(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100526
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】易開封性積層フィルムおよびそれを用いた蓋材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220629BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220629BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20220629BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20220629BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220629BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B32B9/02
C08L23/00
C08L45/00
B65D65/40 D BRH
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214550
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩忠
(72)【発明者】
【氏名】豊島 裕
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 博志
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AC07
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(57)【要約】
【課題】石油由来のポリオレフィン系樹脂のみを原料とする従来の易開封性積層フィルム以上の優れた加工適性(とくに、打抜き適性)と易開封性を発現しつつ、少なくとも原料の一部を植物由来のポリテルペン樹脂に置き換えることにより目標とするレベル以上のバイオマス度が達成可能で、それによって環境負荷の低減に貢献可能な易開封性積層フィルムと、それを用いた蓋材を提供する。
【解決手段】少なくとも基材層とシール層の2層以上に積層されたポリオレフィン系樹脂組成物の積層フィルムであって、各層もしくはいずれかの層にバイオマス由来のポリテルペン系樹脂含み、バイオマス度が1%以上である易開封性積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層とシール層の2層以上に積層されたポリオレフィン系樹脂組成物の積層フィルムであって、各層もしくはいずれかの層がバイオマス由来のポリテルペン系樹脂を含み、積層フィルム全体のバイオマス度が1%以上、45%以下である易開封性積層フィルム。
【請求項2】
積層フィルムのヤング率(MPa)/破断強度(MPa)がフィルム長手方向で20以上、フィルム幅方向で25以上である請求項1に記載の易開封性積層フィルム。
【請求項3】
積層フィルムの水蒸気透過率が14g/(m2・day・30μm)以下である請求項1または2に記載の易開封性積層フィルム。
【請求項4】
積層フィルムのシール層同士を重ねてヒートシールした時のシール強度が剥離方向でフィルム長手方向/フィルム幅方向が0.85以上、1.25以下である請求項1~3のいずれかに記載の易開封性積層フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の易開封性積層フィルムを用いた蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のポリテルペン樹脂を添加することで目標レベルのバイオマス度を達成可能であり、かつ、石油由来のポリオレフィン系樹脂を原料として含有する積層フィルムと同等の優れた加工適正と易開封性を発現する易開封性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくともポリオレフィン系樹脂からなる基材層とポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂)からなるヒートシール層とが積層された易開封性積層フィルムは従来から各種知られているが、これら従来の易開封性積層フィルムは、基本的には石油由来の樹脂を原料とするものであった。
【0003】
ところが近年、環境負荷低減を目的として、植物由来の樹脂(以下、バイオマス樹脂ということもある)を原料の少なくとも一部として使用する技術が注目されつつあり、樹脂メーカーからは各種のバイオマス樹脂原料が供給開始されつつある。バイオマス樹脂は、大気中の二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であるから、それらを燃やしても大気中の二酸化炭素は増大せず、いわゆるカーボンニュートラル化が可能となって、環境負荷の低減が可能になると考えられている。このことから、バイオマス樹脂の使用は、地球温暖化防止、化石燃料資源の節約等に資することが期待されており、原料、製品中に含まれる植物由来の成分の全体量に対する割合(重量%)をバイオマス度として公式に認証し、シンボルマークとともに表示することを許可する制度も始まっている。
【0004】
易開封性積層フィルムの分野においても、上記のような観点から、低密度ポリエチレン系樹脂からなる基材層のポリエチレン系樹脂を植物由来の低密度ポリエチレン系樹脂に置き換えた複合フィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の易開封性積層フィルムにおいては、基材層のポリエチレン系樹脂が低密度ポリエチレン系樹脂のみからなるため、基材層の剛性を上げることが困難である。
【0007】
