、果実等)、海藻由来、微生物由来の水溶性多糖類が用いられ得る。
【0056】
上記水溶性多糖類の具体的例としては、プルラン、デキストリン、キトサン、タマリンドシードガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、カラヤガム、ペクチン、セルロース、コンニャクマンナン、大豆多糖類、カラギナン、寒天、トラガントガム、アルギン酸、キサンタンガム、ジェランガム、アグロバクテリウムスクシノグリカン、カルボキシメチルセルロース、カチオン化グアーガム等が挙げられる。なかでも、プルランまたはデキストリンが好ましく、より好ましくはプルランである。
【0057】
上記フィラー分散用ポリマーとして、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、三井化学社製のケミパール(登録商標)、ダウ・ケミカルカンパニーのHYPOD(登録商標)、ビックケミー・ジャパン社製のAQUACER(登録商標)、住友精化社製のザイクセン(登録商標)、サイデン化学社製のサイデングルー(登録商標)、サイデン化学社製のサイビノール(登録商標)、等を挙げることができる。
【0058】
A-6.その他の成分
上記ポリ乳酸樹脂組成物は、必要に応じて、任意の適切なその他の成分(添加剤)さらに含み得る。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤、脱酸素剤、着色剤等が挙げられる。 添加剤は、例えば、液体、粉体、ペレット、顆粒の形態、またはマスターバッチ等の形態で、ポリ乳酸樹脂組成物の製造工程において、任意の適切なタイミングで投入され得る。
【0059】
1つの実施形態においては、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂以外の樹脂をさらに含み得る。当該樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーまたはコポリマー、あるいは、これらのホモポリマーまたはコポリマーの変性物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル系樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーあるいはランダムポリマー等)、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等)等が挙げられる。また、天然由来の生分解性樹脂として天然ゴム等を使用することもできる。
【0060】
B.ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法
1つの実施形態においては、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、上記ポリ乳酸系樹脂と、上記フィラーと、上記フィラー分散剤および/またはフィラー分散用ポリマーとを、溶融混練して得ることができる。溶融混練の方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは2軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、二軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練された組成物はペレット化され得る。1つの実施形態においては、80℃~170℃(好ましくは100℃~160℃)の温度範囲で溶融混練が行われる。
【0061】
1つの実施形態においては、上記フィラーとフィラー分散剤および/またはフィラー分散用ポリマーとを含むフィラー造粒物を得た後、当該フィラー造粒物と上記ポリ乳酸系樹脂とを溶融混練することにより、上記ポリ乳酸樹脂組成物が得られる。このような製造方法を採用することにより、フィラー添加の作業性、およびフィラー分散性が著しく向上し、高含有量でフィラーを含有させることが可能となる。より詳細には、上記フィラー造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れるため、当該フィラー造粒物を用いれば、フィラー含有樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。さらに当該フィラー造粒物を使用した場合、フィラー分散性および成形加工性(流動性)が向上するため、フィラー造粒物を使用して得られたポリ乳酸樹脂組成物は、高濃度にフィラーを含みながらも、低負荷の押し出しによる溶融混練、すなわち、樹脂の過剰発熱が抑制された溶融混練により得られ得る。その結果、上記ポリ乳酸樹脂組成物は、樹脂の熱劣化が抑制され、優れた機械的性能と成形加工性を有する。
【0062】
(フィラー造粒物)
上記フィラー造粒物は、任意の適切な方法により製造することができる。上記フィラー造粒物は、例えば、上記フィラーと、上記フィラー分散剤および/またはバインダー成分とを含む混合物を半湿式造粒法に供することにより得ることができる。より好ましくは、上記フィラー造粒物は、上記フィラーと、上記フィラー分散剤と、バインダー成分とを含む混合物を半湿式造粒法に供することにより得ることができる。フィラー、フィラー分散剤は、A項で説明したものが用いられ得る。
【0063】
上記フィラー造粒物中、上記フィラーの含有割合は、フィラー造粒物100重量部に対して、好ましくは80重量部~99.9重量部であり、より好ましくは82重量部~99重量部であり、さらに好ましくは85重量部~98重量部であり、特に好ましくは87重量部~97重量部であり、最も好ましくは90重量部~96重量部である。
