IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-浸水防止構造 図1
  • 特開-浸水防止構造 図2
  • 特開-浸水防止構造 図3
  • 特開-浸水防止構造 図4
  • 特開-浸水防止構造 図5
  • 特開-浸水防止構造 図6
  • 特開-浸水防止構造 図7
  • 特開-浸水防止構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100590
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】浸水防止構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214659
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】村越 輝道
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾方 善幸
(72)【発明者】
【氏名】茂角 広章
(72)【発明者】
【氏名】小倉 直
(72)【発明者】
【氏名】堀井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小石 恵
(72)【発明者】
【氏名】大船 仁
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】水圧変化等の影響下でも建物への浸水防止機能を維持できる浸水防止構造を提供すること。
【解決手段】浸水防止構造10は、防水シート20、上固定部および下固定部40で構成される。下固定部40は、建物の基礎4に取り付けられる固定基体41と、固定基体41に沿って連結される固定連結体42とを備える。シート下部22および固定基体41の間にはパッキン50が介在される。シート下部22およびパッキン50は固定基体41および固定連結体42に挟持される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートと、前記防水シートのシート下部を建物の基礎に固定する下固定部と、前記防水シートのシート上部を前記基礎よりも上方において建物に固定する上固定部とで構成され、
前記下固定部は、前記基礎に左右方向に沿って取り付けられる固定基体と、前記固定基体に沿って配置されて当該固定基体に連結される固定連結体とを備え、
少なくとも前記シート下部および前記固定基体の間には、前記シート下部に沿った止水部材が介在され、
前記シート下部および前記止水部材は前記固定基体および前記固定連結体に挟持される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の浸水防止構造において、
前記シート下部には孔が形成され、
前記固定基体および前記固定連結体は、前記シート下部に挿通される連結部によって連結される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項3】
請求項2に記載の浸水防止構造において、
前記シート下部および前記固定基体の間に介在される前記止水部材は、前記シート下部の孔よりも上方に配置される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の浸水防止構造において、
前記上固定部は、建物に左右方向に沿って取り付けられる固定基体と、前記固定基体に沿って連結される固定連結体とを備え、
少なくとも前記シート上部および前記上固定部の固定基体の間には、前記シート上部に沿った止水部材が介在され、
前記シート上部および前記止水部材は前記上固定部の固定基体および前記固定連結体に挟持される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項5】
請求項4に記載の浸水防止構造において、
前記シート上部には孔が形成され、
前記固定基体および前記固定連結体は、前記シート上部に挿通される連結部によって連続される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項6】
請求項5に記載の浸水防止構造において、
前記シート上部および前記上固定部の固定基体の間に介在される前記止水部材は、前記シート上部の孔よりも下方に配置される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の浸水防止構造において、
前記上固定部は、建物に左右方向に沿って取り付けられる固定レールと、前記固定レールに沿って移動可能なレールランナーとを備え、
前記シート上部は前記レールランナーに吊り下げられる
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項8】
請求項7に記載の浸水防止構造において、
前記上固定部は、前記固定レールよりも上方から前記レールランナーよりも屋外側に延びた雨避け片を備える
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の浸水防止構造において、
前記固定基体は、建物に接着される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の浸水防止構造において、