基材層とヒートシール層が積層された易開封性積層フィルムは、通常、打抜き等により蓋材等に適した形状に加工されるが、基材層の剛性が低いと易開封性積層フィルム全体としての剛性も低くなるため、加工適性(とくに、打抜き適性)の向上が難しい。
【0008】
本発明の易開封性積層フィルムでは、基材層の剛性を上げ、加工適性(とくに、打抜き適性)を向上することに成功している。本発明の課題は、上述した現状と植物由来の成分の使用により期待されている利点に鑑み、石油由来のポリオレフィン系樹脂のみを原料とする従来の易開封性積層フィルム以上の優れた加工適性(とくに、打抜き適性)と易開封性を発現しつつ、少なくとも原料の一部を植物由来のポリテルペン樹脂に置き換えることにより目標とするレベル以上のバイオマス度が達成可能で、それによって環境負荷の低減に貢献可能な易開封性積層フィルムと、それを用いた蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は次の構成を特徴とするものである。
(1)少なくとも基材層とシール層の2層以上に積層されたポリオレフィン系樹脂組成物のフィルムであって、各層もしくはいずれかの層がバイオマス由来のポリテルペン系樹脂を含み、積層フィルム全体のバイオマス度が1%以上、45%以下である易開封性積層フィルム。
(2)積層フィルムのヤング率(MPa)/破断強度(MPa)がフィルム長手方向で20以上、フィルム幅方向で25以上である(1)に記載の易開封性積層フィルム。
(3)積層フィルムの水蒸気透過率が14g/(m2・day・30μm)以下である(1)または(2)に記載の易開封性積層フィルム。
(4)積層フィルムのシール層同士を重ねてヒートシールした時のシール強度が剥離方向でフィルム長手方向/フィルム幅方向が0.85以上、1.25以下である(1)~(3)のいずれかに記載の易開封性積層フィルム。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の易開封性積層フィルムを用いた蓋材。
【発明の効果】
【0010】
上記のような本発明の易開封性積層フィルムにおいて、基材層とシール層とが積層された易開封性積層フィルムにおいて、基材層にバイオマス由来のポリテルペン樹脂を添加することで、フィルム剛性が増し優れた加工適正が発現可能となる。そして、シール層について、従来と同等の組成とすることにより、あるいはその成分の一部を植物由来のポリテルペン樹脂を添加することにより、ヒートシール強度が安定し従来と同等以上の易開封性が発現可能となる。そして、基材層、シール層の少なくとも一方へ植物由来のポリテルペン樹脂を含有することで、易開封性積層フィルム全体に対するバイオマス度をある目標とするレベル以上にすることが可能になる。すなわち、石油由来のポリオレフィン系樹脂のみとする従来の易開封性積層フィルム以上の優れた加工適正と易開封性を発現しつつ、全体として目標とするレベル以上のバイオマス度を達成可能な易開封性積層フィルムが実現される。なお、このような目標とするレベル以上のバイオマス度を有する本発明の易開封性積層フィルムとは、性能的にはたとえ同等であっても、石油由来の原料ではほとんど存在しない放射性炭素(C14)の濃度を加速器質量分析により測定することで物として区別できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明についてその実施の形態とともに詳細に説明する。
【0012】
基材層
本発明の易開封性積層フィルムにおける基材層のポリオレフィン系樹脂としては、石油由来のポリプロピレン系樹脂や石油由来のポリエチレン系樹脂と少なくとも一部の成分として植物由来のポリテルペン樹脂を含有していればよい。
【0013】
少なくともポリオレフィン系樹脂と植物由来のポリテルペン樹脂を混合した樹脂組成とすることにより、ポリオレフィン系樹脂単体から構成されている場合よりも、ヤング率が高くなりフィルムの剛性が高くなるので、従来の基材層より優れた加工適正が発現可能となる。
【0014】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどを挙げることができ、これらの混合樹脂組成とすることもできる。
【0015】
上記ポリオレフィン系樹脂は、メルトフローレート(以下、MFRと略称することがある)がポリプロピレン系樹脂では、温度230℃、荷重21.18Nで1~30g/10分の範囲であり、ポリエチレン系樹脂では、温度190℃、荷重21.18Nで1~30g/10分の範囲にあることが、溶融押出と製膜性が安定して好ましい。
【0016】
本発明に使用される上記植物由来のポリテルペン樹脂としては、αピネン、βピネン、ジペンテン、スチレン変性テルペンおよびそれらの水素添加品が挙げられる。
【0017】
基材層への上記植物由来のポリテルペン樹脂の含有量は1~50重量%であることが好ましい。含有量が1重量%未満ではフィルム全体のバイオマス度が1%未満となることがあり、50重量%を超えると製膜性が悪化することがあり、フィルムが脆くなって加工性が悪化する場合がある。
【0018】
また基材層には、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗黴性、電気的特性、強度その他を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等の1種乃至2種以上を任意に添加してもよい。
シール層
本発明の易開封性積層フィルムのポリオレフィン樹脂からなるシール層としては、少なくともポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を含有することが好ましい。ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂がそれぞれ海島構造をとることで、優れた易開封性を達成することができる。
【0019】
