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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100557
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 1/26 20060101AFI20220629BHJP
   B30B 15/06 20060101ALI20220629BHJP
   B30B 15/22 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B30B1/26 E
B30B15/06 D
B30B15/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214597
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田幡 諭史
【テーマコード(参考)】
4E088
4E089
4E090
【Fターム(参考)】
4E088AA01
4E088AA05
4E088AB02
4E088BA01
4E088DA12
4E089EA01
4E089EA06
4E089EB03
4E089EC03
4E089ED02
4E089ED07
4E089EE03
4E089EE04
4E089EF03
4E089EF08
4E089FA01
4E089FB03
4E089FC01
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA01
4E090BA02
4E090BB02
4E090BB06
4E090BB07
4E090CA02
4E090CC02
(57)【要約】
【課題】適正な加圧によるプレス成形を行う。
【解決手段】第1金型31を保持可能なスライド18と、第2金型32を保持可能な保持部24と、第1金型31と第2金型32とを接近又は離隔させるストローク方向にスライド18を往復移動させる往復機構10と、往復機構10により第1金型31と第2金型32とが接近した状態で、往復機構10よりも短いストロークで第2金型32を第1金型31に向かって加圧保持する加圧機構26とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型を保持可能なスライドと、
第2金型を保持可能な保持部と、
前記第1金型と前記第2金型とを接近又は離隔させるストローク方向に前記スライドを往復移動させる往復機構と、
前記往復機構により前記第1金型と前記第2金型とが接近した状態で、前記往復機構よりも短いストロークで前記第2金型を前記第1金型に向かって加圧保持する加圧機構と、
を備えるプレス装置。
【請求項2】
前記往復機構は、クランク機構である請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記クランク機構は、エキセン軸を有する請求項2に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記クランク機構は、前記加圧機構が加圧保持可能な位置まで前記スライドを移動させて停止する請求項2又は3に記載のプレス装置。
【請求項5】
前記加圧機構による加圧保持中に、前記スライドの位置を保持させるスライド保持機構を有する請求項4に記載のプレス装置。
【請求項6】
前記クランク機構は、ストローク動作の死点まで前記スライドを移動させて停止する請求項4又は5に記載のプレス装置。
【請求項7】
前記加圧機構は、前記クランク機構による前記スライドの停止中に前記第2金型の加圧保持を行う請求項4から6のいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項8】
前記加圧機構は、液圧によるシリンダ機構である請求項1から7のいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項9】
前記加圧機構以外の他の加圧機構を備え、
前記スライドは、前記第1金型以外の他の第1金型を保持可能であり、前記保持部は、前記第2金型以外の他の第2金型を保持可能であり、前記往復機構は、前記他の第1金型と前記他の第2金型とを接近又は離隔させるストローク方向に前記スライドを往復移動させ、前記他の加圧機構は、前記往復機構により前記他の第1金型と前記他の第2金型とが接近した状態で、前記往復機構よりも短いストロークで前記他の第2金型を前記他の第1金型に向かって加圧保持する請求項1から8のいずれか一項に記載のプレス装置。
【請求項10】