【0064】
1つの実施形態においては、バインダー成分として、上記フィラー分散用ポリマーが用いられる。別の実施形態においては、バインダー成分として、膨潤性粘土鉱物が用いられる。
【0065】
1つの実施形態においては、フィラー分散用ポリマーは、当該フィラー分散用ポリマーを含むポリマー液(ポリマー溶液またはポリマー分散液)の形態で、混合に供される。
【0066】
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物の製造方法は、上記フィラーと上記バインダー成分と上記フィラー分散剤とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
【0067】
上記混合工程においては、水をさらに混合してもよい。添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
【0068】
上記水の混合量は、フィラー造粒物中のフィラー100重量部に対して、通常、1重量部~30重量部、好ましくは3重量部から25重量部、より好ましくは5重量部から20重量部である。
【0069】
混合工程においては、常温下で各成分を配合し、任意の適切な混合機を用いて、均一化することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)、等を挙げることができる。
【0070】
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。混合工程では各成分が均一に分散されるように混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
【0071】
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、タブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。
生産性と得られるフィラー造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
【0072】
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。ここで、ディスク孔にはテーパーが設けられており、フィラー混合物が孔を通過する過程で、ダイス孔の外周から圧縮応力が与えられる仕組みになっている。このテーパーのついた孔の長さを有効長と呼ぶ。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状のフィラー造粒物を得ることができる。造粒物前駆体(結果としてフィラー造粒物)の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。
【0073】
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
【0074】
乾燥工程における乾燥方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。乾燥工程後、振動ふるい等により、微粉を除去したフィラー造粒物が得られ得る。乾燥工程では、任意の適切な乾燥設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。
【0075】
本発明においては、上記ポリ乳酸樹脂組成物を用い、種々の成形体が提供される。例えば、射出成形体、押出成形体、シート、3Dプリンター造形物等が提供され得る。また、上記シートからは賦形物(真空成型体、プレス成形体、シート状賦形物、等)が得られ得る。
【実施例0076】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0077】
[製造例1]フィラー造粒物MB-1の製造
粉体用ニーダー(ダルトン社製、商品名「KDHJ-10」;処理量:6L)に、フィラー(タルク粉末;浅田製粉(株)製、商品名「JM-300」;平均粒子径:4.7μm;表中、「B-1」)80重量部を投入し、回転数30rpmで攪拌羽根を攪拌させながら、ポリマー分散液(ポリオレフィン分散液(水性PEディスパージョン);三井化学社製、商品名「ケミパールA100」;ポリオレフィン固形分濃度:40重量%;ポリオレフィン粒子の平均粒子径4μm;表中、「D-1」)20重量部を当該粉体用ニーダーに投入した。その後、6分間の攪拌処理を行い、混合物Aを得た。
混合物Aを、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175;容量:5L」)に投入し、ペレット状の造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、140℃で6時間乾燥させて、フィラー造粒物MB-1を得た。
【0078】
[製造例2]フィラー造粒物MB-2の製造
ポリマー分散液(「ケミパールA100」;表中、「D-1」)20重量部と、フィラー分散剤(ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル;太陽化学社製、商品名「チラバゾールH818」;表中、「C-1」)3重量部とを、1Lのプラ容器に投入し、室温下で攪拌羽根を用いて20分間攪拌して、混合物Bを得た。次いで、粉体用ニーダー(KDHJ-10)に、フィラー(タルク粉末「JM-300」;表中、「B-1」)80重量部を投入し、回転数30rpmで攪拌羽根を攪拌させながら、混合物Bを当該粉体用ニーダーに投入した。その後、6分間の攪拌処理を行い、混合物Cを得た。