上記のような本発明の易開封性積層フィルムのシール層において、海を形成するポリプロピレン系樹脂と、島を形成するポリエチレン系樹脂との配合比は、特に限定されるものではないが、好ましい配合比は、海を形成するポリプロピレン系樹脂が20~70重量%に対して、島を形成するポリエチレン系樹脂が30~80重量%である。島を形成するポリエチレン系樹脂が30重量%未満ではシール層の凝集破壊性が低下して易剥離性が悪化することがあり、80重量%を超えるとヒートシール強度が低下することがある。
【0020】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体を挙げることができ、ヒートシール強度からエチレン・プロピレンランダム共重合体が好ましい。
【0021】
上記ポリプロピレン系樹脂は、温度230℃、荷重21.18NでのMFRが1~30g/10分の範囲にあることが、安定した押出性と製膜性から好ましい。
【0022】
また、上記ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンから選ぶことができ、その一部を植物由来のポリテルペン樹脂を添加することが可能であり、それにより、易開封性積層フィルム全体としてのバイオマス度を高めることが可能である。
【0023】
上記ポリエチレン系樹脂は、温度230℃、荷重21.18NでのMFRが1~30g/10分の範囲にあることが、ポリプロピレン系樹脂への分散性がよく好ましい。
【0024】
本発明において、上記植物由来のポリテルペン樹脂としては、αピネン、βピネン、ジペンテン、スチレン変性テルペンおよびそれらの水素添加品が挙げられる。
【0025】
上記シール層の植物由来のポリテルペン樹脂の含有量は1~50重量%であることが好ましい。含有量が1重量%未満では添加効果がない場合があり、50重量%を超えるとヒートシール強度が低下する場合がある。
【0026】
易開封性積層フィルム
本発明の易開封性積層フィルムにおけるバイオマス度は、1%以上45%以下であり、好ましくは3%以上40%以下である。バイオマス度1%未満では環境負荷低減への貢献度は低く、バイオマス度が高いほど、環境負荷の低減への貢献度が高くなるが45%を超えると製膜性が悪化することがあり、フィルムが脆くなって加工性が悪化する場合がある。
【0027】
また、本発明の易開封性積層フィルムにおいて、基材層とシール層の厚さの比は特に制限されないが、基材層とシール層の厚さの比は3:1~9:1の範囲にあることが好ましい。
【0028】
基材層の厚さは10~100μmが好ましく、更に好ましくは20~60μmの範囲のものが好適であり、この範囲であると良好な押出性と包装フィルムとして用いる場合に十分な機械的強度を得ることができる場合がある。また、シール層の厚さは2~30μmが好ましく、更に好ましくは2~20μmの範囲のものが好適である。シール層の厚さが30μmを越えると剥離時の剥離外観が悪くなることがあり、また、シール強度が強くなり易開封性が悪化することがある。
【0029】
本発明の易開封性積層フィルムのヤング率(MPa)/破断強度(MPa)がフィルム長手方向で20以上、フィルム幅方向で25以上であることが製膜時の巻取りが安定し、さらにラミネート加工や打ち抜き加工などの二次加工性が良好となって好ましい。積層フィルムのヤング率(MPa)/破断強度(MPa)がフィルム長手方向で20未満、フィルム幅方向で25未満や積層フィルムのヤング率(MPa)/破断強度(MPa)がフィルム長手方向で100以上、フィルム幅方向で100以上であると、ラミネート加工や打ち抜き加工などの加工適性が低下して歩留まりが悪化する場合がある。
【0030】
また、本発明の易開封性積層フィルムの水蒸気透過率が14g/(m2・day・30μm)以下であることが好ましい。水蒸気透過率が14g/(m2・day・30μm)を超えると防湿性が低下して内容物保護性が低下する場合がある。
【0031】
蓋材
さらに、本発明は、上記のような易開封性積層フィルムを他基材と積層して、本発明におけるシール層が用いられる蓋材について提供することができる。
【0032】
該他基材としては、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔から選ばれる少なくとも1層を、必要に応じて、単独、あるいは、組合せて積層して使用するのが好ましい。ポリアミドフィルムとしては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66などが挙げられ、中でも二軸延伸ナイロン66フィルムが、耐熱性、耐湿性の面でより好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PETと記すことがある)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられ、中でも二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、耐熱性とフィルム価格等で総合的により好ましい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが挙げられ、なかでもアルミ箔がより好ましい。印刷紙としては、合成紙、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、更紙などが挙げられるが、印刷の出来具合からアート紙が好ましい。
【0033】
前記二軸延伸ポリアミドフィルムおよび二軸延伸ポリエステルフィルムの厚さは、10~100μmの範囲が好ましく、特に、12~50μmの範囲であると印刷加工適性が良く、蓋材とした場合に、耐衝撃性と取り扱い性から好ましい。
【0034】
前記金属箔の厚さとしては、5~30μmの範囲であることが、蓋材とした場合に、耐衝撃性、取り扱い性および経済性から好ましい。
【0035】
