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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100529
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】バンドヒータ
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/72 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
B29C45/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214553
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】599072644
【氏名又は名称】株式会社平和電機
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】岩見 浩志
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AK05
4F206JA07
4F206JQ46
4F206JQ47
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】ワット密度を高め得るバンドヒータを提供する。
【解決手段】本実施形態のバンドヒータ10では、筒形状のヒータ部30は、内周面31aが射出ノズルの周囲を覆い得る内筒プレート31と、内筒プレート31の外周面31bを覆うように配置され通電時に発熱する内側ヒータエレメント33と、内側ヒータエレメント33の外周側33bを覆うように配置され通電時に発熱する外側ヒータエレメント34と、外側ヒータエレメント34の外周側34bを覆う外筒プレート32と、を有する。これにより、両ヒータエレメント33,34の発熱により射出ノズルを加熱するので、ヒータ部30がこれらヒータレメント33,34の一方だけを備える場合に比べてワット密度を高くすることができる。また、外側ヒータエレメント34は、内側ヒータエレメント33に比べてワット密度が小さいため、カバー部20の膨張により外筒プレート32の加圧力が弱まるのを抑制できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の周囲に設けられて当該筒状体を加熱するバンドヒータであって、
内周面が前記筒状体の周囲を覆い得る内筒部、前記内筒部の外周面を覆うように配置され通電時に発熱する内側発熱体、前記内側発熱体の反内筒部側を覆うように配置され通電時に発熱する外側発熱体、および、前記外側発熱体の反内側発熱体側を覆う外筒部、を有する筒形状のヒータ部と、
前記外筒部の外側から径内向き方向に加圧して前記ヒータ部を前記筒状体に取り付け得るカバー部と、を備え、
前記外側発熱体は、前記内側発熱体に比べてワット密度が小さい、ことを特徴とするバンドヒータ。
【請求項2】
前記内側発熱体および前記外側発熱体には、それぞれの一端側と他端側に通電用の電気配線が接続されており、これら4本の電気配線は前記ヒータ部内で並列に接続されることなく、前記4本の電気配線がすべて外部に引き出される、ことを特徴とする請求項1に記載のバンドヒータ。
【請求項3】
前記カバー部は、前記4本の電気配線が挿通可能な貫通穴と、この貫通穴の近傍に前記4本の電気配線を保持可能な配線保持部と、を有し、
前記4本の電気配線は、前記貫通穴から外部に引き出されて前記カバー部の径方向において互いに重ならない位置関係で前記配線保持部に保持される、ことを特徴とする請求項2に記載のバンドヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状体の周囲に設けられて当該筒状体を加熱するバンドヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
筒状体を加熱するバンドヒータとして、例えば、下記特許文献1に開示される「射出ノズル用ヒータ」がある。この特許文献1には、金型内に設けられる射出ノズル(筒状体)の周囲にバンドヒータを複数配設しそれぞれのバンドヒータにより当該射出ノズルを加熱する技術が開示されている。この射出ノズルは細長い棒形状を有し、4つのバンドヒータが当該射出ノズルの軸方向に連なるように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-281753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような射出ノズルを備える射出成形機は、樹脂製品の製造工程において加熱された流体状の樹脂を金型内に射出し充填する装置である。金型は、設備コストの面において小型軽量化が望まれる。しかし、所定の発熱量(ワット密度)を確保するために複数のバンドヒータが必要になる場合には、上記特許文献1に開示される固定型のようにバンドヒータの数の増加に伴って射出ノズルの軸長が長くならざるを得ない。そのため、固定型の重厚化を招いてしまい金型の軽薄化を難しくする。