混合物Cを、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175;容量:5L」)に投入し、ペレット状の造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、140℃で6時間乾燥させて、フィラー造粒物MB-2を得た。
【0079】
[製造例3~5]フィラー造粒物MB-3~MB-5の製造
表1に示すフィラー分散剤を用いたこと以外は、製造例2と同様にして、フィラー造粒物MB-3~MB-5を得た。製造例で用いた各成分の具体的な内容は、表2に示すとおりである。なお、表1においては、MB-1~MB-14について、配合組成から算出して得られた、乾燥後の最終的な成分構成比率を示す。
【0080】
[製造例6]フィラー造粒物MB-6の製造
ポリマー分散液「D-1」に代えて、ポリマー液(水溶性ビニルアルコール系樹脂(BVOH)の水溶液;三菱ケミカル社製、商品名「Nichigo G-polymer AZF8035Q」;ケン化度98.0モル%以上;融点:172℃;ポリマー濃度:15重量%:表中、「D-2」)20重量部を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、フィラー造粒物MB-6を得た。
【0081】
[製造例7]フィラー造粒物MB-7の製造
ポリマー分散液「D-1」に代えて、ポリマー液(水溶性ビニルアルコール系樹脂(BVOH)の水溶液;三菱ケミカル社製、商品名「Nichigo G-polymer AZF8035Q」;ケン化度98.0モル%以上;融点:172℃;ポリマー濃度:15重量%:表中、「D-2」)20重量部を用いたこと以外は、製造例2と同様にして、フィラー造粒物MB-7を得た。
【0082】
[製造例8~10]フィラー造粒物MB-8~MB-10の製造
表1に示すフィラー分散剤を用いたこと以外は、製造例7と同様にして、フィラー造粒物MB-8~MB-10を得た。
【0083】
[製造例11]フィラー造粒物MB-11の製造
上水19.5重量部とフィラー分散剤「C-1」1重量部とを、1Lのプラ容器に投入し、室温下で攪拌羽根を用いて20分間攪拌して、混合物Dを得た。次いで、粉体用ニーダー「KDHJ-10」に、フィラー(マイカ粉末;Chuzhou Grea Minerals Co.製、商品名「GM-4」;平均粒子径:18μm;表中、「B-2」)80重量部と、膨潤性粘土鉱物(スメクタイト;水澤化学(株)製、商品名「ガレオンアースSH」;表中「D-3」)0.5重量部とを投入し、回転数30rpmで攪拌羽根を攪拌させながら、混合物Dを当該粉体用ニーダーに投入した。その後、6分間の攪拌処理を行い、混合物Eを得た。
混合物Eを、ディスクペレッターディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175;容量:5L」)に投入し、ペレッド状の造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、160℃で6時間乾燥させて、フィラー造粒物MB-11を得た。
【0084】
[製造例12]フィラー造粒物MB-12の製造
ポリマー分散液「D-1」に代えて、でんぷん系誘導体(サイデン化学(株)製、商品名「サイデングルーX-4」;蒸発残分37%;表中、「D-4」)を用いたこと以外は、製造例7と同様にして、フィラー造粒物MB-12を得た。
【0085】
[製造例13]フィラー造粒物MB-13の製造
フィラー「B-1」に代えて、マイカ粉末「B-2」を用いたこと以外は、製造例7と同様にして、フィラー造粒物MB-13を得た。
【0086】
[製造例14]フィラー造粒物MB-14の製造
フィラー「B-1」に代えて、ワラストナイト粉末(キンセイマテック(株)製、商品名「SH-1800」;アスペクト比10~20;表中、「B-3」)を用いたこと以外は、製造例13と同様にして、フィラー造粒物MB-14を得た。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】
【0089】
[実施例1]
フィラー造粒物MB-1を55重量部とポリ乳酸(PLA;ネイチャー・ワークス社製、商品名「Ingeo 4032D」;融点155~170℃;表中、「A-1」)45重量部とを、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM18SS」、L/D=48)に、押出機の最上流位置に設けたホッパーを介して、それぞれ独立に重量フィーダーを用いて定量的に投入して、連続的に溶融混練(吐出:5kg/Hr)を行い、樹脂組成物のペレットを得た。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を200℃に設定した。また、2軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
【0090】
[実施例2~10]
表3に示すフィラー造粒物およびポリ乳酸を、表3に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。
【0091】
【表3】
【0092】
<評価>
実施例1~10で得られたポリ乳酸樹脂組成物を下記の評価に供した。結果を表4に示す。