本発明の易開封性積層フィルムのシール層同士をヒートシールした時のシール強度が剥離方向でフィルム長手方向/フィルム幅方向が0.85以上、1.25以下であると剥離性が良好となり好ましい。上記シール強度が0.85未満もしくは1.25を超えると、フィルム長手方向とフィルム幅方向での強度差が大きくなり、剥離時(開封時)に裂けが発生したりして、正常に剥離できないことがある。
【0036】
本発明における基材層にこれらの他基材を積層する方法としては特に限定されないが、接着剤、ホットメルト剤、低融点の押出ラミネート樹脂を介して積層する方法が挙げられる。
【0037】
次に、本発明の易開封性積層フィルムの製造法の一例を説明する。
【0038】
積層フィルムとして2台の押出機を用いて、基材層として、MFR=1~30g/10分の範囲のポリオレフィン系樹脂を90~97重量%とポリテルペン樹脂として軟化点80~130℃の範囲の樹脂を3~10重量%混合した樹脂組成物を220~230℃で押し出す。シール層として、もう1台の押出機からポリプロピレン樹脂60~90重量%と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂10~40重量%を混合した樹脂組成物とし、また、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の一部をポリテルペン樹脂として(但し、総量を100重量%とする)、220~230℃で押し出す。それらを、共押出多層積層口金で積層させ、基材層の厚さ25μmで、シール層の厚さが5μmとなるようにして、口金よりフィルム状に押し出し、25~50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し易開封性積層フィルムとする。
【0039】
続いて、必要に応じ基材層の表面にコロナ放電処理を施し、巻き取り、さらに所定の幅、長さにスリットする。以上のようにして得られた本発明の易開封性積層フィルムは、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔から選ばれる少なくとも1層と積層して、一般包装用、レトルト食品包装袋用等の蓋材としても使用できる。
【実施例0040】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明における特性の測定方法並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0041】
(1)樹脂の密度
JIS K7112-1980に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。なお、混合樹脂の密度は、それぞれの樹脂の密度により重量配合比による加重平均で計算を行なった。
【0042】
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K-7210に準拠して、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で、荷重21.18Nで測定した。
【0043】
(3)フィルム厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B-7509-1992、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0044】
(4)基材層の厚さ比率
積層フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX-100形(株式会社キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して基材層の厚さ比率を求めた。なお、基材層の厚さ比率を求めるにあたっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0045】
(5)バイオマス度
バイオマス度とは、全組成中の植物由来の原料の比率(重量%)を表す指標である。植物由来の原料中には一定濃度で含まれ、石油由来の原料中には殆ど存在しない放射性炭素(C14)の濃度を加速器質量分析により測定することで、バイオマス度(%)を算出することができる。しかし、近年は、実際の製品を加速器質量分析しないでも、原料メーカーから各植物由来の原料の最小バイオマス度の値が提供されているので、これら原料メーカーから提供される各植物由来の原料の各最小バイオマス度と、各植物由来の原料の配合量とに基づいて、全組成中の植物由来の原料の比率(%)であるバイオマス度を略正確に算出することができる。本願では後者の方法によってバイオマス度を算出した。
【0046】
また本発明の易開封性積層フィルム全体のバイオマス度は、基材層およびシール層の各層におけるバイオマス度をもとに、各層の厚さの割合による加重平均で計算した。
【0047】
(6)ヤング率(Mpa)/破断強度(MPa)
JIS K 7127に準拠し測定し、その結果についてフィルム長手方向、フィルム幅方向でそれぞれヤング率(MPa)/破断強度(MPa)と計算し数値化した。そのとき、フィルム長手方向でヤング率(MPa)/破断強度(MPa)が20以上、フィルム幅方向でヤング率(MPa)/破断強度(MPa)が25以上であるものが、ラミネート加工や打ち抜き加工などの加工適性が良好で〇とし、該範囲を外れたものを加工適性が悪く×とした。
【0048】
(7)シール用複合フィルムの作成方法
易開封性積層フィルムの基材層と厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、P60(東レ株式会社製“ルミラー(登録商標)”)をポリウレタン接着剤で塗布量2g/m2でドライラミネートし、40℃、72時間エージングしてシール用複合フィルムとした。
【0049】
(8)水蒸気透過率
易開封性積層フィルムの水蒸気透過率をシステック・イリノイ社製水蒸気透過率測定装置7002を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下で測定した。RHとは、相対湿度を表す。