前記他の加圧機構は、前記加圧機構と独立して加圧保持動作できる請求項9に記載のプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス装置は、一般に、金型を保持するスライドのストローク動作を行う機構としてクランク機構が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-114525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クランク機構は、高サイクルでプレス成形を行うことが可能だが、上金型が下死点を通過する際に被成形物の加圧を行うことから、上金型と下金型との間隔を適正に調整する必要があるが、目標通りの加圧力に調整することは非常に難しかった。
また、クランク機構の場合、加圧状態を保持することが難しい。例えば、駆動源としてサーボモータを利用すれば、スライドを加圧位置で一定時間停止させることが可能となるが、加圧状態で停止する場合、大きな保持トルクが必要となるため、大容量高トルクのサーボモータが必要となるという問題があった。
【0005】
本発明は、適正な加圧によるプレス成形を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプレス装置は、
第1金型を保持可能なスライドと、
第2金型を保持可能な保持部と、
前記第1金型と前記第2金型とを接近又は離隔させるストローク方向に前記スライドを往復移動させる往復機構と、
前記往復機構により前記第1金型と前記第2金型とが接近した状態で、前記往復機構よりも短いストロークで前記第2金型を前記第1金型に向かって加圧保持する加圧機構と、
を備える構成とされる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より適正な加圧によるプレス成形を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るプレス装置の全体構成を示す図である。
図2】プレス成形時の1ストロークの動作中におけるスライド及びボルスタの経時的な位置変化を示す動作線図である。
図3図2に示すスライド又はボルスタの各位置における各部の制御装置による制御動作を示した図表である。
図4】油圧シリンダ機構の他の構成を示す説明図である。
図5】加圧機構の他の構成を示す説明図である。
図6】加圧機構のさらに他の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[成形装置の構成]
図1は本実施形態に係る成形装置としてのプレス装置1の全体構成を示す図である。
プレス装置1は、図示のように、鍛造成形を行う鍛造プレス装置であり、装置本体100と後述する制御装置50とを備える。装置本体100は、ベッド23、複数のアップライト22、クラウン21、ボルスタ24、スライド18、駆動部10、位置検出部としての移動量計測器35、バランサー53、加圧機構としての油圧シリンダ機構26等を備える。
【0011】
ベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、プレス装置1のフレーム部を構成する。これらベッド23、複数のアップライト22及びクラウン21は、その内部にタイロッド25aが挿入され、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結される。
【0012】
ボルスタ24は、油圧シリンダ機構26を介してベッド23上に固定され、その上部には複数の第2金型としての下金型32を保持する。ボルスタ24は、下金型32の保持部として機能する。
スライド18は、アップライト22に設けられたガイド19により、上下方向をストローク方向として往復動作可能に支持される。スライド18の下部には下金型32と同数の第1金型としての上金型31が保持される。金型としての複数の上金型31と金型としての複数の下金型32とは、互いに対応して組をなすととともに、それぞれ、後述するエキセン軸16の長手方向(図示左右方向)に沿って配列されており、各々が上下に対向している。スライド18が上昇することで、上金型31及び下金型32が離隔し、スライド18が下降して上金型31及び下金型32が最も接近した状態で被成形物の加圧保持を行うことが可能となる。上記スライド18において、最も上昇した位置を上死点(第1位置)とし、最も下降した位置を下死点(第2位置)とする。
なお、スライド18のストローク方向は上下方向に限定されないが、本実施形態では、ストローク方向が上下方向である場合を例示する。
【0013】
駆動部10は、スライド18をストローク方向に往復させるための構成であり、モータ11、フライホイール12、クラッチ13、ブレーキ14、エキセン軸16及びコネクティングロッド(コンロッド)17を備えおり、これらは往復機構としてのクランク機構を構成している。