前記防水シートが複数あり、
前記複数の防水シートの上下方向に沿った側縁部同士を連結する側縁連結部が設けられる
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項11】
請求項10に記載の浸水防止構造において、
前記止水部材は前記防水シートに設けられ、
前記止水部材は、前記複数の防水シートのうち隣り合う一方の防水シートの側縁部から側方に突出し、隣り合う他方の防水シートに設けられた止水部材に当接する
ことを特徴とする浸水防止構造。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の浸水防止構造において、
前記固定連結体は前記複数の防水シートに応じて複数設けられ、
前記側縁連結部は防水性を有したスライドファスナーによって構成され、
前記スライドファスナーの少なくともエレメントは、前記複数の固定連結体の間に配置される
ことを特徴とする浸水防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水等の水害時に建物への水の浸入を防止する浸水防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の基礎コンクリートに沿って防水シートを設置する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術では、基礎コンクリートの側面部に対し、係留穴を開孔した帯状の係留金具を取り付け、且つ、係留金具よりも上方に上部係留フックを取り付けている。防水シートの下端部は、弾性部材が装着された板状断面の帯芯材、止水用リブおよび下部係留フックを備えた係留縁部とされており、下部係留フックを前述した係留穴に掛止めることで係留金具に取り付けられる。また、防水シートの上端部には係留リングが設けられており、防水シートは、係留リングを前述した上部係留フックに係留することで基礎コンクリートに沿って吊り上げられる。
この技術では、集中豪雨や洪水等の水害緊急時における水面上昇による水圧力で、防水シートが基礎コンクリートの側面部に対してもたれ掛かり圧接することで止水効果を発揮する。また、防水シートの下部係留フックが係留金具の係留穴に掛止められているので、水圧下でも防水シートが脱離しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-88791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術では、防水シートの係留縁部の下部係留フックが基礎コンクリートに取り付けた係留金具の係留穴に掛止めているだけなので、水の流れによる水圧変化の影響や風の影響によって防水シートが揺れると、基礎コンクリートと係留縁部の弾性部材および止水用リブの間に隙間が生じて止水性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、水圧変化等の影響下でも建物への浸水防止機能を維持できる浸水防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浸水防止構造は、防水シートと、前記防水シートのシート下部を建物の基礎に固定する下固定部と、前記防水シートのシート上部を前記基礎よりも上方において建物に固定する上固定部とで構成され、前記下固定部は、前記基礎に左右方向に沿って取り付けられる固定基体と、前記固定基体に沿って配置されて当該固定基体に連結される固定連結体とを備え、少なくとも前記シート下部および前記固定基体の間には、前記シート下部に沿った止水部材が介在され、前記シート下部および前記止水部材は前記固定基体および前記固定連結体に挟持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水圧変化等の影響下でも建物への浸水防止機能を維持できる浸水防止構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る浸水防止構造を示す外観姿図。
図2】第1実施形態に係る浸水防止構造を示す縦断面図。
図3】第1実施形態に係る浸水防止構造の下固定部を展開して示す斜視図。
図4】第1実施形態に係る浸水防止構造の側縁連結部を示す外観図。
図5】第1実施形態に係る浸水防止構造の側縁連結部を示す平面図。
図6】本発明の第2実施形態に係る浸水防止構造を示す外観姿図。
図7】第2実施形態に係る浸水防止構造を示す縦断面図。
図8】本発明の変形例に係る下固定部を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図5において、第1実施形態に係る浸水防止構造10は、建物の全周または一部に設置されて水害時における建物への水の浸入を防止するものである。浸水防止構造10は、水が浸透しない防水シート20と、防水シート20のシート上部21を建物の外壁3に固定する上固定部30と、防水シート20のシート下部22を建物の基礎4に固定する下固定部40とで構成されている。なお、外壁3の開口には窓5が設けられ、外壁3、基礎4には通気口(図示省略)が適宜設けられている。