【0050】
(9)評価用ポリプロピレンシート(被着体)
押出機からホモポリプロピレン(後述のPP-2)樹脂を温度220~230℃で溶融し、ダイよりフィルム状に押し出し、25~50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し、厚さ300μmの評価用ポリプロピレンシートを作成した。
【0051】
(10)ヒートシール強度、対PPシート
(7)で作成したシール用複合フィルムを100mm×15mmに切り出し、シール層と(9)で作成した300μmの評価用ポリプロピレンシートに重ねて、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度160~180℃、シール圧力2kg/cm2、シール時間1秒の条件で、PETフィルム側から片面加熱してヒートシールしたサンプルを作成した。23℃の室温下で株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、180°剥離したときのヒートシール強度を測定した。そのとき、1試料についてn数10の測定値の平均値をとり、ヒートシール強度が10~20N/15mmであるものを密封性と剥離性が良好で○とし、該範囲を外れたものを×とした。
【0052】
(11)ヒートシール強度、対面々(フィルム長手方向/フィルム幅方向)
(7)で作成したシール用複合フィルムについて、フィルム長手方向を100mmとし、フィルム幅方向を15mmに切り出し、シール層同士を重ね、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度160~180℃、シール圧力2kg/cm2、シール時間1秒の条件で片面加熱してヒートシールしたサンプルを作成した。23℃の室温下で株式会社オリエンテック性のテンシロン(RTC-1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、180°剥離したときのヒートシール強度を測定し、この強度をフィルム長手方向の強度とした。またフィルム幅方向を100mm、フィルム長手方向を15mmに切り出し同様に測定し、この強度をフィルム幅方向の強度とし、フィルム長手方向/フィルム幅方向を計算し数値化した。そのとき、1試料についてn数10の測定値の平均値をとり、フィルム長手方向/フィルム幅方向が0.85~1.25であるものを剥離性が良好で○とし、該範囲を外れたものを剥離性不良で×とした。
【0053】
(12)剥離外観
(10)で作成したヒートシール強度測定サンプルを手で剥離したとき、剥離外観を目視で評価し、糸引き、膜残りを下記の通り、判定した。
○:糸引き、膜残りが見られない。×:1.5mm以上の長い糸引き、膜残りが残る。
【0054】
本実施例で使用した原料は次の通りである。
(1)石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)
MFR=6.0g/10分、密度=0.900g/cm3
(2)石油由来のホモポリプロピレン(石油系PP-2)
MFR=8.0g/10分、密度=0.900g/cm3
(3)石油由来の高密度ポリエチレン(石油系HD)
MFR=8.0g/10分、密度=0.961g/cm3
(4)石油由来の低密度ポリエチレン(石油系LD)
MFR=7.0g/10分、密度=0.919g/cm3
(5)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン(石油系LL)
MFR=8.0g/10分、密度=0.920g/cm3
(6)石油由来のエチレン・プロピレンブロック共重合体(石油系B-PP)
MFR=2.0g/10分、密度=0.900g/cm3
(7)植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)
軟化点=115℃、バイオマス度=90%。
【0055】
(実施例1)
基材層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)94重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)6重量%を混合した樹脂組成物を用い、シール層として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)60重量%と石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン(石油系L-LDPE)40重量%を混合した樹脂組成物を用いて、2種2層無延伸フィルム成形機の押出機2台に各々投入し、230℃の押出温度でTダイより押し出し、30℃のキャスティングロールで急冷し易開封性積層フィルムを成形し、基材層にコロナ処理を施した。得られた易開封性積層フィルムの総厚さは30μmで基材層の厚さを25μm、シール層の厚さ5μmであった。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0056】
(実施例2)
基材層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)98重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)2重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0057】
(実施例3)
基材層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)70重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)30重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0058】
(実施例4)