モータ11は、ベルト11aを介してフライホイール12に連結され、その動力によりフライホイール12を回転させる。このモータ11は、回転速度を制御することは可能だが、いわゆるサーボモータのように軸角度を任意の位置で制止させる位置決め機能等は有していない。但し、モータ11にサーボモータを適用してもよい。その場合には、フライホイール12、クラッチ13、ブレーキ14を不要とすることができる。
【0014】
クラッチ13は、フライホイール12とエキセン軸16との連結及び連結解除の切り替えを行う。ブレーキ14は、エキセン軸16の制動を行う。クラッチ13によりフライホイール12とエキセン軸16が連結されると、フライホイール12の回転運動がエキセン軸16に伝達された後に、コンロッド17を介してスライド18の直進運動に変換されて、スライド18が上下方向に沿って往復する。
【0015】
移動量計測器35は、スライド18の上下方向への往復動作の軌跡中のいずれに位置するか(以下、「スライド位置」という。)を検出するためのものである。移動量計測器35は、例えば、エキセン軸16の回転角度を検出するエンコーダ等の検出器により構成される。
また、例えば、フレーム部に設けられて、スライド18の移動量を計測する構成としても良い。その場合、移動量計測器35としては、スライド18側に設けられたラックと、アップライト22又はガイド19側に設けられたピニオンと、当該ピニオンの回転量を検出するエンコーダ等の検出器とから構成しても良いし、スライド18の上下方向の位置変位を検出するリニアセンサ、スライド18の上下方向の位置を光学的な測距によって検出するレーザ検出器等、直線方向の位置検出が可能ないずれの検出器から構成しても良い。
【0016】
バランサー53は、スライド18のストローク方向(上下方向)の移動に対してスライド18の重量に相当する上方への圧力を付与するために設けられたエアシリンダである。
バランサー53は、ピストンに連結されたピストンロッドが下方に延出され、その下端部がスライド18の上端部に連結されている。バランサー53は、スライド18を上方から支えるように支持圧力を付与することで、スライド18を支持するコンロッド17等との隙間を片側に寄せて、当該隙間による影響を取り除くための構成である。
【0017】
[油圧シリンダ機構]
油圧シリンダ機構26は、ボルスタ24とベッド23との間において、前後左右に二つずつで合計四つ設けられている。なお、油圧シリンダ機構26の個体数は、適宜増減可能である。
油圧シリンダ機構26は、ベッド23の上面に固定支持されたシリンダ261と、シリンダ261内でストローク方向(上下方向)に移動可能に格納されたピストン262とを備えている。油圧シリンダ機構26は、シリンダ261内におけるピストン262の上側領域と下側領域とに対して作動流体としての作動油の給排が行われる複動式のシリンダである。
【0018】
そして、ピストン262に連結されたピストンロッド263が上方に延出され、その上端部がボルスタ24の下面に固定連結されている。油圧シリンダ機構26のピストンロッド263は、スライド18とストローク方向が一致しているが、スライド18のストロークに比べて、ボルスタ24の可動範囲(ストローク)は、十分短く設定されている。但し、油圧シリンダ機構26は、スライド18が下死点に位置する場合の上金型31に対して、ボルスタ24上の下金型32が被成形物を十分に加圧することが可能なストロークを有している。
これにより、油圧シリンダ機構26は、スライド18が下死点に位置する場合に、上金型31に対してボルスタ24及び下金型32を上方に押し上げて、加圧状態を一定期間維持する加圧保持を行うことができる。
【0019】
各油圧シリンダ機構26は、図1に示す油圧回路に接続されている。なお、図1では一つの油圧シリンダ機構26のみが油圧回路に接続されている状態を図示しているが、実際には、全ての油圧シリンダ機構26が同様に油圧回路に接続されている。そして、全ての油圧シリンダ機構26は、油圧回路により一様に動作が付与される。
【0020】
油圧回路は、作動油を供給するポンプ61と、作動油タンク62と、方向切換バルブ63と、流量調整バルブ64と、圧力制御バルブ65と、第1流路66と、第2流路67と、第3流路68と、排油路69とを有する。
【0021】
第1流路66は、油圧シリンダ機構26の下側領域と方向切換バルブ63の間で作動油を流通させる流路である。
第2流路67は、油圧シリンダ機構26の上側領域と方向切換バルブ63の間で作動油を流通させる流路である。
第3流路68は、ポンプ61と方向切換バルブ63の間で作動油を流通させる流路である。
排油路69は、方向切換バルブ63と作動油タンク62の間で作動油を流通させる流路である。
【0022】
流量調整バルブ64は、第3流路68に設けられており、圧力制御バルブ65は、第3流路68と排油路69を接続する流路上に設けられている。