以下の説明において、浸水防止構造10の左右方向をX軸方向とし、浸水防止構造10の上下方向をX軸方向に直交するY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向に直交する面外方向(屋内外方向)をZ軸方向とする。
【0010】
防水シート20は、本実施形態では四辺を有して四角形状に形成された可撓性のあるシートによって形成されており、シート上部21およびシート下部22には、複数の孔23がX軸方向に沿って形成されている。
【0011】
上固定部30および下固定部40は本実施形態では概略同様に構成され、図2に示すように上下逆向きに配置されているので、以下、下固定部40の構成について説明し、上固定部30の構成については下固定部40の構成と同符号を適宜付して詳細な説明を省略する。
下固定部40は、基礎4にX軸方向(基礎4の左右方向)に沿って取り付けられた固定基体41と、固定基体41に沿って連結される固定連結体42とを備える。
固定基体41は、X軸方向に延びた矩形板状の固定基板43と、固定連結体42側における固定基板43の面の下側部分に形成されたホロー形成部44と、ホロー形成部44にX軸方向に沿って形成されたスリット45とを備えている。ホロー形成部44にはスタッドナット47(軸部)が設けられた取付板(図示省略)がX軸方向に沿って複数配設される。スタッドナット47はスリット45からZ軸方向に突出している。固定基板43は建物の基礎4に接着され、この接着部分の周囲にはシール処理が施される。
固定連結体42はX軸方向に延びて矩形板状に形成されており、スタッドナット47が挿通される複数の孔48がX軸方向に沿って形成されている。図3では、二つ(複数)の防水シート20に対して一つの固定基体41が配設されており、一つの防水シート20に対して一つの固定連結体42が配設されている。このため、一つの固定基体41に対して二つの固定連結体42が連結されることとなる。固定連結体42の固定基体41に対する連結は、スタッドナット47をシート下部22の孔23および固定連結体42の孔48に挿通させ、固定具としての固定ボルト49(図3参照)を固定連結体42の屋外側からスタッドナット47に螺合することによって行われる。前述したスタッドナット47および固定ボルト49によって固定基体41および固定連結体42を連結する連結部46が構成される。なお、スタッドナット47は、固定ボルト49の締め付けによって固定基体41および固定連結体42がシート下部22および後述するパッキン50に圧接する突出寸法とされている。
下固定部40には、シート下部22および固定基体41の間に介在される止水部材としてのパッキン50が介在されている。パッキン50は、シート下部22にX軸方向に沿って設けられており、シート下部22の孔23よりも上方に配置されている。このように構成された下固定部40では、固定ボルト49による締付けによって固定基体41および固定連結体42の間にシート下部22およびパッキン50を挟持する。パッキン50は、前記挟持によって固定基板43のうちホロー形成部44よりも上側部分に圧着する。これにより、シート下部22および固定基体41の間をパッキン50によって止水する下部止水構造を構成する。
【0012】
上固定部30では、固定基体41が建物の外壁3のうち窓5よりも下方の位置に左右方向(X軸方向)に沿って接着によって取り付けられ、シート上部21のうち孔23よりも下方の部分にはパッキン50がX軸方向に沿って設けられ、固定基体41および固定連結体42の間にシート上部21およびパッキン50を挟持し、パッキン50が固定基体41に圧着することで上部止水構造を構成する。なお、前述したように上固定部30の構成は下固定部40とは上下逆向きに配置されているので、パッキン50は固定基板43のうちホロー形成部44よりも下側部分に圧着する。
【0013】
ここで図4および図5に示すように、本実施形態では、防水シート20は少なくとも二つあり、左右に隣り合う防水シート20のY軸方向に沿った側縁部24には、側縁連結部としてのスライドファスナー60が設けられている。
スライドファスナー60は、隣り合う防水シート20の側縁部24に沿ってそれぞれ取り付けられたテープ61と、テープ61に沿って設けられたエレメント列62と、エレメント列62のエレメント63同士を連結および解除するスライダー64とを備えている。ここでスライドファスナー60は、一般に流通する防水性を有したスライドファスナーを採用でき、エレメント63同士の連結状態でテープ61同士が圧着することで水密状態を形成する構成とされている。このスライドファスナー60によって隣り合う防水シート20の側縁部24同士は解除可能に連結され、連結状態では側縁部24間を止水する。また、スライドファスナー60のうちの少なくともエレメント63(エレメント列62)は、隣り合う固定連結体42の間に配置される。このため、エレメント63は固定基体41および固定連結体42の連結状態で押圧されず、この押圧によってピンホール等の隙間が形成されることによる止水性の低下を防げる。