【0005】
したがって、例えば、バンドヒータが射出ノズルの加熱に用いられる場合には、金型の小型軽量化に資するためにもワット密度が高い方が望ましい。また、押出成型機の加熱シリンダ等、他の筒状体を加熱する場合においてもワット密度が高いバンドヒータが必要になる場合もある。なお、ワット密度とは、ヒータの単位表面積(cm2)あたりの電気容量(W)で表現されるヒータの表面負荷(W/cm2)のことである。ワット密度の数値が大きいほどヒータの表面温度は高くなり、同数値が小さいほどヒータの表面温度は低くなる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ワット密度を高め得るバンドヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、バンドヒータはヒータ部とカバー部を備える。筒形状のヒータ部は、内周面が筒状体の周囲を覆い得る内筒部と、内筒部の外周面を覆うように配置され通電時に発熱する内側発熱体と、内側発熱体の反内筒部側を覆うように配置され通電時に発熱する外側発熱体と、外側発熱体の反内側発熱体側を覆う外筒部と、を有する。カバー部は、外筒部の外側から径内向き方向に加圧してヒータ部を筒状体に取り付け得る。そして、外側発熱体は、内側発熱体に比べてワット密度が小さい。
【0008】
これにより、ヒータ部は、内側発熱体と外側発熱体の発熱により筒状体を加熱することが可能になる。また、外側発熱体は、内側発熱体に比べてワット密度が小さい。そのため、内側発熱体のワット密度と外側発熱体のワット密度が同じである場合、または外側発熱体のワット密度が内側発熱体のワット密度よりも大きい場合、に比べて、外側発熱体の発熱によるカバー部の熱膨張を減少させることが可能になる。
【0009】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、内側発熱体および外側発熱体には、それぞれの一端側と他端側に通電用の電気配線が接続されている。そして、これら4本の電気配線はヒータ部内で並列に接続されることなく4本の電気配線がすべて外部に引き出される。これにより、これら4本の電気配線がヒータ部内で並列に接続される場合に比べて、接続部分が加熱され難い。
【0010】
さらに、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、カバー部は、4本の電気配線が挿通可能な貫通穴と、この貫通穴の近傍に4本の電気配線を保持可能な配線保持部と、を有する。そして、4本の電気配線は、貫通穴から外部に引き出されてカバー部の径方向において互いに重ならない位置関係で配線保持部に保持される。これにより、これら4本の電気配線がカバー部の径方向において互いに重なる位置関係で配線保持部に保持される場合に比べて、カバー部の径方向に配線保持部が拡大するのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、ヒータ部は、内側発熱体と外側発熱体の発熱により筒状体を加熱することが可能になる。したがって、ヒータ部が内側発熱体または外側発熱体のいずれか一方だけを備える場合に比べてワット密度を高くすることができる。また、例えば、射出ノズルの加熱に用いられるバンドヒータの数を減らすことができるので、金型の軽薄化を容易にすることが可能になる。また、内側発熱体のワット密度と外側発熱体のワット密度が同じである場合、または外側発熱体のワット密度が内側発熱体のワット密度よりも大きい場合、に比べて、外側発熱体の発熱によるカバー部の熱膨張を減少させることが可能になる。したがって、カバー部による径内向き方向に外筒部を加圧する力が弱まることを抑制することができる。
【0012】
請求項2の発明では、4本の電気配線がヒータ部内で並列に接続される場合に比べて、接続部分が加熱され難い。したがって、接続部分が加熱されることにより並列接続が外れたり緩んだりすることに起因する接続不良の発生を防ぐことができる。
【0013】
請求項3の発明では、4本の電気配線がカバー部の径方向において互いに重なる位置関係で配線保持部に保持される場合に比べて、カバー部の径方向に配線保持部が拡大するのを防止することが可能になる。したがって、当該バンドヒータの径方向のサイズを小さく、つまり小径にすることができる。例えば、金型内において、当該バンドヒータを収容するスペースを小さくすることができ、金型の小型化を容易にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るバンドヒータの構成例を示す斜視図である。