方向切換バルブ63は、第1流路66と第3流路68、第2流路67と排油路69を接続する状態と、第1流路66と排油路69、第2流路67と第3流路68を接続する状態と、全ての流路が閉じられた閉状態とに切り替えることができる。
【0023】
流量調整バルブ64は、ポンプ61から供給される作動油の流量を調節し、圧力制御バルブ65は、ポンプ61から供給される作動油の供給圧力を調節する。
方向切換バルブ63の切り替えにより、油圧シリンダ機構26の上側領域又は下側領域の一方に対して、調節された流量且つ調節された供給圧力で作動油を供給することができ、上側領域又は下側領域の他方から作動油を作動油タンク62に戻すことが出来る。
上記流量調整バルブ64、圧力制御バルブ65、方向切換バルブ63及びポンプ61は、制御装置50によって制御され、例えば、方向切換バルブ63により、第1流路66と第3流路68、第2流路67と排油路69を接続する状態とすることより、油圧シリンダ機構26の下側領域に目標とする圧力で作動油を供給して、ボルスタ24を通じて下金型32を上金型31側に加圧することが出来る。
【0024】
[プレス成形の動作制御]
制御装置50は、装置本体100の移動量計測器35によりエキセン軸16の検出軸角度からスライド18の位置検出を行う。
また、制御装置50は、駆動部10のモータ11、クラッチ13及びブレーキ14と、油圧回路のポンプ61、方向切換バルブ63、流量調整バルブ64及び圧力制御バルブ65とに接続され、これらを制御して、プレス成形を行う。
【0025】
制御装置50が行うプレス装置1のプレス成形時の動作制御について説明する。
図2はプレス成形時の1ストロークの動作中におけるスライド18(上金型31)及びボルスタ24(下金型32)の経時的な位置変化を示す動作線図であり、縦軸が位置、横軸が時間を示している。また、図3は、図2に示すスライド18又はボルスタ24の各位置における駆動部10(クランク機構)と油圧シリンダ機構26の制御装置50による制御動作を示した図表である。
【0026】
制御装置50は、移動量計測器35の出力からスライド18の位置を取得しつつ、以下の動作制御を行う。
図2及び図3に示すように、状態[1]において、制御装置50は、モータ11によりフライホイール12の回転駆動を行う。このとき、クラッチ13が開かれてエキセン軸16にトルクは付与されず、ブレーキ14が閉じられてエキセン軸16は制動状態となるように制御されている。
一方、油圧回路は、各油圧シリンダ機構26の下側領域の作動油が作動油タンク62に戻された状態を維持するように制御されている。
従って、スライド18は上死点位置で待機し、ボルスタ24及び下金型32は最も下降した下降端に位置している。
【0027】
状態[2]において、制御装置50は、クラッチ13を閉じ、ブレーキ14を開いて、エキセン軸16を回転させる。これにより、スライド18が起動し、上死点から下降を開始する。
ボルスタ24及び下金型32は下降端で待機する。
【0028】
状態[3]において、スライド18の下死点の到達が移動量計測器35により検出されると、制御装置50は、クラッチ13を開き、ブレーキ14を閉じて、スライド18を下死点で停止させる。
さらに、油圧回路に対して、各油圧シリンダ機構26の下側領域に加圧の目標とする圧力で作動油を供給するよう制御を開始する。
従って、スライド18は下死点位置で停止し、ボルスタ24及び下金型32は上昇を開始する。
なお、下死点でスライド18が停止してから上金型31に対して下金型32による被成形物の加圧が開始されるのであれば、ボルスタ24の上昇は、より早く開始しても良い。
【0029】
状態[4]において、下死点で停止したスライド18の上金型31と上昇しているボルスタ24上の下金型32とが最接近し、被成形物の加圧を開始する。
このとき、制御装置50は、ボルスタ24及び下金型32が目標とする圧力で上昇を行うよう油圧回路の制御を継続する。これにより、下金型32が目標とする圧力を維持しつつ加圧状態を継続し、被成形物の加圧保持が行われる。
【0030】
なお、この場合、ブレーキ14は、油圧シリンダ機構26による加圧保持中に、スライド18の位置を保持するスライド保持機構として機能する。
また、モータ11としてサーボモータを使用する場合には、当該サーボモータがスライド18の位置を保持するスライド保持機構として機能する構成としてもよい。
さらに、サーボモータとブレーキ14の両方を備える構成の場合には、プレス装置1に、サーボモータとブレーキ14のいずれをスライド保持機構として使用するか或いは両方使用するかを選択するための設定部を設けてもよい。
【0031】
状態[5]において、ボルスタ24の上昇開始からの経過時間の計測等を行うことによって、加圧保持状態が予め定められた一定時間継続すると、制御装置50は、油圧回路に対して、各油圧シリンダ機構26の下側領域の作動油が作動油タンク62に戻されるように制御する。これにより、ボルスタ24及び下金型32が下降を開始して被成形物の加圧保持状態が解除される。