更に、隣り合う防水シート20のうちの一方のシート上部21およびシート下部22に設けられたパッキン50(図4および図5(A)において右側にあるパッキン)は、一方の防水シート20の側縁部24から他方の防水シート20側にX軸方向に突出している。このパッキン50の突出部分は、スライドファスナー60による側縁部24同士の図5(B)に示す連結状態で、他方の防水シート20に設けられたパッキン50に当接して屋内側に重なる。これにより、パッキン50を側縁部24間でも連続させることができ、パッキン50が左右に分断される場合よりも止水性を向上できる。
【0014】
以下、第1実施形態に係る浸水防止構造10の施工について説明する。
まず、前述したように固定基体41を建物の外壁3および基礎4に接着しておく。
次に、防水シート20をシート上部21およびシート下部22の孔23に固定基体41のスタッドナット47を挿通させ、続いて、固定連結体42の孔48にスタッドナット47を挿通させ、シート上部21およびシート下部22およびパッキン50が固定基体41および固定連結体42の間に配置された状態とする。
次に、固定ボルト49をスタッドナット47に螺合して締め付けることで、固定連結体42を固定基体41に連結しつつ当該固定基体41に接近させ、上固定部30の固定基体41および固定連結体42の間にシート上部21およびパッキン50を挟持し、且つ、下固定部40の固定基体41および固定連結体42の間にシート下部22およびパッキン50を挟持する。各パッキン50は各固定基体41に圧着することで、シート上部21および固定基体41の間と、シート下部22および固定基体41の間とを止水する。
なお、防水シート20を複数連ねる場合には、前述したようにスライドファスナー60によって側縁部24同士を連結する。
このようにして、建物の全周や一部に浸水防止構造10を施工し、建物周辺の地面状態や建物形状に影響されることなく、基礎4の通気口や外壁3の通気層への水の浸入を防ぎ、床下浸水などを防止する。なお、防水シート20はエアコン室外機などの住宅設備を覆って配置されてもよい。
【0015】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図6および図7において、第2実施形態に係る浸水防止構造10Bでは、第1実施形態に係る浸水防止構造10の上固定部30に代えて、通気性を有した上固定部70が建物の窓5よりも上方に設けられ、防水シート20は下固定部40から窓5よりも上方に延びたものとされており、その他の構成は浸水防止構造10の構成と概略同様である。
上固定部70は、外壁3の左右方向(X軸方向)に沿って接着等によって取り付けられた固定レール71と、固定レール71に沿ってX軸方向に移動可能に当該固定レール71に連結された複数のレールランナー72と、外壁3に接着等によって取り付けられた雨避け片73とを備えている。シート上部21は複数のレールランナー72に掛けられて吊り下げられている。このため、シート下部22を下固定部40で固定していない状態では、防水シート20の左右位置を調整できる。また、固定レール71およびシート上部21の間には複数のレールランナー72があるだけであり、複数のレールランナー72の間から通気可能となっている。このため、浸水防止構造10Bを設置した状態で、窓5の開放などで屋内外間を通気させることができる。
雨避け片73は、固定レール71よりも上方側からレールランナー72よりも屋外側にまで延びており、固定レール71およびシート上部21の間からの雨水の浸入を抑制可能な配置とされている。
【0016】
[変形例]
前記実施形態では、パッキン50は防水シート20に設けられており、防水シート20を収納することでパッキン50が日光等によって劣化しにくくなっているが、これに限らず、パッキン50を防水シート20ではなく固定基板43に設けてもよい。この場合、上固定部30においては、パッキン50はホロー形成部44よりも下側部分に設けられ、下固定部40においては、パッキン50はホロー形成部44よりも上側部分に設けられてもよい。防水シート20およびパッキン50が固定基体41および固定連結体42によって挟持されることで、パッキン50が防水シートに圧着する。これにより、シート上部21およびシート下部22と各固定基体41との間を止水する。固定基体41にパッキン50を設ける場合には、パッキン50を固定基体41にX軸方向に沿って連続させることができ、防水シート20同士の連結部で分断する必要がないので、止水性を容易に保つことができる。また、パッキン50は防水シート20および固定基体41の間に介在されればよく、防水シート20および固定基体41のいずれにも設けられない単体部材とされていてもよい。
前記実施形態では、パッキン50は、上固定部30においてシート上部21の孔23よりも下方に配置され、下固定部40においてシート下部22の孔23よりも上方に配置されて、孔23からの水の浸入を防止しやすい構成とされているが、水の浸入を十分に防止できるのであれば、パッキン50の孔23に対する前記配置を変更してもよい。
前記実施形態では、固定基体41は、連結部46の取付板が配設されるホロー形成部44を有しているが、ホロー形成部44を省略し、連結部46を固定基板43にネジ止め等によって取り付けてもよい。
前記実施形態では、固定基体41側に軸部としてのスタッドナット47を配設することで、施工時に防水シート20が掛けられるようになっているが、通常の平たいナットを配設してもよい。この場合、このナットに固定ボルト49を螺合することで固定連結体42を固定基体41に連結する。