図2】本実施形態のバンドヒータの構成例を示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は図2(A)に示す2B線矢印の矢視方向から見た側面図であり、図2(C)は図2(A)に示す2C線矢印の矢視方向から見た側面図である。
図3図3(A)は図2(B)に示す3A-3A線により切断した場合の断面図であり、図3(B)は図3(A)に示す3B線内を拡大した拡大図である。
図4】本実施形態のバンドヒータのヒータ部の構成例を示す回路図である。
図5】本実施形態のバンドヒータの改変例を示す図であり、図5(A)は改変例1の構成を示す説明図、図5(B)は改変例2の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のバンドヒータの実施形態について図を参照して説明する。本実施形態では、本発明のバンドヒータが、例えば、樹脂製品を成形する射出成形機が有する射出ノズルの周囲に設けられる場合を例示して説明する。なお、本明細書では、図1図3に示す座標軸表示におけるZ軸方向のことを「軸方向」といい、またX軸方向やY軸方向等、Z軸に直交する方向のことを「径方向」という場合がある。さらにZ軸の先端方向のことを「上方向」、基端方向のことを「下方向」をといい、Z軸周りの方向のことを「周方向」という場合がある。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のバンドヒータ10は、射出成形機(図略)の射出ノズル100を加熱する電熱ヒータである。なお、図1においては、射出ノズル100はその一部として円筒形状部分(筒状体)を一点鎖線で表現しており、当該射出ノズル100の先端側および基端側や当該射出ノズル100が収容される金型等の設備機器については、図示を省略していることに注意されたい。
【0017】
図1図3に示すように、バンドヒータ10は、カバー部20とヒータ部30により構成されている。カバー部20は、金属製のカバー本体21と、カバー本体21に取り付けられるハーネスホルダ27と、カバー部20を射出ノズル100等に締め付け固定し得るボルト29と、等により構成されている。
【0018】
カバー本体21は、例えば、保温性能の点で優れているステンレス鋼板が用いられ、短冊形状を有するものを、アルファベットのC字形状のように周方向および軸方向に切れ目を有する円筒形状に形成している。カバー本体21の両端は、ロール状に折り返して円柱形状の空間部を有するように形成されている。即ち、カバー本体21の一端側には、軸方向に離れて2つの端末ループ22,23が形成され、また同他端側にも、軸方向に離れて2つの端末ループ24,25が形成されている。これら端末ループ22~25のそれぞれの折り返し端である一端部21aや他端部21bは、例えばスポット溶接によりカバー本体21に固定されている。
【0019】
端末ループ22~25の内側空間内には締結バー28a,28bが収容されている。端末ループ22,23に収容される締結バー28aにはボルト29を挿通可能な貫通穴が形成され、端末ループ24,25に収容される締結バー28bにはボルト29を螺合可能な雌ねじ穴が形成されている。締結バー28aに挿通したボルト29を締結バー28bに螺合させることによって、締結バー28a,28bは、カバー本体21の切れ目を狭くする方向に端末ループ22,23と端末ループ24,25を近づけたり、切れ目を広くする方向に端末ループ22,23と端末ループ24,25を遠ざけたりすることが可能になる。
【0020】
カバー本体21の長手方向ほぼ中央には、配線窓26が形成されている。この配線窓26は、小判形状に形成される長円穴であり、ヒータ部30に接続されるワイヤハーネス12の電気配線14等を挿通させて外部に引き出し得るように構成されている。本実施形態では、バンドヒータ10が取り付けられる射出ノズル100は、金型のノズル収容孔内に収容される。そのため、配線窓26を通ったワイヤハーネス12は、射出ノズル100の軸方向に沿ってノズル収容孔の開口から金型外に引き出す必要があることから、当該ワイヤハーネス12を保持するハーネスホルダ27は、配線窓26に対して上方向に取り付けられている。
【0021】
ハーネスホルダ27は、例えば、細長矩形状の金属板を円弧状に巻いたものであり、カバー本体21にスポット溶接されて固定されている。ワイヤハーネス12を保持する前のハーネスホルダ27は、ワイヤハーネス12の耐熱チューブ13の外周を十分に囲み得る程度にその長さが設定されている。これにより、ワイヤハーネス12は、外周を囲まれるようにしてハーネスホルダ27に保持される。本実施形態では、ハーネスホルダ27内で保持される電気配線14~17は、例えば、カバー部20の径方向において配線径のほぼ半分(約1/2)が互いに重なる位置関係で配置されている。なお、符号Wは、ハーネスホルダ27がカバー部20からその径方向に突出するホルダ厚さを表している。
【0022】