【0032】
状態[6]において、加圧保持状態が解除されてからさらに予め定められた一定時間が経過すると、制御装置50は、クラッチ13を閉じ、ブレーキ14を開いて、エキセン軸16を回転させる。これにより、スライド18は、下死点から上昇を開始する。
状態[7]において、ボルスタ24及び下金型32は、下降端に到達し、下降を停止する。
【0033】
状態[8]において、スライド18の上死点の到達が移動量計測器35により検出されると、制御装置50は、クラッチ13を開き、ブレーキ14を閉じて、スライド18を上死点で停止させる。一方、ボルスタ24及び下金型32は、下降端で待機する。
この状態[8]は、前述した状態[1]と一致しており、プレス成形の次のストロークが開始される場合には、状態[8](状態[1])から状態[2]に遷移して、同様にしてプレス成形動作が行われる。
【0034】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、プレス装置1は、上金型31と下金型32とを接近又は離隔させるストローク方向にスライド18を往復動作させる駆動部10と、スライド18よりも短いストロークでボルスタ24及び下金型32を上金型31に向かって加圧保持する油圧シリンダ機構26とを備えている。
このため、駆動部10と油圧シリンダ機構26とにより、上金型31と下金型32とを相対的に接近させることで加圧することができ、高サイクルでプレス成形を行うことが可能となる。また、これにより、上金型31と下金型32と間の相対的なストロークを大きく採ることが出来るので、上金型31と下金型32の金型の設計の自由度を広く確保することができ、多種多様なプレス加工を実現することが可能となる。
また、ストロークが短い加圧機構としての油圧シリンダ機構26は、加圧力を目標値に設定することが容易であり、一定の加圧状態を維持することが容易であるため、目標とする加圧力で加圧保持を行うことができ、適正且つ良質な被成形物のプレス加工を実現することが可能となる。
また、加圧機構としての油圧シリンダ機構26を有するので、加圧保持を行うための大容量高トルクのサーボモータを不要とすることも可能である。
【0035】
さらに、スライド18ではなく、下金型32側に加圧機構としての油圧シリンダ機構26を設けたので、高速且つ大きなストローク動作を行うスライド18に作動油を供給する場合に比べて、供給路の設置を容易に行うことが可能となる。さらに、スライド18側に作動油を供給する場合に比べて、作動油の漏れ等が生じにくい供給路を設置することができ、装置の動作の安定性やメンテナンス性を高く維持することが可能となる。
【0036】
また、往復機構である駆動部10は、クランク機構を構成するので、上金型31のストロークを大きく確保することが容易であって、高サイクルでプレス成形を行うことが可能となる。
さらに、駆動部10は、エキセン軸16を有するので、当該エキセン軸16の長手方向に沿って複数の上金型31及び下金型32を配置することにより、一度に多くの被成形物に対してプレス成形を行うことが可能となると共に、各上金型31及び各下金型32に対して均等に加圧を行うことができ、これらの成形品質の均一化を図ることが可能である。
【0037】
また、駆動部10は、制御装置50によって、油圧シリンダ機構26が加圧保持可能な位置までスライド18を移動させて停止させるので、油圧シリンダ機構26のボルスタ24及び下金型32のストロークを小さくすることができ、高速化が難しい油圧シリンダ機構26による遅延を最小限に抑えることができ、油圧シリンダ機構26を採用しつつも高サイクルでプレス成形を行うことが可能となる。
【0038】
また、駆動部10は、ストローク動作の死点(下死点)までスライド18を下降させて停止させるので、加圧保持を安定的に行うと共に、目標とする加圧力が得られやすくなり、適正且つ良質な被成形物のプレス加工を行うことが可能となる。
特に、停止した上金型31に対して油圧シリンダ機構26により下金型32の加圧をすることにより、より正確に目標とする加圧力でプレス加工を行うことが可能となる。
【0039】
さらに、ストローク動作の死点(下死点)までスライド18を下降させて停止させるので、油圧シリンダ機構26側からの加圧力に対して、小さな力でエキセン軸16が回転を生じないように保持することが可能となる。
このようなスライド18の下死点停止状態で加圧保持を行う場合、スライド18の下死点維持を小さな保持トルクで可能とすることから、ブレーキ14のブレーキ能力を小容量とする、又は、ブレーキ14を不要とすることが可能となる。
【0040】
特に、油圧シリンダ機構26による加圧保持中に、スライド18の位置を保持するスライド保持機構を有するので、スライド18に十分な保持力を与えた状態で加圧保持を行うことができ、より正確に目標とする加圧力でプレス加工を行うことが可能となる。