前記実施形態では、固定基体41は接着によって外壁3や基礎4に取り付けられているが、ネジ止め等の他の取付手段によって取り付けられてもよい。
前記実施形態では、隣り合う防水シート20の側縁部24同士を連結する側縁連結部として防水性を有したスライドファスナー60を説明したが、側縁部24間を止水可能に構成できるのであればスナップボタンや面ファスナーによって側縁部24同士を連結する側縁連結部としてもよい。
前記実施形態では、隣り合う防水シート20の一方に設けられたパッキン50は、他方の防水シート20側に突出し、他方の防水シート20に設けられたパッキン50と当接する構成とされているが、このようにパッキン50同士が当接しなくても十分に止水可能であれば、前記一方のパッキン50を他方の防水シート20側に突出させなくてもよい。
前記実施形態では、側縁連結部としてのスライドファスナー60のうちの少なくともエレメント63は、隣り合う固定連結体42の間に配置されているが、固定基体41および固定連結体42の連結状態でエレメント63が押圧されても十分に止水可能であれば、エレメント63もZ軸方向で固定基体41および固定連結体42の間に配置されてもよい。
前記実施形態では、隣り合う防水シート20の側縁部24同士を連結するスライドファスナー60が設けられているが、例えば一つの防水シート20しか用いない場合には、スライドファスナー60(側縁連結部)を省略してもよい。
前記実施形態では、上固定部70は雨避け片73を備えているが、上固定部70からの雨水の浸入リスクが低い配置等である場合には、雨避け片73を省略してもよい。
【0017】
前記実施形態では、固定基体41および固定連結体42の間でシート下部22およびパッキン50を挟持する下固定部40を備えているが、これに限らず、例えば図8(A)示す変形例のように、枠形状の固定基体41CおよびL字形状の固定連結体42Cを備え、固定基体41Cおよび固定連結体42Cを連結部としてハンドル付ボルト49Cによって螺合連結した下固定部80を備えていてもよい。固定基体41Cおよび固定連結体42Cには、Z軸方向に互いに対向する止水部材としてのパッキン50Cが設けられている。この下固定部80では、ハンドル付ボルト49Cの回転によってパッキン50Cの間に配置されたシート下部22を挟持し、パッキン50Cをシート下部22に圧着させる。これにより、シート下部22および固定基体41Cの間を止水する。
また、下固定部80では、固定基体41Cおよび固定連結体42Cにパッキン50Cが設けられているが、例えば図8(B)に示す変形例のように、シート下部22の両面にパッキン50Dが設けられ、パッキン50Dを押圧する押圧部材82が固定基体41Cおよび固定連結体42Cに設けられていてもよい。この場合、各パッキン50Dは各押圧部材82によって圧縮されながら当該押圧部材82に圧着する。
なお、下固定部80では、前述したようにハンドル付ボルト49Cを備えているが、これに限らず、例えば固定基体41Cに対して固定連結体42Cを接近させるカムレバーなど(図示省略)を連結部として備えていてもよい。
また、下固定部80を上下逆向きにしたものを、上固定部30に代わる上固定部としてもよい。
【0018】
[本発明のまとめ]
本発明の浸水防止構造は、防水シートと、前記防水シートのシート下部を建物の基礎に固定する下固定部と、前記防水シートのシート上部を前記基礎よりも上方において建物に固定する上固定部とで構成され、前記下固定部は、前記基礎に左右方向に沿って取り付けられる固定基体と、前記固定基体に沿って配置されて当該固定基体に連結される固定連結体とを備え、少なくとも前記シート下部および前記固定基体の間には、前記シート下部に沿った止水部材が介在され、前記シート下部および前記止水部材は前記固定基体および前記固定連結体に挟持されることを特徴とする。
本発明の浸水防止構造によれば、固定基体および固定連結体による前記挟持によって止水部材がシート下部や固定基体に圧着する。このため、水の流れによる水圧変化の影響や風の影響があっても、止水部材の圧着状態を維持することで下固定部に隙間を生じさせずに止水性を保つことができて、浸水防止構造による建物への浸水防止機能を維持できる。
また、固定基体を建物の基礎に取り付けるので、建物周辺の地面状態や建物形状に影響されることなく、建物の全周や一部に浸水防止構造を容易に構成できる。
なお、止水部材は、シート下部および固定基体のいずれに設けられていてもよく、また、シート下部および固定基体のいずれにも設けられていない単体部材であってもよい。さらに、止水部材は、少なくともシート下部および固定基体の間に介在されていればよく、固定連結体とシート下部との間にも止水部材を介在させてもよい。
【0019】
本発明の浸水防止構造では、前記シート下部には孔が形成され、前記固定基体および前記固定連結体は、前記シート下部に挿通される連結部によって連結されてもよい。
このような構成によれば、固定基体を建物の基礎に設置し、シート下部の孔に連結部を挿通させて当該固定基体および固定連結体を連結することで下固定部を簡単に構成できる。なお、防水シートを撤去しても、固定基体は建物の基礎に設置したままにしておくことで、次の水害に応じて浸水防止構造を速やかに構成できる。
【0020】