ヒータ部30は、ほぼ円筒形状を有する発熱部であり、金属製の内筒プレート31および外筒プレート32により挟み込まれる2つの内側ヒータエレメント33および外側ヒータエレメント34と、3枚の絶縁プレート35~37とにより構成されている。なお、図2および図3においては、図面表現の便宜上、内側ヒータエレメント33と外側ヒータエレメント34は濃い灰色に、また絶縁プレート35~37は薄い灰色に、それぞれ着色されている。
【0023】
内筒プレート31および外筒プレート32は、例えば、短冊形状を有するボンデ鋼板(亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板)からなる。これらのプレート31,32は、3枚の絶縁プレート35~37を介在させて内側ヒータエレメント33や外側ヒータエレメント34を両側から挟み込み、最終的には、射出ノズル100の外径とほぼ同様の内径を有する円筒形状であってアルファベットのC字形状のように周方向および軸方向に切れ目を有する円筒形状に形成される。ボンデ鋼板は、ステンレス鋼板に比べて熱伝導率が大きい点で優れている。
【0024】
本実施形態では、外筒プレート32の板幅は、カバー本体21の板幅よりも僅かに小さく設定され、内筒プレート31の板幅は、カバー本体21の板幅よりも大きく設定されている。つまり、内筒プレート31は外筒プレート32よりも板幅が大きい。そのため、内筒プレート31の軸方向両端をそれぞれ外筒プレート32側に折り返すことによって、これらに挟み込まれた内側ヒータエレメント33や外側ヒータエレメント34等を両プレート31,32の間に保持することが可能になる。図1および図2(C)には、外筒プレート32の上下方向には、折り返された内筒プレート31の幅方向の両端が表されている。
【0025】
内側ヒータエレメント33および外側ヒータエレメント34は、外筒プレート32とほぼ同じ短冊形状に形成された雲母板を芯材にして抵抗線(ヒータ線、発熱線)を巻回したものである。本実施形態では、内側ヒータエレメント33と外側ヒータエレメント34は、抵抗線の巻回数や抵抗値が異なる。例えば、内側ヒータエレメント33について、従来のバンドヒータ(例えば、前述した特許文献1に開示されるバンドヒータ)が有するヒータエレメントと同等の熱量を発するように抵抗線が巻回されている場合には、外側ヒータエレメント34は、内側ヒータエレメント33の約半分の熱量を発生し得るように抵抗線の巻回数等が設定されている。
【0026】
より具体的には、例えば、内側ヒータエレメント33のワット密度が6W/cm2に設定されている場合、外側ヒータエレメント34は、ワット密度が3W/cm2に設定される。なお、内側ヒータエレメント33と外側ヒータエレメント34がそれぞれ発生可能な熱量の比率は、3:1でもよいし、1:1(両者同等)でもよい。ただし、後述するように、外側ヒータエレメント34のワット密度を、内側ヒータエレメント33のワット密度に比べて小さくすることによって、外側ヒータエレメント34が発熱してもそれによるカバー部20の膨張を小さくすることを可能にしている。
【0027】
内側ヒータエレメント33および外側ヒータエレメント34のそれぞれの両端には、電気配線14等が接続されている。即ち、内側ヒータエレメント33の雲母板に巻回される抵抗線の一端側には電気配線14が接続され、また同他端側には電気配線15が接続されている。また、外側ヒータエレメント34の雲母板に巻回される抵抗線の一端側には電気配線16が接続され、また同他端側には電気配線17が接続されている。
【0028】
本実施形態では、このように構成される内側ヒータエレメント33、外側ヒータエレメント34や絶縁プレート35~37を次のようなサンドイッチ構造で外筒プレート32と内側ヒータエレメント33との間に挟み込んでいる。内筒プレート31の外周面31bを覆うように絶縁プレート35を介在させて内側ヒータエレメント33が配置され、内側ヒータエレメント33の外周側33bを覆うように絶縁プレート36を介在させて外側ヒータエレメント34が配置され、外側ヒータエレメント34の外周側34bを覆うように絶縁プレート37を介して外筒プレート32が配置される。
【0029】
換言すると、外筒プレート32の内周面32aを覆うように絶縁プレート37を介在させて外側ヒータエレメント34が配置され、外側ヒータエレメント34の内周側34aを覆うように絶縁プレート36を介在させて内側ヒータエレメント33が配置され、内側ヒータエレメント33の内周側33aを覆うように絶縁プレート35を介在させて内筒プレート31が配置される。
【0030】
内側ヒータエレメント33や外側ヒータエレメント34に接続される電気配線14~17は、耐熱チューブ13に覆われることにより束ねられて、前述したように、カバー部20の配線窓26を介して外部上方に引き出されてハーネスホルダ27により保持される。即ち、これら4本の電気配線14~17は、バンドヒータ10(カバー部20およびヒータ部30)の外部にすべて引き出されて外部の電力供給源に接続される。