(1)灰分測定(単位:重量%)
ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを1~3g採取し、電気炉にて、るつぼ内で600℃で3時間保持し、灰分重量を算出した。

(2)フィラーの分散性
ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを熱プレスで圧延し、厚み約0.5mmのシートとする。当該シートを透かして、フィラー凝集物の残存を目視観察し、以下の基準で評価した。
AA: フィラーの凝集物がほとんど観察されない良好な分散性状態
A: 比較的小さなフィラーの凝集が微量残存する状態
BB:比較的小さなフィラーの凝集物がかなり多く残存する状態
B:フィラーの凝集物が大きい状態
(分散状態の序列: AA>A>BB>B (左良好))

(3)結晶化温度測定(単位:℃)
示差走査型熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス社製、DSC6220)を用いて、試料5~10mgを常温から200℃に一定の昇温速度で加熱し、200℃で5分間保持した後、10℃/分の一定の降温速度条件度で常温まで冷却し、ポリ乳酸結晶の再結晶化温度を測定した。

(4)MFR(単位:g/10min)
JISK7210に準拠し、東洋精機製作所社製の「メルトインデクサー」を用いてメルトマスフローレート(MFR)を測定し、流動性を評価した。測定条件は、210℃、2.16kg荷重である。

(5)引張測定
ISO527に準拠し、引っ張り速度5mm/minの条件にて、引張強度(単位:MPa)、及び破断伸び(単位:%)を測定した。
なお、測定用の試験片としては、ポリ乳酸樹脂組成物のペレットを、射出成型機(東洋機械金属社製「SI-80W」、型締め100トン)を使用し、シリンダー設定温度200℃、金型温度110℃(固定側、稼働側共に)、冷却時間60秒で成形したダンベル型試験片(1A型多目的試験片)を用いた。

(6)曲げ測定
ISO178に準拠して曲げ試験を行い、曲げ強度(単位:MPa)、および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
なお、測定用の試験片は、上記引張測定で得たダンベル型試験片を切り出して使用した。

(7)荷重たわみ温度測定(単位:℃)
ISO75に準拠し、0.45MPa荷重条件で荷重たわみ温度を測定した。なお、測定用の試験片は、上記引張測定で得たダンベル型試験片を切り出して使用した。

(8)シャルピー衝撃試験(単位:KJ/m
ISO179に準拠し、ポリ乳酸樹脂組成物から形成されたノッチ付き試験片のシャルピー衝撃強度を測定した。なお、測定用の試験片は、上記引張測定で得たダンベル型試験片を切り出して使用した。

(9)射出成形片(ダンベル試験片)の成形時間(単位:秒)
上記引張試験用のダンベル型試験片(1A型多目的試験片)の射出成形において、冷却時間60秒に加え、射出時間、保圧時間、成形品突き出し時間を加えた総秒数をカウントした。

(10)成形品外観
上記引張試験用のダンベル型試験片の外観状態を以下の3つに区分した。
A: 光沢感あり
B: くすみがみられる
C: 肌荒れ感がみられる
(外観の序列: A>B>C (左良好))

(11)射出成形片(ダンベル試験片)のそり
上記引張試験用のダンベル型試験片(1A型多目的試験片)を水平な平面上に乗せ、ダンベル片の方端部を水平面に押し当てて、逆の端部の水平面からの浮き上がり(単位:mm)を測定し、以下の3つに区分した。
AA: 浮き上がりがほとんど認められない
A: 浮き上がりが2mm未満
B: 浮き上がりが2mm以上4mm未満
C: 浮き上がりが5mm以上
(そりの序列: AA>A>B>C (左良好))