【0041】
また、プレス装置1は、加圧機構として油圧シリンダ機構26を採用するので、大きな加圧力を容易に得ることが出来、また、加圧状態を維持することも容易となる。また、上金型31と下金型32の相対的な離隔動作のストロークの大部分を駆動部10が占めるので、油圧シリンダ機構26が占めるストロークを低減することができ、大きな油圧ポンプを不要とすることが可能である。
また、油圧シリンダ機構26は、ピストンロッドが下金型32を加圧保持する構成であることから、構造の容易化を図ることが可能となる。
【0042】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、スライド18が上下方向に往復する構成を例示したが、スライド18が上下方向に往復するプレス装置に限定されない。例えば、スライド18が水平方向や上下方向又は水平方向に対して傾斜した方向に往動するプレス装置であっても良い。
【0043】
また、上記実施形態では、加圧保持動作の際に、駆動部10がスライド18を下死点で停止させることを例示したが、加圧保持の際にスライド18のスライド位置が保持される範囲内であれば、下死点ではなくともよい。但し、油圧シリンダ機構26のストロークとの関係により、スライド18の停止位置は下死点周辺であることが好ましい。
【0044】
また、加圧機構としての油圧シリンダ機構26は、上記構造に限らず、例えば、図4に示すように、ピストン262(又はプランジャ)をベッド23上面に固定し、シリンダ261をボルスタ24の下面に固定し、シリンダ261が昇降してボルスタ24及び下金型32にストローク動作を付与する構成としても良い。また、この図4のように、油圧シリンダ機構26は、単動式のシリンダを使用しても良い。
また、図4の油圧シリンダ機構26の上下を反転し、シリンダ261をベッド23の上面固定し、ピストン262をボルスタ24の下面に固定し、ピストン262が昇降してボルスタ24及び下金型32にストローク動作を付与する構成としても良い。
【0045】
さらに、加圧機構は、作動油以外の液体による液圧(例えば、水圧)を用いた液圧機構を採用しても良い。
また、加圧機構は、ストローク方向に大きな加圧力を得ることができ、その加圧力を保持することが容易な他の加圧機構を採用しても良い。
例えば、図5に示すようなボールネジ機構26Aを加圧機構としても良い。ボールネジ機構26Aは、例えば、ストローク方向に沿った状態でベッド23に回転可能に支持されたボールネジ軸261Aと、ボールネジ軸261Aに螺合し、ボルスタ24に支持されたボールナット262Aと、ボールネジ軸261Aの回転駆動を行うモータ263Aとを有する構成としても良い。
【0046】
また、図6に示す例のように、複数の上金型31(第1金型及び他の第1金型)及び複数の下金型32(第2金型及び他の第2金型)を複数有する場合に、各下金型32を個別のボルスタ24で保持し、各下金型32に個別に対応する複数の油圧シリンダ26(加圧機構及び他の加圧機構)を設けても良い。
この場合、各上金型31と各下金型32とが駆動部10によって接近した状態で、各油圧シリンダ26が個別に各下金型32を各上金型31に向かって加圧保持しても良い。その場合、各油圧シリンダ26は、個別のタイミング、個別の加圧力又は個別のストロークで動作させてもよい。
これにより、各下金型32の被成形物に対して、条件を変えて個別に加圧保持を行うことができ、より適正な成形を行うことが可能となる。また、各下金型32ごとに必要な時に必要なタイミングで加圧保持を行うことができ、省エネルギーで成形を行うことが可能となる。
【0047】
また、往復機構として、クランク機構を構成する駆動部10を例示したが、加圧機構よりも大きなストロークを容易に得ることができ、加圧機構よりも高速なストローク動作を容易に得ることが可能な他の機構を採用しても良い。例えば、クランク機構に替えて、カム機構や空圧シリンダを用いた空圧機構を採用しても良い。
【0048】
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 プレス装置
10 駆動部(往復機構)
11 モータ
12 フライホイール
13 クラッチ
14 ブレーキ
16 エキセン軸
17 コネクティングロッド(コンロッド)
18 スライド
24 ボルスタ(保持部)
26 油圧シリンダ機構(液圧機構、加圧機構)
26A ボールネジ機構(加圧機構)
31 上金型(第1金型)
32 下金型(第2金型)
35 移動量計測器
50 制御装置
100 装置本体
261 シリンダ
262 ピストン
263 ピストンロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6