【0031】
外部の電力供給源は、例えば、200V~300Vの単相交流を供給可能な電源装置であり、射出ノズル100の所定位置に設けられた図略の熱電対等の温度センサから得られる温度情報に基づくPID制御によって交流電力の供給をデューティ比制御したりオンオフ制御したりしている。なお、電力供給源は直流電力を供給するものでもよい。本実施形態では、内側ヒータエレメント33と外側ヒータエレメント34に対して同じ交流電力を供給している。
【0032】
図4に示すように、内側ヒータエレメント33の電気配線14,15と外側ヒータエレメント34の電気配線16,17を、バンドヒータ10の外部において並列に接続し(破線P内の(●(黒丸)部分))、電気配線14,16の端子18と電気配線15,17の端子19を外部の電力供給源に接続することによって、内側ヒータエレメント33および外側ヒータエレメント34に交流電力を供給可能に構成する。並列接続は、電気配線14,16(電気配線15,17)同士の接続は、例えば、圧着スリーブによる圧着や端子台を介して行われる。
【0033】
このように本実施形態では、ヒータ部30の内側ヒータエレメント33や外側ヒータエレメント34に接続されている4本の電気配線14~17を、当該ヒータ部30内で並列に接続することなく、4本ともすべてカバー部20およびヒータ部30の外部に引き出した後、並列に接続して外部の電力供給源に接続する。これにより、これら4本の電気配線14~17がヒータ部30内で並列に接続される場合に比べて、内側ヒータエレメント33や外側ヒータエレメント34の発熱によって接続部分(図4に示す破線P内の●(黒丸)部分))が加熱され難い。そのため、並列接続された電気配線14,16(または電気配線15,17)同士の接続箇所を固定する圧着スリーブ等が熱膨張し難くなるので、接続部分●が外れたり緩んだりすることに起因する接続不良の発生を防ぐことができる。
【0034】
例えば、接続部分●がヒータ部30内に存在し、並列接続がろう材を用いるろう付けや圧着スリーブによる圧着により行われている場合には、接続部分●のろう材が内側ヒータエレメント33や外側ヒータエレメント34の発熱により加熱されて柔らかくなったり溶けたり、また圧着スリーブが熱膨張し得る。このような場合には、電気配線14,16(電気配線15,17)同士が並列に接続されなくなり、これらヒータエレメント33,34のいずれか一方が発熱不能に至るおそれがある。
【0035】
このように構成されるヒータ部30は、バンドヒータ10が射出ノズル100に取り付けられて、ボルト29が締結方向に締め付けられることによってカバー部20の内側空間径が小さくなる。そのため、ボルト29を締め付け方向に回すことによりカバー部20が径内向き方向に外筒プレート32の外周面32bを加圧するので、ヒータ部30の内径が小さくなり内筒プレート31の内周面31aが当該射出ノズル100の周囲に接触する。これにより、ワイヤハーネス12に接続される外部の電力供給源からバンドヒータ10に電力が供給されると、内側ヒータエレメント33と外側ヒータエレメント34が発熱することから、その熱が射出ノズル100に伝達されて当該射出ノズル100が加熱される。
【0036】
以上説明したように本実施形態のバンドヒータ10は、カバー部20とヒータ部30を備える。筒形状のヒータ部30は、内周面31aが射出ノズル100の周囲を覆い得る内筒プレート31と、内筒プレート31の外周面31bを覆うように配置され通電時に発熱する内側ヒータエレメント33と、内側ヒータエレメント33の外周側33bを覆うように配置され通電時に発熱する外側ヒータエレメント34と、外側ヒータエレメント34の外周側34bを覆う外筒プレート32と、を有する。カバー部20は、外筒プレート32の外側から径内向き方向に加圧してヒータ部30を射出ノズル100に取り付け得る。そして、外側ヒータエレメント34は、内側ヒータエレメント33に比べてワット密度が小さい。
【0037】
これにより、ヒータ部30は、内側ヒータエレメント33と外側ヒータエレメント34の発熱により射出ノズル100を加熱することが可能になる。したがって、ヒータ部30が内側ヒータエレメント33または外側ヒータエレメント34のいずれか一方だけを備える場合に比べてワット密度を高くすることができる。また、これにより、例えば、射出ノズル100の加熱に用いられるバンドヒータの数を減らすことができるので、金型の軽薄化を容易にすることが可能になる。
【0038】