本発明の浸水防止構造では、前記シート下部および前記固定基体の間に介在される前記止水部材は、前記シート下部の孔よりも上方に配置されてもよい。
このような構成によれば、前述したように浸水防止構造を速やかに構成できるうえ、シート下部の孔を通る水を、当該孔よりも上方に配置された止水部材によって止水できる。
【0021】
本発明の浸水防止構造では、前記上固定部は、建物に左右方向に沿って取り付けられる固定基体と、前記固定基体に沿って連結される固定連結体とを備え、少なくとも前記シート上部および前記上固定部の固定基体の間には、前記シート上部に沿った止水部材が介在され、前記シート上部および前記止水部材は前記上固定部の固定基体および前記固定連結体に挟持されてもよい。
このような構成によれば、下固定部と同様に、水の流れによる水圧変化の影響や風の影響があっても、止水部材の圧着状態を維持することで上固定部に隙間を生じさせずに止水性を保つことができる。
【0022】
本発明の浸水防止構造では、前記シート上部には孔が形成され、前記固定基体および前記固定連結体は、前記シート上部に挿通される連結部によって連続されてもよい。
このような構成によれば、上固定部の固定基体を建物に設置し、シート上部の孔に連結部を挿通させて当該固定基体および固定連結体を連結することで上固定部を簡単に構成できる。なお、防水シートを撤去しても、上固定部の固定基体は建物に設置したままにしておくことで、次の水害に応じて浸水防止構造を速やかに構成できる。
【0023】
本発明の浸水防止構造では、前記シート上部および前記上固定部の固定基体の間に介在される前記止水部材は、前記シート上部の孔よりも下方に配置されてもよい。
このような構成によれば、前述したように浸水防止構造を速やかに構成できるうえ、シート上部の孔を通る水を、当該孔よりも下方に配置された止水部材によって止水できる。
【0024】
本発明の浸水防止構造では、前記上固定部は、建物に左右方向に沿って取り付けられる固定レールと、前記固定レールに沿って移動可能なレールランナーとを備え、前記シート上部は前記レールランナーに吊り下げられてもよい。
このような構成によれば、前記シート上部を前記レールランナーに吊り下げることで、防水シートの左右位置を容易に調整でき、施工性を向上できる。また、シート上部および固定レールの間にはレールランナーが配置されているだけなので屋内外の通気性を保つことができ、上固定部を建物の窓よりも上方に取り付けることが可能となる。
【0025】
本発明の浸水防止構造では、前記上固定部は、前記固定レールよりも上方から前記レールランナーよりも屋外側に延びた雨避け片を備えてもよい。
このような構成によれば、固定レールおよびシート上部の間からの雨水の浸入を雨避け片によって抑制できる。
【0026】
本発明の浸水防止構造では、前記固定基体は、建物に接着されてもよい。
このような構成によれば、建物の基礎などを加工せずに固定基体を固定できて施工性の向上を図ることができる。また、例えば撓みやすい防止シート自体を建物に貼り付ける場合よりも取付強度を向上できる。
【0027】
本発明の浸水防止構造では、前記防水シートが複数あり、前記複数の防水シートの上下方向に沿った側縁部同士を連結する側縁連結部が設けられてもよい。
このような構成によれば、側縁連結部によって複数の防水シートの側縁部同士を連結することで、長尺の防水シートを用いなくても建物の全周や一部などの任意箇所に浸水防止構造を容易に構成できる。
【0028】
本発明の浸水防止構造では、前記止水部材は前記防水シートに設けられ、前記止水部材は、前記複数の防水シートのうち隣り合う一方の防水シートの側縁部から側方に突出し、隣り合う他方の防水シートに設けられた止水部材に当接してもよい。
このような構成によれば、防水シートの側縁部においても止水部材が途切れることなく連続して配置でき、止水性を向上できる。
【0029】
本発明の浸水防止構造では、前記固定連結体は前記複数の防水シートに応じて複数設けられ、前記側縁連結部は防水性を有したスライドファスナーによって構成され、前記スライドファスナーの少なくともエレメントは、前記複数の固定連結体の間に配置されてもよい。
このような構成によれば、複数の防水シートの側縁部同士をスライドファスナーによって容易に連結および解除できるうえ、固定連結体の固定基体に対する連結状態でスライドファスナーのエレメント(務歯)が押圧されることによってピンホール等の隙間が生じるおそれをなくし得る。
【符号の説明】
【0030】
10,10B…浸水防止構造、20…防水シート、21…シート上部、22…シート下部、23,48…孔、24…側縁部、3…外壁、30,70…上固定部、4…基礎、40,80…下固定部、41,41C…固定基体、42,42C…固定連結体、43…固定基板、44…ホロー形成部、45…スリット、46…連結部、47…スタッドナット、49…固定ボルト、49C…ハンドル付ボルト(連結部)、5…窓、50,50C,50D…パッキン、60…スライドファスナー、61…テープ、62…エレメント列、63…エレメント、64…スライダー、70…上固定部、71…固定レール、72…レールランナー、73…雨避け片、82…押圧部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8