シール層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)60重量%、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン(石油系LL)30重量%、植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)10重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0059】
(実施例5)
基材層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)47重量%と石油由来のホモポリプロピレン(石油系PP-2)47重量%、植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)6重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0060】
(実施例6)
基材層の樹脂として、石油由来の高密度ポリエチレン(石油系HD)47重量%と石油由来の低密度ポリエチレン(石油系LD)47重量%、植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)6重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0061】
(実施例7)
シール層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)60重量%と石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン(石油系LL)30重量%、植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)10重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例6と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0062】
(実施例8)
基材層の樹脂として石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン(石油系LL)94重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)6重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0063】
(実施例9)
基材層の樹脂として石油由来のプロピレン・エチレンブロック共重合体(石油系B-PP)94重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)6重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。本発明の易開封性積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0064】
(比較例1)
基材層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)99重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)1重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。バイオマス度が0.8%で本発明の易開封性積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0065】
(比較例2)
基材層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)35重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)65重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。バイオマス度が48.8%であり、ヤング率(MPa)/破断強度(MPa)が小さくなって加工適性に劣り、易開封性積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0066】
(比較例3)
シール層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)94重量%、植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)6重量%を混合した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。バイオマス度が0.9%と低く、PPシートとのヒートシール強度が30N/15mmと強くて易開封性に劣り、易開封性積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0067】
(比較例4)
基材層の樹脂として、石油由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)35重量%と植物由来のポリテルペン樹脂(バイオPT)65重量%を混合した樹脂組成物を用い、シール層の樹脂として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(石油系PP-1)100重量%とした樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして易開封性積層フィルムを得た。バイオマス度が48.8%で、ヒートシール強度が40N/15mmと強くて易開封性に劣り、易開封性積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0068】
【0069】