また、外側ヒータエレメント34は、内側ヒータエレメント33に比べてワット密度が小さい。そのため、内側ヒータエレメント33のワット密度と外側ヒータエレメント34のワット密度が同じである場合、または外側ヒータエレメント34のワット密度が内側ヒータエレメント33のワット密度よりも大きい場合、に比べて、外側ヒータエレメント34の発熱によるカバー部20の熱膨張を減少させることが可能になる。したがって、カバー部20による径内向き方向に外筒プレート32を加圧する力が弱まることを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態のバンドヒータ10では、内側ヒータエレメント33および外側ヒータエレメント34には、それぞれの一端側と他端側に通電用の電気配線14~17が接続されている。そして、これら4本の電気配線14~17はヒータ部30内で並列に接続されることなく4本の電気配線14~17がすべて外部に引き出される。これにより、これら4本の電気配線14~17がヒータ部30内で並列に接続される場合に比べて、接続部分(図4に示す破線P内の●(黒丸)部分))が加熱され難い。したがって、接続部分●が加熱されることにより電気配線14と電気配線16や、電気配線15と電気配線17の並列接続が外れたり緩んだりすることに起因する接続不良の発生を防ぐことができる。
【0040】
なお、上述した本実施形態のバンドヒータ10においては、図2(A)に示すように、カバー部20の径方向において配線径のほぼ半分(約1/2)が互いに重なる位置関係でハーネスホルダ27に保持されるように構成した。これにより、ハーネスホルダ27のホルダ厚さWは、電気配線14等の配線径Dの2倍(2本分)と、ハーネスホルダ27の板厚Tの3倍(3枚分)と、耐熱チューブ13の被覆厚Gの2倍(2枚分)とを加えた値(W=D×2+T×3+G×2)になる(図2(B)参照)。
【0041】
しかし、例えば、図5(A)に示す改変例1のバンドヒータ10’のように、カバー部20の径方向において互いに僅かに(例えば、配線径の約1/4~約1/5が)重なる位置関係で電気配線14~17を保持するようにハーネスホルダ27’を構成してもよい。これにより、例えば、電気配線14と電気配線16や電気配線15と電気配線17によるカバー部20の径方向への突出量は、配線径Dの約1.5倍に抑えられる。
【0042】
このため、当該改変例1に係るバンドヒータ10’のハーネスホルダ27’は、そのホルダ厚さW’が電気配線14等の配線径Dの1.5倍(1.5本分)と、ハーネスホルダ27の板厚Tの3倍(3枚分)と、耐熱チューブ13の被覆厚Gの2倍(2枚分)とを加えた値(W’=D×1.5+T×3+G×2)になる。したがって、改変例1のバンドヒータ10’は、上述したバンドヒータ10に比べて、そのハーネスホルダ27’がカバー部20の径方向に拡大する突出量を配線径Dの半分程度、小さくすることが可能になる。
【0043】
また、例えば、図5(B)に示す改変例2のバンドヒータ10”のように、カバー部20の径方向において互いに重ならない位置関係、つまりカバー部20の周方向に横並びになる位置関係で電気配線14~17を保持するようにハーネスホルダ27”を構成してもよい。これにより、例えば、電気配線14~17によるカバー部20の径方向への突出量は、配線径D相当に抑えられる。そのため、当該改変例2に係るバンドヒータ10”のハーネスホルダ27”は、そのホルダ厚さW”が電気配線14等の配線径Dと、ハーネスホルダ27の板厚Tの3倍(3枚分)と、耐熱チューブ13の被覆厚Gの2倍(2枚分)とを加えた値(W”=D+T×3+G×2)になる。
【0044】
したがって、改変例2のバンドヒータ10”は、上述したバンドヒータ10に比べて、そのハーネスホルダ27”がカバー部20の径方向に拡大する突出量を配線径D相当、小さくすることが可能になるので、径方向のサイズが小さくなる。例えば、金型内において、当該バンドヒータ10”を収容するスペースを小さくすることができ、金型の小型化を容易にすることが可能になる。
【0045】
また、上述した本実施形態のバンドヒータ10、改変例1のバンドヒータ10’や改変例2のバンドヒータ10”では、円筒形状を有する射出ノズル100に取り付ける場合を例示して説明したが、これに限られない。バンドヒータ10,10’,10”を取り付ける対象は、筒状体または柱状体であれば、例えば、角筒形状や多角筒形状を有する射出ノズルでもよいし、また例えば円柱形状や角柱形状を有する被加熱体でもよい。また、押出し成形機の加熱シリンダにバンドヒータ10を取り付けてもよい。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0047】
10,10’,10”…バンドヒータ
12…ワイヤハーネス
14~17…電気配線
20…カバー部
21…カバー本体
26…配線窓(貫通穴)
27…ハーネスホルダ(配線保持部)
30…ヒータ部
31…内筒プレート(内筒部)
31a…内周面
31b…外周面
32…外筒プレート(外筒部)
32a…内周面
32b…外周面
33…内側ヒータ(内側発熱体)
33a…内周側
33b…外周側(反内筒部側)
34…外側ヒータ(外側発熱体)
34a…内周側
34b…外周側(反内側発熱体側)
35~37…絶縁プレート
100…射出ノズル(筒状体)
図1
図2
図3
図4
図5