(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100532
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 17/06 20060101AFI20220629BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20220629BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20220629BHJP
【FI】
B60K17/06 K
A01C11/02 313
F16H57/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214557
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】土江 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】渡里 圭介
(72)【発明者】
【氏名】都田 洋三
【テーマコード(参考)】
2B062
3D039
3J063
【Fターム(参考)】
2B062AB01
2B062BA02
2B062BA04
3D039AA16
3D039AA18
3D039AB14
3D039AC49
3D039AD43
3D039AD44
3J063AA13
3J063AB01
3J063AC01
3J063BA15
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD38
3J063XD47
3J063XD63
3J063XD64
3J063XD72
3J063XE12
3J063XH13
3J063XH23
(57)【要約】
【課題】ギヤケース内のオイル性状、油膜保持及びシール性を維持して歯車機構の作動を安定させる。
【解決手段】エンジン6と、エンジン6の動力で駆動される油圧ポンプ16と、エンジン6から油圧ポンプ16に至る伝動経路に設けられる歯車機構17と、歯車機構17を収容するギヤケース15と、を備える乗用田植機1であって、ギヤケース15は、外部からオイルが補給されるオイル補給口27cと、オイルを排出するオイル排出口27dと、を備え、ギヤケース15の内部が、油路の一部として機能する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの動力で駆動される油圧ポンプと、
前記エンジンから前記油圧ポンプに至る伝動経路に設けられる歯車機構と、
前記歯車機構を収容するギヤケースと、を備える作業車両であって、
前記ギヤケースは、
外部からオイルが補給されるオイル補給口と、
オイルを排出するオイル排出口と、を備え、
前記ギヤケースの内部が、油路の一部として機能することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記オイル補給口は、オイルタンクに接続され、
前記オイル排出口は、前記油圧ポンプに接続されることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記歯車機構は、歯車の噛合い及び回転によるオイル搬送機能を有し、前記オイル補給口から流入するオイルを前記オイル排出口に向けて搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記オイル補給口及び前記オイル排出口は、いずれもオイルタンクに接続されることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機などの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン動力を油圧に変換して各種の油圧アクチュエータを作動させる作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、エンジンと、エンジンの動力で駆動される油圧ポンプと、ベルト伝動機構又は歯車機構で構成され、エンジンの動力を油圧ポンプに伝動する油圧ポンプ伝動機構と、を備える作業車両が公知である。歯車機構からなる油圧ポンプ伝動機構は、ベルト伝動機構に比べてコンパクトに構成できるだけでなく、歯車機構が収容されるギヤケースを油圧ポンプのブラケットに兼用できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、歯車機構からなる油圧ポンプ伝動機構では、ギヤケース内に充填される潤滑用のオイルが高温になり、オイル性状、油膜保持及びシール性に悪影響を及ぼす虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、エンジンと、前記エンジンの動力で駆動される油圧ポンプと、前記エンジンから前記油圧ポンプに至る伝動経路に設けられる歯車機構と、前記歯車機構を収容するギヤケースと、を備える作業車両であって、前記ギヤケースは、外部からオイルが補給されるオイル補給口と、オイルを排出するオイル排出口と、を備え、前記ギヤケースの内部が、油路の一部として機能することを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の作業車両であって、前記オイル補給口は、オイルタンクに接続され、前記オイル排出口は、前記油圧ポンプに接続されることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の作業車両であって、前記歯車機構は、歯車の噛合い及び回転によるオイル搬送機能を有し、前記オイル補給口から流入するオイルを前記オイル排出口に向けて搬送することを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の作業車両であって、前記オイル補給口及び前記オイル排出口は、いずれもオイルタンクに接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ギヤケースの内部が、油路の一部として機能するので、高温となったオイルの停留を回避でき、その結果、良好なオイル性状、油膜保持及びシール性を維持して歯車機構の作動を安定させることが可能になる。
また、請求項2の発明によれば、オイル補給口は、オイルタンクに接続され、オイル排出口は、油圧ポンプに接続されるので、オイルタンクから油圧ポンプに至る油路の一部としてギヤケースの内部を機能させることができる。
また、請求項3の発明によれば、歯車機構は、歯車の噛合い及び回転によるオイル搬送機能を有し、オイル補給口から流入するオイルをオイル排出口に向けて搬送するので、油圧ポンプに接続しなくても外部からオイルを補給することができる。
また、請求項4の発明によれば、オイル補給口及びオイル排出口は、いずれもオイルタンクに接続されるので、歯車機構のオイル搬送機能を利用してオイルタンクとギヤケースの間でオイルを循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の斜視図である。
【
図5】エンジンに対するギヤケース及び油圧ポンプの取付状態を示す左側方から見た斜視図である。