(12)比重
比重計(新光電子社製、「DMA220H」)により、樹脂組成物の比重を測定した。

(13)PLA結晶化由来の発熱量(単位:J/g)
示差走査型熱量計(DSC)(日立ハイテクサイエンス社製、DSC6220)を用いて、樹脂組成物ペレットから切り出した試料5~10mgを30℃から200℃まで、10℃/分の一定昇温速度で加熱(1st heating)してPLA結晶を融解させ、200℃で5分間保持した後、10℃/分の一定下温速度で30℃まで冷却(1st cooling)して、5分間保持し、PLAを再結晶化させた。
試料を再び、30℃から200℃まで、10℃/分の一定昇温速度で加熱(2nd heating)してPLA結晶を融解させ、200℃で5分間保持した後、10℃/分の一定下温速度で30℃まで冷却(2nd cooling)して、5分間保持し、PLAを再結晶化させた。
上記2nd coolingにおけるPLA再結晶化の発熱量(ピーク面積より求めることができる)から、PLA換算の発熱量を求めた。また、PLAの無限大のラメラサイズの融解エンタルピーとして93J/g(E.W.Fisherら、Kolloid-Z.u.Z.poly.,251,980(1973))の値を使用して、PLAの結晶化度を求めた。
表5に、実施例6、7についての測定結果を示す。
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
表4に示す通り、実施例1~実施例10では、優れた剛性(曲げ弾性率)と耐熱変形温度を有することがわかる。また、試験片が容易に射出成形で得られることから示されるように、本発明のPLA樹脂組成物は結晶化速度が大きく、成形加工性が改善している。
また、得られたPLA樹脂組成物は、高い剛性と耐熱性を有するが、表面外観(平滑性)にも優れている。
更に、成形片の寸法安定性(収縮率、線膨張係数、低そり)にも優れている。
【0096】
[実施例11~18]
溶融混練装置として、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)に変更し、押出機の最上流位置に設けたホッパーを介して、それぞれ独立に重量フィーダーを用いて定量的に投入して、連続的に溶融混練(吐出:20kg/Hr)を行い、樹脂組成物のペレットを得た。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を200℃に設定した。また、2軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
実施例11~16と実施例18では表6に示すフィラー造粒物およびポリ乳酸を、表6に示す配合量で用いた。
尚、実施例17は、フィラー造粒物を用いずに、フィラー「B-1」を80重量部と、フィラー分散用ポリマー「D-2」の15重量%水溶液を20重量部と、フィラー分散剤「C-1」を3重量部とを、粉体用ニーダー「KDHJ-10」を用いて、回転数30rpmで6分間攪拌させて得た粉体混合物を二軸押し出し機に投入することで樹脂組成物を得た。
実施例17では、粉体混合物のフィードにおいて、供給口でブリッジが発生するため、吐出速度を10kg/Hr)として、ペレットを得た。
実施例11~18で得られたポリ乳酸樹脂組成物を実施例1~10と同じ方法で評価に供した。結果を表7に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
【表7】
【0099】
表7に示す通り、実施例11~実施例18では、優れた剛性(曲げ弾性率)と耐熱変形温度、優れた成形加工性、表面外観(平滑性)、低そりに優れている。
更に言えば、本発明の樹脂組成物は、フィラー造粒物を使用して好ましく生産することができるが、粉体状で嵩密度が小さいフィラーにおいても、30重量部~70重量部のフィラー含有PLA組成物を極めた高い生産性で得ることができる。
このことは、実施例17において、吐出速度が10kg/Hrであることに対し、フィラー濃度がほぼ近い実施例14において、吐出速度が20kg/Hrで安定に樹脂組成物を精算できることで明らかである。
【0100】
[比較例1]
比較例1はフィラーを含まないポリ乳酸樹脂組成物の物性測定結果を表7に示す。
【0101】
[参考例1]
ポリ乳酸50重量部とガラスフィラー(GF; 日本電気硝子社製、チョップドストランド、商品名「ECS03T-187」50重量部を、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)により、溶融混練して樹脂組成物を得た。ここで、GFは押し出し機の下流部においてサイドフィードして、組成物を得た。
評価結果を表7に示す。