【
図6】エンジンに対するギヤケース及び油圧ポンプの取付状態を示す右側方から見た斜視図である。
【
図7】ギヤケースのエンジン固定側の面を示す側面図である。
【
図8】ギヤケースの油圧ポンプ取付側の面を示す側面図である。
【
図9】乗用田植機の油圧構成を示すブロック図である。
【
図10】ギヤケースの内部構成を示す側面図である。
【
図11】ギヤケースの他の接続例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び
図2において、1は乗用田植機であって、該乗用田植機1は、走行機体2と、走行機体2の後部に昇降リンク機構3を介して連結される植付作業機4と、を備えており、植付作業機4は、走行機体2と昇降リンク機構3との間に介設されるリフトシリンダ5(
図9参照)の油圧伸縮作動に応じて昇降される。
【0009】
図1~
図6に示すように、走行機体2は、機体前部に搭載されるエンジン6と、ベルト伝動機構7を介して入力されるエンジン動力を無段変速するHST8(静油圧式無段変速機構)と、HST8から出力される動力をさらに変速して前輪9、後輪10及び植付作業機4に伝動し、かつオイル(作動油)を貯留するオイルタンクに兼用されるトランスミッションケース11と、エンジン冷却水を冷却するラジエータ12と、オイルを冷却するオイルクーラ13と、パワーステアリングPSを構成するトルクジェネレータ14と、を備える。
【0010】
図3~
図6に示すように、エンジン6の後部には、ギヤケース15を介して油圧ポンプ16が取付けられている。油圧ポンプ16は、ギヤケース15に内装される歯車機構17を介してエンジン6から伝動される動力で駆動すると、トランスミッションケース11内のオイルを吸入し、
図9に示す油圧回路18に供給する。油圧回路18には、前述したパワーステアリングPSと、リフトシリンダ5を作動させるコントロールバルブ19と、前述したオイルクーラ13と、前述したHST8と、が直列状に接続されており、これらの油圧機器を経由したオイルはトランスミッションケース11に戻される。
【0011】
歯車機構17は、エンジン6の出力軸6aに接続される入力軸20と、油圧ポンプ16の入力軸16aに接続される出力軸21と、入力軸20と出力軸21との間に並列に配置される中間軸22と、入力軸20に設けられる第1歯車23と、中間軸22に設けられ、第1歯車23と噛み合う第2歯車24と、中間軸22に設けられる第3歯車25と、出力軸21に設けられ、第3歯車25と噛み合う第4歯車26と、を備える。
【0012】
ギヤケース15は、第1ケース部材27と、第2ケース部材28と、を締結して構成される。
図7に示すように、第1ケース部材27は、エンジン6に固定されるエンジン固定部27aと、エンジン6の出力軸6aと入力軸20とを接続するための入力用開口部27bと、外部からオイルが補給されるオイル補給口27cと、オイルを排出するオイル排出口27dと、を備える。また、
図8に示すように、第2ケース部材28は、油圧ポンプ16を取り付ける油圧ポンプ取付部28aと、油圧ポンプ16の入力軸16aと出力軸21とを接続するための出力用開口部28bと、を備える。
【0013】
図9に示すように、オイル補給口27cは、油圧配管29を介してトランスミッションケース11のオイル出口11aに接続され、オイル排出口27dは、油圧配管30を介して油圧ポンプ16のオイル入口16bに接続されている。このようにすると、トランスミッションケース11から油圧ポンプ16に至る油路の一部としてギヤケース15の内部を機能させることができるので、ギヤケース15の内部に高温となったオイルが停留することを回避でき、その結果、良好なオイル性状、油膜保持及びシール性を維持して歯車機構17の作動を安定させることが可能になる。また、本実施形態では、トランスミッションケース11から油圧ポンプ16に直接オイルを供給する油路と、トランスミッションケース11からギヤケース15を介して油圧ポンプ16にオイルを供給する油路と、を並列状に備えるため、油圧ポンプ16が要求するオイル流量を確実に供給することができる。
【0014】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、エンジン6と、エンジン6の動力で駆動される油圧ポンプ16と、エンジン6から油圧ポンプ16に至る伝動経路に設けられる歯車機構17と、歯車機構17を収容するギヤケース15と、を備える乗用田植機1であって、ギヤケース15は、外部からオイルが補給されるオイル補給口27cと、オイルを排出するオイル排出口27dと、を備え、ギヤケース15の内部が、油路の一部として機能するので、高温となったオイルの停留を回避でき、その結果、良好なオイル性状、油膜保持及びシール性を維持して歯車機構17の作動を安定させることができる。
【0015】
また、オイル補給口27cは、オイルタンクであるトランスミッションケース11に接続され、オイル排出口27dは、油圧ポンプ16に接続されるので、トランスミッションケース11から油圧ポンプ16に至る油路の一部としてギヤケース15の内部を機能させることができる。
【0016】
つぎに、第2実施形態について、
図10及び
図11を参照して説明する。ただし、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態と同じ符号を用いることにより、前記第1実施形態の説明を援用する場合がある。
【0017】
第2実施形態の歯車機構17は、歯車の噛合い及び回転によるオイル搬送機能を有し、オイル補給口27cから流入するオイルをオイル排出口27dに向けて搬送する点が第1実施形態と相違する。このような構成によれば、油圧ポンプ16に接続しなくても外部からギヤケース15にオイルを補給することが可能になる。
【0018】
例えば、
図11に示すように、オイル補給口27cを油圧配管31を介してトランスミッションケース11のオイル出口11aに接続し、オイル排出口27dを油圧配管32を介してトランスミッションケース11のオイル戻し口11bに接続する。このようにすると、歯車機構17のオイル搬送機能を利用してトランスミッションケース11とギヤケース15の間でオイルを循環させることができる。
【0019】
なお、本発明は前記実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、
図11に示す例では、ギヤケース15のオイル排出口27dから排出されるオイルを油圧配管32を介してすべてトランスミッションケース11に戻しているが、油圧配管32を分岐させ、オイル排出口27dから排出されるオイルの一部を油圧ポンプ16に供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 乗用田植機
2 走行機体
6 エンジン
11 トランスミッションケース
15 ギヤケース
16 油圧ポンプ
17 歯車機構
20 入力軸
21 出力軸
22 中間軸
23~26 歯車
27 第1ケース部材
27a エンジン固定部
27b 入力用開口部
27c オイル補給口
27d オイル排出口
28 ケース部材
28a 油圧ポンプ取付部
28b 出力用開口部
29~32 油圧配管